JP5388895B2 - スチレン系熱可塑性エラストマーラテックス、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、かかるスチレン系熱可塑性エラストマーを水に乳化分散してなるラテックスは、高い凝集力を有し、機械強度、柔軟性、ゴム弾性を有する皮膜を得ることができることから、粘・接着剤やコーティング剤などに広く用いられている。
近年、かかるスチレン系熱可塑性エラストマーラテックスの製造法に関し、粒子径が小さく、保存安定性に優れたラテックスを得る方法として、特定構造のアンモニウム塩、またはアミン塩を乳化剤として用いる方法(例えば、特許文献1参照。)や、乳化前の有機溶剤相に粘着付与樹脂を共存させることでラテックスに機械安定性を付与する方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
かかる要望に対し、例えば、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子や、さらにこれに柔軟性を付与するために、ゴムや熱可塑性エラストマーなどのラテックスを併用したものが検討されている。
しかしながら、これらの水系バインダーの場合、負極集電体として用いる金属素材との密着性が不充分であることが判明した。
すなわち、本発明ではスチレン系熱可塑性エラストマー(以下、エラストマーと略記することがある。)とポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)とを溶融混練することによって、PVA系樹脂中にスチレン系熱可塑性エラストマーが微分散した溶融混練物とし、かかる溶融混練物中のPVA系樹脂を水に溶解させることによってスチレン系熱可塑性エラストマーが水中に微分散したラテックスが得られたものである。
本発明においては、特に、エラストマーとして、カルボン酸基あるいはその誘導体基を側鎖に有するものを用い、PVA系樹脂として、側鎖にα−ヒドロキシアルキル基を有するものを用いることが好ましく、かかる場合には、これらが溶融混練時に反応し、エラストマーの表面にPVA系樹脂がグラフトした微粒子が得られ、かかるグラフトしたPVA系樹脂がエラストマーの安定性の向上に寄与するものと推測される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマーラテックスは、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、PVA系樹脂(B)を溶融混練し、得られた溶融混練物中のPVA系樹脂(B)を水に溶解し、かかるエラストマーを水中に分散して得られるものである。
まず、本発明で用いられるスチレン系熱可塑性エラストマー(A)について説明する。
本発明で用いられるエラストマー(A)は、スチレンに代表される芳香族ビニル化合物の重合体ブロックをハードセグメントとし、ソフトセグメントとして共役ジエン化合物の重合体ブロックや、かかる重合体ブロックに残存する二重結合の一部、または全部が水素添加されたブロック、あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するものである。
特に、本発明においては、かかるエラストマーとして、側鎖にカルボン酸基あるいはその誘導体基を有するものが好ましく用いられる。
なお、かかる水素添加により、例えばブタジエンの1,2−結合によるブタジエン単位は、ブチレン単位(−CH2−CH(CH2−CH3)−)となり、1,4−結合によって生成するブタジエン単位は二つの連続したエチレン単位(−CH2−CH2−CH2−CH2−)となるが、通常は前者が優先して生成する。
まず、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと、共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するブロック共重合体の製造法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、アルキルリチウム化合物などを開始剤とし、不活性有機溶媒中で芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンを逐次重合させる方法などを挙げることができる。
次に、この芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックを有するブロック共重合体を水素添加する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、水素化ホウ素化合物などの還元剤を用いる方法や、白金、パラジウム、ラネーニッケルなどの金属触媒を用いた水素還元などを挙げることができる。
かかる酸価が低すぎると、カルボン酸(誘導体)基を導入した効果が充分に得られず、また、高すぎるとPVA系樹脂(B)との溶融混練時にゲルが発生する場合がある。
また、エラストマー(A)の220℃、せん断速度122sec−1での溶融粘度は、通常100〜3000mPa・sであり、特に300〜2000mPa・s、さらに800〜1500mPa・sのものが好ましく用いられる。
かかる重量平均分子量が大きすぎたり、溶融粘度が高すぎると、PVA系樹脂(B)と溶融混練する際の作業性やPVA系樹脂(B)中での分散性が低下する場合があり、逆に重量平均分子量が小さすぎたり、溶融粘度が低すぎると、本発明のラテックスから得られた乾燥皮膜の機械強度が不充分となる場合がある。
なお、かかるエラストマー(A)の重量平均分子量は、GPCを用い、ポリスチレンを標準として求めた値である。
その他の市販品として、シェルジャパン社製の「クレイトンG」「クレイトンD」「カリフレックスTR」、クラレ社製の「セプトン」、「ハイプラー」、JSR社製の「ダイナロン」、「JSR−TR」、「JSR−SIS」、日本ゼオン社製の「クインタック」、電気化学社製の「電化STR」などを挙げることができる。
次に、本発明で用いられるPVA系樹脂(B)について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂(B)は、ビニルエステル系単量体を重合して得られたポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られた水溶性樹脂であり、ビニルアルコール構造単位を主成分とし、ケン化度に応じて残存するビニルエステル構造単位を有するものである。
なお、本発明においては、PVA系樹脂(B)として、特に側鎖にα−ヒドロキシアルキル基を有する変性PVA系樹脂が好ましく用いられる。かかるα−ヒドロキシアルキル基中の一級水酸基は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)としてカルボン酸基、またはその誘導体基を有するものを用いた場合、これらの官能基との反応性が高く、溶融混練時にこれらが反応することによって、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)にPVA系樹脂(B)がグラフトし、それによって、ラテックスとしたときの安定性の向上に寄与するものである。
また、α−ヒドロキシアルキル基の中でも、特に下記一般式(1)で表されるジヒドロキシアルキル基が、スチレン系熱可塑性エラストマーラテックスの安定性向上の点で好ましい。
かかる結合鎖としては、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖、−O−、−(CH2O)m−、等のエーテル結合を含む結合鎖、−CO−、−CO(CH2)mCO−等のカルボニル基を含む結合鎖、−S−、−SO−、−SO2−、等の硫黄原子を含む結合鎖、−NR−、−CONR−、等の窒素原子を含む結合鎖、ケイ素、チタン、アルミニウムなどの金属原子を含む結合鎖などを挙げることができる。
かかる結合鎖が長いと本発明のラテックスから得られる皮膜等の耐水性を阻害したり、ラテックスの安定性が低下させる傾向があるため、短いものが好ましく、原子数で3以下であることが望ましい。
従って、本発明に用いられるPVA系樹脂(B)の最も好ましいのは、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシアルキル基がPVA系樹脂の主鎖に直接結合した、下記一般式(2)で表わされる構造単位を有するものである。
例えば、後反応による方法としては、PVA系樹脂の水酸基にグリシジル化合物を付加反応する方法が挙げられる。ただし、かかる方法によると、α−ヒドロキシアルキル基がエーテル結合によって主鎖と結合するため、熱安定性が必要となる用途に対しては好ましくない場合がある。
なお、かかる水酸基を有するオレフィン化合物中の水酸基がケン化工程等で脱保護可能な官能基で保護されているものもビニルエステル等との共重合性の点で好ましく、例えば、これらのアシル化物などの誘導体を挙げることができ、特に、ビニルエステル系モノマーとして多用される酢酸ビニルとケン化工程での副生物が共通するアセチル化物が好ましく用いられる。
従って、上記一般式(2)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂(B)を共重合によって製造する場合には、共重合モノマーとして3,4−ジヒドロキシ−1−ブテンおよびその誘導体が好ましく用いられる。
かかる(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825に説明されている方法を用いることができる。
が熱分解しやすくなる工傾向がある。
次に、本発明で得られるスチレン系熱可塑性エラストマーラテックスについて説明する。
本発明のラテックスは、上述のスチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、PVA系樹脂(B)を溶融混練し、得られた溶融混練物中のPVA系樹脂(B)を水に溶解し、かかるエラストマーを水中に分散して得られるものである。
かかるエラストマー(A)とPVA系樹脂(B)との溶融混練は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ブラストミルなどの公知の混練装置を用いて行うことができ、中でも押出機を用いる方法が工業的に好ましい。
かかる押出機としては単軸押出機や二軸押出機が挙げられるが、中でもスクリューの回転方向が同方向の二軸押出機が適度なせん断により充分な混練が得られる点でより好ましい。かかる押出機のL/Dは、通常10〜80であり、特に15〜70、さらには15〜60であるものが好ましく用いられる。かかるL/Dが小さすぎると、溶融混練が不充分で、溶融混練物中のエラストマー(A)の分散性が不充分となる場合があり、逆に大きすぎると過度のせん断を与えることにより好ましくないせん断発熱を引き起こす傾向がある。
かかる樹脂温度の調整方法は特に限定されないが、通常は、押出機内シリンダーの温度、および回転数を適宜設定する方法が用いられる。
かかるペレットの形状は通常、円筒状であり、その大きさは、後にこれを水と接触させ、その中のPVA系樹脂(B)を溶解除去することを考えると、小さいほうが好ましく、例えば、ダイスの口径は2〜6mmφ、ストランドのカット長さは1〜6mm程度が好適に用いられる。なお、押出機から吐出されたEVOHがまだ溶融状態である間に、大気中あるいは有機溶剤中でカットする方法も用いることができ、その場合には球状に近いペレットが得られるが、その場合の大きさとしては、直径が2〜5mmφの範囲が好適に用いられる。
かかる工程は、得られたエラストマー(A)とPVA系樹脂(B)の溶融混練物から、これに含まれるPVA系樹脂(B)を溶解するもので、その方法としては特に限定されるものではないが、通常は、上述の方法で得られた溶融混練物のペレットを水中に投入し、必要に応じて撹拌、および加熱することで本発明のラテックスを得ることができる。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
〔PVA系樹脂(B1)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A1)としてカルボキシル基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成社製「タフテックM1913」(酸化10mgCH3ONa/g、溶融粘度1060mPa・s(220℃ せん断速度122sec−1))を用い、その20部と、PVA系樹脂(B1)80部をドライブレント゛した後、二軸押出機を用い、下記条件で溶融混練し、ストランド状に押し出してペレタイザーでカットし、溶融混練物ペレット(直径約1mm、長さ約2mm)を得た。
直径(D)15mm、
L/D=60
スクリュ回転数:200rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/D=90/205/210/
210/210/215/220/220/220℃
吐出量:1.5kg/hr
銅版(日本テストパネル社「テスト用銅板」、15cm×7cm×2mm)に、得られたスチレン系熱可塑性エラストマーラテックスをバーコーター(No.40)にて塗工し、120℃の熱風乾燥機中で10分間、加熱乾燥し、厚さ10μmの皮膜を形成した。
得られた乾燥皮膜の金属密着性を、JIS K5600に従って鉛筆硬度法によって評価した。結果を表2に示す。
得られたラテックスをPETフィルム上にバーコーター(No.40)を用い、膜厚が約10μmとなるように塗布し、23℃、50%RHの環境下で風乾し、フィルムを作製した。かかるフィルムの透明性をヘイズメーター(日本電色工業社製「HazeMeter NDH2000」を用い、JIS K 7105に従って測定し、膜厚10μmに換算したヘイズ値を求めた。結果を表2に示す。
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.5部、メタノール20.5部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン11.0部を酢酸ビニルの初期仕込率10%、酢酸ビニル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを9時間等速滴下の条件で仕込、アゾイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
得られたPVA(B2)のケン化度は98.9モル%。、平均重合度は300。1,2−ジオール構造単位の含有量は8モル%であった。
エラストマーとして、SBRラテックス(日本ゼオン社製「タイプA」、濃度45%)を水で濃度30%に希釈した後、その80部と、PVA(B1)の30%水溶液20部を混合して、実施例1と同様のPVA系樹脂を同様の含有比率で含有するSBRラテックスを得た。
かかるSBRラテックスを用い、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
※:SBRラテックス
Claims (6)
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を溶融混練し、得られた溶融混練物中のポリビニルアルコール系樹脂(B)を水に溶解し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を水中に分散してなることを特徴とするスチレン系熱可塑性エラストマーラテックス。
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が、側鎖にカルボン酸基あるいはその誘導体基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1記載のスチレン系熱可塑性エラストマーラテックス。
- ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、側鎖にα−ヒドロキシアルキル基を有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1または2記載のスチレン系熱可塑性エラストマーラテックス。
- α−ヒドロキシアルキル基が、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシアルキル基である請求項3記載のスチレン系熱可塑性エラストマーラテックス。
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、ポリビニルアルコール系樹脂(B)の配合比(A/B)が重量比で10/90〜40/60である請求項1〜4いずれか記載のスチレン系熱可塑性エラストマーラテックス。
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を溶融混練し、得られた溶融混練物中のポリビニルアルコール系樹脂(B)を水に溶解し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を水中に分散させることを特徴とするスチレン系熱可塑性エラストマーラテックスの製造方法。
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