JP5322887B2 - 樹脂組成物およびその成形物 - Google Patents
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例えば、特許文献2には、EVOHと熱可塑性エラストマーであるブロック共重合体を溶融混練する際、下記式を満たす材料の組合せが好ましいと記載されている。
1.0≦(φB/φA)×(ηA/ηB)≦8.0
(φA:EVOHの含有量、φB:ブロック共重合体の含有量、ηA:EVOHの溶融粘度、ηB:ブロック共重合体の溶融粘度)
これを、ガスバリア性が要求される場合の配合組成、例えばEVOH/ブロック共重合体=80/20の場合にあてはめると、その粘度比(ηA/ηB)は4〜32となる。すなわち、EVOHを主体とする場合、EVOHと複合させる熱可塑性エラストマーは、粘度が1/4以下である低粘度のブロック共重合体の使用が好ましいことが示されている。
しかしながら、引用文献1に記載の側鎖に1,2−ジオール成分を有するPVA系樹脂を用い、これに特許文献2の可塑性エラストマーをその組成比と粘度比が特許文献2の式を満たすようなブロック共重合体を配合して得られた樹脂組成物の成形物は、柔軟性についてはかなり改善されているものの、繰り返し屈曲させるような状況下ではピンホールが生じやすく、耐屈曲疲労性については、まだまだ不十分であることが判明した。
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
本発明の樹脂組成物で用いられる側鎖に1,2−ジオール成分を有するPVA系樹脂は、例えば下記一般式(1)で表される構造単位を有するものであり、一般式(1)におけるR1,R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4,R5およびR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示すものである。
下での構造安定性の点で、単結合であることが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しな
い範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アル
キレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素基(これら
の炭化水素基はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等を有していても良い)の他、−O−、
−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH2−、−CO−、−C
OCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C6H4)CO−、−S−、−CS−、
−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NR
CS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−
OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)
2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等(Rは各々独
立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である。)
が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基
、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。
なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、(i)の方法において、一般式(2)で表わされる化合物として3,4−ジアシロキシ−1−ブテンを用いることが好ましく、さらに3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは(ii)の方法で用いられる一般式(3)で表される化合物であるビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、1,4−ブタンジオール製造工程の中間生成物である1,4−ジアセトキシ−1−ブテンを塩化パラジウムなどの金属触媒を用いた公知の異性化反応することによって3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換して用いることもできる。また、再公表WO00−24702号公報に記載の有機ジエステルの製造方法に準じて製造することも可能である。
また上述のモノマー(ビニルエステル系モノマー、一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物)の他に、樹脂物性に大幅な影響を及ぼさない範囲であれば、共重合成分として、エチレンやプロピレン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、などが共重合されていてもよい。
次に、本発明で用いられるブロック共重合体(B)について説明する。
本発明の樹脂組成物に含有されるブロック共重合体(B)は、芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(a)とイソブチレンに由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(b)を有するものである。
本発明の樹脂組成物は、上述のPVA系樹脂(A)と、上述の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主成分とする重合体ブロック(a)及びイソブチレンに由来する構成単位を主成分とする重合体ブロック(b)を有するブロック共重合体(B)を含有するものである。
PVA系樹脂(A)とブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物の場合では、これらの溶融粘度比(A/B)が1.5〜3のものを組み合わせることで、その成形物の耐屈曲疲労性は良好となる。これは、この溶融粘度比であるPVA樹脂(A)とブロック共重合体(B)を溶融混練りした際、ブロック共重合体(B)の分散粒子径が1μm以下になり、非常に均一に微分散できる。このことにより、微分散粒子は、安定にPVA樹脂(A)に分散保持され、良好なガスバリア性と対屈曲疲労性を発現することができるのである。
溶融混合方法としては、各成分をドライブレンドした後に溶融して混合する方法や、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の混練装置を使用して行うことができるが、通常は単軸又は二軸の押出機を用いることが工業上好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。
溶液混合方法としては、例えば各成分を良溶媒に溶解して混合し、貧溶媒中で析出させる方法等が挙げられる。
かかる混合によって得られた本発明の樹脂組成物は、成形材料として使用するために、通常はペレットや粉末などの形状とされる。中でも成形機への投入や、取扱い、微粉発生の問題が小さい点から、ペレット形状とすることが好ましい。
なお、かかるペレット形状への成形は公知の方法を用いることができるが、上述の押出機からストランド状に押出し、冷却後所定の長さに切断し、円柱状のペレットとする方法が効率的である。
本発明の樹脂組成物は、成形性、特に溶融成形性に優れていることから、成形材料として有用である。溶融成形方法としては、押出成形、インフレーション成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、圧縮成形、カレンダー成形、など公知の成形法を用いることができる。
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形品としては、フィルム、シート、パイプ、円板、リング、袋状物、ボトル状物、繊維状物など、多種多用の形状のものを挙げることができる。
特に、本発明の樹脂組成物はPVA系樹脂を主体とするものであり、低湿度条件下では優れたガスバリア性が得られるものの、吸湿によってその特性は大きく変化する場合があるため、水蒸気バリア性が高い素材を表面に配した積層構造体としての使用が望ましい。
また、各種電気部品、自動車部品、工業用部品、レジャー用品、スポーツ用品、日用品、玩具、医療器具などに用いることも可能である。
〔PVA系樹脂(A)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
得られたPVA系樹脂(A)80重量部と、ブロック共重合体(B)としてスチレン−イソブチレン−スチレン樹脂(SIBS)(カネカ社製「SIBSTAR072T」、溶融粘度585Pa・s、210℃、せん断速度122sec−1)20重量部をドライブレンドした後、これを二軸押出機にて下記条件で溶融混練し、ストランド状に押出してペレタイザーでカットし、円柱形ペレットの樹脂組成物を得た。
この時のPVA系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の溶融粘度比(A/B)は2.6であった。
得られたペレットを、押出機にて下記条件で製膜し、厚さ約30μmの単層フィルムを作製し、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
押出機:直径(D)15mm、二軸押出機、L/D=60
スクリーンパック:90/90メッシュ
スクリュ回転数 :200rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=90/185/190/195/200/205/205/210/210℃
吐出量:1.5kg/hr
ダイ:幅300mm、コートハンガータイプ
引取速度:2.6m/min
ロール温度:50℃
エアーギャップ:1cm
(成形物中の微分散粒径測定)
成形したフィルムを液体窒素内でTD方向に割り、その後、60℃のキシレン中で2時間、超音波洗浄を行い、フィルム断面のブロック共重合体(B)を溶解させ、測定サンプルとした。このサンプルの断面をSEMにて観察し(倍率2000〜6000倍)、空孔の径を測定した。結果は表1に記載した。
(屈曲疲労試験)
乾燥状態で30cm×21cmサイズ、厚み30μmの乾燥状態のフィルムを、23℃、65%RHの条件下で、理学工業社のゲルボフレックステスターを用いて、捻じり試験を行った。
25インチ水平に進んだ後に、3.5インチで440°の捻じりを100回(40サイクル/分)加えた後、該フィルム全体のピンホール発生数を数えた。かかるテストを5回試行し、その平均値を求めた。
実施例1において、ブロック共重合体(B)としてスチレン−イソブチレン−スチレン樹脂(SIBS)(カネカ社製「SIBSTAR073T」、溶融粘度555Pa・s、210℃、せん断速度122sec−1)を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物、成形品を作製し、評価を行った。この時のPVA系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の溶融粘度比(A/B)は2.8であった。結果を表1に示す。
実施例1において、ブロック共重合体(B)としてスチレン−イソブチレン−スチレン樹脂(SIBS)(カネカ社製「SIBSTAR102T」、溶融粘度1570Pa・s、210℃、せん断速度122sec−1)を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物、成形品を作製し、評価を行った。この時のPVA系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の溶融粘度比(A/B)は1.0であった。結果を表1に示す。
実施例1において、ブロック共重合体(B)としてスチレン−イソブチレン−スチレン樹脂(SIBS)(カネカ社製「SIBSTAR053T」、溶融粘度216Pa・s、210℃、せん断速度122sec−1)を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物、成形品を作製し、評価を行った。この時のPVA系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の溶融粘度比(A/B)は7.2であった。結果を表1に示す。
Claims (4)
- 側鎖に1,2−ジオール成分を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)を主成分とし、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(a)とイソブチレンに由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(b)を有するブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物であって、ポリビニルアルコール系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の溶融粘度比(A/B)が1.5〜3であることを特徴とする樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)が下記一般式(1)で表される構造単位を有するものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
[式中、R1,R2およびR3はそれぞれ独立しては水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4,R5およびR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の含有比(A/B)が70/30〜97/3(重量比)である請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形物。
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