JP7068170B2 - 鋳造用ノズル - Google Patents
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Description
ロングノズルは取鍋の底部に設置された下部ノズルとパッキング材等を介して接合される。このロングノズルと下部ノズルとの間は,(a)溶鋼中への空気(酸素等)の混入,(b)接合部からの溶鋼の漏れ,(c)炭素を含む材料からなるロングノズル及び下部ノズルの接合部付近の酸化等による損耗等,を抑制するため,高度な密着性(シール性)が要求される。また,ロングノズルは,取鍋の交換の都度,下部ノズルへの着脱が行われるので,この着脱は取鍋の交換回数分繰り返される。
このようなロングノズルと下部ノズルとの接合部では,着脱作業や溶鋼・スラグ等の付着,ノズルの損傷等によっての密着性が低下して隙間を生じることがある。このような隙間が生じると,シール性が低下してノズル内に空気を引き込んで溶鋼の酸化や炭素含有耐火物からなるノズルの酸化による損傷等を惹き起こす危険性が高まる。
タンディッシュと鋳型間に設置する浸漬ノズルにおいても同様な課題がある。
本発明が解決しようとする課題は,このような鋳造用ノズル本体の破壊を抑制又は防止することにある。
1.
ノズル本体上端部をメタルケースで囲繞しており,前記ノズル本体上端部の外周面と前記メタルケースの内周面との間にガスプールを備え,前記ノズル本体上端部が,取鍋の底部に設置された下部ノズル又はタンディッシュの下部に取り付けられた下部ノズルと接合される鋳造用ノズルにおいて,
前記ガスプールの少なくとも一部に,前記ノズル本体上端部の外周面と前記メタルケースの内周面とを架橋する部分を備えている,鋳造用ノズル。
2.
前記の架橋する部分は鉄製の丸棒若しくは角棒又はこれらの組み合わせである,前記1に記載の鋳造用ノズル。
3.
前記の架橋する部分は縦方向に延在し,各架橋部分の一部又は全部が前記メタルケースに溶接されている,前記2に記載の鋳造用ノズル。
4.
前記の架橋する部分は耐熱性粒子の充填により形成されている,前記1に記載の鋳造用ノズル。
5.
前記耐熱性粒子は,相互に接着しておらず,かつ,ガスプール内のいずれの面とも接着していない状態でガスプール内に充填されている,前記4に記載の鋳造用ノズル。
6.
前記耐熱性粒子は,粒径が0.65mm以上である,前記4又は前記5に記載の鋳造用ノズル。
7.
前記耐熱性粒子は,略球状又は略長球状である,前記4から前記6のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
8.
前記耐熱性粒子は,無機物,又は鉄系金属若しくは銅系金属の中から選択するいずれか1以上の材料からなる,前記4から前記7のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
9.
前記無機物は,アルミナ系,シリカ系,スピネル系,マグネシア系,ジルコニア若しくはジルコン系,Ca含有セメント系,炭素系,炭化物系,サイアロン系セラミクス又はガラス系の中から選択するいずれか1以上である,前記8に記載の鋳造用ノズル。
10.
前記ガスプールは,ガス導入口,ガス吐出口又はガス吐出口に連通する経路としての孔(以下,総称して「ガス導入口等」という。)を1つ以上備えており,前記ガス導入口等のガス流通方向に垂直な断面内の少なくともガスプール内面位置の最小寸法が,前記耐熱性粒子の最小粒径未満である,前記4から前記9のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
また耐熱性粒子相互,又は,耐熱性粒子とノズル本体若しくはメタルケースとの間に接着していない部分を備える場合にはガスプールの変形等が生じても耐熱性粒子自ら移動して応力集中を抑制又は防止する効果を得ることができる。
さらに耐熱性粒子をガスプール内に充填し,充填した部分を押さえる等の機械的な外力により拘束するだけでよいので,ガスプール内に部品を複数箇所に固定して設置する場合等に比較して製造工程が簡素かつ容易であり,短時間,低コストで製造することができる。
図4に示す従来のロングノズルを参照して説明すると,ロングノズル本体3外周面(本明細書では,単に「本体外周面」ともいう)とメタルケース4内周面間にガスプール2を設置したロングノズル本体3(本明細書では,単に「本体」ともいう)に亀裂等の破壊が生じるのは,下部ノズル7との接合部で,ロングノズルの通鋼方向(鉛直方向であり,以下,単に「縦方向」ともいう。)中心軸から外周側方向すなわち半径方向(以下,単に「横方向」ともいう。)に力が加わることに起因する。
例えば,下部ノズルの上方に設置されるスライディングノズルプレートの摺動方向のみやロングノズル取り付け装置の特定の動作方向のみ等の特定の方向又は特定の部分にのみ力が加わって,その方向又は部分のロングノズル本体に亀裂や破壊が生じる場合などは,その特定の方向又は部分のガスプール領域にのみ前記架橋する部分を設置すればよい。
ロングノズル本体の円周方向全体に力が及ぶ場合には,円周上に少なくとも3箇所以上ほぼ均等に配置して設置することが好ましく,できるだけ多数箇所又は広い領域に設置することがより好ましい。
一部に面を有する場合,その形状は円,長円,多角形,又は扇状形等の様々な形状が許容でき,柱状でも錐状でもよい。
なお,ガスプールがロングノズル本体の円周方向に延在するので,ロングノズル本体外周面及びメタルケース内周面と接する架橋する部分の面は,それら曲率に合致した曲面となる。
[実施例A]
実施例Aは,図1の構造において,架橋する部分を鉄製の丸棒とし,メタルケース内周面の円周上8箇所,溶接によりロングノズル縦方向に平行な方向(縦方向)に延在させて配置した例である。
実操業において,架橋する部分を有しない従来構造(比較例(図1の構造(実施例A)から架橋する部分1を除いた構造))ではロングノズル本体に縦亀裂ないしはその亀裂から分離する破壊が生じたが,実施例Aの本発明のロングノズルを供した結果,ロングノズル本体の亀裂を含む破壊の発生が皆無となった。
しかし,架橋する部分とロングノズル本体外周面とがロングノズル縦方向に線状に接触していて,また縦方向に不連続部分が貫通している実施例Aの構造では前述の亀裂等破壊の抑制又は防止効果がさらに高い構造よりもロングノズル本体の縦方向の亀裂は比較的発生し易いとも考えられるものの,この実施例Aでもほぼ完璧な亀裂等破壊の抑制又は防止効果が得られている。
したがって,前述の抑制又は防止効果がさらに高い構造は,例えばロングノズルと下部ノズルとの間の圧着力が大きい場合等の,操業におけるロングノズル本体にかかる力の程度等の亀裂等破壊の原因に関係する個別の条件に応じて適宜選択すればよい。
この実施形態では,図12に例示しているようにガスプール2の少なくとも一部(一部又は実質的に全部)の領域に耐熱性粒子1Aを充填しており,この耐熱性粒子1Aの充填により前述の架橋する部分(架橋部分)1が形成されている。そして,この架橋部分1が前述のとおり本体3外周面の半径方向を拘束するとともに,この架橋部分1を構成する耐熱性粒子1Aが応力を分散する作用効果を奏するので,ノズル本体3の破壊を抑制又は防止することができる。
耐熱性粒子間の空間は,例えば一般的なガス通過用のポーラス質耐火物の最大気孔径が概ね50μm以上,その平均気孔径が100μm前後であることを基準にすると,前記空間も最大空間径が概ね50μm以上,平均空間径が概ね100μm以上とすることでガスがスムーズに流通することができる空間を確保することができることになる。
この気孔の直径(空隙部の直径)は幾何学的に単純モデル化して算出すると,耐熱性粒子を球とみなした場合のその直径Dsに対し,3つの球に囲まれた空間の内接円17s(図13参照)の直径はDsの約0.155倍となる。これを100μmと仮定すると,耐熱性粒子の粒径(球の場合は直径)は約0.65mm以上であることが好ましいことになる。
なお,実際にはこの内接円17sの周囲にも空間があるので,また,耐熱性粒子とガスプール内面との間の空間は,耐熱性粒子相互の間の空間よりも大きいので実際の空間はこれ以上の大きさであることになる。
ここで耐熱性粒子の粒径が0.65mm以上であるとは,耐熱性粒子が目開き0.65mmの仮想的な篩上に残る大きさであることを意味する。
また,耐熱性粒子は,粒子間に十分な空間17(図14参照)を確保するために表面形状が曲面であることが好ましく,略球状又は略長球であることがさらに好ましく,球状であることが最も好ましい。
なお,耐熱性粒子の大きさが小さいと通気性の観点からは不利となるが,耐熱性粒子の大きさが小さい程,ガスプール内の内圧が高くなるので,各ガス吐出口からの通気量の均一化の観点からは有利となる。したがって,耐熱性粒子の大きさは,この通気量の均一化も考慮して決定することが好ましい。
また,例えば図16に示すように,ガス導入口等に耐熱性粒子が流出することを防止するためのフィルター16等を設置するようにしてもよい。この場合,ガス導入口等のガス流通方向に垂直な断面内の少なくともガスプール内面位置の最小寸法は耐熱性粒子の最小粒径以上であってもよいが,このフィルターの目開きの寸法は,耐熱性粒子の最小粒径未満であることが好ましい。
多くのロングノズルや浸漬ノズルの場合,ガス吐出中の温度は約800℃以下,高くても約1200℃以下程度である。
そこで本発明でいう耐熱性粒子とは,このような温度条件に耐えることができる物,例えば無機物,又は鉄系金属若しくは銅系金属又はこれらの各々の合金の中から選択するいずれか1以上の材料とすることができる。
前記無機物としては,アルミナ系,シリカ系,スピネル系,マグネシア系,ジルコニア若しくはジルコン系,炭素系,炭化物系,サイアロン系セラミクス又はガラス系等を挙げることができる。ガスプールには不活性ガスを流通させるので,耐熱性粒子が酸化することが少ないか,又は無いので炭素系等酸化し易い材料も使用することができる。
すなわち,一般的に溶融金属処理炉,容器,雰囲気炉,ノズル等の耐火物の原料として使用される材質であれば使用できる。
前記金属又は合金としては,個別の操業条件での最高温度を超える融点(例えば概ね800℃以上)以上の金属又は合金を使用することができ,具体的には比較的低コストで高融点である鉄系が最も好ましい。
1A 耐熱性粒子
2 ガスプール
3 ロングノズル本体(本体)
3-1 ロングノズル本体(接合部以外の材料)
3-2 ロングノズル本体(接合部付近の材料)
4 メタルケース
5 ガス導入部
6 ガス吐出口
7 下部ノズル
8 内孔
9 中心軸
10 下部ノズルとロングノズルの接合部
11 充填材
12 ガス吐出口に連通する経路としての孔
13 セラミックスシート又はシール材
14 不連続部分
15a ノズル本体上端面とその上部のメタルケースとの隙間
15b ガス導入口のノズルメタルケース付近の隙間
16 耐熱性粒子の流出防止用フィルター(金網,又は貫通孔若しくはスリット付き金属部品)
17 空間(ガスの流通経路)
17s 耐熱性粒子間の空間における内接円
18a 耐熱性粒子間の接点
18b 耐熱性粒子とガスプール内面(ノズル本体上端部の外周面)との接点
18c 耐熱性粒子とガスプール内面(メタルケースの内周面)との接点
Claims (10)
- ノズル本体上端部をメタルケースで囲繞しており,前記ノズル本体上端部の外周面と前記メタルケースの内周面との間にガスプールを備え,前記ノズル本体上端部が,取鍋の底部に設置された下部ノズル又はタンディッシュの下部に取り付けられた下部ノズルと接合される鋳造用ノズルにおいて,
前記ガスプールの少なくとも一部に,前記ノズル本体上端部の外周面と前記メタルケースの内周面とを架橋する部分を備えている,鋳造用ノズル。 - 前記の架橋する部分は鉄製の丸棒若しくは角棒又はこれらの組み合わせである,請求項1に記載の鋳造用ノズル。
- 前記の架橋する部分は縦方向に延在し,各架橋部分の一部又は全部が前記メタルケースに溶接されている,請求項2に記載の鋳造用ノズル。
- 前記の架橋する部分は耐熱性粒子の充填により形成されている,請求項1に記載の鋳造用ノズル。
- 前記耐熱性粒子は,相互に接着しておらず,かつ,ガスプール内のいずれの面とも接着していない状態でガスプール内に充填されている,請求項4に記載の鋳造用ノズル。
- 前記耐熱性粒子は,粒径が0.65mm以上である,請求項4又は請求項5に記載の鋳造用ノズル。
- 前記耐熱性粒子は,略球状又は略長球状である,請求項4から請求項6のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
- 前記耐熱性粒子は,無機物,又は鉄系金属若しくは銅系金属の中から選択するいずれか1以上の材料からなる,請求項4から請求項7のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
- 前記無機物は,アルミナ系,シリカ系,スピネル系,マグネシア系,ジルコニア若しくはジルコン系,Ca含有セメント系,炭素系,炭化物系,サイアロン系セラミクス又はガラス系の中から選択するいずれか1以上である,請求項8に記載の鋳造用ノズル。
- 前記ガスプールは,ガス導入口,ガス吐出口又はガス吐出口に連通する経路としての孔(以下,総称して「ガス導入口等」という。)を1つ以上備えており,前記ガス導入口等のガス流通方向に垂直な断面内の少なくともガスプール内面位置の最小寸法が,前記耐熱性粒子の最小粒径未満である,請求項4から請求項9のいずれかに記載の鋳造用ノズル。
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