JP7066442B2 - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDFInfo
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Description
(1)第1の樹脂、第2の樹脂、顔料(キナクリドン顔料)、及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する。
(2)第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体である。
(3)Aブロックは、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成される。
(4)Bブロックは、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成される。
(5)第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。
(6)寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力が、40mN/m以下である。
本発明のインクは、第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクである。第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体であり、顔料はキナクリドン顔料である。そして、第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。以下、本発明のインクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
本発明のインクは、顔料としてキナクリドン顔料を含有する。キナクリドン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ:48、49;C.I.ピグメントレッド:122、192、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19などを挙げることができる。2種以上のキナクリドン顔料の混晶を用いてもよい。上記のキナクリドン顔料のなかでも、キナクリドン顔料の混晶が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド202を含む混晶がさらに好ましい。
本発明のインクに用いる第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体である。Aブロック(芳香族ブロック)は、芳香環を有する単量体に由来するユニットで構成されるポリマーブロックである。芳香環を有する単量体としては、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレンなどを挙げることができる。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、Bブロック(酸ブロック)は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットで構成されるポリマーブロックである。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1の樹脂として用いるブロック共重合体は、従来一般的に用いられている重合方法にしたがって合成することができる。重合方法の具体例としては、リビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法などを挙げることができる。
GPCにより測定される第1の樹脂(ブロック共重合体)のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、2,000以上30,000以下であることが好ましい。第1の樹脂の数平均分子量が2,000未満であると、立体反発効果が小さくなるため、保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、第1の樹脂の数平均分子量が30,000超であると、親水性が低くなるため、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第1の樹脂の組成や分子量については、従来公知の方法により分析することができる。また、インクを遠心分離することなどにより抽出した成分を分析することで、第1の樹脂の組成や分子量を確認することができる。インクの状態でも第1の樹脂を解析することはできるが、インクから抽出した第1の樹脂を解析すると、測定精度を高めることができるために好ましい。例えば、インクを75,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して、樹脂を析出させる。析出した樹脂にクロロホルムを添加すると、ウレタン樹脂が溶解するので、不溶分を分取することによって第1の樹脂を抽出することができる。抽出した第1の樹脂を高温ガスクロマトグラフィー/質量分析計(高温GC/MS)を用いて分析することで、ブロック共重合体を構成しているユニットの種類などを確認することができる。
・カラム:Shodex KF-806Mの4連カラム(昭和電工製)
・移動相:テトラヒドロフラン(特級)
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料溶液の注入量:0.1mL
・検出器:RI(屈折率)
・ポリスチレン標準試料:PS-1及びPS-2(Polymer Laboratories製、分子量:7,500,000、2,560,000、841,700、377,400、320,000、210,500、148,000、96,000、59,500、50,400、28,500、20,650、10,850、5,460、2,930、1,300、580の17種)
本発明のインクに用いる第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。第2の樹脂の酸価が、第1の樹脂の酸価以上であると、第2の樹脂よりも第1の樹脂の方が記録媒体の表面上により多く残りやすくなるため、画像の光沢性が不十分になる。
ポリイソシアネートは、その分子構造中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。ウレタン樹脂に占める、ポリイソシアネートに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリオールは、その分子構造中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物である。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの酸基を有しないポリオール;酸基を有するポリオール;などを挙げることができる。また、ポリアミンは、その分子構造中に2以上の「アミノ基、イミノ基」を有する化合物である。ウレタン樹脂に占める、ポリオール及びポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などを挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイドなどを挙げることができる。アルキレンオキサイドと付加重合させるポリオール類としては、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4-ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などを挙げることができる。グリコール類としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体;などを挙げることができる。
酸基を有するポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などの酸基を有するポリオールを挙げることができる。酸基は、カルボン酸基であることが好ましい。カルボン酸基を有するポリオールとしては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。酸基を有するポリオールの酸基は塩型であってもよい。塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン;アンモニウムイオン、ジメチルアミンなどの有機アミンのカチオンなどを挙げることができる。汎用の酸基を有するポリオールの分子量は大きくても400程度であるので、酸基を有するポリオールに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。ウレタン樹脂の酸価は、例えば、酸基を有するポリオールの使用量によって調整することができる。
ポリアミンとしては、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミンなどの複数のヒドロキシ基を有するモノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの2官能ポリアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどの3官能以上のポリアミン;などを挙げることができる。便宜上、複数のヒドロキシ基と、1つの「アミノ基、イミノ基」を有する化合物も「ポリアミン」として列挙した。ポリアミンの分子量は大きくても400程度であるので、ポリアミンに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。ウレタン樹脂に占める、ポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以下であることが好ましく、5.0モル%以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂に占める、ポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、0.0モル%であってもよい。
ウレタン樹脂を合成する際には、架橋剤や鎖延長剤を用いることができる。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどから適宜に選択して用いることができる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
ウレタン樹脂は、従来の一般的なウレタン樹脂の合成方法にしたがって合成することができる。例えば、以下に示す方法にしたがってウレタン樹脂を合成することができる。ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、及び酸基を有するポリオールをイソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下の有機溶剤の存在下又は非存在下で反応させる。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成する。次いで、中和剤を用いて、合成したウレタンプレポリマー中のカルボン酸基やスルホン酸基などの酸性基を中和する。その後、酸性基を中和したウレタンプレポリマーを、鎖延長剤を含有する水溶液中に投入して反応させた後、系内に残存する有機溶剤を必要に応じて除去すれば、ウレタン樹脂を得ることができる。
第2の樹脂(ウレタン樹脂)の酸価は、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であると、親水性が低くなり、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、ウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g超であると、親水性が高くなり、ウレタン樹脂が顔料の粒子表面に吸着しにくくなることがある。このため、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
ウレタン樹脂の組成は、以下に示す方法により分析することができる。まず、インクからウレタン樹脂を抽出する方法について説明する。インクからウレタン樹脂を抽出するには、インクを80,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して、樹脂を析出させる。析出した樹脂にクロロホルムを添加すると、ウレタン樹脂が溶解するので、液相から第2の樹脂を抽出することができる。さらに、クロロホルム以外にも、顔料とブロック共重合体を溶解しないが、ウレタン樹脂は溶解するようなヘキサンなどのような有機溶剤を用いてもよい。インクの状態でもウレタン樹脂を解析することはできるが、インクから抽出したウレタン樹脂を解析すると、測定精度を高めることができるために好ましい。
ウレタン樹脂を重水素化ジメチルスルホキシド(重DMSO)に溶解し、プロトン核磁気共鳴法(1H-NMR)により分析する。そして、得られたピークの位置から、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンの種類を確認することができる。また、乾燥させたウレタン樹脂を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析することによっても、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンの種類を確認することができる。さらに、各ピークの積算値の比率から、組成比を算出することができる。
ウレタン樹脂中の、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合は、以下のようにして測定することができる。すなわち、重水素化ジメチルスルホキシドにウレタン樹脂を溶解させて測定用試料を調製する。そして、カーボン核磁気共鳴法(13C-NMR)により調製した試料を分析し、得られたウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合の割合を算出することができる。ただし、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの位置は、ウレタン樹脂の製造に用いた化合物の種類によって異なる。このため、ウレタン樹脂の合成に使用した化合物毎に、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のピークの位置を調べる必要がある。以下、その方法について説明する。
ウレタン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いて電位差滴定することにより、ウレタン樹脂の酸価を測定することができる。
GPCにより、ウレタン樹脂の重量平均分子量を測定することができる。後述の実施例では、THFに溶解したウレタン樹脂を測定用試料とし、前述の第1の樹脂(ブロック共重合体)の分子量を測定する条件と同様の条件にて測定した。
本発明のインクは、水を含む水性媒体を含有する水性インクである。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のインクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明のインクの、最大泡圧法により測定される寿命時間10m秒における動的表面張力は、40mN/m以下である。インクの動的表面張力が40mN/m超であると、記録媒体上でドットが広がりにくくなり、光沢性に優れた画像を記録することが困難になる。インクの動的表面張力は、浸透性の高い水溶性有機溶剤や、界面活性剤の量・種類を適宜選択することによって容易に制御することができる。寿命時間10m秒における動的表面張力は、30mN/m以上であることが好ましく、35mN/m以上であることがさらに好ましい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを窒素置換した後、ジメチルホルムアミド100.0部、及びペンタメチルジエチレントリアミン0.5部を入れた。表1に示す種類及び量の単量体1、及び重合開始剤(クロロエチルベンゼン)0.07部を入れ、撹拌しながら温度80℃まで加熱した。次いで、塩化銅(I)を加えて、単量体1に由来するユニットで構成されるブロック1を重合した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により経時的にブロック1の分子量をモニタリングし、所望の分子量となったところで表1に示す種類及び量の単量体2-1を入れた。GPCでブロック2-1の分子量をモニタリングし、所望の分子量となったところで表1に示す種類及び量の単量体2-2を入れた。その後も同様の手順で単量体2-3及び単量体3を入れて重合した。
αMSt:アルファメチルスチレン
BzMA:ベンジルメタクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
nBA:n-ブチルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
nBMA:n-ブチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
TMS-AA:トリメチルシリルアクリル酸
TMS-MAA:トリメチルシリルメタクリル酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意し、内部を窒素置換した。テトラヒドロフラン100.0部、スチレン10.4部、アクリル酸4.3部、n-ブチルアクリレート5.1部、及び重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.16部を入れ、撹拌しながら温度70℃まで加熱して重合した。アニオン性基の中和率がモル基準で80%となるように水酸化カリウム水溶液を加えた。さらに適量の水を加えて撹拌した後、減圧してテトラヒドロフランを除去し、適量の水を加えて、ランダム共重合体(固形分)の含有量が20.0%である、ランダム共重合体1を含む液体を得た。ランダム共重合体1の酸価は、上述した水酸化カリウムメタノール滴定液を用いた電位差滴定により測定した。また、数平均分子量は、上記のGPCを用いて測定した。酸価は169mgKOH/g、Mnは10,000、Mw/Mnは2.1であった。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意した。この4つ口フラスコに、表3に示す種類及び量のポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、ジブチル錫ジラウレート0.02部、及びメチルエチルケトン120.0部を入れた。そして、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた。次いで、表3に示す量のポリアミンを添加し、生成物が所定の重量平均分子量となるまで80℃で反応させて反応液を得た。得られた反応液を40℃まで冷却した後、イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加して液体を得た。加熱減圧して得られた液体からメチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂(固形分)の含有量が20.0%である、ウレタン樹脂1~17を含む液体をそれぞれ得た。得られたウレタン樹脂1~17は、いずれも水溶性であった。表3中の各成分の詳細を以下に示す。
PPG2000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)
PTMG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)
PC2000:ポリカーボネートポリオール(数平均分子量2,000)
PS2000:ポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
EDA:エチレンジアミン
以下に示す方法により、調製したウレタン樹脂の各種物性値を測定した。ウレタン樹脂を含む液体に塩酸を添加してウレタン樹脂を析出させた。40℃で1晩真空乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解して試料を調製した。そして、水酸化カリウム-メタノール滴定液を用いた電位差滴定によりウレタン樹脂の酸価を測定した。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定した。また、ウレタン樹脂を含む液体に塩酸を添加してウレタン樹脂を析出させた。乾燥させた樹脂を重DMSOに溶解して測定用試料を調製した。そして、13C-NMR(装置名「Avance500」、BRUKER Bio Spin製)により調製した試料を分析し、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの積算値を得た。得られた各積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合(モル%)を算出した(表3中、「ウレタン結合の割合(モル%)」と記載した)。
以下に示す固溶体顔料及び樹脂分散剤を用いて顔料分散液1~7を調製した。
・固溶体顔料:C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体、商品名「クロモフタルジェットマゼンタ2BC」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製
・樹脂分散剤:酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸ランダム共重合体を、その酸価と等モル量の10%水酸化カリウム水溶液で中和した樹脂
固溶体顔料10.0部、樹脂分散剤(固形分)3.0部、及び水87.0部を混合し、サンドグラインダーで1時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。次いで、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1を調製した。顔料分散液1中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
固溶体顔料10.0部、ランダム共重合体1を含む液体15.0部、及び水75.0部を用いたこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を得た。顔料分散液2中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
固溶体顔料10.0部、ウレタン樹脂1を含む液体15.0部、及び水75.0部を用いたこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を得た。顔料分散液3中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液4を得た。顔料分散液4中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液5を得た。顔料分散液5中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド19に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液6を得た。顔料分散液6の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4-アミノ-1,2-ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、C.I.ピグメントレッド122 6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、得られた粒子を十分に水洗した。水洗した粒子を110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に顔料の含有量が10.0%となるように水を添加し、C.I.ピグメントレッド122の粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合した自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液7を調製した。
顔料の種類を固溶体顔料からC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液8を得た。顔料分散液8中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
顔料の種類を固溶体顔料からC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液9を得た。顔料分散液9中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
表4-1~4-6の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。表4-1~4-6中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)の商品名である。動的表面張力γ10は、動的表面張力計(商品名「BUBLE PRESSURE TENSIOMETER BP-2」、KRUSS製)を使用し、25℃の条件下、最大泡圧法により測定した。
上記で得られたインクを用いて、以下に示す各評価を行った。本発明においては、以下に示す評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5に示す。
上記で得られたインクの粘度と、インク中の顔料の体積平均粒子径を測定した。インクの粘度は、E型粘度計(商品名「RE-80L」、TOKI製)を使用し、温度25℃、50rpmの条件で測定した。顔料の体積平均粒子径は、濃厚系粒径アナライザー(商品名「FPAR-1000」、大塚電子製)を使用して測定した。各インクを密閉容器に入れ、60℃のオーブン中で2ヶ月間保存した。インクを常温に戻した後、インクの粘度と、インク中の顔料の体積平均粒子径を測定した。保存前後のインクの粘度と顔料の体積平均粒子径の上昇率を算出し、以下に表す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
A:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が1%以下であった。
B:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が1%超5%以下であった。
C:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が5%超であった。
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro10」、キヤノン製)にセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が4.0ng±5%であるインク滴を4滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。このインクジェット記録装置を使用し、光沢紙(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL-101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、2cm×2cmのベタ画像を記録して記録物を得た。記録の1日後に、10cm間隔で配置した2本の蛍光灯を観察光源として使用し、2m離れた位置から画像に対して蛍光灯を投影した。画像に投影された蛍光灯の形状を、照明角度45度、観察角度45度の条件下、目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。
A:投影された2本の蛍光灯の境目がわかり、エッジ部分にぼやけが認められなかった。
B:投影された2本の蛍光灯の境目及びエッジ部分はわかったが、エッジ部分が若干ぼやけていた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
Claims (21)
- 第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び前記顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクであって、
前記第1の樹脂が、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成されるAブロックと、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成されるBブロックと、を有する水溶性のブロック共重合体であり、
前記第2の樹脂が、その酸価が前記第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂であり、
前記ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニットと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有しないポリオールに由来するユニットと、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びジメチロール酪酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有するポリオールに由来するユニットと、分子量400以下の2官能ポリアミンに由来するユニットと、を有し、
前記顔料が、キナクリドン顔料であり、
寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以下であることを特徴とする水性インク。 - 前記脂肪族ポリイソシアネートが、環状構造を有するポリイソシアネートである請求項1に記載の水性インク。
- 前記脂肪族ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートであり、
前記酸基を有しないポリオールが、ポリプロピレングリコールであり、
前記酸基を有するポリオールが、ジメチロールプロピオン酸であり、
前記2官能ポリアミンが、エチレンジアミンである請求項1に記載の水性インク。 - 前記第1の樹脂に占める前記Aブロックの割合(質量%)が、前記第1の樹脂全質量を基準として、20.0質量%以上80.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第1の樹脂に占める前記Bブロックの割合(質量%)が、前記第1の樹脂全質量を基準として、8.0質量%以上30.0質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第1の樹脂の数平均分子量が、2,000以上30,000以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第1の樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上0.50倍以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第2の樹脂の含有量(質量%)が、前記第1の樹脂の含有量(質量%)よりも多い請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第2の樹脂の酸価が、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第2の樹脂の重量平均分子量が、5,000以上20,000以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第2の樹脂中のウレタン結合と前記2官能ポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合が、90.0モル%以上99.0モル%以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水性インク。
- 寿命時間10m秒における動的表面張力が、30mN/m以上である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第1の樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である請求項1乃至12のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第1の樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.01質量%以上5.0質量%以下である請求項1乃至13のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記第2の樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記キナクリドン顔料が、固溶体である請求項1乃至15のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1乃至16のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記樹脂分散剤が、水溶性のアクリル樹脂である請求項1乃至17のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記樹脂分散剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1乃至18のいずれか1項に記載の水性インク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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