JP2018150518A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】保存安定性に優れているとともに、光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供する。【解決手段】第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクである。第1の樹脂が、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成されるAブロックと、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成されるBブロックと、を有する水溶性のブロック共重合体であり、第2の樹脂が、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂であり、顔料が、キナクリドン顔料であり、寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法に用いるインクに対しては、堅牢性(光、オゾンガス、水などへの耐性)に優れた画像を記録可能であることが要求されている。このため、顔料を色材として用いた水性インクが用いられる機会が増加している。また、顔料を用いた水性インクに対しては、銀塩写真に匹敵する高品位な画像を記録可能であることなども要求されている。しかし、顔料が粒子の状態で水性媒体中に含有されている顔料インクは、染料が溶解した状態で水性媒体中に含有されている染料インクと比べて、記録される画像の光沢性などの画像特性が低い場合がある。このため、記録される画像の特性を改良すべく、各種の樹脂を添加した顔料インクがこれまでに提案されている。
例えば、顔料、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂を含有するインクジェット用のインク組成物が提案されている(特許文献1及び2)。また、顔料、ポリウレタンバインダーポリマー、及びベンジルメタクリレート−アクリル酸コポリマーを含有する、動的表面張力を特定の範囲に制御したインクジェット用のインクが提案されている(特許文献3)。
特開2006−070123号公報 特開2012−072357号公報 特表2011−510108号公報
本発明者らは、特許文献1〜3で提案された各種の樹脂を含有する従来のインクについて検討した。その結果、従来のインクを用いると、確かに光沢性の良好な画像を記録できることがわかった。しかし、顔料のなかでもキナクリドン顔料を色材として用いると、インクの保存安定性が低下するといった課題が生ずる場合があることが判明した。
したがって、本発明の目的は、保存安定性に優れているとともに、光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び前記顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクであって、前記第1の樹脂が、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成されるAブロックと、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成されるBブロックと、を有する水溶性のブロック共重合体であり、前記第2の樹脂が、その酸価が前記第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂であり、前記顔料が、キナクリドン顔料であり、寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以下であることを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、保存安定性に優れているとともに、光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。樹脂の「ユニット」とは、1の単量体に由来する繰り返し単位を意味する。
最大泡圧法により測定される、寿命時間がごく短い時点での動的表面張力を低くすると、インクが付与された記録媒体においてドットが広がりやすくなり、画像の光沢性を向上させることができる。このため、本発明においては、最大泡圧法により測定される寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力を40mN/m以下に設定した。ごく短い寿命時間におけるインクの動的表面張力は、浸透性の高い水溶性有機溶剤や界面活性剤を適宜選択してインクに含有させることで調整することができる。
検討の結果、記録される画像の光沢性向上のために、ごく短い寿命時間における動的表面張力を低下させたインクの保存安定性は、選択する顔料の種類によって低下することがわかった。この理由については以下のように考えられる。10m秒というごく短い寿命時間において動的表面張力が低いインクは、液体の動きが大きい状態であっても、界面へ配向しやすい成分を含有する必要がある。このため、界面への配向速度が大きい成分(浸透性の高い水溶性有機溶剤、界面活性剤)を含有する。キナクリドン顔料は、有機顔料のなかでも疎水性が比較的高い顔料である。このため、動的表面張力が低いインクにキナクリドン顔料を用いると、上記のような水溶性有機溶剤や界面活性剤が顔料の粒子表面に吸着しやすくなるとともに、顔料に吸着していた樹脂分散剤が脱離しやすくなる。その結果、キナクリドン顔料を色材として含有する、動的表面張力が低いインクは、保存安定性が低下してしまうと考えられる。
このような状況の下、本発明者らは、画像の光沢性とインクの保存安定性を両立しうる、キナクリドン顔料を色材として用いた水性インクの構成について検討した。その結果、以下に示す(1)〜(6)の要件を満たすことで、キナクリドン顔料を色材として用いながらも、保存安定性に優れているとともに、光沢性に優れた画像を記録可能なインクが得られることを見出した。
(1)第1の樹脂、第2の樹脂、顔料(キナクリドン顔料)、及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する。
(2)第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体である。
(3)Aブロックは、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成される。
(4)Bブロックは、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成される。
(5)第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。
(6)寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力が、40mN/m以下である。
(1)〜(6)の要件を満たすことで、上記のような効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推測している。第1の樹脂及び第2の樹脂が水溶性であると、インク中において樹脂鎖の立体的な自由度が高く、キナクリドン顔料の粒子表面に接近しやすい。さらに、第1の樹脂中のAブロックは、疎水性相互作用とπ−π相互作用により、キナクリドン顔料の粒子表面に吸着しやすい。また、第1の樹脂中のBブロックは、静電気的反発力により顔料の分散安定性を高めることができる。このため、特定のAブロック及びBブロックを有する第1の樹脂を含有させることで、動的表面張力が低くても、インクの保存安定性を高めることができると考えられる。また、第2の樹脂(ウレタン樹脂)は、疎水性相互作用と水素結合による相互作用によりキナクリドン顔料の粒子表面に吸着しやすく、立体反発効果により顔料の分散安定性を高めることができる。このため、第2の樹脂を含有させることで、動的表面張力が低くても、インクの保存安定性を高めることができると考えられる。
さらに、第2の樹脂(ウレタン樹脂)は第1の樹脂よりも酸価が低く、親水性がより低いため、第1の樹脂よりも記録媒体の表面上に残りやすい。そして、ウレタン樹脂は表面エネルギーが高く、濡れ性の良好な樹脂であるため、記録媒体の表面上により多く残ることでドットが互いに濡れやすくなる。これに加えて、寿命時間10m秒における動的表面張力が40mN/m以下であることも相まって、光沢紙などの記録媒体に形成される顔料層(画像)の表面が平滑になりやすく、光沢性に優れた画像を得ることができると考えられる。
<インク>
本発明のインクは、第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクである。第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体であり、顔料はキナクリドン顔料である。そして、第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。以下、本発明のインクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
まず、本発明における「水溶性の樹脂」とは、インクを構成する水性媒体に溶解しうる樹脂をいい、具体的には、動的光散乱法で測定した際に粒子径を有しない状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。樹脂が「水溶性」であるか「水分散性」であるかについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されなければ、その樹脂は「水溶性」であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
(顔料及び樹脂分散剤)
本発明のインクは、顔料としてキナクリドン顔料を含有する。キナクリドン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ:48、49;C.I.ピグメントレッド:122、192、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19などを挙げることができる。2種以上のキナクリドン顔料の混晶を用いてもよい。上記のキナクリドン顔料のなかでも、キナクリドン顔料の混晶が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド202を含む混晶がさらに好ましい。
混晶は、固溶体とも呼ばれ、2種以上の顔料が相互に溶け合って全体として均一な固相を形成しているものであり、2種以上の顔料を単純に混合したものとは異なる。2種以上のキナクリドン顔料の混晶の市販品としては、以下商品名で、CROMOPHTAL Jet 2BC(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド202の固溶体顔料)、Cinquasia Magenta D 4500 J、Cinquasia Magenta D 4400(以上、BASF製);Inkjet Magenta E7B LV 3958(クラリアント製)などを挙げることができる。
インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、2.0質量%以上8.0質量%以下であることが特に好ましい。また、調色などの目的のために、色材として染料を併用してもよい。
顔料の分散方式は、樹脂分散剤を用いて分散させた樹脂分散方式である。すなわち、本発明のインクは、顔料及び顔料を分散させる樹脂分散剤を含む樹脂分散顔料を含有する。これに対して、アニオン性基などが顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料を用いると、顔料と樹脂を記録媒体の表面上に均一に残すことができず、画像の光沢性が不十分となる。樹脂分散顔料としては、顔料の粒子表面に樹脂が物理吸着して分散したものや、顔料の粒子表面の少なくとも一部を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。
樹脂分散剤は、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。また、樹脂分散剤は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットや、(メタ)アクリルエステルに由来するユニットなどのアクリル成分を少なくとも有するアクリル樹脂であることが好ましく、水溶性のアクリル樹脂であることがさらに好ましい。特に、ランダム共重合体の形態である、水溶性のアクリル樹脂が好適である。また、樹脂分散剤は、後述する第1の樹脂及び第2の樹脂のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。なお、以下の記載における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
親水性ユニットは、酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性モノマー、及びこれらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有するモノマーなどを挙げることができる。アニオン性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
樹脂分散剤は、酸価を有する樹脂であることが好ましい。このため、上記のアニオン性モノマーに由来するユニットを親水性ユニットとして含む樹脂を樹脂分散剤として用いることが好ましい。樹脂は、通常、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性となる。
疎水性ユニットは、酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
インク中の樹脂分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(第1の樹脂)
本発明のインクに用いる第1の樹脂は、Aブロックと、Bブロックとを有する水溶性のブロック共重合体である。Aブロック(芳香族ブロック)は、芳香環を有する単量体に由来するユニットで構成されるポリマーブロックである。芳香環を有する単量体としては、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレンなどを挙げることができる。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、Bブロック(酸ブロック)は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットで構成されるポリマーブロックである。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
インク中の第1の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下であることがさらに好ましい。インク中の第1の樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上0.50倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.02倍未満であると、顔料に吸着する第1の樹脂の量が少なくなり、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、上記の質量比率が0.50倍超であると、第1の樹脂が記録媒体の表面上に残りやすくなり、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
Aブロックには、1種類の単量体に由来するユニットが、Aブロック全質量を基準として95.0質量%以上含まれていることが好ましく、1種類の単量体に由来するユニットのみで構成されていることがさらに好ましい。また、Bブロックには、1種類の単量体に由来するユニットが、Bブロック全質量を基準として95.0質量%以上含まれていることが好ましく、1種類の単量体に由来するユニットのみで構成されていることがさらに好ましい。
第1の樹脂に占めるAブロックの割合(質量%)は、第1の樹脂全質量を基準として、20.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。Aブロックの割合が20.0質量%未満であると、ブロック共重合体中の疎水性部位の割合が少ないため、ブロック共重合体が顔料に吸着しにくくなる。このため、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、Aブロックの割合が80.0質量%超であると、ブロック共重合体中の疎水性部位の割合が多いため、疎水性相互作用による樹脂同士の凝集体が形成されやすくなり、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第1の樹脂に占めるBブロックの割合(質量%)は、第1の樹脂全質量を基準として、8.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。Bブロックの割合が8.0質量%未満であると、ブロック共重合体中の親水性部位の割合が少ないために親水性が低下しやすく、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、Bブロックの割合が30.0質量%超であると、ブロック共重合体中の親水性部位の割合が多いため、ブロック共重合体が顔料に吸着しにくくなる。このため、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第1の樹脂は、Aブロック及びBブロック以外にも、Aブロック及びBブロックを構成する単量体以外の単量体(その他の単量体)に由来するユニットにより構成される1以上のブロック(その他のブロック)を有してもよい。また、その他のブロックを有する場合、各ブロックの配列順は特に限定されない。例えば、3種のブロックを有する共重合体である場合は、その他のブロック−Aブロック−Bブロック、Aブロック−その他のブロック−Bブロック、Aブロック−Bブロック−その他のブロック、の順序を挙げることができる。これらのなかでも、Aブロック−その他のブロック−Bブロックの順序である場合が好ましい。4種以上のブロックを有する共重合体である場合、任意の順序とすることができる。第1の樹脂に占めるその他のブロックの割合(質量%)は、第1の樹脂全質量を基準として、1.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
その他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリル酸アミド類;N−ビニルアセトアミドなどの含窒素ビニル化合物類などを挙げることができる。なかでも、その他のブロックとして、アクリル酸エステル(芳香族基も酸基も有しないもの)に由来するユニットにより構成されるブロックが好ましい。
[合成方法]
第1の樹脂として用いるブロック共重合体は、従来一般的に用いられている重合方法にしたがって合成することができる。重合方法の具体例としては、リビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法などを挙げることができる。
[特性]
GPCにより測定される第1の樹脂(ブロック共重合体)のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、2,000以上30,000以下であることが好ましい。第1の樹脂の数平均分子量が2,000未満であると、立体反発効果が小さくなるため、保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、第1の樹脂の数平均分子量が30,000超であると、親水性が低くなるため、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
分子量MのユニットがN個存在する高分子化合物の数平均分子量Mnは、Mn=ΣMii/ΣNiの式で定義される。これは分子の個数についての平均であり、数平均分子量は高分子化合物に含まれる低分子ユニットの影響を強く受ける。これに対して、高分子化合物の平均分子量への寄与を重視した重量平均分子量Mwは、重量分率による分子量の平均であり、Mw=ΣMi 2i/ΣMiiの式で定義される。
第1の樹脂の分子量分布の値(Mw/Mnの値)は、1.0≦「Mw/Mn」≦2.0であることが好ましい。Mwは、GPCにより測定される第1の樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量を意味し、Mnは、GPCにより測定される第1の樹脂のポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。Mw/Mnの値は、原理的に1.0以上である。Mw/Mnの値が1.0に近づくほど単分散であることを意味する。Mw/Mnの値が2.0超であると、高分子量や低分子量のブロック共重合体の混在割合が多いため、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第1の樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。第1の樹脂の酸価が50mgKOH/g未満であると、親水性が低いため、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、第1の樹脂の酸価が250mgKOH/g超であると、親水性が高いため、第1の樹脂が顔料の粒子表面に吸着しにくくなる。これにより、保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
[分析方法]
第1の樹脂の組成や分子量については、従来公知の方法により分析することができる。また、インクを遠心分離することなどにより抽出した成分を分析することで、第1の樹脂の組成や分子量を確認することができる。インクの状態でも第1の樹脂を解析することはできるが、インクから抽出した第1の樹脂を解析すると、測定精度を高めることができるために好ましい。例えば、インクを75,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して、樹脂を析出させる。析出した樹脂にクロロホルムを添加すると、ウレタン樹脂が溶解するので、不溶分を分取することによって第1の樹脂を抽出することができる。抽出した第1の樹脂を高温ガスクロマトグラフィー/質量分析計(高温GC/MS)を用いて分析することで、ブロック共重合体を構成しているユニットの種類などを確認することができる。
また、抽出した第1の樹脂を核磁気共鳴法(13C−NMR)やフーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によって定量的に分析することで、分子量などを確認することができる。さらに、第1の樹脂の酸価は滴定法により測定することができる。後述する実施例では、樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いた電位差滴定法により測定した。第1の樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。GPCの測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Alliance GPC 2695(Waters製)
・カラム:Shodex KF−806Mの4連カラム(昭和電工製)
・移動相:テトラヒドロフラン(特級)
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料溶液の注入量:0.1mL
・検出器:RI(屈折率)
・ポリスチレン標準試料:PS−1及びPS−2(Polymer Laboratories製、分子量:7,500,000、2,560,000、841,700、377,400、320,000、210,500、148,000、96,000、59,500、50,400、28,500、20,650、10,850、5,460、2,930、1,300、580の17種)
(第2の樹脂)
本発明のインクに用いる第2の樹脂は、その酸価が第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂である。第2の樹脂の酸価が、第1の樹脂の酸価以上であると、第2の樹脂よりも第1の樹脂の方が記録媒体の表面上により多く残りやすくなるため、画像の光沢性が不十分になる。
インク中の第2の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。インク中の第2の樹脂の含有量(質量%)は、第1の樹脂の含有量(質量%)よりも多いことが好ましい。第2の樹脂の含有量が、第1の樹脂の含有量以下であると、記録媒体の表面上に十分な量の第2の樹脂が残りにくくなり、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。また、インク中の第2の樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上1.00倍以下であることが好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンなどに由来するユニットを有するウレタン樹脂を用いることができる。
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、その分子構造中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。ウレタン樹脂に占める、ポリイソシアネートに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;などを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
上記のポリイソシアネートのなかでも、環状構造を有するポリイソシアネートを用いることが好ましい。また、環状構造を有するポリイソシアネートのなかでも、イソホロンジイソシアネートを用いることがさらに好ましい。
[ポリオール、ポリアミン]
ポリオールは、その分子構造中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物である。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの酸基を有しないポリオール;酸基を有するポリオール;などを挙げることができる。また、ポリアミンは、その分子構造中に2以上の「アミノ基、イミノ基」を有する化合物である。ウレタン樹脂に占める、ポリオール及びポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。
〔酸基を有しないポリオール〕
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などを挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどを挙げることができる。アルキレンオキサイドと付加重合させるポリオール類としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などを挙げることができる。グリコール類としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体;などを挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、酸エステルなどを挙げることができる。酸エステルを構成する酸成分としては、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;これらの芳香族ジカルボン酸の水素添加物などの脂環族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などを挙げることができる。これらの無水物、塩、誘導体(アルキルエステル、酸ハライド)なども酸成分として用いることができる。また、酸成分とエステルを形成する成分としては、ジオール、トリオールなどのポリオール類;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などを挙げることができる。ポリオール類やグリコール類としては、上記のポリエーテルポリオールを構成する成分として例示したものを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、公知の方法で製造されるポリカーボネートポリオールを用いることができる。具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのアルカンジオール系ポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。また、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートなどのカーボネート成分やホスゲンと、脂肪族ジオール成分と、を反応させて得られるポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。
ウレタン樹脂中の、ポリオールに由来するユニットの合計量に占める、酸基を有しないポリオールに由来するユニットの割合(モル%)は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、5.0モル%以上50.0モル%以下であることが好ましく、10.0モル%以上30.0モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリオールとして、ポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。すなわち、第2の樹脂は、ポリプロピレングリコールに由来するユニットを有するウレタン樹脂であることが好ましい。ポリプロピレングリコールに由来するユニットを有するウレタン樹脂は親水性が高いため、光沢性により優れた画像を記録することができる。
〔酸基を有するポリオール〕
酸基を有するポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などの酸基を有するポリオールを挙げることができる。酸基は、カルボン酸基であることが好ましい。カルボン酸基を有するポリオールとしては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。酸基を有するポリオールの酸基は塩型であってもよい。塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン;アンモニウムイオン、ジメチルアミンなどの有機アミンのカチオンなどを挙げることができる。汎用の酸基を有するポリオールの分子量は大きくても400程度であるので、酸基を有するポリオールに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。ウレタン樹脂の酸価は、例えば、酸基を有するポリオールの使用量によって調整することができる。
ウレタン樹脂中の、ポリオールに由来するユニットの合計量に占める、酸基を有するポリオールに由来するユニットの割合(モル%)は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、30.0モル%以上90.0モル%以下であることが好ましく、50.0モル%以上90.0モル%以下であることがさらに好ましい。
〔ポリアミン〕
ポリアミンとしては、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミンなどの複数のヒドロキシ基を有するモノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの2官能ポリアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどの3官能以上のポリアミン;などを挙げることができる。便宜上、複数のヒドロキシ基と、1つの「アミノ基、イミノ基」を有する化合物も「ポリアミン」として列挙した。ポリアミンの分子量は大きくても400程度であるので、ポリアミンに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。ウレタン樹脂に占める、ポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以下であることが好ましく、5.0モル%以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂に占める、ポリアミンに由来するユニットの割合(モル%)は、0.0モル%であってもよい。
第2の樹脂(ウレタン樹脂)は、ポリアミンに由来するユニットを有し、第2の樹脂中のウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合が、90.0モル%以上99.0モル%以下であることが好ましい。ウレタン結合の割合が90.0モル%未満であると、ウレタン樹脂の水素結合相互作用が強くなって凝集性が高くなる。このため、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、ウレタン結合の割合が99.0モル%超であると、ウレタン樹脂の水素結合相互作用が弱くなり、ウレタン樹脂が顔料の粒子表面に吸着しにくくなることがある。このため、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第2の樹脂中のウレア結合の合計に占める、ポリアミンに由来するウレア結合の割合は、95.0モル%以上であることが好ましく、100.0モル%であることがさらに好ましい。ウレア結合は、ポリイソシアネートとポリアミンとの反応の他に、ポリイソシアネートと水との反応によっても生じうる。つまり、第2の樹脂はポリアミンに由来するウレア結合はごく少量有していてもよいが、水に由来するウレア結合はできる限り低減するのが好ましいことを意味する。
[架橋剤、鎖延長剤]
ウレタン樹脂を合成する際には、架橋剤や鎖延長剤を用いることができる。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどから適宜に選択して用いることができる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
[合成方法]
ウレタン樹脂は、従来の一般的なウレタン樹脂の合成方法にしたがって合成することができる。例えば、以下に示す方法にしたがってウレタン樹脂を合成することができる。ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、及び酸基を有するポリオールをイソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下の有機溶剤の存在下又は非存在下で反応させる。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成する。次いで、中和剤を用いて、合成したウレタンプレポリマー中のカルボン酸基やスルホン酸基などの酸性基を中和する。その後、酸性基を中和したウレタンプレポリマーを、鎖延長剤を含有する水溶液中に投入して反応させた後、系内に残存する有機溶剤を必要に応じて除去すれば、ウレタン樹脂を得ることができる。
[特性]
第2の樹脂(ウレタン樹脂)の酸価は、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であると、親水性が低くなり、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、ウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g超であると、親水性が高くなり、ウレタン樹脂が顔料の粒子表面に吸着しにくくなることがある。このため、インクの保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
第2の樹脂(ウレタン樹脂)の重量平均分子量は、5,000以上20,000以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、顔料の粒子表面に吸着したウレタン樹脂の立体反発効果が小さくなり、保存安定性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。一方、ウレタン樹脂の重量平均分子量が20,000超であると、ウレタン樹脂の親水性が低下し、画像の光沢性を向上させる効果がやや低くなる場合がある。
[分析方法]
ウレタン樹脂の組成は、以下に示す方法により分析することができる。まず、インクからウレタン樹脂を抽出する方法について説明する。インクからウレタン樹脂を抽出するには、インクを80,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して、樹脂を析出させる。析出した樹脂にクロロホルムを添加すると、ウレタン樹脂が溶解するので、液相から第2の樹脂を抽出することができる。さらに、クロロホルム以外にも、顔料とブロック共重合体を溶解しないが、ウレタン樹脂は溶解するようなヘキサンなどのような有機溶剤を用いてもよい。インクの状態でもウレタン樹脂を解析することはできるが、インクから抽出したウレタン樹脂を解析すると、測定精度を高めることができるために好ましい。
(1)ウレタン樹脂の組成
ウレタン樹脂を重水素化ジメチルスルホキシド(重DMSO)に溶解し、プロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)により分析する。そして、得られたピークの位置から、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンの種類を確認することができる。また、乾燥させたウレタン樹脂を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析することによっても、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンの種類を確認することができる。さらに、各ピークの積算値の比率から、組成比を算出することができる。
(2)ウレタン結合の割合
ウレタン樹脂中の、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合は、以下のようにして測定することができる。すなわち、重水素化ジメチルスルホキシドにウレタン樹脂を溶解させて測定用試料を調製する。そして、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により調製した試料を分析し、得られたウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合の割合を算出することができる。ただし、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの位置は、ウレタン樹脂の製造に用いた化合物の種類によって異なる。このため、ウレタン樹脂の合成に使用した化合物毎に、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のピークの位置を調べる必要がある。以下、その方法について説明する。
まず、ウレタン樹脂の原料となる化合物(ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミン)を用意する。そして、(i)ポリイソシアネートとポリオールの反応物、(ii)ポリイソシアネートとポリアミンの反応物、(iii)ポリイソシアネートと酸基を有するポリオールの反応物、(iv)ポリイソシアネートと水の反応物それぞれ調製する。調製した反応物を乾燥したものを重DMSOに溶解させ、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により分析する。
上記の例の場合、(i)の反応物と(iii)の反応物からウレタン結合の化学シフトを確認し、(ii)の反応物と(iv)の反応物からポリアミンに由来するウレア結合の化学シフトを確認する。確認したそれぞれの化学シフトから、ウレタン結合のピークとウレア結合のピークを特定し、これらのピークの積算値の比から、ウレタン樹脂中のウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合を算出する。例えば、イソホロンジイソシアネートを用いて得たウレタン樹脂の場合、測定条件やウレタン樹脂の組成により多少のずれは生ずるが、ウレタン結合のピークは155ppm付近に検出される。また、ポリアミンに由来するウレア結合のピークは159ppm付近に検出される。水に由来するウレア結合のピークは、158ppm付近に検出される。
(3)ウレタン樹脂の酸価
ウレタン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いて電位差滴定することにより、ウレタン樹脂の酸価を測定することができる。
(4)ウレタン樹脂の重量平均分子量
GPCにより、ウレタン樹脂の重量平均分子量を測定することができる。後述の実施例では、THFに溶解したウレタン樹脂を測定用試料とし、前述の第1の樹脂(ブロック共重合体)の分子量を測定する条件と同様の条件にて測定した。
(水性媒体)
本発明のインクは、水を含む水性媒体を含有する水性インクである。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
水性媒体には、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、1価アルコール、多価アルコール、(ポリ)アルキレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
本発明のインクの、最大泡圧法により測定される寿命時間10m秒における動的表面張力は、40mN/m以下である。インクの動的表面張力が40mN/m超であると、記録媒体上でドットが広がりにくくなり、光沢性に優れた画像を記録することが困難になる。インクの動的表面張力は、浸透性の高い水溶性有機溶剤や、界面活性剤の量・種類を適宜選択することによって容易に制御することができる。寿命時間10m秒における動的表面張力は、30mN/m以上であることが好ましく、35mN/m以上であることがさらに好ましい。
最大泡圧法とは、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端に発生させた気泡を放出するために必要な最大圧力を測定して、この最大圧力から液体の表面張力を求める方法であり、プローブの先端に連続的に気泡を発生させながら最大圧力を測定する。この際、プローブの先端に新たな気泡の表面が発生した時点から、最大泡圧(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)に達するまでの時間を、寿命時間と呼ぶ。インクの動的表面張力は、25℃において測定した値である。
25℃におけるインクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。25℃におけるインクの静的表面張力は、30mN/m以上45mN/m以下であることが好ましく、35mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。本発明のインクを用いて記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよいが、普通紙や、コート層を有する記録媒体(光沢紙やアート紙)などの、浸透性を有するような、紙ベースの記録媒体を用いることが好ましい。なかでも、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体を用いることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<ブロック共重合体の合成>
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを窒素置換した後、ジメチルホルムアミド100.0部、及びペンタメチルジエチレントリアミン0.5部を入れた。表1に示す種類及び量の単量体1、及び重合開始剤(クロロエチルベンゼン)0.07部を入れ、撹拌しながら温度80℃まで加熱した。次いで、塩化銅(I)を加えて、単量体1に由来するユニットで構成されるブロック1を重合した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により経時的にブロック1の分子量をモニタリングし、所望の分子量となったところで表1に示す種類及び量の単量体2−1を入れた。GPCでブロック2−1の分子量をモニタリングし、所望の分子量となったところで表1に示す種類及び量の単量体2−2を入れた。その後も同様の手順で単量体2−3及び単量体3を入れて重合した。
反応終了後、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を加え、単量体3に由来するユニットのカルボン酸エステル基を加水分解してカルボン酸型に変換した。さらに、35.0%塩酸2.8部を加え、25℃で10分間撹拌した後、ろ過して樹脂を分取した。純水で3回洗浄した後、乾燥してブロック共重合体1〜30を得た。得られたブロック共重合体1〜30は、いずれも水溶性であった。
ブロック共重合体の合成条件を表1に示す。また、ブロック共重合体の特性を表2に示す。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、示差屈折率検出器を備えたGPC(東ソー製)で測定した。また、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)測定により、カルボン酸基の化学シフトにピークが存在することが確認されたことから、TMS−AA及びTMS−MAAが加水分解されてカルボン酸基に変換されていると判断した。1H−NMR測定により各ブロックを構成するユニットの構成比率を分析した。酸価は、ブロック共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液を滴定試薬として、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して測定した。
ブロック共重合体をテトラヒドロフランに溶解させた溶液に、ブロック共重合体のアニオン性基の中和率がモル基準で80%となるように水酸化カリウム水溶液を加えた。さらに適量の水を加えて撹拌した後、減圧してテトラヒドロフランを除去した。適量の水を加えて、ブロック共重合体(固形分)の含有量が20.0%である、ブロック共重合体1〜30を含む液体をそれぞれ得た。表1及び2中の各成分の詳細を以下に示す。
St:スチレン
αMSt:アルファメチルスチレン
BzMA:ベンジルメタクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
nBA:n−ブチルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
TMS−AA:トリメチルシリルアクリル酸
TMS−MAA:トリメチルシリルメタクリル酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
Figure 2018150518
Figure 2018150518
<ランダム共重合体の合成>
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意し、内部を窒素置換した。テトラヒドロフラン100.0部、スチレン10.4部、アクリル酸4.3部、n−ブチルアクリレート5.1部、及び重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.16部を入れ、撹拌しながら温度70℃まで加熱して重合した。アニオン性基の中和率がモル基準で80%となるように水酸化カリウム水溶液を加えた。さらに適量の水を加えて撹拌した後、減圧してテトラヒドロフランを除去し、適量の水を加えて、ランダム共重合体(固形分)の含有量が20.0%である、ランダム共重合体1を含む液体を得た。ランダム共重合体1の酸価は、上述した水酸化カリウムメタノール滴定液を用いた電位差滴定により測定した。また、数平均分子量は、上記のGPCを用いて測定した。酸価は169mgKOH/g、Mnは10,000、Mw/Mnは2.1であった。
<ウレタン樹脂の合成>
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意した。この4つ口フラスコに、表3に示す種類及び量のポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、ジブチル錫ジラウレート0.02部、及びメチルエチルケトン120.0部を入れた。そして、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた。次いで、表3に示す量のポリアミンを添加し、生成物が所定の重量平均分子量となるまで80℃で反応させて反応液を得た。得られた反応液を40℃まで冷却した後、イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加して液体を得た。加熱減圧して得られた液体からメチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂(固形分)の含有量が20.0%である、ウレタン樹脂1〜17を含む液体をそれぞれ得た。得られたウレタン樹脂1〜17は、いずれも水溶性であった。表3中の各成分の詳細を以下に示す。
IPDI:イソホロンジイソシアネート
PPG2000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)
PTMG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)
PC2000:ポリカーボネートポリオール(数平均分子量2,000)
PS2000:ポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
EDA:エチレンジアミン
<ウレタン樹脂の特性>
以下に示す方法により、調製したウレタン樹脂の各種物性値を測定した。ウレタン樹脂を含む液体に塩酸を添加してウレタン樹脂を析出させた。40℃で1晩真空乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解して試料を調製した。そして、水酸化カリウム−メタノール滴定液を用いた電位差滴定によりウレタン樹脂の酸価を測定した。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定した。また、ウレタン樹脂を含む液体に塩酸を添加してウレタン樹脂を析出させた。乾燥させた樹脂を重DMSOに溶解して測定用試料を調製した。そして、13C−NMR(装置名「Avance500」、BRUKER Bio Spin製)により調製した試料を分析し、ウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合のそれぞれのピークの積算値を得た。得られた各積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合とポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合(モル%)を算出した(表3中、「ウレタン結合の割合(モル%)」と記載した)。
Figure 2018150518
<顔料分散液の調製>
以下に示す固溶体顔料及び樹脂分散剤を用いて顔料分散液1〜7を調製した。
・固溶体顔料:C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体、商品名「クロモフタルジェットマゼンタ2BC」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製
・樹脂分散剤:酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体を、その酸価と等モル量の10%水酸化カリウム水溶液で中和した樹脂
(顔料分散液1)
固溶体顔料10.0部、樹脂分散剤(固形分)3.0部、及び水87.0部を混合し、サンドグラインダーで1時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。次いで、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1を調製した。顔料分散液1中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液2)
固溶体顔料10.0部、ランダム共重合体1を含む液体15.0部、及び水75.0部を用いたこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を得た。顔料分散液2中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液3)
固溶体顔料10.0部、ウレタン樹脂1を含む液体15.0部、及び水75.0部を用いたこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を得た。顔料分散液3中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液4)
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液4を得た。顔料分散液4中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液5)
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液5を得た。顔料分散液5中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液6)
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド19に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液6を得た。顔料分散液6の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液7)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、C.I.ピグメントレッド122 6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、得られた粒子を十分に水洗した。水洗した粒子を110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に顔料の含有量が10.0%となるように水を添加し、C.I.ピグメントレッド122の粒子表面に−C63−(COOK)2基が結合した自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液7を調製した。
(顔料分散液8)
顔料の種類を固溶体顔料からC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液8を得た。顔料分散液8中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液9)
顔料の種類を固溶体顔料からC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液9を得た。顔料分散液9中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
<インクの調製>
表4−1〜4−6の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。表4−1〜4−6中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)の商品名である。動的表面張力γ10は、動的表面張力計(商品名「BUBLE PRESSURE TENSIOMETER BP−2」、KRUSS製)を使用し、25℃の条件下、最大泡圧法により測定した。
Figure 2018150518
Figure 2018150518
Figure 2018150518
Figure 2018150518
Figure 2018150518
Figure 2018150518
<評価>
上記で得られたインクを用いて、以下に示す各評価を行った。本発明においては、以下に示す評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5に示す。
(保存安定性)
上記で得られたインクの粘度と、インク中の顔料の体積平均粒子径を測定した。インクの粘度は、E型粘度計(商品名「RE−80L」、TOKI製)を使用し、温度25℃、50rpmの条件で測定した。顔料の体積平均粒子径は、濃厚系粒径アナライザー(商品名「FPAR−1000」、大塚電子製)を使用して測定した。各インクを密閉容器に入れ、60℃のオーブン中で2ヶ月間保存した。インクを常温に戻した後、インクの粘度と、インク中の顔料の体積平均粒子径を測定した。保存前後のインクの粘度と顔料の体積平均粒子径の上昇率を算出し、以下に表す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
A:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が1%以下であった。
B:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が1%超5%以下であった。
C:インクの粘度及び顔料の体積平均粒子径の上昇率が5%超であった。
(光沢性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro10」、キヤノン製)にセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が4.0ng±5%であるインク滴を4滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。このインクジェット記録装置を使用し、光沢紙(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL−101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、2cm×2cmのベタ画像を記録して記録物を得た。記録の1日後に、10cm間隔で配置した2本の蛍光灯を観察光源として使用し、2m離れた位置から画像に対して蛍光灯を投影した。画像に投影された蛍光灯の形状を、照明角度45度、観察角度45度の条件下、目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。
A:投影された2本の蛍光灯の境目がわかり、エッジ部分にぼやけが認められなかった。
B:投影された2本の蛍光灯の境目及びエッジ部分はわかったが、エッジ部分が若干ぼやけていた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
Figure 2018150518

Claims (12)

  1. 第1の樹脂、第2の樹脂、顔料、及び前記顔料を分散させる樹脂分散剤を含有する水性インクであって、
    前記第1の樹脂が、芳香環を有する単量体に由来するユニットから構成されるAブロックと、(メタ)アクリル酸に由来するユニットから構成されるBブロックと、を有する水溶性のブロック共重合体であり、
    前記第2の樹脂が、その酸価が前記第1の樹脂の酸価よりも低い水溶性のウレタン樹脂であり、
    前記顔料が、キナクリドン顔料であり、
    寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記第1の樹脂に占める前記Aブロックの割合(質量%)が、前記第1の樹脂全質量を基準として、20.0質量%以上80.0質量%以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記第1の樹脂に占める前記Bブロックの割合(質量%)が、前記第1の樹脂全質量を基準として、8.0質量%以上30.0質量%以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記第1の樹脂の数平均分子量が、2,000以上30,000以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. 前記第1の樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上0.50倍以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. 前記第2の樹脂の含有量(質量%)が、前記第1の樹脂の含有量(質量%)よりも多い請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
  7. 前記第2の樹脂の酸価が、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
  8. 前記第2の樹脂の重量平均分子量が、5,000以上20,000以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
  9. 前記第2の樹脂が、ポリプロピレングリコールに由来するユニットを有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インク。
  10. 前記第2の樹脂が、ポリアミンに由来するユニットを有し、
    前記第2の樹脂中のウレタン結合と前記ポリアミンに由来するウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合が、90.0モル%以上99.0モル%以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水性インク。
  11. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  12. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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