JP7065991B2 - 感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム - Google Patents

感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム Download PDF

Info

Publication number
JP7065991B2
JP7065991B2 JP2020546006A JP2020546006A JP7065991B2 JP 7065991 B2 JP7065991 B2 JP 7065991B2 JP 2020546006 A JP2020546006 A JP 2020546006A JP 2020546006 A JP2020546006 A JP 2020546006A JP 7065991 B2 JP7065991 B2 JP 7065991B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin layer
pattern
transfer material
layer
photosensitive resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020546006A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020054660A1 (ja
Inventor
一真 両角
悠樹 豊嶋
慎一 漢那
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Publication of JPWO2020054660A1 publication Critical patent/JPWO2020054660A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7065991B2 publication Critical patent/JP7065991B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03FPHOTOMECHANICAL PRODUCTION OF TEXTURED OR PATTERNED SURFACES, e.g. FOR PRINTING, FOR PROCESSING OF SEMICONDUCTOR DEVICES; MATERIALS THEREFOR; ORIGINALS THEREFOR; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED THEREFOR
    • G03F7/00Photomechanical, e.g. photolithographic, production of textured or patterned surfaces, e.g. printing surfaces; Materials therefor, e.g. comprising photoresists; Apparatus specially adapted therefor
    • G03F7/004Photosensitive materials
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03FPHOTOMECHANICAL PRODUCTION OF TEXTURED OR PATTERNED SURFACES, e.g. FOR PRINTING, FOR PROCESSING OF SEMICONDUCTOR DEVICES; MATERIALS THEREFOR; ORIGINALS THEREFOR; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED THEREFOR
    • G03F7/00Photomechanical, e.g. photolithographic, production of textured or patterned surfaces, e.g. printing surfaces; Materials therefor, e.g. comprising photoresists; Apparatus specially adapted therefor
    • G03F7/004Photosensitive materials
    • G03F7/09Photosensitive materials characterised by structural details, e.g. supports, auxiliary layers
    • GPHYSICS
    • G06COMPUTING; CALCULATING OR COUNTING
    • G06FELECTRIC DIGITAL DATA PROCESSING
    • G06F3/00Input arrangements for transferring data to be processed into a form capable of being handled by the computer; Output arrangements for transferring data from processing unit to output unit, e.g. interface arrangements
    • G06F3/01Input arrangements or combined input and output arrangements for interaction between user and computer
    • G06F3/03Arrangements for converting the position or the displacement of a member into a coded form
    • G06F3/041Digitisers, e.g. for touch screens or touch pads, characterised by the transducing means

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Theoretical Computer Science (AREA)
  • Human Computer Interaction (AREA)
  • Architecture (AREA)
  • Structural Engineering (AREA)
  • Materials For Photolithography (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本開示は、感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及び保護フィルムに関する。
例えば、静電容量型入力装置等のタッチパネルを備えた表示装置(例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置等)などにおいては、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線等の回路配線がタッチパネル内部に設けられている。
このような、パターン化した回路配線の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといった理由から、ドライフィルムレジストとも称される感光性転写材料を用いることが検討されている。そして、感光性転写材料に含まれる感光性樹脂層を保護するために、通常、感光性樹脂層上には保護フィルムが設けられている。
例えば、国際公開第2014/175274号には、支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、上記支持フィルム及び上記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、上記ポリプロピレンフィルムが、上記感光層側の第1の面と、上記第1の面の反対側の第2の面と、を有し、上記第1の面及び上記第2の面が平滑である、感光性エレメントが開示されている。
特開2007-293006号公報には、支持体上に、着色剤および感光性樹脂を含む感光性樹脂層とカバーフィルムをこの順に有する感光性樹脂転写材料であって、上記感光性樹脂層とカバーフィルムとの間に中間層を有し、かつ上記感光性樹脂層とカバーフィルムとの接着強さは1.5~8.0g/10cmの範囲である感光性樹脂転写材料が開示されている。
特開2018-2947号公報には、少なくとも片面の表面平均粗さ(Sa)が、15nm以下の樹脂からなることを特徴とする保護フィルムが開示されている。
しかしながら、以下に述べるとおり、保護フィルムの剥離性の向上及びパターン故障の低減を両立できる技術は依然として確立されていない。
保護フィルムの剥離性は、例えば、保護フィルムの表面に凹凸を設けることで向上できる。一方、保護フィルムの表面に凹凸を設けると、保護フィルムに接する感光性樹脂層の表面に保護フィルムの凹凸が転写され、感光性樹脂層の表面に凹凸が形成されることがある。凹凸を有する感光性樹脂層を基板に貼り合わせると、感光性樹脂層と基板との間に気泡が残存するため、形成されるパターンの欠損、形状不良等のパターン故障が発生する。
また、通常、ポジ型感光性樹脂層は、樹脂の含有量が多いため、ネガ型感光性樹脂層に比べて柔軟性に乏しい。ネガ型感光性樹脂層に比べて柔軟性に乏しいポジ型感光性樹脂層は基板表面の形状に追随して変形し難いため、表面に凹凸が形成されたポジ型感光性樹脂層を基板に貼り合わせると、ポジ型感光性樹脂層と基板との間に気泡が残存しやすい。このため、上記パターン故障の発生頻度は、ポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料を適用した場合において顕著となる。
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態は、保護フィルムの剥離性に優れ、かつ、パターン故障を低減できる感光性転写材料を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、パターン故障が低減された回路配線の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、パターン故障が低減されたタッチパネルの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、パターン故障が低減された樹脂パターンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、剥離性に優れ、かつ、被着体表面への凹凸の転写を低減できるフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体と、ポジ型感光性樹脂層と、保護フィルムと、をこの順に有し、上記保護フィルムの、上記ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面が、下記の(A)及び(B)を満たす感光性転写材料。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
<2> 上記表面粗さRaが、25nm以下である<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記保護フィルムが、基材と、下塗り層と、を有し、上記保護フィルムの、上記ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、上記下塗り層である<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記保護フィルムが、第一延伸方向の延伸物である一軸延伸フィルムがフィルム面に沿って上記第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸された二軸延伸フィルムと、上記一軸延伸フィルムの一方面に形成された塗布層の上記第二延伸方向の延伸物である下塗り層と、を有し、上記保護フィルムの、上記ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、上記下塗り層である<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<5> 上記下塗り層が、酸変性ポリオレフィンを含有する<3>又は<4>に記載の感光性転写材料。
<6> 上記酸変性ポリオレフィンが酸基を有し、上記酸基の少なくとも1つがアルカリ金属塩である<5>に記載の感光性転写材料。
<7> 上記下塗り層の厚みが、10nm~550nmである<3>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<8> 上記仮支持体と上記ポジ型感光性樹脂層との間に、水溶性樹脂層を有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<9> 上記ポジ型感光性樹脂層が、酸分解性樹脂を含有する<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<10> 上記ポジ型感光性樹脂層が、上記ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、重合体成分を80質量%~98質量%の割合で含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対して上記ポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、回路配線の製造方法。
<12> <1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、タッチパネルの製造方法。
<13> <1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、を含む、樹脂パターンの製造方法。
<14> 第一延伸方向の延伸物である一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがフィルム面に沿って上記第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、上記一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面に形成された塗布層の上記第二延伸方向の延伸物である下塗り層と、を有し、上記下塗り層が、下記の(A)及び(B)を満たすフィルム。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
<15> 上記下塗り層が、酸変性ポリオレフィンを含有する<14>に記載のフィルム。
<16>第1の樹脂層と、第1の樹脂層上に設けられた第2の樹脂層とを有し、第1の樹脂層が、ポリエステルを含み、第2の樹脂層の表面が、下記の(A)及び(B)を満たすフィルム。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
<17>第1の樹脂層の厚みが5μm~200μmであり、かつ、第2の樹脂層の厚みが10nm~550nmである、<16>に記載のフィルム。
<18>保護フィルムである、<14>~<17>のいずれか1つに記載のフィルム。
本開示の一実施形態によれば、保護フィルムの剥離性に優れ、かつ、パターン故障を低減できる感光性転写材料を提供することができる。
本開示の他の一実施形態によれば、パターン故障が低減された回路配線の製造方法を提供することができる。
本開示の他の一実施形態によれば、パターン故障が低減されたタッチパネルの製造方法を提供することができる。
本開示の他の一実施形態によれば、パターン故障が低減された樹脂パターンの製造方法を提供することができる。
本開示の他の一実施形態によれば、剥離性に優れ、かつ、被着体表面への凹凸の転写を低減できるフィルムを提供することができる。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を示す概略図である。 図2は、本開示に係る回路配線の製造方法の一例を示す概略図である。 図3は、パターンAを示す概略図である。 図4は、パターンBを示す概略図である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれか一方を表し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれか一方を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、全固形分とは、溶剤等の揮発性成分を除いた成分の全質量をいう。
<感光性転写材料>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、ポジ型感光性樹脂層と、保護フィルムと、をこの順に有し、上記保護フィルムの、上記ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面が、下記の(A)及び(B)を満たす。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
本開示に係る感光性転写材料によれば、保護フィルムの剥離性に優れ、かつ、パターン故障を低減できる。本開示に係る感光性転写材料が、このような効果を奏する理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本開示に係る感光性転写材料に適用される保護フィルムは、上記の(A)及び(B)を満たすため、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面の表面エネルギーを下げ、かつ、凹凸を低減できる。そして、保護フィルムの表面の凹凸を低減できることで、ポジ型の感光性樹脂層の表面に保護フィルムの凹凸が転写されることを抑制できる。このため、本開示に係る感光性転写材料は、保護フィルムの剥離性の向上及びパターン故障の低減を両立できると考えられる。
一方、例えば、上述の国際公開第2014/175274号、及び特開2007-293006号公報に記載された感光性転写材料に適用される保護フィルムでは、上記の(A)及び(B)を満たすことはできないと考えられる。また、上述の国際公開第2014/175274号、特開2007-293006号公報、及び特開2018-2947号公報においては、保護フィルムが適用された感光性樹脂層はポジ型感光性樹脂層ではなく、ポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料に対して保護フィルムを適用した場合についてまで検討されていない。従来提案されている保護フィルムでは、ネガ型感光性樹脂層に比べて柔軟性に乏しいポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料に適用した場合には、保護フィルムの剥離性の向上及びパターン故障の低減を両立することはできないと考えられる。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を概略的に示している。図1に示す感光性転写材料100は、仮支持体12と、ポジ型感光性樹脂層14と、保護フィルム16とがこの順に積層されている。
[仮支持体]
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体を有する。
仮支持体は、ポジ型感光性樹脂層を支持し、ポジ型感光性樹脂層から剥離可能な支持体である。
本開示に用いられる仮支持体は、ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する際に仮支持体を介してポジ型感光性樹脂層を露光し得る観点から、光透過性を有することが好ましい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。これらの中でも、耐溶剤性及び光学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
仮支持体の厚みは、特に制限されず、5μm~200μmの範囲が好ましく、取扱い易さ、汎用性などの点で、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
仮支持体の厚みは、支持体としての強度、基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
[ポジ型感光性樹脂層]
本開示に係る感光性転写材料は、ポジ型感光性樹脂層を有する。
本開示において用いられるポジ型感光性樹脂層は、特に制限はなく、公知のポジ型感光性樹脂層を用いることができる。また、上記ポジ型感光性樹脂層は、感度、解像度及び除去性の観点から、酸分解性樹脂を含有するポジ型感光性樹脂層であることが好ましく、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤と、を含む化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることがより好ましい。酸分解性樹脂としては、酸との作用によって分解し得る樹脂であれば制限されず、例えば、後述の酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体等が挙げられる。
後述するオニウム塩、オキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤は、活性放射線(活性光線)に感応して酸を生成する。生成した酸は、上記重合体中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用する。このため、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
一方、活性放射線に感応する光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いた場合、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下であり、化学増幅型には該当しない。
〔酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(以下、「構成単位A」ともいう。)を有する重合体(以下、単に「重合体A1」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体A1に加え、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体とは、後述するとおり、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含まない重合体である。他の重合体の詳細については後述する。本開示においては、ポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体(酸分解性樹脂を含む。)を総称して「重合体成分」という。例えば、ポジ型感光性樹脂層が重合体A1を含む場合、「重合体成分」とは重合体A1を指す。また、ポジ型感光性樹脂層が重合体A1及び他の重合体を含む場合、「重合体成分」とは重合体A1及び他の重合体の両方を指す。ただし、後述する界面活性剤、架橋剤、又は分散剤に該当する化合物は、「重合体成分」に含まれないものとする。
上記重合体A1は、露光により生じる触媒量の酸性物質の作用により、重合体A1中の酸分解性基で保護された酸基が脱保護反応を受け酸基となる。この酸基により、現像液への溶解が可能となる。
更に、重合体A1は、酸基を有する構成単位(以下、「構成単位B」ともいう。)を更に有することが好ましい。
また、重合体A1は、パターン形状、現像液への溶解性及び転写性の観点から、非粒子形状の重合体(「バインダーポリマー」ともいう。)であることが好ましい。
また、上記重合体成分に含まれる全ての重合体がそれぞれ、後述する酸基を有する構成単位を少なくとも有する重合体であることが好ましい。
重合体A1は、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンに由来する構成単位、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、パターン形状の変形抑制、現像液への溶解性及び転写性の観点から、重合体成分として、下記式A1により表される構成単位、下記式A2により表される構成単位、及び下記式A3により表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。また、同様の観点から、重合体成分として、下記式A1により表される構成単位、下記式A2により表される構成単位、及び下記式A3により表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位、並びに、酸基を有する構成単位を有する重合体を含むことがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体A1は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
以下に構成単位Aの好ましい態様について説明する。
(構成単位A)
上記重合体成分は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(構成単位A)を少なくとも有する重合体A1を含むことが好ましい。上記重合体成分が構成単位Aを有する重合体を含むことにより、極めて高感度な化学増幅型のポジ型感光性樹脂層とすることができる。
本開示における「酸分解性基で保護された酸基」は、酸基及び酸分解性基として公知のものを使用でき、特に制限されない。具体的な酸基としては、カルボキシ基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性基で保護された酸基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、テトラヒドロピラニルエステル基、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール系官能基)、酸により比較的分解し難い基(例えば、tert-ブチルエステル基等の第三級アルキル基、tert-ブチルカーボネート基等の第三級アルキルカーボネート基)等を用いることができる。
これらの中でも、上記酸分解性基としては、アセタールの形で保護された構造を有する基であることが好ましい。
また、酸分解性基としては、得られる回路配線における線幅のバラツキが抑制される観点から、分子量が300以下の酸分解性基であることが好ましい。
上記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(構成単位A)は、下記式A1により表される構成単位、下記式A2により表される構成単位、及び下記式A3により表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位であることが好ましく、感度及び解像度の観点から、後述する式A3により表される構成単位であることがより好ましく、後述する式A3-3により表される構成単位であることが特に好ましい。
Figure 0007065991000001
式A1中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR11及びR12のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R13はアルキル基又はアリール基を表し、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R14は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表し、R15は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A2中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR21及びR22のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R23はアルキル基又はアリール基を表し、R21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R24はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はシクロアルキル基を表し、mは0~3の整数を表す。
式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
-式A1により表される構成単位の好ましい態様-
式A1中、R11又はR12がアルキル基の場合、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。R11又はR12がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R11及びR12は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A1中、R13は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R11~R13におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A1中、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A1中、Xは単結合又は二価の連結基を表し、単結合又はアルキレン基、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-O-又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐を有していても環状構造を有していてもよく、置換基を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~4がより好ましい。Xが-C(=O)O-を含む場合、-C(=O)O-に含まれる炭素原子と、R14が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Xが-C(=O)NR-を含む場合、-C(=O)NR-に含まれる炭素原子と、R14が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Rはアルキル基又は水素原子を表し、炭素数1~4のアルキル基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
式A1中、R11~R13を含む基と、Xとは、互いにパラ位で結合することが好ましい。
式A1中、R15は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
式A1中、R14は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のガラス転移温度(Tg)をより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる構成単位Aの全含有量に対し、式A1におけるR14が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、構成単位A中の、式A1におけるR14が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
式A1で表される構成単位の中でも、パターン形状の変形抑制の観点から、下記式A1-2で表される構成単位がより好ましい。
Figure 0007065991000002
式A1-2中、RB4は水素原子又はメチル基を表し、RB5~RB11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、RB12は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A1-2中、RB4は水素原子が好ましい。
式A1-2中、RB5~RB11は、水素原子が好ましい。
式A1-2中、RB12は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1-2中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
式A1で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、下記の構成単位におけるRB4は水素原子又はメチル基を表す。
Figure 0007065991000003
-式A2により表される構成単位の好ましい態様-
式A2中、R21及びR22がアルキル基の場合、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。R21及びR22がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R21及びR22は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、一方が水素原子であり、他方が炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。
上記一般式A2中、R23はアルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、1~6のアルキル基がより好ましい。
21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよい。
式A2中、R24はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましい。R24は、R24と同様の基により更に置換されていてもよい。
式A2中、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式A2で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
Figure 0007065991000004
-式A3により表される構成単位の好ましい態様-
式A3中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R31及びR32は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A3中、R33は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R31~R33におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、Xは単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、Yは、-S-、又は-O-を表し、露光感度の観点から、-O-が好ましい。
上記式A3で表される構成単位は、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。重合体A1が式A3で表される構成単位を含むことで、パターン形成時の感度が優れ、また、解像度がより優れる。
式A3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる式A3で表される構成単位の全量に対し、式A3におけるR34が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、式A3で表される構成単位中の、式A1におけるR34が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
式A3で表される構成単位の中でも、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位として、下記式Aで表される構成単位が、パターン形成時の露光感度を更に高める観点からより好ましい。
Figure 0007065991000005
式A中、R31、R32、R33、R34及びXはそれぞれ、式A3中のR31、R32、R33、R34及びXと同義であり、好ましい態様も同様である。
式A3で表される構成単位の中でも、下記式A3-3で表される構成単位が、パターン形成時の感度を更に高める観点からより好ましい。
Figure 0007065991000006
式A3-3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、R35~R41はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
式A3-3中、R34は水素原子が好ましい。
式A3-3中、R35~R41は、水素原子が好ましい。
式A3で表される、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、下記の構成単位におけるR34は水素原子又はメチル基を表す。
Figure 0007065991000007
重合体A1に含まれる構成単位Aは、1種であっても、2種以上であってもよい。
重合体A1における構成単位Aの含有量は、重合体A1の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
重合体A1における構成単位Aの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
また、全ての重合体成分を構成単位(モノマー単位)に分解したうえで、構成単位Aの割合は、重合体成分の全質量に対して、5質量%~80質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
(構成単位B)
上記重合体A1は、酸基を有する構成単位(構成単位B)を含むことが好ましい。
構成単位Bは、保護基で保護されていない酸基、例えば、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有さない酸基を有する構成単位である。重合体A1が構成単位Bを含むことで、パターン形成時の感度が良好となり、パターン露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなり、現像時間の短縮化を図ることができる。
本明細書における酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。酸基は、通常、酸基を形成しうるモノマーを用いて、酸基を有する構成単位(構成単位B)として、重合体に組み込まれる。感度向上の観点から、酸基のpKaは、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホノ基、スルホ基、フェノール性水酸基、スルホニルイミド基等が例示される。中でも、カルボキ基及びフェノール性水酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基が好ましい。
重合体A1への酸基を有する構成単位の導入は、酸基を有するモノマーを共重合させること又は酸無水物構造を有するモノマーを共重合させ酸無水物を加水分解することで行うことができる。
構成単位Bである、酸基を有する構成単位は、スチレン化合物に由来する構成単位若しくはビニル化合物に由来する構成単位に対して酸基が置換した構成単位、又は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましい。具体的には、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシスチレン等が挙げられ、フェノール性水酸基を有するモノマーとしてはp-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、酸無水物構造を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
構成単位Bとしては、カルボキシ基を有する構成単位、又は、フェノール性水酸基を有する構成単位が、パターン形成時の感度がより良好となるという観点から好ましい。
構成単位Bを形成しうる酸基を有するモノマーは既述の例に制限されない。
重合体A1に含まれる構成単位Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
重合体A1は、重合体A1の全質量に対し、酸基を有する構成単位(構成単位B)を0.1質量%~20質量%含むことが好ましく、0.5質量%~15質量%含むことがより好ましく、1質量%~10質量%含むことが更に好ましい。上記範囲であると、パターン形成性がより良好となる。
重合体A1における構成単位Bの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
(その他の構成単位)
重合体A1は、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、他の構成単位(以下、構成単位Cと称することがある。)を、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
構成単位Cを形成するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、脂肪族環式骨格を有する基、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
構成単位Cを用いて、種類及び含有量の少なくともいずれかを調整することで、重合体A1の諸特性を調整することができる。特に、構成単位Cを適切に使用することで、重合体A1のガラス転移温度を容易に調整することができる。
ガラス転移温度を120℃以下とすることで、重合体A1を含有するポジ型感光性樹脂層は、転写性、及び仮支持体からの除去性を良好なレベルに維持しつつ、パターン形成時の解像度及び感度がより良好となる。
重合体A1は、構成単位Cを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
構成単位Cは、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又は、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどを重合して形成される構成単位を挙げることができる。その他、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載の化合物を挙げることができる。
また、構成単位Cとしては、芳香環を有する構成単位、又は、脂肪族環式骨格を有する構成単位が、得られる転写材料の電気特性を向上させる観点で好ましい。これら構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。中でも、構成単位Cとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく挙げられる。
また、構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、密着性の観点で好ましい。中でも、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが密着性の観点でより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
構成単位Cの含有量は、重合体A1の全質量に対し、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。含有量の下限値は、0質量%でもよいが、含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上記範囲であると、解像度及び密着性がより向上する。
重合体A1が、構成単位Cとして、上記構成単位Bにおける酸基のエステルを有する構成単位を含むことも、現像液に対する溶解性、及び、上記ポジ型感光性樹脂層の物理物性を最適化する観点から好ましい。
中でも、重合体A1は、構成単位Bとして、カルボキシ基を有する構成単位を含み、更に、カルボン酸エステル基を含む構成単位Cを共重合成分として含むことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸由来の構成単位Bと、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸n-ブチル由来の構成単位(c)とを含む重合体がより好ましい。
以下、本開示における重合体A1の好ましい例を挙げるが、本開示は以下の例示に制限されない。なお、下記例示化合物における構成単位の比率、及び重量平均分子量は、好ましい物性を得るために適宜選択される。
Figure 0007065991000008
(重合体A1のガラス転移温度:Tg)
本開示における重合体A1のガラス転移温度(Tg)は、転写性の観点、及び、上述の加熱工程における加熱温度を調節する観点から、90℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。
重合体A1のTgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体A1の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする重合体A1のTgを制御方法が挙げられる。
例えば、共重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K:ケルビン)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体A1の重量平均分子量を調整することにより、重合体A1のTgを調整することも可能である。
(重合体A1の酸価)
重合体A1の酸価は、現像性及び転写性の観点から、0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましく、0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが更に好ましく、0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが特に好ましく、0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
本開示における重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的には、測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(体積比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1M水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
(重合体A1の分子量:Mw)
重合体A1の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。重合体A1の重量平均分子量が60,000以下であることで、ポジ型感光性樹脂層の溶融粘度を低く抑え、基板と貼り合わせる際において低温(例えば130℃以下)での貼り合わせを実現することができる。
また、重合体A1の重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、10,000~60,000であることがより好ましい。
なお、重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定することができ、測定装置としては、様々な市販の装置を用いることができ、装置の内容、及び、測定技術は同当業者に公知である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本、直列に連結したものを用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。
また、測定条件としては、試料濃度を0.2質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行うことができる。
検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作製できる。
重合体A1の数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
(重合体A1の製造方法)
重合体A1の製造方法(合成法)は特に制限されないが、一例を挙げると、構成単位Aを形成するための重合性単量体、酸基を有する構成単位Bを形成するための重合性単量体、更に必要に応じて、その他の構成単位Cを形成するための重合性単量体を含む有機溶剤中、重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、基板に対して良好な密着性を発現させる観点及び高解像パターンを形成する観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体成分を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましく、80質量%~98質量%の割合で含むことがさらに好ましく、90質量%~98質量%の割合で含むことが特に好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、上記ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記酸分解性樹脂を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましく、80質量%~98質量%の割合で含むことがさらに好ましく、90質量%~98質量%の割合で含むことが特に好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体A1を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましく、80質量%~98質量%の割合で含むことがさらに好ましく、90質量%~98質量%の割合で含むことが特に好ましい。
〔他の重合体〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体成分として、重合体A1に加え、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲において、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含まない重合体(「他の重合体」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。上記ポジ型感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の配合量は、全重合体成分中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体A1に加え、他の重合体を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
他の重合体として、例えばポリヒドロキシスチレンを用いることができ、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及び、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及び、ARUFON UC-3080(以上、東亞合成(株)製)、並びに、Joncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及び、Joncryl 586(以上、BASF社製)を用いることもできる。
〔光酸発生剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、光酸発生剤を含むことが好ましい。
本開示で使用される光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等の放射線を照射することにより酸を発生することができる化合物である。
本開示で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
本開示で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めない。pKaは、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤と、非イオン性光酸発生剤とを挙げることができる。
また、光酸発生剤としては、感度及び解像度の観点から、後述するオニウム塩化合物、及び、後述するオキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
非イオン性光酸発生剤の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、感度、解像度、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、及び、ジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が例示できる。
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート構造を有する化合物としては、下記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物が好ましい。
Figure 0007065991000009
式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表し、*は他の原子又は他の基との結合部位を表す。
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、いずれの基も置換されてもよく、R21におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐構造を有していても、環構造を有していてもよい。許容される置換基は以下に説明する。
21のアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6~11のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、シクロアルキル基(7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい。
21のアリール基としては、炭素数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1つ以上の基で置換されてもよい。
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、特開2014-85643号公報の段落0078~段落0111に記載のオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
イオン性光酸発生剤としては特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポジ型感光性樹脂層における光酸発生剤の含有量は、感度及び解像度の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
〔溶剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、溶剤を含んでいてもよい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物は、上記ポジ型感光性樹脂層を容易に形成するため、一旦溶剤を含有させて感光性樹脂組成物の粘度を調節し、溶剤を含む感光性樹脂組成物を塗布した後に乾燥して、上記ポジ型感光性樹脂層を好適に形成することができる。
本開示に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、及び、ラクトン類が例示できる。また、溶剤の具体例としては特開2011-221494号公報の段落0174~段落0178に記載の溶剤も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、既述の溶剤に、更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
添加する溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
本開示に用いることができる溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用することがより好ましい。溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類との併用、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類との併用、又は、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類との併用が好ましい。
また、溶剤としては、沸点130℃以上160℃未満の溶剤、沸点160℃以上の溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(沸点155℃)、及び、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3-メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、及び、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
また、溶剤としては、以下に記載のエステル類、エーテル類、ケトン類等も好ましく挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
エーテル類としては、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン類としては、メチルn-ブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。
また、その他の溶剤としては、トルエン、アセトニトリル、イソプロパノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部あたり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層における溶剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
〔その他の添加剤〕
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
(可塑剤)
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑性を改良する目的で、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤は、重合体A1よりも重量平均分子量が小さいことが好ましい。
可塑剤の重量平均分子量は、可塑性付与の観点から500以上10,000未満が好ましく、700以上5,000未満がより好ましく、800以上4,000未満が更に好ましい。
可塑剤は、重合体A1と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は下記構造を有することが好ましい。
Figure 0007065991000010
上記式中、Rは炭素数2~8のアルキレン基を表し、nは1~50の整数を表し、*は他の原子との結合部位を表す。
なお、例えば、上記構造のアルキレンオキシ基を有する化合物(「化合物X」とする。)であっても、化合物X、重合体A1及び光酸発生剤を混合して得たポジ型感光性樹脂層が、化合物Xを含まずに形成したポジ型感光性樹脂層に比べて可塑性が向上しない場合は、本開示における可塑剤には該当しない。例えば、任意に添加される界面活性剤は、一般にポジ型感光性樹脂層に可塑性をもたらす量で使用されることはないため、本明細書における可塑剤には該当しない。
上記可塑剤としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
Figure 0007065991000011
可塑剤の含有量は、密着性の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑剤を1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
(増感剤)
上記ポジ型感光性樹脂層は、増感剤を更に含むことができる。
増感剤は、活性光線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、及び、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。
増感剤を含有させることで、露光感度を向上させることができる。
増感剤としては、アントラセン誘導体、アクリドン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、及び、ジスチリルベンゼン誘導体よりなる群から選ばれた化合物が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。
アントラセン誘導体としては、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、9-ブロモアントラセン、9-クロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、2-エチルアントラセン、又は、9,10-ジメトキシアントラセンが好ましい。
上記増感剤としては、国際公開第2015/093271号の段落0139~段落0141に記載の化合物を挙げることができる。
増感剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。
(塩基性化合物)
上記ポジ型感光性樹脂層は、塩基性化合物を更に含むことが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0204~段落0207に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
具体的には、脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、及び、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、及び、ジフェニルアミンが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、N-メチル-4-フェニルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8-オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.3.0]-7-ウンデセンが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、及び、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエートが挙げられる。
上記塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
塩基性化合物の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.005質量%~3質量%であることがより好ましい。
(ヘテロ環状化合物)
本開示におけるポジ型感光性樹脂層は、ヘテロ環状化合物を含むことができる。
本開示におけるヘテロ環状化合物には、特に制限はない。ポジ型感光性樹脂層は、例えば、以下に述べる分子内にエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有ヘテロ環状化合物、各種環状エーテル、環状エステル(ラクトン)などの含酸素モノマー;環状アミン、オキサゾリンなどの含窒素モノマー;珪素、硫黄、リンなどのd電子をもつヘテロ環モノマー等を含むことができる。
ポジ型感光性樹脂層中におけるヘテロ環状化合物の含有量は、ヘテロ環状化合物を含む場合には、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、密着性及びエッチング耐性の観点で好ましい。ヘテロ環状化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
分子内にエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
分子内にエポキシ基を有する化合物は市販品として入手できる。例えば、JER828、JER1007、JER157S70、JER157S65(三菱ケミカル(株)製)、特開2011-221494号公報の段落0189に記載の市販品などが挙げられる。
その他の市販品として、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX-611、EX-612、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-411、EX-421、EX-313、EX-314、EX-321、EX-211、EX-212、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-911、EX-941、EX-920、EX-931、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L、DLC-201、DLC-203、DLC-204、DLC-205、DLC-206、DLC-301、DLC-402、EX-111,EX-121、EX-141、EX-145、EX-146、EX-147、EX-171、EX-192(以上、ナガセケムテック製)、YH-300、YH-301、YH-302、YH-315、YH-324、YH-325(以上、新日鐵住金化学(株)製)セロキサイド2021P、2081、2000、3000、EHPE3150、エポリードGT400、セルビナースB0134、B0177((株)ダイセル製)などが挙げられる。
分子内にエポキシ基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分子内にエポキシ基を有する化合物の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
分子内にオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT-201、OXT-211、OXT-212、OXT-213、OXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
本開示におけるポジ型感光性樹脂層においては、ヘテロ環状化合物がエポキシ基を有する化合物であることが、エッチング耐性及び線幅安定性の観点から好ましい。
(アルコキシシラン化合物)
上記ポジ型感光性樹脂層は、アルコキシシラン化合物を含有してもよい。アルコキシシラン化合物としては、トリアルコキシシラン化合物が好ましく挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。これらのうち、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(界面活性剤)
上記ポジ型感光性樹脂層は、膜厚均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤(非イオン系界面活性剤)、又は、両性界面活性剤のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(登録商標、DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(登録商標、旭硝子(株)製)、サーフロン(登録商標、旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、及び、SH-8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式I-1で表される構成単位SA及び構成単位SBを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
Figure 0007065991000012
式I-1中、R401及びR403はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R402は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R404は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、sは1以上10以下の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
Lは、下記式I-2で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式I-2におけるR405は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
Figure 0007065991000013
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
その他、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も用いることができる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の添加量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
(その他の成分)
本開示におけるポジ型感光性樹脂層には、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に加えることができる。
その他の成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
〔ポジ型感光性樹脂層の形成方法〕
各成分、及び、溶剤を任意の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解してポジ型感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
本開示に用いられる感光性樹脂組成物における固形成分(例えば、重合体成分、光酸発生剤、塩基性化合物、及び、界面活性剤)は、ポジ型感光性樹脂層の膜厚均一性、面状ムラ等を向上させるために、上述した溶剤に溶解して調整することが好ましい。
感光性樹脂組成物を仮支持体上に塗布し、乾燥させることで、ポジ型感光性樹脂層を形成することができる。
塗布方法は特に制限されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
なお、仮支持体上に後述の中間層を形成した上に、感光性樹脂組成物を塗布することもできる。
[保護フィルム]
本開示に係る感光性転写材料は、保護フィルムを有する。また、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面は、下記の(A)及び(B)を満たす。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
上記の(A)及び(B)を満たすことで、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面の表面エネルギーを下げ、かつ、凹凸を低減できるため、保護フィルムの剥離性の向上及びパターン故障の低減を両立できる。
本開示において、「保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面」とは、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層との貼り合わせ面(すなわち、接触面)を意味し、換言すると、ポジ型感光性樹脂層から剥離されることで露出する保護フィルムの表面(すなわち、剥離面)を意味する。具体的な剥離条件については、下記に説明するとおりである。
本開示に係る感光性転写材料は、保護フィルムとポジ型感光性樹脂層との界面で剥離可能である。ここで、「保護フィルムとポジ型感光性樹脂層との界面で剥離可能」とは、下記剥離条件によって、保護フィルムをポジ型感光性樹脂層から剥離できることを意味する。また、保護フィルムが後述する下塗り層を有し、下塗り層がポジ型感光性転写材料と接している場合、本開示に係る感光性転写材料は、保護フィルムの下塗り層とポジ型感光性樹脂層との界面で剥離可能である。剥離された保護フィルムにおける下塗り層の存在は、保護フィルムの断面観察によって確認することができる。具体的には、下記剥離条件によってポジ型感光性樹脂層から剥離された保護フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する。その観察画像において、保護フィルムの基材を含む積層構造が観察される場合に、保護フィルムは下塗り層を有すると判断できる。
〔剥離条件〕
感光性転写材料を、幅4.5cm×長さ9cmに切り抜き、仮支持体側の面をガラス板上に両面粘着テープで貼り合わせる。貼り合わされた感光性転写材料に、幅4.5cm×長さ15cmに切りぬいた粘着テープを、粘着テープの幅方向と感光性転写材料の幅方向とを合わせ、幅方向には粘着テープがはみ出さず、長さ方向に前後3cmずつ粘着テープがはみ出すように貼り合せる。テープの一方の端部を把持し、引張試験機を用いて500mm/minの剥離速度で180°剥離を行う。ここで、粘着テープ及び両面粘着テープは、JIS Z 0109:2015に記載のものを使用し、引張試験機は、JIS B 7721:2009に規定する引張試験機(試験機の等級1:相対指示誤差±1.0%)又はこれと同等の引張試験機を使用する。
〔水接触角〕
保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面の水接触角は、75°以上である。水接触角を上記数値範囲内に調整することによって、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面の表面エネルギーを下げることができるため、保護フィルムの剥離性を向上させることができる。
水接触角は、剥離性の観点から、78°以上であることが好ましく、82°以上であることがより好ましく、85°以上としてもよく、100°以上としてもよい。
水接触角の上限値は、制限されない。水接触角は、密着性の観点から、150°以下であることが好ましく、120°以下であることがより好ましい。
水接触角は、以下の方法によって測定することができる。
接触角計(協和界面科学社製、DROPMASTER-501)を用い、25℃の温度条件下で、測定面に精製水2μLを着滴してから7秒後の接触角を液滴法にて測定する。なお、保護フィルムとポジ型感光性樹脂層とが接している場合には、上記剥離条件で保護フィルムを剥離することによって露出した剥離面を測定面として水接触角を測定する。
〔表面粗さRa〕
保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面の表面粗さRaは、45nm以下である。表面粗さRaを上記数値範囲内に調整することによって、ポジ型感光性樹脂層の表面に形成される凹凸の発生を低減できるため、パターン故障を低減することができる。
表面粗さRaは、パターン故障の低減の観点から、小さいほどよい。具体的に、表面粗さRaは、42nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、14nm以下であることが特に好ましい。
表面粗さRaの下限値は、制限されない。表面粗さRaは、製造の観点から、1nm以上であることが好ましい。
表面粗さRaは、以下の方法によって測定することができる。
保護フィルムの測定面について、3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて、保護フィルムの表面プロファイルを得る。なお、測定及び解析ソフトには、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフト(MetroPro ver8.3.2-Microscope Application)にてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、Ra値とする。なお、保護フィルムとポジ型感光性樹脂層とが接している場合には、上記剥離条件で保護フィルムを剥離することによって露出した剥離面を測定面として表面粗さRaを測定する。
(測定条件)
対物レンズ:50倍
Zoom:0.5倍
測定領域:1.00mm×1.00mm
(解析条件)
Removed:plane
Filter:off
FilterType:average
Remove spikes:on
Spike Height(xRMS):7.5
〔基材〕
保護フィルムの基材としては、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。これらの中でも、保護フィルムの基材としては、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。ポリプロピレンフィルムとしては市販品を用いてもよく、例えば、トレファン(登録商標)25KW37(東レ(株)製)等が挙げられる。また、保護フィルムの基材としては、平滑性の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよく、三軸延伸等の多軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましく、平滑性の観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
基材の厚みは、特に制限されず、5μm~200μmの範囲が好ましく、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
〔下塗り層〕
保護フィルムは、基材と、下塗り層と、を有し、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、上記下塗り層であることが好ましい。下塗り層を有することで、保護フィルムの表面エネルギーを下げることができるため、保護フィルムの剥離性を向上させることができる。
保護フィルムにおける基材が樹脂フィルムである場合、下塗り層は、未延伸フィルム上に形成されていてもよく、一軸延伸フィルム上に形成されていてもよく、二軸延伸フィルム上に形成されていてもよい。また、下塗り層は、基材との密着性の観点から、基材となる未延伸フィルムと共に延伸された延伸物であってもよく、基材となる一軸延伸フィルムと共に延伸された延伸物であってもよい。延伸物である下塗り層は、後述するとおり、例えば、基材となる樹脂フィルム上に形成された塗布層を、樹脂フィルムと共に延伸することによって形成することができる。
より好ましい態様として、保護フィルムは、第一延伸方向の延伸物である一軸延伸フィルムがフィルム面に沿って第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸された二軸延伸フィルムと、上記一軸延伸フィルムの一方面に形成された塗布層の上記第二延伸方向の延伸物である下塗り層(以下、単に「延伸物である下塗り層」ということがある。)と、を有し、保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、上記下塗り層であることが好ましい。二軸延伸フィルムと、延伸物である下塗り層と、を有することで、保護フィルムの表面エネルギーを下げることによって保護フィルムの剥離性を向上でき、さらに、保護フィルム表面の平滑性、及び基材(すなわち、二軸延伸フィルム)と下塗り層との密着性を向上できる。
ここで、二軸延伸フィルムと、延伸物である下塗り層と、を有する上記保護フィルムにおける「二軸延伸フィルム」とは、既述の方法によって測定される一方の面の表面粗さRaが45nm以下の樹脂フィルムをいう。
本開示において、「延伸物である下塗り層」とは、下記方法によって測定される二軸延伸フィルムとの密着力が、0.098N/cm以上のものをいう。
二軸延伸フィルムと下塗り層との密着力の測定方法について、以下説明する。
下塗り層を有する保護フィルムの、下塗り層側の表面にテープ(プリンタックC、日東電工(株)製)を貼り、テープと保護フィルムとの幅が合うように4.5cm×9cmに切り抜く。次いで、テープを、テンシロン万能試験機(株式会社エーアンドデイー社製)を用いて500mm/minの剥離速度で180°剥離し、密着力を測定する。
下塗り層に含有される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、アクリルポリマー、ポリエステル等が挙げられる。下塗り層は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、変性樹脂を含有することが好ましく、酸変性樹脂及びシリコーン変性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することがより好ましい。より具体的には、下塗り層は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、変性ポリオレフィン及び変性アクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましく、酸変性ポリオレフィン及びシリコーン変性アクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することがより好ましく、酸変性ポリオレフィンを含有することが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィンとしては、酸変性されたポリオレフィンであれば制限されず、例えば、酸基を有する化合物(例えば、不飽和カルボン酸等)又はその無水物を用いて、末端変性又はグラフト変性されたポリオレフィン等が挙げられる。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンに含まれる酸基の少なくとも1つは、塩の形態(すなわち、酸基の塩)であることが好ましい。酸変性ポリオレフィンに含まれる酸基の少なくとも1つが塩の形態であることで、ポジ型感光性樹脂の過剰な分解を低減できるため、パターン形状を良化できる。塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酸変性ポリオレフィンにおける酸基の少なくとも1つは、パターン形状の観点から、アルカリ金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。
酸変性ポリオレフィン等のポリオレフィンとしては市販品を用いてもよく、例えば、ケミパール(登録商標)S100、S120、S200、S300、S650、SA100(いずれも三井化学(株)製)、ハードレン(登録商標)AP-2、NZ1004、NZ1005(いずれも東洋紡(株)製)、アローベース(登録商標)DA-1010、DB-4010、SB-1200、SD-1200、SE-1010、SE-1013(いずれもユニチカ(株)製)、ザイクセン(登録商標)AC、A、L、NC、N(いずれも住友精化(株)製)、セポルジョン(登録商標)G315、VA407(いずれも住友精化(株)製)、ハイテックS3121、S3148K(いずれも東邦化学(株)製)等が挙げられる。
酸基の少なくとも1つがアミン塩である酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、ザイクセン(登録商標)L等が挙げられる。
酸基の少なくとも1つがアンモニウム塩である酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、ザイクセン(登録商標)AC等が挙げられる。
酸基の少なくとも1つがナトリウム塩である酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、ザイクセン(登録商標)NC、ケミパール(登録商標)S120等が挙げられる。
シリコーン変性アクリルポリマーは、シリコーン部位を有するアクリルポリマーである。シリコーン変性アクリルポリマーとしては、制限されず、公知のものを使用することができる。シリコーン変性アクリルポリマーとしては市販品を用いてもよく、例えば、サイマック(登録商標)US-450、US-480等(いずれも東亞合成(株)製)が挙げられる。
下塗り層に含有される樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
下塗り層中の樹脂の含有量は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、下塗り層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。また、下塗り層中の変性ポリオレフィン及び変性アクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂の含有量の合計は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、下塗り層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。
下塗り層に含有される樹脂の重量平均分子量は、剥離性の観点から、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1,000~500,000であることが好ましい。下塗り層に含有される樹脂の重量平均分子量の測定方法は、上記「ポジ型感光性樹脂層」の項において説明した方法によって行うことができる。
下塗り層は、必要に応じて、種々の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤の例としては、ラピゾール(登録商標)A-90、A-80、BW-30、B-90、C-70(いずれも日油(株)製)、NIKKOL(登録商標)OTP-100(いずれも日光ケミカル(株)製)、コハクール(登録商標)ON、L-40、フォスファノール(登録商標)702(いずれも東邦化学工業(株)製)、ビューライト(登録商標)A-5000、SSS(いずれも三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の公知の架橋剤を挙げることができる。
下塗り層の厚みは、制限されず、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、10nm~550nmであることが好ましく、10nm~500nmであることがより好ましく、10nm~100nmであることがさらに好ましく、10nm~60nmであることが特に好ましい。
下塗り層の形成方法は、制限されず、例えば、基材上に、下塗り層の固形分を含む下塗り層形成用塗布液を塗布し、乾燥させることにより下塗り層を形成できる。
塗布方法は、制限されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布等の公知の方法を適用することができる。
乾燥方法は、制限されず、ヒーター、温風等の公知の方法を適用することができる。
また、下塗り層は、下塗り層形成用塗布液を用い、インラインコート法により形成されてもよい。インラインコート法は、製造された基材を巻き取る前の段階で下塗り層形成用塗布液を塗布する方法である点で、製造された基材を巻き取ってから別途塗布を行うオフラインコート法と区別される。インラインコート法により下塗り層を形成する方法の一例として、第一延伸方向に延伸された樹脂フィルムの一方の面に、下塗り層形成用塗布液を塗布し、下塗り層形成用塗布液が塗布された樹脂フィルムを、樹脂フィルム面に沿って第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸することにより、下塗り層を形成する方法が好適である。第一延伸方向に延伸された樹脂フィルムの一方の面に下塗り層形成用塗布液を塗布した状態で第二延伸方向に延伸することで、基材となる樹脂フィルムと下塗り層との密着性を向上でき、また、保護フィルム表面の平滑性を向上できる。
延伸方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
延伸温度は、基材のガラス転移温度(Tg)に応じて適宜選択すればよく、Tgと同じ温度以上であり、かつ、Tgより80℃高い温度以下であることが好ましく、Tgより5℃高い温度以上であり、かつ、Tgより60℃高い温度以下であることがより好ましい。
延伸倍率は、2.5倍~5.0倍であることが好ましく、3.0倍~4.5倍であることがより好ましい。なお、延伸倍率は、延伸前の長さに対する延伸後の長さの比をいう。
また、二軸延伸後に、延伸フィルムに対して熱固定、熱緩和等の熱処理を行ってもよい。
〔上塗り層〕
保護フィルムは、ポジ型感光性樹脂層と接する側とは反対側の最外層に上塗り層を有していてもよい。上塗り層を有することで、例えば、露光の際に使用するマスクとの滑り性を向上させることができる。
上塗り層に含有される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ブタジエン-スチレン熱可塑性ポリマー、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、上塗り層に含有される樹脂としては、滑り性の観点から、アクリルポリマーが好ましい。
上塗り層には、滑り性の観点から、さらに界面活性剤、ワックス、マット剤、樹脂粒子、無機粒子等を添加することが好ましい。特に、搬送性の観点から、上塗り層は無機粒子を含むことが好ましい。上記無機粒子の粒子径は、0.03μm~1μmの範囲であることが好ましく、0.05μm~0.5μmの範囲であることがより好ましい。
上塗り層の厚みは、制限されず、滑り性の観点から、10nm~500nmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましい。
[中間層]
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体とポジ型感光性樹脂層との間に、中間層を有することができる。中間層としては、水溶性樹脂層が好ましい。水溶性樹脂層を有することで、仮支持体とポジ型感光性樹脂層との密着性を向上することができる。
〔水溶性樹脂層〕
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を含有する層である。水溶性樹脂としては、水溶性を示す樹脂であれば制限されず、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ビニルエーテル、ポリアミド、これらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、水溶性樹脂としては、密着性の観点から、セルロースが好ましい。
本開示において「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上溶解する性質を意味する。
水溶性樹脂層中の水溶性樹脂の含有量は、密着性の観点から、水溶性樹脂層の全質量に対して、20質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
水溶性樹脂層の厚みは、密着性の観点から、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
保護フィルムの、ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面は、剥離性の観点から、表面改質が施されていてもよい。表面改質の方法としては、保護フィルムの表面エネルギーを低下させるものであれば制限されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、レーザー処理、紫外線処理等が挙げられる。
<回路配線の製造方法>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程(以下、「剥離工程」ということがある。)と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」ということがある。)と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」ということがある。)と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(以下、「エッチング工程」ということがある。)と、を含む。
本開示に係る回路配線の製造方法によれば、上記感光性転写材料を用いるため、パターン故障が低減された回路配線を製造することができる。
以下、本開示に係る回路配線の製造方法について、詳細に説明する。
[剥離工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程を含む。保護フィルムを剥離する方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
[貼り合わせ工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程を含む。
貼り合わせ工程の一例を、図2(a)に概略的に示す。基板20(回路配線形成用基板)は、基材22と、互いに構成材料が異なる第1導電層24及び第2導電層26を含む複数の導電層とを有し、基材22の表面上に、基材22の表面から遠い順に、最表面層である第1導電層24と第2導電層26とが積層されている。貼り合わせ工程では、基板20(回路配線形成用基板)に対し、本開示に係る感光性転写材料100のポジ型感光性樹脂層14を第1導電層24に接触させて貼り合わせる。なお、このような回路配線形成用基板と感光性転写材料との貼り合わせを「転写」又は「ラミネート」と称する場合がある。
感光性転写材料の基板への貼り合わせは、感光性転写材料の、仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を基板上に重ね、ロール等による加圧及び加熱によって行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用することができる。基板を構成する基材が樹脂フィルムである場合は、ロールツーロールでの貼り合わせも行うこともできる。
基板は、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材上に、導電層を有し、必要により任意の層が形成されてもよい。
基材は透明であることが好ましい。
基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
基材は、ガラス基材等の透光性基材で構成されていてもよく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、上述の透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが小さい基材、及び、透明度が高い基材を用いることがより好ましく、樹脂フィルムが更に好ましい。具体的な素材には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマーを挙げることができる。
基材上に導電層を有する基板においては、基材がガラス基材又はフィルム基材であることが好ましく、フィルム基材であることがより好ましく、樹脂フィルムであることが特に好ましい。本開示に係る回路配線の製造方法は、タッチパネル用の回路配線である場合、基材がシート状樹脂組成物であることが特に好ましい。
基材上に形成されている導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電層を挙げることができる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の観点から、金属層、及び、導電性金属酸化物層よりなる群から選ばれた少なくとも1種の層であることが好ましく挙げられ、金属層であることがより好ましく挙げられ、銅層であることが特に好ましく挙げられる。
また、基材上に導電層を1層有していても、2層以上有していてもよい。2層以上の場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
導電層の材料としては、金属及び導電性金属酸化物などを挙げることができる。
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等を挙げることができる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SiO等を挙げることができる。なお、本開示における「導電性」とは、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることをいい、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることが好ましい。
本開示に係る回路配線の製造方法において、基材上に複数の導電層を有する基板を用いる場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
[露光工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程を含む。
露光工程の一例を、図2(b)に概略的に示す。例えば、図2(b)に示す露光工程では、感光性転写材料の仮支持体12を介してポジ型感光性樹脂層14をパターン露光する。例えば、第1導電層24の上に配置された感光性転写材料100の上方(第1導電層24と接する側とは反対側)に所定のパターンを有するマスク30を配置し、その後、マスク30を介してマスク上方から紫外線で露光する方法などが挙げられる。
本開示においてパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることが更に好ましい。
露光に使用する光源としては、ポジ型感光性樹脂層の露光された箇所が現像液に溶解しうる波長域の光(例えば、365nm、405nm等)を照射できれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量としては、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmであることがより好ましい。
露光工程においては、感光性樹脂層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。感光性樹脂層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
[現像工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程を含む。
現像工程の一例を、図2(c)に概略的に示す。現像工程では、露光工程後のポジ型感光性樹脂物層14から仮支持体12を剥離した後、露光工程後のポジ型感光性樹脂層14を現像して第1パターン14Aを形成する。
パターン露光されたポジ型感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、ポジ型感光性樹脂層の露光部分を除去することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は感光性樹脂層の露光部が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、更に、水と混和性を有する有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
さらに、現像して得られた感光性樹脂層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークの加熱は8.1kPa~121.6kPaの環境下で行うことが好ましく、506.6kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。一方、ポストベークの加熱は、114.6kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが特に好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃であることが好ましく、110℃~170℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
ポストベークの時間は、1分~30分であることが好ましく、2分~10分であることがより好ましく、2分~4分であることが特に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
また、後述のエッチング工程の前に、ポスト露光工程等、その他の工程を有していてもよい。
[エッチング工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程を含む。
エッチング工程の一例を、図2(d)に概略的に示す。エッチング工程では、第1パターン14Aが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24及び第2導電層26をエッチング処理する。エッチングにより、第1パターン14Aと同じパターンを有する第1導電層24A及び第2導電層26Aが形成される。
エッチング処理の方法としては、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法、公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法など、公知の方法を適用することができる。
例えば、エッチング処理の方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
エッチング液の温度は特に制限されないが、45℃以下であることが好ましい。本開示においてエッチングマスク(エッチングパターン)として使用される樹脂パターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、エッチング工程中にポジ型感光性樹脂層が剥離することが防止され、ポジ型感光性樹脂層の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて洗浄工程及び乾燥工程を行ってもよい。
洗浄工程で用いる洗浄液としては、純水、又は、純水に溶解可能な有機溶剤、又は、界面活性剤を混合させた水溶液を用いることができる。基板表面に残存する液滴による剥離ムラの抑制及び除去性向上の観点から、洗浄液として、純水に溶解可能な有機溶剤、又は、界面活性剤を混合させた水溶液を用いることが好ましく、純水に溶解可能な有機溶剤、及び、界面活性剤の両方を混合させた水溶液を用いることがより好ましい。
水と混合させる水溶性の有機溶剤としては、特に制限はないが、溶剤の揮発性の観点から、沸点が50℃~250℃であるものが好ましく、55℃~200℃であるものがより好ましく、60℃~150℃であるものが更に好ましい。
水溶性の有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、2-アセトキシ-2-フェニルエタノール、3-メトキシ-3-メチルエタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、2-ブトキシエトキシエタノール等のアルコキシアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、などが挙げられる。
上記の中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、2-アセトキシ-2-フェニルエタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドが好ましい。
水と混合させる水溶性の有機溶剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水と混合させる水溶性の有機溶剤の含有量は、水溶液の全質量に対して、0.01質量%~95質量%であることが好ましく、0.01質量%~20質量%であることがより好ましく、0.01質量%~10質量%であることが更に好ましく、0.01質量%~5質量%が特に好ましい。
水と混合させる界面活性剤としては、水溶性のものであれば、特に制限はなく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤(非イオン系界面活性剤)、又は、両性界面活性剤のいずれでも使用することができる。洗浄液の泡立ちを抑制する観点からは、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
アニオン系界面活性剤の例としては、カルボン酸塩類、スルホン酸塩類、硫酸エステル塩類、リン酸エステル塩類等を挙げることができる。
カチオン系界面活性剤の例としては、アミン塩類、及び、第四級アンモニウム塩類を挙げることができる。
両性界面活性剤の例としては、ベタイン型類を挙げることができる。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、アルキルベンゼンポリアルキレングリコール類、ポリオキシアルキレングリコール類、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。
また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、サーフィノール(日信化学工業(株)製)及び、SH-8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用して用いることが好ましい。
水と混合させる界面活性剤の含有量は、水溶液の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
水溶性の有機溶剤又は界面活性剤を混合させた水溶液の表面張力は、基板表面に残存する液滴による剥離ムラの抑制及び除去性向上の観点から、50mN/m以下であることが好ましく、10mN/m~50mN/mであることがより好ましく、15mN/m~40mN/mであることが更に好ましく、20mN/m~40mN/mであることが最も好ましい。
洗浄工程の洗浄時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒~300秒間基板を洗浄することが好ましく、乾燥工程については、例えばエアブローを使用し、エアブロー圧(好ましくは0.1kg/cm~5kg/cm程度)を適宜調整して乾燥を行えばよい。
また、本開示に係る回路配線の製造方法として、好ましい2つの態様を以下に示す。
本開示の回路配線の製造方法は、上記エッチング工程後に、上記ポジ型感光性樹脂層を全面露光する工程(以下、「全面露光工程」ということがある。)と、上記全面露光されたポジ型感光性樹脂層を除去する工程(以下、「除去工程」ということがある。)と、を含むことが好ましい。
従来の回路配線の製造方法においては、エッチングマスクの除去液を長時間使用した場合、徐々にエッチングマスクの除去性が低下することがある。エッチング工程の後に、エッチングマスクとして使用したポジ型感光性樹脂層を全面露光することにより、除去液への溶解性及び除去液の浸透性が向上し、除去液を長時間使用した場合においても除去性に優れる。
また、基材と、互いに構成材料が異なる第1導電層及び第2導電層を含む複数の導電層と、を有する基板に対し、上記回路配線の製造方法を繰り返し適用して回路配線を製造することもできる。
本開示の回路配線の製造方法は、上記感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、基材と、互いに構成材料が異なる第1導電層及び第2導電層を含む複数の導電層と、を有し、上記基材の表面上に、上記基材の表面から遠い順に、最表面層である上記第1導電層及び上記第2導電層が積層されている基板に貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する第1露光工程と、上記第1露光工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して第1パターンを形成する第1現像工程と、上記第1パターンが配置されていない領域における上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層及び上記第2導電層をエッチング処理する第1エッチング工程と、上記第1エッチング工程後の上記第1パターンを上記第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する第2露光工程と、上記第2露光工程後の上記第1パターンを現像して第2パターンを形成する第2現像工程と、上記第2パターンが配置されていない領域における上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層をエッチング処理する第2エッチング工程と、上記第2パターンを全面露光する工程(以下、「全面露光工程」ということがある。)と、上記第2パターンを除去する工程(以下、「除去工程」ということがある。)と、をこの順に含むことが好ましい。
上記回路配線の製造方法の実施形態としては、国際公開第2006/190405号を参考にすることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
以下、本開示に係る回路配線の製造方法として、上記した好ましい2つの態様について説明する。なお、以下に説明されていない工程における条件等の実施形態については、既述の工程において説明した条件等の実施形態を適用することができる。
[第2露光工程]
第2露光工程の一例を、図2(e)に概略的に示す。
第1エッチング工程後、第1エッチング工程後の第1パターン14Aを第1パターン14Aとは異なるパターンでパターン露光する。
第2露光工程では、第1導電層上に残存する第1パターン14Aに対し、後述する第2現像工程において少なくとも第1導電層の除去すべき部分に相当する箇所を露光する。
第2露光工程におけるパターン露光は、第1露光工程で用いたマスク30とはパターンが異なるマスク40を用いること以外は既述の露光工程におけるパターン露光と同じ方法を適用することができる。
[第2現像工程]
第2現像工程の一例を、図2(f)に概略的に示す。
第2現像工程では、第2露光工程後の第1パターン14Aを現像して第2パターン14Bを形成する。
現像により、第1パターン14Aのうち第2露光工程において露光された部分が除去される。
なお、第2現像工程では、既述の現像工程における現像と同じ方法を適用することができる。
[第2エッチング工程]
第2エッチング工程の一例を、図2(g)に概略的に示す。
第2エッチング工程では、第2パターン14Bが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24Aをエッチング処理する。
第2エッチング工程におけるエッチングは、エッチングにより除去すべき導電層に応じたエッチング液を選択すること以外は既述のエッチング工程におけるエッチングと同じ方法を適用することができる。
第2エッチング工程では、所望のパターンに応じて、既述のエッチング工程よりも少ない導電層を選択的にエッチングすることが好ましい。例えば、図2(g)に示すように、感光性樹脂層が配置されていない領域において第1導電層24Bのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチングを行うことで、第1導電層を第2導電層のパターンとは異なるパターンにすることができる。
第2エッチング工程の終了後、少なくとも2種類のパターンの導電層24B、26Aを含む回路配線が形成される。
[全面露光工程]
全面露光工程においては、現像により残像するポジ型感光性樹脂層の全てを露光すればよく、ポジ型感光性樹脂層のない部分については、露光してもしなくてもよい。簡便性の観点から、例えば、基板の、ポジ型感光性樹脂層を有する側の面の全面を露光することが好ましい。
全面露光工程における露光に使用する光源としては、特に制限はなく、公知の露光光源を用いることができる。 除去性の観点から、上記露光工程と同じ波長の光を含む光源を用いることが好ましい。
全面露光工程における露光量としては、除去性の観点から、5mJ/cm~1,000mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~500mJ/cmであることが特に好ましい。
全面露光工程における露光量としては、除去性の観点から、上記露光工程における露光量以上であることが好ましく、上記露光工程における露光量よりも多いことがより好ましい。
<加熱工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記全面露光工程中、露光工程後、又はその両方、かつ、後述する除去工程の前に、上記全面露光されたポジ型感光性樹脂層を加熱する工程(以下、「加熱工程」ということがある。)を含んでいてもよい。加熱工程を含むことにより、より光酸発生剤の反応速度、及び、発生した酸とポジ型感光性樹脂との反応速度を向上することができ、結果、除去性能が向上する。
[除去工程]
除去工程の一例を、図2(h)に概略的に示す。
第2エッチング工程の終了後、第1導電層24B上の一部には第2パターン14Bが残存している。残存する全てのポジ型感光性樹脂層である第2パターン14Bを除去すればよい。
なお、除去工程における除去には、例えば、ポジ型感光性樹脂層の除去液への溶解及び分散が含まれる。
残存するポジ型感光性樹脂層を除去する方法としては特に制限はないが、薬品処理により除去する方法を挙げることができ、除去液を用いることが特に好ましく挙げることができる。
ポジ型感光性樹脂層の除去方法としては、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の除去液に感光性樹脂層などを有する基板を1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
除去工程において、除去性の観点から、水を30質量%以上含有する除去液を用いることが好ましく、水を50質量%以上含有する除去液を用いることがより好ましく、水を70質量%以上含有する除去液を用いることが更に好ましい。
除去液としては、無機アルカリ成分、及び/又は有機アルカリ成分を含有する除去液であることが好ましい。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。有機アルカリ成分としては、例えば、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等が挙げられ、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アルカノールアミン(例えば、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等)、芳香族アミン(例えば、ピリジン、キノリン等)が挙げられる。
中でも、除去性の観点から、有機アルカリ成分を含有する除去液であることがより好ましく、アミン化合物を含有する除去液であることが特に好ましい。
アルカリ成分の含有量は、アルカリ成分の塩基性の強さ及び溶解性の観点から、適宜選択すればよいが、除去性の観点から、除去液の全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。
除去液は、有機溶剤を含有することが好ましい。
有機溶剤としては、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、メチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン、γ―ブチロラクトン、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等が好ましく挙げられる。
除去液は、除去性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限されず、公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の含有量は、除去性の観点から、除去液の全質量に対し、0.1質量%~10質量%であることが好ましい。
除去液は、目的に応じて防錆剤、酸、イオン性液体、高分子分散剤等を含んでいてもよい。
除去工程においては、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等によりポジ型感光性樹脂を除去する方法が好ましく挙げられる。
本開示に係る回路配線の製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
[保護フィルムを貼り付ける工程]
第1エッチング工程の後、第2露光工程の前に、第1パターン上に、光透過性を有する保護フィルム(不図示)を貼り付ける工程をさらに有してもよい。
この場合、第2露光工程において、保護フィルムを介して第1パターンをパターン露光し、第2露光工程後、第1パターンから保護フィルムを除去した後、第2現像工程を行うことが好ましい。
[可視光線反射率を低下させる工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、基材上の複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含むことが可能である。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
[絶縁膜を形成する工程、絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、形成した回路配線上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
このような構成により、上述の第二の電極パターンを、第一の電極パターンと絶縁しつつ、形成することができる。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
[ロールツーロール方式]
本開示に係る回路配線の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(以下、「巻き出し工程」ということがある。)と、いずれかの工程の後に、基材又は基板を含む構造体を巻き取る工程(以下、「巻き取り工程」ということがある。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基材又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻き取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
また、本開示における露光工程、現像工程、及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を本開示においても好適に用いることができる。
図2では、2層の導電層を備えた回路配線形成用基板に対して2つの異なるパターンを有する回路配線を形成する場合を示したが、本開示に係る回路配線の製造方法を適用する基板の導電層の数は2層に制限されない。導電層が3層以上積層された回路配線形成用基板を用い、上述した露光工程、現像工程、及びエッチング工程の組み合わせを3回以上行うことで、3層以上の導電層をそれぞれ異なる回路配線パターンに形成することもできる。
図2には示していないが、本開示に係る回路配線の製造方法は、基材の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成することができる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置等が挙げられ、静電容量型タッチパネルであることが好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
<タッチパネルの製造方法>
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、上記感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程(以下、「剥離工程」ということがある。)と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」ということがある。)と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」ということがある。)と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(以下、「エッチング工程」ということがある。)と、を含む。
本開示に係るタッチパネルの製造方法によれば、上記感光性転写材料を用いるため、パターン故障が低減されたタッチパネルを製造することができる。
本開示に係るタッチパネルの製造方法における、剥離工程、貼り合わせ工程、露光工程、現像工程、及びエッチング工程の各工程の具体的な態様については、上述の「回路配線の製造方法」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線を少なくとも有するタッチパネルである。また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネルにおける検出方法は、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、光学方式などの公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5、図6、図7、図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)を挙げることができる。
本開示に係るタッチパネルとしては、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日、(株)テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
<樹脂パターンの製造方法>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、上記感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程(以下、「剥離工程」ということがある。)と、上記感光性転写材料の、上記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」ということがある。)と、上記パターン露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」ということがある。)と、を含む。本開示に係る樹脂パターンの製造方法によれば、上記感光性転写材料を用いるため、パターン故障が低減された樹脂パターンを製造することができる。
本開示に係る樹脂パターンの製造方法における、剥離工程、貼り合わせ工程、露光工程、及び現像工程の各工程の具体的な態様については、上述の「回路配線の製造方法」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。また、本開示に係る樹脂パターンの製造方法における基板は、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材自体が基板であってもよく、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材上に、必要により導電層などの任意の層が形成された基板であってもよい。
<フィルム>
本開示に係るフィルムは、第一延伸方向の延伸物である一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがフィルム面に沿って上記第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、上記一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面に形成された塗布層の上記第二延伸方向の延伸物である下塗り層と、を有し、上記下塗り層の表面が、下記の(A)及び(B)を満たす。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
本開示に係るフィルムは、上記の(A)及び(B)を満たすことで、フィルム表面の表面エネルギーを下げ、かつ、凹凸を低減できるため、剥離性に優れ、かつ、被着体表面への凹凸の転写を低減できる。
さらに、本開示に係るフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、延伸物である下塗り層と、を有することで、フィルムの表面エネルギーを下げることによってフィルムの剥離性をさらに向上でき、そして、フィルム表面の平滑性、及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと下塗り層との密着性も向上できる。
本開示に係るフィルムにおける上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、既述の方法によって測定される一方の面の表面粗さRaが45nm以下のポリエチレンテレフタレートフィルムをいう。
本開示に係るフィルムにおける上記下塗り層は、上記「下塗り層」の項において説明した延伸物である下塗り層と同義である。
本開示に係るフィルムの好ましい実施形態は、上記「感光性転写材料」の項において説明した保護フィルムの好ましい実施形態と同様である。
また、他の実施形態として、本開示に係るフィルムは、第1の樹脂層と、第1の樹脂層上に設けられた第2の樹脂層とを有し、第1の樹脂層が、ポリエステルを含み、第2の樹脂層の表面が、下記の(A)及び(B)を満たす。
(A)水接触角が、75°以上である。
(B)表面粗さRaが、45nm以下である。
本開示に係るフィルムは、上記の(A)及び(B)を満たすことで、フィルム表面の表面エネルギーを下げ、かつ、凹凸を低減できるため、剥離性に優れ、かつ、被着体表面への凹凸の転写を低減できる。
第1の樹脂層は、ポリエステルを含み、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。ポリエステルは、平滑性の観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
第1の樹脂層の厚みは、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~150μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましく、10μm~50μmであることが特に好ましい。
第2の樹脂層に含有される樹脂は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、アクリルポリマー、ポリエステル等が挙げられる。第2の樹脂層は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、変性樹脂を含有することが好ましく、酸変性樹脂及びシリコーン変性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することがより好ましい。より具体的には、第2の樹脂層は、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、変性ポリオレフィン及び変性アクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましく、酸変性ポリオレフィン及びシリコーン変性アクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することがより好ましく、酸変性ポリオレフィンを含有することが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィンの好ましい例は、上記「下塗り層」の項において説明した酸変性ポリオレフィンと同様である。
第2の樹脂層に含有される樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2の樹脂層の厚みは、制限されず、剥離性及びパターン故障の低減の観点から、10nm~550nmであることが好ましく、10nm~500nmであることがより好ましく、10nm~100nmであることがさらに好ましく、10nm~60nmであることが特に好ましい。
本開示に係るフィルムの製造方法は、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を設けることができれば、特に限定されない。第2の樹脂層は、第1の樹脂層上に、塗布方法によって設けられてもよく、第1の樹脂層と第2の樹脂層とは、共押し出し法によって設けられてもよい。
本開示に係るフィルムの製造方法は、第1の樹脂層をフィルム成形により形成した後、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を形成するための塗布液を塗布し、2軸延伸処理を行う方法であってもよい。また、本開示に係るフィルムの製造方法は、第1の樹脂層をフィルム成形により形成し、1軸延伸処理を行った後、第2の樹脂層を形成するための塗布液を塗布し、さらに他の1軸延伸処理を行う方法であってもよい。また、本開示に係るフィルムの製造方法は、第1の樹脂層をフィルム成形により形成し、2軸延伸処理を行った後、第2の樹脂層を形成するための塗布液を塗布する方法であってもよい。
また、本開示に係るフィルムの製造方法は、第1の樹脂層を形成するための原料と、第2の樹脂層を形成するための原料とを共押し出しした後、2軸延伸処理を行う方法であってもよい。なお、延伸処理は適宜省略してもよい。
本開示に係るフィルムは、種々の対象物に貼り合わせることにより、対象物の表面を保護できる。すなわち、保護フィルムであることが好ましい。本開示に係るフィルムは、剥離性に優れ、かつ、被着体表面への凹凸の転写を低減できるため、例えば、表面形状の変形を避ける必要のある部材(例えば、高い平滑性を有する部材、及び表面形状に特徴のある部材)を保護するために用いられることが好ましい。また、本開示に係る保護フィルムは、種々の感光性転写材料(ドライフィルムレジスト)を保護するために用いられることがより好ましく、ポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料を保護するために用いられることが特に好ましい。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
<製造例1>
以下の手順にしたがって、基材として用いるポリエチレンテレフタレート(PET)の一方の面に、下記下塗り層形成用塗布液1を塗布した後、延伸することによって製造例1の保護フィルムを得た。
[下塗り層形成用塗布液1の調製]
下記に示す配合で、各成分を混合し、下塗り層形成用塗布液1を得た。得られた下塗り層形成用塗布液1を、6μmフィルター(F20、マーレフィルターシステムズ(株)製)でのろ過及び膜脱気(2x6ラジアルフロースーパーフォビック、ポリポア(株)製)を実施した。
・酸変性ポリオレフィン(ザイクセンL、住友精化(株)製、固形分25質量%):16.7部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈):5.6部
・水:77.7部
[押出成形]
特許第5575671号公報に記載のチタン化合物を重合触媒としたポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを、含水率50ppm以下に乾燥させた後、直径30mmの1軸混練押出し機のホッパーに投入し、280℃で溶融して押出した。この溶融体(メルト)を、濾過器(孔径3μm)を通した後、ダイから25℃の冷却ロールに押出し、未延伸フィルムを得た。なお、押出されたメルトは、静電印加法を用い冷却ロールに密着させた。
[延伸、塗布]
上記方法で冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、厚み25μmの基材(ポリエステルフィルム)と、厚み50nmの下塗り層と、を有する保護フィルムを得た。
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(すなわち、搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を75℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.4倍、延伸速度を1300%/秒として延伸を実施した。
(b)塗布
縦延伸したフィルムの一方の面に下塗り層形成用塗布液1を、製膜後の厚みが50nmとなるようにバーコーターで塗布した。
(c)横延伸
縦延伸と塗布を行ったフィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
-条件-
予熱温度:110℃
延伸温度:120℃
延伸倍率:4.2倍
延伸速度:50%/秒
[熱固定、熱緩和]
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを下記条件で熱固定した。さらに、熱固定した後、テンター幅を縮め下記条件で熱緩和した。
-熱工程条件-
熱固定温度:227℃
熱固定時間:6秒
-熱緩和条件-
熱緩和温度:190℃
熱緩和率:4%
[巻き取り]
熱固定及び熱緩和の後、両端をトリミングし、端部に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行った後、張力40kg/mで巻き取った。なお、フィルムロールの幅は1.5m、巻長は6300mであった。得られたフィルムロールを、製造例1の保護フィルムとした。
得られた保護フィルムの基材は、ヘイズが0.2であり、150℃で30分加熱した場合の熱収縮率は、MD(Machine Direction)が1.0%、TD(Transverse Direction)が0.2%であった。断面TEM(Transmission Electron Microscope)写真から測定した下塗り層の膜厚は、50nmであった。
<製造例2~7>
下塗り層形成用塗布液1の配合を表1の記載にしたがって変更した点、及び塗布時のバーを調整して下塗り層の製膜後の厚みを表1の記載にしたがって変更した点以外は、製造例1と同様にして製造例2~7の保護フィルムを得た。
<製造例8>
下塗り層形成用塗布液1の代わりに下記下塗り層形成用塗布液2を使用した点、及び塗布時のバーを調整して下塗り層の製膜後の厚みを80nmに変更した点以外は、製造例1と同様にして製造例8の保護フィルムを得た。
(下塗り層形成用塗布液2)
・ウレタンポリマー(エラストロンH3DF、第一工業製薬(株)製、固形分28質量%):16.5部
・ブロックイソシアネート(デュラネートWM44-L70G、旭化成(株)製、固形分70質量%):1.5部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈):4.2部
・炭酸水素ナトリウム(旭硝子(株)製、固形分5質量%水希釈):0.3部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂(株)製、固形分30質量%):0.5部
・有機スズ水分散物(エラストロンCat21、第一工業製薬(株)製、固形分1質量%水希釈):3.3部
・水:73.7部
<製造例9>
下塗り層形成用塗布液を塗布しない点以外は、製造例1と同様にして製造例9の保護フィルムを得た。
<製造例10>
塗布工程において、縦延伸したフィルムの、下塗り層形成用塗布液1を塗布した面とは反対側の面に、製膜後の厚みが60nmとなるように下記の上塗り層形成用塗布液をさらに塗布した点以外は、製造例1と同様にして製造例10の保護フィルムを得た。
(上塗り層形成用塗布液)
・アクリルポリマー(AS-563A、ダイセルファインケム(株)製、固形分27.5質量%):16.7部
・ノニオン系界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分100質量%):0.07部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈):11.44部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂(株)製、固形分30質量%)0.7部
・カルボジイミド化合物(カルボジライトV-02-L2、日清紡(株)製、固形分10質量%水希釈):2.09部
・マット剤(スノーテックスXL、日産化学(株)製、固形分40質量%):0.28部
・水:69.0部
Figure 0007065991000014
<略語>
以下の実施例において、以下の略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
ATHF:2-テトラヒドロフラニルアクリレート(合成品)
MMA:メチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)
EA:エチルアクリレート(東京化成工業(株)製)
CHA:アクリル酸シクロヘキシル(東京化成工業(株)製)
PMPMA:メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(東京化成工業(株)製)
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):(昭和電工(株)製)
V-601:ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬工業(株)製)
<実施例1>
[ATHFの合成]
3つ口フラスコにアクリル酸(72.1g、1.0mol)、ヘキサン(72.1g)を加え20℃に冷却した。カンファースルホン酸(7.0mg、0.03mmol)、2-ジヒドロフラン(77.9g、1.0mol)を滴下した後に、20℃±2℃で1.5時間撹拌した後、35℃まで昇温して2時間攪拌した。ヌッチェにキョーワード200(水酸化アルミニウム吸着剤、協和化学工業(株)製)、キョーワード1000(ハイドロタルサイト系吸着剤、協和化学工業(株)製)の順に敷き詰めた後、反応液をろ過することでろ過液を得た。得られたろ過液にヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、1.2mg)を加えた後、40℃で減圧濃縮することで、2-テトラヒドロフラニルアクリレート(ATHF)140.8gを無色油状物として得た(収率99.0%)。
[重合体A1の合成]
3つ口フラスコにPGMEA(75.0g)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。ATHF(29.0g)、CHA(5.0g)、EA(30.0g)、MMA(35.0g)、PMPMA(1.0g)、V-601(4.1g)、PGMEA(75.0g)を加えた溶液を、90℃±2℃に維持した3つ口フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後,90℃±2℃にて2時間撹拌することで、重合体A1(固形分濃度40.0%)を得た。
[感光性樹脂組成物1の調製]
以下の処方で感光性樹脂組成物1を調製した。
・重合体A1:93.9部
・光酸発生剤(下記B-1):2.0部
・界面活性剤(下記C-1):0.1部
・添加剤(下記D-1):0.2部
・PGMEA:900部
[感光性転写材料の作製]
仮支持体となる厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、感光性樹脂組成物1を、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した。100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させた後、製造例1の保護フィルムの、下塗り層側を感光性樹脂組成物層に接触させて圧着し、感光性転写材料を作製した。得られた感光性転写材料を実施例1の感光性転写材料とした。
<実施例2~4、7~11>
保護フィルムを表2の記載にしたがって変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例2~4、7~11の感光性転写材料を作製した。
<実施例5>
[中間層用組成物1の調製]
以下の処方で中間層用組成物1を調製した。
・蒸留水:137.0部
・メタノール:319.0部
・NISSO HPC-SSL(日本曹達(株)製):20.6部
・スノーテックスO(日産化学工業(株)製):68.5部
[感光性転写材料の作製]
仮支持体となる厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、中間層用組成物1を乾燥膜厚2.0μmとなるようにスリットコートし、次いで、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させることで、中間層となる水溶性樹脂層を形成した。次に感光性樹脂組成物1を、この水溶性樹脂層上に、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した。100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させた後、製造例3の保護フィルムを圧着して感光性転写材料を作製した。得られた感光性転写材料を、実施例5の感光性転写材料とした。
<実施例6>
感光性樹脂組成物1の代わりに下記感光性樹脂組成物2を使用した点以外は、実施例3と同様にして実施例6の感光性転写材料を作製した。
[感光性樹脂組成物2の調製]
以下の処方で感光性樹脂組成物2を調製した。
・ノボラック樹脂(メタクレゾール:パラクレゾール=30:70、分子量5,500):79.9部
・感光剤:特開平4-22955号公報の第4頁に記載のナフトキノンジアジド化合物(1):20.0部
・界面活性剤(下記C-1):0.1部
・PGMEA:900部
<比較例1>
製造例1の保護フィルムの代わりに製造例8のフィルムを用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例1の感光性転写材料を得た。
<比較例2>
製造例1の保護フィルムの代わりに製造例9のフィルムを用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例2の感光性転写材料を得た。
<比較例3>
製造例1の保護フィルムの代わりに下記フィルム2を用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例3の感光性転写材料を得た。
<水接触角の測定>
下記の剥離条件にて実施例1~11及び比較例1~3の各感光性転写材料から保護フィルムを剥離することによって露出した剥離面を測定面として水接触角を測定した。具体的には、接触角計(協和界面科学社製、DROPMASTER-501)を用い、25℃の温度条件下で、測定面に精製水2μLを着滴してから7秒後の接触角を液滴法にて測定した。測定結果を表2に示す。
[剥離条件]
感光性転写材料を、幅4.5cm×長さ9cmに切り抜き、仮支持体側の面をガラス板上に両面粘着テープで貼り合わせた。貼り合わされた感光性転写材料に、幅4.5cm×長さ15cmに切りぬいた粘着テープを、粘着テープの幅方向と感光性転写材料の幅方向を合わせ、幅方向には粘着テープがはみ出さず、長さ方向に前後3cmずつ粘着テープがはみ出すように貼り合せた。テープの一方の端部を把持し、引張試験機を用いて500mm/minの剥離速度で180°剥離を行った。ここで、粘着テープ及び両面粘着テープは、JIS Z 0109:2015に記載のものを使用し、引張試験機は、JIS B 7721:2009に規定する引張試験機(試験機の等級1:相対指示誤差±1.0%)又はこれと同等の引張試験機を使用した。
<表面粗さRaの測定>
上記の剥離条件にて実施例1~11及び比較例1~3の各感光性転写材料から保護フィルムを剥離することによって露出した剥離面について、3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて、保護フィルムの表面プロファイルを得た。なお、測定・解析ソフトにはMetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフト(MetroPro ver8.3.2-Microscope Application)にてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、Ra値とした。測定結果を表2に示す。
[測定条件]
対物レンズ:50倍
Zoom:0.5倍
測定領域:1.00mm×1.00mm
[解析条件]
Removed:plane
Filter:off
FilterType:average
Remove spikes:on
Spike Height(xRMS):7.5
<保護フィルムの剥離性評価>
実施例1~11及び比較例1~3の各感光性転写材料を、温度23℃、相対湿度55%にて2ヶ月間保管した後、上記剥離条件にて、保護フィルムを剥離した。下記基準に従って、保護フィルムの剥離性について評価した。評価結果を表2に示す。なお、2が実用範囲である。
[基準]
2:保護フィルムのみが剥離できる
1:剥離した保護フィルムにポジ型感光性樹脂層が付着する。
<パターン形状評価>
パターン形状評価においては、厚さ188μmのPETフィルム上に厚さ500nmでスパッタ法にて銅層を作製した銅層付きポリエチレンテレフタレート(PET)基板(以下、「銅層付きPET基板」ということがある。)を使用した。
実施例1~11及び比較例1~3の各感光性転写材料を、温度23℃、相対湿度55%にて2ヶ月間保管した後、各感光性転写材料の保護フィルムを剥離し、上記銅層付きPET基板上に、100℃、2m/min、0.6MPaの条件でラミネートし、銅層上にポジ型レジスト層が積層した積層体を作製した。
この積層体に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅10μmのラインアンドスペース配線パターン(開口部:遮光部の幅比は1:1)を設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光を行った。露光にはi線(365nm)を露光主波長とする高圧水銀灯を用いた。
露光後に5時間引き置いた後、仮支持体を剥離して現像した。現像は、28℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で40秒行った。上記方法にて10μmのラインアンドスペースパターンを形成し、ライン幅とスペース幅の比が1:1になる露光量を求め、その露光量で試料をパターン形成した。このパターンの形態をSEM(Scanning Electron Microscope、倍率20000倍)で観察し、パターンの形状を下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。なお、2以上が実用可能レベルである。
[基準]
3:アンダーカットのないテーパー形状である。
2:部分的にアンダーカットが存在する、又はパターンが欠けている部分がある。
1:パターンが残存していない部分がある。
Figure 0007065991000015
表2より、実施例1~11の感光性転写材料はカバーの剥離性が良好であり、また、これらの感光性転写材料を用いて作製したパターンは、パターン故障が低減され、パターン形状に優れることがわかった。実施例3の感光性転写材料は、実施例1~2の感光性転写材料と比較して、酸変性ポリオレフィンに含まれる酸基がナトリウム塩になっているので、アンダーカットのない良好なパターンが得られた。
一方、比較例1~2の感光性転写材料は、23℃、55%(相対湿度)で2ヶ月保管すると保護フィルムが正常に剥離できなくなり、感光性転写材料としての使用が困難であった。また、比較例3の感光性転写材料は、パターンが残存していない部分があり、実用できるレベルではなかった。
<光酸発生剤>
B-1:下記に示す構造の化合物(特開2013-047765号公報の段落0227に記載の化合物であり、段落0204に記載の方法に従って合成した。)
Figure 0007065991000016
<界面活性剤>
C-1:メガファックF552(DIC(株)製)
<添加剤>
D-1:下記に示す構造の化合物
Figure 0007065991000017
<保護フィルム>
フィルム1:ポリプロピレンフィルム トレファン 25KW37(東レ(株)製)
フィルム2:ポリプロピレンフィルム アルファン E-501(王子エフテックス(株)製)
<実施例101>
100μm厚PET基材上に、第2層の導電層としてITOをスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成基板とした。
銅層上に実施例1で得た感光性転写材料1をラミネートした(ロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/min.)。仮支持体を剥離せずに一方向に導電層パッドが連結された構成を持つ図3に示すパターンAを設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光した。図3に示されるパターンAにおいて、実線部SL及びグレー部Gは遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅とITOとが共にパターンAで描画された基板を得た。
次いで、アライメントを合わせた状態で図4に示すパターンBの開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、現像、水洗を行った。図4に示されるパターンBにおいて、グレー部Gは遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後、Cu-02を用いて銅層をエッチングし、残った感光性樹脂層を、超高圧水銀灯により全面露光(300mJ/cm)し、露光後に10秒間引き置いた後、除去液(Henkel(株)製BONDERITE C-AK P123)を用いて除去し、回路配線を得た。
得られた回路配線を、顕微鏡で観察したところ、剥がれ及び欠けは無く、きれいなパターンであった。
<実施例102>
100μm厚PET基材上に、第2層の導電層としてITOをスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成基板とした。
銅層上に実施例1で得た感光性転写材料1をラミネートした(ロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/min.)。
仮支持体を剥離せずに一方向に導電層パッドが連結された構成を持つ図3に示すパターンAを設けたフォトマスクを用いてパターン露光した。その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅とITOが共にパターンAで描画された基板を得た。
次いで、残存しているレジスト上に保護層としてPET(A)をラミネートした。この状態で、アライメントを合わせた状態で図4に示すパターンBの開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、PET(A)を剥離した後に現像、水洗を行った。
その後、Cu-02を用いて銅配線をエッチングし、残った感光性樹脂層を、超高圧水銀灯により全面露光(300mJ/cm)し、露光後に10秒間引き置いた後、除去液(Henkel(株)製BONDERITE C-AK P123)を用いて除去し、回路配線を得た。
得られた回路配線を、顕微鏡で観察したところ、剥がれ及び欠けは無く、きれいなパターンであった。
なお、2018年9月12日に出願された日本国特許出願2018-170973、及び、2019年3月25日に出願された日本国特許出願2019-057423の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (13)

  1. 仮支持体と、
    ポジ型感光性樹脂層と、
    保護フィルムと、
    をこの順に有し、前記保護フィルムの、前記ポジ型感光性樹脂層と接する側の表面が、下記の(A)及び(B)を満たし、
    前記ポジ型感光性樹脂層が、酸分解性樹脂を含有する感光性転写材料。
    (A)水接触角が、78°以上である。
    (B)表面粗さRaが、45nm以下である。
  2. 前記表面粗さRaが、25nm以下である請求項1に記載の感光性転写材料。
  3. 前記保護フィルムが、基材と、下塗り層と、を有し、前記保護フィルムの、前記ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、前記下塗り層である請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
  4. 前記保護フィルムが、
    第一延伸方向の延伸物である一軸延伸フィルムがフィルム面に沿って前記第一延伸方向と直交する第二延伸方向に延伸された二軸延伸フィルムと、
    前記一軸延伸フィルムの一方面に形成された塗布層の前記第二延伸方向の延伸物である下塗り層と、
    を有し、
    前記保護フィルムの、前記ポジ型感光性樹脂層と接する側の最外層が、前記下塗り層である請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
  5. 前記下塗り層が、酸変性ポリオレフィンを含有する請求項3又は請求項4に記載の感光性転写材料。
  6. 前記酸変性ポリオレフィンが酸基を有し、前記酸基の少なくとも1つがアルカリ金属塩である請求項5に記載の感光性転写材料。
  7. 前記下塗り層の厚みが、10nm~550nmである請求項3~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
  8. 前記仮支持体と前記ポジ型感光性樹脂層との間に、水溶性樹脂層を有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
  9. 前記酸分解性樹脂は、下記式A3により表される構成単位を有する重合体である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
    式A3中、R 31 及びR 32 はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR 31 及びR 32 のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R 33 はアルキル基又はアリール基を表し、R 31 又はR 32 と、R 33 とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R 34 は水素原子又はメチル基を表し、X は単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
    Figure 0007065991000018
  10. 前記ポジ型感光性樹脂層が、前記ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、重合体成分を80質量%~98質量%の割合で含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
  11. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、
    前記感光性転写材料の、前記仮支持体に対して前記ポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせる工程後の前記感光性転写材料の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
    前記パターン露光する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
    前記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、
    を含む、回路配線の製造方法。
  12. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、
    前記感光性転写材料の、前記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせる工程後の前記感光性転写材料の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
    前記パターン露光する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
    前記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、
    を含む、タッチパネルの製造方法。
  13. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の感光性転写材料の保護フィルムを剥離する工程と、
    前記感光性転写材料の、前記仮支持体に対してポジ型感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせる工程後の前記感光性転写材料の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
    前記パターン露光する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
    を含む、樹脂パターンの製造方法。
JP2020546006A 2018-09-12 2019-09-09 感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム Active JP7065991B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018170973 2018-09-12
JP2018170973 2018-09-12
JP2019057423 2019-03-25
JP2019057423 2019-03-25
PCT/JP2019/035363 WO2020054660A1 (ja) 2018-09-12 2019-09-09 感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2020054660A1 JPWO2020054660A1 (ja) 2021-05-20
JP7065991B2 true JP7065991B2 (ja) 2022-05-12

Family

ID=69778084

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020546006A Active JP7065991B2 (ja) 2018-09-12 2019-09-09 感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP7065991B2 (ja)
CN (1) CN112470074A (ja)
TW (1) TW202017748A (ja)
WO (1) WO2020054660A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7479487B2 (ja) * 2020-09-14 2024-05-08 富士フイルム株式会社 感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、エッチング方法、及び、電子デバイスの製造方法
JPWO2022054374A1 (ja) * 2020-09-14 2022-03-17
WO2022138493A1 (ja) * 2020-12-25 2022-06-30 富士フイルム株式会社 積層体の製造方法、回路配線の製造方法、転写フィルム

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008302547A (ja) 2007-06-06 2008-12-18 Mitsubishi Plastics Inc 感光性粘着樹脂用保護ポリエステルフィルム
WO2014175274A1 (ja) 2013-04-24 2014-10-30 日立化成株式会社 感光性エレメント、感光性エレメントロール、レジストパターンの製造方法及び電子部品

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20010045151A (ko) * 1999-11-03 2001-06-05 구광시 드라이필름 포토레지스트
JP2009080194A (ja) * 2007-09-25 2009-04-16 Fujifilm Corp 重合性樹脂組成物、転写材料、カラーフィルタ及びその製造方法、液晶表示装置用スペーサ及びその製造方法、並びに液晶表示装置
JP6100500B2 (ja) * 2012-10-26 2017-03-22 富士フイルム株式会社 感光性転写材料、パターン形成方法およびエッチング方法
JP6113683B2 (ja) * 2014-03-25 2017-04-12 富士フイルム株式会社 透明フィルム及びその製造方法、積層フィルム、透明導電フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル、偏光板ならびに表示装置
JP6706885B2 (ja) * 2015-05-07 2020-06-10 三菱ケミカル株式会社 積層ポリエステルフィルム

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008302547A (ja) 2007-06-06 2008-12-18 Mitsubishi Plastics Inc 感光性粘着樹脂用保護ポリエステルフィルム
WO2014175274A1 (ja) 2013-04-24 2014-10-30 日立化成株式会社 感光性エレメント、感光性エレメントロール、レジストパターンの製造方法及び電子部品

Also Published As

Publication number Publication date
CN112470074A (zh) 2021-03-09
TW202017748A (zh) 2020-05-16
WO2020054660A1 (ja) 2020-03-19
JPWO2020054660A1 (ja) 2021-05-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6100500B2 (ja) 感光性転写材料、パターン形成方法およびエッチング方法
JP6267951B2 (ja) 感光性転写材料、パターン形成方法およびエッチング方法
JP6397948B2 (ja) 感光性転写材料、パターン形成方法およびエッチング方法
JP7065991B2 (ja) 感光性転写材料、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、樹脂パターンの製造方法、及びフィルム
KR102110818B1 (ko) 패턴이 형성된 기재의 제조 방법, 및 회로 기판의 제조 방법
WO2019102771A1 (ja) 感光性転写材料、樹脂パターン製造方法、及び、配線製造方法
JP6995865B2 (ja) 感光性転写材料の製造方法、及び、回路配線の製造方法
TW201921108A (zh) 感光性轉印材料、電路配線的製造方法及觸控面板的製造方法
JP6821046B2 (ja) 回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法
JP6992097B2 (ja) レジストパターンの製造方法、回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法
WO2018155193A1 (ja) 感光性転写材料、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法
JP6995873B2 (ja) 回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法
JP6968273B2 (ja) 感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
WO2020116068A1 (ja) 転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及びタッチパネルの製造方法
JP6830398B2 (ja) 感光性転写材料用重合体溶液の製造方法、感光性転写材料用組成物の製造方法、感光性転写材料の製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネルの製造方法、感光性転写材料用重合体溶液の製造に用いられる組成物、感光性転写材料用重合体溶液、感光性転写材料用組成物及び感光性転写材料
WO2019187365A1 (ja) 感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置
JP6685460B2 (ja) 感光性転写材料、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法
CN112166377A (zh) 感光性转印材料、树脂图案的制造方法、电路布线的制造方法及触摸面板的制造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201016

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211220

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220405

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220426

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7065991

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150