第1の発明の水素生成システムは、炭化水素系の原料ガスと水蒸気から水素含有ガスを生成する水素生成装置と、水素生成装置に原料ガスを供給する原料供給経路と、電解質膜の両主面をアノードとカソードとで挟み、アノードにガスを供給することが可能となるように構成されたアノード流路に水素含有ガスを供給して、アノードとカソードとの間に所定方向の電流を流すことで、カソードから水素含有ガスよりも水素の純度が高い精製水素ガスを精製する電気化学デバイスと、アノード流路から排出されたガスを燃焼して水素生成装置を加熱する燃焼器と、カソードから排出される精製水素ガスの少なくとも一部を貯蔵する水素貯蔵器と、カソードから排出された精製水素ガスを水素貯蔵器に供給するための水素供給経路と、を備えた水素生成システムであって、水素生成装置の水素生成動作を停止する時に、原料供給経路への原料ガスの供給が停止すると共に水素貯蔵器と原料供給経路とが連通して、水素貯蔵器から流出した精製水素ガスが、原料供給経路から水素生成装置とアノード流路とを経由して燃焼器に流れて燃焼器で燃焼されるように構成したものである。
これによって、水素生成動作を停止する時に、水素生成装置に供給した精製水素ガスを燃焼器で燃焼させることができる。精製水素ガスは単位体積当たりの燃焼熱が炭化水素系原料ガスよりも小さいため、パージに必要な流量の炭化水素系原料ガスを供給する場合に比べて、燃焼器での燃焼熱が小さくなる。
この結果、水素生成装置の温度上昇が抑制されて、停止動作時間が短縮されることにより、水素生成システムの稼働率の低下を抑制することができる。
第2の発明の水素生成システムは、特に第1の発明の水素生成システムにおいて、水素生成動作を停止するときに、アノード流路に流れた精製水素ガスが、アノードとカソードとの間の電流によって、カソードへ移動するように構成されたものである。
これによって、停止動作中に供給される精製水素ガスをアノードからカソードへ移動させ、燃焼器へ流れる精製水素ガス量を減少させることができるため、水素生成装置の加熱を抑制でき、停止動作時間をより短縮することが可能となる。また精製水素ガスを電気化学デバイスで回収し、水素貯蔵器に供給できるため、精製水素ガスの消費を抑えることができ、システムのエネルギー効率を高めることができる。
また、第3の発明の水素生成システムの運転方法は、炭化水素系の原料ガスと水蒸気から水素含有ガスを生成する水素生成装置と、水素生成装置に原料ガスを供給する原料供給経路と、電解質膜の両主面をアノードとカソードとで挟み、アノードにガスを供給することが可能となるように構成されたアノード流路に水素含有ガスを供給して、アノードとカソードとの間に所定方向の電流を流すことで、カソードから水素含有ガスよりも水素の純度が高い精製水素ガスを精製する電気化学デバイスと、アノード流路から排出されたガスを燃焼して水素生成装置を加熱する燃焼器と、カソードから排出される精製水素ガスの少
なくとも一部を貯蔵する水素貯蔵器と、カソードから排出された精製水素ガスを水素貯蔵器に供給するための水素供給経路と、を備えた水素生成システムの運転方法であって、水素生成装置の水素生成動作を停止する時に、原料供給経路への原料ガスの供給を停止させると共に水素貯蔵器と原料供給経路とを連通させ、水素貯蔵器から流出した精製水素ガスを、原料供給経路から水素生成装置とアノード流路とを経由して燃焼器に流して燃焼器で燃焼させるのである。
これによって、水素生成動作を停止する時に、水素生成装置に供給した精製水素ガスを燃焼器で燃焼させることができる。精製水素ガスは単位体積当たりの燃焼熱が炭化水素系原料ガスよりも小さいため、パージに必要な流量の炭化水素系原料ガスを供給する場合に比べて、燃焼器での燃焼熱が小さくなる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における水素生成システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように本実施の形態の水素生成システム41は、原料と水から水素含有ガスを生成する水素生成装置1と、水素生成装置1に原料を供給する原料供給器2と、水素生成装置1を加熱する燃焼器3と、水素生成装置1の温度を検知する温度検知器4と、水素含有ガスから精製水素ガスを生成する電気化学デバイス8と、電気化学デバイス8に電流を流す電源9と、水素生成装置1で生成された水素含有ガスを電気化学デバイス8に供給可能に水素生成装置1と電気化学デバイス8とを接続する水素含有ガス経路10と、精製水素ガスに利用されずに電気化学デバイス8から排出されたアノードオフガスを燃料として燃焼器3に供給可能に電気化学デバイス8と燃焼器3とを接続するアノードオフガス経路11と、電気化学デバイス8から精製水素ガスを排出可能に上流側端が電気化学デバイス8に接続されたカソードオフガス経路12と、水素生成装置1をパージするパージガスが流れるパージガス供給経路13と、水素生成装置1に原料を供給可能に原料供給器2と水素生成装置1とを接続し経路の途中でパージガス供給経路13の下流側端が接続された原料供給経路14と、水素生成装置1に供給する水が流れる水供給経路15、燃焼器3に供給する燃焼用の空気が流れる空気供給経路16と、水供給経路15を介して水素生成装置1に水を供給する水供給器17と、空気供給経路16を介して燃焼器3に燃焼用の空気を供給する空気供給器18と、カソードオフガス経路12から流出した精製水素ガスを貯蔵してパージガス供給経路13にパージガスとして供給可能にカソードオフガス経路12の下流側端とパージガス供給経路13の上流側端とが接続された水素貯蔵器20と、カソードオフガス経路12を開閉可能にカソードオフガス経路12の途中に設けられたカソードオフガス弁21と、パージガス供給経路13を流れるパージガスとしての精製水素ガスの流量を調節可能にパージガス供給経路13の途中に設けられたパージガス弁22と、を備えている。
水素生成装置1は、炭化水素系の原料ガスと水から改質反応によって水素含有ガスを生成できるように、複数の粒子状の改質触媒(図示せず)を内部に搭載している。
本実施の形態では、原料ガスとして、メタンを用いる。また、改質触媒は、アルミナの粉を固めた約5mmの粒子の表面に、ルテニウムを担持させたものを用いる。
温度検知器4は、水素生成装置1の温度(改質触媒の温度)を検知できるように水素生成装置1に設置されている。
電気化学デバイス8は、水素イオンを選択的に輸送する電解質膜5と、電解質膜5の一方の主面に配置されたアノード23と、電解質膜5の他方の主面に配置されたカソード24と、アノード23における電解質膜5と対向する面とは反対側の面に配置されアノード23に水素含有ガスを供給可能に水素含有ガス経路10とアノードオフガス経路11とに連通するアノード流路6と、カソード24における電解質膜5と対向する面とは反対側の面に配置されカソード24で生成された精製水素ガスをカソード24からカソードオフガス経路12に排出可能に構成されたカソード流路7とで構成されている。
電解質膜5は水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜である。アノード23は、水素分子から電子を引き抜き、水素イオンを生成する電極である。カソード24は、水素イオンと電子を結合させ、水素分子を生成する電極である。
電源9は、電源9の正極がアノード23に電気的に接続され、電源9の負極がカソード24に電気的に接続されて、アノード23とカソード24との間に、アノード23から電解質膜5を経由してカソード24に直流電流を流す。
原料供給器2は、メタンを水素生成装置1に供給するガス用ポンプである。水供給器17は、水を水素生成装置1に供給する水用ポンプである。空気供給器18は、空気を燃焼器3に供給するファンである。原料供給経路14は、原料供給器2から水素生成装置1にメタンを供給する経路である。
水供給経路15は、水供給器17から水素生成装置1に水を供給する経路である。空気供給経路16は、空気供給器18から燃焼器3に空気を供給する経路である。
燃焼器3は、燃料と空気を混合して燃焼させることで水素生成装置1を加熱できるように配置されている。
水素含有ガス経路10は、水素生成装置1から排出される水素含有ガスをアノード流路6に供給する経路である。
アノードオフガス経路11は、アノード流路6から排出されるガスを、燃焼器3に供給する経路である。
カソードオフガス経路12は、カソード流路7から排出される精製水素ガスを、水素貯蔵器20に供給する経路である。水素貯蔵器20は、精製水素ガスを貯蔵可能なタンクである。パージガス供給経路13は、精製水素ガスを水素貯蔵器20から原料供給経路14へ供給する経路である。
カソードオフガス弁21は、カソードオフガス経路12上の電磁弁である。パージガス弁22は、パージガス供給経路13上の流量調整弁であり、パージガス供給経路13を流れる精製水素ガスの流量を調節する。
また、原料供給器2、燃焼器3、水供給器17、空気供給器18、パージガス弁22においては、以下のように動作するものを用いる。
原料供給器は、外部から動作指示信号S1を受けた際に、メタンの供給を停止するものを用いる。
燃焼器3は、外部から動作指示信号S1を受けた際に、燃焼(着火)動作を実施するも
のを用いる。
水供給器17は、外部から動作指示信号S1を受けた際に、水の供給を停止するものを用いる。
空気供給器18は、外部から動作指示信号S1を受けた際に、空気の供給を実施するものを用いる。
パージガス弁22は、外部から動作指示信号S1を受けた際に、開状態となり、一定流量が流れるように制御するものであり、電源が遮断された際に、閉状態となるものを用いる。
また、水素生成システム41は、外部から動作指示信号S1を受けた後の時間を計測するタイマー(図示せず)を備え、タイマーは、動作指示信号S1を受けてから20分経過すると、水素生成システム41の電源を遮断し停止させる。
以上のように構成された本実施の形態の水素生成システム41について、以下、その動作、作用を説明する。まず、水素生成システム41の水素生成動作について説明する。
水素生成動作中においては、カソードオフガス弁21を開状態にし、パージガス弁22を閉状態にする。また、原料供給器2を動作させ、メタンを、原料供給経路14を経由して水素生成装置1に供給する。さらに、水供給器17を動作させ、水を、水供給経路15を経由して水素生成装置1に供給する。水素生成装置1は燃焼器3によって加熱される。
水素生成装置1に供給された水は、燃焼器3によって加熱されて高温の水蒸気となり、同じく加熱されて高温となったメタンと混合された状態で、水素生成装置1に搭載された改質触媒に供給される。また燃焼器3からの加熱によって600℃程度の高温となった改質触媒において、メタンと水蒸気が改質反応し、水素含有ガスを生成する。
水素生成装置1から排出された水素含有ガスは、水素含有ガス経路10とアノード流路6とを経由してアノード23へ供給される。電源9は、アノード23の電位をカソード24の電位よりも高くして、アノード23から電解質膜5を経由してカソード24へと流れる直流の電流を流す。
アノード23に水素含有ガスが供給されている状態で、アノード23から電解質膜5を経由してカソード24へ電流が流れることにより、アノード23では、(化1)の酸化反応が起こり、カソード24では、(化2)の還元反応が起こる。
アノード23では、水素含有ガスに含まれる水素(H2)が、電子(2e-)と水素イオン(2H+)に分けられ、水素イオン(2H+)は、電解質膜5を通り抜けてカソード24へと移動する。電子(2e-)は、電源9を経由してカソード24へと移動する。
カソード24へ移動した水素イオン(2H+)は、カソード24で電子(2e-)を受け取って水素(H2)へと変化する。
このようにカソード24で水素を発生させることで、電気化学デバイス8におけるアノード23に供給された水素含有ガスから、水素をカソード24へ移動させることができ、水素含有ガスよりもより純度の高い精製水素ガスを生成することができる。
そして、電気化学デバイス8で生成された精製水素ガスは、カソードオフガス経路12
を通って水素貯蔵器20へ供給される。
電気化学デバイス8で生成される精製水素ガスの量は、原料供給器2から水素生成装置1へのメタンの流量と、水供給器17から水素生成装置1への水の流量と、電源9によって電気化学デバイス8に流れる電流量(電流値)を操作することにより制御する。
具体的には、水素貯蔵器20に供給する精製水素ガス流量に応じた電流値を算出し、電源9の電流値を指示する。
また、水素生成装置1の温度は温度検知器4によって検知され、温度検知器4の温度を監視しながら、原料供給器2と水供給器17を操作し、原料供給器2から水素生成装置1へのメタンの流量と水供給器17から水素生成装置1への水の流量とを調整することで、水素生成装置1の温度を制御する。
なお、原料供給器2から水素生成装置1へのメタンの流量と水供給器17から水素生成装置1への水の流量との比率は、ほぼ一定にする。
水素生成装置1においては、改質反応によってメタンと水蒸気から水素含有ガスが生成されるが、一部のメタンは水素含有ガス中に残存し、水素含有ガス経路10、アノード流路6、アノードオフガス経路11を経由して燃焼器3へと供給される。また、アノード流路6から排出されるガス中には、水素が残存し、これもアノードオフガス経路11を経由して燃焼器3へと供給される。
空気供給器18は、空気を、空気供給経路16を経由して燃焼器3に供給する。燃焼器3に供給されるメタン、水素、空気が、燃焼器3にて混合されて、燃焼される。この燃焼熱により、燃焼器3は水素生成装置1を加熱する。燃焼器3からの加熱によって、水素生成装置1の温度は、600℃程度の高温に維持されて、水素含有ガスを安定的に生成することができる。
次に、水素生成システム41の停止動作について説明する。なお、水素生成システム41の停止動作は、水素生成装置1の温度を低下させる第1停止工程と、水素生成装置1の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程と、に分かれる。
第1停止工程の開始時には、原料供給器2のメタンの流量を徐々に減少させる。また電源9の電流を停止するとともに、カソードオフガス弁21を閉状態にする。さらにメタンの流量にあわせて、水の流量や空気の流量も減少させるように、水供給器17と空気供給器18を、それぞれ制御する。
水素生成装置1に供給されるメタンの流量の減少に伴い、アノードオフガス経路11を流れる水素を含むメタンの流量が減少して、燃焼器3における燃焼量(燃焼器3による水素生成装置1の加熱量)が低下することにより、水素生成装置1の温度が低下する。
水素生成装置1の温度が所定の温度T℃以下になった段階で、第1停止工程から第2停止工程に移行させる。
第2工程開始時には水素生成装置1の内部に水蒸気が存在しており、水素生成装置1の温度低下によって水蒸気が結露すると、水素生成装置1における改質触媒が水に濡れる恐れがある。改質触媒は水に濡れると劣化する性質を持つため、改質触媒が結露によって濡れる前に、水素生成装置1の内部に存在する水蒸気を排出する必要がある。
一方、改質触媒は、400℃以上の温度で水蒸気が存在しない状況下でメタンに触れると、メタンの熱分解が発生し、改質触媒の表面に炭素が析出することによって触媒が劣化するという性質をもつ。
したがって、水蒸気の排出を行う第2停止工程を開始する所定の温度T℃は、水蒸気の結露が発生せず、なおかつメタンの熱分解が発生しない温度が望ましく、本実施の形態では300℃とする。
第2停止工程の開始時においては、外部から動作指示信号S1を、原料供給器2、燃焼器3、水供給器17、空気供給器18、パージガス弁22に発信する。これにより、原料供給器2によるメタンの供給と、水供給器17による水の供給が、それぞれ停止するとともに、パージガス弁22は開状態となる。
また空気供給器18が動作して燃焼器3に空気が供給され、燃焼器3では燃焼(着火)動作が開始される。水素貯蔵器20の精製水素ガスは、水素貯蔵器20の内部の圧力によって、水素貯蔵器20からパージガス供給経路13を経由して原料供給経路14を流れ、原料供給経路14から水素生成装置1に精製水素ガスが供給される。
パージガス弁22は一定の流量の精製水素ガスが流れるように制御される。水素生成装置1は精製水素ガスによってパージされ、水素生成装置1における水蒸気は、水素生成装置1から排出された後、水素含有ガス経路10、アノード流路6、アノードオフガス経路11、燃焼器3を経由して、水素生成システム41の外部へと排出される。
外部から動作指示信号S1を受け、第2停止工程を開始した後20分経過すると、タイマーにより水素生成システム41の電源が遮断され、パージガス弁22は閉状態となり、また、燃焼器3、空気供給器18の動作が停止し、水素生成システム41は停止する。
ここで、タイマーの設定値20分は、水素生成装置1の内部の水蒸気を十分に排出するために十分な時間で、水素生成装置1のガス経路の内容積に対して約3倍の体積の精製水素ガスを水素生成装置1に供給する時間に設定している。以上で第2停止工程は完了となる。
第2停止工程においては、水素生成装置1のガス経路の内容積よりも多くの体積の精製水素ガスが供給されるため、精製水素ガスは、水素生成装置1から排出されて、水素含有ガス経路10、アノード流路6、アノードオフガス経路11、を経由して燃焼器3に供給され、燃焼器3にて空気供給器118からの空気と混合されて完全燃焼された後、水蒸気となって水素生成システム41から外部に排出される。
ここで、精製水素ガスは、一般的にパージに使用されるメタンに比べて、単位体積あたりの燃焼熱が小さいという特徴をもつ。(表1)は水素及びメタンなどの炭化水素系のガスにおける単位体積あたりの燃焼熱を示す表である。
ここでいう燃焼熱とは、いわゆる低位発熱量であり、燃料と酸素が反応して完全燃焼した際に、生成した水蒸気が凝縮(液化)しない場合の発熱量を示す。また単位体積は25℃、1気圧の条件下の標準状態のものとする。
(表1)に示す通り、精製水素ガスの燃焼熱は、メタンに比べて単位体積あたりの燃焼熱が小さい。
本実施の形態では、第2停止工程において、水素生成装置1に精製水素ガスを供給しているため、メタンを供給する場合に比べ、燃焼器3における燃焼熱を小さくすることができ、水素生成装置1の加熱を抑制できる。
これにより、水素生成装置1の温度を所定の温度T℃(300℃)以下に保った上で、精製水素ガスを連続的に供給できるため、第2停止工程の停止動作時間を短縮することができる。
この停止動作時間短縮の効果について、水素生成装置1に精製水素ガスを供給した場合の温度と、精製水素ガスの代わりにメタンを供給した場合の温度を比較しながら、説明する。
図2は、本発明の実施の形態1の第2停止工程における水素生成装置1の温度を示す特性図である。図2に示す特性図(グラフ)では、横軸に第2停止工程開始からの時間を、縦軸に水素生成装置1の温度を、それぞれとっている。
本実施の形態の第2停止工程において、水素生成装置1に精製水素ガスを供給せずに原料供給器2からメタンを供給した場合をケース1とし、水素生成装置1に精製水素ガスを供給した場合をケース2とし、両者を比較する。
実線はケース1の温度、破線はケース2の温度を、それぞれ示している。また、図2に示す期間Aはケース1におけるメタン供給期間、期間Bはケース1におけるメタン供給中断期間、期間Cはケース2における精製水素ガス供給期間である。期間A、期間Cおける水素生成装置1への単位時間あたりのガス供給量は同じにした。
ケース1では、期間Aにおいて、温度低下の状態から次第に温度上昇の状態に移行して
いる。これは、水素生成装置1においては外部放熱が発生しているが、単位体積当たりの燃焼熱が大きいメタンが燃焼器3で燃焼するため、外部放熱よりも燃焼器3からの加熱が大きくなり、温度が上昇に転じるためである。
水素生成装置1の温度が上昇し、300℃になった段階で、メタンの供給と、燃焼器3での燃焼を中断させて、期間Bに移行する。メタンの供給と燃焼を中断する理由は、水素生成装置1の温度が400℃に達して改質触媒が劣化するのを防ぐためである。
期間Bでは燃焼器3の燃焼が停止しているため、外部放熱によって水素生成装置1が次第に温度低下を始め、所定の温度T℃(300℃)になった段階で再び期間Aに移行し、メタンの供給と燃焼器3における燃焼を開始する。
このように期間Aと期間Bを繰り返し、パージガス弁22から動作完了信号S2が発信された時点で第2停止工程は完了となる。第2停止工程は40分程度となる。
ケース2においては、外部放熱によって水素生成装置1の温度は次第に低下する。燃焼器3においては、単位体積当たりの燃焼熱が小さい精製水素ガスが燃焼器3で燃焼するため、外部放熱よりも燃焼器3からの加熱が小さくなり、温度が低下する。
これにより、水素生成装置1の温度を、所定の温度300℃以下に保つことができるため、精製水素ガスを連続的に供給できる。第2停止工程開始から20分経過した時点で、水素生成システム41の電源が遮断されて、パージガス弁22は閉状態となり、また、燃焼器3、空気供給器18の動作が停止し、第2停止工程完了となる。
ケース2においては、ケース1の期間Bのようなガス供給の中断期間がないため、ケース1の半分の20分程度の時間で、水蒸気を十分に排出できる。
そして、第2停止工程が完了することで、水素生成システム41における停止動作は、完了となる。
以上のように、本実施の形態の水素生成システム41は、炭化水素系の原料ガスとしてのメタンと水蒸気から水素含有ガスを生成する水素生成装置1と、原料供給器2から水素生成装置1にメタンを供給する原料供給経路14と、水供給器17から水素生成装置1に水を供給する水供給経路15と、電解質膜5の両主面をアノード23とカソード24とで挟み、アノード23にガスを供給することが可能となるように構成されたアノード流路6に水素含有ガスを供給して、アノード23とカソード24との間に所定方向の電流を流すことで、カソード24から水素含有ガスよりも水素の純度が高い精製水素ガスを精製する電気化学デバイス8と、水素生成装置1から排出された水素含有ガスをアノード流路6に供給する水素含有ガス経路10と、アノード流路6からアノードオフガス経路11に排出されたガスを燃焼して水素生成装置1を加熱する燃焼器3と、カソード24から排出される精製水素ガスの少なくとも一部を貯蔵する水素貯蔵器20と、カソード24からカソード流路7を経て排出された精製水素ガスを水素貯蔵器20に供給するための水素供給経路としてのカソードオフガス経路12と、水素貯蔵器20と原料供給経路14とを連通させるパージガス供給経路13と、水素生成装置1が水素含有ガスを生成しているときにパージガス供給経路13を閉塞するパージガス弁22と、を備えている。
そして、本実施の形態の水素生成システム41は、水素生成装置1の水素生成動作を停止する停止工程における、水素生成装置1の温度を低下させる第1停止工程の後の、水素生成装置1の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程で、原料供給器2が原料供給経路14へのメタンの供給を停止すると共に、パージガス弁22がパージガス供給経路1
3を開放して水素貯蔵器20と原料供給経路14とが連通して、水素貯蔵器20からパージガス供給経路13に流出した精製水素ガスが、原料供給経路14から水素生成装置1と水素含有ガス経路10とアノード流路6とアノードオフガス経路11とを経由して燃焼器3に流れて燃焼器3で燃焼されるように構成されている。
本実施の形態の水素生成システム41においては、水素生成装置1の第2停止工程において、単位体積当たりの燃焼熱がメタンよりも小さい精製水素ガスを水素生成装置1のパージに用いて、燃焼器3で燃焼させる構成をとることにより、メタンを水素生成装置1のパージに用いた場合よりも、水素生成装置1の加熱を抑制できるため、停止動作時間を短縮することができる。これにより、水素生成システム41の稼働率の低下を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、水素生成装置1に改質触媒を備えたが、改質触媒の後段にCO低減触媒を備えてもよい。また、水素生成装置1に供給する原料ガスとしてメタンを用いたが、エタンやプロパンなどの炭化水素系ガスを水素生成装置1に供給する原料ガスにした場合であっても同様の効果が得られる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における水素生成システムの概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように本実施の形態の水素生成システム141は、原料と水から水素含有ガスを生成する水素生成装置101と、水素生成装置101に原料を供給する原料供給器102と、水素生成装置101を加熱する燃焼器103と、水素生成装置101の温度を検知する温度検知器104と、水素含有ガスから精製水素ガスを生成する電気化学デバイス108と、電気化学デバイス108に電流を流す電源109と、水素生成装置101で生成された水素含有ガスを電気化学デバイス108に供給可能に水素生成装置101と電気化学デバイス108とを接続する水素含有ガス経路110と、精製水素ガスに利用されずに電気化学デバイス108から排出されたアノードオフガスを燃料として燃焼器103に供給可能に電気化学デバイス108と燃焼器103とを接続するアノードオフガス経路111と、電気化学デバイス108から精製水素ガスを排出可能に上流側端が電気化学デバイス108に接続されたカソードオフガス経路112と、水素生成装置101をパージするパージガスが流れるパージガス供給経路113と、水素生成装置101に原料を供給可能に原料供給器102と水素生成装置101とを接続し経路の途中でパージガス供給経路113の下流側端が接続された原料供給経路114と、水素生成装置101に供給する水が流れる水供給経路115、燃焼器103に供給する燃焼用の空気が流れる空気供給経路116と、水供給経路115を介して水素生成装置101に水を供給する水供給器117と、空気供給経路116を介して燃焼器103に燃焼用の空気を供給する空気供給器118と、カソードオフガス経路112の下流側に配置されて水素利用機器151に精製水素ガスを供給する水素供給経路119と、カソードオフガス経路112の下流側端と水素供給経路119の上流側端との間に配置されカソードオフガス経路112から流出した精製水素ガスを貯蔵してパージガス供給経路113と水素供給経路119に供給可能にカソードオフガス経路112の下流側端とパージガス供給経路113の上流側端と水素供給経路119の上流側端とが接続された水素貯蔵器120と、カソードオフガス経路112を開閉可能にカソードオフガス経路112の途中に設けられたカソードオフガス弁121と、パージガス供給経路113を流れるパージガスとしての精製水素ガスの流量を調節可能にパージガス供給経路113の途中に設けられたパージガス弁122と、水素供給経路119を流れる精製水素ガスの流量を調節可能に水素供給経路119の途中に設けられた水素供給弁125と、制御器131と、を備えている。
水素生成装置101は、炭化水素系の原料ガスと水から改質反応によって水素含有ガスを生成できるように、複数の粒子状の改質触媒(図示せず)を内部に搭載している。
本実施の形態では、原料ガスとして、メタンを用いる。また、改質触媒は、アルミナの粉を固めた約5mmの粒子の表面に、ルテニウムを担持させたものを用いる。
温度検知器104は、水素生成装置101の温度(改質触媒の温度)を検知できるように水素生成装置101に設置されている。
電気化学デバイス108は、水素イオンを選択的に輸送する電解質膜105と、電解質膜105の一方の主面に配置されたアノード123と、電解質膜105の他方の主面に配置されたカソード124と、アノード123における電解質膜105と対向する面とは反対側の面に配置されアノード123に水素含有ガスを供給可能に水素含有ガス経路110とアノードオフガス経路111とに連通するアノード流路106と、カソード124における電解質膜105と対向する面とは反対側の面に配置されカソード124で生成された精製水素ガスをカソード124からカソードオフガス経路112に排出可能に構成されたカソード流路107とで構成されている。
電解質膜105は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜である。アノード123は、水素分子から電子を引き抜き、水素イオンを生成する電極である。カソード124は、水素イオンと電子を結合させ、水素分子を生成する電極である。
電源109は、電源109の正極がアノード123に電気的に接続されるとともに、電源109の負極がカソード124に電気的に接続されて、アノード123とカソード124との間に、アノード123から電解質膜105を経由してカソード124に直流電流を流す。
原料供給器102は、メタンを水素生成装置101に供給するガス用ポンプである。水供給器117は、水を水素生成装置101に供給する水用ポンプである。空気供給器118は、空気を燃焼器103に供給するファンである。原料供給経路114は、原料供給器102から水素生成装置101にメタンを供給する経路である。
水供給経路115は、水供給器117から水素生成装置101に水を供給する経路である。空気供給経路116は、空気供給器118から燃焼器103に空気を供給する経路である。
燃焼器103は、燃料と空気を混合して燃焼させることで水素生成装置101を加熱できるように配置されている。
水素含有ガス経路110は、水素生成装置101から排出される水素含有ガスをアノード流路106に供給する経路である。
アノードオフガス経路111は、アノード流路106から排出されるガスを、燃焼器103に供給する経路である。
カソードオフガス経路112は、カソード流路107から排出される精製水素ガスを、水素貯蔵器120に供給する経路である。水素貯蔵器120は、精製水素ガスを貯蔵可能なタンクである。パージガス供給経路113は、精製水素ガスを水素貯蔵器120から原料供給経路114へ供給する経路である。水素供給経路119は、水素利用機器151に精製水素ガスを供給する経路である。
カソードオフガス弁121は、カソードオフガス経路112上の電磁弁である。パージガス弁122は、パージガス供給経路113上の流量調整弁であり、パージガス供給経路113を流れる精製水素ガスの流量を調節する。水素供給弁125は、水素供給経路119上の流量調整弁であり、水素供給経路119を流れる精製水素ガスの流量を調節する。
制御器131は、原料供給器102と、水供給器117と、空気供給器118と、電源109と、カソードオフガス弁121と、パージガス弁122と、水素供給弁125とを制御する装置である。
水素利用機器151は、水素生成システム141から供給される精製水素ガスを利用して発電する燃料電池である。
以上のように構成された本実施の形態の水素生成システム141について、以下その動作、作用を説明する。以下の動作は、制御器131が、水素生成システム141の、原料供給器102、燃焼器103、水供給器117、空気供給器118、電源109、カソードオフガス弁121、パージガス弁122、水素供給弁125を、それぞれ制御することによって行われる。
水素生成システム141の動作とは、待機工程、起動工程、水素生成工程、停止工程、水素供給工程の5工程である。待機工程、起動工程、水素生成工程、停止工程は、この順序で実行される。
水素供給工程は、水素貯蔵器120に貯蔵された精製水素ガスを水素利用機器151に供給する工程であり、水素貯蔵器120に十分な量の精製水素ガスが貯蔵されている状況下においては、他の4工程とは独立的に動作する。水素貯蔵器120に十分な量の精製水素ガスが貯蔵されていない状況下においては、水素生成工程によって水素貯蔵器120に十分な量の精製水素ガスが貯蔵されるまで、水素供給工程を実施しない。
外部から制御器131に対して水素供給工程の開始が指示されると、制御器131は、その指示があるまで閉状態であった水素供給弁125を開状態にするとともに、水素供給弁125の開度を調整することによって水素供給経路119を流れる精製水素ガスの流量を調整し、水素利用機器151に精製水素ガスを供給する。
精製水素ガスは、水素貯蔵器120の内部の圧力によって水素貯蔵器120から水素供給経路119を通って水素利用機器151まで流れる。
また、外部から制御器131に対して水素供給工程の停止が指示されると、制御器131は、水素供給弁125を閉状態にして、水素利用機器151への精製水素ガスの供給を停止する。
待機工程とは、水素生成装置101の水素生成動作と、電源109の動作とが、それぞれ停止している工程である。待機工程では、原料供給器102、燃焼器103、水供給器117、空気供給器118、電源109は、いずれも動作していない。また、カソードオフガス弁121とパージガス弁122は、いずれも閉状態である。待機工程において、水素供給工程を実施しない場合は、水素供給弁125は閉状態である。
起動工程とは、水素生成装置101を、水素含有ガスの生成が可能な温度まで加熱昇温する工程である。水素生成装置101の温度は温度検知器104によって検知する。外部から制御器131に対して、起動工程の開始が指示されると、制御器131は、カソード
オフガス弁121とパージガス弁122の閉状態は維持しながら、原料供給器102を動作させて、メタンを、原料供給経路114を経由して水素生成装置101に供給する。
メタンは、水素生成装置101から排出された後、水素含有ガス経路110と、アノード流路106と、アノードオフガス経路11を通流して、燃焼器103に供給される。また、空気供給器118が動作すると、空気が空気供給経路116を経由して燃焼器103に供給される。また、制御器131は、燃焼器103に着火動作を実施させる。
燃焼器103において、空気とメタンの混合ガスを燃焼させることにより、水素生成装置101を200~300℃程度になるまで加熱する。水素生成装置101が200~300℃程度に加熱されたことを温度検知器104により検知したら、制御器131は、水供給器117を起動させる。
水供給器117が動作すると、水が水供給経路115を通って水素生成装置101に供給される。水素生成装置101に供給された水は、燃焼器3によって加熱されて、200~300℃程度の高温となった水素生成装置101の内部で水蒸気となり、メタンと混合された状態で、水素生成装置101に搭載された改質触媒に供給される。
燃焼器103が、さらに水素生成装置101を加熱し、400~600℃程度となった状態で、改質触媒において、メタンと水蒸気から水素含有ガスを生成する改質反応が発生する。
電気化学デバイス108での水素製造動作に必要な純度の水素含有ガスが生成するためには、600℃程度まで水素生成装置101を加熱する必要がある。水素生成装置101が600℃程度に達した時点で起動工程は完了して、水素生成工程に移行する。
水素生成工程とは、水素生成装置101が水素含有ガスを生成し、その水素含有ガスから電気化学デバイス108が精製水素ガスを生成し、その精製水素ガスを、水素貯蔵器120に安定的に継続して供給する工程である。
水素生成工程において、制御器131は、パージガス弁122の閉状態は維持して、カソードオフガス弁121を開状態にする。水素生成装置101から排出された水素含有ガスは、水素含有ガス経路110とアノード流路106とを経由してアノード123へ供給される。
制御器131は、アノード123の電位をカソード124の電位よりも高くして、アノード123から電解質膜105を経由してカソード124へ直流電流が流れるように、電源109を動作させる。
アノード123に水素含有ガスが供給されている状態で、アノード123から電解質膜105を経由してカソード124へ電流が流れることにより、アノード123では、(化1)の酸化反応が起こり、カソード124では、(化2)の還元反応が起こる。
アノード123では、水素含有ガスに含まれる水素(H2)が、電子(2e-)と水素イオン(2H+)に分けられ、水素イオン(2H+)は、電解質膜105を通り抜けてカソード124へと移動する。電子(2e-)は、電源109を経由してカソード124へと移動する。
カソード124へ移動した水素イオン(2H+)は、カソード124で電子(2e-)を受け取って水素(H2)へと変化する。
このようにカソード124で水素を発生させることで、電気化学デバイス108におけるアノード123に供給された水素含有ガスから、水素をカソード124へ移動させることができ、水素含有ガスよりもより純度の高い精製水素ガスを生成することができる。
そして、電気化学デバイス108で生成された精製水素ガスは、カソードオフガス経路112を通って水素貯蔵器120へ供給される。
電気化学デバイス108で生成される精製水素ガスの量は、原料供給器102から水素生成装置101へのメタンの流量と、水供給器117から水素生成装置101への水の流量と、電源109によって電気化学デバイス108に流れる電流量(電流値)を操作することにより制御される。
具体的には、制御器131が、水素貯蔵器120に供給する精製水素ガス流量に応じた電流値を算出し、その電流値の電流を流すように電源109に指示する。同時に、制御器131が、温度検知器4によって検知される水素生成装置101の温度を監視しながら、原料供給器102と水供給器117を操作し、原料供給器102から水素生成装置101へのメタンの流量と水供給器117から水素生成装置101への水の流量とを調整することで、水素生成装置101の温度を制御する。
なお、原料供給器102から水素生成装置101へのメタンの流量と水供給器117から水素生成装置101への水の流量との比率は、ほぼ一定にする。
水素生成装置101においては、改質反応によってメタンと水蒸気から水素含有ガスが生成されるが、一部のメタンは水素含有ガス中に残存し、水素含有ガス経路110、アノード流路106、アノードオフガス経路111を経由して燃焼器103へと供給される。また、アノード流路106から排出されるガス中には、水素が残存し、この水素もアノードオフガス経路111を経由して燃焼器103へと供給される。
空気供給器118は、燃焼用の空気を、空気供給経路116を経由して、燃焼器103に供給する。アノードオフガス経路111から燃焼器103に供給されるメタン及び水素と、空気供給経路116から燃焼器103に供給される空気とが、燃焼器103にて混合されて、燃焼され、この燃焼熱により、燃焼器103は水素生成装置101を加熱する。
燃焼器103からの加熱によって、水素生成装置101の温度は、600℃程度の高温に維持されて、水素含有ガスを安定的に生成することができる。
外部から制御器131に停止工程開始の指示があるまで、水素生成工程が保持される。
停止工程とは、水素生成装置101の水素生成動作を停止させる工程である。この停止工程は、水素生成装置101の温度を低下させる第1停止工程と、水素生成装置101の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程と、に分かれる。
外部から制御器131に停止工程開始の指示があると、第1停止工程が開始される。
第1停止工程の開始時には、制御器131が、原料供給器102からのメタンの流量を徐々に減少させる。また、制御器131が、電源109の電流を停止するとともに、カソードオフガス弁121を閉状態にする。さらに、制御器131が、メタンの流量にあわせて、水の流量や空気の流量も減少させるように、水供給器117と空気供給器118を、それぞれ制御する。
水素生成装置101に供給されるメタンの流量の減少に伴い、アノードオフガス経路111を流れる水素を含むメタンの流量が減少して、燃焼器103における燃焼量(燃焼器103による水素生成装置101の加熱量)が低下することにより、水素生成装置101の温度が低下する。
水素生成装置101の温度が所定の温度T℃以下になった段階で、第1停止工程から第2停止工程に移行する。
第2工程開始時には水素生成装置101の内部に水蒸気が存在しており、水素生成装置101の温度低下によって水蒸気が結露すると、水素生成装置101における改質触媒が水に濡れる恐れがある。改質触媒は水に濡れると劣化する性質を持つため、改質触媒が結露によって濡れる前に、水素生成装置101の内部に存在する水蒸気を排出する必要がある。
一方、改質触媒は、400℃以上の温度で水蒸気が存在しない状況下でメタンに触れると、メタンの熱分解が発生し、改質触媒の表面に炭素が析出することによって触媒が劣化するという性質をもつ。
したがって、水蒸気の排出を行う第2停止工程を開始する所定の温度T℃は、水蒸気の結露が発生せず、なおかつメタンの熱分解が発生しない温度が望ましく、本実施の形態では300℃とする。
第2停止工程の開始時においては、制御器131が、原料供給器102によるメタンの供給と、水供給器117による水の供給を、それぞれ停止させるとともに、パージガス弁122を開状態にさせる。また、制御器131が、空気供給器118に空気供給動作をさせ、燃焼器3に燃焼(着火)動作をさせる。
水素貯蔵器120の精製水素ガスは、水素貯蔵器120の内部の圧力によって、水素貯蔵器120からパージガス供給経路113を経由して原料供給経路114を流れ、原料供給経路114から水素生成装置101に精製水素ガスが供給される。
パージガス弁122は一定の流量の精製水素ガスが流れるように制御器131によって制御される。水素生成装置101は精製水素ガスによってパージされ、水素生成装置101における水蒸気は、水素生成装置101から排出された後、水素含有ガス経路110、アノード流路106、アノードオフガス経路111、燃焼器103を経由して、水素生成システム141の外部へと排出される。
水素生成装置101の内部の水蒸気を十分に排出するためには、水素生成装置101のガス経路の内容積に対して十分な体積のガスを供給する必要があり、本実施の形態では水素生成装置101の容積の約3倍の体積の精製水素ガスを水素生成装置101に供給した段階で第2停止工程完了とする。
第2停止工程においては、水素生成装置101のガス経路の内容積よりも多くの体積の精製水素ガスが供給されるため、精製水素ガスは、水素生成装置101から排出されて、水素含有ガス経路110、アノード流路106、アノードオフガス経路111、を経由して燃焼器103に供給され、燃焼器103にて精製水素ガスが空気供給器118からの空気と混合されて完全燃焼された後、水蒸気となって水素生成システム141から外部に排出される。
本実施の形態では、水素生成装置101をパージするガスに精製水素ガスを使用しているため、水素生成装置101をパージするガスにメタンを用いた場合よりも、第2停止工程において、燃焼器103における燃焼熱を小さくすることができ、水素生成装置101の加熱を抑制できる。
これにより、水素生成装置101の温度を所定の温度T℃(300℃)以下に保った上で、精製水素ガスを連続的に供給できるため、第2停止工程の停止動作時間を短縮することができる。
第2停止工程で所定の体積の精製水素ガスの供給が完了したら、制御器131がパージガス弁122を閉状態にさせることにより、精製水素ガスの供給を停止する。また、制御器131が、空気供給器118による燃焼器103への空気の供給を停止させることにより、燃焼器103の燃焼動作を停止させる。これにより第2停止工程は完了となる。
第2停止工程が完了したら水素生成システム141における停止工程は完了となり、待機工程に移行する。
以上のように、本実施の形態の水素生成システム141は、炭化水素系の原料ガスとしてのメタンと水蒸気から水素含有ガスを生成する水素生成装置101と、原料供給器102から水素生成装置101にメタンを供給する原料供給経路114と、水供給器117から水素生成装置101に水を供給する水供給経路115と、電解質膜105の両主面をアノード123とカソード124とで挟み、アノード123にガスを供給することが可能となるように構成されたアノード流路106に水素含有ガスを供給して、アノード123とカソード124との間に所定方向の電流を流すことで、カソード124から水素含有ガスよりも水素の純度が高い精製水素ガスを精製する電気化学デバイス108と、水素生成装置101から排出された水素含有ガスをアノード流路106に供給する水素含有ガス経路110と、アノード流路106からアノードオフガス経路111に排出されたガスを燃焼して水素生成装置101を加熱する燃焼器103と、カソード124から排出される精製水素ガスの少なくとも一部を貯蔵する水素貯蔵器120と、カソード124からカソード流路107を経て排出された精製水素ガスを水素貯蔵器120に供給するためのカソードオフガス経路112と、水素貯蔵器120と原料供給経路114とを連通させるパージガス供給経路113と、水素生成装置101が水素含有ガスを生成しているときにパージガス供給経路113を閉塞するパージガス弁122と、精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給するための水素供給経路119と、精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給するときに水素供給経路119を開放し精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給しないときに水素供給経路119を閉塞する水素供給弁125と、制御器131と、を備えている。
そして、本実施の形態の水素生成システム141は、水素生成装置101の水素生成動作を停止する停止工程における、水素生成装置101の温度を低下させる第1停止工程の後の、水素生成装置101の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程の開始時において、制御器131が、原料供給器102によるメタンの供給と、水供給器117による水の供給を、それぞれ停止させるとともに、パージガス弁122を開状態にさせる。さらに、制御器131が、空気供給器118に空気供給動作をさせ、燃焼器3に燃焼(着火)動作をさせる。
これにより、原料供給器102が原料供給経路114へのメタンの供給を停止すると共に、パージガス弁122がパージガス供給経路113を開放して水素貯蔵器120と原料供給経路114とが連通して、水素貯蔵器120からパージガス供給経路113に流出した精製水素ガスが、原料供給経路114から水素生成装置101と水素含有ガス経路11
0とアノード流路106とアノードオフガス経路111とを経由して燃焼器103に流れて燃焼器103で燃焼される。
本実施の形態の水素生成システム141においては、水素生成装置101の第2停止工程において、単位体積当たりの燃焼熱がメタンよりも小さい精製水素ガスを水素生成装置101のパージに用いて、燃焼器103で燃焼させる構成をとることにより、メタンを水素生成装置101のパージに用いた場合よりも、水素生成装置101の加熱を抑制できるため、停止動作時間を短縮することができる。これにより、水素生成システム141の稼働率の低下を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、水素生成装置101に改質触媒を備えたが、改質触媒の後段にCO低減触媒を備えてもよい。また、水素生成装置101に供給する原料ガスとしてメタンを用いたが、エタンやプロパンなどの炭化水素系ガスであっても同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の水素生成システムの概略構成を示すブロック図は、図3に示す実施の形態2の水素生成システム141の概略構成を示すブロック図と同じである。
実施の形態3の水素生成システム141の各構成要素は、実施の形態2の水素生成システム141の各構成要素と同じであるため、重複する説明は省略する。
本実施の形態の水素生成システム141について、以下その動作、作用を説明する。以下の動作は、制御器131が、水素生成システム141の、原料供給器102、燃焼器103、水供給器117、空気供給器118、電源109、カソードオフガス弁121、パージガス弁122、水素供給弁125を、それぞれ制御することによって行われる。
本実施の形態の水素生成システム141の動作は、実施の形態2の水素生成システム141の動作と同様に、待機工程、起動工程、水素生成工程、停止工程、水素供給工程の5工程である。待機工程、起動工程、水素生成工程、停止工程は、この順序で実行される。停止工程以外については、実施の形態2の水素生成システム141と同じであるため、説明を省略する。
本実施の形態の水素生成システム141の停止工程は、実施の形態2と同様に、水素生成装置101の温度を低下させる第1停止工程と、水素生成装置101の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程と、に分かれる。
外部から制御器131に停止工程開始の指示があると、第1停止工程が開始される。
第1停止工程は、実施の形態2と同じであるため、説明を省略する。
実施の形態2と同様に、水素生成装置101の温度が所定の温度T℃以下になった段階で、第1停止工程から第2停止工程に移行する。所定の温度T℃は、実施の形態2と同様に、300℃とした。
第2停止工程の開始時においては、制御器131が、原料供給器102によるメタンの供給と、水供給器117による水の供給を、それぞれ停止させるとともに、パージガス弁122を開状態にさせる。
また、第2停止工程開始時において、制御器131は、アノード123の電位をカソー
ド124の電位よりも高くして、アノード123から電解質膜105を経由してカソード124へ直流電流が流れるように、電源109を動作させるとともに、カソードオフガス弁121を開状態にする。
水素貯蔵器120の精製水素ガスは、水素貯蔵器120の内部の圧力によって、水素貯蔵器120からパージガス供給経路113を経由して原料供給経路114に流れ、原料供給経路114から水素生成装置101に精製水素ガスが供給される。
パージガス弁122は所定の流量の精製水素ガスが流れるように制御器131によって制御される。水素生成装置101は精製水素ガスによってパージされ、水素生成装置101における水蒸気は、水素生成装置101から排出された後、水素含有ガス経路110、アノード流路106、アノードオフガス経路111、燃焼器103を経由して、水素生成システム141の外部へと排出される。
水素生成装置101の内部の水蒸気を十分に排出するために、水素生成装置101のガス経路の容積の約3倍の体積の精製水素ガスを水素生成装置101に供給した段階で第2停止工程完了とする。
第2停止工程においては、水素生成装置101のガス経路の内容積よりも多くの体積の精製水素ガスが供給されるため、精製水素ガスは、水素生成装置101から排出されて、水素含有ガス経路110、アノード流路106へ供給される。
ここで、アノード123とカソード124との間には電流が流れているため、アノード流路106に供給された精製水素ガスの少なくとも一部がカソード124へ移動することにより、アノードオフガス経路111を経由して燃焼器103に供給される精製水素ガスの量が低下する。
精製水素ガスの燃焼器103への供給量が低下すると、水素生成装置101の加熱を、実施の形態2に比べてさらに抑制することができる。
これにより、水素生成装置101の温度を所定の温度T℃(300℃)以下に保った上で、水素生成装置101に供給する精製水素ガス流量を高めることができるため、所定の体積を供給する時間が短縮でき、第2停止工程の停止動作時間を短縮することができる。また、カソード124に移動した精製水素ガスは、カソードオフガス経路112を経由して水素貯蔵器120に供給される。
所定の体積の精製水素ガスの供給が完了したら、制御器131はパージガス弁122を閉状態にさせることにより、水素生成装置101への精製水素ガスの供給を停止する。また、制御器131は空気供給器118による燃焼器103への空気の供給を停止させることにより、燃焼器103の燃焼動作を停止させる。さらに、制御器131は、電源109の電流を停止させる。これを以って第2停止工程は完了となる。
第2停止工程が完了したら水素生成システム141における停止工程は完了となり、待機工程に移行する。
以上のように、本実施の形態の水素生成システム141は、炭化水素系の原料ガスとしてのメタンと水蒸気から水素含有ガスを生成する水素生成装置101と、原料供給器102から水素生成装置101にメタンを供給する原料供給経路114と、水供給器117から水素生成装置101に水を供給する水供給経路115と、電解質膜105の両主面をアノード123とカソード124とで挟み、アノード123にガスを供給することが可能と
なるように構成されたアノード流路106に水素含有ガスを供給して、アノード123とカソード124との間に所定方向の電流を流すことで、カソード124から水素含有ガスよりも水素の純度が高い精製水素ガスを精製する電気化学デバイス108と、水素生成装置101から排出された水素含有ガスをアノード流路106に供給する水素含有ガス経路110と、アノード流路106からアノードオフガス経路111に排出されたガスを燃焼して水素生成装置101を加熱する燃焼器103と、カソード124から排出される精製水素ガスの少なくとも一部を貯蔵する水素貯蔵器120と、カソード124からカソード流路107を経て排出された精製水素ガスを水素貯蔵器120に供給するためのカソードオフガス経路112と、水素貯蔵器120と原料供給経路114とを連通させるパージガス供給経路113と、水素生成装置101が水素含有ガスを生成しているときにパージガス供給経路113を閉塞するパージガス弁122と、精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給するための水素供給経路119と、精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給するときに水素供給経路119を開放し精製水素ガスを水素貯蔵器120から水素利用機器151に供給しないときに水素供給経路119を閉塞する水素供給弁125と、制御器131と、を備えている。
そして、本実施の形態の水素生成システム141は、水素生成装置101の水素生成動作を停止する停止工程における、水素生成装置101の温度を低下させる第1停止工程の後の、水素生成装置101の内部に存在する水蒸気を排出する第2停止工程の開始時において、制御器131が、原料供給器102によるメタンの供給と、水供給器117による水の供給を、それぞれ停止させるとともに、パージガス弁122を開状態にさせる。さらに、制御器131が、空気供給器118に空気供給動作をさせ、燃焼器3に燃焼(着火)動作をさせる。
また、第2停止工程開始時において、制御器131は、アノード123の電位をカソード124の電位よりも高くして、アノード123から電解質膜105を経由してカソード124へ直流電流が流れるように、電源109を動作させるとともに、カソードオフガス弁121を開状態にする。
これにより、原料供給器102が原料供給経路114へのメタンの供給を停止すると共に、パージガス弁122がパージガス供給経路113を開放して水素貯蔵器120と原料供給経路114とが連通して、水素貯蔵器120からパージガス供給経路113に流出した精製水素ガスが、原料供給経路114から水素生成装置101と水素含有ガス経路110とアノード流路106とアノードオフガス経路111とを経由して燃焼器103に流れて燃焼器103で燃焼される。
このとき、アノード流路106に流入した一部の精製水素ガスが、アノード123からカソード124へ移動するため、その分、燃焼器103へ流れる精製水素ガス量を減少させることができるため、水素生成装置101の加熱を抑制でき、停止動作時間をより短縮することが可能となる。
本実施の形態の水素生成システム141では、水素生成装置101のパージに用いた精製水素ガスの一部をアノード123からカソード124へ移動させて回収し、水素貯蔵器120に供給できるため、精製水素ガスの消費を抑えることができ、システムのエネルギー効率を高めることができる。
なお、本実施の形態の第2停止工程においては、アノード流路106に供給される精製水素ガスの少なくも一部をカソード124へ移動すると述べたが、全ての精製水素ガスを移動させてもよい。また、水素生成装置101に供給する原料ガスとしてメタンを用いたが、エタンやプロパンなどの炭化水素系ガスであっても同様の効果が得られる。