JP7063631B2 - ロールイン用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明はベーカリー食品製造時、特にペストリー食品製造時に用いられるロールイン用油脂組成物に関する。
デニッシュ、クロワッサン、パイ等の層状構造を有する、ペストリー食品の製造では、生地に油脂をロールインし、生地中に薄い油脂層を多数形成させることが必要である。
ペストリー食品を製造するには、まず、可塑性油脂組成物(以下、単にロールイン用油脂組成物と記載する場合がある)をドウの間に挟み込み、折り畳み、圧延を繰り返すことで生地中に薄い油脂層を多数形成させる。この油脂層は、ドウ層の相互の付着を防止する役割を果たし、続く焼成において、生地から発生する水蒸気や炭酸ガスの発散を遮り、その結果として製品を層状に膨張させ、ペストリー食品にサクサクとしたフレーキーな食感を付与する。
良好なペストリー食品を得るために、ロールイン用油脂組成物は、練込油脂組成物とは全く異なる、「良好なコシ」及び「良好な伸展性」という、相反する2つの特有の物性を両立することが求められる。
即ち、ロールイン用油脂組成物が生地へ練り込まれることや、ドウ層同士が結着するのを防ぎ、ドウ層が均一な層を形成できるよう、ロールイン用油脂組成物には適度な硬さ、すなわち良好なコシが必要となる。また、折り畳み、圧延を繰り返す過程で、組成が異なるドウ生地とロールイン用油脂組成物との間に伸展性に差が生じないよう、ロールイン用油脂組成物には適度な軟らかさ、すなわち良好な伸展性も求められる。
ここで、従来、ロールイン用油脂組成物に良好なコシを付与する観点からパーム系油脂を使用することがあり、良好な伸展性を付与する観点からラウリン系油脂を使用することがあった。
パーム系油脂は、結晶が安定化し密にパッキングすることから、ロールイン用油脂組成物に良好なコシを付与することができる。一方で、パーム系油脂を主体とするロールイン用油脂組成物では、良好な伸展性が得られにくい他、結晶の十分な析出に時間を要するため、生産性が悪く、経日安定性が劣るものとなりやすかった。
また、ラウリン系油脂は、製造ライン内で結晶化・可塑化を十分に行うことができることから、ロールイン用油脂組成物に良好な伸展性を付与することができ、且つ経日安定性も良好であり、生産性に優れるという利点がある。一方で、ラウリン系油脂を主体とするロールイン用油脂組成物では、コシが弱く、ベーカリー食品、特に層状構造を有するペストリー食品の生地を製造する過程で、生地中に練り込まれやすいという問題があった。
そのため、パーム系油脂とラウリン系油脂を併用することで、相反する2つの課題を解決し、ロールイン用油脂組成物にコシと伸展性を付与する検討がなされてきた。
パーム系油脂とラウリン系油脂を併用したロールイン用油脂組成物として、例えば特許文献1には、ハードストックとしてラウリン系ハードバターを使用し、これにパーム系油脂のランダムエステル交換油脂及び液体油が配合されたシート状油中水型乳化油脂組成物が開示されている。また、パーム系油脂とラウリン系油脂を原料とするエステル交換油脂を用いたロールイン用油脂組成物として、例えば特許文献2や特許文献3が挙げられる。
しかし、これら従来技術には次のような課題があった。
特許文献1の手法ではラウリン系ハードバターを5~50重量%含有すること、また10℃でのSFC(Solid Fat Content、固体脂含量)が40%以上であることが求められるため、配合上の制約が大きかった。加えて、沃素価の低いパーム核油起源固体脂を用いる必要があるため、可塑性や伸展性が乏しくなりやすかった。
特許文献2の手法についても、パーム系油脂とラウリン系油脂を原料とするエステル交換油脂の沃素価が低いため、他の油脂との相溶性が悪かった。そのため、特許文献2の手法により製造されたロールイン用油脂組成物の、可塑性や伸展性が乏しくなり、ペストリー生地調製時の圧延で油脂層が割れやすかった。
特許文献3はパーム油及び/又はパーム分別軟部油を主体とする油脂配合であり、冷却可塑化後、生じる結晶がβ型主体の結晶型をとりやすいため、経日的に、所謂ブツやザラといった、品質低下を引き起こしやすいものであった。
特開2008-193974号公報 特開2009-034089号公報 特開2015-123016号公報
本発明が解決しようとする課題は以下の2点である。
(i)良好なコシや伸展性を有するロールイン用油脂組成物を提供すること。
(ii)ブツやザラといった経時的な劣化が抑制されたロールイン用油脂組成物を提供すること。
本発明者らによる検討の結果、含有する油相の脂肪酸組成、及びトリグリセリド組成が特定条件を満たすことによって、良好な折込特性を有し、且つ経時安定性を有するロールイン用油脂組成物が得られるという知見を得た。
また、得られるロールイン用油脂組成物の、SFC(Solid Fat Content、固体脂含量)と硬さの関係に着目して検討をすすめたところ、ある一定の温度におけるレオ値(硬さ)に対して、相対的にSFCが高い場合には、折込操作時に、油脂層がドウ層間に留まりやすく、ペストリー食品の好ましい浮きや内層が得られる一方で、伸展性が乏しくなりやすいという特徴があることを知見した。また、相対的にSFCが低い場合には、折込操作時に、伸展性は十分有するものの、ロールイン用油脂組成物のコシが不足し、ドウ層間にペストリー食品の好ましい浮きや内層が得られにくいという傾向があることを知見した。これらのことから、SFCあたりの硬さを適切な範囲に調整することで、十分な伸展性やコシを有するロールイン用油脂組成物が得られ、且つ該ロールイン用油脂組成物を用いることで良好な浮きと内層を有するペストリー食品が得られるという着想に至った。
本発明はこれらの着想と知見に基づくものであり、油脂組成物における油相が次の条件(1)~(3)を満たし、前記油脂組成物が条件(4)の特性を有するロールイン用油脂組成物を用いることにより上記課題を解決するものである。
(1)前記油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が2.0~10.0質量%である。
(2)前記油相の脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基(P)1質量部に対するラウリン酸残基(L)の質量比(L/P)が、0.07~0.30である。
(3)前記油相中のトリラウロイルグリセロールの含有量が2.5質量%以下である。
(4)前記組成物の15℃調温時の固体脂含量(SFC)あたりの硬さ(単位:gf/cm・%)が30~100である。
本発明に依れば、良好なコシや伸展性を有し、ブツやザラといった経時的な劣化が抑制されたロールイン用油脂組成物が得られる。
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。
尚、本発明における「折込特性」とは、ロールイン用油脂組成物に求められる物性である、「コシ」と「伸展性」を共に指すものであり、ベーカリー生地を調製する過程の中で、ロールイン用油脂組成物が、ドウに練り込まれることなく、ドウと共に伸びる性質を有していることを示す。
また、「経時安定性」とは、ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化に対する安定性を指すものである。
また、「ベーカリー食品の良好な浮き」とは、十分に窯伸びし、比容積が大きくなることであり、「ベーカリー食品の良好な内層」とは、クラムの気泡が大きく気泡膜が薄い状態のことである。
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油脂組成物における油相が下記条件(1)~(3)を満たし、前記油脂組成物が条件(4)の特性を有するものである。
(1)前記油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が2.0~10.0質量%である。
(2)前記油相の脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基(P)1質量部に対するラウリン酸残基(L)の質量比(L/P)が、0.07~0.30である。
(3)前記油相中のトリラウロイルグリセロールの含有量が2.5質量%以下である。
(4)前記組成物の15℃調温時の固体脂含量(SFC)あたりの硬さ(単位:gf/cm・%)が30~100である。
尚、本発明における「油相」とは、油脂組成物中の、油脂や油溶性の成分を合わせたものを指す。
はじめに、本発明のロールイン用油脂組成物が満たすべき条件(1)~(4)について説明する。
<条件(1)>
本発明のロールイン用油脂組成物は、油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が2.0~10.0質量%である。
ラウリン酸残基の含有量を2.0質量%以上とすることで、下述するロールイン用油脂組成物の製造中の冷却時に、十分に結晶が生じやすくなるため、ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化を防止することができる。
また、ラウリン酸残基の含有量を10.0質量%以下とすることで、ベーカリー生地調製時に良好な伸展性を示すと共に、ドウ層同士が結着するのを防ぎ、ドウ層が均一な層を形成できる、ロールイン用油脂組成物が得られる。
尚、ラウリン酸残基の含有量を、好ましくは3.0~7.5質量%、より好ましくは3.0~6.0質量%とすることで、経時安定性や折込特性に一層優れたロールイン用油脂組成物を得ることができる。
油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含量については、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
尚、油相の脂肪酸組成の測定については、以下同様である。
<条件(2)>
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油相の脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基(P)1質量部に対するラウリン酸残基(L)の質量比(L/P)が0.07~0.30である。
脂肪酸組成におけるラウリン酸残基とパルミチン酸残基の質量比を上記範囲内となるように調整することにより、ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化を抑えることができる。また、ロールイン用油脂組成物の経時的な油にじみの発生も抑制することができる。さらに、コシ・伸展性に優れた折込用油脂組成物を得ることができる。
尚、これらの効果が得られる理由については現段階で不明であるが、油相の脂肪酸組成においてラウリン酸残基を適量含有させ、上記質量比とすることにより、トリグリセリド分子間で適当な密度のパッキング状態が得られると共に、結晶の産生が好ましく起こるためであると推定している。
ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化、また、油にじみの発生がより抑えられ、コシや伸展性に一層優れている折込用油脂組成物を得る観点から、上記L/Pが0.07~0.20であることが好ましく、0.10~0.20であることがより好ましい。
尚、本発明においては、前記油相の脂肪酸組成における全飽和脂肪酸残基の含有量に対する、ラウリン酸残基とパルミチン酸残基の含有量の和が、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましい。また、該含有量が、82質量%以下であることが好ましく、79質量%以下であることがより好ましい。ラウリン酸残基とパルミチン酸残基の含有量の和を上記範囲内となるように調整することにより、得られるロールイン用油脂組成物のコシと伸展性の両立が図られやすい。
<条件3>
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油相中のトリラウロイルグリセロール(トリラウリン)の含量が2.5質量%以下である。
本発明においては、折込特性を向上させると共に、経時安定性の高いロールイン用油脂組成物を得るために、前記油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基が特定範囲を満たすように含有されることが求められる。特に、トリラウリンの含有量が2.5質量%以下となるようにすることで、良好な折込特性と経時安定性を有する、ロールイン用油脂組成物が得られる。
即ち、本発明においては、ロールイン用油脂組成物の油相に含まれるトリグリセリドがラウリン酸残基を含有する場合、トリグリセリドの3つの脂肪酸残基の内、ラウリン酸残基が2つ以下、好ましくは1つとなるようにする。これによって、良好な折込特性と経時安定性を有するロールイン用油脂組成物が得られる。
トリラウリンの含有量は、1.5質量%以下となるようにすることが好ましく、1質量%以下となるようにすることがより好ましい。尚、下限は0質量%である。
<条件(4)>
本発明のロールイン用油脂組成物は、組成物の15℃調温時の固体脂含量(SFC)あたりの硬さ(単位:gf/cm・%)が30~100である。
本発明における「SFCあたりの硬さ」の値とは、ロールイン用油脂組成物の、ある温度(X℃)におけるレオ値(単位:gf/cm)を、その温度(X℃)におけるSFC(単位:%)の値で除算することにより得られる値である。
上記レオ値は常法により測定することが可能であるが、例えばレオメーター(株式会社レオテック製)にて、測定試料(例えば縦4cm×横4cm×高さ3cmに成形したもの)に対して、測定速度2cm/min、接触面積0.2cm(アダプター:直径5mmの円盤)の測定条件下で測定することが可能である。
上記SFC値は常法により測定することが可能であるが、本発明においては、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料(ロールイン用油脂組成物)のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値を使用する。即ち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値がSFCとなる。(以下、SFCの測定について同様である。)
SFCの測定について、例えば15℃におけるSFCの値を求める場合は、下述する調温方法によって調温した後、常法に従って測定する。
本発明のロールイン用油脂組成物の15℃におけるSFCあたりの硬さの値が30~100であることで、ペストリー生地を調製する際に、本発明のロールイン用油脂組成物が良好な伸展性やコシを示すため、優れた作業性が得られる。また、本発明のロールイン用油脂組成物を使用したベーカリー食品は良好な内層と浮き、良好な口溶けを有する。
尚、本発明においては、15℃におけるSFCあたりの硬さの値は、好ましくは40~75であり、45~70であることがより好ましい。
更に、本発明においては、15℃におけるSFCあたりの硬さの値が上記であることに加えて、10℃におけるSFCあたりの硬さの値が、30~120であることが好ましく、45~90であることがより好ましい。このようなロールイン用油脂組成物を調製することで、一層良好な伸展性やコシを有するロールイン用油脂組成物となりやすく、良好な内層や浮きを有するベーカリー食品が得られ易くなる。
尚、本発明のロールイン用油脂組成物を上記温度に調温する際は、目的の温度に調温された恒温槽や恒温室等で、0.5時間~1昼夜程度静置し、ロールイン用油脂組成物の品温が目的の温度で平衡となるまで調温する。
本発明では、上記条件(1)~(4)に加えて、更に前記油相が下記条件(5)を満たすことで、一層好ましい折込特性を有する、ロールイン用油脂組成物が得られる。
(5)油相のトリグリセリド組成が下記条件(a)~(c)を満たす。
(a)油相中のトリ飽和トリグリセリドの含有量が5~21質量%である。
(b)油相中のジ飽和モノ不飽和トリグリセリドの含有量が15~35質量%である。
(c)油相中のモノ飽和ジ不飽和トリグリセリドの含有量とトリ不飽和トリグリセリドの含有量の合計が45~65質量%である。
条件(5)の(a)について説明する。
本発明においては、前記油相のトリグリセリド組成において、S3(トリ飽和トリグリセリド)が5~21質量%であることが好ましい。
上記のSは飽和脂肪酸残基を表し、S3とは、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基がいずれもS、すなわち3つの脂肪酸残基がいずれも飽和脂肪酸残基であるトリグリセリドであることを表す。(以下、Sは同様の意味で用いる。)
前記飽和脂肪酸残基とは、炭素数が8~22である飽和脂肪酸残基を指す。炭素数が8~22である飽和脂肪酸残基としては、具体的には、カプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、アラキジン酸残基及びベヘン酸残基の中から選ばれた1種又は2種以上である。
前記油相のトリグリセリド組成におけるS3の含有量が上記範囲内であれば、良好なコシが得られると共に、本発明品を用いたペストリー食品において、良好な浮きが得られ、「気泡膜が厚い」「目が詰まっている」等の内層不良(パン目)の発生が抑制されやすい。
S3の含有量を、より好ましくは11~19質量%、さらに好ましくは13~18質量%とすることで、本発明品を用いたベーカリー食品の口溶けや食感が一層良好なものとなり、浮きや内層についてもより良好なものが得られ易い。
また、ブツやザラといった経時的な劣化を抑制する観点から、油相のトリグリセリド組成におけるS3には、混酸型トリグリセリド(複数種の飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリド)が30~65質量%含有されることが好ましく、35~60質量%含有されることがより好ましい。
次に条件(5)の(b)について説明する。
本発明においては、前記油相のトリグリセリド組成において、S2U(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)が15~35質量%である事が好ましい。
上記のUは不飽和脂肪酸残基を表し、S2Uとは、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基のうち2つが上記Sであり、1つがUであることを表す。(以下、Uは同様の意味で用いる。)
前記不飽和脂肪酸残基とは、炭素数が8~22である不飽和脂肪酸残基を指す。不飽和脂肪酸残基としては、例えば、パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレン酸残基、エルカ酸残基等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではなく、任意の不飽和脂肪酸残基から選ばれた1種又は2種以上からトリグリセリドが構成される。尚、健康上の理由から不飽和脂肪酸残基としては、シス体の不飽和脂肪酸残基であることが好ましい。
前記油相のトリグリセリド組成におけるS2Uの含有量が上記範囲内にあることで、本発明のロールイン用油脂組成物が良好な伸展性を有しやすくなる。また、油相の粘度や融点が低下しにくい傾向にあり、ベーカリー生地製造時に、ドウ層へ油脂層が吸収されにくくなるため、パン目となりにくく、良好な内層と浮きを有するベーカリー食品が得られ易くなる。
S2Uの含有量を、より好ましくは20~35質量%、さらに好ましくは20~30質量%とすることで、一層良好な伸展性とコシを有するロールイン用油脂組成物が得られ易い。
次に条件(5)の(c)について説明する。
本発明においては、前記油相のトリグリセリド組成において、SU2(モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド)とU3(トリ不飽和グリセリド)があわせて45~65質量%であることが好ましい。
一般的に、SU2とU3は液状油成分として油相中に存在し、ロールイン用油脂組成物においては、その物性を調整するファクターの1つとして知られている。本発明においては、油相のトリグリセリド組成における、SU2とU3を併せた含量、すなわち液状油成分の含量を、45~65質量%とすることが、適度な可塑性・伸展性を有するロールイン用油脂組成物が得られ易く、またドウ層へ油脂層が吸収されにくいため好ましい。
SU2とU3を併せた含量を、より好ましくは45~60質量%、さらに好ましくは、50~60質量%とすることで、良好な伸展性とコシとを両立したロールイン用油脂組成物が得られ易い。
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油相中に、次の油脂(A)および油脂(B)を含有することが好ましい。
油脂(A):脂肪酸組成において、ラウリン酸残基を実質的に含有せず、且つオレイン酸残基を35~55質量%含有する油脂であって、1,3-ジ-パルミトイル-2-オレオイル-グリセリロール(POP)1質量部に対する、1,2-ジ-パルミトイル-3-オレオイル-グリセリロール(PPO)の質量比(PPO/POP)が1以上である油脂。
油脂(B):脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が、35~60質量%である油脂(B-1)と、脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基の含有量が、35~50質量%であり、且つステアリン酸残基の含有量が、45~60質量%である油脂(B-2)との、ランダムエステル交換油脂。
まず油脂(A)について説明する。
本発明のロールイン用油脂組成物においては、脂肪酸組成中にラウリン酸を実質的に含有せず、且つオレイン酸を35~55質量%含有する油脂であって、POP(1,3-ジ-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロール)1質量部に対するPPO(1,2-ジ-パルミトイル-3-オレオイル-グリセロール)の質量比(PPO/POP)が1以上である油脂(A)を含有することが好ましい。
油脂(A)を含有することにより、ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化が抑制されやすくなる他、得られるロールイン用油脂組成物に良好な可塑性や伸展性を付与することができ、且つ良好なコシを両立することができるため、好ましい。
通常、パーム油や、パーム油を分別して得られたパーム分別軟部油には、POPが多く含有されているが、POPは結晶性が悪く、冷蔵保管中等の徐冷時に、β型の結晶型をとりやすく粗大な結晶となりやすいため、ロールイン用油脂組成物にそのまま含有させるとブツやザラの原因となりやすいと推察される。そのため本発明では、トリグリセリド組成中のPOP含量を減じた油脂を使用することが好ましい。
尚、本発明において、「油脂(A)がラウリン酸残基を実質的に含有しない」とは、油脂(A)の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が3質量%未満、好ましくは1.5質量%未満であることを指す。
油脂(A)の脂肪酸組成におけるオレイン酸の含有量は、より好ましくは40~55質量%、さらに好ましくは40~50質量%であることが、本発明の折込用油脂組成物に良好な可塑性や伸展性を付与し、且つ良好なコシを両立する観点から好ましい。
油脂(A)のトリグリセリド組成における、POP1質量部に対するPPOの質量比(PPO/POP)は、ブツやザラといった、経時的な品質低下を抑制する観点から、より好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。尚、PPO/POPの上限は7.0である。
油脂(A)として好ましく用いることのできる油脂としては、パーム油を常法により分別したパーム分別軟部油(パームオレイン)や、パーム分別軟部油を更に分別し得られた軟部油(パームスーパーオレイン)のランダムエステル交換油脂や、豚脂(ラード)、豚脂の分別油が挙げられる。油脂(A)として用いられる油脂の沃素価は、好ましくは50以上であり、より好ましくは52以上である。尚、沃素価の上限は工業生産可能な観点から、70である。
次に、油脂(B)について説明する。
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油相中に、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が、35~60質量%である油脂(B-1)と、脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基の含有量が、35~50質量%であり、且つステアリン酸残基の含有量が、45~60質量%である油脂(B-2)との、ランダムエステル交換油脂である油脂(B)が含有されることが好ましい。
油脂(B)の原料である油脂(B-1)としては、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が35~60質量%である油脂が用いられる。ラウリン酸含量が上記範囲内にある油脂を(B-1)とすることで、上記条件(1)~(4)を好ましく満たすことができる。
油脂(B-1)として使用することのできる油脂は、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が35~60質量%である食用油脂であれば特に限定されないが、例えばパーム核油及びヤシ油、並びにこれらを含有する油脂配合物に、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。
尚、例えばパーム核油やヤシ油に対して水素添加処理を施して得られた硬化油、及び極度硬化油は、ロールイン用油脂組成物の可塑性や伸展性が乏しくなりやすいため、(B-1)として選択されない。
また、油脂(B-1)は、脂肪酸組成におけるオレイン酸残基の含有量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、適度なコシと伸展性を両立する観点から、オレイン酸含有量の上限値は25質量%である。
尚、油脂(B-1)の沃素価は好ましくは5~30であり、より好ましくは5~25である。
油脂(B)の原料である油脂(B-2)としては、脂肪酸組成におけるパルミチン酸の含有量が35~50質量%であり、且つステアリン酸の含有量が45~60質量%である油脂が用いられる。
油脂(B-2)として用いることのできる油脂としては、脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基とステアリン酸残基の含量をそれぞれ満たせば任意の食用油脂を用いることが可能であるが、好ましくはパーム油の極度硬化油、パーム分別軟部油の極度硬化油、パームスーパーオレインの極度硬化油等が挙げられ、より好ましくはパーム油の極度硬化油が用いられる。
尚、油脂(B-2)として極度硬化油を用いる場合には、沃素価3以下であることが、トランス脂肪酸を実質的に含有させない観点から、好ましい。
油脂(B)は、ブツやザラといった、経時的な粗大結晶の産生に伴って生じる、外観や物性の劣化を防ぎ、折込特性を向上させる観点から、エステル交換前の油脂配合物中、油脂(B-1)を40質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上含有することがより好ましい。また、油脂(B)と、油脂(B)以外の食用油脂との相溶性の観点から、油脂(B-1)の含有量は85質量%以下であることが好ましい。尚、残部を上記油脂(B-2)が占める。
油脂(A)及び油脂(B)として用いられるランダムエステル交換油脂を得るためのランダムエステル交換の手法については、常法により行うことができる。例えば、ナトリウムメトキシドなどの化学的触媒を用いる手法であっても、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼ等の酵素を用いる手法であっても行うことができる。
ロールイン用油脂組成物の油相中における、油脂(A)と油脂(B)をあわせた含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。尚、油脂(A)と油脂(B)をあわせた含有量の上限は100質量%である。
ロールイン用油脂組成物の油相中における、油脂(A)と油脂(B)をあわせた含有量を50質量%以上とすることで、優れた折込特性が得られ易い。
ロールイン用油脂組成物の油相中での油脂(A)と油脂(B)は、それぞれ上記条件(1)~(4)を満たすように任意に含有されるが、良好な折込特性を有する折込用油脂組成物を得る観点、経時的な安定性、また、生産性の観点から、好ましくは油脂(B)1質量部に対する油脂(A)の質量比が2.0~10.0であることが好ましく、2.5~9.0であることがより好ましく、2.5~7.0であることがさらに好ましい。
本発明においては、得られるロールイン用油脂組成物が上記条件(1)~(4)を満たせば、上に示した油脂(A)及び油脂(B)の他、任意の食用油脂を好ましく使用することができる。使用する食用油脂の種類については特に限定されないが、例えば、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
本発明においては、油脂(A)と油脂(B)に加えて、これらの油脂を1種又は2種以上油相中に含有させることができるが、ロールイン用油脂組成物の物性を調整する観点から、融点が40℃以上の油脂、及び/又は、液状油を含有することが好ましい。尚、良好な伸展性とコシを有するロールイン用油脂組成物を得る観点から、これらの油脂の含有量は、ロールイン用油脂組成物の油相中、50質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、パーム油のような、トリグリセリド組成中にPOP等の対称型トリグリセリドを多く含有する油脂は、結晶性が悪く、製造後、経時的に粗大な結晶を生じやすいため、経時的な安定性に優れたロールイン用油脂組成物を生産する観点から、含有させないことが好ましい。また、含有させる場合においては、単独、あるいは他の油脂と混合した油脂配合物に対してエステル交換処理を施したものを用いることが好ましい。
本発明においては、パーム核油やヤシ油のような、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が多い油脂は、良好なコシや伸展性を有し、経時的な安定性に優れたロールイン用油脂組成物を効率よく生産する観点、及びトリラウリンの含量を低下させる観点から、含有させないことが好ましい。また、含有させる場合においては、単独、あるいは他の油脂と混合した油脂配合物に対してエステル交換処理を施したものを用いることが好ましい。
本発明のロールイン用油脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、以下に示す、その他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、糖類、甘味料、乳化剤、乳製品、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等が挙げられる。
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の乳化剤として、例えば蒸留モノグリセリド、ジグリセリド、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。本発明のロールイン用油脂組成物では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン及び乳清ミネラル等が挙げられる。本発明ではこれらの乳製品の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のロールイン用油脂組成物は、水分を含まないショートニングでも水分を含有するマーガリンタイプでも構わない。水分を含有する場合の乳化型は、油中水型でも水中油型でも2重乳化型でも構わないが、伸展性とコシを両立する観点から、油脂を連続相とする油中水型乳化物であることが好ましい。
尚、本発明において「水分を含まない」とは、ロールイン用油脂組成物中の水分含量が1質量%未満であることを指す。
ロールイン用油脂組成物が油中水型乳化物である場合の水分含有量は、ロールイン用油脂組成物基準で、好ましくは10~35質量%、より好ましくは10~30質量%、最も好ましくは10~20質量%である。
水分含量を10質量%以上とすることで適度な可塑性が得られ易くなり、水分含量を35質量%以下とすることで油中水型乳化物としての乳化安定性が高まりやすく、また本発明品を用いたベーカリー食品、特にペストリー食品の内層や浮きが、好ましく得られ易くなる。
本発明のロールイン用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明のロールイン用油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、上記条件(1)~(3)を満たす油相を融解して融液とし、これを含む予備混合液を冷却することにより得ることができる。例えば、上記油相の融液をそのまま上記予備混合液として冷却することにより本発明のロールイン用油脂組成物を得ることができる。また、必要により、前記油相の融液と水相を混合・乳化した乳化液を予備混合液として冷却することにより本発明のロールイン用油脂組成物を得ることもできる。
上記水相を用いる場合、上記油相の融液と前記水相とを混合・乳化して、乳化液として予備混合液が調製される。その際、油相と水相との質量比率(前者:後者)は、好ましくは20~95:5~80、更に好ましくは50~90:10~50、最も好ましくは70~90:10~30である。本発明において油相が20質量%よりも少なく水相が80質量%よりも多いと乳化が不安定となりやすい。
次に、上記予備混合液に対して殺菌処理をすることが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また、殺菌温度は、好ましくは80~100℃、更に好ましくは80~95℃、最も好ましくは80~90℃である。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は、好ましくは40~60℃、更に好ましくは40~55℃である。
続いて、上記予備混合液の冷却、好ましくは急冷可塑化を行なう。急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行うことができる。また、開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせで行うこともできる。急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物となる。尚、製造時の衛生面が良好であること、熱交換効率が高いことから密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機を用いることが好ましい。また、急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
本発明においては、上記予備混合液を冷却機に送入する流速を、冷却速度が-0.1℃/秒超となるように設定することで、上記条件(4)を満たすロールイン用油脂組成物を得ることができる。
尚、油脂組成物における油相が上記条件(1)~(3)を満たす、ロールイン用油脂組成物においては、良好な伸展性とコシを有することは勿論、結晶性が良好であるため、該ロールイン用油脂組成物の製造時において、上記予備混合液を冷却機に送入する流速を任意に設定することができる。
ここで、通常、設定冷媒温度を一定とし、到達温度が一定である場合に、冷却機器の中を通過する流速を速めるほど、上記予備混合液の冷却速度は大きくなる。本発明においては、好ましい折込特性を有するロールイン用油脂組成物を効率よく得る観点から、好ましくは冷却速度が-2℃/秒となるまで流速を高めることができ、より好ましくは-1.5℃/秒となるまで流速を高めることができ、最も好ましくは-1℃/秒となるまで流速を高めることができる。
尚、上記のロールイン用油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
本発明のロールイン用油脂組成物を成形する際は、急冷可塑化後にシート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状とする。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mm、ブロック状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mm、円柱状:直径1~25mm、長さ5~100mm、直方体:縦5~50mm、横5~50mm、高さ5~100mmである。
本発明のロールイン用油脂組成物を用いたベーカリー食品について説明する。
本発明のベーカリー食品は、上述した本発明のロールイン用油脂組成物を含有したベーカリー生地を加熱することにより得られる。本発明のロールイン用油脂組成物が好ましく含有されるベーカリー食品としては限定されないが、特に本発明の効果が得られ易い点から、デニッシュ、パイ、クロワッサン等のペストリー食品中に、本発明のロールイン用油脂組成物を含有させることが好ましい。
尚、上記のペストリー食品としては、クロワッサンやデニッシュペストリー、パイ等の積層状の外観を呈した食品であり、チョココーティングや、グレーズ、バタークリーム、マヨネーズ等をサンド、トッピングする等の装飾を施してもよい。
本発明のロールイン用油脂組成物の使用量は特に限定されず、従来知見の通り、例えば穀粉類100質量部に対して25~60質量部程度含有含有させてもよい。
また、本発明品を用いたペストリー食品の層数は、目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、好ましくは9~256層、より好ましくは16~144層である。
以下、本発明について実施例を基にさらに詳述する。
(製造例1:ランダムエステル交換油(1)の製造)
沃素価が55のパーム分別軟部油100質量部を四口フラスコに入れ、液温110℃で真空下30分加熱した。この後、対油0.2質量%の割合でランダムエステル交換触媒のナトリウムメトキシドを加えて、液温を85℃に調整して更に真空下で1時間加熱してランダムエステル交換反応を行った後、クエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和した。次に、白土を加え漂白(白土量は対油3質量%、処理温度85℃)を行い、白土を濾別した後、脱臭(250℃、60分間、吹込み水蒸気量対油5質量%)を行って、下記の実施例・比較例に用いられるランダムエステル交換油(1)(以下、単にIE-1と記載する場合がある)を得た。
尚、IE-1は油脂(A)に相当し、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は0.67質量%、オレイン酸残基の含有量が42.6質量%、PPO/POPは2.2であった。
(製造例2:ランダムエステル交換油(2)の製造)
沃素価が60のパームスーパーオレイン(パーム分別軟部油を更に分別して得られた軟部油)を、製造例1と同様にして、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応、及び漂白・脱臭の精製処理を行い、下記の実施例・比較例に用いられるランダムエステル交換油脂(2)(以下、単にIE-2と記載する場合がある)を得た。
尚、IE-2は油脂(A)に相当し、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は0.45質量%、オレイン酸残基の含有量が45.7質量%、PPO/POPは2.2であった。
(製造例3:ランダムエステル交換油(3)の製造
パーム油に対し、沃素価が1以下となるまで水素添加を施した、パーム極度硬化油65質量部と、パーム油35質量部を溶融した状態で混合し、混合油脂とした。この混合油脂を、製造例1と同様にして、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応、及び漂白・脱臭の精製処理を行い、下に述べる実施例・比較例に用いられるランダムエステル交換油脂(3)(以下、単にIE-3と記載する場合がある)を得た。
(製造例4:ランダムエステル交換油(4)の製造
パーム核油(油脂(B-1)に相当、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は50.1質量%、沃素価17.8)50質量部と、パーム油に対し、沃素価が1以下となるまで水素添加を施した、パーム極度硬化油(油脂(B-2)に相当、脂肪酸組成中のラウリン酸残基の含有量は0.2質量%、パルミチン酸残基の含有量は44.6質量%、ステアリン酸53.6質量%)50質量部を溶融した状態で混合し、混合油脂とした。この混合油脂を、製造例1と同様にして、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応、及び漂白・脱臭の精製処理を行い、下に述べる実施例・比較例に用いられるランダムエステル交換油脂(4)(以下、単にIE-4と記載する場合がある)を得た。
尚、IE-4は油脂(B)に相当し、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は24.2質量%、パルミチン酸残基の含有量は26.9質量%、ステアリン酸残基の含有量は26.4質量%であった。
(製造例5:ランダムエステル交換油(5)の製造
パーム核油(油脂(B-1)に相当、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は50.1質量%、沃素価17.8)75質量部と、パーム油に対し、沃素価が1以下となるまで水素添加を施した、パーム極度硬化油(油脂(B-2)に相当、脂肪酸組成中のラウリン酸残基の含有量は0.2質量%、パルミチン酸残基の含有量は44.6質量%、ステアリン酸53.6質量%)25質量部を溶融した状態で混合し、混合油脂とした。この混合油脂を、製造例1と同様にして、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応、及び漂白・脱臭の精製処理を行い、下に述べる実施例・比較例に用いられるランダムエステル交換油脂(5)(以下、単にIE-5と記載する場合がある)を得た。
尚、IE-5は油脂(B)に相当し、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は34.1質量%、パルミチン酸残基の含有量は18.3質量%、ステアリン酸残基の含有量は14.4質量%であった。
上記のようにして得られたIE1~5に加えて、液状油(菜種油)、パーム核油、パーム極度硬化油、豚脂を用いて、下表1に示す油相配合に基づいて、下述する配合・製造方法で、油中水型乳化物の形態をとるロールイン用油脂組成物の製造を行った。
尚、上記油脂の内、IE-1、IE-2、豚脂は油脂(A)に相当し、IE-4、IE-5は油脂(B)に相当する。豚脂の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量は0.12質量%であり、オレイン酸残基の含有量が44.5質量%、PPO/POPは5.5であった。
<検討1>
表1に示す油脂配合(質量%)で70℃に加熱・混合し、混合油を得た。
次に得られた混合油82質量部に乳化剤としてパルミチン酸モノグリセリド(理研ビタミン社製「エマルジーMP」)0.5質量部とレシチン0.5質量部を混合・融解した油相と、水16質量部、食塩1質量部を混合・溶解した水相とを、常法により、油中水型の乳化液として予備混合液を得た。該予備混合液に90℃で殺菌を施した後、液温が50℃となるよう予備冷却を行った。その後、密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機であるコンビネーターを用い、該予備混合液を急冷可塑化した。急冷可塑化工程では、出口温度が10℃となるように冷媒温度を設定し(設定冷媒温度:-20℃)、また、冷却速度が-0.3℃/秒となるように流速を設定した。
この後、レスティングチューブを通して、縦420mm、横285mm、厚さ10mmのシート状に成形し、実施例1~18および比較例1~3のロールイン用油脂組成物を得た。
実施例1~18、及び比較例1~3のロールイン用油脂組成物に含まれる油脂の構成脂肪酸残基におけるトランス脂肪酸残基の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸残基を含有しないものであった。
得られた各ロールイン用油脂組成物の詳細を表2に示す。尚、得られた各ロールイン用油脂組成物を5℃の冷蔵庫で1週間静置し保管した後、評価に供した。
Figure 0007063631000001
Figure 0007063631000002
比較例1~3、及び実施例1~18で得られたロールイン用油脂組成物(ロールイン用油脂組成物(1)~(21))を用いて、デニッシュペストリーを製造し、下述する評価基準に則って、折込時の作業性(コシ、伸展性)、得られたデニッシュペストリーの内層評価を行った。また、得られたロールイン用油脂組成物の経時安定性についても評価を行った。
<デニッシュペストリーの製造と評価 >
強力粉80質量部、薄力粉20質量部、イースト4質量部、イーストフード0.2質量部、上白糖15質量部、全卵(正味)10質量部、純植物性練込用マーガリン5質量部、水45質量部をミキサーボールに入れ、フックを用い、縦型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、デニッシュ用生地(以下、単にベース生地と記載する場合がある)を得た。得られたデニッシュ用生地はフロアタイム20分、-5℃の冷凍庫で24時間リタードさせた後、定法により、15℃に調温された上記ロールイン用油脂組成物(1)~(21)のいずれか50質量部を折込み(3つ折り3回)、デニッシュペストリー生地(1)~(21)を得た。
得られたデニッシュペストリー生地(1)~(21)は厚さ4mmに圧延し、10mm×10mmの板状に切り出し、34℃60分ホイロ後、固定オーブンで200℃15分焼成し、デニッシュペストリー(1)~(21)を得た。
尚、デニッシュペストリー生地のカッコ内の数字は使用したロールイン用油脂組成物に対応するものである。
折込時の作業性(コシ、伸展性)について、下記基準で評価し、結果を表3に示した。
<作業性評価(コシ)>
◎:ロールイン用油脂組成物がベース生地に練り込まれず、ヒビが生じることなく折り込まれており、非常に良好である。
○:ロールイン用油脂組成物がベース生地にほとんど練り込まれず、ヒビがほぼ生じることなく折り込まれ、良好である。
△:ロールイン用油脂組成物が一部ベース生地に練り込まれる部分、若しくはヒビが生じる部分があり、やや不良である。
×:ロールイン用油脂組成物がベース生地に練り込まれる部分、若しくは割れが確認される部分があり、不良である。
<作業性評価(伸展性)>
◎:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展が均一であり、非常に良好である。
○:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展にわずかな違いが見られるものの良好である。
△:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展に部分的な差が見られ、やや不良である。
×:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展に明確な差が見られ、不良である。
また、焼成1日後のデニッシュペストリーの内相について下記基準で評価し、結果を表3に示した。
<内層評価>
◎:薄い膜のきれいな層状で且つ、均一な内層である。
○:きれいな層状で且つ、均一な内層である。
△:やや不均質な部分が見られる内層である。
×:層状の部分とパン目の部分があり、不均一な内層である。
また、経時安定性の評価として製造後30日目のロールイン用油脂組成物の表面の状態を下記基準で評価し、結果を表3に示した。
<経時安定性>
◎:ロールイン用油脂組成物の表面に触れてもザラつきを感じず、油にじみを全く起こしていない。
○:ロールイン用油脂組成物の表面に触れてると僅かにザラつきを感じる、或いは油にじみを僅かに起こしている。
×:ロールイン用油脂組成物の表面に触れると非常にザラつきを感じる、又は強い油にじみを起こしている。
尚、本発明の経時安定性の評価においては、◎及び○を合格品とした。
Figure 0007063631000003
上記実施例に依れば、例えば、比較例3と実施例6や7との比較から、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の量が一定量以上であることで、伸展性が向上し、内層が良好なデニッシュペストリーが得られることが分かった。
また、比較例1~3より、ロールイン用油脂組成物に求められる良好なコシを得る観点、及び良好な内層を有するデニッシュペストリーを得る観点から、脂肪酸組成におけるラウリン酸含量を一定の範囲にする必要があることが分かった。
このことから、脂肪酸組成おけるラウリン酸残基の含有量が多くなると、パッキングの緩いβ’型主体の結晶型をとりやすく、圧延時のストレスに対して弱くなる為、結晶内に包含された液状油がドウににじみやすく、伸展性に富むがコシが乏しい物性になると推察された。また、脂肪酸組成おけるラウリン酸残基の含量が乏しいと、パッキングが密なβ型主体の結晶型をとりやすく、圧延時のストレスに対しては強くなりコシが得られ易いものの伸展性が乏しい物になると推察された。
また、油脂B-1(パーム核油)と油脂B-2(パーム油の極度硬化油)のランダムエステル交換油脂を用いた実施例2と、油脂B-1と油脂B-2をランダムエステル交換せずにそのまま用いた実施例3を比較すると、脂肪酸組成におけるラウリン酸含量が同程度であっても、トリグリセリド組成中のトリラウリン含有量が少ない方が、伸展性が良好になることが分かった。また、ランダムエステル交換を施していない実施例3では、急冷可塑化中に結晶が出切らず、経時安定性が実施例2と比較してやや劣る結果となった。
この傾向は実施例10、11、15でも確認され、単に脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含量を高めるのではなく、トリラウリンの形態で含有されるラウリン酸を減じることが重要であることが示唆された。
また、実施例7、13等と比較例1、3との比較から、良好なコシと良好な伸展性について、脂肪酸組成におけるラウリン酸とパルミチン酸の含量比に好ましい範囲があることが分かった。
<検討2>
上記急冷可塑化工程における流速を、冷却速度が-1.2℃/秒、-0.9℃/秒、-0.6℃/秒となるように変更した他は、検討1の油脂配合と製造方法で、ロールイン用油脂組成物を得て、検討1と同様に作業性や内層、経時安定性について評価を行った。その結果を、表4に示す。
以下、実施例1と同じ油脂配合であって、-1.2℃/秒の冷却速度となるように流速を設定し急冷可塑化したものを「実施例1-2」、-0.9℃/秒の冷却速度となるように流速を設定し急冷可塑化したものを「実施例1-3」、-0.6℃/秒の冷却速度となるように流速を設定し急冷可塑化したものを「実施例1-4」と表すこととし、比較例1~3、及び実施例2~18についても同様に表す。
Figure 0007063631000004
比較例1では、流速を上昇させると、硬く粗大な結晶の産生に由来する製造後の保管中にブツやザラといった、品質の低下が多くみられた他、伸展性に乏しかった。
比較例1-2では、得られたロールイン用油脂組成物が可塑性に乏しく、生地調製時にドウ層と共に油脂層が伸展せずデニッシュペストリー生地を調製することができなかった。また、比較例1-3及び比較例1-4では、生地調製時に油脂層の割れがみられた他、ドウ層と共に油脂層が十分に進展せず、ドウ層同士が結着した部分も見られた。このため、内層が良好なデニッシュペストリーを得ることができなかった。
比較的パルミチン酸含量の高い実施例7-2~4、8-2~4、14-2~4では冷却速度を高めた場合に、折込時に細かなヒビが僅かにみられ、コシの低下がみられたものの、問題なくデニッシュペストリーを得ることができた。
尚、この品質の低下は比較例2や比較例3においても確認された。油脂配合中にラウリン系油脂を多く含み、脂肪酸組成においてラウリン酸残基を多く含有する比較例2のような油脂配合の場合、固化速度が速いため、硬い物性となりやすく、折込時に割れの発生がみられ、この傾向は流速を早くするほどに顕著であった。ラウリン酸を僅かに含有する比較例3では、生地調製時に割れは見受けられず、コシを有することを確認したが、伸展性に欠けていた。これは冷却により、β型とβ’型の結晶型の双方が産生されるものの、L/Pが小さく、β型の結晶が優位に産生されるためであると推察される。
また、脂肪酸組成においてラウリン酸残基を比較的多く含有する油脂配合を用いて、製造時の冷却速度を高めた場合に、得られるロールイン用油脂組成物のコシが高まる傾向が、実施例11-2~4、実施例12-2~4、実施例15-2~4から確認された。
これらのことから、脂肪酸組成におけるラウリン酸残基、及びパルミチン酸残基の量を一定範囲とすることで、ロールイン用油脂組成物として好ましい物性を得つつ、生産性を高めることが可能であるという知見が得られた。
実施例1-2~18-2、実施例1-3~18-3、及び実施例1-4~18-4の結果から、油脂組成物における油相の脂肪酸組成、及びトリグリセリド組成が上記条件(1)~(3)を満たし、更に組成物が条件(4)を満たす物性となるように調整することにより、流速を速めた場合であっても、ロールイン用油脂組成物として好ましく使用できることが分かった。

Claims (6)

  1. 油脂組成物における油相が次の油脂(A)および油脂(B)を含有し、且つ次の条件(1)~(3)、および(6)の全てを満たし、前記油脂組成物が条件(4)の特性を有する、ロールイン用油脂組成物。
    油脂(A):脂肪酸組成において、ラウリン酸残基を実質的に含有せず、且つオレイン酸残基を35~55質量%含有する油脂であって、1,3-ジ-パルミトイル-2-オレオイル-グリセリロール(POP)1質量部に対する、1,2-ジ-パルミトイル-3-オレオイル-グリセリロール(PPO)の質量比(PPO/POP)が1以上である油脂。
    油脂(B):脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が、35~60質量%である油脂(B-1)と、脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基の含有量が、35~50質量%であり、且つステアリン酸残基の含有量が、45~60質量%である油脂(B-2)との、ランダムエステル交換油脂。
    但し、原料としてパーム核油及びヤシ油に対して水素添加処理を施して得られた油脂を原料の一つとするものを除く。
    (1)前記油相の脂肪酸組成におけるラウリン酸残基の含有量が2.0~10.0質量%である。
    (2)前記油相の脂肪酸組成におけるパルミチン酸残基(P)1質量部に対するラウリン酸残基(L)の質量比(L/P)が、0.07~0.30である。
    (3)前記油相中のトリラウロイルグリセロールの含有量が2.5質量%以下である。
    (4)前記油脂組成物の15℃調温時の固体脂含量(SFC)あたりの硬さ(単位:gf/cm・%)が30~100である。
    (6)油脂(B)1質量部に対する油脂(A)の質量比が2.5~10である。
  2. 更に前記油相が条件(5)を満たす請求項1に記載のロールイン用油脂組成物。
    (5)油相のトリグリセリド組成が下記条件(a)~(c)を満たす。
    (a)油相中のトリ飽和トリグリセリドの含有量が5~21質量%である。
    (b)油相中のジ飽和モノ不飽和トリグリセリドの含有量が15~35質量%である。
    (c)油相中のモノ飽和ジ不飽和トリグリセリドの含有量とトリ不飽和トリグリセリドの含有量の合計が45~65質量%である。
  3. 前記油脂組成物の15℃調温時の固体脂含量(SFC)あたりの硬さ(単位:gf/cm ・%)が40~100である、請求項1又は2に記載のロールイン用油脂組成物。
  4. 油中水型乳化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物を用いたベーカリー食品。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物の製造方法であって、前記油相を含む予備混合液を急冷可塑化する工程を含むロールイン用油脂組成物の製造方法。
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