JP7062900B2 - ジルコニア粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、射出成形用の組成物に適したジルコニア粉末及びその製造方法に関するものである。
複雑な形状のジルコニア焼結体を得るための製造方法として、射出成形により得られたジルコニア成形体を、脱脂及び焼結する製造方法が知られている。射出成形では、ジルコニア粉末とバインダーとを含む組成物を溶融状態とし、当該組成物を金型に射出及び充填することでジルコニア成形体が得られる。そのため、目的とする形状のジルコニア成形体を得るためには、溶融状態の組成物を均一に金型に充填する必要がある。
ジルコニア粉末は樹脂に溶解しないため、樹脂のみからなる組成物に比べ、ジルコニア粉末を含む組成物は射出成形が困難である。この様な組成物は射出成形で金型へ均一に充填することが難しい。そのため、これまでジルコニア粉末とバインダーからなる射出成形用の組成物の特性改善が検討されている。
例えば、BET比表面積が12m/g以下であり、なおかつ、真球に近い形状の粒子からなるジルコニア粉末を使用することで、流動性に優れた組成物が得られることが報告されている(特許文献1及び2)。このジルコニア粉末を含む組成物は、射出成形による金型への充填性は多少改善する。しかしながら、このジルコニア粉末は、組成物の流動性が改善される一方で、得られるジルコニア焼結体の機械的強度が低いものであった。
また、特許文献3では、ジルコニア粉末の製造において、粉砕工程においてジルコニア粉末のBET比表面積を2m/g以上増加させることで、射出成形用コンパウンドとした際に流動性が優れることが報告されている。しかしながら、特許文献3のジルコニア粉末を用いた組成物を射出成形に適した流動性とするためには、組成物中のジルコニア粉末含有量を少なくすることが必要であった。ジルコニア粉末含有量が少ない組成物は、脱脂時の変形量が大きくなるため、脱脂条件の厳密な制御などの射出成形後の工程における制御を厳密に行う必要であった。
特開平03-174356号公報 特開平05-194029号公報 特開2001-39716号公報
これまで報告されている射出成形用のジルコニア粉末は、組成物とした場合の十分な流動性を有することと、機械的強度の高い焼結体が得られることを兼備するものはなかった。そのため、本発明では、流動性の高い組成物を与え、なおかつ、機械的強度の高いジルコニア焼結体を得ることができるジルコニア粉末を提供することを目的とする。更に、本発明ではこのようなジルコニア粉末の簡易な製造方法の提供することを別の目的とする。
本発明者は、射出成形においてジルコニア粉末を金型へ均一に充填性させるために、組成物とした場合に高い流動性を示し、なおかつ、バインダー中に分散しやすいジルコニア粉末とすることで、得られるジルコニア焼結体が十分な機械的強度を示すことを見出した。更には結晶相や一次粒子を制御することで、このような特性を備え、なおかつ、焼結性が高くなることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 電子顕微鏡で測定される平均粒子径が70nm以上400nm以下であり、BET比表面積が6m/g以上20m/g以下であり、なおかつ、単斜晶率が25%以上70%以下であることを特徴とするジルコニア粉末。
[2] 体積粒子径分布において、0.20μm以上1.00μm以下の粒子径のピークを有する上記[1]に記載のジルコニア粉末。
[3] BET比表面積から求められる平均粒子径に対する電子顕微鏡で測定される平均粒子径の比が1.0以上3.0以下である上記[1]又は[2]に記載のジルコニア粉末。
[4] BET比表面積が6m/g以上17m/g未満である上記[1]乃至[3]に記載のジルコニア粉末。
[5] 2.0mol%以上6.0mol%のイットリアを含有する上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のジルコニア粉末。
[6] アルミナを含む上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のジルコニア粉末。
[7] ジルコニウム塩水溶液を加水分解して平均ゾル粒子径が150nm以上400nm以下の水和ジルコニアゾルを含有する水和ジルコニアゾル水溶液を得る加水分解工程、該水和ジルコニアゾル水溶液中の未反応ジルコニウム含有率を1重量%以下とする洗浄工程、洗浄工程後の水和ジルコニアを950℃以上1250℃以下で熱処理する仮焼工程、及び、仮焼後のジルコニア粉末を粉砕処理する粉砕工程、を含む上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のジルコニア粉末の製造方法。
[8] 前記洗浄工程と前記仮焼工程との間に、水和ジルコニアとイットリア源とを混合するイットリア混合工程、を有する上記[7]に記載の製造方法。
[9] 前記洗浄工程後にアルミナ混合工程を有する上記[7]又は[8]に記載の製造方法。
[10] 上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のジルコニア粉末を使用するジルコニア焼結体の製造方法。
[11] 上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のジルコニア粉末とバインダーとを含む組成物。
本発明により、流動性の高い組成物を与え、なおかつ、機械的強度の高いジルコニア焼結体を得ることができるジルコニア粉末を提供することができる。更に、本発明により、このようなジルコニア粉末の簡易な製造方法の提供することができる。
本明細書における各用語は以下のとおりである。
「ゾル粒子」とは水和ジルコニアゾル(ZrO・nHO)のゾル結晶子から構成される独立した粒子である。また、「ゾル結晶子」とは規則的に配列した水和ジルコニアからなる最小単位の粒子であり、水和ジルコニアゾルのゾル粒子を構成する粒子である。
「ジルコニア粉末」とはジルコニア(ZrO)を主相とし、二次粒子又は一次粒子の少なくともいずれのジルコニアの粒子を含む粉末であり、水和ジルコニアゾルを熱処理することで得られる粉末であることが好ましい。「一次粒子」とはジルコニア結晶子から構成される独立した粒子である。また、「二次粒子」とはジルコニア粉末の一次粒子同士が焼結した粒子である。一次粒子及び二次粒子は透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」ともいう。)観察により確認することができる。さらに、「ジルコニア結晶子」とは規則的に配列したジルコニアからなる最小単位の粒子であり、一次粒子を構成する粒子である。
「凝集粒子」とは、一次粒子又は二次粒子が物理的な力で凝集した粒子である。
「結晶粒子」とは、ジルコニア焼結体を構成する粒子である。
本発明において、「BET比表面積から求められる平均粒子径(以下、「D」ともいう。)」は、JIS R1626-1996に準じ、吸着物質を窒素(N)としたBET法1点法により求められるジルコニア粉末のBET比表面積から以下の式より求められる値である。
=6000/(S・ρ)
上記式において、DはBET比表面積から求められる平均粒子径(nm)、SはBET比表面積(m/g)、及び、ρは理論密度(g/cm)である。また、ρは以下の式より求めることができる。
ρ=5.8×f/100+6.1×(100-f)/100
上記式において、ρは理論密度(g/cm)、及び、fは後述する式より求まる単斜晶率(%)である。
本発明における「電子顕微鏡で測定される平均粒子径(以下、「D」ともいう。)」は、ジルコニア粉末の電子顕微鏡観察図において、独立した最小単位の粒子を100個以上無作為に抽出し、当該粒子の面積を円形に換算して算出した粒子径の平均値であり、特に、透過型電子顕微鏡で測定される平均粒子径である。ジルコニア粉末が一次粒子から構成されている場合、一次粒子が最小単位の粒子となる。一方、ジルコニア粉末が二次粒子から構成されている場合、二次粒子が最小単位の粒子となる。
本発明における「重量減少速度曲線」は、熱重量測定により得られる曲線であって、温度に対する単位時間あたりの重量変化率を示す曲線(以下、「DTG曲線」ともいう。)であり、特に、昇温速度が10℃/minにおける熱重量測定により得られるDTG曲線である。
本発明における「単斜晶率」は、ジルコニア粉末の結晶相に含まれる単斜晶ジルコニアの割合であり、ジルコニア粉末の粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンについて、以下の式で求められる値である。
=[I(111)+I(11-1)]×100
/[I(111)+I(11-1)+I(111)]
上記式において、fは単斜晶率(%)、I(111)は単斜晶ジルコニアの(111)面に相当するXRDピークの面積強度、I(11-1)は単斜晶ジルコニアの(11-1)面に相当するXRDピークの面積強度、及び、I(111)は正方晶ジルコニアの(111)面に相当するXRDピークの面積強度である。
XRDパターンの測定の条件として、以下の条件を挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 連続スキャン
スキャンスピード : 1°/分
ステップ幅 : 0.02°
発散スリット : 0.5deg
散乱スリット : 0.5deg
受光スリット : 0.3mm
測定範囲 : 2θ=26°~33°
本発明おける「体積粒子径分布」とは、レーザー回折法により測定されるジルコニア粉末の粒子径分布であり、特に以下の条件で測定されるジルコニア粉末の粒子径分布である。
測定試料 : ジルコニア粉末スラリー水溶液
ジルコニア粒子の屈折率 : 2.17
溶媒(水)の屈折率 : 1.333
測定時間 : 30秒
前処理 : 超音波分散処理
本発明における「混練」とは、互いに溶解しない2以上の成分を混ぜ合わせることであり、例えば、粉末と樹脂とを混合して、樹脂にジルコニア粉末を練り込ませる操作を挙げることができる。
本発明おける「粉砕」とは、外的な力をジルコニア粉末に加え、一次粒子同士を分散させる処理である。粉砕によりジルコニア粉末中の単斜晶率は増加する。粉砕処理として、例えば、ボールミル、振動ミル、ビーズミル等を挙げることができる。「解砕」とは、単斜晶相率の増加を実質的に伴わずに、物理的な力による緩慢な凝集をほぐす処理である。解砕処理として、例えば、洗浄・乾燥後のジルコニア粉末を篩い分ける処理や、乳鉢で凝集をほぐす処理が挙げられる。解砕により増加するジルコニア粉末中の単斜晶率は1%以下である。
以下、本発明のジルコニア粉末について具体的に説明する。
本発明のジルコニア粉末は、電子顕微鏡で測定される平均粒子径が70nm以上400nm以下であり、BET比表面積が6m/g以上20m/g以下であり、なおかつ、単斜晶率が25%以上70%以下であることを特徴とするジルコニア粉末、である。このような電子顕微鏡で測定される平均粒子径(D)、BET比表面積及び単斜晶率を備えるジルコニア粉末であることにより、バインダーと混合した際に流動性の高い組成物が得られ、なおかつ、機械的強度が高い焼結体が得られる。
は80nm以上、更には100nm以上であることが好ましい。また、Dは300nm以下、更には250nm以下、更には150nm以下であることが好ましい。Dの上限及び下限がこの範囲であることでジルコニア粉末の焼結性が高くなり、より低い焼結温度で緻密な焼結体が得られやすくなる。
単斜晶率は30%以上70%以下、更には30%以上65%以下、また更には40%以上65%以下であることが好ましい。単斜晶率がこのような範囲であることで焼結性がより高くなりやすい。
本発明のジルコニア粉末は単斜晶率が25%以上であるため、その結晶相には少なくとも単斜晶が含まれる。本発明のジルコニア粉末の結晶相は、単斜晶及び正方晶を含むことが好ましく、単斜晶及び正方晶からなることがより好ましい。
BET比表面積は6m/g以上17m/g未満であることが好ましく、6m/以上16m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が17m/g未満であることで一次粒子の物理的な凝集が抑制され、凝集粒子が形成されにくくなる。一方、BET比表面積が6m/g以上であることで、より低い温度でも焼結が進行しやすくなる。BET比表面積は10m/g以上15m/g以下、更には11m/g以上15m/g以下であることが特に好ましい。
本発明のジルコニア粉末は、上記のBET比表面積を有するため、好ましいDとして50nm以上170nm以下、更には50nm以上110nm以下、また更には50nm以上100nm以下、また更には50nm以上90nm以下を挙げることできる。
本発明のジルコニア粉末は、Dに対するDの比(以下、「D/D比」ともいう。)が1.0以上3.0以下であることが好ましく、1.1以上2.5以下であることがより好ましく、1.1以上2.0以下であることが更に好ましい。D/D比が3.0以下であればバインダーと混練しやすいジルコニア粉末となり、バインダーとジルコニア粉末からなる組成物(以下、「コンパウンド」ともいう。)とした場合に流動性がより高いコンパウンドが得られやすくなる。D/D比が1.0以上であれば、バインダーとジルコニア粉末とが混練しやすくなる。
本発明のジルコニア粉末は、体積粒子径分布において、0.20μm以上1.00μm以下の粒子径のピーク(以下、「粒子径ピーク1」又は「ピーク1」ともいう。)を有することが好ましく、0.30μm以上1.00μmの粒子径のピークを有すること、更には0.35μm以上0.70μm以下の粒子径のピークを有することが好ましい。体積粒子径分布における粒子径は、分散した状態で存在する粒子の粒子径に相当し、一次粒子、二次粒子又は凝集粒子であって分散状態で存在している粒子の粒子径、を全て反映した粒子径に相当すると考えられる。
本発明のジルコニア粉末は、粒子径分布が単分散であり、粒子径分布がモノモーダルであってもよい。しかしながら、本発明のジルコニア粉末は、粒子径分布が多分散であること、すなわち、粒子径分布がマルチモーダルであることが好ましく、粒子径分布がバイモーダルであることがより好ましい。粒子径分布がマルチモーダルとは、粒子径分布において粒子径のピークを2つ以上有することであり、粒子径分布がバイモーダルとは、粒子径分布において粒子径のピークを2つ有することである。粒子径分布がマルチモーダルであることで、コンパウンドの流動性がより高くなりやすい。
本発明のジルコニア粉末の粒子径分布がマルチモーダルである場合、体積粒子径分布において、粒子径ピーク1の他に、0.05μm以上0.20μm未満の粒子径のピーク、更には0.1μm以上0.2μm以下の粒子径のピーク(以下、「粒子径ピーク2」又は「ピーク2」ともいう。)を有すること、若しくは、1.0μmを超え5.0μm以下の粒子径のピーク、更には2.0μm以上4.0μm以下の粒子径のピーク、また更には3.0μm以上4.0μm以下の粒子径のピーク(以下、「粒子径ピーク3」又は「ピーク3」ともいう。)、の少なくともいずれかを有することが好ましい。
本発明のジルコニア粉末が粒子径ピーク2又は粒子径ピーク3の少なくともいずれかを有する場合、体積粒子径分布における頻度は、(粒子径ピーク1の頻度):(粒子径ピーク2及び粒子径ピーク3の頻度)で表記した場合に、20~99:80~1であること、更には40~99:60~1であることが挙げられる。
本発明のジルコニア粉末の特に好ましい粒子径分布として、体積粒子径分布において0.25μm以上0.65μm以下の粒子径のピーク、及び、0.10μm以上0.20μm以下の粒子径のピークを有することが挙げられる。
体積粒子径分布において50%になる粒子径(以下、「D50径」又は「メジアン径」ともいう。)は、平均粒子径のひとつの指標である。しかしながら、粒子径分布がマルチモーダルである場合、D50径は粉末の特性をほとんど反映しないパラメータとなる。そのため、本発明のジルコニア粉末のD50径は特に限定されないが、本発明のジルコニア粉末のD50として0.1μm以上1μm以下、更には0.15μm以上0.8μm以下を例示することができる。
粒子径ピーク1乃至3、並びにD50径は、レーザー回折法により測定されるジルコニア粉末の粒子径分布から求められる値である。
本発明のジルコニア粉末は、以下の式により求められるジルコニア結晶子の粒子径(以下、「結晶子径」又は「D」ともいう。)が、15nm以上40nm以下、更には18nm以上39nm以下であることが好ましい。
=κλ/(βcosθ)
上記式において、Dxはジルコニア結晶子の結晶子径(nm)、κはシェラー定数(1)、λは粉末X線回折測定の光源の波長(nm)、βはX線回折装置に依存する回折線幅の広がりを補正した後の半値幅(°)、及び、θはXRD測定における正方晶ジルコニアの(111)面に相当する反射のブラック角(°)である。なお、XRD測定の光源にCuKα線を用いた場合、λは0.15405nmである。
本発明のジルコニア粉末は、表面に水酸基を有することが好ましい。これによりバインダー中にジルコニアがより均一に分散されやすくなるため、コンパウンドとした際の流動性が高くなる。
本発明のジルコニア粉末が表面に水酸基を有することは、昇温速度10℃/minの熱重量測定により求められるDTG曲線において200~400℃の挙動から確認することができる。すなわち、図1に示すように、表面に水酸基を有さないジルコニア粉末のDTG曲線は昇温に伴ってDTGが減少する。そのため、200~400℃におけるDTG曲線は専ら減少挙動のみを示す。これに対し、図2(a)及び(b)に示すように、表面に水酸基を有するジルコニア粉末のDTG曲線は昇温に伴ってDTGが減少するが、200~400℃においてDTGが増加又は減少がほとんど生じなくなる挙動を示す。ジルコニア粉末の表面の水酸基が多くなると、200~400℃におけるDTGの増加挙動がより大きくなる。バインダーと混練性が高くなるため、本発明のジルコニア粉末は表面の水酸基が多いことが好ましく、DTG曲線において200~400℃にDTGの増加挙動を有することが好ましい。
本発明のジルコニア粉末はジルコニアを主相とする組成であればよい。ジルコニア粉末の組成における「主相」とは、含有率が80mol%以上を占める成分である。
本発明のジルコニア粉末は、2.0mol%以上6.0mol%のイットリアを含有することが好ましい。イットリア含有量は2.0mol%以上4.0mol%以下、更には2.5mol%以上4.0mol%以下、また更には2.8mol%以上3.5mol%以下であることが好ましい。
イットリア含有量は、ジルコニア粉末中のジルコニア(ZrO)及びイットリア(Y)の合計に対するイットリアのモル割合である。
本発明のジルコニア粉末は、アルミナ(Al)を含んでいてもよく、アルミナ含有量は0重量%以上0.3重量%以下であればよい。アルミナを含む場合、アルミナ含有量は0重量%超0.3重量%以下、更には0重量%超0.25重量%以下であればよい。アルミナを含有することでより低い温度で焼結が進行しやすくなる。本発明のジルコニア粉末がアルミナを含有する場合、アルミナ含有量は0.01重量%以上0.3重量%以下、更には0.01重量%以上0.25重量%以下、また更には0.15重量%以上0.25重量%以下であることが好ましい。
アルミナ含有量は、ジルコニア粉末中のジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)及びアルミナ(Al)の合計に対するアルミナの重量割合である。
本発明のジルコニア粉末は成形性が高いことが好ましい。例えば、本発明のジルコニア粉末を、プレス成形による予備成形をした後190MPa以上210MPa以下の圧力で冷間静水圧プレス(以下、「CIP」ともいう。)処理した場合、密度が3.00g/cm以上3.15g/cm以下の成形体が得られることが好ましい。
本発明のジルコニア粉末は従来の射出成形用のジルコニア粉末と比べて焼結性が高い。本発明のジルコニア粉末は1300℃以上1550℃以下の常圧焼結によって緻密な焼結体とすることができる。さらに、焼結温度が1400℃未満、更には1325℃以上1375℃以下の常圧焼結で焼結した場合であっても、6.05g/cm更には6.07g/cmの高い密度を有する焼結体となる。このような温度による焼結で得られる焼結体は、長期間使用後も単斜晶が生成しにくい焼結体となる。上記の密度を有し、なおかつ、焼結体の平均結晶粒径が250nm以上320nm以下、更には250nm以上310nm以下の微細な組織であることで、劣化しにくくなる。さらに、本発明のジルコニア粉末から得られる焼結体は機械的強度にも優れており、例えば、JIS R1601に準じた方法で測定される三点曲げ強度が1100MPa以上1500MPa以下、更には1200MPa以上1500MPa以下であることが挙げられる。
本発明のジルコニア粉末を使用してジルコニア焼結体とする際の成形条件及び焼結条件は任意である。好ましい焼結条件として、大気中、1325℃以上1400℃未満の常圧焼結を挙げることができる。
本発明のジルコニア粉末は、バインダーとの混練性に優れている。すなわち、本発明のジルコニア粉末とバインダーとを混練する際に、混練に必要する力(以下、「トルク」ともいう。)を小さくすることができる。これにより、ジルコニア粉末とバインダーとが均一に分散した組成物を、従来のジルコニア粉末よりも少ないトルクで得ることができ、なおかつ、流動性に優れたコンパウンドが得られる。
本発明のジルコニア粉末は、射出成形に用いる粉末として使用することできる。さらに、本発明のジルコニア粉末は、本発明のジルコニア粉末とバインダーとを含む組成物(以下、「本発明のジルコニア組成物」ともいう。)とすることが好ましい。本発明のジルコニア組成物は流動性が高く、なおかつ、組成物中でジルコニア粉末が均一に分布しやすい。そのため、射出成形時の金型への充填性が高く、脱脂による欠陥が生じにくく、複雑形状を有する成形体への成形が容易になる。
本発明のジルコニア組成物が含有するバインダーは、ジルコニアのコンパウンドとして使用されているものであればよく、樹脂からなるバインダー(以下、「有機バインダー」ともいう。)が挙げられる。有機バインダーは、ポリオレフィン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール及びポリポロピレンカーボネートからなる群の1種以上、又は、これらの共重合体や、石油系ワックス又は植物系ワックスの少なくともいずらかのワックス、ステアリン酸、並びに、これらを2以上含む混合物を挙げられ、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール及びポリポロピレンカーボネートからなる群の1種以上、又は、これらの共重合体であることが好ましい。
本発明のジルコニア組成物は、ジルコニア粉末、バインダー以外に、可塑剤及び酸化防止剤(以下、これらをまとめて「添加剤」ともいう。)を含んでいてもよい。可塑剤として、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル及びトリメリット酸エステルからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。酸化防止剤として、ヒドラジン系酸化防止剤又はヒンダードフェノール系酸化防止剤の少なくともいずれかを挙げることができる。
本発明のジルコニア組成物の重量に対するジルコニア粉末の重量との比(以下、「ジルコニア重量比」ともいう。)は45重量%以上90%以下、更には82重量%以上90重量%以下、また更には85.5重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
次に、本発明のジルコニア粉末の製造方法について説明する。
本発明のジルコニア粉末は、ジルコニウム塩水溶液を加水分解して平均ゾル粒子径が150nm以上400nm以下の水和ジルコニアゾルを含有する水和ジルコニアゾル水溶液を得る加水分解工程、該水和ジルコニアゾル水溶液中の未反応ジルコニウム含有率が1重量%以下とする洗浄工程、洗浄工程後の水和ジルコニアを950℃以上1250℃以下で熱処理する仮焼工程、及び、仮焼後のジルコニア粉末を粉砕処理する粉砕工程、を含む製造方法により製造することができる。
加水分解工程では、ジルコニウム塩水溶液を加水分解する。これによりジルコニウム塩から水和ジルコニアゾルが生成し、水和ジルコニアゾル水溶液が得られる。
ジルコニウム塩水溶液に含まれるジルコニウム塩はオキシ塩化ジルコニウム,硝酸ジルコニル,塩化ジルコニウム及び硫酸ジルコニウムからなる群の少なくとも1種、更にはオキシ塩化ジルコニウムを挙げることができる。
加水分解工程で得られる水和ジルコニアゾルは、平均ゾル粒子径が150nm以上400nm以下である。平均ゾル粒子径が範囲であることで、仮焼後に得られるジルコニア粉末のDが本発明のジルコニア粉末の範囲内となる。水和ジルコニアゾルの平均ゾル粒子径は180nm以上400nm以下、また更には180nm以上300nm以下であることが好ましい。
上記の平均ゾル粒子径を有する水和ジルコニアゾルが得られれば加水分解の方法は任意であるが、ジルコニウム塩水溶液を煮沸還流することで加水分解することが好ましい。加水分解はジルコニウム塩が十分に進行すればよく、例えば、130時間以上200時間以下を挙げることができる。
さらに、ジルコニウム塩水溶液中の陰イオン濃度を0.2mol/L以上0.6mol/L以下、更には0.3mol/L以上0.6mol/L以下として加水分解することで、平均ゾル粒子径が150nm以上400nm以下の水和ジルコニアゾルが効率よく得られる。
加水分解工程において得られる水和ジルコニアゾル水溶液は、水和ジルコニアゾル以外に未反応のジルコニウムを含有する水溶液である。洗浄工程では、当該水溶液中の未反応ジルコニウム含有率が1重量%以下、更には0.5重量%以下、また更には0.1重量%以下とする。水和ジルコニアゾル水溶液の未反応ジルコニウム含有率が1重量%を超えると、仮焼工程において一次粒子間の焼結が促進される。
洗浄工程では、未反応ジルコニウム含有率が1重量%以下となれば任意の洗浄方法により水和ジルコニアゾル水溶液を洗浄すればよい。洗浄方法として、例えば、加水分解工程で得られた水和ジルコニアゾル水溶液を十分量の純水で洗浄することが挙げられる。好ましい洗浄方法として、限外濾過を挙げることができ、更には分画分子量が500以上300万以下の限外濾過膜を使用した限外濾過を挙げることができる。
なお、未反応ジルコニウムとは、水和ジルコニアゾル水溶液に含まれるジルコニウムであって水和ジルコアゾル以外として存在するものであり、加水分解していないジルコニウム塩などが挙げられる。さらに、未反応ジルコニウム含有率は以下の式で求めることができる。
α=m/m×100
上記式において、αは未反応ジルコニウム含有率(重量%)、mは未反応ジルコニウムの含有量(mg)、及び、mは水和ジルコニアゾル水溶液のジルコニア含有量(mg)である。mは誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定された洗浄後の濾液中のジルコニウム濃度をジルコニア(ZrO)換算して求まる重量、及び、mは洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液を1000℃以上1200℃以下で1時間加熱処理した後に得られる固形分の重量である。
本発明の製造方法では、洗浄工程と仮焼工程との間に、水和ジルコニアとイットリア源とを混合するイットリア混合工程を有することが好ましい。これにより、得られるジルコニア粉末を目的とする量のイットリアを含有するジルコニア粉末とすることができる。
イットリア源の添加量は、得られる水和ジルコニアのイットリア濃度が2.0mol%以上6.0mol%、更には2.0mol%以上4.0mol%以下、また更には2.5mol%以上4.0mol%以下、また更には2.8mol%以上3.5mol%以下となるように水和ジルコニアに混合すればよい。
なお、イットリア濃度とは、水和ジルコニア中のジルコニアとイットリアの合計量に対するイットリアのモル割合である。
イットリア源は、イットリア(Y)又はその前駆体となるイットリウム化合物であればよく、塩化イットリウム、硝酸イットリウム及び酸化イットリウムからなる群の少なくとも1種、更には塩化イットリウム又は酸化イットリウムの少なくともいずれかを挙げることができる。
水和ジルコニアとイットリア源とを混合する場合の混合方法は任意である。洗浄工程後の水和ジルコニアゾル水溶液にイットリア源を混合(以下、「液相混合」ともいう。)してもよく、又は、洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液を固液分離及び乾燥して得られる水和ジルコニア粉末にイットリア源を混合(以下、「固相混合」ともいう。)してもよい。
液相混合の場合、水和ジルコニアゾル水溶液にイットリウム源を任意の方法で混合すればよい。ジルコニアとイットリアがより均一になるため、液相混合は、水和ジルコニアゾル水溶液にイットリウム源を混合した後にアルカリ源を混合し、イットリア含有ジルコニアを共沈させることが好ましい。共沈物として得られたイットリア含有ジルコニアは任意の方法で固液分離及び乾燥すればよい。液相混合の場合、イットリウム源は塩化イットリウム又は硝酸イットリウムの少なくともいずれかであることが好ましく、さらに、共沈させる場合、アルカリ源はアンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
固相混合の場合、まず任意の方法で水和ジルコニアゾル水溶液を固液分離及び乾燥して水和ジルコニア粉末を得る。得られた水和ジルコニア粉末にイットリア源を混合すればよい。
液相混合及び固相混合における乾燥は、大気中、100℃以上250℃以下で処理することが挙げられる。
仮焼工程では、950℃以上1250℃以下、更には1000℃以上1250℃以下で熱処理する。仮焼が950℃未満では、ジルコニア結晶子が小さくなりすぎ、焼結性が低いジルコニア粉末となる。このようなジルコニア粉末は低温で焼結しても得られる焼結体の密度が低くなる。一方、1250℃を超える温度で熱処理するとネッキングが進行しやすくなり、そのほとんどが二次粒子となるため、強力に機械粉砕しないと分散しない粉末となる。
好ましい熱処理条件として、大気中、1040℃以上1250℃以下を挙げることができる。
粉砕工程では、仮焼粉末を粉砕処理する。本発明の製造方法における加水分解工程から仮焼工程を経て得られるジルコニア粉末は、単斜晶率が低い。例えば、仮焼工程後のジルコニア粉末(仮焼粉)の単斜晶率として0%以上10%以下を挙げることができる。このような低い単斜晶率のジルコニア粉末を粉砕工程で粉砕処理することにより、ジルコニア粉末の単斜晶率を本発明のジルコニア粉末の単斜晶率の範囲にすることができる。これにより、焼結性が高く、なおかつ、コンパウンドとした場合に流動性が高いコンパウンドを与えるジルコニア粉末が得られると考えられる。本発明の単斜晶率を有するジルコニア粉末が得られれば、粉砕方法は任意であり、湿式粉砕又は乾式粉砕のいずれかであればよく、湿式粉砕であることが好ましい。湿式粉砕により、粉砕と共にジルコニア粉末を水和しジルコニア粉末の表面に水酸基を付与することができる。具体的な湿式粉砕として、ボールミル,振動ミル及び連続式媒体撹拌ミルからなる群のいずれかを使用した湿式粉砕が挙げられ、ボールミルを使用した湿式粉砕であることが好ましい。ボールミルによる粉砕条件として、例えば、ジルコニア粉末を、スラリーに対するジルコニア粉末の重量割合が30重量%以上60重量%以下となるようなスラリーとし、直径1mm以上15mm以下のジルコニアボール、更には直径1.5mm以上5mm以下のジルコニアボールを粉砕媒体として用い、10時間以上100時間以下、更には13時間以上100時間以下、粉砕することが挙げられる。また、粉砕工程は、直径1.5mm以上5mm以下のジルコニアボールを粉砕媒体としたボールミルの後に、直径5mmを超え15mm以下のジルコニアボールを粉砕媒体としたボールミルによる粉砕処理であってもよい。
本発明の製造方法では、必要に応じて、アルミナ混合工程、解砕工程、又は顆粒化工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
アルミナ混合工程では、アルミナ含有量が0.01重量%以上0.3重量%以下、更には0.01重量%以上0.25重量%以下となるように、水和ジルコニアゾル水溶液、水和ジルコニア粉末又はジルコニア粉末と、アルミナ源とを混合する。これにより、アルミナ含有ジルコニア粉末とすることができる。
アルミナ混合工程は、洗浄工程以降であれば任意の段階でよく、洗浄工程後又は仮焼工程後の少なくともいずれかであることが好まく、イットリア混合工程と同時としてもよい。アルミナをより均一に分散させるため、洗浄工程後にアルミナ混合工程を有することが好ましい。
アルミナ源は、アルミナ(Al)又はその前駆体であればよく、水酸化アルミニウム、アルミナ、硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウムからなる群の少なくともいずれかであることが好ましく、アルミナ、更にはアルミナゾルであることが好ましい。
解砕工程は、仮焼工程後のジルコニア粉末の物理的な力による緩慢な凝集を取り除くことができる。解砕方法は、ジルコニア粉末に必要以上の負荷がかからない方法で行うことが好ましく、例えば、直径2mm以上10mm以下のジルコニアボールを媒体として用い、5時間以下、ボールミルで処理することが挙げられる。
顆粒化工程は、ジルコニア粉末をより操作性のよい粉末とする。顆粒化は任意の方法であるが、ジルコニア粉末と溶媒とを混合してスラリーを得、これを噴霧造粒することが好ましい。この場合、溶媒として、水又はアルコールの少なくともいずれか、更には水にジルコニア粉末を分散させればよい。造粒されたジルコニア粉末(以下、「ジルコニア顆粒」ともいう。)として、平均顆粒径は30μm以上80μm以下、更には50μm以上60μm以下であること、及び、嵩密度が1.00g/cm以上1.40g/cm以下、更には1.10g/cm以上1.30g/cm以下であることが挙げられる。
本発明のジルコニア粉末をコンパウンドとする場合、得られたジルコニア粉末とバインダーとを混合する混練工程を有することが好ましい。混練工程は、ジルコニア粉末とバインダーとが十分に混練されれば任意の方法でよく、例えば、加熱混練や湿式混合が挙げられる。
好ましい混練方法として、120℃以上200℃以下、更には120℃以上165℃以下で混練することが挙げられる。
表面に水酸基を有さないジルコニア粉末のDTG曲線を示す模式図 表面に水酸基を有するジルコニア粉末のDTG曲線を示す模式図 実施例1のDTG曲線 比較例3のDTG曲線
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(平均ゾル粒径の測定)
水和ジルコニアゾルの平均ゾル粒径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した。試料の前処理として、水和ジルコニアゾル含有溶液を純水に懸濁させ、超音波ホモジナイザーを用いて3分間分散させた。
(単斜晶率の測定)
粉末X線回折測定により粉末試料のXRDパターンを得た。得られたXRDパターンから単斜晶率を求めた。測定には一般的なX線回折装置(商品名:Model RINT UltimaIII、リガク社製)を使用した。粉末X線回折測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 連続スキャン
スキャンスピード : 1°/分
ステップ幅 : 0.02°
発散スリット : 0.5deg
散乱スリット : 0.5deg
受光スリット : 0.3mm
測定範囲 : 2θ=26°~33°
(Dの測定)
透過型電子顕微鏡を用いて得られた観察図より、無作為に300個の粒子を抽出した。抽出した粒子を画像解析ソフト(商品名:ImageJ)で解析することで、ジルコニア粉末のDを求めた。
(BET比表面積及びDの測定)
吸着ガスとして窒素を用い、流動式比表面積自動測定装置(装置名:フローソーブIII2305、島津製作所製)により粉末試料のBET比表面積を測定した。BET比表面積の測定に先立ち、粉末試料は大気中、250℃で30分間で脱気処理した。得られたBET比表面積から以下の式により、粉末試料のDを求めた。
=6000/(S・ρ)
ρ=5.8×f/100+6.1×(100-f)/100
上記式において、DはBET比表面積から求められる平均粒子径(nm)、SはBET比表面積(m/g)、ρは理論密度(g/cm)及びfは単斜晶率(%)である。
(粒子径分布測定)
マイクロトラック粒度分布計(商品名:MT3000II、マイクロトラック・ベル社製)を用いてHRAモードで測定した。試料の前処理条件としては、粉末を蒸留水に懸濁させ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散させた。
(熱重量測定)
示差熱熱重量同時測定装置(装置名:TG/DTA6300、セイコーインスツルメンツ製)を用いて、粉末試料を昇温させながらTG及びDTG曲線を測定した。測定条件は以下のとおりとした。
測定温度 :室温~600℃
昇温速度 :10℃/min
データ採取間隔 :28秒
(混練性の評価)
ジルコニア粉末を150℃で1時間以上乾燥させた後、混練機(装置名:ラボニーダーミルTDR-3型、トーシン製)にジルコニア粉末及びバインダーを添加し、これを160℃で混練してコンパウンドとした。混練開始から15分後において、混練機にかかるトルク(N・m)を測定することで、コンパウンドの混練性を評価した。
(流動性の評価)
流動性は、フローテスターによるコンパウンド試料の流動速度を測定することで評価した。測定には一般的なフローテスター(装置名:フローテスターCFT500D、島津製作所製)を用い、以下の条件でコンパウンド試料に荷重を加えた際に、シリンジから射出されるコンパウンド試料の体積速度(cm/s)を測定することで、流動性を確認した。測定条件を以下に示す。
シリンジ面積 :1cm
ダイ穴径 :直径1mm
ダイ長さ :2mm
荷重 :50kg
測定温度 :160℃
コンパウンド密度 :3.0g/cm
(成形体密度の測定)
成形体試料の体積を重量で除すことで成形体密度を求めた。重量は天秤で測定し、また、体積は成形体寸法をノギスで測定して得られた値から算出した。
(焼結体密度の測定)
ジルコニア焼結体の密度は、アルキメデス法により測定した。測定に先立ち乾燥後の焼結体の質量を測定した後,焼結体を水中に配置し、これを1時間煮沸することで前処理とした。
(平均結晶粒径の測定)
焼結体の結晶粒子の平均結晶粒径は、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いてプラニメトリック法により算出した。具体的には、円内の粒子数nと円周にかかった粒子数Niの合計が少なくとも200個となるような円を顕微鏡画像上に描いき、当該nc及びNiからプラニメトリック法による平均結晶粒径を求めた。なお、粒子数Nが200個に満たない場合には、結晶粒数の合計(n+N)が少なくとも200個となるように、複数視野の顕微鏡画像を用いて、それぞれ同様な円を描き、プラニメトリック法により平均結晶粒径を求めた。
測定に先立ち、焼結体試料は鏡面研磨した後、熱エッチング処理を施すことで前処理とした。鏡面研磨は、平面研削盤で焼結体表面を削ったあとに、鏡面研磨装置で平均粒径9μm、6μm及び1μmのダイヤモンド砥粒を順番に用いて研磨した。
(全光線透過率の測定)
全光線透過率は、紫外可視分光光度計(装置名:V-650、日本分光社製)を用い、波長600nmにおける全光線透過率を測定した。測定に先立ち、焼結体試料は、平均結晶粒径の測定と同様な前処理を施し、厚み1.0mmの円板状の試料とした。
(曲げ強度の測定)
曲げ強度は、JIS R1601に準じた3点曲げ試験で評価した。
(熱水処理試験)
焼結体試料の劣化を確認するため、焼結体試料を140℃の熱水に60時間浸漬処理した。処理後の焼結体はXRD測定し、単斜晶率(f)の測定と同様な方法で、焼結体試料の表面の単斜晶率を求めた。
実施例1
(ジルコニア粉末の調製)
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.57mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら193時間の加水分解し、水和ジルコニアゾル水溶液を得た。水和ジルコニアゾル水溶液中の水和ジルコニアゾルは平均ゾル粒径が190nmであった。
限外濾過膜(分画分子量:6000)を用いて得られた水和ジルコニアゾル水溶液を濾過したのち、十分量の純水で洗浄した。洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液の未反応ジルコニウム含有量は0.01重量%であった。
洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液にイットリア濃度が3mol%となるように塩化イットリウム6水和物を添加して、イットリア濃度3モル%の水和ジルコニアゾル水溶液を得た。当該水和ジルコニアゾル水溶液に濃度0.1mol/Lのアンモニア水溶液を添加し、共沈物を得た。
得られた共沈物を濾過して水洗し、大気中、120℃で乾燥した後、大気中、1110℃、2時間で仮焼した。得られた仮焼粉に純水を加えて粉末濃度45%のスラリーを調製した。得られたスラリーを直径2mmのジルコニアボールを用いてボールミルで16時間粉砕することで水和処理を行った。
水和処理後のスラリーを120℃で乾燥させて、イットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
本実施例のジルコニア粉末のDTG曲線を図3に示した。図3より、本実施例のジルコニア粉末のDTG曲線において、300℃付近にピークを有する200~400℃付近のDTGの増加挙動が確認できた。
(コンパウンドの作製)
本実施例のジルコニア粉末を150℃で1時間乾燥させた。乾燥後の本実施例のジルコニア粉末150gとアクリル系樹脂26.4gを160℃で15分間混練し、ジルコニア重量比が85重量%である本実施例のコンパウンドを得た。混練には混練機(装置名:ラボニーダーミルTDR-3型、トーシン製)を用いた。
実施例2
仮焼温度を1000℃としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。また、当該ジルコニア粉末を用いて実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例3
仮焼温度を1040℃としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。また、当該ジルコニア粉末を用いて実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
比較例1
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.4mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら煮沸温度で140時間の加水分解し、水和ジルコニアゾル水溶液を得た。水和ジルコニアゾル水溶液中の水和ジルコニアゾルは平均ゾル粒径が250nmであった。
得られた水和ジルコニアゾル水溶液を限外濾過膜(分画分子量:6000)を用いて濾過したのち、十分量の純水で洗浄した。洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液の未反応ジルコニウム含有量は0.01重量%であった。
洗浄後の水和ジルコニアゾル水溶液にイットリア濃度が3mol%となるように塩化イットリウム6水和物を添加して、イットリア濃度3モル%の水和ジルコニアゾル水溶液を得た。当該水和ジルコニアゾル水溶液に濃度0.1mol/Lのアンモニア水溶液を添加し、共沈物を得た。
得られた共沈物を濾過して水洗し、大気中、120℃で乾燥した後、大気中、950℃で2時間で仮焼し、イットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本比較例のジルコニア粉末を得た。
(コンパウンドの作製)
本比較例のジルコニア粉末を150℃で1時間乾燥させた。乾燥後の本比較例のジルコニア粉末150gとアクリル系樹脂バインダー26.4gを160℃で15分間混練し、ジルコニア粉末の含有量が85重量%である本比較例のコンパウンドを得た。混練には混練機(装置名:ラボニーダーミルTDR-3型、トーシン製)を用いた。
実施例1乃至3及び比較例1のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表1及び表2に示す。
Figure 0007062900000001
Figure 0007062900000002
実施例4
仮焼温度を1150℃としたこと、及び、直径10mmのジルコニアボールを用いてボールミルで6時間粉砕した後、さらに直径2mmのジルコニアボールを用いて15時間粉砕したこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を用いて実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例5
仮焼温度を1250℃としたこと、及び、直径10mmのジルコニアボールを用いてボールミルで20時間粉砕した後、さらに直径2mmのジルコニアボールを用いて10時間粉砕したこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を用いて実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例6
仮焼温度を1250℃としたこと、及び、直径10mmのジルコニアボールを用いてボールミルで6時間粉砕した後、さらに直径2mmのジルコニアボールを用いて15時間粉砕したこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。実施例6で得られた粉末の体積粒子径分布は、粒子径ピーク1として0.61μmに頻度76%のピークと、粒子径ピーク3として3.82μmの頻度24%のピークとを有するバイモーダルの粒子径分布であったが、粒子径ピーク2に相当するピークを有していなかった。得られたジルコニア粉末を用いて実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例4乃至6のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表3及び表4に示す。
Figure 0007062900000003
Figure 0007062900000004
実施例7
粉砕時間を12時間としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例8
粉砕時間を13時間としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例9
粉砕時間を17時間としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例10
粉砕時間を18時間としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例7乃至10のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表5及び表6に示す。
Figure 0007062900000005
Figure 0007062900000006
実施例11
アルミナ濃度が0.25重量%となるようにアルミナ粉末を仮焼粉に添加したこと以外は実施例1と同様な方法で0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例12
アルミナ濃度が0.05重量%となるようにアルミナ粉末を仮焼粉に添加したこと以外は実施例1と同様な方法で0.05重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例13
アルミナ濃度が0.25重量%となるようにアルミナゾルを仮焼粉に添加したこと以外は実施例1と同様な方法で0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例14
アルミナ濃度が0.05重量%となるようにアルミナゾルを仮焼粉に添加したこと以外は実施例1と同様な方法で0.05重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
比較例2
アルミナ濃度が0.25重量%となるようにアルミナゾルを水和ジルコニアゾル水溶液に添加したこと以外は比較例1と同様な方法で0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本比較例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のコンパウンドを得た。
実施例11乃至14及び比較例2のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表7及び表8に示す。
Figure 0007062900000007
Figure 0007062900000008
実施例15
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
得られた水和ジルコニアゾルを1050℃で2時間仮焼したこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
本実施例のジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例16
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
仮焼温度を1110℃としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例17
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
仮焼温度を1150℃としたこと以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例18
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
仮焼温度を1150℃としたこと及びボールミルで22時間粉砕すること以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例19
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
仮焼温度を1150℃としたこと及びボールミルで30時間粉砕すること以外は実施例1と同様な方法でイットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを得た。
実施例20
ジルコニウム濃度が0.4mol/L及び塩化物イオン濃度が0.54mol/Lに調製されたオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸及び還流させながら190時間の加水分解し、平均ゾル粒径260nmの水和ジルコニアゾルを得た。
アルミナ濃度が0.25重量%となるようにアルミナ粉末を仮焼粉に添加したこと以外は実施例1と同様な方法で0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のコンパウンドを得た。
実施例21
実施例20と同様な方法で、0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。本実施例のジルコニア粉末159.3gとアクリル系樹脂25.0gを使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、ジルコニア重量比86.4重量%である本実施例のコンパウンド得た。
実施例22
実施例20と同様な方法で、0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。本実施例のジルコニア粉末167.8gとアクリル系樹脂24.3gを使用したこと以外は実施例1と同様な方法でジルコニア重量比87.4重量%である本実施例のコンパウンドを得た。
実施例17乃至22のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表9及び表10に示す。
Figure 0007062900000009
Figure 0007062900000010
比較例3
ジルコニウム濃度が0.37mol/L及び塩化物イオン濃度が0.74mol/Lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で水和ジルコニアゾル水溶液を得た。水和ジルコニアゾル水溶液中の水和ジルコニアゾルは平均ゾル粒径が100nmであった。
限外濾過膜(分画分子量:6000)を用いて得られた水和ジルコニアゾル水溶液を濃縮した。濃縮後の水和ジルコニアゾル水溶液の未反応ジルコニウム含有量は10重量%であった。
濃縮後の水和ジルコニアゾル水溶液にイットリア濃度が3mol%となるように塩化イットリウム6水和物を添加して、イットリア濃度3モル%の水和ジルコニアゾル水溶液を得た。当該水和ジルコニアゾル水溶液に濃度0.1mol/Lのアンモニア水溶液を添加し、共沈物を得た。
得られた共沈物を濾過して水洗し、大気中、120℃で乾燥した後、大気中、1000℃で2時間で仮焼した。仮焼後のBET比表面積は12.6m/gであった。得られた仮焼粉にアルミナ濃度が0.25重量%となるようにアルミナ粉末を添加して純水を加えて濃度45%のスラリーを調製した。得られたスラリーを撹拌しながら72時間処理することで水和処理を行った。
水和処理後のスラリーを120℃で乾燥させて、0.25重量%のアルミナを含み、イットリア含有量が3mol%のジルコニアからなる本比較例のジルコニア粉末を得た。本比較例のジルコニア粉末のDTG曲線を図4に示した。本比較例のジルコニア粉末のDTG曲線は減少傾向のみであり、200~400℃付近の増加挙動は認められなかった。
当該ジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でコンパウンドを作製した。しかしながら、本比較例のジルコニア粉末は、バインダーとの混練性が悪く、160℃では混練できなかった。そのため、温度を170℃として混練した。
本比較例のジルコニア粉末及びコンパウンドの評価結果を、それぞれ、表11及び表12に示す。
Figure 0007062900000011
Figure 0007062900000012
(焼結体の作製)
実施例2-1
実施例12のジルコニア粉末を金型プレスにより予備成形を行った後に、成形圧力200MPaでCIP処理することで、成形体を得た。得られた成形体を、大気中、1350℃で2時間焼結することでジルコニア焼結体を得た。
実施例2-2
実施例14のジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例2-1と同様な方法で成形体と焼結体を得た。
これらの実施例の結果を表13に示す。
Figure 0007062900000013
表13からも明らかなように、本発明のジルコニア粉末から、1350℃という低い焼結温度であるにもかかわらず、1300MPa以上の高い三点曲げ強度を示す焼結体が得られることが確認できた。
本発明のジルコニア粉末は、ジルコニア焼結体の原料として使用することができ、粉砕機用部材,精密機械部品,光コネクター部品等の構造材料、歯科材等の生体材料、装飾部材及び電子機器外装部品等の外装材料の原料粉末に有用である。

Claims (10)

  1. 電子顕微鏡で測定される一次粒子の平均粒子径が70nm以上400nm以下であり、BET比表面積が6m/g以上20m/g以下であり、BET比表面積から求められる平均粒子径に対する電子顕微鏡で測定される平均粒子径の比が1.0以上3.0以下であり、なおかつ、単斜晶率が25%以上70%以下であることを特徴とするジルコニア粉末。
  2. 体積粒子径分布において、0.20μm以上1.00μm以下の粒子径のピークを有する請求項1に記載のジルコニア粉末。
  3. BET比表面積が6m/g以上17m/g未満である請求項1又は2に記載のジルコニア粉末。
  4. 2.0mol%以上4.0mol%以下のイットリアを含有する請求項1乃至のいずれかに記載のジルコニア粉末。
  5. アルミナを含む請求項1乃至のいずれかに記載のジルコニア粉末。
  6. ジルコニウム塩水溶液を加水分解して平均ゾル粒子径が150nm以上400nm以下の水和ジルコニアゾルを含有する水和ジルコニアゾル水溶液を得る加水分解工程、該水和ジルコニアゾル水溶液中の未反応ジルコニウム含有率を1重量%以下とする洗浄工程、洗浄工程後の水和ジルコニアを950℃以上1250℃以下で熱処理する仮焼工程、及び、仮焼後のジルコニア粉末を粉砕処理する粉砕工程、を含む請求項1乃至のいずれかに記載のジルコニア粉末の製造方法。
  7. 前記洗浄工程と前記仮焼工程との間に、水和ジルコニアとイットリア源とを混合するイットリア混合工程、を有する請求項に記載の製造方法。
  8. 前記洗浄工程後にアルミナ混合工程を有する請求項又はに記載の製造方法。
  9. 請求項1乃至のいずれかに記載のジルコニア粉末を使用するジルコニア焼結体の製造方法。
  10. 請求項1乃至のいずれかに記載のジルコニア粉末とバインダーとを含む組成物。
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