JP2007091505A - チタン酸バリウム系粉末およびその製法 - Google Patents

チタン酸バリウム系粉末およびその製法 Download PDF

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Abstract

【課題】固相法を適用して得られる、微粒かつ高純度のチタン酸バリウム系粉末およびその製法を提供する。
【解決手段】平均粒径が100nm以下のチタン酸バリウム系粉末であって、該チタン酸バリウム系粉末中のZrの含有量が酸化物換算で0.01質量%以下であり、かつOH基量が0.1質量%以下である。このようなチタン酸バリウム系粉末は、各粉末のBET比表面積をBET法によって求めたとき、前記炭酸バリウム粉末のBET比表面積が10m/g〜20m/g、酸化チタン粉末のBET比表面積が50m/g〜100m/gであり、かつ、前記炭酸バリウムおよび前記二酸化チタンの混合に強制攪拌型メディアミルを用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、チタン酸バリウム系粉末およびその製法に関し、特に、固相反応法を用い得られ、より微粒かつ均質で不純物の少ないチタン酸バリウム系粉末およびその製法に関するものである。
チタン酸バリウム系粉末は、これを主成分とする原料粉末を焼結させることによって誘電体セラミックスを得ることができ、その誘電体セラミックスは、たとえば積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層を形成するために用いられている。
積層セラミックコンデンサにおいて小型化かつ大容量化を図るためには誘電体層の薄層化が有効である。誘電体層の薄層化を図るためには、それに用いられるチタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末がより微粒であるばかりでなく、より均質かつ高純度であり、さらに、その誘電体粉末を構成するチタン酸バリウムにおいて正方晶の割合が高いことが望まれる。
微粒で均質なチタン酸バリウム系粉末を得る方法として、これまで水熱合成法や加水分解法が提案され実用化されているが、これらの方法によると、チタン酸バリウム系粉末の製造のためのコストの上昇を招くという欠点を有している。そのためチタン酸バリウム系粉末は、従来より固相法によって製造されるのが一般的である。
固相法によりチタン酸バリウムを合成するにあたっては、例えば、出発原料として炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末とを用い、これら炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末とを混合した後仮焼することが行なわれる。このような製法を採る固相反応法を用いて、より微粒で均質なチタン酸バリウム粉末を製造しようとするためには、炭酸バリウム粉末や酸化チタン粉末にできるだけ微粒のものを用い均一に分散させることが重要である。
固相法において炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を用いた微粒化を図った例として、下記の特許文献1、2が挙げられる。
例えば、下記の特許文献1には、用いる炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末について、適正なBET比表面積の粉末を選択することにより、粒径ばらつきの小さいチタン酸バリウム系粉末が得られることの記載がされている。
特許文献2には、用いる炭酸バリウム粉末のBET比表面積に対して、酸化チタン粉末のBET比表面積を適正化することにより、微粒で正方晶の割合が高くかつ組成ばらつきの小さいチタン酸バリウム系粉末を得ることができると記載されている。
特開平10−338524号公報 特開2003−2739号公報
しかしながら、例えば、特許文献1のように、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末とを混合する場合に、ジルコニアボールをメディアとして用い、ボールミルにより長時間の混合および粉砕を行うと、その混合粉砕時にメディアであるジルコニアボールが摩耗して原料粉末である炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末の混合物中にジルコニア成分が混入しやすいという問題がある。
また、炭酸バリウム粉末としてBET比表面積が10m/g未満のものを使用した場合、炭酸バリウム粉末の粒径がもともと大きいことから、得られるチタン酸バリウム系粉末も大きいものとなり平均粒径100nm以下の合成粉末を得ることは困難である。
次に、特許文献2については、原料粉末として用いる炭酸バリウム粉末として、BET比表面積が20m/g以上のものを用いた場合、炭酸バリウム粉末はもともと水などの溶媒とともに混合、粉砕すると粉末の周囲に水酸化物が形成されやすいという性質があり、このため湿式混合時にスラリー粘度が高くなる。そして、このような混合物をボールミルなどを用いて混合粉砕を行った場合には、混合物が増粘しやすく、このような場合にもメディアであるボールなどが摩耗しやすくなり混合物へのメディア成分など不純物の混入が起こりやすくなるという問題がある。
さらには、上記のようにBET比表面積が20m/g以上の微粒の炭酸バリウム粉末を使用しても、一方の酸化チタン粉末のBET比表面積が大きい場合には、両粉末の反応性が極めて高いことから、得られるチタン酸バリウム系粉末は仮焼などの加熱段階で粒成長しやすく、そのため微粒のチタン酸バリウム系粉末を安定して得ることができないという問題がある。
従って、本発明は、固相法を適用して得られる微粒かつ高純度のチタン酸バリウム系粉末およびその製法を提供することを目的とする。
本発明のチタン酸バリウム系粉末は、平均粒径が100nm以下のチタン酸バリウム系粉末であって、該チタン酸バリウム系粉末中のZrの含有量が酸化物換算で0.01質量%以下であり、かつOH基量が0.1質量%以下であることを特徴とする。
また、上記チタン酸バリウム系粉末では、前記BaTiOの結晶構造がペロブスカイト構造であり、格子定数のc軸/a軸比が1.005〜1.010であることが望ましい。
本発明のチタン酸バリウム系粉末の製法は、炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を混合する工程、仮焼する工程の各工程を備えるチタン酸バリウム系粉末の製法であって、前記炭酸バリウム粉末としてBET比表面積が10m/g〜20m/gのものを用い、前記酸化チタン粉末としてBET比表面積が50m/g〜100m/gのものを用い、かつ、前記炭酸バリウムおよび前記二酸化チタンの混合に強制攪拌型メディアミルを用いることを特徴とする。
また、上記チタン酸バリウム系粉末の製法では、強制攪拌型メディアミルに材質がジルコニアであるメディアボールを用いることが望ましい。
本発明は、Zrの含有量を酸化物換算で0.01質量%以下であり、かつ、OH基量が0.1質量%以下である高純度かつ平均粒径が100nm以下の微粒のチタン酸バリウム系粉末を提供することができる。
本発明は、BET比表面積が10m/g〜20m/gの炭酸バリウム粉末とBET比表面積が50m/g〜100m/gの酸化チタン粉末を用いてチタン酸バリウム系粉末を調製する際に、これらの原料粉末を混合、粉砕する装置として強制攪拌型メディアミルを用いることから、短時間の粉砕時間が可能となり、かつメディアボールの衝撃力も低くできるために、メディアボールからのコンタミネーションを低減できるチタン酸バリウム系粉末の製法を提供することができる。
本発明のチタン酸バリウム系粉末について詳細に説明する。本発明のチタン酸バリウム系粉末は、化学式をBaTiOとして表わされる複合酸化物を主成分として含むものである。
この粉末は平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。平均粒径が100nm以下であると積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品を構成する誘電体層の薄層化が容易となるとともに、誘電体層を構成する結晶粒子が微粒であるために粒界数を増やすことができ、これにより絶縁性を高めることができる。なお、下限値としては粉末中の正方晶の割合が高く、粉末自体の比誘電率を高くできるという理由から30nm以上であることが望ましい。
これに対してチタン酸バリウム系粉末の平均粒径が100nmよりも大きい場合には、反対に誘電体層の薄層化が困難であり、誘電体層を構成する結晶粒子が大きくなるために粒界数が減り絶縁性が低下する恐れがある。
なお、本発明におけるチタン酸バリウム系粉末の平均粒径は撮影した電子顕微鏡写真に対角線を引き、線上に存在する粉末について個々に最大径を測定し、測定した全ての粉末を平均化して求める。
本発明のチタン酸バリウム系粉末は、その粉末中にZrの含有量が酸化物換算で0.01質量%以下であることが重要である。Zrの含有量が酸化物換算で0.01質量%以下であると、この粉末を成形、焼成してもBaTiO中に固溶するZr成分量が少ないために正方晶性の高いチタン酸バリウム系粉末が得られ、高誘電率化を図ることができる。
なお、Zrの含有量は、上記のようにZrの固溶を極力低減してチタン酸バリウム系粉末の正方晶性の割合を高めるという理由からZr成分は無い方が好ましい。
これに対して、チタン酸バリウム系粉末中のZrの含有量が酸化物換算で0.01質量%よりも多いとチタン酸バリウム系粉末中に含まれるZr量が多くなりBaTiOに固溶して一部に立方晶が生成し粉末全体の正方晶性が低下する。このためチタン酸バリウム系粉末の比誘電率が低いものとなる。
また本発明のチタン酸バリウム系粉末は、当該粉末中に含まれるOH基量が0.1質量%以下であることを特徴とする。本発明のチタン酸バリウム系粉末はOH基量が0.1質量%以下であるためにOH基が存在し結晶性が損なわれる乱れた結晶部分が少ないために高い正方晶性を示すものとなる。
つまり本発明のチタン酸バリウム系粉末はBaTiOの結晶構造がペロブスカイト構造であることが望ましく、特に、高い比誘電率を示し、しかも安定に製造できるという理由から、格子定数のc軸/a軸比が1.005〜1.010の範囲にあることが好ましい。なお、チタン酸バリウム系粉末の場合、c軸/a軸比を1.01より大きくすることは製法上困難である。
また、本発明のチタン酸バリウム系粉末はBaとTiのモル比Ba/Tiが0.99〜1.01であることが好ましい。Ba/Ti比がこの範囲にあるとZrなどの不純物が少量固溶しても組成ずれの少ないBaTiOの割合が多くなり、このため粉末全体として高い比誘電率を得ることができる。
尚、Ba/Ti比は透過電子顕微鏡に付設の分析装置(TEM−EDX)によって求めることができる。このような評価では試料数は10個以上であることが好ましい。
本発明のチタン酸バリウム系粉末の製法に用いる原料粉末について説明する。本発明は原料粉末として炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を用いることを特徴とする。この場合、炭酸バリウム粉末のBET比表面積が10m/g〜15m/gであることが重要である。
炭酸バリウム粉末のBET比表面積が10m/g〜20m/gであると炭酸バリウム粉末の反応性が小さく仮焼時の粒成長が抑制され、かつ、もとの原料粉末の大きさが小さいために、仮焼後に得られるチタン酸バリウム系粉末の平均粒径を容易に100nm以下にできる。
一方、酸化チタン粉末のBET比表面積はチタン酸バリウム系粉末の合成においてコアとなるものであり、そのため炭酸バリウム粉末よりも小さく、そのBET比表面積の程度として50m/g〜100m/gであることが重要である。酸化チタン粉末のBET比表面積が前記した範囲であると、炭酸バリウム粉末のBET比表面積が酸化チタン粉末に比較して大きくても、前述のように酸化チタン粉末がコアとなることから微粒化が図れる。
これに対して、炭酸バリウム粉末のBET比表面積が10m/gより小さいと、チタン酸バリウム系粉末の平均粒径が100nmより大きくなりやすくなる。一方、BET比表面積が20m/gより大きいと炭酸バリウム粉末の反応性が高くなり合成時に粒成長しやすい。
酸化チタン粉末については、そのBET比表面積が50m/gより小さいと、元の酸化チタン粉末の粒径が大きいためにコア部分が大きくなりチタン酸バリウム系粉末として平均粒径100nm以下が困難となり、一方、酸化チタン粉末のBET比表面積が100m/gより大きいと酸化チタン粉末が凝集しやすく、却って酸化チタン粉末のコア部分が大きくなりチタン酸バリウム系粉末の平均粒径を100nm以下にすることが困難となる。
さらに、炭酸バリウム粉末のBET比表面積が20m/gより大きく、かつ酸化チタン粉末のBET比表面積が100m/gより大きい場合には原料粉末の混合、粉砕時に増粘しやすくなり、分散性が低下し、個々に見ると、合成したチタン酸バリウム系粉末中にBa/Ti比が等モル比からのずれた粉末が形成されやすくなる。
尚、これら原料粉末のBET比表面積はBET法により求める。また、チタン酸バリウム系粉末中に含まれるZrの酸化物量は得られた粉末を酸などの溶液に溶かした上でICP発光分光分析により定量化できる。
次に製造工程について説明する。まず、上記した炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を高純度の溶媒および分散剤とともに予備混合してスラリを調製する。本発明にかかるスラリを調製する溶媒は、例えば、水、エタノール、ケトン類またはこれらの混合溶媒が望ましく、さらに本発明によれば、スラリに適する分散剤を添加することが好ましい。分散剤としてはポリアクリル酸ソーダ、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダなどから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明におけるスラリの粘度は、粉砕時の増粘を抑制しメディアボールの摩耗を低減するという理由から、剪断速度10/sec.において剪断応力が0.8〜5Pa、つまり、粘度として0.08〜0.5Pa・sがより好ましい。このように本発明は、用いる原料粉末のBET比表面積を選択しスラリー粘度を抑えることでコンタミネーションとしてのZrの酸化物量を低減できる。
この予備混合には図1に示すメディアレス分散機などが好適である。メディアレス分散機Aは、図1に示すように、撹拌容器1を備え、この撹拌容器1の中央内部には、主軸3によって保持された撹拌回転体としての複数の撹拌翼5が設けられている。撹拌翼5は、主軸3を回転駆動することによって、所定の周速をもって回転するように構成されている。7はスラリ導入口、9はスラリの排出口である。
次に、上記の予備混合の工程で調製したスラリを、図2に示す分散装置中を流動させて混合、粉砕することにより混合した原料粉末を均一かつ微粉末として混合することができる。
図2は、本発明にかかる強制撹拌型メディアミルの断面模式図である。強制撹拌型メディアミルBは撹拌容器11を備え、その撹拌容器11の一方端にはスラリ導入口13が設けられ、同じく他方端にはスラリ排出口15が設けられている。
撹拌容器11内には、主軸17によって保持された撹拌回転体としての複数のディスク19が設けられている。ディスク19は主軸17を回転駆動することによって、所定の周速をもって回転するように構成されている。なお、強制撹拌型メディアミルBにおいて、撹拌用回転体としては、上述したディスク19の他、ロータまたはピンなどが用いられることもある。
そして、撹拌容器11内の主軸17やディスク19を除く空間に粉砕用のメディアボール(図示せず)が充填される。そのメディアボールとしては、通称ビーズと呼ばれる微粒のボールが充填されている。なお、メディアボール径は本発明における被粉砕物の最終的な大きさをより微粒なものにするという点で300μm以下、特に100μm以下が好ましい。
メディアボールの材質としては、ジルコン(ZrSiO)やジルコニアなどを好適に用いることができ、特に、チタン酸バリウム系粉末を調製する場合、チタン酸バリウムの結晶構造をペロブスカイト構造として維持するという点およびそれに伴う比誘電率の低下を抑えるという点でジルコニアがより好ましい。これらメディアボールは不純物の低減および摩耗や破壊の抑制という点での純度が99.9%以上、相対密度が99%以上であることが望ましい。
メディアボールの充填率は撹拌容器11の有効内容積、より特定的には撹拌容器11の有効内容積の80〜98%とされる。また、スラリ中の素原料粉末の体積濃度は2体積%以上とされる。さらにディスクの周速は10m/秒以下とされる。次に、ディスク19が所定の周速をもって回転されながら、撹拌容器1のスラリ導入口3から素原料粉末を含むスラリが導入される。この後、粉砕処理されたスラリは一旦容器に入れ溶媒を乾燥させる。
つまり、本発明では、従来のボールミルのようにボールの落下エネルギーにより対象物を粉砕するのではなく、粉砕する対象物をメディアであるボールやディスクとの間を通過させる方法であるために落下のエネルギーのような強力なエネルギーを要しないためにメディアの摩耗を抑制できるのである。
この場合、溶媒として水を用いる場合、水に対して少量の有機溶媒を混合すると、混合粉砕した後の原料粉末の凝集力を小さくできるとともに、乾燥後においても凝集体を低減できるという利点がある。
こうして得られる素原料粉末を粉砕、乾燥した後の粉末の一次粒子の平均粒径は100nm以下、特に80nm以下であることがより好ましく、また、本発明の製法によれば、乾燥、仮焼後の不純物量を100ppm以下にすることができる。
つまり、本発明では、チタン酸バリウム系粉末を調製する場合に、原料粉末として炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末を用いる方法であるために、水熱法や共沈法など金属の水溶液から合成する方法に比較して合成時において粉末中に取り込まれるOH基を低減できるという利点がある。
なお、本発明の製法に好適な分散装置として、上記強制撹拌型メディアミルの他に、図3に示すようなメディアレス超高圧分散装置Cを好適に用いることができる。メディアレス超高圧分散装置Cは、メディアボールなどのないミキシング容器31内にスラリ容器33a、33bから粉末を含むスラリを高速で送り込み、粉末を両方向から衝突させて混合および粉砕を行うものである。この方法によっても、上記した強制撹拌メディアミルB1を用いる場合と同様の粒子径の粉末が得られ、かつ、この粉砕方法によれば、一切のメディアボールを用いないことから、上記した強制撹拌メディアミルBに比較してメディアボールによるコンタミネーションを低減できる。
上記強制撹拌メディアミルBなどを用いて粉砕し乾燥させて得られた素粉末(凝集体)は、平均粒径D50(D50:粒度分布における50%積算値)に対してσ≦70%であることが望ましく、さらにはσ≦50%が望ましい。なお、これらの凝集体は回収性が特に良好であるため、一般的な静電捕集器、バグフィルタ、サイクロン等を用いて行うことが出来る。
次に、上記の混合粉砕工程で得られた素粉末を1000℃以下、特に、800〜950℃の温度で熱処理して仮焼粉末を得る。本発明によれば素粉末の仮焼を1000℃以下の温度で行うことにより素粉末の粒成長を抑制しつつ合成を行うことができる。仮焼温度は合成度を高めかつ粒成長を抑制できるという点で、800℃以上がより好ましい。また、この熱処理における圧力は、低温での熱分解ができるという理由から100Pa以下、特に50Pa以下が好ましい。
仮焼温度が1000℃よりも高いと粒子が大きくかつ隣接する粒子同士が接合しやすくなり、仮焼後の解砕が困難となり微細化ができなくなる。
上述のようなチタン酸バリウム粉末の平均粒径、Zr酸化物量、c/a比およびA/B比は、選択した原料粉末のBET比表面積および粉砕実験の結果に基づいて求められたものである。このような条件下での製法によれば、微粒であっても不純物の少ない均質でしかも粒度分布がシャープなチタン酸バリウム系粉末が得られる。
より具体的には、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト型複合酸化物にあっては、組成ばらつきとしてのA/Bモル比ばらつきを0.01以下(BaとTiのモル比Ba/Tiが0.99〜1.01)にでき、また、ABO結晶においては格子定数c/aを1.005以上にできる。
次に、仮焼粉末についても上述の平均粒径を維持するように解砕される。解砕した混合原料粉末は、次に、所望の形状に成形した後、焼成することによりセラミック焼結体が得られる。
次に、この発明に係るチタン酸バリウム系粉末の製法による効果を確認した実験例について説明する。
出発原料として、表1に示すようなBET比表面積をそれぞれ有する炭酸バリウム(BaCO)粉末と酸化チタン(TiO)粉末とを用意し、これらを、Ba/Tiモル比が1.000となるように秤量し、溶媒として純水(99.99%)を用い、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを用いた。溶媒は原料粉末100質量に対して200質量部添加した。また、分散剤は原料粉末100質量に対して2質量部添加した。
次に、このような組成のスラリをまずメディアレス分散機により予備混合した。次に、予備混合したスラリを内壁をジルコニア強化アルミナ(純度98%)で形成された強制攪拌型メディアミルにて湿式混合した。メディアボールは平均径が0.1mmの純度99.9%、相対密度99%のジルコニアとジルコンを用いた。
次に、この混合粉末を乾燥した後、バッチ炉において、それぞれ、850℃で2時間熱処理し、仮焼前に用いたと同様の強制攪拌型メディアミルにて解砕処理を行った。
得られたチタン酸バリウム系粉末について、以下の評価を行った。原料粉末のBET比表面積は窒素吸着法を用いてBET式から求めた。スラリの粘度はHAAKE粘度計を用いて剪断速度10/sにて測定した。得られたチタン酸バリウム系粉末の平均粒径は、撮影した電子顕微鏡写真に対角線を引き、線上に存在する粉末について個々に最大径を測定し、測定した全ての粉末を平均化して求めた。Ba/Ti比は透過電子顕微鏡に付設の分析装置(TEM−EDX)によって求めた。このような評価では試料数は10個とした。c/a比は粉末X線回折により求めた。選択したピークは(111)である。得られたチタン酸バリウム系粉末に含まれるZrの酸化物量は、チタン酸バリウム系粉末を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、Zrを1000ppm含む標準液を希釈したものを標準試料としてICP発光分光分析にかけて定量化した。チタン酸バリウム系粉末中のOH基量は昇温脱離ガス分析および熱重量分析により評価した。加熱温度は室温から500℃とした。なお、比較例としてボールミルにて24時間の粉砕を行った試料も作製した。
Figure 2007091505
表1から明らかなように、BET比表面積が10〜20m/gの炭酸バリウム粉末とBET比表面積が50〜100m/gの酸化チタン粉末をジルコニアボールを用いた強制撹拌メディアミルにて混合粉砕し仮焼して得られた本発明のチタン酸バリウム系粉末は、平均粒径が100nm以下、Zrの酸化物量がBaTiO100質量部に対して0.01質量部以下、粉末中のOH基量が0.1質量%以下であり微粒で高純度の粉末が得られた。
特に、高純度、高密度のジルコニアボールをメディアとした試料はBaTiO100質量部に対して0.01質量部以下であり、c軸/a軸比が1.005〜1.010であり正方晶性の高い粉末であった。
これに対して、本発明の範囲外のBET比表面積を有しない炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を用いた試料および本発明と同じBET比表面積の炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を用いてもボールミルを用いて混合粉砕を行った試料では、得られたチタン酸バリウム系粉末の平均粒径が100nmよりも大きいか、または、Zrの酸化物量が0.01質量部より多かった。
メディアレス分散機の断面模式図である。 メディア強制撹拌型ミルの断面模式図である。 メディアレス超高圧分散装置の断面模式図である。
符号の説明
B 強制撹拌型メディアミル
11 撹拌容器
13 スラリ導入口
15 スラリ排出口
17 主軸
19 ディスク

Claims (4)

  1. 平均粒径が100nm以下のチタン酸バリウム系粉末であって、該チタン酸バリウム系粉末中のZrの含有量が酸化物換算で0.01質量%以下であり、かつOH基量が0.1質量%以下であることを特徴とするチタン酸バリウム系粉末。
  2. 前記BaTiOの結晶構造がペロブスカイト構造であり、格子定数のc軸/a軸比が1.005〜1.010である請求項1に記載のチタン酸バリウム系粉末。
  3. 炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を混合する工程、仮焼する工程の各工程を備えるチタン酸バリウム系粉末の製法であって、前記炭酸バリウム粉末としてBET比表面積が10m/g〜20m/gのものを用い、前記酸化チタン粉末としてBET比表面積が50m/g〜100m/gのものを用い、かつ、前記炭酸バリウムおよび前記二酸化チタンの混合に強制攪拌型メディアミルを用いることを特徴とするチタン酸バリウム系粉末の製法。
  4. 強制攪拌型メディアミルに材質がジルコニアであるメディアボールを用いる請求項3記載のチタン酸バリウム系粉末の製法。
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