JP2011225425A - チタン酸バリウム粉末およびその製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム粉末およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ナノオーダーの粒子径を持ち、その粒度分布がシャープであり、しかも結晶性および異方性が高いチタン酸バリウム粉末を提供すること。
【解決手段】複数のチタン酸化物粒子12と、複数の水溶性またはアルコール溶解性バリウム塩粒子11とを有する混合物10であって、バリウム塩粒子11中に、1個以上のチタン酸化物粒子12が互いに接触せずに分散している混合物10を作製する工程と、混合物を熱処理し、チタン酸バリウム粒子20を生成させる工程と、熱処理後の混合物からチタン酸バリウム粒子20を分離する工程とを有し、熱処理工程では、バリウム塩11から炭酸バリウム15または酸化バリウムが生成し、チタン酸化物12から二酸化チタン12が生成した後に、生成した二酸化チタン12と炭酸バリウム15等との固相反応によりチタン酸バリウム粒子20が生成するチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、チタン酸バリウム粉末およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、ナノオーダーの粒子径を持ち、その粒度分布がシャープであり、しかも結晶性および異方性が高いチタン酸バリウム粉末およびその製造方法に係る。
近年、電気機器および電子機器の急激な小型化かつ高性能化に対応するため、このような機器に使用される電子部品についても同様に、小型化かつ高性能化することが求められている。これは、電子部品の一例であるセラミックコンデンサについても例外ではなく、たとえば積層セラミックコンデンサについては、誘電体層の薄層化および多層化が求められている。
このような要求に対しては、原料のチタン酸バリウムを微粒子化することが考えられる。しかしながら、単に微粒子化するだけでは要求に応えられず、粒度分布をシャープとすることも必要となる。
チタン酸バリウム粉末の製造方法としては、固相法、水熱合成法、シュウ酸塩法などが用いられている。
水熱合成法により微粒子化する場合、ナノオーダーの粒子径を持つ粉体を得るのには適しているが、粉末粒子内の欠陥やポアなどの問題があり、電子部品材料としてのナノ粒子としては適していない。また、シュウ酸塩法により微粒子化する場合、粒度分布がシャープな粉体が得られにくく、粉末の結晶性がそれほど高くないという問題がある。
一方、固相法を用いて微粒子化する方法としては、晶析法やビルトダウン法などが挙げられる。しかしながら、晶析法ではナノオーダーの粒子径を持つ粉体が得られにくく、また粒度分布がシャープな粉体が得られにくいという問題がある。また、ビルトダウン法は、粉体を粉砕機により機械的に粉砕して微粒子化する方法であり、粉砕時のコンタミネーションやナノオーダーの粒子径を持つ粒子が得られにくい等の問題がある。
ところで、特許文献1では、バリウム塩と二酸化チタンとの混合物を酸性領域下において分散処理し、チタン酸バリウムの前駆体ゾルを得て、これを還流し、乾燥、仮焼、粉砕を経てチタン酸バリウム粉末を得ることが記載されている。
しかしながら、特許文献1においては、酸性領域下で行われる分散処理では、BaとTiとの比、いわゆるA/B比がほぼ1に固定されており、得られるチタン酸バリウム粉末におけるA/B比を制御することはできないという問題があった。また、得られるチタン酸バリウム粉末は、物理的な粉砕後に0.1〜2μm程度のブロードな粒度分布を有していることが記載されている。そのため、特許文献1に記載のチタン酸バリウム粉末は、ナノオーダーの粒子径を持ち、かつシャープな粒度分布を有する粉体として適用できないという問題があった。
特開平5−116943号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ナノオーダーの粒子径を持ち、その粒度分布がシャープであり、しかも結晶性および異方性が高いチタン酸バリウム粉末を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、
複数のチタン酸化物粒子と、複数の水溶性またはアルコール溶解性バリウム塩粒子と、を有する混合物であって、前記バリウム塩粒子中に、1個以上の前記チタン酸化物粒子が互いに接触せずに分散している前記混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物を熱処理して、チタン酸バリウム粒子を生成させる熱処理工程と、
熱処理後の前記混合物から、前記チタン酸バリウム粒子を分離する分離工程と、を有し、
前記熱処理工程では、前記バリウム塩から炭酸バリウムまたは酸化バリウムが生成し、前記チタン酸化物から二酸化チタンが生成した後に、生成した前記二酸化チタンと、前記炭酸バリウムまたは酸化バリウムとの固相反応により、前記チタン酸バリウム粒子が生成することを特徴とする。
本発明では、熱処理工程において、チタン酸化物粒子が二酸化チタン粒子となり、バリウム塩粒子が炭酸バリウム粒子または酸化バリウム粒子となる。そのため、粒子径の小さい二酸化チタンの周囲を炭酸バリウム等が取り囲んでいる状態で、酸化チタンと炭酸バリウム等との固相反応が生じる。このようにすることで、上記の固相反応は全方位的に進行するため、反応効率が高い。したがって、熱処理温度も通常の固相反応の場合よりも低くすることが可能となる。しかも、生成したチタン酸バリウム粒子間には炭酸バリウム等が障壁として存在しているため、チタン酸バリウム粒子同士のネッキングが抑制され、粒子径が小さいチタン酸バリウム粉末が得られる。
好ましくは、前記混合物作製工程が、前記チタン酸化物のゾルと前記バリウム塩の水溶液またはアルコール溶解液とを塩析させて混合液を得る塩析工程を含む。
好ましくは、前記塩析工程において、前記チタン酸化物粒子の平均粒子径が170nm以下である。
好ましくは、前記塩析工程において、前記チタン酸化物中のチタンと、前記バリウム塩中のバリウムとの比であるBa/Tiがモル比で1.5〜10である。
好ましくは、前記混合物作製工程が、塩析後の混合液を乾燥する工程を含む。
混合物作製工程を上記のようにすることで、本発明の効果を高めることができる。
好ましくは、前記分離工程が、熱処理後の前記混合物を粗粉砕する粉砕工程を含む。
好ましくは、前記分離工程が、熱処理後の前記混合物と溶媒とを混合して、前記チタン酸化物に対して未反応のバリウムを含む炭酸バリウムまたは酸化バリウムを溶解し、熱処理後の混合物から前記チタン酸バリウム粒子を分離する溶解工程を含む。
分離工程を上記のようにすることで、本発明の効果を高めることができる。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、
ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム粒子の集合であるチタン酸バリウム粉末であって、
前記ペロブスカイト型結晶構造におけるc軸の格子定数とa軸の格子定数との比を示すc/aが1.0045以上であり、
X線回折により観測される(111)ピークの半値幅が0.310以下であり、
BET法による比表面積が5m/g以上であり、
個数分布の累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90とした場合に、(D90−D10)/D50が1.3以下である。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末の用途としては、特に限定されないが、セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層を製造するのに好適であり、特に薄層化された誘電体層(たとえば、層間厚みが1μm以下)に好適である。
本発明に係る電子部品を製造する方法は、
誘電体層と電極層とを有する電子部品を製造する方法であって、
上記に記載のチタン酸バリウム粉末を含む焼成前誘電体層を形成する工程と、
焼成前誘電体層を焼成する工程と、を有する。
図1は、本発明の一実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造工程を示すフローチャートである。 図2(A)は、塩析工程において、バリウムイオンが吸着した二酸化チタン粒子の周囲を未吸着のバリウムイオンが取り囲む状態を示す模式図、図2(B)は、乾燥工程後の混合物を示す断面模式図、図2(C)は、熱処理工程前後の混合物を示す断面模式図、図2(D)は、粉砕工程前後の混合物を示す断面模式図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法により製造される積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図4(A)は、本発明の実施例に係る試料において、熱処理工程後の混合物のX線回折チャート、図4(B)は、本発明の実施例に係る試料において、熱処理工程後の混合物から分離されたチタン酸バリウム粉末のX線回折チャートである。 図5(A)および図5(B)は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウム粉末のSEM写真である。 図6は、本発明の比較例に係るチタン酸バリウム粉末のSEM写真である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
チタン酸バリウム粉末
本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム粒子の集合体であり、結晶構造中のAサイトをBaが占有し、BサイトをTiが占有している。本実施形態では、このAサイトを占有する原子とBサイトを占有する原子とのモル比を示すA/B比が、好ましくは0.990〜1.010、より好ましくは0.996〜1.003の範囲にある。このA/B比は、粉末の用途に応じて上記の範囲で制御されることが好ましい。本実施形態では、後述する粉末の製造方法において、A/B比を制御することができる。
また、上記のペロブスカイト型結晶構造は温度により変化し、キュリー点以下の常温においては正方晶系となり、キュリー点以上では立方晶系となる。立方晶系においては、各結晶軸(a軸、b軸、c軸)の格子定数は等しいが、正方晶系においては、一つの軸(c軸)の格子定数が、他の軸(a軸(=b軸))の格子定数よりも長くなっている。
本実施形態では、チタン酸バリウムの粒子径を考慮すると、c軸の格子定数とa軸の格子定数との比を示すc/aが1.0045以上、好ましくは1.0070以上、より好ましくは1.0090以上である。このc/aはチタン酸バリウムの異方性の指標となり、高い誘電率が得られるという観点から、高い方が好ましい。
なお、チタン酸バリウム粉末中の全てのチタン酸バリウム粒子のc/aが、上記の範囲を満足している必要はない。すなわち、たとえばチタン酸バリウム粉末中に、正方晶系のチタン酸バリウム粒子と、立方晶系のチタン酸バリウム粒子とが共存していてもよく、チタン酸バリウム粉末全体として、c/aが上記の範囲にあればよい。
本実施形態では、チタン酸バリウム粉末についてのX線回折により得られる(111)ピークの半値幅が0.310以下、好ましくは0.270以下、より好ましくは0.200以下である。この半値幅はチタン酸バリウムの結晶性の指標となり、粒成長の抑制や高い誘電率が得られるという観点から、小さい方が好ましい。
本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、BET法により測定される比表面積が5m/g以上、好ましくは6m/g以上、より好ましくは7m/g以上である。粉末の比表面積と平均粒子径とは反比例の関係にあり、上記の比表面積を粉末の平均粒子径に換算すると、平均粒子径は200nm以下、好ましくは170nm以下、より好ましくは150nm以下となる。
また、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末において、個数分布の累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90とすると、(D90−D10)/D50が1.3以下、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.2以下である。この「(D90−D10)/D50」は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示しており、粒度分布がブロードであるかシャープであるかの指標となる。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、D90とD10との差が小さく、シャープな粒度分布を有している。
なお、粒子径を測定する方法としては特に制限されないが、本実施形態では、SEMやTEMなどの電子顕微鏡観察により各粒子の粒子径を測定することが好ましい。
以上より、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、結晶性および異方性が高く、ナノオーダーの粒子径を持ち、シャープな粒度分布を有する粉末である。
このような特性を有するチタン酸バリウム粉末を原料として用いることで、たとえば積層型の電子部品の誘電体層を薄層化した場合であっても、チタン酸バリウム粒子を層間に複数配置させることができ、十分な信頼性(高温負荷寿命)を確保しつつ、高い比誘電率を得ることができる。
チタン酸バリウム粉末の製造方法
次に、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法を、図1に示すフローチャートおよび図2を用いて説明する。
まず、複数のチタン酸化物粒子と、複数のバリウム塩粒子とからなる混合物を作製する(混合物作製工程)。この混合物では、1個のバリウム塩粒子中に1個以上のチタン酸化物粒子が点在(分散)している。このような混合物を作製する方法は特に制限されないが、本実施形態では、以下の塩析工程および乾燥工程を経て作製することが好ましい。
出発原料として、本実施形態では、図1に示すように、チタン酸化物のゾルとバリウム塩の溶液とを準備する。
チタン酸化物としては、平均粒子径が小さく、分散媒に良好に分散していれば、特に制限されないが、好ましくは二酸化チタン(TiO)あるいはメタチタン酸(HTiO)(酸化チタンの水和物)である。また、これらは組み合わせて用いてもよい。さらに、たとえば四塩化チタンなどのチタン化合物であってもよい。本実施形態では、二酸化チタンのゾルを準備する。また、ゾルの分散媒としては、水が好ましい。
ゾル中のチタン酸化物粒子の平均粒子径としては好ましくは170nm以下、より好ましくは150nm以下である。下限は特に制限されないが、チタン酸化物ゾルの製造条件やコスト等の観点から決定される。平均粒子径が大きすぎる場合には、粒子自体の重さのために、粒子表面の表面電位の反発作用を利用した分散が困難となり、粒子同士が凝集しやすい傾向にある。その結果、得られるチタン酸バリウム粉末の粒度分布がブロードになる傾向にある。
また、ゾル中のチタン酸化物の濃度は好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。下限は特に制限されないが、反応効率等を考慮して決定すればよい。濃度が高すぎると、ゾル中で粒子のショック反応が起こりやすくなり、チタン酸化物の粒子同士が凝集してしまう傾向にある。
バリウム塩としては、水溶性またはアルコール溶解性であれば特に制限されない。具体的には、塩化バリウム、硝酸バリウム、ギ酸バリウム、酢酸バリウム、乳酸バリウム、過塩素酸バリウム、フッ化バリウム、水酸化バリウム、シュウ酸バリウム、塩素酸バリウム、ヨウ素酸バリウム、ヨウ化バリウム、臭化バリウムなどが好ましい。また、これらは組み合わせて用いてもよい。取り扱いの容易さやコストの観点から、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウムがより好ましい。本実施形態では、酢酸バリウムを用いる。
バリウム塩の溶液の溶媒としては、水またはアルコールが好ましい。また、溶液中のバリウム塩の濃度は、その溶液の溶解度以下であれば特に制限されないが、好ましくは2.5モル/L以下である。
次に、図1のフローチャートに示すように、上記で準備した二酸化チタンのゾルと酢酸バリウムの水溶液とを混合して混合液とし、これを撹拌する。そうすると、塩析反応が生じる(塩析工程)。具体的には、分散している二酸化チタン粒子の表面に電離したバリウムイオンが吸着し沈降する。
混合する方法は特に制限されず、二酸化チタンのゾルに酢酸バリウムの水溶液を滴下してもよいが、本実施形態では、酢酸バリウムの水溶液に二酸化バリウムのゾルを滴下することが好ましい。滴下速度は、塩析反応の進行度合いに応じて決定すればよいが、好ましくは500〜300000g/時間である。また、撹拌時間は、塩析反応が終了するまで行えばよいが、好ましくは8〜72時間である。
塩析工程において、二酸化チタン中のチタンと酢酸バリウム中のバリウムとのモル比を示すBa/Ti比は好ましくは1.5〜10、より好ましくは2〜10である。すなわち、バリウムがチタンよりも過剰に存在している状態で塩析させる。このようにすることで、ゾルと水溶液との混合液中では、図2(A)に示すように、バリウムイオン11aが吸着した二酸化チタン粒子12の周囲を、二酸化チタン粒子に吸着できない(未反応の)バリウムイオン11bが取り囲む(被覆する)こととなる。そして、後述する乾燥工程において、混合液の液体成分(分散媒および溶媒)が除去されると、バリウム塩粒子中に、二酸化チタン粒子が分散され、かつ二酸化チタン粒子同士が接触していない状態の混合物を得ることができる。
Ba/Ti比が小さすぎると、分散している二酸化チタン粒子間の距離が小さくなり、後述する熱処理工程において生成するチタン酸バリウムのネッキングが生じやすい傾向にある。Ba/Ti比が大きすぎると、コストの面で大きなデメリットがあると共に炭酸塩の溶解が困難になりBa/Tiを制御できなくなる傾向にある。
次に、塩析工程後に混合液から液体成分を除去する。液体成分を除去する方法としては、バリウムイオンが吸着した二酸化チタン粒子、およびバリウムイオンから液体成分を均一に(急速に)除去できる方法であれば特に制限されず、図1のフローチャートに示すように、たとえばスプレードライ、スラリードライ、フリーズドライなどの乾燥方法が例示される(乾燥工程)。
本実施形態では、スプレードライにより乾燥させる。スプレードライを行うことにより、混合液の液体成分が瞬間的に除去され、所定の径を有する造粒粉が得られる。このとき、二酸化チタン粒子12の周囲に吸着したバリウムイオン11aは、その状態を維持したまま乾燥され、バリウムイオン11aはバリウム塩の形態となり、二酸化チタン粒子12の周囲により強く固定される。二酸化チタン粒子12に吸着していないバリウムイオン11bも同様に乾燥によりバリウム塩の形態とされる。その結果、図2(B)に示すように、バリウム塩粒子11中に多数の二酸化チタン粒子12が点在(分散)している造粒粉10(混合物)が得られる。この造粒粉10においては、二酸化チタン粒子12の周囲はバリウム塩11で被覆されており、しかも、各二酸化チタン粒子12は互いに接触していない状態である。
なお、たとえばスラリーをバットに入れて乾燥させる場合には、均一に乾燥しないため、バリウム塩が晶析してしまい、得られる粉体の組成にムラが生じてしまう。
造粒粉の粒子径は、本実施形態では好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは80〜30μm程度である。
次に、図1のフローチャートに示すように、得られた造粒粉を熱処理する(熱処理工程)。この熱処理工程では、図2(C)に示すように、まず、バリウム塩11から炭酸バリウム15が生じる反応が起こり、続いて、生成した炭酸バリウム15と二酸化チタン12との固相反応が生じチタン酸バリウム20が生成する。
ここで、上記で得られた造粒粉10においては、図2(C)に示すように、粒子径が小さい二酸化チタン12がバリウム塩11中に点在している状態となっている。したがって、二酸化チタン12と、生成した炭酸バリウム15とは面で接触することになり、二酸化チタン12と炭酸バリウム15との固相反応が全方位的に進行し、チタン酸バリウム粒子20が生成する。しかも、図2(D)に示すように、チタン酸バリウム粒子20が生成しても、チタン酸バリウム粒子20間には炭酸バリウム15が障壁として存在しているため、チタン酸バリウム粒子20同士が接触することはない。その結果、チタン酸バリウム粒子20のネッキングが抑制されるため、粒子径が小さい状態で維持されたチタン酸バリウム粒子20が得られる。
なお、バリウム塩の原料として炭素を含まない化合物を用い、さらに炭酸ガスを含まない減圧雰囲気下で熱処理を行う場合には、上記の熱処理工程において、バリウム塩から酸化バリウムが生成する反応が起こる。そして、生成した酸化バリウムと二酸化チタンとの固相反応が生じチタン酸バリウムが生成する。
また、乾燥後の混合物中に、二酸化チタン粒子以外のチタン酸化物粒子が存在している場合には、上記の熱処理工程において、チタン酸化物から二酸化チタンが生成する反応が起こる。
熱処理工程における熱処理温度は好ましくは700〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃であり、固相反応時の通常の熱処理温度よりも低くしている。本実施形態では、上述したように、固相反応が全方位的に進行し、しかも二酸化チタン粒子の粒子径が小さいため、熱処理温度を通常よりも低くしても十分かつ速やかに固相反応を進行させることができる。
熱処理温度が低すぎると、二酸化チタンと炭酸バリウムとの固相反応が十分に進行せず、チタン酸バリウムが十分に生成しない傾向にある。逆に熱処理温度が高すぎると、炭酸バリウムの障壁を超えて熱拡散が優勢となり、チタン酸バリウム粒子のネッキングが生じやすくなる。その結果、チタン酸バリウム粒子の粒子径が大きくなってしまう傾向にある。
熱処理工程におけるその他の条件は、たとえば以下のようにすればよい。熱処理温度での保持時間は好ましくは3〜12時間である。雰囲気は大気中、二酸化炭素中または減圧雰囲気とすることが好ましい。
熱処理後には、図2(D)に示すように、炭酸バリウム粒子15中にチタン酸バリウム粒子20が点在している混合物10が得られる。次に、この熱処理後の混合物10からチタン酸バリウム粒子20を分離する。分離する方法としては、特に制限されず、物理的な方法であってもよいし、化学的な方法であってもよい。本実施形態では、熱処理後の混合物に溶媒を添加して、チタン酸バリウム粒子を分離する。
具体的には、炭酸バリウムは酸に溶解しやすく、チタン酸バリウムは炭酸バリウムに比べ酸に溶解しにくいため、熱処理後の混合物に、溶媒として、酸を添加することで、炭酸バリウムのみが溶解し、チタン酸バリウム粒子が得られることになる。
なお、熱処理工程において、炭酸バリウムの代わりに酸化バリウムが生成する場合には、熱処理後の混合物に、溶媒として、水を添加し、酸化バリウムを溶解してチタン酸バリウム粒子を得ればよい。
しかしながら、熱処理後に得られる混合物は、熱処理時に凝集しやすく、通常、粒子径が数十μm程度の粗い粉体(比表面積が非常に低い粉体)として得られる。一方、この混合物に包含されているチタン酸バリウムは粒子径が数十nm〜200nm程度の微粒(比表面積が非常に高い粉体)として得られる。
このような混合物に酸を添加し炭酸バリウムを溶解してチタン酸バリウム粒子を分離する場合、炭酸バリウムの比表面積と、チタン酸バリウムの比表面積との差が大きすぎるため、酸との反応面積が著しく異なってしまう。そうすると、酸に溶解しにくいチタン酸バリウムであっても、炭酸バリウムを溶解する際に、チタン酸バリウムの表面からバリウムが微量溶解することがある。そうすると、粒子中のA/B比が小さくなりすぎてしまい好ましくない。
このような不具合を防止するために、本実施形態では、酸による溶解工程の前に、炭酸バリウムの比表面積を大きくして、炭酸バリウムを溶解する際に、得られるチタン酸バリウムのA/B比が小さくなりすぎないようにする。
炭酸バリウムの比表面積を高くする方法としては特に制限されず、たとえば、図2(D)に示すように、チタン酸バリウム粒子20を包含する炭酸バリウム粒子15(混合物10)を分割することが考えられる。混合物10を分割する方法としては、気流粉砕、メディア粉砕などが挙げられるが、本実施形態では、ボールミル等を用いて混合物を粗粉砕する(粉砕工程)。具体的には、チタン酸バリウム粒子に加えられる粉砕の衝撃をできる限り抑えて、炭酸バリウム部分に粉砕の衝撃を与えて解砕し、図2(D)に示すように、チタン酸バリウム粒子20を包含する、分割された炭酸バリウム粒子15(混合物10)を得ればよい。この粗粉砕後には、チタン酸バリウム粒子20を包含しない、分割された炭酸バリウム粒子15も得られる。
炭酸バリウム部分に衝撃を与えるためには、比較的径の大きいボールをメディアとして用いることが好ましい。具体的には1〜4mmの径を有するボールが好ましい。粉砕後の炭酸バリウムの比表面積は好ましくは1.0〜5.0m/gである。生成しているチタン酸バリウム粉末の比表面積の1/5〜1/10程度とすることが好ましい。
続いて、上記の粉砕工程において炭酸バリウムの比表面積を大きくした混合物に酸を添加して炭酸バリウムを除去し、チタン酸バリウム粒子を得る(溶解工程)。
本実施形態では、溶媒として酸を用いる場合、酸が示すpHは好ましくは2.5〜3.5、より好ましくは2.5〜3.0である。pHが低すぎると、強酸性が増し、炭酸バリウムを溶解するだけでなく、チタン酸バリウムの粒子表面からバリウムが溶解しやすくなり、A/B比が小さくなりすぎる傾向にある。逆に、pHが高すぎると、炭酸バリウムを十分に溶解できない傾向にある。
また、溶解させる時間は、溶解に用いる酸のpH等により決定すればよいが、好ましくは1〜10時間である。
溶解に用いる酸としては、上記のpHを示す酸であれば特に制限されないが、本実施形態では、塩酸、硝酸、酢酸、ギ酸、フッ化水素酸などが好ましい。酸の添加量としては、除去される炭酸バリウム(未反応の炭酸バリウム)のバリウム量に対する化学量論量以上その化学量論量の1.2倍以下とすることが好ましい。
上記では、チタン酸バリウムのA/B比が小さくなりすぎないように炭酸バリウムを溶解しているが、換言すれば、仮焼粉の比表面積や酸溶解の条件を制御することにより、A/B比の範囲を制御することができる。
以上より、チタン酸バリウム粒子の集合体であるチタン酸バリウム粉末と、バリウム塩溶液とが得られる。この溶液は、図1に示すように、出発原料のバリウム源として再利用することができる。したがって、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、効率良くチタン酸バリウムを製造することができる。
このようにして得られるチタン酸バリウム粉末を用いて、誘電体層および電極層を有する電子部品を製造する。
たとえば、図3に示す、誘電体層30および内部電極層40を有する積層セラミックコンデンサ100は、以下のようにして製造される。まず、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を含む誘電体ペーストと、内部電極層用ペーストとを用いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを形成する。続いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とが積層されたグリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素子本体50に、外部電極60を形成して、積層セラミックコンデンサ100が製造される。
このようにして製造された積層セラミックコンデンサは、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を用いて製造されるため、誘電体層が薄層化された場合であっても、比較的に高い比誘電率を示すと共に、十分な信頼性が確保されている。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
試料番号1〜18
まず、出発原料として二酸化チタンゾルおよび酢酸バリウム水溶液を準備した。
二酸化チタンゾルには、平均粒子径が10nmの二酸化チタン粒子が含まれており、その濃度は8重量%であった。なお、二酸化チタン粒子の平均粒子径は粒子をTEM観察して算出した値である。
酢酸バリウム水溶液は、二酸化チタン中のチタン量に対し、モル比で5倍のバリウム量となるようにし(Ba/Ti=5)、その濃度は0.4モル/Lであった。
二酸化チタンゾルに対し、酢酸バリウム水溶液を滴下しながら撹拌した。滴下速度は20g/minとし、反応時間を表1に示す時間として、塩析させた。反応終了後の混合液を、スプレードライヤーを用いて乾燥させ、バリウム塩中に二酸化チタン粒子が点在している乾燥体(混合物)を得た。
得られた乾燥体に対して、昇温速度:200℃/時間、保持温度:表1に示す温度で熱処理を行い、熱処理後の混合物を得た。保持時間は、熱処理温度が700〜1000℃の場合には6時間とし、1100℃および1200℃では3時間とした。なお、試料番号1の熱処理後の混合物について、下記に示すX線回折を行った。試料番号1の熱処理後の混合物についてのX線回折チャートを図4(A)に示す。
得られた熱処理後の混合物を、φ2mmのボールおよび水とともにボールミルに投入し、湿式での粗粉砕を行った。粉砕時間は24時間とした。
粗粉砕後の混合物に対して、溶媒として、pHを3に調整した酢酸水溶液を混合して撹拌した。酢酸水溶液の添加量は除去される炭酸バリウムのバリウム量に対して化学量論量となるようにした。6時間撹拌した後、吸引濾過により固液分離し、固形分を乾燥して、チタン酸バリウム粉末と酢酸バリウム水溶液とを得た。
得られたチタン酸バリウム粉末に対して、下記に示すX線回折を行った。また、BET法による比表面積を測定した。本実施例では、粒子径と結晶性および異方性とを考慮して、5m/g以上を良好とした。さらに、蛍光X線分析により、得られた粉末におけるA/B比を求めた。結果を表1に示す。
X線回折
X線回折は、X線源としてCu−Kα線を用い、その測定条件は、電圧45kV、電流40mAで、2θ=20°〜130°の範囲を、走査速度0.08deg/secであった。
測定により得られたX線回折強度よりリートベルト解析を行い、c/aおよび炭酸バリウム量を評価した。また、X線回折で得られた(111)のピークについて半値幅(ΔH)を評価した。本実施例では、粒子径と結晶性および異方性とを考慮して、c/aは1.0045以上を良好とし、半値幅(ΔH)は0.310以下を良好とし、炭酸バリウム量は3.2重量%以下を良好とした。結果を表1に示す。さらに、試料番号1のチタン酸バリウム粉末についてのX線回折チャートを図4(B)に示す。
粒度分布
得られた粉末を構成する一次粒子についてSEM観察を行い、500個の粒子について観察し、その粒子径を測定した。そして、個数分布の累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90とした。得られたD10、D50およびD90から、(D90−D10)/D50を算出した。本実施例では、(D90−D10)/D50は1.3以下を良好とした。結果を表1に示す。
また、試料番号1のチタン酸バリウム粉末についてのSEM写真を図5(A)および図5(B)に示す。
Figure 2011225425
図4(A)より、熱処理後の混合物は、炭酸バリウムとチタン酸バリウムとが生成していることが確認できた。そして、熱処理後の混合物を溶解して得られたチタン酸バリウム粉末には、炭酸バリウムがほとんど含まれておらず、熱処理後の混合物から炭酸バリウムが除去されていることが確認できた。
また、図5(A)および(B)より、本発明に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は、ナノオーダーの粒子径(25〜200nm)を持ち、かつ粒子径のバラツキが少ないことが視覚的に確認できた。
さらに表1より、本発明によれば、塩析工程での反応時間を変化させた場合であっても、試料番号1と同様に、結晶性および異方性が高く、ナノオーダーの粒子径を持ち、シャープな粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末が得られることが確認できた。
試料番号19〜42
二酸化チタンゾル中の二酸化チタンの粒子径を表2に示す値とし、熱処理温度を変化させた以外は、試料番号1の条件と同様にして粉末を作製し、得られた粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、試料番号30〜42については、酢酸バリウム水溶液に対し、二酸化チタンゾルを滴下して粉末を作製した。
Figure 2011225425
試料番号43〜60
バリウム塩のバリウム量を変化させて、塩析反応時のBa/Ti比を表3に示す値とし、熱処理温度を変化させた以外は、試料番号1の条件と同様にして粉末を作製し、得られた粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。なお、試料番号55〜60については、酢酸バリウム水溶液に対し、二酸化チタンゾルを滴下して粉末を作製した。
Figure 2011225425
試料番号61〜73
溶解時のpHを表4に示す値とし、熱処理温度を変化させた以外は、試料番号1の条件と同様にして粉末を作製し、得られた粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。なお、試料番号73については、二酸化チタンゾルに代えて、メタチタン酸(HTiO)のゾルを用いた。
Figure 2011225425
表2〜4より、本発明によれば、チタン酸バリウム粉末製造時における種々の条件を変化させた場合であっても、結晶性および異方性が高く、ナノオーダーの粒子径を持ち、シャープな粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末が得られることが確認できた。
試料番号74〜96
試料番号74〜79については、二酸化チタンゾル中の二酸化チタンの粒子径を表5に示す値とし、酢酸バリウム水溶液に対し二酸化チタンゾルを滴下して熱処理温度を変化させた以外、試料番号80〜88については、塩析反応時のBa/Ti比を表5に示す値とし、酢酸バリウム水溶液に対し二酸化チタンゾルを滴下した以外は、実施例と同様にして粉末を作製し、得られた粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
試料番号89〜91については、炭酸バリウム粉末と、BET比表面積が93m/gである二酸化チタン粉末とをBa/Ti比が1になるように混合粉砕し、表5に示す温度で熱処理を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
試料番号92については、炭酸バリウム粉末と、BET比表面積が93m/gである二酸化チタン粉末とをBa/Ti比が5になるように混合粉砕し、1000℃で熱処理した。熱処理後の粉末をpHが3である酢酸水溶液で過剰の炭酸バリウムを溶解し、A/B比が1としたチタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
試料番号93については、二酸化チタンゾルと、炭酸バリウムとをBa/Ti比が1となるように混合し、混合物をスプレードライヤーで乾燥させ、乾燥粉を1000℃で熱処理を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。また、試料番号93のチタン酸バリウム粉末についてのSEM写真を図6に示す。
試料番号94については、酢酸バリウム水溶液と、BET比表面積が93m/gである二酸化チタン粉末とをBa/Ti比が1となるように混合し、混合物をスプレードライヤーで乾燥させ、乾燥粉を1000℃で熱処理を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
試料番号95および96については、酢酸バリウム水溶液と、BET比表面積が93m/gである二酸化チタン粉末とをBa/Ti比が5となるように混合し、混合物をスプレードライヤーで乾燥させ、乾燥粉を800℃および1000℃で熱処理を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末について、試料番号1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2011225425
表5より、ゾル中の二酸化チタンの粒子径が本発明の好ましい範囲外である場合には(試料番号74〜79)、固相反応が十分に進行せず、得られた粉末には炭酸バリウムおよび二酸化チタンのピークが観察される(試料番号74〜76)、粒度分布がブロードとなる(試料番号77および78)、所望の比表面積が得られない(試料番号79)などして、良好な特性を有するチタン酸バリウム粉末を得られないことが確認できた。
塩析工程におけるBa/Ti比が本発明の好ましい範囲外である場合には(試料番号80〜88)、粒度分布がブロードとなる(試料番号80および81)、生成したチタン酸バリウム粒子がネッキングを起こしてしまい、所望の比表面積が得られない(試料番号82〜88)などして、良好な特性を有するチタン酸バリウム粉末を得られないことが確認できた。
試料番号89〜91では、バリウム塩中に二酸化チタン粒子が点在した混合物が得られないため、熱処理温度が低い場合には、固相反応が十分に進行せず、得られた粉末には炭酸バリウムおよび二酸化チタンのピークが観察されること、および熱処理温度が高くても、粒度分布がブロードとなることが確認できた。
試料番号92では、バリウムを過剰に存在させた状態で固相反応を行っているが、バリウム塩中に二酸化チタン粒子が点在した混合物を熱処理していないため、固相反応が十分に進行せず、得られた粉末には二酸化チタンのピークが観察されることが確認できた。
試料番号93および94では、バリウム塩中に二酸化チタン粒子が点在した混合物が得られないため、粒度分布がブロードとなることが確認できた。また、図6より、試料番号93では、粒子径の小さいチタン酸バリウム粉末が得られないことが確認できた。
試料番号95および96では、バリウム塩中に二酸化チタン粒子が点在した混合物が得られないため、熱処理温度が低い場合には、固相反応が十分に進行せず、得られた粉末には炭酸バリウムおよび二酸化チタンのピークが観察されること、および熱処理温度が高くても、粒度分布がブロードとなることが確認できた。
10… 混合物
11… バリウム塩粒子
11a…二酸化チタン粒子に吸着しているバリウムイオン
11b…二酸化チタン粒子に吸着していないバリウムイオン
12… 二酸化チタン粒子
15… 炭酸バリウム粒子
20… チタン酸バリウム粒子

Claims (9)

  1. 複数のチタン酸化物粒子と、複数の水溶性またはアルコール溶解性バリウム塩粒子と、を有する混合物であって、前記バリウム塩粒子中に、1個以上の前記チタン酸化物粒子が互いに接触せずに分散している前記混合物を作製する混合物作製工程と、
    前記混合物を熱処理して、チタン酸バリウム粒子を生成させる熱処理工程と、
    熱処理後の前記混合物から、前記チタン酸バリウム粒子を分離する分離工程と、を有し、
    前記熱処理工程では、前記バリウム塩から炭酸バリウムまたは酸化バリウムが生成し、前記チタン酸化物から二酸化チタンが生成した後に、生成した前記二酸化チタンと前記炭酸バリウムまたは酸化バリウムとの固相反応により、前記チタン酸バリウム粒子が生成することを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  2. 前記混合物作製工程が、前記チタン酸化物のゾルと前記バリウム塩の水溶液またはアルコール溶解液とを塩析させて混合液を得る塩析工程を含む請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  3. 前記塩析工程において、前記チタン酸化物粒子の平均粒子径が170nm以下である請求項2に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  4. 前記塩析工程において、前記チタン酸化物中のチタンと、前記バリウム塩中のバリウムとの比であるBa/Tiがモル比で1.5〜10である請求項2または3に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  5. 前記混合物作製工程が、塩析後の混合液を乾燥する工程を含む請求項2〜4のいずれかに記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  6. 前記分離工程が、熱処理後の前記混合物を粗粉砕する粉砕工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  7. 前記分離工程が、熱処理後の前記混合物と溶媒とを混合して、前記チタン酸化物に対して未反応のバリウムを含む炭酸バリウムまたは酸化バリウムを溶解し、熱処理後の混合物から前記チタン酸バリウム粒子を分離する溶解工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  8. ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム粒子の集合体であるチタン酸バリウム粉末であって、
    前記ペロブスカイト型結晶構造におけるc軸の格子定数とa軸の格子定数との比を示すc/aが1.0045以上であり、
    X線回折により観測される(111)ピークの半値幅が0.310以下であり、
    BET法による比表面積が5m/g以上であり、
    個数分布の累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90とした場合に、(D90−D10)/D50が1.3以下であるチタン酸バリウム粉末。
  9. 誘電体層と電極層とを有する電子部品を製造する方法であって、
    請求項8に記載のチタン酸バリウム粉末を含む焼成前誘電体層を形成する工程と、
    焼成前誘電体層を焼成する工程と、を有する電子部品の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016014849A (ja) * 2014-06-12 2016-01-28 Jsr株式会社 感放射線性樹脂組成物、絶縁膜および表示素子
JP2019065094A (ja) * 2017-09-28 2019-04-25 株式会社豊田中央研究所 誘電体複合材料

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