以下、本発明の感光性樹脂組成物、半導体装置および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<半導体装置>
まず、フェノール性水酸基含有樹脂および感光性樹脂組成物の説明に先立ち、これらが適用された本発明の半導体装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の半導体装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、半導体チップ20を内蔵したQFP(Quad Flat Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ20(半導体基板)と、接着層60を介して半導体チップ20を支持するダイパッド30と、半導体チップ20を保護する保護膜70(被覆層)と、半導体チップ20と電気的に接続されたリード40と、半導体チップ20を封止するモールド部50と、を有している。このような半導体装置10は、後に詳述するように、保護膜70による保護作用によって、信頼性の高いものとなる。
ダイパッド30は、金属基板で構成され、半導体チップ20を支持する支持体としての機能を有するものである。
このダイパッド30は、例えばCu、Fe、Niやこれらの合金(例えばCu系合金や、Fe-42Niのような鉄・ニッケル系合金)等の各種金属材料で構成される金属基板や、この金属基板の表面に銀メッキや、Ni-Pdメッキが施されているもの、さらにNi-Pdメッキの表面にPd層の安定性を向上させるために設けられた金メッキ層が設けられているもの等が挙げられる。
また、ダイパッド30の平面視形状は、通常、半導体チップ20の平面視形状に対応し、例えば正方形、長方形等の四角形とされる。
ダイパッド30の外周部には、複数のリード40が、放射状に設けられている。
このリード40のダイパッド30と反対側の端部は、モールド部50から突出(露出)している。
また、リード40についてモールド部50からの露出部には、その表面に金メッキ、錫メッキ、半田メッキ、半田コート等の表面処理が施されていてもよい。
リード40は、導電性材料で構成され、例えば、前述したダイパッド30の構成材料と同一のものを用いることができる。
ダイパッド30には、接着層60を介して半導体チップ20が固着(固定)されている。
接着層60は、ダイパッド30と半導体チップ20とを接続する機能を有するとともに、半導体チップ20の駆動時に生じる熱をダイパッド30側に伝達(放熱)する機能を有するものである。
この接着層60には、例えば、銀粉、アルミニウム粉、ニッケル粉のような金属粉や、シリカ粉末、アルミナ粉末、チタニア粉末のようなセラミック粉末を充填材として含有する、エポキシ樹脂、アクリル系化合物、ポリイミド樹脂のような熱硬化性樹脂で構成されるもの等が好適に用いられる。
半導体チップ20は、その上面に電極パッド21を有しており、この電極パッド21とリード40とが、導電性ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各リード40とが電気的に接続されている。
導電性ワイヤー22は、例えば、Au線やAl線で構成することができる。
また、半導体チップ20には、電極パッド21が露出するように保護膜70が形成されている。
この保護膜70は、モールド部50を硬化収縮させて形成する際に半導体チップ20を保護する機能、この半導体装置10を基板等に実装する半田リフロー工程における熱衝撃およびモールド部50の急激な熱膨張ストレスから保護する機能等を有するものである。
そして、本実施形態に係る半導体装置10では、この保護膜70が本実施形態に係る感光性樹脂組成物を用いて形成されているが、この感光性樹脂組成物については、後に詳述する。
さらに、ダイパッド30、ダイパッド30の上面側に設けられた各部材およびリード40の内側の部分は、モールド部50により封止されている。そして、その結果として、リード40の外側の端部がモールド部50から突出している。
このモールド部50は、例えばエポキシ系樹脂等の各種樹脂材料で構成することができる。
<半導体装置の製造方法>
このような半導体装置10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
[1]まず、ダイパッド30と、複数のリード40とを備えるリードフレームを用意する。
[2]次に、これとは別に、電極パッド21が露出するようにパターニングされた保護膜70が設けられた半導体チップ20を用意する。
このような保護膜70の半導体チップ20上への形成は、例えば、次のようにして行うことができる。
[2-1]まず、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を液状材料(ワニス)として用意し、半導体チップ20の上面のほぼ全体を覆うように、この液状材料を、塗布法を用いて供給する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布(スピンコート)法、スプレーコーターを用いた噴霧塗布法、浸漬法、印刷法、ロールコーティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
塗布量は、形成される保護膜70の膜厚に応じて適宜設定される。
[2-2]次いで、この液状材料を乾燥させることにより、半導体チップ20の上面に、感光性樹脂組成物に含まれる構成材料を含有する膜を形成する。
なお、液状材料を乾燥させる際の乾燥温度は、好ましくは40~150℃程度、より好ましくは80~130℃程度に設定される。
また、乾燥する際の処理時間は、0.5~30分程度であるのが好ましく、1~10分程度であるのがより好ましい。
[2-3]次いで、電極パッド21に対応する位置に形成された前記膜を、電極パッド21の形状に対応したマスクを用いて選択的に露光・感光した後、アルカリ水溶液あるいは有機溶剤等の現像液で現像する。これにより前記膜が電極パッド21を露出した形状にパターニングされる。
露光・感光の際に、前記膜に照射する光は、特に限定されず、通常g線(436nm)およびi線(365nm)が用いられるが、特にi線(365nm)が好適に用いられる。これにより、膜を微細な形状に、確実にパターニングすることができる。さらに、i線を室温で照射する場合、エネルギー量は100~5000mJ/cm2程度に設定される。
アルカリ水溶液(アルカリ現像液)としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、エタノールアミン等の有機アルカリの他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、半導体プロセスで使用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好適に用いられる。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の濃度は、0.05~10質量%程度、好ましくは0.1~5質量%程度に設定される。そして、このアルカリ水溶液を用いて室温で10秒~10分間現像し、さらに純水でリンスすることにより鮮明なポジ型パターンを得ることができる。
なお、場合によっては上記アルカリ水溶液にアルコール類を添加してもよい。使用可能なアルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等が例として挙げられる。
有機溶剤(有機系現像液)としては、特に限定されないが、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトンまたはELが好ましく用いられる。
[2-4]次いで、このパターニングされた前記膜に硬化処理を施して、保護膜70を得る。
なお、前記膜の硬化処理は、例えば、パターニングされた膜を加熱することにより、円滑に進行させることができる。
膜を加熱する温度は、150~400℃の範囲であるのが好ましく、170~350℃の範囲であるのがより好ましい。一方、半導体チップ20に対する熱影響を考慮する場合、170~250℃程度であるのが好ましい。
加熱時間は、10~300分の範囲であるのが好ましく、10~240分の範囲であるのがより好ましい。
また、加熱する際の雰囲気は、大気雰囲気であってもよいが、窒素等の不活性雰囲気または減圧雰囲気であるのが好ましい。これにより、硬化反応をより確実に進行させることができる。
保護膜70の平均膜厚は、1~30μm程度であるのが好ましく、5~20μm程度であるのがより好ましい。これにより、前述した保護膜70としての機能を確実に発揮させることができる。
[3]次に、例えば、市販のダイボンダー等の吐出装置を用いて、ダイパッド30上に、硬化前の接着層60の構成材料を供給する。
[4]次に、この硬化前の接着層60の構成材料が介在するように、ダイパッド30上に、保護膜70が設けられている面を上側にして、半導体チップ20を載置し、加熱する。これにより、硬化前の接着層60の構成材料が硬化して、その硬化物で構成される接着層60が形成される。その結果、接着層60を介して、ダイパッド(支持体)30上に半導体チップ20が接着される。
[5]次に、ワイヤーボンディングにより、保護膜70から露出する電極パッド21とリード40との間に導電性ワイヤー22を配線する。これにより、電極パッド21とリード40とが電気的に接続される。
[6]次に、例えば、トランスファー成形等によりモールド部50を形成する。
その後、リードフレームから樹脂止めのタイバーを打ち抜き、トリム&フォーム工程を行い、半導体装置10が製造される。
≪感光性樹脂組成物≫
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、樹脂と、かかる樹脂と架橋可能な架橋剤と、感光剤と、密着助剤と、溶剤と、を含み、保護膜70のような永久膜に用いられる樹脂組成物である。このような感光性樹脂組成物は、含まれる水分量が0.01~10質量%であることを特徴とする。このような感光性樹脂組成物は、無機材料に対する密着性およびパターニング性が良好な保護膜70(樹脂膜)の形成を可能にする。
(樹脂)
感光性樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
このうち、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビスマレイミド化合物等のマレイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;シリコーン系樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のシアネート樹脂等のシアネートエステル樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂では、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
一方、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン等)、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリキノリン、ポリノルボルネン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド、またはこれらの樹脂の前駆体等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂では、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用するようにしてもよい。
また、これらの樹脂は、特に、フェノール樹脂、ポリイミドおよびその前駆体、ポリベンゾオキサゾールおよびその前駆体、ならびにポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、無機材料に対する密着性が特に良好で、かつ耐熱性および機械的特性にも優れた保護膜70を形成可能な感光性樹脂組成物が得られる。このため、信頼性の高い半導体装置10が得られる。また、これらの樹脂は、パターニング性のさらなる向上にも寄与する。
樹脂の含有率は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、20~90質量部であるのが好ましく、30~80質量部であるのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物は、機械的特性に優れた保護膜70を形成可能なものとなる。
(架橋剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述したような樹脂と架橋可能な架橋剤を含んでいる。これにより、硬化性の向上を図り、保護膜70のような樹脂膜の機械的強度を高めることができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物に用いられる架橋剤としては、樹脂と光または熱架橋可能な化合物を用いることが好ましい。用いられる架橋剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる:
(1)メチロール基、およびアルコキシメチル基から成る群より選択される1種以上の架橋性基を含有する化合物:たとえば、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル;商業的商品としては、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(三井サイテック(株)製)、ニカラックMX-270、-280、-290、ニカラックMS-11、ニカラックMW-30、-100、-300、-390、-750(三和ケミカル社製)、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4’-ビフェニルジメタノール、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、市販されている26DMPC、46DMOC、DM-BIPC-F、DM-BIOC-F、TM-BIP-A(旭有機材工業(株)製)、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PC、DML-PCHP、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、DML-OC、ジメチロール-Bis-C、ジメチロール-BisOC-P、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MB25、DML-MTrisPC、DML-Bis25X-34XL、DML-Bis25X-PCHP、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメル-p-クレゾール、TriML-P、TriML-35XL、TriML-TrisCR-HAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(本州化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは混合して使用することができる。
(2)エポキシ基を有する化合物:たとえば、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エトキシヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA(またはF)のグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタンジエンオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルや、(株)ダイセル製のセロキサイド2021、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、エポリードGT401などの脂環式エポキシ、2,2’-(((((1-(4-(2-(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)フェニル)エタン-1,1-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(メチレン))ビス(オキシラン))(たとえば、Techmore VG3101L((株)プリンテック製))、エポライト100MF(共栄社化学工業(株)製)、エピオールTMP(日油(株)製)などの脂肪族ポリグリシジルエーテル、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-(オキシラン-2-イルメトキシ)プロピル)トリ・シロキサン(たとえば、DMS-E09(ゲレスト社製));
(3)イソシアネート基を有する化合物:たとえば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアナート、1,3-フェニレンビスメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート;
(4)ビスマレイミド基を有する化合物:たとえば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン。
架橋剤の含有率は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、1~80質量部程度であるのが好ましく、10~60質量部程度であるのがより好ましい。架橋剤の含有率が前記下限値を下回ったり、前記上限値を上回ったりした場合には、保護膜70のような樹脂膜の耐薬品性が低下するおそれがある。
(感光剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、感光剤を有している。感光剤のパターニング性の方式としては、ポジ型またはネガ型から適宜選択される。
ポジ型の場合、感光性樹脂組成物を乾燥させることにより得られた膜に対して光を選択的に照射することで、光の照射領域に位置する膜の現像液(例えばアルカリ水溶液)に対する溶解性を、光の非照射領域に位置する膜の現像液に対する溶解性と比較して向上させることができる。そのため、感光性樹脂組成物に現像液可溶性が付与され、ポジ型の感光性樹脂組成物を提供することができる。
ネガ型の場合、感光性樹脂組成物を乾燥させることにより得られた膜に対して光を選択的に照射した後に加熱工程を加えることで、光の照射領域に位置する膜が現像液(例えば有機溶剤)に不溶となり、非照射領域に位置する膜は有機溶剤に可溶なままである。そのため、感光性樹脂組成物に有機溶剤不溶性を付与し、ネガ型の感光性樹脂組成物を提供することができる。
ポジ型感光性樹脂組成物とする場合、感光剤としては、光エネルギーを吸収することにより酸を発生する光酸発生剤を用いることができる。
具体的には、ジアゾキノン化合物;ジアリールヨードニウム塩;2-ニトロベンジルエステル化合物;N-イミノスルホネート化合物;イミドスルホネート化合物;2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン化合物;ジヒドロピリジン化合物等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、感光性ジアゾキノン化合物が好ましく用いられる。かかる化合物は、露光の際に主に用いられる化学線の波長域に対して感度と解像度に最も優れていることから、優れたパターニング精度で保護膜70を形成することを可能にする。
感光性ジアゾキノン化合物としては、例えば、フェノール化合物と1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸または1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸とのエステルが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
なお、これら化合物の具体的な構造としては、例えば特開2013-174843号公報に記載されている式(B10)~式(B16)が挙げられる。
一方、ネガ型感光性樹脂組成物とする場合、感光剤として光酸発生剤を用い、さらに架橋剤として酸の作用によりポリマーを架橋させるものを含む。
具体的には、光のエネルギーを吸収することにより酸を発生するものであればよく、例えば、トリアリールスルホニウム塩、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4-t-ブチルフェニル)スルホニウム-トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類;p-ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類;アンモニウム塩類;ホスホニウム塩類;ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリクミル)ヨードニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類;キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類;1-フェニル-1-(4-メチルフェニル)スルホニルオキシ-1-ベンゾイルメタン、N-ヒドロキシナフタルイミド-トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホン酸エステル類;ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類;トリス(2,4,6-トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどのトリアジン類などの化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独、または複数を組み合わせて使用することができる。
感光剤の含有率は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、1~50質量部程度であるのが好ましく、5~40質量部程度であるのがより好ましく、8~30質量部程度であるのがさらに好ましい。これにより、光の照射領域(露光部)と光の非照射領域(非露光部)との間で現像液に対する溶解性の差を確実に発現させることができる。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、感光剤以外に熱で酸を発生させる酸発生剤を有していてもよい。このような酸発生剤を含むことにより、感光性樹脂組成物が加熱されることにより、樹脂と架橋剤との架橋反応を促進させることができる。
酸発生剤の含有率は、特に限定されないが、架橋剤100質量部に対し、3質量部以下であるのが好ましい。
熱により酸を発生する熱酸発生剤としては、例えば、SI-45L、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-110L、SI-150L、SI-200(三新化学工業(株)製)等の芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
なお、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、酸発生剤の含有率は0.1~5質量部であることが好ましい。
(密着助剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、密着助剤を有している。このような感光性樹脂組成物は、無機材料に対する密着性が良好な硬化膜の形成を可能にする。これにより、例えば半導体チップ20や電極パッド21に対する密着性が良好な保護膜70が得られる。
密着助剤としては、例えば、カップリング剤、複素環式化合物等が挙げられる。
このうち、カップリング剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤のような加水分解性を有する化合物である。換言すれば、ケイ素原子等にアルコキシ基のような加水分解性基が結合してなる化合物である。この加水分解性基が加水分解すると、シラノール基のような結合性基が生じ、これが無機材料の表面にある水酸基に対して脱水縮合反応を経て結合する。このようにしてカップリング剤は、感光性樹脂組成物において無機材料に対する密着性を補強する。
加水分解性を有する化合物としては、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)が好ましく、官能基としてアミノ基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、ビニル基、ウレア基、ウレイド基、スルフィド基、カルボキシル基、アミド基等を含むアルコキシシラン化合物がより好ましい。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。このようなアルコキシシラン化合物は、官能基が樹脂と反応する一方、加水分解によって生じるシラノール基が無機材料と反応し、両者を強固に結合する。その結果、感光性樹脂組成物において無機材料に対する密着性を特に補強することができる。
また、これらの中でも、官能基としてアミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ウレア基およびウレイド基のうちのいずれかを含むアルコキシシラン化合物が特に好ましく用いられる。このようなアルコキシシラン化合物は、感光性樹脂組成物の無機材料に対する密着性を特に良好にする。このため、特に信頼性が高い保護膜70が得られる。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アクリル基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばγ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレア基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばN,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア等が挙げられる。
ウレイド基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィド基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
一方、複素環式化合物は、2種またはそれ以上の元素の原子(炭素の他、窒素、酸素、硫黄等)から環が構成されている環式化合物をいい、ヘテロ環式化合物とも呼ばれる。具体的には、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環、6H-ピラン環、トリアジン環のような複素環を含む複素環式化合物が挙げられる。
このうち、トリアゾール環を含む化合物が好ましく用いられる。かかる化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,5-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジプロピル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリゾール-4-スルホン酸、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-ニトロ-1H-テトラゾール1-メチル-1H-テトラゾール、5,5′-ビス-1H-テトラゾール等が挙げられる。また、これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
密着助剤の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、0.5~30質量部程度であるのが好ましく、2~10質量部程度であるのがより好ましい。密着助剤の含有量が前記下限値を下回ると、感光性樹脂組成物の配合によっては、無機材料に対する密着性が低下するおそれがある。一方、密着助剤の含有量が前記上限値を上回ると、感光性樹脂組成物の配合によっては、無機材料に対する密着性が低下したり、保護膜70のような硬化膜の耐薬品性が低下したりするおそれがある。
(界面活性剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤を含んでいてもよい。これにより、感光性樹脂組成物の塗布性を改善したり、硬化膜の平滑化およびクラックの抑制を図ったりすることができる。また、感光性樹脂組成物の塗布性が改善することにより、パターニング性の向上も図ることができる。その結果、寸法精度の高い硬化膜を得ることができる。
界面活性剤としては、例えば架橋性基を有するものが用いられる。界面活性剤に含有される架橋性基としては、例えば樹脂もしくは架橋剤と架橋する、または界面活性剤単独で架橋するものが挙げられる。特に架橋性基として、光または熱により架橋反応を起こすものが好ましく、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。この場合、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等のラジカル重合開始剤を、感光性樹脂組成物中にさらに含むことにより、架橋をさらに効率的に行うことも可能である。
このように、感光性樹脂組成物に架橋性基を有する界面活性剤を添加することで、感光性樹脂組成物の塗布性を良好なものとすることができる。さらには、架橋性基を有する界面活性剤を使用することで、界面活性剤により、架橋反応を起こして、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。
また、架橋性基を有する界面活性剤は、フッ素基(例えばフッ素化アルキル基)もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物であることが好ましい。このような界面活性剤は、フッ素基もしくはシラノール基を有する、またはシロキサン結合を主骨格とすることにより、感光性樹脂組成物の塗膜の表面に集まることとなる。そして、感光性樹脂組成物の塗膜の表面で架橋反応することとなるので、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐薬品性をより確実に向上させることができる。このような効果は、界面活性剤としてフッ素基を有するものを使用することにより、特に顕著に生じ得る。
架橋性基を有する界面活性剤は、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれであってもよいが、感光性樹脂組成物の安定性の観点からノニオン界面活性剤であることが好ましい。例えば、架橋性基を有する界面活性剤はノニオン界面活性剤であり、親水基としてポリオキシアルキレン鎖を有することが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖は(OR)xで表されるものを挙げることができ、Rは2~4の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、または-CH(CH3)CH(CH3)-であることが好ましい。なお、xは正の整数であり、好ましくは2~50の整数であり、さらに好ましくは3~30の整数である。
また、架橋性基を有する界面活性剤とともに、架橋性基を有さない界面活性剤を併用するようにしてもよい。これにより、硬化膜の平滑化を図ることができ、かつ、硬化膜のクラックの発生を抑制することができる。
架橋性基を有さない界面活性剤は、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれであってもよいが、感光性樹脂組成物の安定性の観点からノニオン界面活性剤であることが好ましい。また、架橋性基を有さない界面活性剤は、膜表面の平滑化を図る観点から、フッ素基もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物であることが好ましい。このようなフッ素基もしくはシラノール基を有する、またはシロキサン結合を主骨格とする界面活性剤は表面張力低下能が高いため、膜表面の平滑化を図ることができる。
界面活性剤の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、0.01~3質量部程度であるのが好ましく、0.1~2質量部程度であるのがより好ましい。界面活性剤の含有量が前記下限値を下回ると、感光性樹脂組成物の配合比によっては、硬化膜の平滑性が低下したり、硬化膜にクラックが発生したりするおそれがある。一方、界面活性剤の含有量が前記上限値を上回ると、感光性樹脂組成物の配合比によっては、無機材料に対する密着性が低下したり、硬化膜の耐薬品性が低下したりするおそれがある。
(溶媒)
また、感光性樹脂組成物は、上述した成分を均一に溶解または分散させる溶媒を含んでいてもよい。これにより、感光性樹脂組成物をワニス化するとともに、粘度等を調整することができる。
かかる溶媒としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、アセトン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、N-メチル-ピロリジノン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の組み合わせが用いられる。
溶媒の添加量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の全固形分の5~50質量%程度であるのが好ましく、10~40質量%程度であるのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の粘度を最適化することができる。
(水分)
また、感光性樹脂組成物は、適度な水分を含んでいる。具体的には、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量が0.01~10質量%とされる。
このように適度な水分が添加されることにより、例えば感光性樹脂組成物中にアルコキシ基が含まれている場合、それが加水分解してシラノール基等の生成が促進される。一方、無機材料の表面では、水酸基の導入が促進されることとなる。これにより、感光性樹脂組成物が硬化する際、それとともにシラノール基と水酸基とが脱水縮合する。その結果、感光性樹脂組成物の硬化膜は無機材料に対する優れた密着性を有するものとなる。すなわち、例えば半導体チップ20や電極パッド21に対する密着性が良好な保護膜70が得られる。
また、適度な水分が添加されることにより、感光性樹脂組成物のパターニング性が良好になる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、考えられる理由の1つとして、水分子が感光剤の作用を促進することが挙げられる。
なお、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量は、好ましくは0.03~7質量%とされ、より好ましくは0.05~4質量%とされる。
水分量が前記下限値を下回ると、水分量が不足するため、感光性樹脂組成物の無機材料に対する密着性が相対的に低下したり、パターニング性が低下したりするおそれがある。一方、水分量が前記上限値を上回ると、水分量が過剰になるため、無機材料に対する密着性およびパターニング性が低下するおそれがある。また、感光性樹脂組成物の経時安定性が低下するおそれがある。
また、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量は、前述した密着助剤の含有量の1~400質量%であるのが好ましく、20~200質量%であるのがより好ましく、30~120質量%であるのがさらに好ましい。密着助剤に対する水分量を前記範囲内に設定することにより、密着助剤の量と水の量とのバランスが最適化される。これにより、前述した効果が顕著になり、密着助剤の作用が増強されることになるため、無機材料に対する密着性を特に高めつつ、パターニング性もより高めることができる。
なお、水分量が前記下限値を下回ると、密着助剤に対して水分量が不足するため、シラノール基等の生成が不足して、感光性樹脂組成物の無機材料に対する密着性が低下するおそれがある。また、密着性が低下することで、感光性樹脂組成物の定着性が阻害されるため、結果的にパターニング性が低下するおそれがある。一方、水分量が前記上限値を上回ると、密着助剤に対して水分量が過剰になるため、水分によって密着性が阻害され、それとともにパターニング性も阻害されるおそれがある。
このような感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により測定可能である。具体的には、例えば、カールフィッシャー水分率計「MKS-520」(商品名、京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬としてカールフィッシャー試薬「HYDRANAL(登録商標)-コンポジット5(商品名、Sigma-Aldrich製)」を用いて、JIS K 0113:2005に規定された容量滴定法に準拠して測定される。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、一例として原料と溶媒とを均一に混合する方法が挙げられる。
以上、感光性樹脂組成物の各成分について詳述したが、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、塩基発生剤、架橋触媒、硬化触媒、酸化防止剤、フィラー、増感剤、密着性改善剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
≪感光性樹脂組成物の硬化物≫
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、例えば以下に例示するような硬化処理を経て硬化し、硬化物を生成する。この硬化物は、以下のような物性を有するのが好ましい。
(ガラス転移温度および熱膨張係数)
まず、γ-ブチロラクトン(GBL)でワニス化した感光性樹脂組成物を、孔径0.5μmのフィルターに通す。
次に、フィルターを通した感光性樹脂組成物をシリコンウエハー等に塗布し、得られた塗布膜を120℃で3分間加熱することにより乾燥させる。
次に、クリーンオーブン内の温度を30℃に保持し、その内部に乾燥させた塗布膜を設けたシリコンウエハーを配置する。
次いで、毎分5℃の速度で200℃まで昇温し、その後、60分間保持した後、毎分5℃の速度で80℃まで降温する。
以上のようにして厚さ10μmの硬化膜を得る。
この硬化膜から幅5mm×長さ10mm以上の試験片を切り出す。
次に、この試験片について、熱機械分析(TMA)装置を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~400℃、昇温速度5℃/分の条件下においてガラス転移温度Tgおよび線膨張係数CTEを測定する。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度Tgが190℃以上であるのが好ましく、210℃以上であるのがより好ましい。このような感光性樹脂組成物の硬化物は、高温下においても十分に高い機械的強度を有するものとなる。このため、より信頼性の高い保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、熱膨張係数が-50~150ppm/℃であるのが好ましく、-30~100ppm/℃であるのがより好ましい。このような感光性樹脂組成物の硬化物は、例えばシリコン等の半導体材料との熱膨張差が小さいため、半導体チップ20の反りや、熱応力による不具合等を抑制することができる。
(5%熱重量減少温度)
まず、ガラス転移温度の評価と同様にして、硬化膜を得る。
この硬化膜から幅10mm×長さ60mm以上の試験片を切り出す。
次に、この試験片について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用いて、5%熱重量減少温度Td5を測定する。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、5%熱重量減少温度Td5が300℃以上であるのが好ましく、320℃以上であるのがより好ましい。これにより、高温下でも熱分解等による重量減少が生じ難く、耐熱性に優れた硬化物が得られる。このため、高温環境下での耐久性に優れた保護膜70が得られる。
(引張強度、引張弾性率および引張伸び率)
まず、ガラス転移温度の評価と同様にして、硬化膜を得る。
この硬化膜から幅10mm×長さ60mm以上の試験片を切り出す。
次に、この試験片について、引張試験機による引張試験を行う。試験条件は、引張速度0.05mm/分、温度23℃、相対湿度55%とする。
そして、引張試験の結果から、引張強度、引張弾性率および引張伸び率を算出する。なお、測定結果については、それぞれ5個以上の試験片から得られる測定値の平均値とする。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、引張強度が20MPa以上であるのが好ましく、30~300MPaであるのがより好ましい。これにより、十分な機械的強度を有し、耐久性に優れた保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、引張弾性率が0.5GPa以上であるのが好ましく、1~5GPaであるのがより好ましい。これにより、十分な機械的強度を有し、耐久性に優れた保護膜70が得られる。
なお、感光性樹脂組成物の硬化物の弾性率(貯蔵弾性率E’)は、動的粘弾性測定装置を用いて測定される。具体的には、動的粘弾性測定装置を用い試験片に引っ張り荷重をかけて、周波数1Hz、昇温速度5~10℃/分で-50℃から500℃の温度範囲で測定した際の、25℃における貯蔵弾性率E’の値として測定される。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、引張伸び率が1%以上であるのが好ましく、5%以上であるのがより好ましく、10~200%であるのがさらに好ましい。これにより、形状追従性に優れた保護膜70のような硬化物が得られる。その結果、保護膜70は、より剥離し難いものとなる。
なお、感光性樹脂組成物の硬化物の伸び率は、以下のようにして測定される。まず、所定の試験片(幅6.5mm×長さ20mm×厚み0.005~0.015mm)に対して引張試験(引張速度:5mm/min)を、温度25℃、湿度55%の雰囲気中で実施する。引張試験は、株式会社オリエンテック製引張試験機(テンシロンRTA-100)を用いて行う。次いで、当該引張試験の結果から、引張伸び率を算出する。ここでは、上記引張試験を試験回数n=10で行い、測定値が大きい5回の平均値を求め、これを測定値とする。
(耐薬品性)
まず、γ-ブチロラクトンでワニス化した感光性樹脂組成物を、孔径0.5μmのフィルターに通す。
次に、フィルターを通した感光性樹脂組成物をシリコンウエハー等に塗布し、得られた塗布膜を乾燥させる。
乾燥は、120℃のホットプレートで180秒間加熱することにより行う。
次に、乾燥させた塗布膜を、アルカリ現像液(濃度0.5質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)に浸し、30秒間静置する。
次に、塗布膜を取り出して純水でリンスする。
次に、オーブンで200℃、60分間加熱する。
加熱後の塗布膜の膜厚を測定し、これをt1とする。
次に、加熱後の塗布膜を薬品に浸し、所定時間静置する。なお、薬品の例としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液等が挙げられる。
次に、塗布膜を取り出して膜厚を測定し、これをt2とする。
そして、(t1-t2)/t1×100を算出し、これを膜厚変化率(%)とする。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を60℃のN-メチルピロリドン(NMP)に10分間接触させたときの膜厚変化率は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、保護膜70がN-メチルピロリドンに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を60℃のジメチルスルホキシド(DMSO)に10分間接触させたときの膜厚変化率は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、保護膜70がジメチルスルホキシドに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に30分間接触させたときの膜厚変化率は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、保護膜70がプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に30分間接触させたときの膜厚変化率は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、保護膜70がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を25℃の濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液に15分間接触させたときの膜厚変化率は、15%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。これにより、保護膜70がテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る保護膜70が得られる。
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物は、前述した保護膜70(パッシベーション膜)の他に、例えば半導体用バッファーコート、再配線層、α線防止膜、層間絶縁膜、フォトレジスト等の各種半導体用の感光性コート材(被覆層)に適用可能である。
このうち、半導体用バッファーコート、再配線層、α線防止膜、層間絶縁膜のような永久膜は、半導体チップ20を保護するための耐久性や機械的強度を要求される。かかる観点から、半導体チップ20とその表面上に少なくとも設けられた本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜とを備える半導体装置10は、永久膜として用いられた場合には、半導体チップ20を長期にわたって保護し得るものであり、信頼性の高い半導体装置10の実現に寄与する。
<電子機器>
本実施形態に係る電子機器は、前述した本実施形態に係る半導体装置を備えている。
かかる半導体装置は、耐薬品性に優れた保護膜を備えているため、信頼性の高いものである。このため、本実施形態に係る電子機器にも高い信頼性が付与される。
本実施形態に係る電子機器は、このような半導体装置を備えるものであれば、特に限定されないものの、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコンのような情報機器、サーバー、ルーターのような通信機器、車両制御用コンピューター、カーナビゲーションシステムのような車載機器等が挙げられる。
以上、本発明を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の感光性樹脂組成物、半導体装置および電子機器は、前記実施形態に任意の要素が付加されたものであってもよい。
また、感光性樹脂組成物は、半導体装置の他、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)や各種センサーの構造形成材料、液晶表示装置、有機EL装置のような表示装置の構造形成材料等にも適用可能である。
また、半導体装置のパッケージの形態は、QFP型の半導体パッケージに限定されず、DIP(Dual In-line Package)型、SOP(Small Out-line Package)型、LF-CSP(Lead Frame Chip Scale Package)型、BGA(Ball Grid Array)型の半導体パッケージであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.樹脂の合成
(合成例1)
<フェノール樹脂(A-2)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製丸底フラスコ内に、レゾルシノール110.10g(1.00mol)と、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル193.9g(0.8mol)と、硫酸ジエチル7.7g(0.05mol)と、582gのγ-ブチロラクトンとを仕込んだ後、窒素を流しながらかかる丸底フラスコを、油浴中で反応液を還流させながら100℃で6時間の重縮合反応を行った。次に、得られた反応液を室温まで冷却した後、323gのアセトンを添加し均一になるまで撹拌混合した。その後、丸底フラスコ内にある反応液を水10Lに滴下混合することにより、樹脂成分を析出させた。次に、析出した樹脂成分を濾別して回収した後、60℃での真空乾燥を行うことにより、下記式(A-2)で表されるフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂(A-2)の重量平均分子量は、28,000であった。
(合成例2)
<フェノール樹脂(A-3)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製丸底フラスコ内に、4,4’-ビフェノール186.2g(1.00mol)と、p-クレゾール86.5g(0.8mol)とホルムアルデヒド24.0g(0.8mol)とシュウ酸・二水和物11.3g(0.09mol)と、308gのγ-ブチロラクトンとを仕込んだ後、窒素を流しながらかかる丸底フラスコを、油浴中で反応液を還流させながら100℃で6時間の重縮合反応を行った。次に、得られた反応液を室温まで冷却した後、411gのアセトンを添加し均一になるまで撹拌混合した。その後、丸底フラスコ内にある反応液を水10Lに滴下混合することにより、樹脂成分を析出させた。次に、析出した樹脂成分を濾別して回収した後、60℃での真空乾燥を行うことにより、下記式(A-3)で表されるフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂(A-3)の重量平均分子量は、11,000であった。
(式(A-3)において、ビフェノール構造に結合する結合手は、2つのベンゼン環のうちいずれか一方に結合している)。
(合成例3)
<ポリアミド樹脂(A-4)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ内に、206.6g(0.8mol)のジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸と245.0g(1.6mol)の1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール・一水和物とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物422.8g(0.8mol)と、232.5g(0.9mol)の2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンと、23.2g(0.200mol)の3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールと、を入れた。その後、上記セパラブルフラスコ内に1583gのN-メチル-2-ピロリドンを加え、各原料成分を溶解させた。次に、オイルバスを用い、90℃で5時間反応させた。次いで、上記セパラブルフラスコ内に68.9g(0.4mol)の4-エチニルフタル酸無水物と、68.9gのN-メチル-2-ピロリドンとを加え、90℃で3時間攪拌しながら反応させた後、23℃まで冷却して反応を終了させた。
セパラブルフラスコ内にある反応混合物を濾過して得られた濾過物を、水/イソプロパノール=3/1(容積比)の溶液に投入した。その後、沈殿物を濾別し、水で充分洗浄した後に、真空条件下、かかる沈殿物を乾燥させた。このようにして、下記式(A-4)で表されるポリアミド樹脂を得た。また、得られたポリアミド樹脂(A-4)の重量平均分子量は、18,100であった。
(合成例4)
<ポリアミド樹脂(A-5)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ内に、4,4’-オキシジフタル酸無水物310.2g(1.00mol)とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル273.3g(2.1mol)およびハイドロキノン1.1g(0.01mol)をN-メチルピロリドン2379gに溶解し、トリエチルアミン10.1g(0.1mol)を添加後に、25℃で48時間撹拌し、4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。得られた4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液2973gに氷冷下で塩化チオニル249.8g(2.10mol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下した。その後、氷冷下で2時間反応を行い4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの酸クロリドの溶液を得た。次いで、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル220.3g(1.10mol)、ピリジン237.3g(3.00mol)、およびハイドロキノン0.40g(0.004mol)を含むN-メチルピロリドン溶液1830gを氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液をメタノール/水(重量比:3/7)溶液に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって下記式(A-5)で表されるポリアミド樹脂を得た。また、得られたポリアミド樹脂(A-5)の重量平均分子量は、38,100であった。
2.感光性樹脂組成物の調製
実施例1~21および比較例1~4のそれぞれについて、以下のように感光性樹脂組成物を調製した。まず、表1に従い配合された各成分を、調合後の粘度が約500mPa・sになるようにγ-ブチロラクトン(GBL)に溶解させて窒素雰囲気下で撹拌させた後、孔径0.2μmのポリエチレン製フィルターで濾過することにより、ワニス状感光性樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中の単位は、質量部である。
<樹脂>
(A-1)フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製 PR-50731、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=11,000)(フェノール樹脂1)
(A-2)上記合成例1により得られたフェノール樹脂(フェノール樹脂2)
(A-3)上記合成例2により得られたフェノール樹脂(フェノール樹脂3)
(A-4)上記合成例3により得られたポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂1)
(A-5)上記合成例4により得られたポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂2)
<感光材>
(B-1)下記式(B-1)の構造のナフトキノン化合物(NQD1)
(B-2)CPI-210S(サンアプロ(株)製)
(B-3)IRGACURE OXE01(BASFジャパン(株)製)
<架橋剤>
(C-1)ニカラックMX-270(三和ケミカル(株)製)
(C-2)TML-BPA(本州化学(株)製)
(C-3)セロキサイド2021P((株)ダイセル製)
<密着助剤>
(D-1)KBM-403(信越シリコーン(株)製)
(D-2)KBM-303(信越シリコーン(株)製)
(D-3)KBM-9659(信越シリコーン(株)製)
(D-4)KBM-573(信越シリコーン(株)製)
(D-5)KBM-505(信越シリコーン(株)製)
(D-6)4-アミノ-1,2,4-トリアゾール(A1137)(東京化成工業(株)製)
<界面活性剤>
(E)F444(DIC(株)製)
3.感光性樹脂組成物の評価
3.1 パターニング性の評価
3.1.1 ポジ型パターニング性
[1]実施例1~18および比較例1~4の感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコートした後、120℃で3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
[2]次に、ポジ型パターン用マスクを介して、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させて照射した。
[3]次に、現像液として23℃の濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、未露光部の膜べりが1~2μmとなるように現像時間を調整し、パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水でリンスした。
[4]次に、パターニングすることができたか否かを目視にて確認し、以下の評価基準に照らしてポジ型パターニング性を評価した。
<ポジ型パターニング性の評価基準>
○:露光部が溶解することでパターンを得ることができた
×:全溶解あるいは不溶によりパターンを得ることができなかった
評価結果を表1、2に示す。
3.1.2 ネガ型パターニング性
[1]実施例19~21の感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコートした後、120℃で3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
[2]次に、ネガ型パターン用マスクを介して、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させて照射した。その後、120℃で3分の加熱を行った。
[3]次に、現像液として23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて、60秒間パドル現像を行うことによって未露光部を溶解除去した後、イソプロピルアルコール(IPA)でリンスした。
[4]次に、パターニングすることができたか否かを目視にて確認し、以下の評価基準に照らしてネガ型パターニング性を評価した。
<ネガ型パターニング性の評価基準>
○:未露光部が溶解することでパターンを得ることができた
×:全溶解あるいは不溶によりパターンを得ることができなかった
評価結果を表1、2に示す。
3.2 密着性の評価
3.2.1 シリコン(Si)密着性の評価
[1]まず、各実施例および各比較例の感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上にスピンコートした後、120℃で3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
[2]ネガ型の組成物については、1000mJ/cm2の紫外線を照射し、120℃で3分の加熱を行った。
[3]次に、窒素雰囲気中において、200℃で60分間加熱し、硬化膜を得た。
[4]次に、得られた硬化膜をプレッシャークッカー装置に入れ、125℃、2.3気圧の条件下で100時間処理した(PCT処理)。
[5]次に、PCT処理を施した硬化膜と、それとは別に用意したPCT処理を施していない硬化膜と、について、JIS D 0202:2007に規定された碁盤目付着性を評価した。この評価には、JIS K 5600-5-6:1999に規定のクロスカット法を用いた。
具体的には、まず、カッターナイフを用いて各硬化膜に切れ込みを入れた。この切れ込みは、1mm間隔で縦横に11本ずつ、硬化膜を貫通するように入れた。これにより、硬化膜から1mm角の正方形を全部で100個切り出した。
次に、これらの100個の正方形に重ねるようにセロハン粘着テープを張り付けた。そして、セロハン粘着テープを剥がし、100個の正方形のうち、いくつ剥がれるかを数えた。そして、剥がれた数を表1、2に示す。すなわち、すべてが剥がれた場合は「100個」であり、1個も剥がれがない場合は「0個」である。
評価結果を表1、2に示す。なお、表1、2では、PCT処理前の評価結果を「0h」とし、PCT処理後の評価結果を「100h」としている。
3.2.2 窒化ケイ素(SiN)密着性の評価
シリコンウエハーに代えて、表面に窒化膜(窒化ケイ素膜)を形成したシリコンウエハーを用いるようにした以外は、3.2.1と同様にしてPCT処理前後の硬化膜の窒化ケイ素密着性を評価した。
評価結果を表1、2に示す。
3.3 引張強度、引張弾性率および引張伸び率
まず、ガラス転移温度の評価と同様にして、硬化膜を得る。
この硬化膜から幅10mm×長さ60mm以上の試験片を切り出す。
次に、この試験片について、引張試験機による引張試験を行う。試験条件は、引張速度0.05mm/分、温度23℃、相対湿度55%とする。
そして、引張試験の結果から、引張強度、引張弾性率および引張伸び率を算出した。なお、測定結果については、それぞれ5個以上の試験片から得られる測定値の平均値とする。
3.4 硬化膜の外観(ボイド)の評価
[1]まず、各実施例および各比較例の感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上にスピンコートした後、120℃で3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
[2]次に、窒素雰囲気中において、200℃で60分間加熱し、硬化膜を得た。
[3]次に、得られた硬化膜の外観を光学顕微鏡で観察し、含まれるボイドの状況を以下の評価基準に照らして評価した。
<外観の評価基準>
○:ボイドが全く観察されない
△:ボイドがわずかに観察される
×:ボイドが多数観察される
3.5 半導体装置での信頼性試験
<半導体装置の作製>
表面にアルミ回路を備えた模擬素子ウエハーを用いて、実施例1~11および比較例1~2の感光性樹脂組成物を、それぞれ、最終5μmとなるよう塗布した後、パターン加工を施して硬化した。その後、チップサイズ毎に分割して16Pin DIP(Dual Inline Package)用のリードフレームに導電性ペーストを用いてマウントした後、半導体封止用エポキシ樹脂(住友ベークライト社製、EME-6300H)で封止成形して、半導体装置を作製した。
<半導体装置の信頼性評価(耐湿性)>
上述した方法で得られた各10個ずつの半導体装置を、85℃/85%湿度の条件で168時間処理した後、260℃半田浴槽に10秒間浸漬し、次いで、高温、高湿のプレッシャークッカー処理(125℃、2.3atm、100%相対湿度)を施した後、超音波探傷装置(SAT)にて感光性樹脂組成物とチップとの剥離状況をチェックした。
そして、
10個すべての半導体装置において剥離がなかったものを○、
10個中1個以上の半導体装置において剥離が観察されたものを×、
として信頼性評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
表1、2から明らかなように、各実施例の感光性樹脂組成物は、パターニング性が良好であった。また、各実施例の感光性樹脂組成物の硬化膜は、無機材料に対する密着性が良好であった。