JP7062858B2 - 凝乳食品の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において、原料乳とは、牛乳、水牛乳、ヤギ乳、羊乳、馬乳等の家畜乳および/またはこれらの部分脱脂乳、脱脂乳、還元全乳、還元脱脂乳、還元部分脱脂乳、ホエイ、カゼイン、脱脂粉乳、ホエイタンパク濃縮物(WPC)、ホエイタンパク分離物(WPI)、バター、バターミルク、クリーム等の乳原料を1種または2種以上組み合わせて調製した液状乳をいう。
ろ過膜円板の直径 D=312mm
回転速度 n=300~400rpm
実施例では、Dが実機の1/2、回転速度が2倍のテスト機でテストを行い、満足の行く結果が得られた。
実施例を説明する前に、まず本発明の実施の形態としてクリームチーズの製造方法を説明する。
生乳と生クリームを、乳脂肪分11~13重量%、無脂乳固形分6~9重量%となるように混合し、チーズミルクを調製し、加熱殺菌する。加熱殺菌の条件は、73~95℃、15秒~6分の範囲内で最適な条件を選択する。チーズミルクを、加熱殺菌の前または後に、50~60℃で均質化処理する。均質化圧力は7.5~18MPaの範囲内で最適な条件を選択する。
チーズミルクを加熱殺菌および均質化後、25~38℃に冷却し、乳酸菌スターターを添加し、25~38℃の範囲内の、選択した乳酸菌スターターの生育に適した任意の温度で静置し発酵させる。チーズミルクが発酵しpH4.6~5.2の範囲に到達すると、凝固した凝乳組成物(チーズカード)が得られる。チーズカードを送液可能な流動性のある物性になるまで破砕・撹拌する。破砕後のチーズカードを、50~80℃の範囲内に加熱する。加熱温度としては、その後のホエイ分離工程の設備に適した温度を選択する。それぞれのホエイ分離設備に加熱後のチーズカードを供し、チーズカードが任意の全固形分濃度に到達するようホエイを分離する。凝乳食品(ホエイ分離後のチーズカード)を、必要であれば80℃以上に再加熱する。再加熱後、ホエイ分離後のチーズカードに、食塩0.2~0.6重量%およびローカストビーンガム0.2~0.5重量%を添加・混合する。混合は、チーズカード全体が均一に撹拌される容器および撹拌羽根を使用し、80℃以上を保った状態で15分以上撹拌する。撹拌後に、ホエイ分離後のチーズカードを、70~80℃の状態で8~30MPaの均質化に供する。均質化後、ホエイ分離後のチーズカードを、65~80℃の状態で任意の容器に充填し、クリームチーズ製品とする。充填後のクリームチーズ製品を、24時間以内に10℃以下となる方法で冷却し、1~10℃の範囲内で保存する。
発酵乳の40℃における粘度は、好ましくは0.5Pa・s以上、より好ましくは2Pa・s以上、さらに好ましくは5Pa・s以上、最も好ましくは10Pa・s以上である。
通常の発酵乳を発酵後に撹拌し組織を微細化すると、その粘度は0.2~0.4Pa・s(回転式B型粘度計、温度40℃)となる。
本発明の実施の形態によれば、発酵後あるいはカード形成の始まった発酵中の発酵乳を微細化して動的ろ過方式による膜分離法を適用し、ホエイ等を分離することで粘度10~1000Pa・s以上を達成できることが分かった。従来の膜濃縮技術では系内の圧力上昇により発酵乳の粘度は10Pa・s程度が限度であった。本願の実施の形態によれば、1000Pa・s以上まで濃縮可能である。このように従来技術では達成できなかった濃縮度を得ることが可能である。
図10Aの表と図10Bの線図に、濃縮倍率と粘度の測定結果を示す。
図11Aの表に、粘度に対するEPSの測定結果を示す。
図11Bは、図11Aの値を分かり易くプロットした線図である。
乳酸菌スターターを原料乳に添加して発酵乳を製造した。乳酸菌スターターは、Lactobacillusdelbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1(受託番号FERMBP-10741)とStreptococcus thermophilus OLS3059(受託番号FERM BP-10740)を含むものとした。原料乳の組成は、脱脂粉乳9重量%、乳酸菌スターター2重量%、原料水89重量%とした。発酵乳の酸度が0.7%となったところで発酵を終了した。
発酵乳における菌体外多糖の産生量(EPS量)を測定した。ここで、EPS量での分析は、以下の手順で実施した。
(1)10gの発酵乳(ヨーグルト)に対してTCAによる除タンパクを行う。
(2)エタノール沈澱によりEPSを精製する。
(3)0.45μmフィルターにより夾雑物を除去する。
(4)ゲル濾過カラムを用いたHPLC(High performance liquidchromatography)によりEPS量を分析する。
なお,HPLC分析装置としては,Ultimate3000 (Thermo Scientific)を用いた。
(1)サンプル10g秤量
(2)トリクロロ酢酸1ml添加し、撹拌後、遠心分離で上清を回収
(3)上清に2倍量の冷エタノールを加え、4℃2時間以上静置後、遠心し、上清を除去
(4)沈殿物を10mlミリQ水で溶解
(5)濃縮倍率に合わせて蒸留水で希釈し、抽出
HPLCシステム;UltiMate 3000(Thermo)
カラム;Acclaim SEC-1000(Thermo)
カラム温度;40℃
移動相;50mM酢酸アンモニウム
流速;0.3ml/min
検出装置;Corona Veo
EPS濃度測定は、OLL1073R-1株が産生したEPS精製物をスタンダードに用い、検出時間6.6分付近のピークの面積値より算出した。
図11Aの表と図11Bの線図に測定結果を示す。
本発明の一態様において、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1を含む発酵乳の発酵時間は、1~24時間の範囲とすることが好ましい。特に、2~12時間の範囲とすることがより好ましく、3~8時間の範囲とすることがさらに好ましい。
なお、本発明の一態様において、前記培養温度と前記培養時間は、いかなる組み合わせでもよいが、製造効率、Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1の菌体数、培養物(発酵物、例えばEPS)の酸度、風味などの観点から、好ましくは30~45℃で1~24時間、さらに好ましくは32~44℃で2~12時間、より好ましくは34~43℃で3~8時間培養(発酵)させる。
クリームチーズでは、乳固形分量として、好ましくは40重量%以上、より好ましくは、47重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好ましくは55重量%以上である。タンパク質量として、好ましくは6重量%以上、より好ましくは、8重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは11重量%以上である。
発酵乳では、乳固形分量として、好ましくは14重量%以上、より好ましくは、16重量%以上、さらに好ましくは18重量%以上最も好ましくは22重量%以上である。タンパク質量として好ましくは8重量%以上、より好ましくは、10重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上、最も好ましくは16重量%以上である。
また、クリームチーズの60℃における粘度は、好ましくは8Pa・s以上、より好ましくは10Pa・s以上、さらに好ましくは18Pa・s以上、最も好ましくは20Pa・s以上である。
使用した動的ろ過装置(図1、図2参照)の仕様;
回転シャフト 2本
ろ過膜の孔径 30nm
ろ過膜 セラミックフィルター
ろ過膜の面積 0.14m2
ハウジングの容積 2.6リッター(L)
ローターの運転回転速度 750rpm
図6の結果となったチーズの製造方法の比較例1を説明する。
この比較例は、図8に示す装置を使用した。
濃縮は、P&F膜装置30でおこなった。
フィードタンク34に貯留した凝乳組成物をフィードポンプ41で送り出す。送り出された凝乳組成物は、循環ポンプ42で加圧され冷却用の熱交換器35を経由してP&F膜装置30に供給される。ここでホエイ38と凝乳食品(ホエイを分離したチーズカード37)に分離される。この比較例では、凝乳食品(ホエイを分離したチーズカード)37の一部が製品として完成するために外部に取り出される。残りのチーズカード37はホエイ分に混入したまま、循環ポンプ42の入り口に戻され、濃縮工程を繰り返すことにより濃縮度を高める。
比較例1で使用したP&F膜装置の仕様;
ろ過膜 有機膜フィルター
有機膜フィルター材の分画分子量 26,000
ろ過膜の面積 1.43m2
循環ポンプ流量 325L/分
ポンプ吐出圧力 1.0バール(bar)
図1、図2で説明した動的ろ過装置を使用して、無脂肪タイプのヨーグルトを濃縮して製造した。使った乳原料は、脱脂粉乳;9.0重量%、バルクスターター;2.0重量%、水;89重量%であった。
動的ろ過膜装置に供する前の後発酵ヨーグルトと、動的ろ過膜装置に供した後の凝乳食品(ホエイを分離した後発酵ヨーグルト)の粘度を測定した。動的ろ過膜装置に供する前の後発酵ヨーグルトの粘度は、0.3Pa・sであり、動的ろ過膜装置に供した後の後発酵ヨーグルトの粘度は、体積当たりの濃縮倍率が6.5倍の時点で53Pa・sであった。濃縮倍率が7倍に達すると1000Pa・s以上であった(粘度の検出上限が1000Pa・sである)。粘度は、回転式B型粘度計により、試料を直径70mmの円柱型ビーカーに充填して、温度40℃で測定した。
更に、動的ろ過膜装置に供する前の後発酵ヨーグルトと、動的ろ過膜装置に供した後の凝乳食品(ホエイを分離した後発酵ヨーグルト)の発酵乳中の菌体外多糖(EPS)濃度を測定した。動的ろ過膜装置に供する前には18μg/mlであったEPS濃度が、体積当たり7倍濃縮後に151μg/mlにまで上昇した。これまでに膜濃縮技術を用いてEPSが初期濃度の8倍以上に濃縮された報告はなく、従来技術と比較して極めて優れた濃縮技術であるといえる。
この実施例による、濃縮倍率を、次に説明する比較例2と比較した。比較の結果は、先に図7を参照して説明した通りである。
この比較例は、図9に示す筒型のセラミック膜を使用する装置を用いた。
濃縮は、セラミック製膜によるろ過装置50でおこなう。セラミック製膜の孔径は50nmであった。
フィードタンク54に貯留した凝乳組成物をフィードポンプ51で送り出す。フィードポンプ51で加圧された凝乳組成物は、ろ過装置50に供給される。ここでホエイ58と凝乳食品(ホエイを分離したヨーグルトカード)57に分離される。この比較例では、ヨーグルトカード57の一部が製品として完成するために外部に取り出される。残りのヨーグルトカード57はホエイ分に混入したまま、フィードタンク54に戻され、濃縮工程を繰り返すことにより濃縮度を高める。
11、12 ろ過膜円板
11a、12a ろ過膜
11s、12s 回転軸
13 ハウジング
14 フィードタンク
15 ジャケット
16 凝乳組成物
17 凝乳食品
18 ホエイ
19 搬送エア
21、22 回転体(ローター)
D ろ過膜円板の直径
n ろ過膜円板の回転速度
Claims (4)
- 孔径が5nm~2.0μmのろ過膜と前記ろ過膜を収納するハウジングを有し、前記ろ過膜は前記ハウジングに対して動的に設けられた、動的ろ過装置を提供する工程と;
凝乳組成物を50~80℃に加熱する工程と;
前記加熱した凝乳組成物を前記動的ろ過装置に供給する工程と;
前記ろ過膜を前記ハウジングに対して動かす工程と;
前記凝乳組成物を加圧する工程と;
前記凝乳組成物中のホエイを、前記ろ過膜が動いている状態で透過させて抜き出し、前記凝乳組成物中の固形分の濃度を40重量%以上まで高める工程と;を備える、
凝乳食品の製造方法。 - 前記ろ過膜は、中空の板状に形成されており、前記動的に設けられたろ過膜は前記ハウジングに対して回転支持されている、請求項1に記載の凝乳食品の製造方法。
- 前記板状に形成されたろ過膜板は回転軸に複数設けられた回転体を構成する、請求項2に記載の凝乳食品の製造方法。
- 隣接させて配置した前記回転体を2個備え、前記各回転軸は互いに平行に配置され、両回転軸の間に位置する前記ろ過膜板は互いに重なるように配置された、請求項3に記載の凝乳食品の製造方法。
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