JP7061223B1 - 水中油型乳化組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
下記(A)~(C)を含有する水中油型乳化組成物;
(A)香料成分を含有する油相成分、
(B)(B1)HLB値が1以上11未満の乳化剤及び/又は(B2)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、並びに
(C)タンパク質及びアニオン性多糖類が複合体化した微粒子。
[2]
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の水中油型乳化組成物。
[3]
前記タンパク質が、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、乳清タンパク質、大豆タンパク質、酸性可溶大豆タンパク質、エンドウマメタンパク質、ヒヨコマメタンパク質及びソラマメタンパク質からなる群より選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の水中油型乳化組成物。
[4]
前記アニオン性多糖類が、キサンタンガム、ウェランガム、カラギナン、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、ラムザンガム、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム、ガティガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、カラヤガム、サクシノグリカン、セルロース誘導体、デンプン誘導体及び大豆多糖類からなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれか1に記載の水中油型乳化組成物。
[5]
更に(D)多価アルコールを含有する、[1]~[4]のいずれか1に記載の水中油型乳化組成物。
[6]
前記香料成分が、バター香料、コーヒー香料、チョコレート香料、メープル香料、抹茶香料、ミルク香料、カニ香料及びピーチ香料からなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[5]のいずれか1に記載の水中油型乳化組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれか1に記載の水中油型乳化組成物を含む、飲食品。
本発明の水中油型乳化組成物は、以下の成分を含有する。
(A)香料成分を含有する油相成分、
(B)(B1)HLB値が1以上11未満の乳化剤及び/又は(B2)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、並びに
(C)タンパク質及びアニオン性多糖類が複合体化した微粒子。
本発明の(A)成分は、香料成分を含有する油相成分である。(A)成分の油相成分が香料成分のみからなっていてもよいし、他の成分を含有してもよい。
当該logP値の決定は、JIS Z 7260-117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により実施することができる。logP値は、次式により定義される。
logP=log(Coc/Cwa)
Coc:1-オクタノール層中の被験物質濃度(mol/L)
Cwa:水層中の被験物質濃度(mol/L)
前記「天然香料」の形態の例としては、アブソリュート、エキストラクト、及びオレオレジン等の抽出物;コールドプレス等の精油;及びチンキと呼ばれるアルコール抽出物などが挙げられる。
本発明の(B)成分は、(B1)HLB値が1以上11未満の乳化剤、(B2)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)又はそれらの組み合わせである。
本発明の乳化組成物の(B2)成分の含有量は、乳化組成物の全量に対して、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、0.01質量%以上又は0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。また、本発明の乳化組成物の(B2)成分の含有量は、乳化組成物の全量に対して、例えば、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下又は20質量%以下であってもよい。
本発明の(C)成分は、タンパク質とアニオン性多糖類が複合体化した微粒子であれば、その製造方法は特に限定されない。好ましくは、(C)成分の微粒子は、水溶性又は水分散性を有する。好ましくは、本発明の(C)成分は、タンパク質とアニオン性多糖類が静電的相互作用により複合体化した微粒子である。本発明の水中油型乳化組成物は、(C)成分の代わりに複合体化していない状態のタンパク質とアニオン性多糖類を含有する場合と比べて、より優れた乳化安定性を示す。
微生物が産生する多糖類として、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、ラムザンガム、サクシノグリカン、ウェランガム等;
植物由来の多糖類として、ペクチン(果皮由来)、トラガントガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、ガティガム、カラヤガム(樹液由来)、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギナン(海藻由来)、大豆多糖類(種子由来)、セルロース誘導体及びデンプン誘導体(植物由来の半合成品)等。
ここでの誘導体とは、化合物の一部を他の原子又は原子団に置換した化合物を意味し、本願においては、多糖類中の原子又は原子団の一部を、アニオン性を示す原子団に置換した化合物全般を指す。アニオン性を示す原子団としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
本発明の水中油型乳化組成物中の(C)成分の微粒子のアニオン性の多糖類1質量部に対するタンパク質の量は、水中油型乳化組成物の長期(例えば調製後1ヶ月間)の乳化安定性を良好とする観点から、好ましくは0.034~66質量部、より好ましくは0.05~40質量部である。
タンパク質とアニオン性の多糖類とを含み、そのタンパク質の等電点より高いpHを有する溶液又は分散液を準備すること、及び
この溶液又は分散液のpHを上記の等電点に近づけること
を含むことが好ましい。
これにより、上記の(C)成分の微粒子を容易に作製することができる。このような製造方法のより具体的な実施形態は、例えば、国際公報2019/087666号公報に記載されているものが挙げられる。以下に具体的な実施形態を示すが、当該実施形態に限定されるものではない。
タンパク質とアニオン性の多糖類とを含み、そのタンパク質の等電点より高いpHを有する溶液又は分散液の準備においては、(a)タンパク質と多糖類とが共存する状態で混合液として準備してもよいし、(b)タンパク質の溶液と、多糖類の溶液又は分散液とを別々に調製し、これらを混合して混合液として準備してもよい。
タンパク質及びアニオン性の多糖類を含む溶液又は分散液において、タンパク質は、その溶液又は分散液が、そのタンパク質の等電点より高いpH、つまり、当初のpHを有していることから、完全に又は略完全に溶解している。また、アニオン性の多糖類は、溶液又は分散液として、完全に又は略完全に溶解していてもよいし、その一部又は全部が溶解せずに、浮遊又は懸濁していてもよい。
タンパク質及びアニオン性の多糖類を含む溶液又は分散液の溶媒は、水、有機溶媒及びこれらの組み合わせから適宜選択することができるが、水(例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、超純水、水道水等)であることが好ましい。そして、上記のように、溶媒のpHを調整するために、pH調整剤、例えば、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、リン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン等が含有されていてもよい。
なお、タンパク質及びアニオン性の多糖類の双方を含む混合液として調製する場合においても、その混合液のpHは、上記と同様に、タンパク質の等電点より高いpHに維持しているものが好ましい。
また、アニオン性の多糖類を含む溶液又は分散液を準備する際、アニオン性の多糖類が溶媒に溶解する場合には溶液とし、溶解しない場合には、適度の力を負荷して分散液とすることが好ましい。ここでの負荷する力は、例えば、加熱しながらのプロペラ撹拌、ホモミキサーによる撹拌、ホモジナイザーによる均質化等、多糖類の分散液を調製するための公知の方法が挙げられる。
タンパク質を溶解する溶媒と、アニオン性の多糖類を含む溶媒とは、同じであってもよい(溶液又は分散液のpHの調整)し、異なっていてもよいが、双方とも同じであることが好ましく、水であることがより好ましい。
これら2種の溶液又は分散液を混合する場合には、タンパク質の等電点より高いpH、つまり当初のpHに維持しながら混合して、混合液とすることが好ましい。混合は、双方が均一に混ざればよい。混合は、手動であってもよいし、当該分野で公知の混合機又は混合装置を用いてもよい。混合は、撹拌(剪断)、振盪、インジェクション、超音波処理等のいずれを利用してもよい。例えば、プロペラ撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いることが挙げられる。この場合の混合は、両者が均一に混じる程度以上の負荷をかければよい。例えば、5MPa~50MPa程度の圧力でのホモジナイザー処理又は5000rpm~35000rpmで、数十秒間~数時間程度の混合が挙げられる。この場合の温度は、溶液が凍結しない温度から、タンパク質が変性しない温度範囲、例えば、室温~80℃の範囲が挙げられる。
次に、上記のタンパク質の溶液と、アニオン性の多糖類の溶液又は分散液とのあるいはタンパク質及びアニオン性の多糖類を含む混合液の、pHをタンパク質の等電点により近い値とする。この場合、pH調整剤を添加してもよい。pHをタンパク質の等電点により近い値とする際、そのpHが液全体で一定となる程度に混合することが好ましい。
例えば、アニオン性の多糖類の溶液又は分散液のpHは、必ずしも、タンパク質の溶液のpHとは一致しないことがあるが、アニオン性の多糖類の溶液又は分散液のpHにかかわらず、両者を混合した混合液のpHが、タンパク質を析出させないpHであり、かつ、タンパク質の等電点に、つまり、当初のpHに対して、より近くなるようにpH調整剤を添加する。
また、タンパク質とアニオン性の多糖類とを含む混合液の場合には、そのpHは、そのタンパク質の等電点よりも高く設定されている、つまり当初のpHに設定されていることから、その混合液のpHを、タンパク質が析出しない程度に低くして、当初のpHよりもタンパク質の等電点により近づける。
ここで、液のpHを等電点により近い値とするとは、当初のpHと用いたタンパク質の等電点との差よりも、得られた混合液のpHと等電点との差を小さくすることを意味する。例えば、当初のpHが等電点よりも高く、得られた混合液のpHが等電点よりも高いか同じであってもよいし、当初のpHが等電点よりも高く、得られた混合液のpHが等電点よりも低くてもよい。
当初のpHに対して、液のpHをタンパク質の等電点により近づける際に、液に、混合によって剪断力を与える。つまり、混合液に、より大きな剪断力を与えるように混合又は撹拌しながらpHをタンパク質の等電点により近い値としてもよいし、pHをタンパク質の等電点により近い値とした後、より大きな剪断力を与えるような混合又は撹拌を行ってもよい。ここでの剪断力は、上記のように、タンパク質の溶液と、アニオン性の多糖類の溶液又は分散液とを別個に調製し、両者を混合する際の均一に混じる程度の負荷より大きな負荷、例えば、高速撹拌、高剪断力を与えることが好ましい。そのために、例えば、羽根付きスクリューによる撹拌、ホモミキサー等の高剪断ミキサーによる循環撹拌、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の機器による均質化等を行うことが挙げられる。
例えば、5000rpm~35000rpmで、室温~タンパク質の変性温度以下、例えば、室温~80℃の温度範囲での数十秒間~数十時間程度の混合が挙げられる。
このような剪断とpHとを調整しながら、タンパク質とアニオン性の多糖類とを含む混合液として混合することにより、いわゆるビルトアップ型の本発明の(C)成分の微粒子を形成することができる。
また、溶液又は分散液を混合しながらpHを等電点に近づけてもよいし、pHを等電点に近づけた後に混合を行ってもよい。溶液又は分散液を混合し、この液のpHを、タンパク質の等電点に近づけることにより、タンパク質及び/又は多糖類の凝集物を生じさせることなく、均一でありかつ微細な状態の微粒子を得ることができる。
本明細書中、(C)成分の含有量とは、(C)成分中の上記のタンパク質及びアニオン性多糖類の質量の合計を表す。
本発明の乳化組成物は、更に多価アルコールを含有してもよい。これにより、本発明の乳化組成物の乳化安定性を更に高めることができる。
本発明の乳化組成物は、水を含有することができる。当該水は、乳化組成物の水相を構成する水(純水、イオン交換水、水道水を含む)、又は水溶液であり得る。
本発明の乳化組成物には、必要に応じて、レシチンを添加することもできる。レシチンは(A)成分に混合して用いられることが好ましい。
当該レシチンの由来は、特に制限されず、当該レシチンは、油糧種子(例:大豆、菜種、及びヒマワリ)等の植物由来のレシチンであってもよく、又は卵黄などの動物由来のレシチンであってもよい。本発明で用いることができるレシチンは、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性レシチンであるか、又は化粧料として人体に適用可能なレシチンである。
本発明で用いることができるレシチンは、分別レシチン、酵素分解レシチン、及び酵素処理レシチン等の加工レシチンを包含する。
当該レシチンは、好ましくは、前記乳化組成物の全量に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、及びより好ましくは0.1~2質量%の割合で含有される。
本発明の乳化組成物のD50粒子径は、例えば1~100μm、2~80μm、5~60μm、10~50μm、又は10~40μmであってもよい。本発明の乳化組成物は、D50粒子径が10~50μmのような比較的大きい径であっても乳化安定性が良好であることが特徴の一つである。そして、実施例にも示されるように、D50粒子径が40μm以下の場合は、乳化安定性がより良好となる。
また、本発明の乳化組成物のD50粒子径を例えば10~100μm、好ましくは10~50μm、より好ましくは10~40μmの粒子径とすることにより、飲食品に適用した場合の香り立ちが更に改善される。ただし、本発明の効果をもたらすメカニズムは、粒子径によるものに限定されるべきではない。
本明細書において、乳化組成物のD50粒子径は、25℃において、レーザー回折式粒度分布計によって測定される乳化組成物の粒度分布において、粒子の体積基準の頻度の累積が50%となる粒子径を表す。乳化組成物がそのままでは粒度分布測定に適さない場合は、水によって希釈して、均一に分散させて用いる。例えば、乳化物を適宜水で希釈を行い、ボルテックスで十分に懸濁してから粒度分布の測定を行う。
実施例の記載から理解されるように、本発明の乳化組成物は、飲食品に適用した場合に香り立ちが優れ、更に長期(例えば製造後1ヶ月)にわたって優れた乳化安定性を示す。
本発明の乳化組成物は、特に限定されないが、添加用の乳化製剤として、着色(濁り、曇りの付与を含む)、着香、栄養付与若しくは強化、又は風味・香味の付与若しくは改変等の用途に適用することができるが、風味・香味の付与に用いることが好ましい。
(清酒、合成清酒)、焼酎、ビール、果実酒類(果実酒、梅酒等の甘味果実酒)、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)、スピリッツ類(スピリッツ)、リキュール類、発泡酒、その他の醸造酒(マッコリ等)、雑酒(粉末酒、その他の雑酒)等を挙げることができる。
本発明の乳化組成物は、通常、液体状(溶液、乳化液、分散液を含む)又は半固形状(ペースト状やクリーム状を含む)の形状を有する。また本発明の乳化組成物を一旦、水性溶媒に分散又は溶解した後に、水性溶媒を蒸留又は乾燥等の定法に従って、減少又は除去することによって調製されるものを挙げることができる。このような方法により調製される乳化組成物は、ペースト状などの半固形状、又は粉末状や顆粒状などの固形状でありうる。
本発明の飲食品又は製剤は、上記の本発明の乳化組成物を含有する。飲食品の具体的な実施形態は上記の[水中油型乳化組成物]の用途の項に示した飲食品が挙げられる。
本発明の乳化組成物の製造方法は、上記(A)~(C)成分、及び水を含有する混合物を調製する工程、並びに前記混合物を乳化処理する工程を含む。
(A)~(C)成分を含有する混合物を調製する工程において、これらの成分、並びに、任意で上記のレシチン、多価アルコール及びその他成分を混合する場合、それらの混合の順序は、特に限定されない。中でも、本発明の製造方法には、(A)及び(B)成分を含有する混合物を準備する工程と、該混合物と(C)成分及び水を含有する混合物とを混合して乳化処理する工程を含むことが好ましい。
乳化処理は、公知又は慣用の混合方法を採用して実施すればよい。その例は、例えば、ホモジナイザー(例:高圧ホモジナイザー(ゴーリン式等)、ホモディスパー、ホモミキサー、ポリトロン式撹拌機、コロイドミル、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー等)、プロペラ撹拌機、又はパドル式撹拌機等の混合機を使用する方法を包含する。
本発明の製造工程には、更に[水中油型乳化組成物]の項に記載した(C)成分の調製工程を含んでもよい。
本発明の乳化組成物の製造工程には、製造する組成物の形態に応じて、更に水による希釈工程、加熱殺菌工程、乾燥工程(噴霧乾燥法、凍結乾燥法、共沸溶媒の使用、及び水除去剤の使用等の慣用の水除去方法等)、カプセル充填工程、圧縮工程、容器充填工程等を含んでいてもよい。
本発明は、以下の方法を含む。
(A)香料成分を含有する油相成分;及び
(C)タンパク質及びアニオン性多糖類が複合体化した微粒子
を含む組成物に、
(B)(B1)HLB値が1以上11未満の乳化剤及び/又は(B2)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)
を適用することを含む、乳化安定性の改善方法。
実施例では、以下の材料、装置、及び測定方法を採用した。
(1-1)(A)香料成分を含有する油相成分
香料成分を含有する油相成分として、バター香料(バターフレーバーBH-466)、コーヒー香料(コーヒーフレーバーNE-2613)、チョコレート香料(チョコレートフレーバーNE-3184)、メープル香料(メープルフレーバーNE-3182)及び抹茶香料(マッチャフレーバーNE-3179)(以上、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、ミルク香料、カニ香料及びピーチ香料を使用した。これらの油溶性香料は、いずれも香料成分としてlogPが5.0以下の香料成分を、5%以上含有する。
(1-2)中鎖脂肪酸(MCT)オイル
MCTオイルは、中鎖脂肪酸100%であり、香料成分を含有しないものを使用した。下記の試験例では、MCTオイルと油溶性香料の両方を含有する処方では、それら両方が油相成分を構成することとなる。
下記の方法によって得られる2週間の保存によるD50粒子径の変化率と、1ヶ月の保存による乳化物の分離の目視評価により、乳化安定性の評価を行った。
(2-1)粒度分布及びD50粒子径の測定
各試験例で調製した乳化組成物について、乳化粒子の粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100(島津製作所(株)製)を用いて測定した。測定サンプルとして、各試験例で調製した直後、及び調製後2週間室温(25℃)で静置保存した乳化組成物をイオン交換水で適宜希釈したものを用いた。そして、25℃にて、それぞれのサンプルのD50粒子径(体積基準)を測定した。そして調製直後のD50粒子径r0に対する、調製してから2週間保存した後のD50粒子径r1の割合(変化率r1/r0)を求めた。なお、油相分離を起こして乳化粒子が測定できない場合は、表中に「分離」と記載した。
上記変化率r1/r0が1.5未満である場合、乳化組成物中の「乳化粒子が安定に保たれている」と判断した。
(2-2)目視による分離の確認
更に、各試験例で調製した乳化組成物を1ヶ月室温(25℃)で静置保存した後の乳化状態を目視で観察し、以下の基準により評価した。ここで、「分離」とは、乳化粒子の合一により油相の分離がみられる状態を意味しており、弱く撹拌しても再分散しない。「下透きあり」とは、油相と水層の比重差により油滴が浮上し、乳化物が濃縮化した状態(クリーミング)を意味し、弱く撹拌することで乳化粒子が再分散する。下透きが生じていてもクリーミングの状態の場合は、乳化物の層が安定であり、分離がない場合に比べて乳化安定性は劣るものの良好であるとみなした。「分離なし」とは、油相の分離もクリーミングによる下透きも生じず、油相が水相に均一に分散している状態を意味する。そして、油相が分離していると判断された場合、乳化組成物の安定性は不良であると判断した。
<目視による乳化状態の評価>
◎:分離なし
〇:クリーミングによる下透きが生じているが、分離は見られない
×:乳化粒子が合一して油相が分離している
試験例1~4では、次の方法で作製した微粒子成分の懸濁液(0.15質量%キサンタンガム、0.2質量%タンパク質含有)を使用した。
(1)アニオン性多糖類として、キサンタンガム(商品名:サンエースC(*))を、80℃に加熱したイオン交換水に添加し、80℃のまま10分間撹拌溶解した後、室温まで冷却して、0.167質量%キサンタンガム水溶液を調製した(キサンタンガム水溶液のpHは6.5)。
(2)乳清タンパク質を2.0質量%含有するようにイオン交換水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5~7.0に調整して、タンパク質水溶液を調製した。
(3)(1)のキサンタンガム水溶液と(2)のタンパク質水溶液を質量比で9:1となるように混合し、4枚羽根のスクリューで均一になるまで400rpmで10分間撹拌混合した。
(4)得られた溶液を9000rpmで3分間ホモミキサーによって撹拌しながら、クエン酸水でpH5.0に調整した。
表2の組成の水中油型乳化組成物を調製し、種々のHLB値の乳化剤を微粒子成分と併用した場合の乳化安定性を比較した。
表3の組成の水中油型乳化組成物を調製し、種々の量の乳化剤を微粒子成分と併用した場合の乳化安定性を比較した。
表4の組成の水中油型乳化組成物を調製し、乳化剤以外の成分としてショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)を微粒子成分と併用した場合の乳化安定性を比較した。
表5の組成の水中油型乳化組成物を調製し、乳化剤、SAIB及び微粒子成分に、更に多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール)を組み合わせた場合の乳化安定性を比較した。
表6の処方及び製法に従って、表7に記載した量の乳清タンパク質とキサンタンガムを含有する微粒子成分懸濁液を用いた乳化香料組成物を調製した。ここで、微粒子成分懸濁液は、以下の方法により調製した。
(1)キサンタンガム(商品名:サンエースC(*))を、80℃に加熱したイオン交換水に添加し、80℃のまま10分間加熱攪拌溶解した後、室温まで冷却して、キサンタンガム水溶液を調製した。
(2)タンパク質をイオン交換水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5~7.0に調整して、タンパク質水溶液を調製した。
(3)(1)のキサンタンガム水溶液と、(2)のタンパク質水溶液を混合して、4枚羽根のスクリューで均一になるまで400rpmで10分攪拌混合した。この混合により、キサンタンガムとタンパク質の含有量が表7に記載の量に調整される。
(4)得られた溶液を9000rpmで3分間ホモミキサーによって攪拌しながら、クエン酸水でpH5.0に調整した。
表8の処方及び製法に従って、表9に記載した量のソラマメタンパク質とキサンタンガムを含有する微粒子成分懸濁液を用いた乳化香料組成物を調製した。ここで、微粒子成分懸濁液は、乳清タンパク質の代わりにソラマメタンパク質を用いた他は、試験例6と同様の方法で調製した。
表10の処方及び製法に従って、表9に記載した量のエンドウマメタンパク質とキサンタンガムを含有する微粒子成分懸濁液を用いた乳化香料組成物を調製した。ここで、微粒子成分懸濁液は、試験例6と同様の方法で調製した。
表12の処方及び製法に従って、表13に記載した種々の多糖類と乳清タンパク質を含有する微粒子成分懸濁液を用いた乳化香料組成物を調製した。ここで、微粒子成分懸濁液は、試験例6と同様の方法で調製した。
表14の処方及び製法に従って、表15のように同じ組成であるが調製時のpHが異なる微粒子成分懸濁液を用いた乳化香料組成物を調製した。ここで、微粒子成分懸濁液は、(4)のステップでpHを表15に記載した値に調整した以外は、試験例6と同様の方法で調製した。
本試験例ではカニ香料を含む種々の香料組成物を調製し、それらを用いてカニカマ(カニ風味のかまぼこ)を調製して、カニの風味の香り立ちと嗜好性を評価した。
まず、表16に記載の処方及び製法に従って香料組成物を調製した。実施例11-1に使用した微粒子成分懸濁液は、試験例6と同様の手順で乳清タンパク質0.2質量%、キサンタンガム0.15質量%を含有する水溶液を調製し、(4)でpHを5.00に調整して調製されたものを用いた。
下記の喫食方法及び評価方法に従って、得られたカニカマの香り立ち及び嗜好性を官能評価した。官能評価は、食品の研究開発に従事し、官能評価に熟練している10名からなる官能パネルにより行った。香り立ちの尺度に用いられる基準食品に添加される基準香料組成物には、比較例11-1を使用した。
試験食品を2回/秒程度の速さで咀嚼した際、咀嚼し初めから5秒後に感じる風味・香味を以下の評価基準に従って点数付けした。
(1)香り立ち
まず香料組成物として、表18の0.01~1.00質量%の基準香料組成物を含有する10種の基準食品を調製した。次に、パネリストに基準食品と試験食品を上記方法により喫食して、試験食品に最も近い香り立ちの基準食品を選び、その評点(表18に記載)をその試験食品の香り立ちの評点とした。表18から理解されるように、評点が高いほど香り立ちが良好であることを表す。10名のパネリストの評点の平均値を、その食品の香り立ちの評点とした。
食品の嗜好性は、試験対象となる食品(以下、対象食品と呼ぶ。例えば、本試験例の場合はカニカマ)の本来の風味を感じる度合いを表す。パネリストは、試験前に下記の評価尺度を理解し、パネリスト間で評点のすり合わせを行ったうえで、上記方法により試験食品を喫食して5段階で評価した。10名のパネリストの評点の平均値を、その食品の嗜好性の評点とした。
<<嗜好性の評価尺度>>
-2:対象食品の風味とは異なる風味を感じ、対象食品としては非常に好ましくない
-1:対象食品の風味が感じにくく、対象食品としては好ましくない
0:対象食品の風味が増強され、対象食品として違和感なく試食できる
1:自然な対象食品の風味が増強され、対象食品として好ましい
2:濃厚な対象食品の風味が増強され、対象食品として非常に好ましい
表16の各香料組成物を種々の量含有するカニカマの官能評価結果を表19-1に示した。また、そのパネリスト別の評点を表19-2に示した。パネリスト間の評点のバラつきを考慮しても、実施例11-1の香料組成物を含有するカニカマは、比較例の香料組成物を含有するカニカマに比べて、いずれの添加量においても顕著に優れた香り立ちと嗜好性を示した。本食品で通常使用されるオイル香料や乳化香料では、香り立ちが悪く風味が良くないが、本発明品は、香り立ちが良く濃厚な風味を増強することができる。
本試験例ではチョコレート香料を含む種々の香料組成物を調製し、更にそれらを含有するフラワーシートを折り込んだ折り込みパンを調製して、そのチョコレートの風味の香り立ちと嗜好性を評価した。
まず、表20に記載の処方及び製法に従って香料組成物を調製した。実施例12-1に使用した微粒子成分懸濁液は、試験例11と同じものを用いた。
官能評価は、基準香料組成物として比較例12-1を使用した以外は試験例11と同様の方法により行った。
表20の各香料組成物を種々の量含有する折り込みパンの官能評価結果を表22-1に示した。また、そのパネリスト別の評点を表22-2に示した。パネリスト間の評点のバラつきを考慮しても、実施例12-1の香料組成物を含有する折り込みパンは、比較例の香料組成物を含有する折り込みパンに比べて、いずれの添加量においても顕著に優れた香り立ちと嗜好性を示した。本食品で通常使用されるオイル香料や乳化香料では、香り立ちが悪く風味が良くないが、本発明品は、香り立ちが良く濃厚な風味を増強することができる。
本試験例ではピーチ香料を含む種々の香料組成物を調製し、更にそれらを含有するピーチ風味のゼリーを調製して、そのピーチ風味の香り立ちと嗜好性を評価した。
まず、表23に記載の処方及び製法に従って香料組成物を調製した。実施例13-1に使用した微粒子成分懸濁液は、試験例11と同じものを用いた。
官能評価は、基準香料組成物として比較例13-1を使用した以外は試験例11と同様の方法により行った。
表23の各香料組成物を種々の量含有するゼリーの官能評価結果を表25-1に示した。また、そのパネリスト別の評点を表25-2に示した。パネリスト間の評点のバラつきを考慮しても、実施例13-1の香料組成物を含有するゼリーは、比較例の香料組成物を含有するゼリーに比べて、いずれの添加量においても顕著に優れた香り立ちと嗜好性を示した。本食品で通常使用されるオイル香料や乳化香料では、香り立ちが悪く風味が良くないが、本発明品は、香り立ちが良く濃厚な風味を増強することができる。
Claims (6)
- (A)香料成分を含有する油相成分、
(B)(B1)HLB値が1以上11未満の乳化剤及び/又は(B2)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、並びに
(C)タンパク質及びアニオン性多糖類が複合体化した微粒子
を含有し、
前記(B1)成分を含有する場合、前記(B1)成分1質量部に対する前記(A)成分の含有量が、10~5000質量部であり、
前記(B2)成分を含有する場合、前記(B2)成分1質量部に対する前記(A)成分の含有量が、0.5~100質量部であり、
前記(C)成分1質量部に対する前記(A)成分の含有量が、1~800質量部であり、
乳化粒子のD50粒子径が、1~100μmである、
水中油型乳化組成物。 - 前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
- 前記タンパク質が、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、乳清タンパク質、大豆タンパク質、酸性可溶大豆タンパク質、エンドウマメタンパク質、ヒヨコマメタンパク質及びソラマメタンパク質からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
- 前記アニオン性多糖類が、キサンタンガム、ウェランガム、カラギナン、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、ラムザンガム、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム、ガティガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、カラヤガム、サクシノグリカン、セルロース誘導体、デンプン誘導体及び大豆多糖類からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
- 更に(D)多価アルコールを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物を含む、飲食品。
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