JP7060632B2 - 吸音遮熱カバーおよびエンジンユニット - Google Patents
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Description
従来より、自動車メーカー各社は様々な防音仕様について開発を進めており、自動車エンジン用防音カバーとしても種々のものが提案されている(例えば、特許文献1(特開2002-180845号公報)参照)が、自動車の車外騒音については上記ECEの規則51(ECE R51)に規制値が定められ、同規制値を定めたRegulation EU No.540/2014によれば、2016年7月迄に72dB(フェーズ1)、2020年7月迄に70dB(フェーズ2)、2024年7月迄に68dB(フェーズ3)と段階を追って厳しくなる基準が施行され、車外騒音の規制レベルを最終的には2016年7月までの基準に対して4dB、音圧エネルギーとして約1/2.5に低減するという大変厳しい要求がなされている。
しかしながら、本発明者等がさらに検討したところ、エンジン上に防音用金属板および遮熱金属板を順次載置した場合には、エンジンルーム内で反響する音も遮熱金属板によって反射される結果、防音用金属板による防音効果(吸音効果)が著しく低減し、また、必ずしも十分な遮熱性を発揮し得ないことが判明した。
(1)表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、
前記防音用金属板の厚みが0.3~1.0mmであり、
前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01~7.1mm2である
ことを特徴とする吸音遮熱カバー、
(2)前記防音用金属板の開孔率が0.01~20%である上記(1)に記載の吸音遮熱カバー、
(3)前記無機繊維マットが、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびロックウール繊維から選ばれる一種以上の無機繊維を含む上記(1)または(2)に記載の吸音遮熱カバー、
(4)前記遮熱金属板の厚さが0.1~1.0mmである上記(1)~(3)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、
(5)厚さが0.7~22mmである上記(1)~(4)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、
(6)前記吸音遮熱カバーが自動車エンジン用吸音遮熱カバーである上記(1)~(5)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、および
(7)自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う上記(6)に記載の吸音遮熱カバーとを有することを特徴とするエンジンユニット
を提供するものである。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性および優れた新規な吸音遮熱カバーおよび係る吸音遮熱カバーを有するエンジンユニットを提供することができる。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、
前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01~7.1mm2であることを特徴とするものである。
上記金属板の構成材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、金、銀、銅、鉄、モリブデン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、軽量化が求められる場合はアルミニウムが好ましく、耐腐食性が求められる場合はステンレス鋼が好ましい。
図2に例示するように、本発明に係る吸音遮熱カバー1は、防音用金属板2が表面に複数の貫通孔pを有することにより、被覆対象物側から発せられた音s1を吸音遮熱カバー1の内部に取り込みやすくなり、貫通孔pを介して吸音遮熱カバー1内部に伝搬した音のエネルギーが、吸音遮熱カバー1内部に設けた無機繊維マット3によってマットを構成する繊維の振動エネルギーに変換され、吸音することにより、防音性能を好適に発揮することができる。
防音用金属板に設けられる貫通孔の上面視したときの開孔部形状が円形状である場合、その直径は、0.1~3.0mmであることが好ましく、0.1 ~2.0mmであることがより好ましく、0.1~0.5mmであることがさらに好ましい。
防音用金属板に設けられる貫通孔の全体形状も特に制限されず、円柱状、多角柱状または円錐台状であることが好ましく、円柱状であることがより好ましい。
開孔率(%)={防音用金属板に設けた各貫通孔の開口面積の総和(mm2)/防音用金属板の片側主表面積(mm2)}×100
により算出される値を意味する。
上記繊維径を有する無機繊維は、例えば遠心法または火炎法で製造することができる。
上記嵩密度は、無機繊維マットの構造および厚み等に応じて、所望の吸音性を有するものから適宜選択すればよい。
無機繊維マットの目付が上記範囲内にあることにより、軽量で所望形状を有する吸音遮熱カバーを容易に提供することができる。
上記金属板の構成材料は、上述した防音用金属板と同様の材料を挙げることができ、具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、金、銀、銅、鉄、モリブデン等から選ばれる一種以上が挙げられ、軽量化が求められる場合はアルミニウムが好ましく、耐腐食性が求められる場合はステンレス鋼が好ましい。
遮熱金属板が防音用金属板に対応した形状を有することにより、遮熱金属板および防音用金属板を一定距離離間させた状態で容易に保持することができ、吸音遮熱カバー全体の防音性能および耐熱性を容易に均一化することができる。
遮熱金属板に設けられる貫通孔の全体形状も特に制限されず、円柱状、多角柱状または円錐台状であることが好ましい。
開孔率(%)={遮熱金属板に設けた各貫通孔の開口面積の総和(mm2)/遮熱金属板の片側主表面積(mm2)}×100
により算出される値を意味する。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、厚さが薄くても十分な吸音性および遮熱性を発揮することができる。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、例えば、従来の自動車エンジン用防音カバーに代わる自動車エンジン用吸音遮熱カバーとして好適に使用することができる。
本発明に係る吸音遮熱カバーを自動車エンジン用吸音遮熱カバーとして使用する場合、例えば、エンジンの排気側壁面および上面の少なくとも一部に配置することにより、好適な吸音特性を容易に発揮することができる。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性および遮熱性に優れた新規な吸音遮熱カバーを提供することができる。
本発明に係るエンジンユニットは、自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う本発明に係る吸音遮熱カバーとを有することを特徴とするものである。
本発明に係るエンジンユニットにおいて、上記吸音遮熱カバーは、防音用金属板が自動車用エンジンの少なくとも一部に対向するように配置される。
また、本発明に係るエンジンユニットにおいて、自動車用エンジンやエンジンルームは、公知のものを適宜採用することができる。
このため、本発明によれば、耐熱性を有し、厚さが薄くても十分な防音性能を有する吸音遮熱カバーを有する新規なエンジンユニットを提供することができる。
(1)防音用金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)に孔加工を施した金属板(孔径1.0mm、開口面積0.8mm2、開孔率0.90%)と、(2)無機繊維マットとして、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m2)になるように切り出したガラスマット(嵩密度0.1g/cm3、厚さ6mm)と、(3)遮熱用金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)に孔加工を施した金属板(孔径0.5mm、開口面積0.2mm2、開孔率0.20%)とを、この順番で順次配置して、厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得た。
実施例1で得られた吸音遮熱カバーを測定サンプルとし、日本音響エンジニアリング(株)製残響室Ab-Lossを用いて吸音性を評価した。
図3に垂直断面で示すように、防音用金属板2と、無機繊維マット3と、遮熱金属板4とをこの順番で積層した上記吸音遮熱カバー1を、上記防音用金属板2が上部側に露出するように床面f上に長さ10mmのスペーサーsを介して配置し(背後空気層Aを10mm設けた状態とし)、上記吸音遮熱カバー1の両側面に各々L字状のアルミ製アングルLでシールした状態において、吸音率(残響室法吸音率)を測定した。
吸音率は、防音用金属板の上部側から音Nを入射させたときに400Hz~1000Hzの範囲におけるISO354(2003)に基づくインパルス応答積分法を用いて測定した。結果を図4および表1に示す。
実施例1で得られた吸音遮熱カバーを測定サンプルとし、以下に示す方法により遮熱性を評価した。
図5に垂直断面で示すように、防音用金属板2と、無機繊維マット3と、遮熱金属板4とをこの順番で積層した上記吸音遮熱カバー1を、上記防音用金属板2が上部側に露出するように床面f上に長さ10mmのスペーサーsを介して配置し(背後空気層Aを10mm設けた状態とし)、上記吸音遮熱カバー1の両側面に熱源として各々ヒーターHを配置した。
室温(20℃)条件下、上記ヒーターH.Hにより吸音遮熱カバー1を700℃で30分間加熱したときに、吸音遮熱カバー1の上面から20cm上部における温度を測定したところ、54℃であった。結果を表1に示す。
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を0.5mm、開口面積を0.2mm2、開孔率を0.06%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性を評価した。結果を図4に示す。
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を2.0mm、開口面積を3.1mm2、開孔率を0.23%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性を評価した。結果を図4に示す。
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を3.0mm、開口面積を7.1mm2、開孔率を8.00%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を図4および表1に示す。
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を1.0mm、開口面積を0.8mm2、開孔率を0.90%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。結果を表1に示す。
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を2.0mm、開口面積を3.1mm2、開孔率を3.60%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。結果を表1に示す。
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を3.0mm、開口面積を7.1mm2、開孔率を8.00%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。
金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)を得、吸音遮熱カバーに代えて上記金属板を用いた以外は実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を図4および表1に示す。
無機繊維マットとして、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m2)になるように切り出したガラスマット(嵩密度0.1g/cm3、厚さ6mm)を得、吸音遮熱カバーに代えて上記無機繊維マットを用いた以外は実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を図4および表1に示す。
一方、図4および表1より、比較例1および比較例2で各々得られた金属板および無機繊維マットは、いずれも、低周波領域である400~1000Hz程度の周波数帯における音圧を十分に抑制し得ず、また、十分な遮熱性を有さないものであることが分かる。
2 防音用金属板
3 無機繊維マット
4 遮熱金属板
b、p 貫通孔
A 背後空気層
s スペーサー
L アルミ製アングル
f 床
H ヒーター
Claims (7)
- 表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、
前記防音用金属板の厚みが0.3~1.0mmであり、
前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01~7.1mm2である
ことを特徴とする吸音遮熱カバー。 - 前記防音用金属板の開孔率が0.01~20%である請求項1に記載の吸音遮熱カバー。
- 前記無機繊維マットが、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびロックウール繊維から選ばれる一種以上の無機繊維を含む請求項1または請求項2に記載の吸音遮熱カバー。
- 前記遮熱金属板の厚さが0.1~1.0mmである請求項1~請求項3のいずれかに記載の吸音遮熱カバー。
- 厚さが0.7~22mmである請求項1~請求項4のいずれかに記載の吸音遮熱カバー。
- 前記吸音遮熱カバーが自動車エンジン用吸音遮熱カバーである請求項1~請求項5のいずれかに記載の吸音遮熱カバー。
- 自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う請求項6に記載の吸音遮熱カバーとを有することを特徴とするエンジンユニット。
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