JP7057135B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7057135B2
JP7057135B2 JP2018002735A JP2018002735A JP7057135B2 JP 7057135 B2 JP7057135 B2 JP 7057135B2 JP 2018002735 A JP2018002735 A JP 2018002735A JP 2018002735 A JP2018002735 A JP 2018002735A JP 7057135 B2 JP7057135 B2 JP 7057135B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin composition
polyester resin
poly
p3ha
weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018002735A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019119839A (ja
Inventor
仁之 指輪
竜司 福田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp filed Critical Kaneka Corp
Priority to JP2018002735A priority Critical patent/JP7057135B2/ja
Publication of JP2019119839A publication Critical patent/JP2019119839A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7057135B2 publication Critical patent/JP7057135B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を含むポリエステル樹脂組成物、及び、それを成形してなる成形体に関する。
従来、プラスチックは加工や使用の容易性、再利用の困難性、衛生上の問題などの観点から使い捨てされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされている。そのような問題としては、例えばゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷などが挙げられる。
近年、上述のプラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。一般的に生分解性プラスチックは、1)ポリヒドロキシアルカノエート等の微生物生産系脂肪族ポリエステル、2)ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、3)澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルの多くは嫌気性分解しないため廃棄時の分解条件に制約があり、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題がある。また、澱粉は非熱可塑性で脆く、耐水性に劣るといった問題がある。
一方、ポリヒドロキシアルカノエートのなかでもポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下P3HAと略すことがある)は好気性、嫌気性何れの環境下での分解性にも優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、植物原料を使用して微生物により生産され得るプラスチックであって高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素を増大させずカーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。該P3HAは脂肪族ポリエステルに分類されるが、先に述べた化学合成系脂肪族ポリエステルや天然高分子とはポリマーの性質が大きく異なり、嫌気性下で分解する性質や、耐湿性に優れる点、高分子量化が可能である点は特筆すべき性能である。
一方、P3HAは加工性に関して依然改善の余地がある。主に改善が必要であるのは、結晶化速度が遅いことに由来する加工性の悪さである。このような結晶化速度を速くする方法として種々検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010-47732号公報
しかしながら、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の結晶核剤に関する従来技術は、結晶化速度向上、ひいては成形性改良の観点では、依然、改善の余地があるのが現状である。
したがって、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を含む組成物であって、固化速度が改善された樹脂組成物、及び、それを成形してなる成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)に対し、特定の化合物を配合することで、従来よりも速い固化速度でポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を固化させることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば下記の発明を提供する。
[1]ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)と、フェニルアラニン及びアスパラギン酸のいずれか一方若しくは両方を構成アミノ酸とするジペプチド類とを含む、ポリエステル樹脂組成物。
[2]ジペプチド類がアスパルテームである、[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3]ジペプチド類の含有量が、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部に対して0.05~15重量部である、[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4]ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物。
[5]さらにペンタエリスリトールを含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物。
[6]ペンタエリスリトールの含有量が、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部に対して0.1~3重量部である、[5]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明のポリエステル樹脂組成物は上記構成を有するため、固化速度が速く、射出成形、フィルム成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡などの各種加工における加工性、加工速度が改善され、優れた生産性で成形体を製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下、「P3HA」と称する場合がある)と、フェニルアラニン及びアスパラギン酸のいずれか一方若しくは両方を構成アミノ酸とするジペプチド類(以下、単に「ジペプチド類」と称する場合がある)とを必須成分として含む。
(P3HA)
本発明で用いられるP3HAとは、モノマー単位として3-ヒドロキシアルカン酸単位を含有するポリエステルであり、特に、式:[-CHR-CH-CO-O-](式中、RはC2n+1で表される直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含むポリエステルが好ましい。該ポリエステルは単独重合体であってよいし、前記繰り返し単位を2種類以上含む共重合体であってもよい。このような共重合体は、単独重合体と比較して融点が低くなり得るために、溶融時の温度を低くすることができ、組成物の変質を抑制できるため好ましい。
また、P3HAは、モノマー単位として3-ヒドロキシアルカン酸単位のみを含有するポリエステルであってもよいが、モノマー単位として3-ヒドロキシアルカン酸単位と共に、他のヒドロキシアルカン酸単位(例えば、4-ヒドロキシアルカン酸単位)を含有する共重合ポリエステルであってもよい。前記共重合ポリエステルでは、全ヒドロキシアルカン酸単位のうち3-ヒドロキシアルカン酸単位が占める含有割合は特に限定されないが、例えば50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましく、90モル%以上が最も好ましい。
本発明におけるP3HAの具体例としては、例えば、PHB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、又はポリ3-ヒドロキシ酪酸〕、PHBH〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、又はポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。これらのなかでも、工業的に生産が容易であるものとして、PHB、PHBH、PHBV、P3HB4HBが好ましく、PHBHがより好ましい。
P3HAは、柔軟性と強度の観点から、3-ヒドロキシブチレート単位を含む単独重合体又は共重合体が好ましい。なかでも、柔軟性と強度のバランスの観点から、P3HAに含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の平均組成比が80モル%~99モル%を示すものがより好ましく、85モル%~97モル%を示すものがさらに好ましい。3-ヒドロキシブチレート単位の平均組成比が80モル%未満であると剛性が不足する傾向があり、99モル%より多いと柔軟性が不足する傾向がある。
本発明において、P3HAは1種類のみを単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、P3HAとしてPHBH等の共重合体を使用する場合には、3-ヒドロキシブチレート単位等のモノマー単位の平均組成比が異なる2種類以上の共重合体を混合して使用することもできる。
本発明で使用するP3HAの分子量は、最終物の成形体が目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。しかし、分子量が低いと成形体の強度が低下する傾向があり、逆に高いと加工性が低下し、加工が困難になる場合があるので、それらを勘案して分子量を決定すればよい。この観点から、本発明で使用するP3HAの重量平均分子量の範囲は、50,000~3,000,000が好ましく、100,000~1,500,000がより好ましい。なお、ここでの重量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算の分子量として測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
本発明で使用するP3HAのガラス転移温度は特に限定されないが、-30~10℃が好ましい。本発明において、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析で10℃/minの昇温速度にて測定される。
P3HAを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、P3HA産生能を有する微生物によりP3HAを産生させる方法が挙げられる。そのような微生物としては特に限定されないが、例えば、PHB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumの他、カプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等が挙げられる。また、3-ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体生産菌としては、PHBVおよびPHBH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、PHBH生産菌としては、PHBHの生産性を上げるためにPHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bacteriol.,179,p4821-4830(1997))が挙げられる。
これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HAを蓄積させ、そのP3HAを回収することでP3HAを製造することができる。用いる微生物にあわせて、基質の種類を含む培養条件を最適化することができる。また、上掲した微生物以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を培養してP3HAを製造することもできる。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるP3HAの含有量は、特に限定されないが、10~99重量%が好ましく、より好ましくは30~98重量%、さらに好ましくは50~98重量%である。P3HAの含有量を10重量%以上とすることにより、組成物全体としてのバイオベース度や生分解性がいっそう向上する傾向がある。一方、P3HAの含有量を99重量%以下とすることにより、相対的に前記ジペプチド類の量が確保され固化速度が向上したり、他の樹脂を増量することで組成物全体としての機械特性等がいっそう向上する傾向がある。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、P3HA以外の樹脂(高分子)を含んでいてもよい。P3HA以外の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート共重合体(PBAT)、ポリプリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート共重合体(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)等の生分解性を有するポリエステル樹脂;デンプン、セルロースなどの天然高分子などを配合することもできる。また、上記以外の熱可塑性樹脂を必要に応じて配合することもできる。
(ジペプチド類)
本発明におけるジペプチド類は、上述のように、フェニルアラニン及びアスパラギン酸のいずれか一方若しくは両方を構成アミノ酸とするジペプチド類である。ジペプチド類とは、ジペプチドとその誘導体を含む。ジペプチドとは天然由来のアミノ酸(構成アミノ酸)2分子がペプチド結合により結合した化合物であり、天然由来の構成アミノ酸とはグリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、L-セレノシステイン、L-ピロリシンを指す。ジペプチドとしては、より具体的には、例えば、L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニン、L-フェニルアラニル-L-アスパラギン酸、L-アスパラギル-L-アスパラギン酸といった構成アミノ酸がフェニルアラニン及び/又はアスパラギン酸のみであるジペプチド;フェニルアラニンとその他のアミノ酸(アスパラギン酸及びフェニルアラニン以外のアミノ酸)からなるジペプチド;アスパラギン酸とその他のアミノ酸からなるジペプチドが挙げられる。
上述のジペプチドの誘導体とは、例えば上記ジペプチドのカルボキシル基末端側がメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルで置換されたものや、アミノ基末端側がベンジルオキシカルボニル基(CbzあるいはZ基)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)で置換されたもの等が挙げられる。ジペプチド誘導体の中でも、特に、L-フェニルアラニル-L-アスパラギン酸のメチルエステル(L-フェニルアラニンのメチルエステルとアスパラギン酸のジペプチド)であるアスパルテームが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物においてジペプチド類は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
使用するジペプチド類は、予め粉砕等により平均粒径を小さくしてから配合(添加)することにより、結晶核剤としての効果をより高めることができる。平均粒径としては0.1~500μmが好ましく、より好ましくは0.5~50μmである。該平均粒径(d50)は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定できる。
ジペプチド類の粒径を小さくする方法としては、乳鉢による粉砕のほか、衝突板式または粉体衝突式のジェットミル、ビーズミル、ハンマーミル等従来公知の方法が使用できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるジペプチド類の含有量は、特に限定されないが、結晶化速度向上および得られる樹脂組成物の物理的性質のバランスの観点から、P3HA100重量部に対し、0.05~15重量部が好ましく、より好ましくは0.05~10重量部であり、さらに好ましくは0.05~5重量部である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述した成分以外のその他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料・顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、離型剤、無機充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、塩化アンモニウム、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維等)、有機充填材(架橋高分子ポリスチレン、ロジン系金属塩等;人毛、羊毛、竹繊維、パルプ繊維の有機繊維等)、帯電防止剤、防カビ剤、撥水剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤、結晶核剤等が挙げられる。その他の成分の含有量は特に限定されず、適宜調整可能である。その他の成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
特に、本発明のポリエステル樹脂組成物は、さらにペンタエリスリトールを含有することが好ましい。ペンタエリスリトールを含有することにより、ポリエステル樹脂組成物の固化速度が著しく向上する傾向がある。ペンタエリスリトールは、通常、一般に入手可能であり、例えば試薬品や工業品を使用することができる。試薬品としては、例えば、和光純薬工業株式会社、シグマ・アルドリッチ社、東京化成工業株式会社、メルク社等の製品を使用することができる。工業品としては、例えば、広栄化学工業株式会社の製品(商品名:ペンタリット)や東洋ケミカルズ株式会社の製品等を使用することができる。
なお、一般に入手できる製品の中には、不純物としてペンタエリスリトールが脱水縮合して生成するジペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトール等のオリゴマーが含まれているものがある。当該オリゴマーはP3HAの結晶化促進効果は有しないが、ペンタエリスリトールによる結晶化促進効果を阻害しない。従って、オリゴマーが含まれていてもよい。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるペンタエリスリトールの含有量は、特に限定されないが、0.1~3重量部が好ましく、より好ましくは0.5~2.5重量部である。含有量を0.1重量部以上とすることにより、固化速度がいっそう向上する傾向がある。一方、含有量を3重量部以下とすることにより、固化速度がいっそう向上したり、成形性が向上する傾向がある。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては特に限定されないが、例えば、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤が好ましく、P3HAとの相溶性に優れる点から、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。エーテル系可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。エステル系可塑剤としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、n-ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、1、2-プロピレングリコール、1、3-プロピレングリコール、1、3-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。また、上記脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族アルコールの2種以上の組み合わせを含む共重合体(ジ-コポリマー、トリ-コポリマー、テトラ-コポリマーなど)、または、これらのホモポリマーおよびコポリマーから選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられる。更に、ヒドロキシカルボン酸のエステル化物も挙げられる。上記可塑剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。可塑剤の含有量は適宜選択可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸アミドを含有していてもよい。本発明のポリエステル樹脂組成物において脂肪酸アミドは、結晶核剤として、又は、内滑剤及び外滑剤として作用し得ると考えられる。
脂肪酸アミドとしては、式:R-(C=O)-NRで表される化合物が挙げられる。ここで、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。当該炭化水素基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。また、当該炭化水素基は、置換基を有していなくてもよいし、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の置換基を有してもよい。さらに、RとR又はRとが結合して環状構造を形成してもよい。
脂肪酸アミドの具体例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド(EA)、ベヘン酸アミド(BA)、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、ヘキサンメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪酸アミドは1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂肪酸アミドとしては、100~150℃(特に100~120℃)程度の融点を持つ化合物が好ましい。このような融点を示す脂肪酸アミドを、融点が90℃以上のP3HAに対して配合すると、当該P3HAの融点よりも10~30℃高い温度での成形加工において結晶化速度が向上し、成形加工性を改善することができる。
脂肪酸アミドのうち、前記式においてRが炭素数1~30(特に炭素数10~20)の脂肪族炭化水素基を表し、R及びRが水素原子を表す1級アミドが好ましい。なかでも、ベヘン酸アミド(融点114℃)、ステアリン酸アミド(融点102℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点147℃)、ヒドロキシステアリン酸アミド(107℃)、メチロールベヘン酸アミド(融点110℃)が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物における脂肪酸アミドの含有量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、より好ましくは0.2~5重量部、さらに好ましくは0.5~3重量部である。脂肪酸アミドの含有量を上記範囲に制御することにより、ポリエステル樹脂組成物の成形加工性がいっそう向上する傾向がある。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述のように溶融混練した後、それをストランド状に押し出してからカットして、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの粒子形状のペレットとすることができる。得られたペレットを、40~80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法で成形加工でき、任意の成形体を得ることができる。成形加工方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、ブロー成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。また、本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他の目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH-PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、押出成形機を用いてペレット、または、フィルム状、シート状、又は繊維状等の成形体に加工しても良いし、射出成形により所定形状の成形体に加工することも可能である。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物が発泡剤を含有する場合、本発明の成形体は発泡性の成形体であってもよいし、加工後に発泡させることで成形発泡体としてもよい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は各種形状の成形体に加工することができる。該成形体としては、例えば、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品が挙げられる。また、本発明の成形体は、その物性を改善するために、本発明の樹脂組成物とは異なる材料から構成される成形体(例えば、繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等)と複合化することもできる。本発明の成形品の用途は特に限定されず、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
次に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
<P3HA>
各実施例又は比較例では、P3HAとして、PHBH:ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を使用した。このPHBHは、PHBH生産菌を培養した後、菌体から樹脂成分を回収して得たもので、HH率:PHBH中の3-ヒドロキシヘキサノエートのモル分率(mol%)は11mol%、Mwは67.2万である。なお、PHBH生産菌としては、Alcaligenes eutrophusに、Aeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(J.Bacteriol.,179,4821(1997))を使用した。
<添加剤>
アスパルテームは東京化成製品(特級試薬)を、グリシル-L-ロイシン及びグリシルグリシンはいずれも和光純薬製品(特級製品)を使用した。ペンタエリスリトールは広栄化学工業株式会社製品(商品名:ペンタリット)を使用した。
<分子量測定>
PHBHの重量平均分子量MwをGPC測定により求めた。GPC装置はLC-10Aシステム(島津製作所製)を使用し、カラムはGPCK-806M(昭和電工製)を使用し、カラム温度は40℃とした。対象物質3mgをクロロホルム2mlに溶解したものを、10μl注入して、ポリスチレン換算によりMwを求めた。
(実施例1)
ポリエステル樹脂組成物の製造は、DSM社製小型混練機XPloreシリーズMC5を用いて実施した。まず、表1に示すように、P3HA(PHBH)100重量部に対して添加剤1(アスパルテーム)1.5重量部をドライブレンドして、粉体の混合物を得た。この粉体混合物を、設定温度180℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間3分の条件で溶融混練した後、混練機から吐出した直後の溶融物を約55℃の温浴に投入し、溶融物を固化させてポリエステル樹脂組成物を製造した。
ポリエステル樹脂組成物を製造する際に、温浴に投入してから溶融物が固化するのに要した時間を「固化時間」として測定した。結晶化が速いほど固化時間が短くなり、固化時間が短いほど固化特性に優れていることを意味する。固化特性に優れていることは、成形加工の際に迅速に固化させることができ、成形体を優れた生産性で製造できる(即ち、成形加工性に優れる)ことを意味する。同じ手順で固化時間の測定を3回行い、その平均値を表に示す。
(実施例2~5、比較例1~7)
添加剤の種類及び配合量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物の製造及び固化時間の測定を実施した。
Figure 0007057135000001
以上の結果から、アスパルテームとペンタエリスリトールを併用して添加した実施例1では、他の実施例、比較例よりもP3HA(PHBH)の固化時間が短くなり、優れた成形加工性を有する樹脂組成物が得られることが確認された。このような相乗効果が得られたのは、アスパルテームとペンタエリスリトールが各々異なる相互作用でP3HA(PHBH)に対する結晶核剤として作用したためと推測される。

Claims (7)

  1. ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)と、フェニルアラニン及びアスパラギン酸の両方を構成アミノ酸とするジペプチド類とを含む、ポリエステル樹脂組成物。
  2. ジペプチド類がアスパルテームである、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. ジペプチド類の含有量が、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部に対して0.05~15重量部である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. さらにペンタエリスリトールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
  6. ペンタエリスリトールの含有量が、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部に対して0.1~3重量部である、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。
JP2018002735A 2018-01-11 2018-01-11 ポリエステル樹脂組成物 Active JP7057135B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018002735A JP7057135B2 (ja) 2018-01-11 2018-01-11 ポリエステル樹脂組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018002735A JP7057135B2 (ja) 2018-01-11 2018-01-11 ポリエステル樹脂組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019119839A JP2019119839A (ja) 2019-07-22
JP7057135B2 true JP7057135B2 (ja) 2022-04-19

Family

ID=67306069

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018002735A Active JP7057135B2 (ja) 2018-01-11 2018-01-11 ポリエステル樹脂組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7057135B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2021246433A1 (ja) 2020-06-02 2021-12-09
KR20230018416A (ko) 2020-06-02 2023-02-07 미쯔비시 가스 케미칼 컴파니, 인코포레이티드 가열에 의한 전처리를 수반하는 고분자 성형물의 제조방법

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010047732A (ja) 2008-08-25 2010-03-04 Kaneka Corp 樹脂組成物
WO2014068943A1 (ja) 2012-10-29 2014-05-08 株式会社カネカ 脂肪族ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体
JP2017101256A (ja) 2012-08-03 2017-06-08 株式会社カネカ ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3243334B2 (ja) * 1993-06-10 2002-01-07 テルモ株式会社 ヒドロキシアルカノエート重合体組成物

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010047732A (ja) 2008-08-25 2010-03-04 Kaneka Corp 樹脂組成物
JP2017101256A (ja) 2012-08-03 2017-06-08 株式会社カネカ ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体
WO2014068943A1 (ja) 2012-10-29 2014-05-08 株式会社カネカ 脂肪族ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019119839A (ja) 2019-07-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7652085B2 (en) Biodegradable resin composition
JP4112568B2 (ja) 生分解性樹脂組成物
JP5183203B2 (ja) 生分解性樹脂組成物及びその成形体
JP5019554B2 (ja) 生分解性ポリエステル系樹脂組成物
US20200384745A1 (en) Molded article, sheet and container, and tubular article, straw, cotton swab, and stick for balloons
WO2012023589A1 (ja) 樹脂組成物
WO2020195550A1 (ja) ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂組成物、その成形体及びフィルム又はシート
JP2019119840A (ja) 脂肪族ポリエステル樹脂組成物
JP5264487B2 (ja) 生分解性樹脂組成物およびその成形体
JP2009221337A (ja) 樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルム
JP7057135B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JP2014156539A (ja) ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を成形してなるフィルム、及び該フィルムを成形してなる袋
JP6102315B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物及び該ポリエステル樹脂組成物を成形してなるフィルム
JP2008031456A (ja) 脂肪族芳香族ポリエステル及びその樹脂組成物
WO2022065182A1 (ja) 射出成形用樹脂組成物および射出成形体
JP7090523B2 (ja) 樹脂組成物及び成形体
JP4870037B2 (ja) 生分解性樹脂組成物
WO2022075232A1 (ja) 樹脂組成物、及びその成形体
JP5599304B2 (ja) 樹脂組成物
JP2004352987A (ja) 水蒸気バリヤー性が改善された生分解性フィルムおよび水蒸気バリヤー性のコントロール方法
JP2004331913A (ja) 生分解性ポリエステル系樹脂組成物の製造方法
JP7218650B2 (ja) ポリエステル系樹脂組成物及び成形品
JP6102314B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物及び該ポリエステル樹脂組成物を成形してなるフィルム
JP2006045366A (ja) ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)組成物およびその成形体
JP7106936B2 (ja) 成形体、シート及び容器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201125

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210921

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20211006

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211014

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220329

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220407

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7057135

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150