JP5264487B2 - 生分解性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、生分解性であり、植物由来のポリマーを含む組成物とその成形体に関する。より詳しくは、生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂、特に生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体と特定の可塑剤からなる樹脂組成物、および、その成形体に関する。好ましくは、生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂、特に3−ヒドロキシアルカノエート共重合体と特定の可塑剤、および、前記共重合体よりも高い融解温度を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエートからなる樹脂組成物、並びに、その成形体に関する。
従来、プラスチックは加工性や使用しやすい特性を有するが、一方で、再利用の困難さ、衛生上の問題などから使い捨てにされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされており、ゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている。近年、プラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
また、これら生分解性プラスチックは植物由来であり、空気中の二酸化炭素を吸収し、固定化する。これら植物由来の生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素はもともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、重要視する傾向となっている。二酸化炭素固定化は地球温暖化防止に効果があることが期待され、特に二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書に対し、2003年8月にロシアで批准に向けた議会審議が承認されたため、議定書の発効が確実味をおびてきており、二酸化炭素固定化物質は非常に注目度が高く、積極的な使用が望まれている。
一方、芳香族ポリエステルは、汎用ポリマーとして大量に生産、消費されているが、生分解性ではなく、また、二酸化炭素の固定化、地球温暖化防止という観点においても、化石燃料から生産されることから、地中に固定化されていた二酸化炭素を大気中に放出することになり、カーボンニュートラルという観点で、好ましい材料ではない。
生分解性であり、またカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとして脂肪族ポリエステル系樹脂が注目されており、特にポリ乳酸系樹脂、ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(以下、「PHA」と称する場合がある)、さらにはポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート](以下、「PHBH」と称する場合がある)等が注目されている。
そのなかでも、特にポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]は、結晶性による高耐熱性および、共重合成分である3−ヒドロキシヘキサノエートによる柔軟性、耐衝撃性、高い引張伸び性を併せ持ち、物性バランスのとれた樹脂材料として注目されている。
しかし、PHAに対しては、さらに高い耐衝撃性、引張伸び性、成形性が求められており、また、室温で経時変化することに対する改善が求められている。
これに対して、特定の可塑剤の添加による改善も提案されているが(特許文献1〜3)、それらはブリードアウト性、揮発性の改善が十分ではなく、また、生分解性ポリマーとしてポリ乳酸を中心とするものであり、さらに、経時変化に関する改善効果は全く言及されていない。
また、PHAの成形加工性を改善するために、マトリックスであるPHAに対して、核剤としてより融解温度の高い別のPHAを添加することが提案されているが(特許文献4)、物性の経時変化が大きく、引張伸び特性も低いレベルのものであった。
特公平7−68443号公報 特表2005−501927号公報 特開2002−80703号公報 特表平8−510498号公報
本発明は、上記課題を解決し、地球上の二酸化炭素を積極的に固定化して得られる植物由来のポリマーを用いて、特に耐衝撃性、引張伸び特性、耐熱性、表面性(ブリード性)、成形性等に優れ、それらの経時変化が少ない樹脂組成物および、その成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、生分解性であり、地球上の二酸化炭素を積極的に固定化して得られる植物由来ポリマーである3−ヒドロキシアルカノエート共重合体に、特定の可塑剤を特定の割合で混合することにより、耐衝撃性、引張伸び特性、耐熱性、表面性、成形性等に優れ、それらの経時変化が少ない樹脂組成物、並びに成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の態様は、構造式(1):[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基を表し、n=1〜15の整数である。)で示される繰り返し単位からなる生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対して、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100〜50重量%およびモノグリセロールエステル0〜50重量%からなる可塑剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
本態様においては、更に、前記共重合体(A)の融解温度Tm1より高い融解温度Tm2を有する生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)を含有し、前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の融解温度Tm2が、Tm2≧Tm1+5℃の条件を満たし、かつ、前記樹脂組成物が、前記共重合体(A)100重量部に対して、前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)0.1〜30重量部を含有することが好ましい。
また、前記共重合体(A)は、3−ヒドロキシブチレートの繰り返し単位と3−ヒドロキシヘキサノエートの繰り返し単位からなるポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]を主成分とすることが好ましく、より好ましくはポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]である。
また、前記共重合体(A)の分子量は、重量平均分子量で30万〜300万であることが好ましい。
さらに、前記ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]の繰り返し単位の構成比が、3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位=99/1〜80/20(mol/mol)であることが好ましい。
さらに、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルが、アセチル化率50%以上であるジグリセロール酢酸エステルおよびトリグリセロール酢酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、モノグリセロールエステルは、炭素数が8以上の脂肪酸を構成脂肪酸とするジアセチルモノアシルグリセロールであることが好ましい。
さらに、前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)は、3−ヒドロキシブチレート単位を90モル%以上含むことが好ましく、ポリ3−ヒドロキシブチレートであることがより好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における生分解性ポリマーとしては、嫌気性下で分解する性質や、耐湿性に優れる点、高分子量化が可能である点から、構造式(1):[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。)で示される繰り返し単位からなる生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)が用いられる。
本発明における生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)の代表例としては、例えば、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレエート]、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシオクタノエート]、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシデカノエート]等があげられる。これらの中でも、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]を主成分とすることが好ましい。本明細書において、「ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]を主成分とする」とは、共重合体(A)のうち、70%以上がポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]であることを示す。ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]の割合が、90%以上である共重合体(A)がより好ましい。更に好ましくはポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]のみであり、微生物によって生産される共重合体が好ましい。
上記微生物としては、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038、原寄託FERM P−15786より移管)(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等が挙げられる。
ここで、生分解性ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]とは、3−ヒドロキシブチレートの繰り返し単位および3−ヒドロキシヘキサノエートの繰り返し単位を主成分とする共重合体の総称として用いるものである。該共重合体は、3−ヒドロキシブチレートおよび3−ヒドロキシヘキサノエートを主成分とするものである限り、上述のような他の単量体成分を含んでもよい。また、該共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合等のいずれの共重合方法を適用してもよい。
本発明における生分解性ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]の繰り返し単位の構成比としては、3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位=99/1〜80/20(mol/mol)であることが好ましく、98/2〜82/18(mol/mol)であることがより好ましく、97/3〜85/15(mol/mol)であることがさらに好ましい。なお、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]の繰り返し単位の構成比に関しては、HH比率と略する場合がある。
本発明の生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)としては、耐衝撃性や引張伸び特性の面から、30万〜300万が好ましく、40万〜250万がより好ましく、50万〜200万がさらに好ましい。共重合体(A)の重量平均分子量が30万未満では、機械物性が劣る場合があり、300万を超えると、加工が難しくなる場合がある。
なお、生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)の重量平均分子量の測定方法は特に限定されないが、本明細書においては、クロロホルムを移動相として、システムとしてウォーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いることにより、ポリスチレン換算での分子量として求めることができる。
本発明において使用される可塑剤(B)は、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100〜50重量%およびモノグリセロールエステル0〜50重量%からなる可塑剤である。
本発明の樹脂組成物に、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルを主体とする可塑剤(B)を含有させることにより、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルが、前記共重合体(A)に対する相溶性に特に優れるため、可塑剤のブリードアウトが少なく、揮発性成分の発生も少ない樹脂組成物を得ることができる。
本発明において用いられるアセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルは、通常、ポリグリセロールに無水酢酸を反応させてアセチル化し、副生する酢酸を除去する方法が簡便な製造方法であるが、特にその製造方法を限定するものではない。
本発明に用いられるアセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルにおいて、ポリグリセロールにおけるグリセロール単位の繰り返し数nとしては、n=2〜5が好ましく、n=2がさらに好ましい。
グリセロール単位の繰り返し数がn=2であるジグリセロール酢酸エステルの場合、アセチル化率50%以上のものとしては、ジエステル、トリエステル或いはテトラエステルの単独体またはその混合物があげられるが、前記共重合体(A)との相溶性等の点から、ジエステルおよびトリエステルの単独体またはその混合物が好ましい。
なお、本発明におけるアセチル化率とは、ポリグリセロールの水酸基に対する酢酸のエステル化の度合いを意味し、次式(1)により算出される。
アセチル化率=エステル価/(エステル価+水酸基価)×100 (1)
ここで、エステル価=ケン化価−酸価を表す。
ポリグリセロール酢酸エステルにおけるアセチル化率は、相溶性の観点から、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、本発明に用いられるモノグリセロールエステルにおいて、エステル化に使用される脂肪酸の炭素数は、相溶性と揮発性のバランスにより選択されるが、ポリグリセロール酢酸エステルと併用される本発明においては、相溶性はポリグリセロール酢酸エステルにより補われるため、低揮発性を優先し、炭素数が8以上である脂肪酸を構成脂肪酸とするジアセチルモノアシルグリセロールであることが好ましい。炭素数が8以上である脂肪酸のうち、相溶性を考慮すると、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エルシン酸等が好ましく、なかでも、酸化安定性を考慮すると、飽和脂肪酸であるカプリル酸、カプリン酸およびラウリン酸がより好ましい。上記炭素数は、相溶性の観点から28以下が好ましい(炭素数28の脂肪酸:モンタン酸)。
ここで、ジアセチルモノアシルグリセロールは、(i)モノグリセロールと脂肪酸とのエステル化反応、(ii)グリセロールと脂肪酸アルキルエステル或いは油脂等のトリグリセライドとのエステル交換反応など公知の方法により得られた、反応モノグリセライド又は蒸留モノグリセライドと無水酢酸との反応、(iii)トリグリセライドとトリアセチンとのエステル交換反応、等の方法によって得られるが、特にその方法を限定するものではない。
本発明で用いられる可塑剤(B)中のアセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルおよびモノグリセロールエステルとの混合比率は、混合による効果、ブリードアウトの抑制から、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100〜50重量%およびモノグリセロールエステル0〜50重量%であり、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100〜80重量%およびモノグリセロールエステル0〜20重量%が好ましく、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100重量%がより好ましい。
アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルを単独で使用することが、経時変化改善等の効果のためには好ましいが、合成方法によっては、モノグリセロールエステルが生成、混合される場合もあるため、そのまま両者の混合物として使用することができる。
本発明における前記可塑剤(B)の配合量は、生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部であり、0.1〜30重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。可塑剤(B)の混合量が0.1重量部未満では、可塑剤としての効果を発現しにくく、初期での引張伸びの低下およびその経時変化の抑制効果が低下する。また、50重量部を超えると、耐熱性、ブリードアウト性の低下、初期での引張伸びの低下およびその経時変化の抑制効果の低下等を招く。
本発明においては、前記共重合体(A)より高い融解温度を有する生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)を配合することにより、生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)が樹脂組成物中で結晶核剤として作用し、樹脂組成物の結晶化を促進し、成形加工性を改善することができる。
すなわち、融解温度Tm1を有する前記共重合体(A)を所定の温度で溶融させた場合、Tm1よりも高い融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の結晶核が融け残るため、それを核点として、結晶が急速に成長するため結晶化速度が大きくなる。
本発明における生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の融解温度Tm2は、前記共重合体(A)の融解温度Tm1に対して、Tm2≧Tm1+5℃の条件を満たすことが好ましく、Tm2≧Tm1+10℃の条件を満たすことがより好ましく、Tm2≧Tm1+20℃の条件を満たすことがさらに好ましい。融解温度Tm2がTm2<Tm1+5℃の場合、核剤としての効果が低くなり、成形性が低下する傾向がある。
なお、本発明における融解温度Tmは、示差走査熱量計(セイコー電子工業製、DSC200)を用いて、前記共重合体(A)または、生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の試料1〜10mgを、10℃/分の昇温速度にて30℃から、各試料が充分に融解する温度+30〜40℃迄昇温し、次いで、10℃/分の降温速度にて30℃迄降温後、再度10℃/分の昇温速度にて各試料が充分に融解する温度+30〜40℃迄昇温した時の融解に伴う吸熱曲線ピークとした。また、吸熱曲線ピークが複数であった場合は高温側のピークをTmとした。
上記融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)は、構造式[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基を示し、n=1〜15の整数である。ポリマー中、Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表わされる繰り返し単位からなる生分解性ポリマーであるが、ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)が共重合体の場合、その繰り返し単位は、前記共重合体(A)の繰り返し単位と同じでも、異なっていてもよい。
融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)としては、結晶化促進の点から、ポリ3−ヒドロキシブチレート(以降、「PHB」と称する場合がある)が好ましいが、Tm2≧Tm1+5℃の条件を満たす限り、3−ヒドロキシブチレート以外の繰り返し単位を最大10mol%まで含んでもよい。
特に、融解温度Tm1を有する生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)が、PHBHであり、HH比率が1〜20mol%の場合には、結晶化促進の点で、融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)としては、ポリ3−ヒドロキシブチレートであることが好ましい。
ただし、融解温度Tm1を有する3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)がPHBHであり、HH比率が10〜20mol%の場合には、均一分散性や相溶性の点から、融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)として、繰り返し単位が3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシヘキサノエートであり、HH比率が0.01〜8mol%であるPHBHを用いてもよい。
上記融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)は、微生物から生産する方法または合成法のいずれの方法によって得られてもよく、特に限定されるものではない。
本発明における融解温度Tm2を有するポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の含有量は、融解温度Tm1を有する3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。前記ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の含有量が0.1重量部未満では、核剤としての効果が低くなり成形性が低下する傾向があり、30重量部を超えると、含有量に見合うだけの効果が期待できず、実際的でないばかりか、不経済である。
本発明の樹脂組成物においては、生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)、生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)以外に、必要に応じて、更に、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ4−ヒドロキシブチレート、ポリ4−ヒドロキシバレエート、ポリ3−ヒドロキシヘキサノエートまたはポリカプロラクトンの他に、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としての、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートあるいはそれらの共重合体などの脂肪族ポリエステルを少なくとも1種添加することができる。これらのポリマーの配合量は、生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対して、1〜300重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物には、物性を損なわない範囲で、前記ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)以外の造核剤(D)を添加して結晶化を速めることが可能である。他の造核剤(D)としては、例えば、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、窒化硼素、高級脂肪酸塩、芳香族脂肪酸塩等が挙げられる。これらのなかでは、造核剤としての効果が高いことから、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物が好ましい。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ステアリルベヘン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられ、特にベヘン酸アミドが好ましい。
上記尿素誘導体としては、ビス(ステアリルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−メチルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、4,4’−ビス(3−フェニルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、ビス(3−メチルシクロヘキシルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−デシルウレイド)ジフェニルメタン、N−オクチル−N’−フェニルウレア、N,N’−ジフェニルウレア、N−トリル−N’−シクロヘキシルウレア、N,N’−ジシクロヘキシルウレア、N−フェニル−N’−トリブロモフェニルウレア、N−フェニル−N’−トリルウレア、N−シクロヘキシル−N’−フェニルウレア等が例示され、特にビス(ステアリルウレイド)ヘキサンが好ましい。
上記ソルビトール系化合物としては、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、及び1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。これらの中で、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
本発明の樹脂組成物における造核剤(D)の使用量は、3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対し、成形性の点から、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜8重量部がより好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。造核剤が0.1重量部未満では、造核剤としての効果が不足する可能性があり、また、10重量部を超えても、効果が飽和する可能性があることから、経済的に好ましくない。
また、本発明の樹脂組成物の平均結晶粒子径は、50μm以下であることが、耐衝撃性、引張伸び特性、透明性等を高める上で好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、さらに、充填剤を添加することにより、曲げ弾性率、耐熱性等をさらに改善することができる。
上記充填剤のうち無機充填剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム等が挙げられ、特に粒径0.1〜30μのマイカ、タルクが好ましい。
また、他の充填剤としては、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛等の有機繊維が挙げられる。また、竹繊維、パルプ繊維、ケナフ繊維や、類似の他の植物代替種、アオイ科フヨウ属1年草植物、シナノキ科一年草植物等の天然繊維も使用することが出来る。二酸化炭素削減の観点からは、植物由来の天然繊維が好ましく、特に、ケナフ繊維が好ましい。
本発明の樹脂組成物における充填剤の使用量は、3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)100重量部に対し、物性、成形性、価格面から、0.1〜100重量部が好ましく、0.1〜80重量部がより好ましく、0.1〜50重量部がさらに好ましい。充填剤が0.1重量部未満では、物性の向上が少ない傾向があり、100重量部越えると、衝撃強度が低下する傾向がある。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の改質剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を添加することができる。代表的な改質剤としては、アクリル系ゴム、アクリル、シリコーン複合ゴム、ブタジエン系ゴム等をコアに有するコアシェル型グラフト共重合体、アクリル系高分子重合体からなる成形加工性改良剤等があげられる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、アクリル樹脂等の汎用熱可塑性樹脂が、また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等の汎用エンプラ等があげられる。また、代表的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等があげられる。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、フィラー;顔料、染料などの着色剤;活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤;バニリン、デキストリン等の香料;酸化防止剤;抗酸化剤;耐候性改良剤;紫外線吸収剤などの安定剤;上記(B)以外の可塑剤;滑剤;離型剤;撥水剤;抗菌剤;摺動性改良剤;その他の副次的添加剤を配合することができる。上記添加剤は、単独又は2種以上用いても構わない。
本発明の樹脂組成物は、公知の方法で作製することが出来る。例えば、加熱溶融して混合する方法としては、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ギアポンプ、混練ロール、撹拌機を持つタンクなどの機械的撹拌による混合や、流れの案内装置により分流と合流を繰り返す静止混合器の応用等が挙げられる。加熱溶融の場合、熱分解によるPHAの分子量低下に注意して混合する必要がある。加熱溶融は、160〜170℃の温度で行うことが好ましい。また、可溶溶媒中に溶解した後、溶媒を除去し、本発明の樹脂組成物を得る方法もある。
本発明で使用される各成分は、予め、その一部の組成の組み合わせでマスターバッチを作成した後、さらに残りの成分を添加し、最終組成物を作成することもできる。これにより、各成分の相溶性が向上し、物性バランスが向上する。
本発明の樹脂組成物は、押出成形や射出成形が可能であり、また、上記したような押出成形機を用いてペレット状やブロック状、フィルム状、シート状に加工しても良い。各種成分の分散性が良好となるように一旦ペレット化した後、射出成形機、または、押出成形機でフィルム状、シート状に加工してもよい。また、カレンダー成形機、ロール成形機、インフレーション成形機による、フィルム化やシート化が可能である。また、本発明の組成物から得られたフィルムやシートは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。また、ブロー成形機による中空成形が可能である。また、溶融紡糸等による繊維状成形体が可能である。
本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形体は、生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)の結晶性ポリマーとしての高い耐熱性の特性を保持したまま、耐衝撃性、引張伸び性、表面性、成形加工性が効率よく改良され、また、驚くべきことに、耐衝撃性や引張伸び性の経時変化が大きく改善される。
本発明の樹脂組成物は各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等の成形品となり、単独で使用されるか、または、この組成物以外の単体物からなる各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等に複合化することで単体物性を改善して使用される。この様にして得られた成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
本発明は、生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)に、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルを主体とする可塑剤(B)を配合することにより、耐衝撃性、引張伸び特性、耐熱性、表面性(ブリード性)、成形性等に優れ、それらの経時変化が少ない樹脂組成物及び成形体を提供することができる。
次に、本発明の組成物およびその成形品について、実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
実施例で使用した樹脂や添加剤は、以下のとおりである。
A−1:PHBH ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート](HH率=12%、Mw=50万、融解温度:120℃)
B−1:可塑剤 理研ビタミン(株)製リケマールPL710(アセチル化率99%のポリグリセロール酢酸エステル/モノグリセロールエステル=90重量%/10重量%)
B−2:可塑剤、理研ビタミン(株)製リケマールPL012(アセチル化率66%のグリセリンジアセトモノラウレート)
B−3:可塑剤 ATBC/アセチルクエン酸トリブチル
C−1:PHB ポリ3−ヒドロキシブチレート(BAIOMER社製PHB、Mw=75万、融解温度:171℃)
D−1:造核剤 ベヘン酸アミド(CRODA JAPAN社製、Incroslip B)
E−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガノックス−1010)
なお、PHBH(A−1)は、微生物として、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(J.Bacteriol.,179,4821(1997))(FERM BP−6038)を用いて、原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBHで、HH率が12mol%、であり、Mw(重量平均分子量)が約50万のものを使用した。
<微生物の培養条件>
培養は次の様に行った。
前培地の組成は1w/v%Meat−extract、1w/v%Bacto−Trypton、0.2w/v%Yeast−extract、0.9w/v%NaHPO・12HO、0.15w/v%KHPO、pH6.7とした。
ポリエステル生産培地の組成は1.1w/v%NaHPO・12HO、0.19w/v%KHPO、0.6w/v%(NHSO、0.1w/v%MgSO・7HO、0.5v/v%微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v%FeCl・6HO、1w/v%CaCl・2HO、0.02w/v%CoCl・6HO、0.016w/v%CuSO・5HO、0.012w/v%NiCl・6HO、0.01w/v%CrCl・6HOを溶かしたもの。)であり、炭素源はPKOO(Palm kernel olein oil=パーム核油オレイン)を使用し、培養は炭素源を流加する流加培養にて行った。
PHBH生産菌株のグリセロールストックを前培地に接種して20時間培養し、2.5Lの生産培地を入れた5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MD−500型)に10v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度420rpm、通気量0.6vvmとし、pHは6.6から6.8の間でコントロールした。コントロールには14%のアンモニア水を使用した。培養は65時間まで行った。培養後遠心分離によって菌体を回収し、メタノールで洗浄後、凍結乾燥した。凍結乾燥菌体をクロロホルムで抽出し、菌体残渣を濾過後、瀘液にヘキサンを加えてPHBHを析出させた。濾過によってPHBHを回収し、ヘキサンで洗浄後、乾燥させてPHBHを調製した。
<PHA共重合体(A)またはPHA(C)の融解温度Tmの測定>
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、DSC200)を用いて、PHA共重合体(A)またはPHA(C)1〜10mgを、10℃/分の昇温速度にて、30℃から200℃まで昇温し、次いで、10℃/分の降温速度にて200℃から30℃まで降温した。次に、再度10℃/分の昇温速度にて、30℃から200℃まで昇温した。この際のPHA共重合体(A)またはPHA(C)の融解に伴う吸熱曲線ピークを記録し、融解温度Tmとした。なお、再昇温した際の吸熱曲線ピークが複数のピークを示した場合、吸熱量の大きいピークでのトップ温度をTmとした。
(実施例1〜3)
表1に示した配合比率にて、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート](PHBH)、可塑剤、造核剤および酸化防止剤の混合物を、2軸押出成形機(日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、シリンダー設定温度130℃にて溶融混練して、組成物のペレットを得た。得られた組成物に対して、シート成形性、耐衝撃性、引張破断伸び、ブリード性および耐熱性を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例1〜4)
表1に示した配合比率にて、実施例1と同様の操作にて、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物ペレットに対して、シート成形性、耐衝撃性、引張破断伸び、ブリード性および耐熱性を評価した。その結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物に対する評価方法は、以下のとおりである。
<引張伸び特性の評価>
実施例1〜3および比較例1〜4にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、150mm幅のT型ダイスを装着した1軸押出機ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、加工温度160℃、スクリュー回転数30rpmの条件にて押出し、0.1mm厚みのシートを作製した。得られたシートより、MD(流れ)方向のダンベル(JIS K7113、小型試験片2(1/3)号形)を打抜きにより作製した。得られたダンベル試験片を、23℃、湿度50%雰囲気下にて、シート押出成形後7日間、60日間または90日間保存した後、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AG2000A)を用いて、引張試験速度33mm/分の条件にて引張試験を実施した。
<耐衝撃性>
実施例1〜3および比較例1〜4にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、熱プレス機((株)神藤金属工業所製、圧縮成形機NSF−50)を用い、170℃および5MPa荷重の条件にて、1mm厚みのシートを作製した。得られたシートから、50mm角のサンプルを切り出して、試験片を作製した。得られた試験片を、23℃、湿度50%雰囲気下にて、シート熱プレス成形後7日間または60日間保存した後、デュポン衝撃試験(東洋精機製作所)を用いて、撃心径φ12.7mmでの衝撃強度(23℃)を評価した。
<表面性(ブリード性)>
上記シート押出成形により得られた50mm角×0.1mm厚みのシートを、設定温度100℃のオーブン(タバイエスペック製、SHPS−222)中にて、24時間保存し、シート表面のブリード状態を観察評価した。
○:ブリード無し
△:ブリード少し有り
×:ブリード有り
<シート成形性>
上記シート成形時の成形開始10分後の引取ロール面およびシートの表面性を目視にて、評価した。
○:引き取りロールへの粘着もなく、シートの表面性(平滑性)も良好である。
△:引き取りロールへの粘着が少しあり、シートの表面性(平滑性)にムラがある。
×:引き取りロールへの粘着がきつく、シートの表面性(平滑性)も良くない。
<耐熱性:熱変形温度(HDT)測定法>
実施例1〜3および比較例1〜4にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、射出成形機(東芝機械社製IS75E、型締力:75トン)を用い、シリンダー設定温度150℃および金型温度60℃の条件にて、127mm×12.7mm×厚み6.4mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、JIS K7207(A法)に準拠して、0.45MPaの荷重での熱変形温度を測定した。
Figure 0005264487
表1の結果より、実施例1〜3は比較例1〜4と比較して、初期の引張破断伸び及び衝撃値が大きく、その経時変化も小さく、更にはブリード性、耐熱性やシート成形性が優れていることが判る。
(実施例4〜9)
表2に示した配合比率にて配合した、ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート](PHBH)、ポリ3−ヒドロキシブチレート(PHB)、可塑剤、造核剤および酸化防止剤の混合物を、2軸押出成形機(日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、シリンダー設定温度130℃にて溶融混練して、組成物のペレットを得た。得られた組成物に対して、成形加工性、耐衝撃性、引張破断伸び、ブリード性及び耐熱性を評価した。その結果を表2に示す。
(比較例5〜9)
表2に示した配合比率にて、実施例4と同様の操作にて、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物ペレットに対して、成形加工性、耐衝撃性、引張破断伸び、ブリード性及び耐熱性を評価した。その結果を表2に示す。
得られた樹脂組成物に対する評価方法は、以下のとおりである。
<引張伸び特性の評価>
実施例4〜9および比較例5〜9にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、150mm幅のT型ダイスを装着した1軸押出機ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、加工温度160℃、スクリュー回転数30rpmの条件にて押出し、0.1mm厚みのシートを作製した。得られたシートより、MD(流れ)方向のダンベル(JIS K7113、小型試験片2(1/3)号形)を打抜きにより作製した。得られたダンベル試験片を、23℃、湿度50%雰囲気下にて、シート押出成形後7日間または60日間保存した後、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AG2000A)を用いて、引張試験速度33mm/分の条件にて引張試験を実施した。
<成形加工性の評価>
実施例4〜9および比較例5〜9にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、150mm幅のT型ダイスを装着した1軸押出機ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、加工温度160℃、スクリュー回転数30rpmの条件にて押出した際の、T型ダイス押出し時の金属ロール(60℃温調実施)から離型できる最大引き取り速度を評価した。
<耐衝撃性>
実施例4〜9および比較例5〜9にて得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、熱プレス機((株)神藤金属工業所製、圧縮成形機NSF−50)を用い、170℃および5MPa荷重の条件にて、1mm厚みのシートを作製した。得られたシートから、50mm角のサンプルを切り出して、試験片を作製した。得られた試験片を、23℃、湿度50%雰囲気下にて、シート熱プレス成形後7日間または60日間保存した後、デュポン衝撃試験(東洋精機製作所)を用いて、撃心径φ12.7mmでの衝撃強度(23℃)を評価した。
<ブリード性>
上記シート押出成形により得られた50mm角×0.1mm厚みのシートを、設定温度100℃のオーブン(タバイエスペック製、SHPS−222)中にて、24時間保存し、シート表面のブリード状態を観察評価した。
○:ブリード無し
△:僅かにブリード有り
×:ブリード有り。
<耐熱性:熱変形温度(HDT)測定法>
実施例4〜9および比較例5〜9にて得られたペレットを80℃×5時間乾燥後、射出成形機(東芝機械社製IS75E、型締力:75トン)を用い、シリンダー設定温度150℃および金型温度60℃の条件にて、127mm×12.7mm×厚み6.4mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、JIS K7207(A法)に準拠して、0.45MPaの荷重での熱変形温度を測定した。
Figure 0005264487
表2の結果より、実施例4〜9は、比較例5〜9と比較して、初期の引張破断伸び及び衝撃値が大きく、その経時変化も小さく、更にはブリード性や耐熱性が優れていることが判る。更に、実施例5〜9は成形加工性にも非常に優れている。
本発明の組成物は各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品等の成形品となり、単独で使用されるか、または、この組成物以外の単体物からなる各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等に複合化することで単体物性を改善して使用される。この様にして得られた成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)および可塑剤(B)を含有する樹脂組成物であって、前記生分解性3−ヒドロキシアルカノエート共重合体(A)が、3−ヒドロキシブチレートの繰り返し単位および3−ヒドロキシヘキサノエートの繰り返し単位からなるポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]からなり、前記可塑剤(B)が、アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステル100〜50重量%およびモノグリセロールエステル0〜50重量%からなり、前記樹脂組成物が、前記共重合体(A)100重量部に対して、前記可塑剤(B)を0.1〜50重量部含有することを特徴とする、樹脂組成物。
  2. 更に、前記共重合体(A)の融解温度Tm1より高い融解温度Tm2を有する生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)を含有し、前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)の融解温度Tm2が、Tm2≧Tm1+5℃の条件を満たし、かつ、前記樹脂組成物が、前記共重合体(A)100重量部に対して、前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)0.1〜30重量部を含有することを特徴とする、請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記共重合体(A)の重量平均分子量が、30万〜300万であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]の繰り返し単位の構成比が、3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位=99/1〜80/20(mol/mol)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. アセチル化率50%以上のポリグリセロール酢酸エステルが、アセチル化率50%以上であるジグリセロール酢酸エステルおよびトリグリセロール酢酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. モノグリセロールエステルが、炭素数が8以上の脂肪酸を構成脂肪酸とするジアセチルモノアシルグリセロールであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記生分解性ポリ3−ヒドロキシアルカノエート(C)が、ポリ3−ヒドロキシブチレートであることを特徴とする、請求項2〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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