JP7057119B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機物質に電圧を印加して発光する現象を有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)といい、有機ELを発生させる素子を有機EL素子という。有機EL素子は、有機発光物質が含有された単層又は多層の発光層(「有機EL層」、「有機機能層」、「有機薄膜層」、「有機発光物質含有層」、「有機発光層」などとも呼称されている)を陽極と陰極の間に有する構造となっている。有機EL素子は、電圧が印加されると、電子が陰極から発光層に注入されると共に、正孔が陽極から発光層に注入され、これらが発光層で再結合して励起子が生じる。有機EL素子はこのようにして生じた励起子からの光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する。有機EL素子は、ディスプレイ、照明機器(照明パネル)、薄型の電子デバイスなどに広く用いられている。
特に、有機EL素子を用いたディスプレイは年々大型化、高精細化の傾向にあり、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)で画素ごとに駆動を制御するアクティブマトリクス方式が一般的に用いられている。アクティブマトリクス方式はTFTを基板側に設ける必要があり、従来の光を基板側から取り出すボトムエミッション型の構成では開口率が下がるという問題がある。そのため、近年は光を基板とは反対方向に取り出すトップエミッション型の構成とすることで高い開口率を有したディスプレイが開発され、販売されている。
トップエミッション型の有機EL素子に関する発明が、例えば、特許文献1、2に記載されている。
具体的に、特許文献1には、第1基板と、前記第1基板上に配列された複数の有機EL素子と、前記第1基板の上側に配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に充填される充填層と、を有し、前記第2基板側に画像を表示する有機EL表示装置が記載されている。当該有機EL表示装置において、前記複数の有機EL素子は、発光層と、前記発光層の下側に形成されて、前記発光層からの光を上側に反射する反射電極と、前記発光層の上側に形成されて、透過性と反射性を有する上部電極と、を有している。そして、前記反射電極と前記上部電極の間には、前記発光層で発光した光を共振する構造が形成され、前記充填層には、前記構造によって共振されて前記上部電極から出射した光を拡散する微粒子が添加されている。特許文献1には、このような構成の有機EL表示装置とすることで、輝度を低下し難くし、且つ、視野角特性を向上できると記載されている。
また、特許文献2には、基板と、前記基板上に配置された画素電極と、前記画素電極上に配置され、光透過が可能に備えられた対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に介在され、少なくとも前記対向電極に向かって光を放出する有機発光層と、前記対向電極上に配置され、前記有機発光層から放出された光が透過する第1透光層と、を備える有機発光表示装置が記載されている。当該有機発光表示装置は、前記第1透光層上の前記有機発光層から放出された光の経路上に位置し、第1屈折率を有する第1物質と、第2屈折率を有する第2物質とを含んでいる。そして、当該有機発光表示装置において、前記第1屈折率は、前記第2屈折率より大きく、前記第1物質は、前記第2物質内に複数個の領域が配置された第2透光層を備えている。特許文献2には、このような構成の有機発光表示装置とすることで、側面視野角で発生する色ずれを減少させることができると記載されている。
特開2014-132525号公報 特開2013-140789号公報
特許文献1、2を含め、従来のトップエミッションの有機EL素子では、光取り出し側の透明電極として一般的に、Agや、MgAgなどのAgを主成分とする合金(Ag合金)が用いられている。しかしながら、光取り出し側の透明電極としてAgやMgAgを用いると、凝集や移動(マイグレーション)によりグレインが発生し、グレインの凹凸に由来した局在プラズモン吸収が発生してしまう。そのため、透明電極に散乱を利用した光取り出し構造を設けても充分に発光効率が向上しないという問題があった。また、AgやMgAgを用いると半透過、半反射電極になるため、マイクロキャビティ現象が起きる。その結果、見る角度によって輝度や色味が変わってしまうという視野角依存性の問題があった。
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、発光効率が優れると共に、視野角依存性が低い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを課題とする。
本発明に係る前記課題は以下の手段により解決される。
(1)基板と、有機エレクトロルミネッセンス層と、Ag、Ag合金又はAgを主成分とする混合物からなる透明電極と、光取り出し層との順で形成され、前記有機エレクトロルミネッセンス層で発生した光を前記透明電極から取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記光取り出し層が樹脂成分と無機微粒子を含み、前記樹脂成分の屈折率nbと前記無機微粒子の屈折率npとの屈折率差|nb-np|が0.2~1.00であり、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記透明電極に隣接して、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられており、前記化合物が下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0007057119000001
(前記一般式(1)中のX 及びX は、それぞれ独立に、窒素原子又はCR を表す。Cは、炭素原子を表し、R は、水素原子又は置換基を表す。
前記一般式(1)中のA は、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。)
)前記Aが、6員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記6員のヘテロアリール環を構成する残基が、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環又はフェナンスリジン環を構成する残基であることを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記Aが、5員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記5員のヘテロアリール環を構成する残基が、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環又はチアゾール環を構成する残基であることを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する有機化合物であることを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0007057119000002
(前記一般式(2)中のX、X、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又はCRを表す。Cは、炭素原子を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。
前記一般式(2)中のA及びAは、それぞれ独立に、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。
前記一般式(2)中のLは、単なる結合手、又はアリール環若しくはヘテロアリール環を含む2価の連結基を表す。)
)前記A及び前記Aが、それぞれ独立に、6員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記6員のヘテロアリール環を構成する残基が、それぞれ独立に、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環又はフェナンスリジン環を構成する残基であることを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
)前記A及び前記Aが、それぞれ独立に、5員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
10)前記5員のヘテロアリール環を構成する残基が、それぞれ独立に、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環又はチアゾール環を構成する残基であることを特徴とする前記()に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11)前記光取り出し層に含有される無機微粒子の一次粒子径が0.1~1μmであることを特徴とする前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によれば、発光効率が優れると共に、視野角依存性が低い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。
本実施形態に係る有機EL素子の全体構成を説明する概略断面図である。 光取り出し構造の一態様を説明する概略断面図である。 無機層の好ましい構成の一例を説明する概略断面図である。 接着剤層及び封止部材の好ましい構成の一例を説明する概略断面図である。 本実施形態に係る有機EL素子の他の一例の全体構成を説明する概略断面図である。
(有機EL素子)
以下、適宜図面を参照して本発明に係る有機EL素子の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の全体構成を説明する概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子1は、基板2と、有機EL層4と、Ag、Ag合金又はAgを主成分とする混合物からなる透明電極(以下の説明では、透明電極を第2電極5として説明する)と、光取り出し層6との順で形成されている。この有機EL素子1は、有機EL層4で発生した光を透明電極である第2電極5から取り出す。換言すると、この有機EL素子1は、有機EL層4で発生した光を前記基板2とは反対方向に取り出す。つまり、この有機EL素子1は、トップエミッション型の有機EL素子である。この有機EL素子1は、第2電極5に隣接して、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層5aが設けられている。
なお、有機EL素子1は前記した層構成以外に、基板2と有機EL層4との間に第1電極3を有している。有機EL層4は、第1電極3と第2電極5によって狭持されている部分が発光領域となる。有機EL素子1において、第1電極3及び第2電極5の端部にはそれぞれ図示しない取り出し電極が設けられている。第1電極3及び第2電極5は、当該取り出し電極を介して、外部電源(図示略)と電気的に接続される。
また、有機EL素子1は前記した層構成以外に、第2電極5と光取り出し層6との間に無機層7(図5参照)を有しているのが好ましい。
さらに、有機EL素子1は前記した層構成以外に、光取り出し層6の上に接着剤層8及び封止部材9(図6参照)を有しているのが好ましい。
以下、図1を参考にして、有機EL素子1の各構成について説明する。
(基板)
基板2は、第1電極3、有機EL層4、金属親和性層5a、第2電極5、光取り出し層6、無機層7などの有機EL素子1を構成する各層を形成する土台となるものである。基板2は、透明であってもよく、また、不透明であってもよい。また、基板2は、フレキシブル基板であってもよい。ここで、本実施形態におけるフレキシブル基板とは、フレキシブル性(可撓性)を有している基板をいい、例えば、曲率半径10cmで曲げても損壊しない基板をいう。
基板2は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に制限はなく、好ましくは、ガラス、石英、樹脂フィルムなどを挙げることができる。なお、基板2として樹脂フィルムを用いると、有機EL素子1にフレキシブル性を与えることができる。また、基板2として樹脂フィルムを用いると、有機EL素子1を薄膜化できる。
基板2として使用できる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレートなどのセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)やアペル(商品名三井化学社製)などのシクロオレフィン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本実施形態においては、これらの樹脂を単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。また、基板2は、未延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。
基板2の厚さは、25~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~300μmである。基板2の厚さが25μm以上であれば、有機EL素子1の強度を維持でき、1000μm以下であれば、有機EL素子1の強みである薄さが失われることもない。
基板2は、酸素や水分の侵入を防ぐガスバリア層10a、10c(図5参照)などとの密着性を高めるため、表面活性化処理が施されていてもよい。また、基板2が樹脂フィルムである場合、耐衝撃性を高めるため、クリアハードコート層(図示せず)が設けられていてもよい。
表面活性化処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。
クリアハードコート層の材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体などが挙げられ、中でも紫外線硬化型樹脂を好ましく使用できる。
(有機EL層)
有機EL層4は、第1電極3と第2電極5の間に形成されており、少なくとも一つの発光層(図示せず)を有している。有機EL層4は、発光層そのものであってもよいし、発光層にキャリア(正孔及び電子)を輸送、注入、阻止する機能などを有する各種の機能層を有して構成されていてもよい。
各種の機能層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられる(いずれも図1において図示せず)。なお、正孔注入層及び正孔輸送層は、正孔輸送注入層として設けられてもよい。電子輸送層及び電子注入層は、電子輸送注入層として設けられてもよい。また、これらの機能層のうち、例えば、電子注入層は無機材料で構成されていてもよい。
有機EL層4は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層(いずれも図示せず)などを必要に応じて有していてもよい。
本実施形態においては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層の順に構成するのが好ましいが、これに限定されない。本実施形態における正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層は、例えば、特開2014-120334号公報、特開2013-89608号公報などに記載の化合物を使用したり、層構成を採用したりすることができる。
有機EL層4の厚さは、100~1000nmの範囲内であることが好ましい。有機EL層4の厚さが前記範囲内であると、駆動電圧の上昇を抑えることができる。
なお、本実施形態においては、正孔注入・輸送層の厚みを厚くするのが好ましい。このようにすると、有機EL層4内に閉じ込められる光を効率よく取り出すことができる。この効果を効果的に得るため、電子輸送層の厚みは、例えば、50nm以上とするのが好ましい。
有機EL層4の発光層は単層であってもよいし、多層であってもよい。発光層を多層とする場合、異なる化合物で形成し、異なる波長の光を発光する層を複数積層したものとすることができる。また、発光層を多層とする場合、同じ化合物で形成し、同じ波長の光を発光する層を複数積層したものとすることができる。
正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層の各層の成膜は、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、真空蒸着法、印刷法などで行うことができる。
(中間コネクタ層)
また、本実施形態においては、一方の発光層と他方の発光層との間に、必要に応じて中間コネクタ層(図示せず)を設けたタンデム構造とすることができる。中間コネクタ層は、電界中において複数の発光層を直列に電気的に連結する有機化合物層との界面を持つ層である。中間コネクタ層は半導体以上の導電性を有することが望ましいが、これに限定されない。中間コネクタ層は、第1電極3又は第2電極5で述べる材料を用いて任意の厚さで形成することができるが、以下のようにするのが好ましい。本実施形態における中間コネクタ層は少なくとも一層以上から形成されるが、好ましくは二層以上からなり、p型半導体層、n型半導体層の一方若しくは両方を含むことが特に好ましい。また、外部電界により、層内部で正孔、電子を発生・輸送することができるバイポーラー層としてもよい。また、中間コネクタ層は、通常の電極材料として使用可能な金属、金属酸化物、及びその合金なども好適に形成できる。さらに、中間コネクタ層は、有機化合物、無機化合物を単独若しくは複数種混合して形成することができる。
中間コネクタ層に用いることのできる有機化合物としては、ナノカーボン材料、有機半導体材料(有機アクセプター、有機ドナー)として機能する有機金属錯体化合物、有機塩、芳香族炭化水素化合物及びその誘導体、複素芳香族炭化水素化合物及びその誘導体などが挙げられる。
中間コネクタ層に用いることのできる無機化合物としては、前記したように通常の電極材料として使用可能な金属、無機酸化物、無機塩などが挙げられる。また、無機化合物としては、これらの金属とアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の合金や、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物も使用することができる。
中間コネクタ層の光透過率は、発光層から放出される光に対して高い透過率を有することが望ましい。十分に光を取り出し、十分な輝度を得るためには、波長550nmでの透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。また、中間コネクタ層の光透過率についてさらに好ましくは、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であり、さらにより好ましくは80%以上である。中間コネクタ層の膜厚としては、0.1~100nmであることが好ましい。
(光取り出し層)
一般的に、有機EL素子は空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7~2.1程度)層の内部で発光し、有機EL層で発生した光のうち20%程度の光しか取り出せないと言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(一般的に、例えば、第2電極と、空気や接着剤層などとの界面)に入射する光は全反射を起こし、素子外部に取り出すことができないことや、有機EL層と第2電極との間で光が全反射を起こし、光が有機EL層を導波して素子側面方向に逃げるためであると言われている。
しかしながら、本実施形態に係る有機EL素子1は、図1に示すように、第2電極5の上に光取り出し層6を有しているので、第2電極5内の光を効率よく取り出すことができる。つまり、本実施形態における光取り出し層6とは、通常、第2電極5に閉じ込められる光を効率よく取り出すことのできる層をいう。
また、本実施形態においては、光取り出し層6を有していることにより、第2電極5と、空気や接着剤層8などとの間で光散乱が発生する。従って、有機EL素子1は、従来、第2電極5と、空気や接着剤層8などとの界面で生じていた光の全反射を低減できる。そのため、有機EL層4で発光した光の取り出し効率が向上し、視野角依存性をより確実に低くすることができる。
本実施形態では、光取り出し層6は、有機EL層4で発光させた光の取り出し効率を向上できるものであれば、任意の構成を採用できる。光取り出し層6として、例えば、図2に示すような態様とすることができる。なお、図2は、光取り出し層6の一態様を説明する概略断面図である。
図2に示すように、光取り出し層6は、樹脂成分(マトリクス)6bと、アスペクト比が2以下の無機微粒子6cと、を含んでなる(以下、この態様の光取り出し層6を「光取り出し層6a」と呼称する)。なお、この光取り出し層6aは、樹脂成分6bと、無機微粒子6cと、からなることがより好ましい。
光取り出し層6aの厚さは、例えば、250~2000nmであるのが好ましいが、これに限定されない。樹脂成分6bの屈折率は、例えば、1.6~2.0であるのが好ましく、1.7~1.9であるのがより好ましい。無機微粒子6cの屈折率は、例えば、2.1~2.5であるのが好ましく、2.2~2.4であるのがより好ましい。
樹脂成分6bはバインダ樹脂として機能するものであり、無機微粒子6cを保持する。樹脂成分6bは、X-Y-X’の構造の成分を含有し、前記X及び前記X’は各々独立に、少なくとも下記式(1)~(7)のいずれかの構造を有しているのが好ましい。また、前記Yは少なくとも1つのS原子と1つの芳香環とを有する二価基であるのが好ましい。
Figure 0007057119000003
具体的には、例えば、Yが、-R-R’-、-R-S-R’-、-R-S(O)-R’-、及び、-R-S(O)-R’-のうちのいずれかの構造であり、前記R及び前記R’は各々独立に、下記式(8)~(12)のいずれかの構造である。
ただし、Yが、-R-R’-である場合、前記R及び前記R’の少なくとも1つは下記式(12)である。
Figure 0007057119000004
図2に示す態様においては、光取り出し層6aが、無機微粒子6cと、樹脂成分6bとしてX-Y-X’の構造の成分と、を含有することで、樹脂自体での高屈折率化及び素子内部に成膜したときに有機EL層4への影響改善を図るものである。
ここで、X-Y-X’の構造の成分におけるYに含まれるSの原子数の割合が、Yに含まれるCの原子数に対し、2~30%であることが好ましい。
Yに含まれるSの原子数の割合が、Yに含まれるCの原子数に対して2%以上であれば、屈折率がより向上する。より好ましくは5%以上である。また、Yに含まれるSの原子数の割合が、Yに含まれるCの原子数に対して30%以下であれば、黄変の度合いが軽減される。より好ましくは25%以下である。
また、X-Y-X’の構造の成分におけるYに含まれる芳香環のCの原子数の割合が、Yに含まれる芳香環のその他の元素の原子数に対して50~80%であることが好ましい。
Yに含まれる芳香環のCの原子数の割合が、Yに含まれる芳香環のその他の元素の原子数に対して50%以上であれば、屈折率がより向上する。より好ましくは55%以上である。また、Yに含まれる芳香環のCの原子数の割合が、Yに含まれる芳香環のその他の元素の原子量に対して80%以下であれば、素材の安定性がより向上する。より好ましくは70%以下である。
X-Y-X’の組合せ例として、表1に記載のものが挙げられる。また、表1に記載の無い組合せでも前述の条件を満たすものであれば、本発明に好適に用いることができる。なお、表1中のX,X’の数字及びY構成の両端の数字((1)等)は、本明細書中に記載の式(1)~(12)の化合物に対応する。
Figure 0007057119000005
光取り出し層6aに含まれる無機微粒子6cは、アスペクト比が2以下の球状粒子であるのが好ましい。このようにすると、当該無機微粒子6cが光取り出し層6a内で光散乱粒子として機能し、光取り出し層6aで光散乱が発生するため、光取り出し効率がより向上する。
ここで、微粒子とは、一次粒子の平均粒子径が50~500nmである粒子をいう。本実施形態においては、平均粒子径は50~300nmであることが好ましい。
本実施形態における平均粒子径は、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。例えば、粒子を倍率10万倍で撮影し、その画像から粒子の長辺の長さを測定する。そして、粒子100個分の平均をとったものを粒子の平均粒子径とする。
当該無機微粒子6cの含有率は80個数%以上であることが好ましい。光取り出し層6aの厚さは、無機微粒子6cの平均粒子径よりも厚いことが好ましい。このようにすると、光取り出し層6aにおいて無機微粒子6cを第2電極5側の領域に偏在させ易くなる。すなわち、無機微粒子6cが、光取り出し層6aの厚さ方向で濃度分布を持つようにすることができる。無機微粒子6cを第2電極5側の領域に偏在させる方法としては、例えば、通常塗布する液濃度より希釈し、希釈分だけ厚く塗布する手段を用いることができる。そうすることにより、塗布直後から塗膜の乾燥が終了するまでの時間を調節することができ、無機微粒子6cが有機EL層4側に沈み込み易くなる。そのため、第2電極5側の無機微粒子6cの粒子存在体積率を調整することができる。或いは、無機微粒子6cは、粒子濃度を変えた塗布液を積層させたり、粒子含有塗布液を塗布し、その上にさらに粒子を含有しない樹脂のみの塗布液を塗設したりすることで第2電極5側の領域に偏在させてもよい。
なお、無機微粒子6cの偏在とは、光取り出し層6aにおいて、光取り出し層6aの樹脂部分のみの厚さ方向の中心から両側に分けたときに、光が入射される第2電極5側と、光が外部に取り出される外表面側とで、無機微粒子6cの粒子存在体積比率が異なっている状態をいう。有機EL素子1は、ここでは、光取り出し層6aにおいて、厚さ方向の中心より第2電極5側の領域の無機微粒子6cの粒子存在体積比率が、厚さ方向の中心より外表面側の領域の無機微粒子6cの粒子存在体積比率よりも大きいことが好ましい。
ここで、粒子存在体積率とは、光取り出し層6aに含まれる無機微粒子6c全体の体積に対する光取り出し層6aの特定側に存在する無機微粒子6cの体積である。すなわち、例えば、厚さ方向の中心より第2電極5側の領域の無機微粒子6cの粒子存在体積比率とは、光取り出し層6aに含まれる無機微粒子6c全体の体積に対する、厚さ方向の中心より第2電極5側の領域の無機微粒子6cの体積を意味する。
粒子存在体積比率の算出法としては、例えば、光取り出し層6aの断面(例えば、有機EL素子1の厚さ方向と平行な断面)を作製し、厚さ方向の中心より第2電極5側の領域と外表面側の領域との各々の領域において、そこから任意の5カ所を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影し、光取り出し層6aの厚さと無機微粒子6cの断面積から樹脂成分6bと無機微粒子6cの面積を算出することが挙げられる。本実施形態においては、算出した無機微粒子6cの第2電極5側にある無機微粒子6cの割合を第2電極5側の粒子存在体積比率と表現し、算出した無機微粒子6cの外表面側にある無機微粒子6cの割合を外表面側の粒子存在体積比率と表現する。
光取り出し層6aの第2電極5側の粒子存在体積比率は、50%を超えることが好ましい。さらに、光取り出し層6aの第2電極5側の粒子存在体積比率は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。光取り出し層6aの第2電極5側の粒子存在体積比率が高くなるほど、光散乱量が増加し、光取り出し効率が向上し易くなる。
このように、無機微粒子6cを第2電極5側の領域に偏在させることにより、光取り出し層6aにおいて無機微粒子6cが、無機微粒子6cの外表面側の表面よりも上に突出しないように、光取り出し層6aを構成し易い。従って、光取り出し層6aの外表面側の表面の平坦性を高めることができ、曲げ、圧力などの外部刺激に対して、無機微粒子の有機EL層4への押し込みを抑制できるため、フレキシブル基板への適合性を向上することができる。
光取り出し層6aの算術平均粗さRa、具体的には、第2電極5と対向する光取り出し層6aの表面の算術平均粗さRaは、例えば、1~20nmであることが好ましい(前記した光取り出し層6も同様である)。このようにすると、ダークスポット(DS)の発生を抑制することができる。なお、DSとは、画素上に現れる黒点(非発光部分)をいう。
第2電極5上に光取り出し層6aを形成する場合、光取り出し層6aを形成する材料や条件を適宜設定することにより、算術平均粗さRaを1~20nmの範囲とすることができる。光取り出し層6aの算術平均粗さRaは、DSの発生をより抑制する観点から、1~10nmとするのが好ましい。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠したものである。算術平均粗さRaは、例えば、原子間力顕微鏡(Digital Instruments社製)を用いて測定することができ、光取り出し層6aの中央部5μm四方を測定した値である。なお、光取り出し層6aの中央部とは、光取り出し層6aの水平方向に対して垂直に切った断面の中心を含む所定範囲の部位、すなわち、光取り出し層6aの線幅(横方向)の中点と光取り出し層6aの高さ方向(縦方向)の中点とが交差する点を含む所定範囲の部位をいう。光取り出し層6aの中央部5μm四方とは、前記交差する点を中心とした縦5μm×横5μmの四角形の部位である。
また、算術平均粗さRaは、光取り出し層6aの形成材料、形成条件、形成方法を適宜選択することにより制御することができる。
また、光取り出し層6aの外表面の表面粗さ(第2電極5と対向する面とは反対側の面の表面粗さ)は、前記同様、算術平均粗さRaが1~20nmの範囲であるのが好ましい(前記した光取り出し層6も同様である)。
さらに、光取り出し層6aにおいて、上述の無機微粒子6cと樹脂成分6bとの体積比率(以降PB比という)は、1~40体積%であることが好ましい。PB比は、光取り出し層6aの全体体積中における、樹脂成分6bの体積と無機微粒子6cの体積の合計と、無機微粒子6cの体積との比率から求められる。すなわち、PB比は、{無機微粒子6cの体積/(無機微粒子6cの体積+樹脂成分6bの体積)}×100で求められる。PB比が1体積%以上であると、光取り出し層6aにおける光散乱効率や光取り出し効率が向上し易い。PB比は、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは15体積%以上である。また、PB比が40体積%以下であると、第2電極5側の粒子存在体積比率を大きくできる。そのため、無機微粒子6cの過剰による光取り出し層6aの外表面側の表面からの無機微粒子6cの突出を抑制でき、光取り出し層6aの外表面側の表面の平坦性が向上する。そのため、PB比は、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
また、光取り出し層6a中の無機微粒子6cの役割として、導波光の散乱機能が挙げられる。導波光の散乱機能の向上には、無機微粒子6cによる散乱性を向上させる必要がある。散乱性を向上させるためには、無機微粒子6cと樹脂成分6bとの屈折率差を大きくする、光取り出し層6aの層厚を厚くする、無機微粒子6cの粒子密度を大きくするなどの方法が考えられる。この中で最も他の性能への悪影響が小さい方法が、無機微粒子6cと樹脂成分6bとの屈折率差を大きくすることである。なお、樹脂成分6b及び無機微粒子6cの屈折率は、633nmの波長での測定値であるのが好ましい。樹脂成分6bは、光の波長633nmにおける屈折率nbが1.50以上2.00未満であることが好ましい。
樹脂成分6bの屈折率nbと、含有される無機微粒子6cの屈折率npとの屈折率差|nb-np|は、0.20~1.00であることが好ましい。より好ましくは0.30以上である。樹脂成分6bと無機微粒子6cとの屈折率差|nb-np|が0.20以上であれば、樹脂成分6bと無機微粒子6cとの界面で散乱効果が発生する。屈折率差|nb-np|が大きいほど、界面での屈折が大きくなり、散乱効果が向上する。また、屈折率差|nb-np|が1.00以下であれば、乱反射が起き難くなり、効率の低下が小さくなる。
屈折率差|nb-np|を大きくするためには、無機微粒子6cの屈折率npを樹脂成分6bの屈折率nbよりも小さくするか、又は、無機微粒子6cの屈折率npを樹脂成分6bの屈折率nbよりも大きくする。なお、樹脂成分6bの屈折率nbは、単独の素材で形成されている場合は、単独の素材の屈折率であり、混合系の場合は、各々の素材固有の屈折率に混合比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率である。また、無機微粒子6cの屈折率npは、単独の素材で形成されている場合は、単独の素材の屈折率であり、混合系の場合は、各々の素材固有の屈折率に混合比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率である。
無機微粒子6cの屈折率npが樹脂成分6bの屈折率nbよりも小さい場合には、無機微粒子6cとして、屈折率npが1.50未満の低屈折率粒子を用いることが好ましい。そして、樹脂成分6bとして、屈折率nbが1.60以上のものを用いることが好ましい。また、無機微粒子6cの屈折率npが樹脂成分6bの屈折率nbよりも大きい場合には、無機微粒子6cとして、屈折率npが1.70以上3.00以下の高屈折率粒子を用いることが好ましい。そして、樹脂成分6bとして、屈折率nbが無機微粒子6cの屈折率npより0.20以上小さい屈折率のものを用いることが好ましい。
光取り出し層6aは、上記のように、樹脂成分6bと無機微粒子6cとの屈折率の差により光を拡散させる作用を有する。このため、無機微粒子6cは、他の層への悪影響が少なく、光を散乱する特性が高いことが求められる。
光取り出し層6aの層厚は、散乱を生じるための光路長を確保するためにある程度厚い必要があるが、一方で吸収によるエネルギーロスを生じない程度に薄い必要がある。このため、光取り出し層6aの厚さは、前述したように、250~2000nmであることが好ましい。より好ましくは300nm以上であり、また、より好ましくは800nm以下である。
なお、光取り出し層6aの単層でのヘイズ値は、20%以上が好ましく、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である。ヘイズ値が20%以上であれば、光散乱性(光取り出し効率)を向上させることができる。
次に、無機微粒子6c及び光取り出し層6aについて、前記した事項以外の事項について説明する。
上述のように、光取り出し層6aには無機微粒子6cとして、アスペクト比が2以下の球状粒子が80個数%以上含まれることが好ましい。このアスペクト比が2以下の球状粒子は、平均粒子径が200~500nmであることが好ましい。より好ましくは230nm以上、さらに好ましくは250nm以上である。また、より好ましくは450nm以下、さらに好ましくは400nm未満である。
ここでいうアスペクト比とは、無機微粒子6cの長軸長と短軸長の比[長軸長/単軸長]のことである。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに無機微粒子6cを撮影して画像を得て、その画像から無機微粒子6cの長軸長と短軸長を求めて計算することができる。例えば、無機微粒子6cを倍率10万倍で撮影し、その画像から粒子100個分のアスペクト比を確認し、比率を求める。
光取り出し層6aにおいては、例えば、無機微粒子6cの平均粒子径やアスペクト比を調整することにより、散乱性を向上させることができる。具体的には、可視光域のMie散乱を生じさせる領域以上の粒子を用いることが好ましい。一方、無機微粒子6cを第2電極5側に偏在させ、光取り出し層6aの外表面側の表面を平坦化するためには、平均粒子径を光取り出し層6aの厚さよりも小さくする必要がある。本実施形態においては、光取り出し層6a(光取り出し層6)の膜厚が、無機微粒子6cの一次粒子径(平均粒子径)の2倍以上であるのが好ましい。このようにすると、光取り出し層6aの外表面側の表面をより平坦化できる。
無機微粒子6cは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、無機微粒子6cとして、国際公開第2009/014707号や米国特許第6608439号明細書等に記載の量子ドットを好適に用いることができる。中でも高屈折率を有する無機微粒子6cであることが好ましい。
高屈折率を有する無機微粒子6cとしては、例えば、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、セリウム、ニオブ、タングステンなどの中から選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、具体的には、ZrO、TiO、BaTiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO(インジウム・錫酸化物)、SiO、ZrSiO、ゼオライトなどが挙げられる。
無機微粒子6cは、光取り出し層6aに含有させるために、分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施して用いるか、又は、表面処理を施さずに用いるかを選択することができる。
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウムなどの異種無機酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ステアリン酸などの有機酸、オルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの表面処理材は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
樹脂成分6bは、前記説明したX-Y-X’の構造の成分を含有するが、樹脂成分6bは、X-Y-X’の構造の成分のみからなるものであってもよく、後述する他の樹脂成分を含有してもよい。
他の樹脂成分としては、公知のバインダを特に制限なく使用できる。また、他の樹脂成分は、複数種類を混合して使用することもできる。
ここで、X-Y-X’の構造の樹脂成分と、他の樹脂成分とを混合した樹脂成分6bの場合、前述したように、樹脂成分6bの屈折率nbと、無機微粒子6cの屈折率npとの屈折率差|nb-np|は、0.20~1.00であることが好ましい。そして、無機微粒子6cの屈折率npが樹脂成分6bの屈折率nbよりも小さい構成とする場合、他の樹脂成分としては、高屈折率バインダを用いることが好ましい。
光取り出し層6aにおいて、無機微粒子6cの屈折率npが樹脂成分6bの屈折率nbよりも小さい構成に適用する高屈折率バインダとしては、X-Y-X’の構造の樹脂成分と、他の樹脂成分とを混合した樹脂成分6bの屈折率nbが1.60以上となるようなバインダを用いることが好ましい。
高屈折率バインダとしては、例えば、リオデュラス(登録商標)TYZシリーズ、リオデュラスTYTシリーズ(東洋インキ社製)、ZrO微粒子入り樹脂塗料(Pixelligent Technologies社製)、URシリーズ(日産化学社製)、オルガチックス(登録商標)シリーズ(マツモトファインケミカル社製)、PIUVOシリーズ(ケーエスエム社製)、アクリル系樹脂シリーズ、エポキシ系樹脂シリーズ(NTTアドバンステクノロジ社製)、ヒタロイド(登録商標)シリーズ(日立化成社製)などを用いることができる。
また、無機微粒子6cの屈折率npが樹脂成分6bの屈折率nbよりも大きい構成の光取り出し層6aにおいては、他の樹脂成分としては、X-Y-X’の構造の樹脂成分と、他の樹脂成分とを混合した樹脂成分6bの屈折率nbが無機微粒子6cの屈折率npより0.20以上小さくなるような屈折率のバインダとし、且つできるだけ高屈折率のバインダを用いることが好ましい。高屈折率バインダとしては、前述の高屈折率バインダを用いるのが好ましい。このようにすると、X-Y-X’の構造の樹脂成分と、他の樹脂成分とを混合した樹脂成分6bが低屈折のバインダとなった場合であっても、光取り出し層6a側から来た光が侵入角度によってはバインダ内に進むことができずに反射されてしまうという事態を抑制できる。
また、光取り出し層6aの他の樹脂成分のバインダとしては、特定の雰囲気下で紫外線照射によって、無機材料又は金属の酸化物、窒化物又は酸化窒化物を形成し得る化合物が特に好適に使用される。このような化合物としては、特開平8-112879号公報に記載されている比較的低温で改質処理され得る化合物が好ましい。
具体的には、Si-O-Si結合を有するポリシロキサン(ポリシルセスキオキサンを含む)、Si-N-Si結合を有するポリシラザン、Si-O-Si結合とSi-N-Si結合の両方を含むポリシロキサザンなどを挙げることができる。
光取り出し層6aは、例えば、樹脂成分6bを構成する高屈折率樹脂と、これに含有される無機微粒子6cと、溶媒とを混合させてなる液状塗布液を作製し、これをロールツーロール方式で搬送される、少なくとも第1電極3、有機EL層4、金属親和性層5a、第2電極5が形成された基板2の第2電極5上に塗布する。その後、適宜の条件で液状塗布液を硬化させることによって、光取り出し層6aを形成することができる。
液状塗布液の溶媒としては、例えば、炭素数1~13のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを用いることができる。前記したものの中でも、例えば、炭素数6~13程度の高級アルコール、メチルイソブチルケトン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを用いるのが好ましい。
液状組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などが挙げられる。
液状塗布液を乾燥させる手段としては、例えば、赤外線(IR)の照射、加熱などが挙げられる。なお、前記した溶媒のうち、OH基を有するものについては、OH基が赤外線を吸収するので効率的に発熱し、蒸発を促すことができる。従って、OH基を有する溶媒の場合、赤外線を照射することによって低い温度、すなわち、有機EL層4に用いた化合物が壊れない温度で乾燥させることができる。
乾燥後の液状塗布液を硬化させる手段としては、例えば、エキシマレーザー(発振波長:例えば、193~351nm)を照射することが挙げられる。このようにすると、有機EL層4に殆ど影響を与えることなく光取り出し層6aのみにレーザー光を照射し、硬化させることができる。なお、本実施形態における硬化させる手段としてはこれに限定されず、例えば、加熱、紫外線の照射など高屈折率樹脂に適したものを適宜選択することができる。
光取り出し層6aでは、好ましい態様として無機微粒子6cを用いることを説明したがこれに限定されるものではなく、有機微粒子(図示せず)を用いることができる。なお、有機微粒子も高屈折率を有していることが好ましい。
高屈折率を有する有機微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズなどが挙げられる。
(第1電極)
第1電極3は、前述した有機EL層4、特に、発光層(図示せず)にキャリア(正孔又は電子)を供給する役割を担っている。第1電極3と第2電極5は、いずれか一方が有機EL素子1の陽極となり、他方が陰極となるものであるが、本実施形態においては、第1電極3を発光層に正孔を供給する陽極として用いている。また、本実施形態においては、第1電極3は、通常、反射電極として機能するが、これに限定されず、透明な電極を使用して両面発光を作製することもできる。
第1電極3は、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような第1電極3(陽極)として、Au、Ag、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、希土類金属などの金属や、CuI、SnOなどの導電性材料、金属薄膜、金属酸化物層、有機導電層などを用いることができる。なお、「金属酸化物」とは、例えば、金属酸化物を主成分として含有し、その他の不純物等を含有する場合を含むものである。有機導電層は、主に、導電性高分子と、バインダと、から構成される。導電性高分子及びバインダとしては、特許第5750908号公報及び特許第5782855号公報に記載の化合物を使用することができる。その他、有機導電層を形成する有機導電組成物の調製(方法)、有機導電層の形成(方法)などは、特許第5750908号公報及び特許第5782855号公報に記載の方法に準じて実施することができる。
第1電極3は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法で薄膜を形成させることにより、作製することができる。
第1電極3のシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、厚さは通常10nm~1μmの範囲内、好ましくは50~200nmの範囲内で選ばれる。
シート抵抗はJIS K 7194-1994の導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法に準拠して測定できる。厚さは、接触式表面形状測定器(例えばDECTAK)や光干渉表面形状測定器(例えばWYKO)で測定できる。
また、第1電極3は、導電性を担保する役割を有する観点から、シート抵抗が10000Ω/sq.以下であることが好ましく、2000Ω/sq.以下であることがより好ましい。
(第2電極)
第2電極5は、前述した有機EL層4、特に、発光層(図示せず)にキャリア(正孔又は電子)を供給する役割を担っている。前述したように、本実施形態においては、第2電極5は透明電極である。また、前述したように、第1電極3と第2電極5は、いずれか一方が有機EL素子1の陽極となり、他方が陰極となるものであるが、本実施形態においては、第2電極5を発光層に電子を供給する陰極として用いている。
第2電極5は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属が好ましく用いられる。本実施形態では、そのような第2電極5として前記したように、Ag、Ag合金又はAgを主成分とする混合物を用いる。ここで、「Ag」とは、Agの含有量が、例えば、99.95%以上であり、不純物の含有量が0.05%未満である銀(いわゆる純銀)をいう。なお、不純物としては、CuやFeなどが挙げられる。「Ag合金」とは、Ag以外の金属を含んでいることによって合金化した銀合金をいう。「Agを主成分とする混合物」とは、Ag以外の金属を含んでいるが、その含有量が少ないために合金とまではなっていない銀をいう。本明細書においては、Agを主成分とする混合物を「Ag混合物」と称することもある。
第2電極5に用いることのできる電極物質としては、例えば、銀(Ag)、マグネシウム銀(MgAg)、銅銀(CuAg)、パラジウム銀(PdAg)、インジウム銀(InAg)、アルミニウム銀(AlAg)、セシウム銀(CsAg)、イッテルビウム銀(YbAg)、パラジウム銅銀(PdCuAg)、マグネシウムを含むAg混合物(Mg/Ag混合物)、イッテルビウムを含むAg混合物(Yb/Ag混合物)などが挙げられる。
第2電極5は、これらの電極物質を用いて、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスによる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスによる方法で薄膜を形成させることにより、作製することができる。
第2電極5のシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、100Ω/sq.以下がより好ましい。また、電極の大面積化の観点から50Ω/sq.以下であることが好ましく、20Ω/sq.であることがより好ましい。第2電極5の厚さは1~10nmであるのが好ましい。第2電極5の厚さを10nm以下とすると、第2電極5の吸収成分又は反射成分が少なくなり、良好な透過性を得ることができる。また、第2電極5の厚さを1nm以上とすると、第2電極5を均一に形成することができ、シート抵抗も低くなるため、良好な導電性を得ることができる。
(金属親和性層)
金属親和性層5aは、第2電極5のAgの移動(マイグレーション)及び凝集を抑制する機能を有する。金属親和性層5aは、前記した電子注入層としても機能する。そのため、本実施形態では、図1及び図2に示すように、金属親和性層5aが第2電極5に隣接して設けられている。
具体的には、金属親和性層5aは、第2電極5における外表面側及び有機EL層4側の少なくとも一方に設けることができるが、図1及び図2に示すように、有機EL層4と第2電極5との間に設けるのが好ましい。このようにすると、第2電極5の成膜に際してAgのマイグレーション及び凝集をより抑制できる。これにより、グレインの発生が抑制され、グレインの凹凸由来の局在プラズモン吸収が抑制される。そのため、効率が向上し、視野角依存性を低くすることができる。また、第2電極5と有機EL層4の間に金属親和性層5aが設けられていると、第2電極5の成膜に際してAgの凝集を抑制できるため、導電性が向上する。これは、金属親和性層5aの表面に第2電極5を形成する際、第2電極5を構成するAg原子が金属親和性層5aに含有されているAg親和性化合物と相互作用し、金属親和性層5a表面上でのAg原子の拡散距離が減少する。その結果、特異箇所へのAgのマイグレーション及び凝集が抑制されるものと考えられる。すなわち、Ag原子が、Ag原子と親和性のある原子を有する金属親和性層5a表面上で2次元的な核を形成し、それを中心に2次元の単結晶層を形成するという層状成長型(Frank-van der Merwe:FM型)の膜成長によって形成されているものと推察される。
なお、一般的には、Ag原子が表面を拡散しながら結合して3次元的な核を形成し、3次元的な島状に成長するという島状成長型(Volumer-Weber:VW型)での膜成長により、島状に形成し易いと考えられている。しかし、本実施形態のように金属親和性層5aを形成すると、金属親和性層5aに含有されている銀親和性化合物により、島状成長が抑制され、層状成長が促進されると推察される。また、第2電極5を構成するAg原子が金属親和性層5aに含有されている、Ag原子と親和性のある原子と相互作用し、運動性が抑制されると推測している。そして、これによって、第2電極5の表面平滑性が良化して乱反射を抑制することができ、光透過率が向上すると考えられる。また、該相互作用によって、熱や温度といった物理刺激に対する第2電極5の変化が抑制され、経時安定性を向上させることができると考えられる。
なお、本実施形態においては、金属親和性層5aは、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を用いる。このようにすると、第2電極5を構成するAg原子が、金属親和性層5aを構成する前記化合物と相互作用するため、金属親和性層5a表面におけるAg原子の拡散距離が減少し、Agのマイグレーション及び凝集を抑制することができる。
このような観点から、本実施形態における金属親和性層5aは、下記一般式(13)(特許請求の範囲に記載の一般式(1))で表される構造を有する化合物を少なくとも1種類含有することが挙げられる。
Figure 0007057119000006
一般式(13)中のX及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又はCRを表す。Cは、炭素を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。
また、式中のAは、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。
上記Rが表す置換基としては、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、カルバゾール環等を含む置換基が挙げられる。
また、Aは、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表すが、Aを含むことによって構成可能となるヘテロアリール環のうち、5員のものとしては、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられる。
また、Aによって構成可能となるヘテロアリール環のうち、6員のものとしては、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、カルボリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環、フェナンスリジン環等が挙げられる。
また、Aはさらに置換基を有していてもよい。
なお、本実施形態においては、インドール環のように窒素原子の孤立電子対が芳香環の形成に関与している化合物も、上記一般式(13)で表される構造を有する化合物に含まれる。
本実施形態としては、上記一般式(13)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(14)(特許請求の範囲に記載の一般式(2))で表される構造を有する有機化合物であることが好ましい。これにより、第2電極5のAg原子とより一層相互作用するので、Agの凝集をより一層防ぐことができる。
Figure 0007057119000007
一般式(14)中のX、X、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又はCRを表す。Cは、炭素を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。
式中のA及びAは、それぞれ独立に、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。
式中のLは、単なる結合手、又はアリール環若しくはヘテロアリール環を含む2価の連結基を表す。
は、上記一般式(13)におけるAと同義である。
また、Aを含むことによって構成可能となるヘテロアリール環は、前述したAを含むことによって構成可能となるヘテロアリール環として挙げたものの中から選択するのが好ましい。
また、AもAと同様にさらに置換基を有していてもよい。
なお、AはAと同一のものとしてもよいし、異なるものとしてもよい。
また、Lが表す2価の連結基を構成可能なアリール環(芳香族炭化水素)としては、例えば、ベンゼン環、クロロベンゼン環、メシチレン環、トルエン環、キシレン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、アセナフテン環、フルオレン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環、ビフェニル環などが挙げられる。
また、Lが表す2価の連結基を構成可能なヘテロアリール環(複素環式化合物)としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、トリアゾール環(例えば、1,2,4-トリアゾール環、1,2,3-トリアゾール環等)、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、チオフェン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(前記カルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、キノキサリン環、ピリダジン環、トリアジン環、キナゾリン環、フタラジン環などが挙げられる。
以下に、金属親和性層5aに用いることが可能な、上記一般式(13)や上記一般式(14)で表される構造を有する化合物の具体例(例示化合物1~77)を挙げる。
Figure 0007057119000008
Figure 0007057119000009
Figure 0007057119000010
Figure 0007057119000011
Figure 0007057119000012
Figure 0007057119000013
Figure 0007057119000014
Figure 0007057119000015
上記一般式(13)や上記一般式(14)で表される構造を有する化合物を含む金属親和性層5aの形成方法は、特に制限はなく、例えば、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる湿式方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも蒸着法が好ましく適用される。
この場合の金属親和性層5aの厚さは、1~100nmの範囲内にあることが好ましく、3~50nmの範囲内にあることがより好ましい。この範囲内であればいずれの厚さであっても前記した効果を得ることができる。また、金属親和性層5aの厚さが100nm以下であれば、層の吸収成分が少なくなり、第2電極5の光透過率が向上するため好ましい。また、金属親和性層5aの厚さが1nm以上であれば、均一で連続的な金属親和性層5aが形成されるため好ましい。
また、金属親和性層5aが含有する上記一般式(13)や上記一般式(14)で表される構造を有する化合物が、最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位が-2.2~-1.6eVの範囲内にあるのが好ましい。このようにすると、金属親和性層5aを構成する化合物のエネルギー準位と第2電極5を構成するAg原子のエネルギー準位とが近くなり、電子軌道間で相互作用し易くなる。これにより、金属親和性層5aと第2電極5との親和性が向上し、Agの凝集をより抑制することができる。また、有機EL素子1においては、該エネルギー準位とすることで、第2電極5からのキャリア注入及び発光層へのキャリア輸送が好適となるため好ましい。
また、金属親和性層5aは、上記一般式(13)や上記一般式(14)で表される構造を有する化合物と共に、駆動電圧低下や発光輝度向上のための材料を含有したものであってもよい。そのような材料として、具体的には、特開平6-325871号公報、特開平9-17574号公報、特開平10-74586号公報等に記載されたストロンチウムやアルミニウム、La金属などに代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなどに代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどに代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、Liqなどに代表される金属錯体などが挙げられる。
なお、金属親和性層5aは、導電性を有する材料で構成されている場合であっても、主たる電極となることはない。このため金属親和性5a層は、電極として必要な層厚を備えている必要はない。金属親和性層5aは、金属親和性層5aが形成された第2電極5が用いられる有機EL素子1中において、第2電極5の配置状態に適した層厚を有していればよい。
また、金属親和性層5aは、上述した無機材料を含有する層と有機材料を含有する層とを積層した構成であってもよい。この場合、金属親和性層5aは、第2電極5側から順に、無機材料を含有する層と有機材料を含有する層とを配置した構成とすることが好ましい。
なお、金属親和性層5aは、Agと相互作用する物質を含有した層であればよく、無機材料を含有していてもよいし、有機材料を含有していてもよい。
金属親和性層5aが無機材料を含有する場合、Agと相互作用する物質として、Agよりも昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を含むことが好ましい。このような高表面エネルギー材料としては、例えば、Al、Ti、Au、Pt、Pd、In、Mo、Cuなどが挙げられる。
金属親和性層5aが有機材料を含有する場合、Agと相互作用する物質としては、例えば、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾリジン、アゾール、アジナン、ピリジン、アゼパン、アゼピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、ベンゾ-C-シンノリン、ポルフィリン、クロリン、コリンなどが挙げられる。
(無機層)
図3は、無機層の好ましい構成の一例を説明する概略断面図である。無機層7は、有機EL層4を酸素や水分から保護する役割を担っている。無機層7を有することによってバリア性が向上し、例えば、DSの発生を抑制することができる。図3に示すように、無機層7は、第1無機層7aと、第2無機層7bと、第3無機層7cとで構成することができる。なお、無機層7は、1層又は2層からなるものであってもよく、4層以上からなるものであってもよい。
無機層7は、第2電極5と光取り出し層6との間において、第2電極5の一部のみを覆うように設けられていてもよいが、全面を覆うように設けられていることが好ましい。また、無機層7は、必要に応じて積層構造とすることができる。
無機層7を形成するための材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、窒化炭化シリコンなどのシリコン化合物や、酸化アルミニウム、ZTOなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、無機層7は、バリア性の観点から、シリコンの窒化物を主成分とすることが好ましく、具体的には、窒化シリコンで形成することがより好ましい。すなわち、無機層7は、窒化シリコン層であることが好ましい。また、無機層7を窒化シリコン層とすることで、DSの発生をより確実に抑制できる。なお、「窒化シリコン」とは、例えば、窒化シリコンを主成分として含有し、その他の不純物等を含有する場合を含むものである。
また、無機層7は、同じ組成又は異なる組成のシリコン化合物を主成分とする膜を組み合わせた複合膜や積層膜として形成してもよい。このように無機層7を複合膜や積層膜として形成させる場合は、全体で無機層7としての機能が発現されればよい。
無機層7は、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.1g/(m・24h)未満であることが好ましく、0.01g/(m・24h)以下であることがより好ましく、0.001g/(m・24h)以下であることがさらに好ましい。なお、この無機層7の水蒸気透過度とは、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された値である。
無機層7の厚さは、500~2500nmであることが好ましい。無機層7の厚さが前記範囲内であれば、無機層7の厚さに起因するDSの発生がより抑制され、また、無機層7の割れに起因するDSの発生もより抑制される。無機層7の厚さは、接触式表面形状測定器(例えばDECTAK)を用いて測定することができる。無機層7の膜密度は、4.0~10.0×1022atoms/cmであることが好ましい。
無機層7は、膜密度の異なる2層以上から形成されていることが好ましい。特に、無機層7は、図3に示すように3層構造とし、それぞれ膜密度を異ならせるのが好ましい。ここでは、無機層7は、第2電極5側の第1無機層7aと、中間層である第2無機層7bと、接着剤層8側の第3無機層7cとから構成されている。なお、3層構造でそれぞれ膜密度を異ならせる場合、少なくとも1層が他の2層と膜密度が異なればよく、他の2層は同じ膜密度であってもよいことを意味する。また、3層のそれぞれが、互いに膜密度が異なるものであってもよい。無機層7が膜密度の異なる3層から形成されていると、DSの発生がより抑制される。
第1無機層7a、第2無機層7b、及び、第3無機層7cの膜密度は、それぞれ4.0~10.0×1022atoms/cmであることが好ましい。
ここで、無機層7は、前記3層のうち、中間層である第2無機層7bが最も膜密度が低いことが好ましい。また、無機層7が3層以上の場合は、中間層、すなわち、最下層及び最上層以外の層の膜密度が低いことが好ましい。このような構成とすると、DSがより発生し難くなる。
第2無機層7bが最も膜密度が低い場合、第2無機層7bと第1無機層7aとの膜密度の差、及び、第2無機層7bと第3無機層7cとの膜密度の差は、それぞれ0.3~3.0×1022atoms/cmであることが好ましい。膜密度の測定は、成膜した単膜をラザフォード後方散乱分析法で測定し、成膜した断面のTEMにより膜厚を測定することによって求めることができる。
また、無機層7は、中間層である第2無機層7bが最も膜密度が低い場合において、中間層である第2無機層7bの厚さが無機層7全体の膜厚に対して20~50%であることが好ましい。このような第2無機層7bの厚さが前記範囲内であれば、後述する封止部材9を接着する接着剤層8に起因する水分等の拡散影響が抑制され、DSの発生がより抑制される。なお、4層以上の場合は、最も膜密度が低い中間層(最下層及び最上層以外の層)が無機層7全体の厚さに対して20~50%であることが好ましい。
(無機層の形成方法)
次に、無機層7の形成方法の一例について説明する。
無機層7は、ドライプロセスによって形成することができる。ドライプロセスとしては、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、マグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などの成膜法が挙げられる。
無機層7を形成する工程の一例として、有機シリコン化合物を用いたプラズマCVD法について説明する。プラズマCVD法による無機層7の形成では、有機シリコン化合物の反応生成物によりシリコン化合物を形成する。
プラズマCVD法に用いる有機シリコン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。中でも、成膜での取扱い性や得られる無機層7のバリア性などの特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機シリコン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
例えば、プラズマCVD法を用いて、ヘキサメチルジシロキサンの反応生成物からなる無機層7を成膜する場合、原料ガスとして、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する反応ガスとしての酸素のモル量(流量)を、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)とすることが好ましい。このような比で、ヘキサメチルジシロキサンと酸素とを供給することにより、完全に酸化されないヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が無機層7中に取り込まれる。このため、得られる無機層7に優れたバリア性や、耐屈曲性を持たせることができる。成膜ガス中の酸素のモル量の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量の0.1倍以上とすることが好ましく、0.5倍以上とすることがより好ましい。
また、ドライプロセスを用いた成膜においては、導入ガス以外の微量のガスが存在するため、量論どおりの成分になることは稀である。具体的には、Siが量論代表値であるが、実際の膜にはある程度の比率の幅が存在しており、これらを含めてSiNとして取り扱う。上記の原子数比は、従来公知の方法で求めることが可能であるが、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いた分析装置等で測定することができる。
無機層7の膜密度は、CVD法によって成膜する際の成膜条件によって制御することができる。つまり、CVD法による成膜は、成膜表面における表面反応と、成膜雰囲気における気相反応とによって進行する。このとき、例えば、原料ガスの流量を増加させて気相反応を多くすることで、成膜速度が速くなるとと共に膜密度が低くなる。一方、原料ガスの流量を減少させて表面反応を多くすることで、成膜速度が遅くなると共に膜密度が高くなる。
ここで、無機層7の成膜には、アンモニア(NH)ガスが用いられており、この他の原料ガスとしてはさらにシラン(SiH)ガスが用いられることになる。従って、無機層7である窒化シリコン膜は、アンモニアガスとシランガスとの合計の流量を調整することにより、膜密度が制御された膜として構成される。
つまり、低密度の無機層7(例えば、第2無機層7b)は、表面反応を主とした成膜速度が比較的高速度なCVD法によって成膜された膜となる。一方、高密度の無機層7(例えば、第1無機層7a、第3無機層7c)は、低密度の無機層7と比較して気相反応を主とした成膜速度が低速度なCVD法によって成膜された膜となる。
なお、CVD成膜における気相反応と表面反応は、上述した原料ガスの流量の他に、例えば基材温度や成膜雰囲気内のガス圧力によっても制御される。この際、例えば、基材温度を下げること、成膜雰囲気のガス圧量を高くすること、又はNガスを導入して当該Nガスの濃度を高くすることにより、気相反応が多くなり、成膜速度が速まって膜密度が低くなる。
なお、無機層7を膜密度の異なる3層とする場合においても、第1無機層7a、第2無機層7b、及び、第3無機層7cの膜密度は、前記した方法により制御すればよい。また、無機層7を膜密度の異なる2層、或いは4層以上とする場合においても、膜密度は、前記した方法により制御すればよい。
なお、無機層7は任意に設けることのできるものであり、後記する封止部材9としてガラス基板を用いる場合は無機層7を設けなくともよい。
(接着剤層及び封止部材)
図4は、接着剤層及び封止部材の好ましい構成の一例を説明する概略断面図である。図4に示すように、接着剤層8は光取り出し層6の上に設けられ、封止部材9は接着剤層8の上に設けられている。接着剤層8は、有機EL素子1に後述する封止部材9を密着させるために用いられる。つまり、接着剤層8は、封止部材9を基板2側に固定する役割を有する。封止部材9は、酸素や水分の侵入を防ぎ、有機EL層4の劣化を防止する役割を担っている。接着剤層8及び封止部材9は、光取り出し層6上の一部に設けられていてもよいが、全面に設けられていることが好ましい。また、接着剤層8は、透明なものを用いるのが好ましい。
接着剤層8は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーなどの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2-シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型接着剤で形成することができる。
また、接着剤層8は、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)で形成することができる。接着剤層8は、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどで形成することができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤で形成することができる。接着剤層8は、市販されているものを用いることができる。
封止部材9は、有機EL素子1の有機EL層4などの積層体を覆う板状やフィルム状の部材であって、図4に示すように、接着剤層8によって基板2側に固定される。また、封止部材9は、封止膜であってもよい。封止部材9は、透明なものを用いるのが好ましい。封止部材9は、有機EL素子1の取り出し電極の端子部分を露出させている。なお、封止部材9に取り出し電極を設けて、有機EL素子1の電極と導通させる構成でもよい。
板状の封止部材9として、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板などが挙げられ、これらの基板をさらに薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英、フレキシブル性を有する薄板ガラスなどを挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォンなどを挙げることができる。
特に、有機EL素子1を薄くできることから、封止部材9としてポリマー基板を薄型のフィルム状にして使用することが好ましい。
また、封止部材9は、凹板状に加工して用いてもよい。この場合、上述した板状の封止部材9に対して、サンドブラスト加工、化学エッチング加工などの加工を施すことにより、凹状とすることができる。
さらに、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10-3mL/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、(90±2)%RH)が1×10-3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
封止部材9は、一方の面に前記した接着剤層8を形成し、当該接着剤層8を第2電極5又は無機層7に貼り付けるようにして接着させるのが好ましい。
封止部材9の一方の面への接着剤層8を構成する接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使って塗布してもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
なお、有機EL素子1を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤層8は、室温(25℃)から80℃までで接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤層8中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
(取り出し電極)
前記したように、有機EL素子1において、第1電極3及び第2電極5の端部には、図示しない取り出し電極が設けられている。第1電極3及び第2電極5は、当該取り出し電極を介して、外部電源(図示略)と電気的に接続される。
取り出し電極は、第1電極3や第2電極5と、外部電源とを電気的に接続できるものであればよく、材料は特に限定されない。取り出し電極は、公知の素材を好適に使用でき、例えば、3層構造からなるMAM電極(Mo/Al・Nd合金/Mo)などの金属膜を用いることができる。
(ガスバリア層)
図5は、本実施形態に係る有機EL素子の他の一例の全体構成を説明する概略断面図である。図5に示すように、本実施形態においては、基板2と第1電極3との間、好ましくは、基板2と隣接してガスバリア層10aを設けることができる。
また、図5に示すように、光取り出し層6の外表面に隣接してガスバリア層10bを設けることができる。
さらに、図5に示すように、基板2の直下(図5において、第1電極3が形成される面と反対側の面)にガスバリア層10cを設けることができる。
ガスバリア層10a~10cはいずれか一つを設けることによりガスバリア性が向上し、有機EL素子1の保存安定性を向上させることができるが、設置数を増やすほど高い効果が得られる。ガスバリア層10a~10cは、基板2が樹脂フィルムであるときに設けるのが好ましい。
ガスバリア層10a~10cのうちの少なくとも一層を形成した基板2は、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度を1×10-3g/m・24h以下にすることができる。また、ガスバリア層10a~10cのうちの少なくとも一層を形成した基板2は、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過度を1×10-3ml/m・24h・atm(1atmは、1.01325×10Paである。)以下とすることができ、温度25±0.5℃、湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度を1×10-3g/m・24h以下とすることができる。
ガスバリア層10a~10cは、水分や酸素などの有機EL素子1の劣化をもたらすものの侵入を抑制する機能を有する材料で形成するのが好ましい。ガスバリア層10a~10cを形成するそのような材料として、例えば、酸化シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、窒化炭化シリコンなどのシリコン化合物などを挙げることができる。
また、ガスバリア層10a~10cの脆弱性を改良するために、これらを用いて形成した無機層と有機材料からなる有機層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリア層10a~10cの形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法やコーティング法などを用いることができるが、特開2004-68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましい。また、ポリシラザン含有液を湿式塗布方式により塗布及び乾燥を行って塗布膜を形成した後、形成された塗布膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)を照射して改質処理を施し、ガスバリア層10a~10cを形成する方法も好ましい。
ガスバリア層10a~10cの厚さは、それぞれ1~500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~300nmの範囲内である。このようにすると、所望のガスバリア性能を発揮することができ、また、緻密な膜にクラックが発生するなどの膜質劣化を防止することができる。
〈有機EL素子の製造方法〉
次に、有機EL素子1の製造方法の一例を説明する。
まず、基板2上に、蒸着法やスパッタ法などの適宜の成膜法によって第1電極3を作製する。なお、必要に応じて基板2にガスバリア層10aを形成してもよい。
次に、第1電極3上に、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に成膜して有機EL層4を形成する。これらの各層の成膜は、前記したように、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、真空蒸着法、印刷法などで行うことができるが、均質な膜が得られ易く、且つピンホールが生成し難いなどの点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類などにより異なるが、一般的にボート加熱温度50~450℃、真空度1×10-6~1×10-2Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-50~300℃、層厚0.1~5μmの範囲内で各条件を適宜選択することが好ましい。
有機EL層4を形成した後、この上部に金属親和性層5aを塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる湿式方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等で形成する。その後、この上部に第2電極5を蒸着法やスパッタ法などの適宜の成膜法によって形成する。この際、第2電極5は、有機EL層4によって第1電極3に対して絶縁状態を保ちつつ、有機EL層4の上方から基板2の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。次に、必要に応じて上述の製造方法により無機層7を形成する。また、その後には、取り出し電極及び第2電極5の端子部分を露出させた状態で有機EL層4上に光取り出し層6を設ける。
以上により、所望の有機EL素子1が得られる。そして、この有機EL素子1の上に接着剤層8及び封止部材9を設ける。なお、必要に応じて有機EL素子1にガスバリア層10b、10cを形成してもよい。
このような有機EL素子1の作製においては、1回の真空引きで一貫して第1電極3から第2電極5まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から基板2を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
(効果)
以上に説明した有機EL素子1は、透明電極であるAg、Ag合金又はAgを主成分とする混合物からなる第2電極5に隣接して、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層5aが設けられているので、金属親和性層5a表面上でのAg原子の拡散距離が減少し、特異箇所へのAgのマイグレーション及び凝集が抑制される。そのため、グレインの発生が抑制され、グレインの凹凸由来の局在プラズモン吸収が抑制される。その結果、効率が向上し、視野角依存性を低くすることができる。さらに、有機EL素子1は、光取り出し層6が形成されているので、通常、第2電極5に閉じ込められる光を効率よく取り出すことができる。そのため、これによっても効率が向上し、視野角依存性をより確実に低くすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[第1実施例]
以下のようにして、No.1~41に係る有機EL素子(白色素子)を作製した。なお、No.1~7に係る有機EL素子は比較例であり、No.8~41に係る有機EL素子は実施例である。
〈No.1に係る有機EL素子の作製〉
(1)基板の準備
基板として、無アルカリガラス基板(後記する表2においては単に「ガラス」と表記する)を準備した。
(2)第1電極の形成
ガラス基板の一方の面に、第1電極(金属層)として下記条件でAl膜を形成した。形成した第1電極の厚さは150nmであった。なお、第1電極の厚さは、接触式表面形状測定器(DECTAK)により測定した値である。
Al膜は、真空蒸着装置を用い、真空度1×10-4Paまで減圧した後、タングステン製の抵抗加熱用るつぼを使用して形成した。
(3)有機EL層の形成
まず、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、有機機能層の各層を構成する下記に示す材料を各々素子作製に最適の量で充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
(3-1)第1電極の形成
真空度1×10-4Paまで減圧した後、下記化合物A-1の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で第1電極(金属層側)上に蒸着し、厚さ10nmの正孔注入層を形成した。
(3-2)正孔輸送層の形成
次に、下記化合物M-2の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔注入層上に蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
(3-3)発光層の形成
次に、下記化合物BD-1及び下記化合物H-1を、化合物BD-1が7質量%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの青色発光を呈する発光層(蛍光発光層)を形成した。
次に、下記化合物GD-1、下記化合物RD-1及び下記化合物H-2を、化合物GD-1が20質量%、RD-1が0.5質量%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの黄色を呈する発光層(リン光発光層)を形成した。
(3-4)電子輸送層の形成
その後、電子輸送材料として下記化合物T-1の入った加熱ボートを通電し、Alqよりなる電子輸送層を、発光層上に形成した。この際、蒸着速度を0.1~0.2nm/秒の範囲内とし、厚さを30nmとした。
(3-5)電子注入層(金属親和性層)の形成
次に、電子注入材料として下記化合物I-1の入った加熱ボートに通電して加熱し、Liqよりなる電子注入層を、電子輸送層上に形成した。この際、蒸着速度を0.01~0.02nm/秒の範囲内とし、厚さを2nmとした。なお、この電子注入層は金属親和性層の機能を果たす。
以上により、白色に発光する有機EL層を形成した。
Figure 0007057119000016
(4)第2電極の形成
さらに、Mg/Ag混合物(Mg:Ag=1:9(vol比))を厚さ10nmで蒸着して第2電極と、その取り出し電極を形成した。
(5)封止
(5-1)接着剤組成物の調製
ポリイソブチレン系樹脂「オパノールB50(BASF社製、Mw:34万)」100質量部、ポリブテン系樹脂として「日石ポリブテン グレードHV-1900(新日本石油社製、Mw:1900)」30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤として「TINUVIN765(BASF・ジャパン社製、3級のヒンダードアミン基を有する)」0.5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として「IRGANOX1010(BASF・ジャパン社製、ヒンダードフェノール基のβ位が二つともターシャリーブチル基を有する)」0.5質量部、及び環状オレフィン系重合体として「Eastotac H-100L Resin(イーストマンケミカル社製)」50質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の接着剤組成物を調製した。さらに、接着剤組成物に二酸化チタンを含有させた。
(5-2)封止基板の作製
上記で作製したガスバリア付き支持基板を用意し、これをそのまま封止基板とした。次に、エポキシ系樹脂の中に二酸化チタンを含有させた樹脂組成物をスリットコーターで封止基板に塗布して、UV照射で硬化させて接着剤層としての樹脂層を形成した。
(5-3)封止基板による封止
封止後に形成される接着剤層の厚さが50μmとなるように調製した上記の二酸化チタンを含有させた接着剤組成物を、封止基板の第2電極側となる前記樹脂層の表面に塗工し、120℃で2分間乾燥させて樹脂層を含む接着剤層を形成した。次に、形成した接着剤層面に対して、剥離シートとして、厚さ38μmの剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面を貼付して、剥離シート(接着剤層)付き封止基板を作製した。
上述の方法で作製した剥離シート(接着剤層)付き封止基板を、窒素雰囲気下24時間以上放置した。放置後、剥離シートを除去し、80℃に加熱した真空ラミネーターで有機EL素子を覆う形でラミネートした。さらに、120℃で30分加熱し封止し、No.1に係るトップエミッション型の有機EL素子を作製した。
〈No.2~41に係る有機EL素子の作製〉
表2に示すように、適宜、基板、電子輸送層、電子注入層(金属親和性層)を変更し、また、第2電極上に光取り出し層を形成し、No.1に係る有機EL素子と同様にして、No.2~41に係る有機EL素子を作製した。なお、No.2、6~41に係る有機EL素子は、前記(3-3)で発光層を形成した後、前記(3-4)の電子輸送層の形成を行わずに前記(3-5)を行って電子注入層を形成した。
表2の基板における「バリア」は、透明樹脂製フレキシブル基材として、株式会社きもと製のクリアハードコート層付きポリエチレンテレフタレート(PET/CHC)フィルム(G1SBF、厚さ125μm、屈折率1.59)にガスバリア層を形成したものを用いていることを示す。
表2の金属親和性層における「Alq:Liq」は、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムと8-ヒドロキシキノリンリチウムとを併用していることを示す。Alq:Liqは、Alqと同様にして形成することができる。
表2の金属親和性層における「例示化合物10」、「例示化合物12」…「例示化合物77」は、それぞれ金属親和性層5aの説明で例示した例示化合物の番号に対応する化合物を用いていることを示す。
表2の金属親和性層における「例示化合物10:Liq」は、例示化合物10と8-ヒドロキシキノリンリチウム(Liq)とを併用していることを示す。
例示化合物10、例示化合物12…例示化合物77や例示化合物10:Liqは、金属親和性層のLiq(前記(3-5)参照)と同様にして形成することができる。
表2の光取り出し層における「マトリクス+粒子」は、マトリクス(バインダ樹脂)として、X,X’が前記式(1)であり、Yが前記式(8)を用いた-(8)-S-(8)-である樹脂成分(前記表1の例16参照)を用い、粒子として、アスペクト比が2であり、一次粒子径の平均粒子径が0.09μm、0.1μm、0.29μm、1μm又は1.1μmである無機微粒子(堺化学社製、含有率15体積%)を用いて光取り出し層を形成したことを示す。
No.4、5、8~41における光取り出し層は、前記(4)で第2電極を形成した後、前記(5)で封止する間に、次のようにして形成した。
まず、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びイソプロピルアルコールを30:50:20の溶媒比(質量比)で混合して溶媒を調製した。この溶媒に前記無機微粒子と、前記バインダ樹脂とを、それぞれの固形分比率(体積%)が70:30となり、塗布液の固形分濃度が15質量%となるように混合して、全量10mLの光取り出し層の塗布液を調製した。
この液を撹拌速度500rpmで10分間混合し、疎水性PVDF 0.45μmフィルター(ワットマン社製)で濾過して、光取り出し層の塗布液を得た。
上記塗布液をインクジェット塗布法で第2電極上に塗布した後、簡易乾燥(70℃、2分)し、さらに、後述する波長制御IRで基材温度80℃未満の出力条件で5分間乾燥処理を実行した。
波長制御IRとしては、赤外線照射装置(アルティメットヒーター/カーボン、明々工業社製)に、波長3.5μm以上の赤外線を吸収する石英ガラス板を2枚取付け、ガラス板間に冷却空気を流した波長制御赤外線ヒータを用いた。
次に、下記改質処理条件で硬化反応を促進し、光取り出し層を得た。なお、光取り出し層は、硬化後の厚さが1μmとなるように形成した。
(改質処理装置)
装置:エム・ディ・コム社製エキシマ照射装置MODEL MEIRH-M-1-200-222-H-KM-G
波長:222nm
ランプ封入ガス:KrCl
(改質処理条件)
エキシマ光強度:8J/cm(222nm)
ステージ加熱温度:60℃
照射装置内の酸素濃度:大気
作製したNo.1~41に係る有機EL素子について、効率、視野角依存性、及び駆動電圧の各項目を以下のようにして評価した。
(効率)
作製したNo.1~41に係る有機EL素子について、室温(約23~25℃の範囲内)で、2.5mA/cmの定電流密度条件下による点灯を行い、分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各サンプルの発光輝度を測定し、当該電流値における発光効率(外部量子効率(EQE))を求めた。
なお、効率向上は、No.1に係る有機EL素子の発光効率を100とする相対値で表2に表した。効率は、130以上を合格とし、130未満を不合格とした。
(視野角依存性)
23℃、55%RHの環境下で、分光放射輝度計CS-1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、2.5mA/cm定電流駆動時の各サンプルの正面(0°とする)から測定した輝度と正面から60°方向から測定した輝度を、1931CIE座標系上のx、y値の変動最大距離(色度変動)として下式で算出し、その結果を下記の基準で◎~×にランク分けした。◎(優)、○(良)、△(可)を合格とし、×(不可)を不合格とした。
色度変動(ΔExy)=(Δx+Δy1/2
◎:0.05未満
○:0.05以上0.10未満
△:0.10以上0.20未満
×:0.20以上
(駆動電圧)
有機EL素子を室温、2.5mA/cmの定電流条件下で駆動したときの初期駆動電圧を各々測定し、測定結果を下記に示すようにNo.1に係る有機EL素子を100として各々相対値で示した。
駆動電圧(相対値)=(各素子の初期駆動電圧/No.1に係る有機EL素子の初期駆動電圧)×100
なお、算出された駆動電圧の値が小さいほど比較に対して駆動電圧が小さいことを示す。
表2に、[第1実施例]に係る有機EL素子の主な構成と、各評価結果とを示す。なお、表2の電子輸送層、電子注入層(金属親和性層)、光取り出し層及び一次粒子径における「-」は、該当する構成を有していないことを示す。また、これらの厚さ及び厚さ/一次粒子径における「-」は、前記した層などの構成を有していないこと、及び前記した層などの構成を有していないため算出できないことを示している。
Figure 0007057119000017
表2に示すように、No.1~5に係る有機EL素子は、電子注入層(金属親和性層)が設けられていたが、当該金属親和性層が一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有していなかったので、効率及び視野角依存性が劣っていた(比較例)。
また、No.6、7に係る有機EL素子は、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられていたものの、光取り出し層が形成されていなかったので、効率が劣っていた(比較例)。
これに対し、No.8~41に係る有機EL素子は、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられており、かつ、光取り出し層が形成されていたので、効率及び視野角依存性が優れていた(実施例)。また、No.8~41に係る有機EL素子は、駆動電圧も低く良好な結果となった。
[第2実施例]
以下のようにして、No.42~60に係る有機EL素子(青蛍光素子)を作製した。なお、No.42~48に係る有機EL素子は比較例、No.49~60に係る有機EL素子は実施例である。
〈No.42に係る有機EL素子の作製〉
(1)ガラス基板及び第1電極の形成
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板(後記する表3においては単に「ガラス」と表記する)をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥して、UVオゾン洗浄を5分間行った。
洗浄済みのガラス基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、有機EL層を構成する各材料を最適な量でタングステン製抵抗加熱ボートに充填し、加熱ボートを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、電極材料を構成する各材料を最適な量でタンタル製の抵抗加熱ボートにアルミニウム(Al)と、銀(Ag)及びマグネシウム(Mg)と、をそれぞれ充填し、基板ホルダーと加熱ボートとを第2真空槽内に取り付けた。
はじめに、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10-4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボートを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を形成した。
まず、ガラス基板上に陽極としてアルミニウム(Al)からなる第1電極を厚さ100nmで形成した。
(2)有機EL層の形成
(2-1)正孔注入層の形成
次いで、正孔注入材料として下記構造式に示すHAT-CNが入った加熱ボートに通電して加熱し、HAT-CNよりなる正孔注入層を、第1電極上に形成した。この際、蒸着速度0.1~0.2nm/秒の範囲内で、厚さ10nmとした。
(2-2)正孔輸送層の形成
次いで、正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα-NPDが入った加熱ボートに通電して加熱し、α-NPDよりなる正孔輸送層を、正孔注入層上に形成した。この際、蒸着速度0.1~0.2nm/秒の範囲内、厚さ120nmとした。
(2-3)発光層の形成
次いで、ホスト材料として下記化合物H1の入った加熱ボートと、蛍光発光性化合物である下記化合物DP1の入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料と蛍光発光性化合物とよりなる発光層を、正孔輸送層上に形成した。この際、蒸着速度がホスト材料:蛍光発光性化合物=95:5(質量比)となるように、加熱ボートの通電を調節した。また、厚さを30nmとした。
Figure 0007057119000018
(2-4)電子輸送層の形成
その後、電子輸送材料としてAlq(前記参照)の入った加熱ボートを通電し、Alqよりなる電子輸送層を、発光層上に形成した。この際、蒸着速度を0.1~0.2nm/秒の範囲内とし、厚さを30nmとした。
(2-5)電子注入層(金属親和性層)の形成
次に、電子注入材料としてLiq(前記参照)の入った加熱ボートに通電して加熱し、Liqよりなる電子注入層を、電子輸送層上に形成した。この際、蒸着速度を0.01~0.02nm/秒の範囲内とし、厚さを2nmとした。なお、この電子注入層は金属親和性層の機能を果たす。
以上により、青色に蛍光発光する有機EL層を形成した。
(3)第2電極の形成
その後、電子注入層まで形成した基板を、真空蒸着装置の蒸着室から、第2電極の材料としてタングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)及びマグネシウム(Mg)が充填された真空槽内に、真空状態を保持したまま移送した。次に、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電して加熱し、電子注入層上に、第2電極(Mg:Ag=1:9(vol比)のMg/Ag混合物、厚さ10nm)を形成した。
(4)キャッピング層の形成
その後、元の真空槽内に移送し、第2電極上に、α-NPDを蒸着速度0.1~0.2nm/秒の範囲内で厚さが40nmとなるまで蒸着し、光取り出し改良を目的とするキャッピング層を形成した。
(5)封止
その後、キャッピング層上を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止部材で覆い、有機EL層などの積層部を囲むようにして、ガラス基板と封止部材との間に接着剤(シール材)をシールした。接着剤としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止部材とガラス基板との間に充填した接着剤に対して、封止部材側からUV光を照射し、接着剤を硬化させた。
なお、前記した正孔注入層からキャッピング層の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、10cm×10cmのガラス基板における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域とし、発光領域の全周に幅0.25cmの非発光領域を設けた。また、陽極である第1電極及び陰極である第2電極は、有機EL層によって絶縁された状態で、ガラス基板の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、No.42に係るトップエミッション型の有機EL素子を作製した。
〈No.43~60に係る有機EL素子の作製〉
表3に示すように、適宜、基板、電子輸送層、電子注入層(金属親和性層)を変更し、また、第2電極上に光取り出し層を形成し、No.42に係る有機EL素子と同様にして、No.43~60に係る有機EL素子を作製した。なお、No.43、47~60に係る有機EL素子は、前記(2-3)で発光層を形成した後、前記(2-4)の電子輸送層の形成を行わずに前記(2-5)を行って電子注入層(金属親和性層)を形成した。
表3における「バリア」、「Alq:Liq」、「例示化合物10:Liq」、「例示化合物10」などは、[第1実施例]と同義である。
また、光取り出し層も[第1実施例]と同様にして形成した。
作製したNo.42~60に係る有機EL素子について、[第1実施例]と同様にして、効率、視野角依存性、及び駆動電圧の各項目を評価した。
表3に、[第2実施例]に係る有機EL素子の主な構成と、各評価結果とを示す。なお、表3の電子輸送層、電子注入層(金属親和性層)、光取り出し層及び一次粒子径における「-」は、該当する構成を有していないことを示す。また、これらの厚さ及び厚さ/一次粒子径における「-」は、前記した層などの構成を有していないこと、及び前記した層などの構成を有していないため算出できないことを示している。
Figure 0007057119000019
表3に示すように、No.42~46に係る有機EL素子は、金属親和性層が設けられていたが、当該金属親和性層が非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有していなかったので、効率及び視野角依存性が劣っていた(比較例)。
また、No.47、48に係る有機EL素子は、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられていたものの、光取り出し層が形成されていなかったので、効率が劣っていた(比較例)。
これに対し、No.49~60に係る有機EL素子は、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられており、かつ、光取り出し層が形成されていたので、効率及び視野角依存性が優れていた(実施例)。また、No.49~60に係る有機EL素子は、駆動電圧も低く良好な結果となった。
1 有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
2 基板
3 第1電極
4 有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)
5 第2電極(透明電極)
5a 金属親和性層
6、6a 光取り出し層
6c 無機微粒子
7 無機層
8 接着剤層
9 封止部材

Claims (11)

  1. 基板と、有機エレクトロルミネッセンス層と、Ag、Ag合金又はAgを主成分とする混合物からなる透明電極と、光取り出し層との順で形成され、前記有機エレクトロルミネッセンス層で発生した光を前記透明電極から取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記光取り出し層が樹脂成分と無機微粒子を含み、前記樹脂成分の屈折率nbと前記無機微粒子の屈折率npとの屈折率差|nb-np|が0.2~1.00であり、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記透明電極に隣接して、非共有電子対を有するヘテロ原子を分子内に含む化合物を含有する金属親和性層が設けられており、前記化合物が下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0007057119000020
    (前記一般式(1)中のX 及びX は、それぞれ独立に、窒素原子又はCR を表す。Cは、炭素原子を表し、R は、水素原子又は置換基を表す。
    前記一般式(1)中のA は、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。)
  2. 前記Aが、6員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記6員のヘテロアリール環を構成する残基が、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環又はフェナンスリジン環を構成する残基であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記Aが、5員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記5員のヘテロアリール環を構成する残基が、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環又はチアゾール環を構成する残基であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する有機化合物であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0007057119000021
    (前記一般式(2)中のX、X、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又はCRを表す。Cは、炭素原子を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。
    前記一般式(2)中のA及びAは、それぞれ独立に、5員又は6員のヘテロアリール環を構成する残基を表す。
    前記一般式(2)中のLは、単なる結合手、又はアリール環若しくはヘテロアリール環を含む2価の連結基を表す。)
  7. 前記A及び前記Aが、それぞれ独立に、6員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記6員のヘテロアリール環を構成する残基が、それぞれ独立に、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環又はフェナンスリジン環を構成する残基であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記A及び前記Aが、それぞれ独立に、5員のヘテロアリール環を構成する残基を表すことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記5員のヘテロアリール環を構成する残基が、それぞれ独立に、インドール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環又はチアゾール環を構成する残基であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記光取り出し層に含有される無機微粒子の一次粒子径が0.1~1μmであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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