JP7056820B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、潤滑油の滞留を抑制し、冷却作用を向上させることである。
回転軸に対して偏心させて固定され、基端から先端まで軸方向に貫通した導入流路が形成され、導入流路によって基端側から先端側へ潤滑油が導入される偏心軸部材と、
可動スクロールのボスに支持され、内周面が偏心軸部材における先端側の外周面に摺動可能に嵌り合う軸受と、
重量バランスを取るために偏心軸部材に設けられ、径方向の中心側に円環部が形成され、円環部が軸受の端面を覆うように配置され、円環部の内周面が偏心軸部材における基端側の外周面に固定されたカウンターウェイトと、を備え、
円環部には、偏心軸部材の先端側から軸受に供給された潤滑油を排出するための排出流路が形成されている。
《構成》
図1は、圧縮機の前後方向に沿った断面図である。
圧縮機11は、例えばカーエアコンの冷媒回路で用いられるベルト駆動型のスクロール圧縮機であり、冷媒を吸入し、圧縮してから排出する。
圧縮機11は、前後方向に沿って前側から順に並んだ、フロントハウジング12と、センタハウジング13と、リアハウジング14と、によって気密性を保つように一体化されている。フロントハウジング12の上部には、冷媒を吸入する吸入口(図示省略)が形成され、リアハウジング14の上部には、圧縮された冷媒を排出する排出口16が形成されている。
センタハウジング13の後側には、固定スクロール24が形成されており、フロントハウジング12の後側からセンタハウジング13の前側にかけて、可動スクロール25が収容されている。
固定スクロール24は、センタハウジング13の後側を閉塞するように形成され、円板状に形成された固定端板26と、固定端板26の前面に形成された固定渦巻き27と、を備える。
可動スクロール25は、固定端板26の前側に配置されており、円板状に形成された可動端板28と、可動端板28の後面に形成され、固定渦巻き27と噛み合う可動渦巻き29と、を備える。
可動端板28の前面には、ボス32が形成され、回転軸21の後端には、偏心ブッシュ33(偏心軸部材)が固定され、偏心ブッシュ33がボス32に回転自在の状態で嵌め込まれている。回転軸21の回転運動は、偏心ブッシュ33を介して可動スクロール25の旋回運動に変換される。可動スクロール25は、例えばピン&ホールを介して自転が阻止され、且つ固定スクロール24に対する公転が許容されている。
固定スクロール24に対して可動スクロール25が公転すると、圧力室31は、前後方向から見て、スクロール中心に向かって変位してゆき、且つ容積が縮小してゆく。圧力室31は、スクロール外側にあるときに吸入口(図示省略)と連通して冷媒を吸入し、スクロール中心にあるときに吐出孔(図示省略)と連通して圧縮した冷媒を吐出する。吐出弁36は、吐出圧を受けるときに、吐出室35に冷媒を吐出させる。
上記が圧縮機11の概要である。
図2は、偏心ブッシュがボスに嵌り合う部分を拡大した断面図である。
回転軸21の後端には、回転軸21に対して偏心されたクランクピン41が形成されている。偏心ブッシュ33には、軸方向に貫通した貫通孔42が形成されており、クランクピン41が貫通孔42に挿入され、相対回転することがないよう固定されている。ボス32には、すべり軸受43が嵌め込まれており、すべり軸受43の内周面が、偏心ブッシュ33における先端側の外周面に摺動可能に嵌り合っている。偏心ブッシュ33には、重量バランスを取るためのカウンターウェイト44が形成されている。
偏心ブッシュ33の先端側から軸受43に供給された潤滑油を排出するために、円環部51には排出流路53が形成されている。排出流路53は、ボス32に対して軸方向に対向する円環部51の端面に形成されており、径方向に延びる溝である。
図中の(a)は平面図であり、図中の(b)は斜視図である。偏心ブッシュ33は、外周面における周方向の一部に、可動スクロール25へ動力を伝達する荷重点54がある。荷重点54は、偏心ブッシュ33の外周面のうち、貫通孔42が最も近い部位に相当し、図中の(a)では破線で囲んだ部位、図中の(b)では網掛けをした部位である。排出流路53は、円環部51における周方向のうち、荷重点54を避けた角度位置に形成されている。さらに、排出流路53は、円環部51における周方向のうち、回転軸21の回転中心55に対して導入流路45よりも旋回半径外側となる角度位置に形成されており、できるだけ旋回半径外側となる角度位置にする。
次に、第一実施形態の主要な作用効果について説明する。
偏心ブッシュ33と軸受43との間に潤滑油を供給するために、偏心ブッシュ33に潤滑用の導入流路45を形成している。潤滑油は、導入流路45によって偏心ブッシュ33の基端側から先端側へ導入され、さらに隙間46によって軸受43に供給され、こうして軸受43と偏心ブッシュ33との間に良好な潤滑油膜が形成される(図2参照)。しかしながら、カウンターウェイト44の円環部51は、軸受43の端面を覆うように配置されているため、軸受43に供給された潤滑油が排出されにくい構造であり、摺動熱がこもりやすくなってしまう。
圧縮機11の稼働時、偏心ブッシュ33の荷重点54が、軸受43の内周面を押すことになるため、偏心ブッシュ33における外周面のうち、荷重点54が軸受43の内周面に対して密着している。したがって、荷重点54では潤滑油が排出されにくい。一方、偏心ブッシュ33における外周面のうち、荷重点54を除く領域では、軸受43の内周面に対する密着度合が軽減されるため、潤滑油が排出されやすい。そこで、円環部51における周方向のうち、荷重点54を避けた角度位置に、排出流路53を形成している。これにより、潤滑油を排出しやすくなる。
図4は、旋回半径の内側と外側とを示す図である。
ここでは、回転軸21に固定され、回転軸21の回転に伴って旋回する点A及び点Bを模式的に描いている。点Aは旋回半径の内側にあり、点Bは旋回半径の外側にある。回転軸21が回転するときに、旋回半径の外側にある点Bは、旋回半径の内側にある点Aよりも、速度が速い。
(1/2)ρ×v2+p=一定
上記の式より、速度が速いほど圧力が低下し、速度が遅いほど圧力が上昇する。すなわち、下記の関係が成立する。vAは点Aでの速度、vBは点Bでの速度、pAは点Aでの圧力、pBは点Bでの圧力である。
vA<vB
pA>pB
なお、潤滑油の導入量を調整するには、導入流路45の直径や、数量等を調整すればよい。また、潤滑油の排出量を調整するには、排出流路53における周方向の幅や、軸方向の深さ、また数量等を調整すればよい。
《構成》
第二実施形態は、より潤滑油を排出しやすくするために、偏心ブッシュ33の外周面に溝61を形成するものである。
図5は、偏心ブッシュがボスに嵌り合う部分を拡大した第二実施形態の断面図である。
ここでは、偏心ブッシュ33に変更を加えたことを除いては、前述した第一実施形態と同様の構成であり、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
偏心ブッシュ33の外周面には、先端から基端まで延び、排出流路53に連通する溝61が形成されている。
図6は、第二実施形態の偏心ブッシュ及びカウンターウェイトを示す図である。
図中の(a)は平面図であり、図中の(b)は斜視図である。溝61は、偏心ブッシュ33における周方向のうち、排出流路53と同一の角度位置に形成されている。
次に、第二実施形態の主要な作用効果について説明する。
ここでは、偏心ブッシュ33の外周面に、排出流路53に連通する溝61を形成している。これにより、軸受43に供給された潤滑油は、溝61を通って主に排出流路53から排出される。溝61は、偏心ブッシュ33における軸方向の全体にわたって形成されているため、潤滑油は溝61の基端側からも排出される。したがって、より積極的に潤滑油を排出することができる。
その他、前述した第一実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、偏心ブッシュ33の外周面に対して、後側の先端から前側の基端まで延びる溝61を形成しているが、これに限定されるものではない。溝61は、排出流路53に連通できればよいので、軸方向の全体にわたって形成しなくとも、後側の先端から前側の排出流路53までの区間に形成されるだけでもよい。
《構成》
第三実施形態は、排出流路の他の構成例を示すものである。
図7は、偏心ブッシュがボスに嵌り合う部分を拡大した第三実施形態の断面図である。
ここでは、円環部51に変更を加えたことを除いては、前述した第一実施形態と同様の構成であり、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
偏心ブッシュ33の先端側から軸受43に供給された潤滑油を排出するために、円環部51には排出流路71が形成されている。排出流路71は、円環部51の内周面に形成されており、軸方向に延びる溝である。
図中の(a)は平面図であり、図中の(b)は斜視図である。排出流路71は、円環部51における周方向のうち、荷重点54を避けた角度位置に形成されている。さらに、排出流路71は、円環部51における周方向のうち、回転軸21の回転中心55に対して導入流路45よりも旋回半径外側となる角度位置に形成されており、できるだけ旋回半径外側となる角度位置にする。
次に、第三実施形態の主要な作用効果について説明する。
ここでは、排出流路71として、円環部51の内周面に、軸方向に延びる溝を形成している。これにより、軸受43に供給された潤滑油を排出流路71から排出することができる。したがって、潤滑油の滞留を抑制でき、冷却作用を向上させることができる。
なお、潤滑油の排出量を調整するには、排出流路71における周方向の幅や、径方向の深さ、また数量等を調整すればよい。
その他、前述した第一実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
《構成》
第四実施形態は、より潤滑油を排出しやすくするために、軸受43の内周面に溝81を形成するものである。
図9は、偏心ブッシュがボスに嵌り合う部分を拡大した第四実施形態の断面図である。
ここでは、軸受43に変更を加えたことを除いては、前述した第一実施形態と同様の構成であり、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
軸受43の内周面には、先端から基端まで軸方向に沿って延びる溝81が形成されている。
次に、第四実施形態の主要な作用効果について説明する。
ここでは、軸受43の内周面に、排出流路53に連通する溝81を形成している。これにより、軸受43に供給された潤滑油は、溝81を通って排出流路53から排出される。したがって、より積極的に潤滑油を排出することができる。
その他、前述した第一実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、軸受43の内周面に対して、軸方向に沿って延びる溝81を形成しているが、これに限定されるものではない。溝81は、排出流路53に連通できればよいので、軸方向に沿って延びたものではなく、螺旋状に延びる溝としてもよい。
図10は、第四実施形態の変形例を示す軸受の図である。
図中の(a)は平面図であり、図中の(b)は斜視図である。軸受43の内周面には、先端から基端まで螺旋状に延びる三つの溝81が形成されている。各溝81は、周方向に沿って等間隔に形成されている。何れか一つの溝81の一端が排出流路53に連通するように、軸受43の角度位置が決定される。このように、螺旋状に延びる溝81が形成された軸受43は、既存の軸受として流通しているため、加工を施すことなく、そのまま使用することができ、工数の削減につながる。
Claims (5)
- 回転軸に対して偏心させて固定され、基端から先端まで軸方向に貫通した導入流路が形成され、前記導入流路によって基端側から先端側へ潤滑油が導入される偏心軸部材と、
可動スクロールのボスに支持され、内周面が前記偏心軸部材における先端側の外周面に摺動可能に嵌り合う軸受と、
重量バランスを取るために前記偏心軸部材に設けられ、径方向の中心側に円環部が形成され、前記円環部が前記軸受の端面を覆うように配置され、前記円環部の内周面が前記偏心軸部材における基端側の外周面に固定されたカウンターウェイトと、を備え、
前記円環部には、前記偏心軸部材の先端側から前記軸受に供給された潤滑油を排出するための排出流路が形成され、
前記排出流路は、前記ボスに対して軸方向に対向する前記円環部の端面に形成された径方向に延びる溝であることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記偏心軸部材の外周面には、先端から基端側に向かって延び、前記排出流路に連通する溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
- 前記軸受は、すべり軸受であり、前記すべり軸受の内周面には、基端から先端まで延びる溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
- 前記偏心軸部材には、外周面における周方向の一部に、前記可動スクロールへ動力を伝達する荷重点があり、
前記排出流路は、前記円環部における周方向のうち、前記荷重点を避けた角度位置に形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のスクロール圧縮機。 - 前記排出流路は、前記円環部における周方向のうち、前記回転軸の中心に対して前記導入流路よりも旋回半径外側となる角度位置に形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のスクロール圧縮機。
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