JP7056630B2 - 溶融金属めっき浴への金属供給方法および溶融金属めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融金属めっき浴への金属供給方法および溶融金属めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶融金属めっき浴への金属供給方法および溶融金属めっき鋼板の製造方法に関する。特に、金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて、連続溶融亜鉛めっき設備の亜鉛めっき浴に亜鉛を供給する技術に関する。
従来の連続溶融亜鉛めっき設備の亜鉛めっき浴への亜鉛供給方法としては、亜鉛めっき浴の浴面位置低下時に亜鉛インゴットを投入する方法や、予め成分調整した溶融亜鉛を亜鉛めっき浴に供給する方法がある。亜鉛めっき浴への鋼板の浸漬時間を一定にして、めっき品質を均一にするためには、亜鉛めっき浴の浴面位置を一定レベルに保つ必要がある。
亜鉛めっき浴の浴面位置を調整する技術として、例えば特許文献1には、浴面位置を検出するセンサを用いて、浴面が低下したときに亜鉛を補給し、浴面が所定位置まで上昇したときに亜鉛の補給を停止させることが記載されている。また、特許文献2には、連続溶融亜鉛めっき設備の亜鉛浴からの亜鉛持出し量を予測モデルで計算し、亜鉛インゴット浸漬深さを決定する方法が記載されている。
特許文献1、2のいずれも、金属インゴット投入による浴温の急変や浴面位置の急上昇を防止するため、投入時に一気に金属インゴットをめっき浴に浸漬させず、徐々に金属インゴットが溶解するように、金属インゴットの浸漬深さを調節できる技術である。
特公昭56-35746号公報 特開平11-50216号公報
金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて金属インゴットを浸漬させる方法として、例えば吊環が挿入された金属インゴットをめっき浴に浸漬する方法がある。吊環が挿入された金属インゴットの場合、金属インゴットの浸漬が完了する前に金属インゴットが溶解により吊環から徐々に落下移動し、溶解途中において、金属インゴット上面の端部片(金属インゴット片)がめっき浴に落下し、その結果、溶融金属めっき浴底部のボトムドロスの巻上げをもたらすといった問題がある。特許文献1、2のような技術の場合、吊環から金属インゴット片が落下することによる、溶融金属めっき浴底部のボトムドロスの巻上げについては考慮されていない。
本発明は上記のような問題点に着目してなされたものであって、金属インゴット片の落下による溶融金属めっき浴底部のボトムドロスの巻上げを抑制することが可能な、溶融金属めっき浴への金属供給方法および溶融金属めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した。その結果、金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて溶融金属めっき浴に金属を供給する際に、溶解中の金属インゴットが落下移動することを、金属インゴット投入用モータの負荷率(負荷変動率)等に基づいて検出し、溶解途中の金属インゴット片がめっき浴に落下する前に、めっき浴中への金属インゴットの浸漬を完了させるようにした。そして、溶解中の金属インゴットの落下移動を検出したとき、溶解途中の金属インゴット片がめっき浴に落下する前にめっき浴中への金属インゴットの浸漬を完了させる。すなわち、めっき浴中への金属インゴットの浸漬完了を早めることにより、金属インゴット片の落下による溶融金属めっき浴底部のボトムドロスの巻上げを抑制することができることを見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて、溶融金属めっき浴に金属を供給する溶融金属めっき浴への金属供給方法において、
溶融金属めっき浴への金属インゴットの溶解途中で金属インゴットの落下移動を検出したとき、
溶融金属めっき浴への金属インゴットの浸漬を完了させることを特徴とする溶融金属めっき浴への金属供給方法。
[2]金属インゴット投入用モータの負荷率または負荷変動率により、金属インゴットの落下移動を検出することを特徴とする[1]に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
[3]金属インゴットの上面の位置を検出する上面位置検出計により、金属インゴットの落下移動を検出することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
[4]前記落下移動は、吊具が挿入された金属インゴットが、吊具から抜け落ちることによる金属インゴットの落下移動であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
[5]前記吊具は、吊環であることを特徴とする請求項4に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
]金属インゴットの上面の位置が溶融金属めっき浴の浴面位置以下となるように金属インゴットを浸漬させることで、金属インゴットの浸漬を完了させることを特徴とする[1]~[]のいずれかに記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
][1]~[]のいずれかに記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法により金属が供給される溶融金属めっき浴で、鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融金属めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、溶解途中の金属インゴット片の落下による溶融金属めっき浴底部のボトムドロスの巻上げを抑制することができる。したがって、本発明を用いることにより、溶融金属めっき設備における製品品質向上の効果もある。
図1は、本発明の一実施形態に係る、溶融金属めっき鋼板の製造設備および金属インゴット投入装置を示す概略図である。 図2は、金属インゴットが吊環から抜け落ちる様子を示す模式図であり、(a)は、金属インゴットがめっき浴中に溶解する様子を示す模式図、(b)は、金属インゴットが吊環から抜け落ちる様子を示す模式図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る溶融金属めっき浴への金属供給方法を示すフローチャートである。 図4は、本発明の別の実施形態に係る溶融金属めっき浴への金属供給方法を示すフローチャートである。 図5は、亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じない場合における、理想的な浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフであり、図5(a)は浴面位置の変動を示す図、図5(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図5(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図5(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。 亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じた場合において、本発明の方法を適用しない浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフであり、図6(a)は浴面位置の変動を示す図、図6(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図6(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図6(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。 図7は、亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じた場合において、本発明の方法を適用した浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフであり、図7(a)は浴面位置の変動を示す図、図7(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図7(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図7(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。
以下、図面に基づいて本発明について説明する。なお、以下の説明において、溶融金属は亜鉛(Zn)として説明するが、本発明は溶融金属の比重より大きい不純物であるボトムドロスが発生する場合に適用でき、溶融金属は亜鉛(Zn)に限られない。
図1は、本発明の一実施形態に係る、溶融金属めっき鋼板の製造設備および金属インゴット投入装置を示す概略図である。図1において、例えば連続焼鈍炉(図示しない)から送り込まれた鋼板1は、Znのめっき浴2中に設けられたシンクロール3に巻き付けて通すことにより、めっき浴2中に浸漬する。鋼板1はサポートロール4で保持されながら、下流側の例えば合金化炉(図示しない)に送り出すようにされている。なお、図1において、矢印は鋼板の搬送方向である。
本発明では、金属インゴット投入装置5が設けられる。図1に示すように、金属インゴット投入装置5の金属インゴット6には吊環7が挿入されており、吊環7は金属インゴット投入装置5のフック8に引っかけられている。金属インゴット投入用モータ9は制御盤10に接続されており、金属インゴット6のめっき浴2中への浸漬深さは、フック8に接続している金属インゴット投入用モータ9により、連続的に変更可能となっている。すなわち、金属インゴット投入用モータ9の働きによりフック8が稼働し、これにより金属インゴット6の浸漬深さが適宜調整される。なお、金属インゴット投入用モータ9の負荷率は制御盤10で常時監視することができる。ここで、負荷率とは、モータ定格電流に対する駆動装置(インバータ)出力電流を表す。
また、金属インゴット6上面近傍には、金属インゴット6の上面位置を測定する上面位置検出計11が配設されてもよく、上面位置検出計11は、制御盤10と接続されてもよい。
一方、Znめっき浴面近傍には、めっき浴2の浴面の位置を測定する浴面位置検出計12が配設されている。浴面位置検出計12は制御盤10と接続しており、浴面位置検出計12の出力に応じて、制御盤10は金属インゴット投入用モータ9を制御する。金属インゴット投入用モータ9の働きによりフック8が稼働し、これにより金属インゴット6の浸漬深さが適宜調整される。
また、めっき浴2底部にはボトムドロス13が堆積している。
図2は、金属インゴットが吊環から抜け落ちる様子を示す模式図である。図2(a)に示すように、吊環7が挿入された金属インゴット6は、フック8の稼働によりめっき浴2中に浸漬し、金属インゴット6の浸漬部分14がめっき浴2中に溶解する。
金属インゴット6の浸漬部分14の溶解が進むと、図2(b)に示すように、金属インゴット6が溶解により吊環7から徐々に抜け落ちるといった金属インゴット6の落下移動が生じる(金属インゴット6は図2(b)中の矢印の方向に移動する。)。そして、金属インゴット6の溶解途中において、金属インゴット6上面の端部片(金属インゴット片15)がめっき浴2に落下すると、めっき浴2底部のボトムドロスが巻上げられる。その結果、ボトムドロスがめっき浴2に混入、もしくは鋼板1に付着することで、めっき品質に影響を及ぼす。
そこで本発明では、金属インゴット片のめっき浴中への落下を防止するために、溶融金属めっき浴への金属インゴットの浸漬途中で金属インゴットの落下移動を検出した時、溶融金属めっき浴への金属インゴットの浸漬を完了させることを特徴とする。すなわち、本発明では、溶解途中の金属インゴット片がめっき浴に落下する前にめっき浴中への金属インゴットの浸漬を完了させる。めっき浴中への金属インゴットの浸漬完了を早めることにより、金属インゴット片のめっき浴への落下を防止する。具体的には、図1において、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率等により監視する。金属インゴット6がめっき浴2中への浸漬途中でめっき浴2からの熱伝導を受けるため、吊環7に挿入されている(吊環7に接触している)金属インゴット6の固体部分が徐々に溶解し、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が発生する。したがって、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)は徐々に進行する。金属インゴット6の固体部分の溶解がさらに進むと、金属インゴット6上面の端部片(金属インゴット片15)がめっき浴2に落下する確率が上がる。このため、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を検出することは、さらなる金属インゴット6の落下移動(抜け落ち)の進行および金属インゴット片15の落下の対策に必要である。
上述したように、金属インゴット投入用モータ9の働きによりフック8が稼働し、金属インゴット6の浸漬深さが適宜調整される。本発明において、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じた場合、調整に必要な金属インゴット6の一部が既にめっき浴に浸漬された状態にあるため、金属インゴット投入用モータ9の負荷率が下がる。ここで、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じていない状態で浸漬深さを調整する時の金属インゴット投入用モータ9の負荷率と比較して、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じている状態で浸漬深さを調整する時の金属インゴット投入用モータ9の負荷率は小さい。そこで本発明では、金属インゴット投入用モータ9の負荷率を監視することにより、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を検出し、金属インゴット片15がめっき浴2中に完全に落下する前に、めっき浴2への金属インゴット6の浸漬を完了させる。
具体的には、金属インゴット投入用モータ9の負荷率が、あらかじめ設定した負荷率未満である場合、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)があるとして、金属インゴット片15がめっき浴2に落下する前に、めっき浴2への金属インゴット6の浸漬を完了させる。
また、本発明では、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を、金属インゴット投入用モータ9の負荷率の監視に代えて、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率の監視としてもよい。
金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じていない状態で浸漬深さを調整する時の金属インゴット投入用モータ9の負荷率は、時間の経過とともに略一定の割合で減少する。したがって、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率は略一定の値で推移する。一方で、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じている状態で浸漬深さを調整する時の金属インゴット投入用モータ9の負荷率は、落下移動(抜け落ち)が生じていない状態よりも小さい。したがって、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)が生じたとき、金属インゴット投入用モータ9の負荷率はより大きく減少することとなり、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率も急変する。そこで、本発明では、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率が、あらかじめ設定した負荷変動率未満である場合、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)があるとして、金属インゴット片15がめっき浴2中に完全に落下する前に、めっき浴2への金属インゴット6の浸漬を完了させる。以上の通り、金属インゴット投入用モータ9の負荷変動率を監視することで、より金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を検出しやすくなる。
すなわち、本発明では、金属インゴット投入用モータの負荷率または負荷変動率を監視することにより、金属インゴット本体の吊環からの落下開始を検知し、落下完了前に金属インゴット本体の浸漬を完了させることで金属インゴットを早く溶解させ、金属インゴット片がめっき浴中に落下することを防止する。
なお、本発明における「浸漬を完了させる」とは、金属インゴットの上面位置が溶融金属めっき浴の浴面位置以下になるように金属インゴット全体を溶融金属めっき浴に浸漬させることを意味する。金属インゴットの上面位置が溶融金属めっき浴の浴面位置以下とするために、例えば、後述するように、あらかじめ設定された下降回数を満たすよう金属インゴットを投入することができる。また他の手法として、金属インゴット上面位置検出計により検出された金属インゴット上面位置が浴面位置検出計により検出された浴面位置以下となるように金属インゴットを投入することもできる。
また、金属インゴットの浸漬完了を早める方法としては、例えば、金属インゴットの落下移動を検出した後の、次の金属インゴットの投入時までの間に金属インゴットの浸漬を完了させる、もしくは、シミュレーションなどで予め設定した金属インゴットの浸漬完了時刻よりも早く浸漬を完了させるといった方法が挙げられる。
また、本発明では、上面位置検出計11により金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を監視してもよい。既存の駆動装置(インバータ)の出力電流を監視する手法と比較して、新たな上面位置検出計11を設置するコストは必要となるが、金属インゴットの上面位置を直に検出できるため、検出精度に優れる。図1において、金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)を検出すると、金属インゴット6の上面位置の情報が制御盤10に送られる。一方、浴面位置検出計12で検出されためっき浴面位置の情報も制御盤10に送られる。制御板10は、金属インゴット6の上面位置情報と、めっき浴面位置の情報に基づき、金属インゴット6の上面位置がめっき浴の浴面位置以下となるように、金属インゴット6を浸漬させるよう、金属インゴット投入用モータ9を制御する。金属インゴット6の上面位置を浴面位置以下となるように金属インゴット6を浸漬させることにより、めっき浴底部のドロス巻上げ抑制に加えて、金属インゴット片15の落下による急激な浴面位置変動も抑制することができる。上面位置検出計11による金属インゴット6の吊環7からの落下移動(抜け落ち)の検出は、前述の金属インゴット投入用モータ9の負荷率もしくは負荷変動率の監視による検出とは別に行ってもよく、また、組み合わせて行ってもよい。
図3は、本発明の溶融金属めっき浴への金属供給方法を示すフローチャートである。第1ステップ(S1)で、めっき浴面位置が設定下限値であるか否かを判断する。
めっき浴面位置が設定下限値である場合、第2ステップ(S2)で金属インゴットの下降を開始し、金属インゴットをめっき浴に投入する。
次に、第3ステップ(S3)でめっき浴面位置が設定上限値であるか否かを判断する。めっき浴面位置が設定上限値である場合は、第4ステップ(S4)で金属インゴットの下降を停止し、めっき浴面位置が設定上限値に到達していない場合は、金属インゴットの下降を続ける。
ここで、金属インゴットの投入開始に伴い、第5ステップ(S5)で金属インゴット投入用モータの負荷率または負荷変動率の監視を開始する。第5ステップ(S5)で金属インゴット投入用モータの負荷率または負荷変動率が、あらかじめ設定した負荷率未満または負荷変動率未満であること、すなわち吊環からの抜け落ちを検出したら、第6ステップ(S6)で金属インゴットの下降(浸漬)を開始する。
第7ステップ(S7)で金属インゴットの下降を停止したら、第8ステップ(S8)で、あらかじめ設定した下降回数であるか否かを判断し、あらかじめ設定した下降回数を満たすまで、金属インゴットの下降と下降停止を繰り返す。なお、金属インゴット投入用モータの負荷率(負荷変動率)に基づく金属インゴットの落下移動の監視の場合、第5ステップ~第8ステップでは抜け落ち検出後に下降回数設定値を満たすまで下降を行う。
一方、金属インゴットの投入方法は、めっき浴からの金属持出し量に対応して、予め金属インゴットの下降回数および下降量を設定しておき、下降回数により金属インゴットの下降停止を判断する。これは超低速での金属インゴットの下降制御が難しいためである。金属インゴットの落下移動を検出しなかった場合は、第9ステップ(S9)で下降回数が設定値であるか否かを判断し、下降回数が設定値となったら、金属インゴットの下降を終了する。
また、本発明では、上述したように、金属インゴット投入用モータの負荷(変動)率の監視と同時もしくは独立して、金属インゴットの上面位置の変化に基づいて金属インゴットの浸漬を完了させてもよい。金属インゴットの上面位置の変化に基づく場合、金属インゴットの投入開始に伴い、金属インゴットの上面位置の変化の監視を開始する。図4に示すように、第10ステップ(S10)で金属インゴットの上面位置の変化(吊環からの抜け落ち)を検出したら、第11ステップ(S11)で、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置以下となるように、金属インゴットの下降(浸漬)を開始する。
次に、第12ステップ(S12)で、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置と等しくなるか否かを判断する。なお、上面位置検出計11ではめっき浴中の金属インゴットの上面位置を検出することはできない。このため、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置と等しいと判断した場合に、金属インゴットの上面位置が厳密にめっき浴の浴面位置と等しいのか、もしくは金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置よりも低いのか、を区別して判断することができない。したがって、本ステップでは、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置以下となったか否かが判断されることになる。
第13ステップ(S13)で、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置と等しい場合は、金属インゴットの下降を停止して終了する。金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置と等しくない場合は、金属インゴットの下降を続ける。
なお、金属インゴット投入用モータの負荷(変動)率の監視を同時に行う場合、負荷率(負荷変動率)監視である第5ステップ(S5)から第8ステップ(S8)は、上面位置検出計が故障などで使用不可となった場合のフェイルセーフ手段として、または、上面位置検出計の正常動作を診断する手法として、有用である。
以上より、本発明によれば、金属インゴット投入用モータ9の負荷率または負荷変動率等に基づいて金属インゴットが吊環から抜け落ち始めていることを検出したときに、溶解途中の金属インゴット片がめっき浴に落下する前にめっき浴中への金属インゴットの浸漬を完了させる。めっき浴中への金属インゴットの浸漬完了を早めることにより、金属インゴット周囲全面から中心部に向けて溶解させることができ、金属インゴットの落下移動(抜け落ち)に伴う金属インゴット片落下による溶融金属めっき浴底部のボトムドロス巻上げを抑制することができる。したがって、本発明を適用した溶融金属めっき浴で鋼板に溶融金属めっき処理を施すことにより、得られるめっき鋼板の製品品質向上の効果も得られる。
金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて、溶融金属めっき浴に金属を供給する際の、浴面位置とインゴット位置および金属インゴット投入用モータの負荷について、シミュレーションを行った。浴面位置の測定には浴面位置検出計を用いた。インゴット位置の測定には上面位置検出計を用いた。金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率の測定には制御盤を用いた。
なお、条件は、下降前のインゴット高さ:500mm、インゴット投入回数:10回、一回のインゴット投入量:50mm、インゴット投入間隔:300secとした。また、金属インゴット投入用モータの負荷率については、1回目の金属インゴット投入の負荷量(負荷率)を100%と設定し、2回目以降の負荷率は1回目の負荷量を基準として算出した。また、負荷変動率については、1回目の金属インゴット投入の負荷量(負荷率)を100%として、2回目以降の投入の負荷変動率は、1つ前の回における投入の負荷量を基準とした負荷の割合を負荷変動量として算出した。また、めっき浴面位置は、制御上下限値(設定上下限値)を±1000μmとした。めっき浴面位置が制御下限値である場合、亜鉛インゴットの投入を開始し、めっき浴面位置が制御上限値となった場合、亜鉛インゴットの投入(下降)を停止し、この投入と停止を繰り返した。また、管理上限値を+8000μm、管理下限値を-2000μmとした。
図5は、亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じない場合において、理想的(鋼板による亜鉛浴からの亜鉛持ち出し量が一定)な浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフである。図5(a)は浴面位置の変動を示す図、図5(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図5(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図5(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。なお、金属インゴット投入用モータの負荷変動率は一定となる。これは、これは、投入動作ごとに金属インゴットが一定量ずつめっき浴に浸漬する理想的な状態でインゴット上面端部片の落下は起こらないとしたためであり、金属インゴットが一定量でめっき浴に浸漬した場合、金属インゴットの溶解によりモータ動作にかかる負荷が同じ割合で小さくなるためである。
図6は、亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じた場合において、本発明の方法を適用しない(従来の)浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフである。図6(a)は浴面位置の変動を示す図、図6(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図6(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図6(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。図6に示すように、亜鉛インゴットの抜け落ちが生じると、徐々に浴面位置が上がり、インゴット位置が制御できなくなる。さらに、亜鉛インゴットの抜け落ちに伴い、中途半端なインゴット位置で亜鉛インゴット上部および周辺部が溶解し、亜鉛インゴット上面の端部片がめっき浴面に落下する。その結果、浴面位置変動が発生する。したがって、図6のグラフでは、9回目の金属インゴット投入動作時(2400sec)に、金属インゴット上面端部片がめっき浴底部に落下し、ドロスを巻上げることとなる。
図7は、亜鉛インゴットが溶解により吊環から抜け落ちる現象が生じた場合において、本発明の方法を適用した浴面位置およびインゴット位置の変動を示すグラフ、ならびに、金属インゴット投入用モータの負荷率および負荷変動率を示すグラフである。図7(a)は浴面位置の変動を示す図、図7(b)はインゴット位置の変動を示すグラフ、図7(c)は金属インゴット投入用モータの負荷率を示すグラフ、図7(d)は金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフである。図7(d)の金属インゴット投入用モータの負荷変動率を示すグラフにおいて、金属インゴットの落下移動(抜け落ち)を検出する設定値としては、負荷変動率50%未満とした。
図7に示すように、本発明は、亜鉛インゴットの抜け落ちが発生した直後、亜鉛インゴット投入用モータの負荷変動率により、亜鉛インゴットが吊環から抜け落ち始めていることを検出し(2160sec)、8回目の投入動作時に亜鉛インゴット全体を浸漬させるようにした。したがって、亜鉛インゴットの落下開始を検出した後、次の投入時に亜鉛インゴット全体をめっき浴中に浸漬させることができたので、図6のグラフで示される9回目の投入動作時(2400sec)に金属インゴット上面端部片がめっき浴底部に落下することを防止することができた。したがって、亜鉛インゴットの抜け落ちに伴う金属インゴット片の落下によるめっき浴底部のドロス巻上げを抑制できる。
なお、本実施例において、金属インゴット投入用モータの負荷率(負荷変動率)の監視に加えて、金属インゴットの上面位置情報と、めっき浴面位置の情報に基づき、金属インゴットの上面位置がめっき浴の浴面位置と等しくなるように、金属インゴットを浸漬させるよう、金属インゴット投入用モータを制御した場合でも、めっき浴底部のドロス巻上げ抑制という効果に加えて、金属インゴット片の落下による急激な浴面位置変動も抑制することができることを確認した。
1 鋼板
2 めっき浴
3 シンクロール
4 サポートロール
5 金属インゴット投入装置
6 金属インゴット
7 吊環
8 フック
9 金属インゴット投入用モータ
10 制御盤
11 上面位置検出計
12 浴面位置検出計
13 ボトムドロス
14 浸漬部分
15 金属インゴット片

Claims (6)

  1. 金属インゴットの浸漬深さを調整可能な金属インゴット投入装置を用いて、溶融金属めっき浴に金属を供給する溶融金属めっき浴への金属供給方法において、
    前記溶融金属めっき浴への前記金属インゴットの溶解途中で前記金属インゴットの落下移動を検出したとき、
    前記金属インゴットの上面の位置が前記溶融金属めっき浴の浴面位置以下となるように前記金属インゴットを浸漬させることで金属インゴットの浸漬を完了させることを特徴とする溶融金属めっき浴への金属供給方法。
  2. 金属インゴット投入用モータの負荷率または負荷変動率により、前記金属インゴットの落下移動を検出することを特徴とする請求項1に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
  3. 前記金属インゴットの上面の位置を検出する上面位置検出計により、前記金属インゴットの落下移動を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
  4. 前記落下移動は、吊具が挿入された金属インゴットが、吊具から抜け落ちることによる前記金属インゴットの落下移動であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
  5. 前記吊具は、吊環であることを特徴とする請求項4に記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の溶融金属めっき浴への金属供給方法により金属が供給される溶融金属めっき浴で、鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融金属めっき鋼板の製造方法。
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