以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
なお、以下の図においては、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
(実施の形態における熱動弁の構成)
以下に、本実施の形態における開閉弁の一例として熱動弁50の構成を、図1~図5を用いて説明する。
図1および図2に示されるように、本実施の形態の熱動弁50は、弁筐体1と、弁本体11と、駆動部21と、シール部材31と、絶縁リテーナ25と、絶縁スペーサ26と、第1弾性部材27と、蓋41とを主に有している。
弁筐体1は、第1通水部1aと、第2通水部1bと、内部流路1cと、軸挿通孔1dと、駆動部挿入部1eとを有している。第1通水部1aはたとえば入水部であり、第2通水部1bはたとえば出水部である。
第1通水部1aと第2通水部1bとの間に内部流路1cが設けられている。このため、たとえば第1通水部1aに供給された熱媒流体は、内部流路1cを通じて第2通水部1bから排出される。
軸挿通孔1dは、弁筐体1の内部に設けられている。軸挿通孔1dは、内部流路1cに連通している。
弁筐体1の駆動部挿入部1eは、筒形状を有しており、駆動部挿入部1eは、軸挿通孔1dに対して内部流路1cの反対側に配置されている。この筒形状の内部空間1eaは軸挿通孔1dに連通している。
弁本体11は、弁体12と、軸体13と、第2弾性部材14とを有している。弁体12は、弁筐体1の上記内部流路1cを開閉可能である。軸体13は、軸挿通孔1dを貫通し、一方端部は内部流路1c内に位置し、他方端部は駆動部挿入部1eの内部空間1eaに位置している。軸体13の上記一方端部は、弁体12に接続されている。第2弾性部材14は、内部流路1cを閉じる方向に弁体12を付勢している。第2弾性部材14は、たとえばコイルばねである。
駆動部21は、駆動部挿入部1eの内部空間1eaに配置されている。駆動部21は、ヒータ22と、第1電極部材23aと、第2電極部材23bと、熱応動素子24とを有している。ヒータ22の一方表面には第1電極部材23aが設けられている。ヒータ22の他方端部には第2電極部材23bが設けられている。第1電極部材23aと第2電極部材23bとによりヒータ22は挟み込まれている。
第1電極部材23aと第2電極部材23bとによりヒータ22は通電可能である。ヒータ22が通電されることによって、ヒータ22は発熱する。ヒータ22は、たとえばPTC(Positive Thermal Coefficient)サーミスタ(正特性サーミスタ)である。
熱応動素子24は、ヒータ22と軸体13との間に配置されている。熱応動素子24は、ヒータ22の温度に応じて弁本体11の軸体13を駆動させることができる。具体的には、熱応動素子24は、ヒータ22により加熱されることにより、軸体13をその軸方向に沿って移動させる。
熱応動素子24は、たとえばワックスエレメントである。この熱応動素子24は、感熱部24aと、軸体24bとを有している。感熱部24aは、ワックスが充填された構成を有している。感熱部24aに充填されるワックスは、たとえばパラフィンワックスである。軸体24bは、感熱部24aの内部に挿入された一端と、感熱部24aから突き出した他端とを有している。
感熱部24aのワックスは、加熱されることにより膨張する。このワックスの膨張に伴い、軸体24bは感熱部24aの内部から押し出される。また感熱部24aのワックスは、加熱状態から冷却されることにより収縮する。このワックスの収縮に伴い、軸体24bは感熱部24aの内部へ移動する。
シール部材31は、軸体13と軸挿通孔1dとの間をシールする機能(軸体13と軸挿通孔1dとの間を水密に封止する機能)を有している。シール部材31は、駆動部21と弁体12との間に配置されている。このシール部材31は、内部流路1c内の熱媒流体が、軸挿通孔1dを通じて駆動部挿入部1eの内部空間1eaに侵入することを阻止している。
シール部材31は、たとえば2つのOリング32、33を有している。Oリング32、33の各々は、円環形状を有している。Oリング32、33の各々の内周部は軸体13の外周面に接触し、かつOリング32、33の各々の外周部は軸挿通孔1dの壁面に接触している。
絶縁リテーナ25は、駆動部挿入部1eの内部空間1ea内に配置されている。絶縁リテーナ25は、駆動部21とシール部材31との間に配置されている。絶縁リテーナ25は、絶縁材料により構成されている。
絶縁リテーナ25は、有底筒状の形状を有している。絶縁リテーナ25は、筒状部25aと、底部25bと、突出部25cと、フランジ部25dとを有している。筒状部25aは、筒状の形状を有している。底部25bは筒状部25aの底に設けられている。底部25bは、貫通孔を有する円環形状を有している。底部25bの貫通孔には軸体13が挿通されている。突出部25cは、底部25bに設けられており、底部25bから筒状部25aとは反対側に延びている。突出部25cは、筒状の形状を有している。フランジ部25dは、筒状部25aの外周面から外周側に延在している。フランジ部25dは、円環形状を有している。
絶縁スペーサ26は、たとえば柱状の形状を有している。絶縁スペーサ26は、熱応動素子24の軸体24bと弁本体11の軸体13との間に配置されている。絶縁スペーサ26は、絶縁リテーナ25の筒状部25aの内部に配置されている。また絶縁スペーサ26は、絶縁材料により構成されている。
第1弾性部材27は、絶縁リテーナ25のフランジ部25dと熱応動素子24との間に配置されている。第1弾性部材27は、たとえばコイルばねである。
この第1弾性部材27は、熱応動素子24をヒータ22の側に向けて押付けている。具体的には、第1弾性部材27は、熱応動素子24をヒータ22の一方表面に設けられた第1電極部材23aに押付けている。これにより熱応動素子24はヒータ22から発せられる熱を効率的に受け取ることができる。
また第1弾性部材27は、駆動部21に対して絶縁リテーナ25をシール部材31の側に付勢している。これにより第1弾性部材27は、絶縁リテーナ25のフランジ部25dをシール部材31側に向けて弁筐体1に押付けている。この状態において、絶縁リテーナ25の一部(突出部25cの少なくとも一部)は、軸挿通孔1dの内部に挿入されている。
蓋41は、たとえばボルトなどの固定部材により弁筐体1に取り付けられている。蓋41は、駆動部21を挿入された駆動部挿入部1eの外側を取り囲むように配置されている。蓋41は、内部に突き出す突起部42を有している。この突起部42は第2電極部材23bに当接している。
図2および図3に示されるように、弁筐体1は、第1排出経路2aと、第2排出経路2bとをさらに有している。第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの各々は、軸挿通孔1dにおける内部空間1eaとの接続部に接続されている。
第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの各々が軸挿通孔1dと接続される部分は、駆動部21とシール部材31との間に位置している。第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの各々は、絶縁リテーナ25の表面(筒状部25aの外周面、底部25bの表面、突出部25cの外周面)に達するように設けられている。
この絶縁リテーナ25の表面(筒状部25aの外周面、底部25bの表面、突出部25cの外周面)は、軸挿通孔1dから第1排出経路2aへ向かう熱媒流体の排出経路の一部を構成している。また絶縁リテーナ25の表面(筒状部25aの外周面、底部25bの表面、突出部25cの外周面)は、軸挿通孔1dから第2排出経路2bへ向かう熱媒流体の排出経路の一部を構成している。
第1排出経路2aは、弁筐体1の外部に開口した第1排出開口部POAを有している。第1排出経路2aは、図2に示すような軸体13の軸方向に沿う断面において、軸挿通孔1dが内部空間1eaと接続される部分から、軸体13の延びる方向に直交する方向に直線状に延びて第1排出開口部POAに達している。
第2排出経路2bは、弁筐体1の外部に開口した第2排出開口部POBを有している。第2排出経路2bは、図2に示すような軸体13の軸方向に沿う断面において、軸挿通孔1dが内部空間1eaと接続される部分から、軸体13の延びる方向に直交する方向に直線状に延びて第2排出開口部POBに達している。
第1排出経路2aの第1排出開口部POAと第2排出経路2bの第2排出開口部POBとの各々は、絶縁リテーナ25の長さLの範囲の外周領域内に位置している。第1排出開口部POAと第2排出開口部POBとの各々は、その全体が上記長さLの範囲の外周領域内に位置していてもよく、またその一部が上記長さLの範囲の外周領域内に位置していてもよい。
弁筐体1は、排出経路2a、2b内に位置し、かつ軸挿通孔1dとの縁部に配置された突起部1gを有している。この突起部1gは、シール部材31側から駆動部21の側に延びている。突起部1gの駆動部21側の先端部と絶縁リテーナ25の底部25bとの間、および突起部1gの駆動部21側の先端部と突出部25cの外周面との間の各々には隙間が構成されている。この隙間は、熱媒流体の排出経路の一部を構成している。
図3に示されるように、突起部1gの駆動部21側の先端部と絶縁リテーナ25の底部25bとの間の隙間における軸体13の軸方向の寸法D1は、突起部1g以外における第1排出経路2aの軸体13の軸方向の寸法D2よりも小さい。また上記寸法D1は、突起部1g以外における第2排出経路2bの軸体13の軸方向の寸法D3よりも小さい。
図4に示されるように、軸体13の軸方向に直交する断面において、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bは、軸体13の軸中心AXに対して互いに点対称に構成されている。軸体13の軸方向に直交する断面において、第1排出経路2aの第1排出開口部POAと第2排出経路2bの第2排出開口部POBとは、軸挿通孔1dを挟んで互いに反対側に配置されている。具体的には、第1排出開口部POAは軸挿通孔1dの第1の側に配置されており、第2排出開口部POBは軸挿通孔1dの第1の側とは反対側の第1の側に配置されている。
図5に示されるように、軸体13の軸方向に交差する(たとえば直交する)断面において、第1排出経路2aは、壁部P1A、P1B、P1C、P1D、P1Eを有している。壁部P1A(第1壁部)は、軸体13の軸方向から見て、軸挿通孔1dの外周を取り囲む仮想の真円Cに沿う円弧形状を有している。この仮想の真円Cは、軸挿通孔1dとたとえば同心である。壁部P1B(第2壁部)は、軸体13の軸方向から見て、壁部P1Aの第1端部E1Aに接続され、かつ第1端部E1Aにおける仮想の真円Cの第1接線L1(図中二点鎖線)に沿って直線状に延びている。
壁部P1Bには、壁部P1Cを介在して壁部P1Dが接続されている。また壁部P1Dの向かい側には壁部P1Dと間隔をあけて対向するように壁部P1E(第3壁部)が配置されている。壁部P1Eの延在方向は、仮想の真円Cの接線とは異なっている。
壁部P1Dと壁部P1Eとは互いに平行となるように直線状に延びている。壁部P1Dと壁部P1Eとの各々は、第1排出開口部POAに達している。壁部P1Cは、壁部P1Bとの接続部から仮想の真円Cに近づく方向に延びて壁部P1Dに接続されている。これにより壁部P1Cは、壁部P1Bと壁部P1Dとの間の段差を構成している。
第1接線L1と壁部P1Eとの間の幅W1は、軸挿通孔1dの側から第1排出開口部POAに向かうに従って大きくなる。つまり第1接線L1と壁部P1Eとは、仮想の真円Cから第1排出開口部POAに向かうに従って互いに離れるように設けられている。また上記第1接線L1と壁部P1D、P1Eに平行な仮想の直線L3とは所定の角度θ1を構成している。この角度θ1は、たとえば5°以上であることが好ましい。
軸体13の軸方向に交差する(たとえば直交する)断面において、第2排出経路2bは、壁部P2A、P2B、P2C、P2D、P2Eを有している。壁部P2A(第4壁部)は、軸体13の軸方向から見て、軸挿通孔1dの外周を取り囲む仮想の真円Cに沿う円弧形状を有している。壁部P1Aと壁部P2Aとは、同じ仮想の真円Cに沿った円弧形状を有している。壁部P2B(第5壁部)は、軸体13の軸方向から見て、壁部P2Aの第2端部E2Aに接続され、かつ第2端部E2Aにおける仮想の真円Cの第2接線L2(図中二点鎖線)に沿って直線状に延びている。
壁部P2Bには、壁部P2Cを介在して壁部P2Dが接続されている。また壁部P2Dの向かい側には壁部P2Dと間隔をあけて対向するように壁部P2E(第6壁部)が配置されている。壁部P2Eの延在方向は、仮想の真円Cの接線とは異なっている。
壁部P2Dと壁部P2Eとは互いに平行となるように直線状に延びている。壁部P2Dと壁部P2Eとの各々は、第2排出開口部POBに達している。壁部P2Cは、壁部P2Bとの接続部から仮想の真円Cに近づく方向に延びて壁部P2Dに接続されている。これにより壁部P2Cは、壁部P2Bと壁部P2Dとの間の段差を構成している。
第2接線L2と壁部P2Eとの間の幅W2は、軸挿通孔1dの側から第2排出開口部POBに向かうに従って大きくなる。つまり第2接線L2と壁部P2Eとは、仮想の真円Cから第2排出開口部POBに向かうに従って互いに離れるように設けられている。また上記第2接線L2と壁部P1D、P1Eに平行な仮想の直線L4とは所定の角度θ2を構成している。この角度θ2は、たとえば5°以上であることが好ましい。
なお軸体13の軸方向に交差する(たとえば直交する)断面において、第1排出経路2aと第2排出経路2bとは、仮想の直線L5により分けられている。この仮想の直線L5は、軸体13の軸中心AX、壁部P1Aの第3端部E1Bおよび壁部P2Aの第4端部E2Bを通る線である。
(実施の形態における熱動弁の動作)
次に、本実施の形態における熱動弁50の動作について説明する。
図2に示されるように、熱応動素子24がヒータ22により加熱されていない場合には、弁体12が第2弾性部材14により駆動部21に向かう方向に付勢されて弁座1fに当接している。このため、第1通水部1a(図2)から内部流路1cに流れ込んだ熱媒流体(たとえば湯水)は、弁体12と弁座1fにより遮断され、第2通水部1bへは達しない。
他方で、熱応動素子24がヒータ22により加熱されている場合には、熱応動素子24が軸体13を軸方向に第2弾性部材14に向けて移動させる。このため、弁体12が弁座1fから離間する。その結果、第1通水部1aから内部流路1cに流れ込んだ熱媒流体(たとえば湯水)は、弁体12と弁座1fとの間を通過し、第2通水部1bから流出する。
そして、ヒータ22による熱応動素子24の加熱が終了すると、熱応動素子24が軸体13を軸方向に第2弾性部材14に向けて押し出す力がなくなる。このため、第2弾性部材14の付勢力により、弁体12と弁座1fとが再び当接し、熱媒流体の流れを遮断する上記状態に戻る。このように、熱動弁50においては、ヒータ22による加熱を行うか否かにより、熱媒流体(たとえば湯水)が内部流路1cを通水するか否かを切り替えることができる。
(実施の形態における熱動弁の効果)
次に、本実施の形態の作用効果について、図7に示す比較例などと対比して説明する。
図2に示されるように、電極部材23a、23bとヒータ22とにより発する熱で熱応動素子24内のワックスが膨張する。これにより軸体24bが押し出され、それに連動して軸体13と弁体12とが押されることにより、内部流路1cが開く。この軸体13が軸方向の移動を繰り返すことにより、シール部材31が摩耗などを生じる。これにより内部流路1c内の熱媒流体が軸挿通孔1d内のシール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出るおそれがある。シール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体が弁筐体1の駆動部挿入部1eに入ると、ヒータ22などと電気的に接続することにより漏電が生じやすい状態となる。
しかし本実施の形態の熱動弁50によれば、図2および図3に示されるように、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの各々が、駆動部21とシール部材31との間で軸挿通孔1dと接続されている。この第1排出経路2aおよび第2排出経路2bにより、シール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体を弁筐体1の外部へ排出することが可能となる。これにより熱媒流体がヒータ22などと電気的に接続することにより生じる漏電を抑制することができる。
ところで、本実施の形態の熱動弁50は、図6(A)~(F)に示されるように様々な姿勢で設置される可能性がある。図6(A)に示されるように、蓋41が上を向く姿勢では、上記のとおり図2に示すシール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体を第1排出経路2aおよび第2排出経路2bにより弁筐体1の外部へ排出することが可能であるため問題はない。
また図6(B)に示されるように、蓋41が下を向く姿勢は、器具の使用として推奨されていない使用態様である。このため今回の漏電に関して、この姿勢を検討する必要はない。
また図6(C)、(D)に示されるように、蓋41が横を向き、かつ第1排出経路2aおよび第2排出経路2bのいずれか一方が下を向いて開口する姿勢では、下を向いて開口する一方の排出経路から熱媒流体を外部へ排出することが可能であるため問題はない。
一方、図6(E)、(F)に示されるように、蓋41が横を向き、かつ第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの双方も横を向いて開口する姿勢では、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの形状によっては漏電が生じる可能性がある。
図7は、比較例の第1排出経路102aおよび第2排出経路102bの形状を示す図であって、図5の断面に対応する断面を示す図である。図7に示される比較例では、第1排出経路102aおよび第2排出経路102bが軸挿通孔1dを挟むように設けられている。
第1排出経路102aの壁部P3B、P3Cの各々は、仮想の真円Cに沿う円弧形状の壁部P3A、P4Aに対して接線とならない態様で接続されている。また第2排出経路102bの壁部P4B、P4Cの各々は、仮想の真円Cに沿う円弧形状の壁部P3A、P4Aに対して接線とならない態様で接続されている。
この比較例の構成では、熱動弁50が図6(E)、(F)に示す姿勢となった場合、図7に示されるように熱媒流体TFが壁部P3Aまたは壁部P4Aに溜まる。このように熱媒流体TFが溜まると、熱媒流体TFが図2に示す弁筐体1の駆動部挿入部1eに入り、ヒータ22などと電気的に接続することで漏電が生じるおそれがある。
また上記特許文献1の構成においても同様である。また上記特許文献1の構成においては、絶縁リテーナに対応する支持部材から離れて逆U字形窓が設けられている。このため図6(E)、(F)に示す姿勢であって熱応動素子(サーモエレメント)およびヒータ(PTC)が弁体に対して下側になるように傾いた場合、逆U字型窓から熱媒流体が排出されにくくなるとともに熱媒流体がヒータなどと電気的に接続しやすくなり、漏電が生じやすくなる。
これに対して、本実施の形態の熱動弁50によれば、図5に示されるように第1排出経路2aの壁部P1Bが、円弧状の壁部P1Aの第1端部E1Aに接続され、かつその第1端部E1Aにおける仮想の真円Cの第1接線L1に沿って直線状に延びている。このため、壁部P1Aと壁部P1Bとの接続部に段差が生じることはなく、その段差に熱媒流体が溜まることはない。よって内部流路1cからシール部材31を漏れ出した熱媒流体は、スムーズに第1排出開口部POAに達することができる。これにより内部流路1cから軸挿通孔1dおよび排出経路2aへ漏れ出した熱媒流体を外部へ排出できる姿勢範囲を大きく確保することが可能となり、それにより漏電が生じにくくなる。
また本実施の形態の熱動弁50によれば、図5に示されるように第2排出経路2bの壁部P2Bが、円弧状の壁部P2Aの第2端部E2Aに接続され、かつその第2端部E2Aにおける仮想の真円Cの第2接線L2に沿って直線状に延びている。このため、壁部P2Aと壁部P2Bとの接続部に段差が生じることはなく、その段差に熱媒流体が溜まることはない。よって内部流路1cからシール部材31を漏れ出した熱媒流体は、スムーズに第2排出開口部POBに達することができる。これにより内部流路1cから軸挿通孔1dおよび排出経路2bへ漏れ出した熱媒流体を外部へ排出できる姿勢範囲を大きく確保することが可能となり、それにより漏電が生じにくくなる。
なお本実施の形態においては、図5に示されるように、壁部P1Cにより壁部P1Bと壁部P1Dとの間に段差が構成されている。また壁部P2Cにより壁部P2Bと壁部P2Dとの間に段差が構成されている。このため、これらの段差により熱媒流体が溜まる可能性もある。
しかしながら壁部P1Cによる段差および壁部P2Cによる段差の各々は、仮想の真円Cの外周側に位置している。これにより、これらの段差は図2において絶縁リテーナ25の筒状部25aと弁筐体1との対向部RAよりも軸体13の軸中心からみて外周側に位置している。このため、仮に図5に示される壁部P1Cによる段差および壁部P2Cによる段差に熱媒流体が溜まった場合でも、熱媒流体は弁筐体1の駆動部挿入部1eに入りにくくなり、熱媒流体がヒータなどと電気的に接続することによる漏電が生じにくくなる。
また壁部P1Cによる段差の大きさ(壁部P1Dの延在方向に直交する方向の寸法)S1は、たとえば壁部P1Dと壁部P1Eとの間の寸法S3の10分の1以下(つまりS1≦S3/10)である。このため壁部P1Cによる段差に熱媒流体が溜まることは抑制される。
また壁部P2Cによる段差の大きさ(壁部P2Dの延在方向に直交する方向の寸法)S2は、たとえば壁部P2Dと壁部P2Eとの間の寸法S4の10分の1以下(つまりS2≦S4/10)である。このため壁部P2Cによる段差に熱媒流体が溜まることも抑制される。
また本実施の形態においては、図8に示されるように、壁部P1Bは、壁部P1Aの第1端部E1Aから直線状に延びて第1排出開口部POAに達していてもよい。また壁部P2Bは、壁部P2Aの第2端部E2Aから直線状に延びて第2排出開口部POBに達していてもよい。
これにより壁部P1Aから第1排出開口部POAに達するまでの壁部P1Bの全体に段差がないため、その段差に熱媒流体が溜まることはない。また壁部P2Aから第2排出開口部POBに達するまでの壁部P2Bの全体に段差がないため、その段差に熱媒流体が溜まることはない。よってシール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体を外部へ排出できる姿勢範囲をさらに大きく確保することが可能となり、それにより漏電がさらに生じにくくなる。
また本実施の形態においては、図5に示されるように、第1接線L1と壁部P1Eとは、仮想の真円Cから第1排出開口部POAに向かうに従って互いに離れるように設けられている。具体的には第1接線L1と壁部P1Eとの間の幅W1は、仮想の真円Cから第1排出開口部POAに向かうに従って大きくなるように設けられている。
これにより上記第1接線L1に沿う壁部P1Bが壁部P1Eに対して下方に位置するような熱動弁50の姿勢(図6(F))において、熱媒流体が壁部P1Bに沿って第1排出開口部POAまで流れ落ちやすくなる。このためシール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体を熱動弁50の外部へ排出できる姿勢範囲をさらに大きく確保することが可能となり、それにより漏電がさらに生じにくくなる。
また本実施の形態においては、図5に示されるように、第2接線L2と壁部P2Eとは、仮想の真円Cから第2排出開口部POBに向かうに従って互いに離れるように設けられている。具体的には第2接線L2と壁部P2Eとの間の幅W2は、仮想の真円Cから第2排出開口部POBに向かうに従って大きくなるように設けられている。
これにより上記第2接線L2に沿う壁部P2Bが壁部P2Eに対して下方に位置するような熱動弁50の姿勢(図6(E))において、熱媒流体が壁部P2Bに沿って第2排出開口部POBまで流れ落ちやすくなる。このためシール部材31から絶縁リテーナ25側に漏れ出た熱媒流体を熱動弁50の外部へ排出できる姿勢範囲をさらに大きく確保することが可能となり、それにより漏電がさらに生じにくくなる。
また図6(C)、(D)に示されるように2つの排出経路2a、2bのいずれか一方が上方に向いて開口している場合、熱動弁50の上方から水などが落ちてきて熱動弁50が被水すると、上方を向いて開口した排出経路2aまたは2bにその水が入る可能性がある。
しかし本実施の形態においては、図10に示されるように、2つの排出経路2a、2bが設けられている。このため被水により水などが、たとえば第1排出経路2aから熱動弁50内に入っても、第2排出経路2bから熱動弁50外へ流れ落ちる。よって被水により2つの排出経路2a、2bのいずれか一方に水などが入っても、2つの排出経路2a、2bのいずれか他方から容易に外部へ排出されるため、その水などがヒータ22などと電気的に接続することにより生じる漏電を抑制することができる。
また図10に示されるように、被水によりたとえば第1排出経路2a内に入った水などは、第1排出経路2aの中の回り込みの少ない経路(壁部P1D側の経路)を通って第2排出経路2bへと流れ落ちていく。一方、流れ落ちていく水などと置換するための空気は水などとは反対側の経路(壁部P1E側の経路)を通る。これにより被水により排出経路2a、2b内に入った水などと空気との置換がスムーズに行われるため、当該水などの排水能力を向上させることができる。
また本実施の形態においては、図5に示されるように、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bは、軸体13の軸中心AXに対して点対称の形状を有している。これにより第1排出経路2aと第2排出経路2bとの各々を通じてバランス良く熱媒流体を外部へ排出することが可能となる。
また本実施の形態においては、図2に示されるように、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bのそれぞれは、軸挿通孔1dから、軸体13の延びる方向に直交する方向に延びて第1排出開口部POAおよび第2排出開口部POBに達している。このため図6(E)、(F)に示されるように、軸体13が水平に近い位置となるように熱動弁50が配置された場合においても排出経路2a、2bからの熱媒流体の排出が容易となる。これにより内部流路から他の内部空間へ漏れ出した熱媒流体を外部へ排出できる姿勢範囲を大きく確保することが可能となる。
また図6(E)、(F)に示される姿勢において、仮に熱応動素子24およびヒータ22が弁体12に対して下側になるように傾いた場合でも、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの各々から熱媒流体が排出されやすくなる。このため熱媒流体がヒータ22などと電気的に接続することによる漏電を抑制することができる。
また図2に示されるように、軸体13が軸方向に駆動することによりシール部材31のOリング33が軸挿通孔1dの開口端(上端)にまでせり上がることも考えられる。この場合、Oリング33が第1排出経路2aおよび第2排出経路2b内で外周側に拡がることでOリング33によるシール機能が低下することが考えられる。
しかし本実施の形態においては、図2に示されるように、弁筐体1は、排出経路2a、2b内に設けられ、かつ駆動部21の側に延びるように軸挿通孔1dの縁部に設けられた突起部1gを有している。これにより図3に示されるように、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bにおける突起部1gが設けられた部分の寸法D1(軸体13の軸方向に沿う寸法)は、突起部1gが設けられていない部分の寸法D2、D3(軸体13の軸方向に沿う寸法)よりも小さくなる。このためOリング33が軸挿通孔1dの開口端(上端)にまでせり上がった場合でも、Oリング33が第1排出経路2aおよび第2排出経路2b内で外周側に拡がることが抑制される。よってOリング33の拡径によるシール機能の低下を抑制することが可能となる。
また図3に示されるように、第1排出経路2aおよび第2排出経路2bにおける突起部1gが設けられていない部分の寸法D2、D3が、突起部1gが設けられた部分の寸法D1よりも大きくなっている。このため図9に示されるように、弁筐体1の成形時における第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの形成用のピン70の厚みを厚くできる。これにより弁筐体1の成形時におけるピン70の破損、屈曲などを抑制することができる。
また上記寸法D1~D3の各々は、Oリング33の軸方向の寸法よりも小さいことが好ましい。
また本実施の形態においては、図2および図3に示されるように、絶縁リテーナ25の一部(突出部25c)は、排出経路2a、2bと軸挿通孔1dとの接続部よりもシール部材31側に延びるように軸挿通孔1dの内部に挿入されている。これによりシール部材31のOリング33が軸挿通孔1dの開口端(上端)にまでせり上がることが防止されている。
(実施の形態における適用範囲)
なお本実施の形態においては第1排出経路2aおよび第2排出経路2bの2つの排出経路を設けた構成について説明したが、排出経路は3つ以上設けられてもよい。
また熱応動素子24は、加熱により応動する素子であれば、ワックスエレメント以外の素子であってもよい。またヒータ22は、熱応動素子24を加熱できるものであれば、PTCサーミスタ以外であってもよい。
シール部材31は、軸体13と軸挿通孔1dにおける弁筐体1との間をシールできる部材であれば、Oリング32、33以外の部材であってもよい。シール部材31は、2つのOリング32、33に限定されるものではなく、1つのOリングであってもよく、また3つ以上のOリングであってもよい。
また本実施の形態においては開閉弁の一例として熱動弁50について説明したが、開閉弁は通電により軸体13を駆動させる駆動部を有する弁であればよく、熱動弁に限定されるものではない。本実施の形態における開閉弁は、電磁弁であってもよく、電磁弁の場合、図2に示される駆動部21がソレノイド部からなっており、たとえばコイル、ヨーク、スリーブ、コア(可動鉄心またはプランジャー)、プラグナット(固定鉄心)などを有している。
(実施の形態における温水暖房装置の構成)
次に、本実施の形態における熱動弁50が用いられる温水暖房装置60の構成を、図11を用いて説明する。
図11に示されるように、温水暖房装置60は、熱動弁50と、タンク51と、ポンプ52と、ファン53と、バーナ54と、一次熱交換器55と、二次熱交換器56と、配管57a~57gとを有している。
配管57aは給水配管であって、タンク51に接続されている。タンク51には配管57bの一方端が接続されている。この配管57bにはポンプ52が配置されている。配管57bの他方端は、配管57cと配管57dとに分岐している。つまり配管57cの一方端と配管57dの一方端との各々は、配管57bの他方端に接続されている。
配管57cの他方端は、一次熱交換器55に接続されている。配管57dの他方端は、低温暖房端末61に接続される部分である。
配管57eの一方端は、一次熱交換器55に接続されている。配管57eの他方端は、高温暖房端末62に接続される部分である。
配管57fの一方端は、低温暖房端末61および高温暖房端末62の各々に接続される部分である。配管57fの他方端は、二次熱交換器56に接続されている。
配管57gの一方端は、二次熱交換器56に接続されている。配管57gの他方端は、タンク51に接続されている。
バーナ54は、混合ガスを燃焼することにより加熱用気体としての燃焼ガスを発生するためのものである。ファン53は、バーナ54に生じた燃焼ガスを一次熱交換器55および二次熱交換器56に送るためのものである。
一次熱交換器55は燃焼ガスの顕熱を回収するためのものである。二次熱交換器56は燃焼ガスの潜熱を回収するためのものである。一次熱交換器55は、バーナ54の近傍に配置されている。二次熱交換器56は、一次熱交換器55を通過した後の燃焼ガスが通過する位置に配置されている。
タンク51は、熱媒流体(たとえば湯水)を貯留するためのものである。ポンプ52は、図中の矢印の方向に熱媒流体(たとえば湯水)を循環させるためのものである。このポンプ52により、タンク51内の熱媒流体は、配管57b~57gと、低温暖房端末61と、高温暖房端末62とを循環する。
具体的には、ポンプ52によりタンク51から配管57dに入った熱媒流体は、低温暖房端末61に供給される。これにより低温暖房端末61において暖房が行われる。
またポンプ52によりタンク51から配管57cに入った熱媒流体は、一次熱交換器55で加熱された後に高温暖房端末62に供給される。これにより高温暖房端末62において暖房が行われる。
低温暖房端末61および高温暖房端末62において熱を失った熱媒流体は、配管57fを通じて二次熱交換器56で加熱された後、タンク51に戻る。なお、配管57dを流れる熱媒流体の温度は、配管57eを流れる熱媒流体の温度よりも低い。
上記のような温水暖房装置60において、本実施の形態の熱動弁50は、たとえば配管57dに接続されている。この熱動弁50を開閉制御することにより、低温暖房端末61への熱媒流体の供給と遮断とを制御することが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。