JP3910024B2 - 熱動式開閉弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、ウォータハンマー現象の発生を防止するために流体通路に介設される熱動式開閉弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の熱動式開閉弁は、例えば、床に敷設した温水マットに熱源で加熱された温水を循環させて床暖房を行う温水循環式床暖房装置において各温水マットへの温水の供給を制御するために、温水マットへの往路管の経路の途中に介設される。
【0003】
その一例として、内部にワックスエレメントとヒータとを設け、ワックスエレメントをヒータで加熱して膨張させることでピストンを摺動させ、ピストンに連結した弁体を移動させることで開弁する熱動式開閉弁が知られている。このものは、ワックスエレメントの熱容量が大きいためその応答性が悪いという問題があった。
【0004】
このため、小さな熱で反応するように形状記憶合金製のコイルばねを使用し、熱動式開閉弁を応答性よく構成することが提案されている(特開昭62−278391号公報参照)。
【0005】
この場合、熱動式開閉弁はバルブケーシングを備え、該バルブケーシングには、流体通路を有する弁室と、2枚の極板間に発熱部を挟んだヒータ(以下、「PTCヒータ」という)を備えた形状記憶合金製のコイルばね及び該コイルばねの付勢力で移動するピストンを収容したばね収容室とが設けられている。該弁室内には弁座が形成され、該弁座には、閉弁状態において流体通路を遮断するように弁体が着座している。該弁体には弁杆が連結され、弁杆の一端は、ばね収容室まで延出してピストンに連結されている。そして、PTCヒータの電源をONにすると、コイルばねに熱が伝達されて該コイルばねの付勢力が大きくなり、ピストンが移動されて弁体が弁座から離れることで、熱動式開閉弁が開弁される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このものでは、流体通路を流れる流体の温度(例えば、60度)が高い場合に、その流体の熱がバルブケーシングに伝達され、ばね収容室内のコイルばねに伝達される。このため、熱動式開閉弁を閉弁するためヒータの電源をOFFにしても、バルブケーシングからの熱がばね収容室にこもることと相俟ってコイルばね自体の温度低下速度が遅くなり、コイルばねが収縮せず、熱動式開閉弁を開弁状態に保持してしまうという不具合が発生する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題的に鑑み、熱源の電源をOFFした場合に確実に閉弁するように熱動式開閉弁を構成することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するため、本発明の熱動式開閉弁は、熱源を有し、該熱源から熱を受けると付勢力が変化する形状記憶合金製のばねを収容したばね収容室と流体通路を有する弁室とを設けたバルブケーシングを備え、該形状記憶合金製のばねの付勢力を変化させて弁室に設けた弁本体を移動させることで流体通路を開閉する熱動式開閉弁において、ばね収納室内に前記弁本体に連結されたピストンを設けると共に、このピストンを挟んで分割されるばね収納室の2つの空間のうち、前記弁室と反対側の空間に前記ばねを縮設すると共に、弁室側の空間と外気との通気を可能とする通気孔を開設し、弁室側からのばねへの熱の影響を防止することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、弁室内の流体通路内を流れる流体の温度が高い場合でも、ばね収容室に通気孔が開設されているので、該通気孔から導入される新鮮空気の空冷作用によってばね収容室に熱がこもらず、形状記憶合金製のばねの温度は上昇し難い。このため、該ばねに余計な熱が加わることが防止されるので、熱源をOFFにすると、ばね自体の温度は直ちに所定の温度以下に低下する。
【0010】
また、ばね収容室に通気孔を設けておけば、万一弁室から流体がばね収容室に流入したとしても該通気孔から流体が排出されるので、漏れた流体が熱源まで達することはなく、熱源に悪影響を及ぼすことが防止される。
【0011】
ここで、前記バルブケーシングは、ばね収容室と弁室とをそれぞれ設けた2個の合成樹脂製の部分を連結して構成され、前記通気孔を、ばね収容室を設けた一方のバルブケーシングの弁室側の端部に切欠きとして形成するのがよい。バルブケーシングを熱伝導率の低い合成樹脂製とすればばね収容室内の温度上昇をさらに低下できる。また、通気孔を切欠きとして形成する場合、バルブケーシングに通気孔を穴開け加工するのに比べてその加工作業が容易になる。
【0012】
前記熱源は、例えば、2枚の極板間に発熱部を挟んだヒータとすればよく、前記弁本体は、例えば、複弁構造とすればよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1及び図2を参照して、1は、本発明に係る熱動式開閉弁である。該熱動式開閉弁1は、第1及び第2の2個の部分2,3をボルト10により連結して構成されるバルブケーシングを有する。弁室を構成するバルブケーシングの第1部分2には、流体流入部21及び流体流出部22が形成され、該流体流入部21及び流体流出部22は略L字状の流体通路23を介して連通する。流体通路23には弁座25が形成され、該弁座25には、略円筒形状の弁本体4の一端の外周面に設けた第1シール材41が着座する。
【0014】
第2部分3には、一端を開口したばね収容室31が形成されている。該ばね収容室31には、開口側からガイド部材32と保持部材33とが挿設され、該ガイド部材32と保持部材33との間にはばね34が縮設されている。
【0015】
該ガイド部材32の内孔には、一端側に弁杆35aを装着したピストン35が挿設されている。弁杆35aの他端は、シール材43を介して流体通路23内に延出して弁本体4内に挿入されている。金属製の保持部材33には、ばね収容室31内で第1部分2方向に延出する金属製の芯部33aが形成されている。そして、ピストン35と保持部材33との間であって芯部33aの外周には、後述の熱源からの熱を受けると、ばね定数が大きくなってピストン35を熱動式開閉弁1の開弁方向、即ち流体流出部22方向(図1の右側)に付勢する形状記憶合金製のコイルばね36が設けられている。
【0016】
該コイルばね36は、通常状態(非加熱状態)では、ピストン35を第1部分2方向に押圧せず、この場合、弁本体4と流体通路23の内壁との間に縮設したばね45の付勢力により、弁本体4は第1シール材41が弁座25に着座した状態に保持される。
【0017】
保持部材33の底面33bには、熱源であるPTCヒータ5が面接触させて配設されている。該PTCヒータ5は、発熱部であるセラミックス製の板材51の両面を2枚の極板52、53で挟んで構成したものである。
【0018】
熱動式開閉弁1を開弁する場合には、図示しないスイッチをONにして両極板52、53に通電すると、板材51が所定の温度まで加熱される(本実施の形態では、約80度)。そして、コイルばね36がPTCヒータ5からの熱を受け、所定の温度を超えると、該コイルばね36のばね定数が大きくなって付勢力が大きくなり、ばね45の付勢力に抗してピストン35を介して弁本体4を流体流出部22方向に移動させ、熱動式開閉弁1が開弁する。
【0019】
ここで、形状記憶合金製のコイルばね36のばね定数が大きくなってピストン35を熱動式開閉弁1の開弁方向に付勢する付勢力は、従来の熱動式開閉弁に使用されていたワックスエレメントの膨張による押圧力と比較して小さい。このため、閉弁状態に保持するばね45の付勢力を大きく設定すると熱動式開閉弁を開弁できない一方で、従来技術と同様に熱動式開閉弁1を単弁構造にしたのでは、ばね45の付勢力を小さく設定すると流体通路23を流れる流体の水圧で開弁する不具合がある
【0020】
本実施形態では、熱動式開閉弁1に対する水圧の影響を小さくして開閉動作を確実にするため該弁本体4を複弁構造に形成した。即ち、第1部分2には、弁座25側に対向して収容孔26が形成され、該収容孔26には第2シール材42を装着した略円筒形状の弁本体4の他端が挿入されている。そして、弁本体4が移動する際、該シール材42が収容孔26の内を摺動する。
【0021】
また、流体通路23を流れる流体の温度が高く、その流体の熱がバルブケーシングの第1部分2、第2部分3を介してばね収容室31内のコイルばね36に伝達されたのでは、電源をOFFにしても熱がばね収容室31にこもることと相俟ってコイルばね36の温度が低下し難い。このため、コイルばね36の付勢力が小さくならず、熱動式開閉弁1を開弁状態に保持してしまうという不具合が発生する場合がある。
【0022】
本実施の形態では、バルブケーシングを構成する第1部分2及び第2部分3を、熱伝導率の小さい合成樹脂から形成すると共に、ばね収容室31と外気との連通を許容するように相互に対向した位置に2個の通気孔31aを開設した。この場合、通気孔31aをバルブケーシングの第2部分3の第1部分2への連結側の端部に切欠きとして形成した。このため、特に加工作業を要せず、通気孔31aの開設が容易になる。
【0023】
これにより、通気孔31aから導入される新鮮な空気の空冷作用によってばね収容室31及びコイルばね36の温度は流体通路23を流れる流体からの熱伝導によって上昇することはなく、PTCヒータ5がOFFされると確実に付勢力が低下して熱動式開閉弁1を閉弁させることができる。
【0024】
さらに、ガイド部材32には通気孔31aに一致するように孔32aが開設されている。これにより、例えば、シール材42またはシール材43のシール不良により流体通路23から流体がばね収容室31に流入したとしても、該流体が通気孔31aを介して外部に排出され、漏れた流体がPTCヒータ5まで達することはない。このため、PTCヒータ5の極板52、53を腐食させたりするなどの悪影響を及ぼすことが防止される。
【0025】
尚、上記実施の形態では、形状記憶合金製のコイルばね36は、加熱されるとばね定数が変化してその付勢力を変化させるものであるが、加熱されると自由長を変化させてその付勢力を変化させる形状記憶合金製のばねとしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱動式開閉弁では、熱源をOFFにすると、形状記憶合金製のコイルばね自体の温度が低下して確実に閉弁する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱動式開閉弁の縦断面図
【図2】本発明の熱動式開閉弁の横断面図
【符号の説明】
1 熱動式開閉弁
2、3 バルブケーシング
24 流体通路
31 ばね収容室
31a 通気孔
36 形状記憶合金製のコイルばね
4 弁本体
5 PTCヒータ
Claims (4)
- 熱源を有し、該熱源から熱を受けると付勢力が変化する形状記憶合金製のばねを収容したばね収容室と流体通路を有する弁室とを設けたバルブケーシングを備え、該形状記憶合金製のばねの付勢力を変化させて弁室に設けた弁本体を移動させることで流体通路を開閉する熱動式開閉弁において、ばね収納室内に前記弁本体に連結されたピストンを設けると共に、このピストンを挟んで分割されるばね収納室の2つの空間のうち、前記弁室と反対側の空間に前記ばねを縮設すると共に、弁室側の空間と外気との通気を可能とする通気孔を開設し、弁室側からのばねへの熱の影響を防止することを特徴とする熱動式開閉弁。
- 前記バルブケーシングは、ばね収容室と弁室とをそれぞれ設けた2個の合成樹脂製の部分を連結して構成され、前記通気孔を、ばね収容室を設けた一方のバルブケーシングの弁室側の端部に切欠きとして形成したことを特徴とする請求項1記載の熱動式開閉弁。
- 前記熱源は、2枚の極板間に発熱部を挟んだヒータであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱動式開閉弁。
- 前記弁本体を複弁構造としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の熱動式開閉弁。
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