JP7054717B2 - 分析方法および蛍光x線分析装置 - Google Patents

分析方法および蛍光x線分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、分析方法および蛍光X線分析装置に関する。
蛍光X線分析装置では、試料にX線管からの一次X線を照射することによって試料から放射された二次X線を検出器で検出して、定性分析および定量分析等を行うことができる。また、蛍光X線分析装置では、試料の膜厚を測定することができる(例えば特許文献1参照)。蛍光X線分析装置では、例えば、薄膜FP(Fundamental Parameter)法や標準試料を用いた検量線法を用いて、膜厚を測定することができる。
特開2000-131248号公報
しかしながら、従来の蛍光X線分析装置では、例えば、膜厚測定対象がめっき層である場合、スペクトルに現れるピークが、めっき層に含まれる元素のピークなのか、母材に含まれる元素のピークなのか判断できない。このように、従来の蛍光X線分析装置では、試料が層構造を有する場合、膜の積層順や、各膜の構成元素など、試料の深さ方向における元素の情報が得られなかった。
本発明に係る分析方法の一態様は、
一次X線を試料に照射し、前記試料から放射される二次X線を検出してX線スペクトルを取得する蛍光X線分析装置における分析方法であって、
前記二次X線の取り出し角を第1取り出し角として、第1X線スペクトルを取得する工程と、
前記二次X線の取り出し角を前記第1取り出し角とは異なる第2取り出し角として、第2X線スペクトルを取得する工程と、
前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める工程と、
を含み、
前記試料は、第1~第N層(N≧2)を有し、
前記分析対象元素の情報を求める工程では、
前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表す関数FSを求め、
前記第1~第N層の各層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表すモデル関数FMを作成し、
前記関数FSと前記モデル関数FMとを比較して、前記第1~第N層における前記分析対象元素の含有量の比を求める
このような分析方法では、二次X線の取り出し角の変化量に対するX線強度の変化量の比が大きいほど、元素が深い位置に存在していることを利用して、第1X線スペクトルおよび第2X線スペクトルに基づいて、試料の深さ方向における元素の情報を求めることができる。したがって、このような分析方法では、蛍光X線分析装置において、試料の深さ方向における元素の情報を得ることができる。
本発明に係る蛍光X線分析装置の一態様は、
一次X線を発生させるX線管と、
試料に前記一次X線が照射されることによって前記試料から放射される二次X線を検出する検出器と、
前記二次X線の取り出し角を可変にする機構と、
記憶部と、
前記検出器で前記二次X線を検出して取得されたX線スペクトルを、前記X線スペクトルを取得したときの前記二次X線の取り出し角を特定するための情報に関連付けて前記記憶部に記憶する記憶制御部と、
前記X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める解析部を含み、
前記解析部は、
前記記憶部から前記二次X線の取り出し角を第1取り出し角として取得された第1X線スペクトルを読み出す処理と、
前記記憶部から前記二次X線の取り出し角を前記第1取り出し角とは異なる第2取り出し角として取得された第2X線スペクトルを読み出す処理と、
前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める処理と、
を行い、
前記試料は、第1~第N層(N≧2)を有し、
前記分析対象元素の情報を求める処理では、
前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表す関数FSを求め、
前記第1~第N層の各層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表すモデル関数FMを作成し、
前記関数FSと前記モデル関数FMとを比較して、前記第1~第N層における前記分析対象元素の含有量の比を求める
このような蛍光X線分析装置では、二次X線の取り出し角を可変にする機構を含むため、二次X線の取り出し角の変化量に対するX線強度の変化量の比が大きいほど、元素が深い位置に存在していることを利用して、試料の深さ方向における元素の情報を得ることができる。
第1実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示す図。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置における分析方法の一例を示すフローチャート。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置において試料を測定している様子を示す図。 傾斜角とX線強度の関係を説明するための図。 層構造が既知の試料において、傾斜角を変化させたときの分析対象元素のX線強度の変化を示すグラフ。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置における分析方法の一例を示すフローチャート。 層構造が既知の試料において、傾斜角を変化させたときの分析対象元素のX線強度の変化を示すグラフ。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置における分析方法の一例を示すフローチャート。 層構造が既知の試料において、傾斜角を変化させたときの分析対象元素のX線強度の変化を示すグラフ。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置において試料を測定している様子を示す図。 第1実施形態に係る蛍光X線分析装置の動作の一例を示すフローチャート。 参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルの一例を示す図。 参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルの一例を示す図。 第2実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示す図。 検出器傾斜機構の動作を説明するための図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 第1実施形態
1.1. 蛍光X線分析装置
まず、第1実施形態に係る蛍光X線分析装置について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る蛍光X線分析装置100の構成を示す図である。
蛍光X線分析装置100は、蛍光X線分析法による分析を行うための装置である。蛍光X線分析法とは、試料Sに一次X線を照射し、一次X線の照射により試料Sから放射される二次X線を検出することで、試料Sの分析を行う手法である。
蛍光X線分析装置100は、図1に示すように、分析装置本体10と、操作部30と、表示部32と、記憶部34と、処理部40と、を含む。
分析装置本体10は、X線管2と、フィルター3と、一次X線コリメーター4と、試料支持板5と、二次X線コリメーター6と、検出器7と、試料傾斜機構8と、を含む。
X線管2は、一次X線を発生させる。X線管2では、試料Sの材質や分析対象元素に応じて、管電圧および管電流が設定される。管電圧は、X線管2に印加される電圧である。管電流は、X線管2に流す電流である。
フィルター3は、X線管2で発生したX線を通す。フィルター3を通してX線を試料Sに照射することで、フィルター3に連続X線や特性X線の一部を吸収させることができ、それらの成分を除去することができる。これにより、例えば、P/B比(peak-to-background ratio)を向上できる。蛍光X線分析装置100は、複数のフィルター3を備えており、複数のフィルター3は互いに低減できるエネルギー帯域が異なっている。測定対象元素に応じて複数のフィルター3から測定に用いられるフィルター3が選択される。
一次X線コリメーター4は、試料Sに照射されるX線の照射領域を制限する。一次X線コリメーター4によって、照射領域の大きさを選択することができる。
試料支持板5は、試料Sを支持している。試料支持板5には、開口が形成されており、当該開口を介して、一次X線が試料Sに照射される。試料Sは、分析装置本体10の試料室に収容される。蛍光X線分析装置100は、図示はしないが、試料室を真空排気するための真空排気装置を備えている。
二次X線コリメーター6は、試料Sから放射された二次X線の取得領域を制限する。二次X線コリメーター6を用いることで、目的の二次X線を効率よく検出することができる。ここで、二次X線とは、試料Sに一次X線を照射した際に、試料Sから放射されるX線をいう。二次X線は、蛍光X線、および散乱X線を含む。散乱X線は、試料に一次X線を照射した際に、原子や電子の散乱により放射されるX線である。蛍光X線は、試料に一次X線を照射した際に、原子の内殻電子が励起され、それによって生じた空孔に外殻電子が移るときに放出されるX線である。
検出器7は、試料Sから放射された二次X線を検出する。検出器7は、例えば、半導体検出器である。検出器7は、例えば、エネルギー分散型のX線検出器である。なお、検出器7は、波長分散型のX線検出器であってもよい。
試料傾斜機構8は、試料支持板5を傾斜させる。試料傾斜機構8で試料支持板5を傾斜させることによって、試料Sが傾斜する。試料傾斜機構8は、任意の傾斜角で試料Sを傾斜させることができる。試料傾斜機構8は、例えば、モーターを動作させて試料支持板5を傾斜させてもよいし、圧電素子を動作させて試料支持板5を傾斜させてもよい。
試料Sの傾斜角を変化させることによって、試料Sから放出される二次X線の取り出し角を変化させることができる。取り出し角は、検出器7でX線を取り出す角度をいう。すなわち、取り出し角は、検出器7で検出されるX線が、試料Sの表面から射出されるときの試料Sの表面に対する角度である。
分析装置本体10では、試料Sの測定が行われる。具体的には、X線管2から発生した一次X線は、フィルター3および一次X線コリメーター4を通過し試料Sに照射される。一次X線の照射により試料Sから放射された二次X線は、二次X線コリメーター6を通過して検出器7で検出される。このとき、二次X線は、試料Sの傾斜角に応じた取り出し角で検出器7に検出される。検出器7の出力(出力信号)は、信号処理回路(図示せず)で増幅やデジタル化などの処理が行われ、処理部40に取り込まれてX線スペクトルが生成
される。
操作部30は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部40に出力する。操作部30の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
表示部32は、処理部40によって生成された画像を表示する。表示部32の機能は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、操作部30としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
記憶部34は、処理部40の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部34は、処理部40のワーク領域としても機能する。記憶部34の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
処理部40(コンピュータ)の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing
Unit)、DSP(digital signal processor)等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部40は、取り出し角制御部42と、測定制御部43と、スペクトル生成部44と、記憶制御部46と、解析部48と、を含む。
取り出し角制御部42は、試料傾斜機構8を制御する。取り出し角制御部42は、試料傾斜機構8を動作させることによって、試料支持板5を傾斜させ、二次X線の取り出し角を制御する。
測定制御部43は、試料Sの測定を行うための処理を行う。測定制御部43は、分析装置本体10に、試料Sの測定を行わせる。
スペクトル生成部44は、試料Sの測定を行うことによって検出器7から出力された出力信号に基づいて、X線スペクトルを生成する。すなわち、スペクトル生成部44は、検出器7における二次X線の検出結果に基づいて、X線スペクトルを生成する。
記憶制御部46は、スペクトル生成部44で生成されたX線スペクトルを、X線スペクトルを取得したときの二次X線の取り出し角を特定するための情報に関連付けて記憶部34に記憶する。
解析部48は、X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める。試料Sの深さ方向における元素の情報は、例えば、試料Sが層構造を有する場合、膜の順序や、膜に含まれる元素、膜の組成などである。
1.2. 分析方法
蛍光X線分析装置100における分析方法は、二次X線の取り出し角を第1取り出し角として、第1X線スペクトルを取得する工程と、二次X線の取り出し角を第1取り出し角とは異なる第2取り出し角として、第2X線スペクトルを取得する工程と、第1X線スペクトルおよび第2X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める工程と、を含む。
以下、蛍光X線分析装置100における分析方法について、詳細に説明する。
1.2.1. 第1実施例
図2は、蛍光X線分析装置100における分析方法の一例を示すフローチャートである
まず、蛍光X線分析装置100において試料Sを測定して、互いに異なる傾斜角で得られた複数のX線スペクトルを取得する(S100)。
図3は、蛍光X線分析装置100において試料Sを測定している様子を示す図である。試料Sは、試料Sの表面側から順に、第1層101と、第2層102と、を有している。第1層101は、例えば、めっき層であり、第2層102は、例えば、母材である。
第1層101は、元素Aを含み、第2層102は、元素Bを含む。第1実施例では、元素Cが、第1層101に含まれているのか、それとも、第2層102に含まれているのかを調べる。
まず、図3に示すように、試料Sを水平(第1傾斜角φ1=0°)にして測定を行い、第1X線スペクトルを取得する。このときの二次X線の取り出し角θを第1取り出し角θ1とする。
次に、試料傾斜機構8を用いて試料Sを傾斜させて傾斜角φを第2傾斜角φ2として測定を行い、第2X線スペクトルを取得する。このときの二次X線の取り出し角θを第2取り出し角θ2とする。なお、θ2<θ1である。
同様に、図示はしないが、試料傾斜機構8を用いて試料Sをさらに傾斜させて第3傾斜角φ3とし、第3X線スペクトルを取得する。このときの二次X線の取り出し角θを第3取り出し角θ3とする。なお、θ3<θ2である。
試料Sの傾斜角φの変更と、スペクトルの取得と、を繰り返すことによって、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルを取得する。
次に、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから、元素CのX線強度の変化を求め(S102)、X線強度の変化をモデルと比較して、元素Cが、第1層101に含まれているのか、それとも、第2層102に含まれているのかを調べる(S104)。
図4は、傾斜角φとX線強度との関係を説明するための図である。
図4に示すように、第2層102に元素Cが含まれている場合、傾斜角φを大きくして、取り出し角θを小さくすると、元素Cの蛍光X線が第1層101を通る距離が長くなる。そのため、第2層102に元素Cが含まれている場合、傾斜角φが大きくなるほど、すなわち、取り出し角θが小さくなるほど、X線強度が小さくなる。これに対して、第1層101に元素Cが含まれている場合、傾斜角φを大きくしても、元素Cの蛍光X線が第1層101を通る距離の変化量は、第2層102に元素Cが含まれている場合と比べて、小さい。
したがって、第2層102に元素Cが含まれている場合には、第1層101に元素Cが含まれている場合と比べて、傾斜角φ(取り出し角θ)の変化量Δφに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δφが大きくなる。そのため、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから比ΔI/Δφを求めて、元素Cが、第1層101に含まれているのか、それとも、第2層102に含まれているのかを知ることができる。
このように、傾斜角φの変化量Δφに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δφが
大きいほど、元素が深い位置に存在していることを利用して、試料Sの深さ方向における元素の情報を取得できる。
図5は、層構造が既知の試料において、傾斜角φを変化させたときの元素CのX線強度の変化を示すグラフである。なお、図5に示すグラフの横軸は、傾斜角φであり、縦軸は、X線強度Iである。X線強度Iは、傾斜角φ=0°のときのX線強度を1として規格化している。
図5には、層構造が既知の試料で得られたX線強度の変化を表す関数のモデルとして、関数F1、および関数F2を示している。関数F1は、第1層101に元素Cが含まれている場合の元素CのX線強度の変化を表している。関数F2は、第2層102に元素Cが含まれている場合の元素CのX線強度の変化を表している。
関数F1および関数F2は、薄膜FP(Fundamental Parameter)法により得られる。薄膜FP法は、試料を構成している元素の種類と組成に基づいて、蛍光X線の強度を理論的に計算する手法である。
なお、関数F1および関数F2は、標準試料を測定することにより得られた検量線であってもよい。例えば、関数F1は、傾斜角φ=0°、傾斜角φ=5°、傾斜角φ=10°、傾斜角φ=15°、傾斜角φ=20°、傾斜角φ=25°において第1層101に元素Cが含まれている標準試料のX線スペクトルを取得し、取得したX線スペクトルにおける元素CのX線強度をプロットして得てもよい。関数F2についても同様に、第2層102に元素Cが含まれている標準試料を用いて得ることができる。
図5に示すように、関数F2の傾きは、関数F1の傾きに比べて大きい。ここで、傾きは、傾斜角φの変化量Δφに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δφに対応する。すなわち、傾きは、二次X線の取り出し角θの変化量Δθに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δθに対応する。
したがって、分析対象元素のX線強度Iの変化量を表す関数の傾きに基づいて、元素Cが第1層101に含まれているか、それとも第2層102に含まれているのかがわかる。
具体的には、互いに傾斜角φの異なる複数のX線スペクトルにおける元素CのX線強度を、図5に示すグラフにプロットして、関数FSを得る。関数FSは、傾斜角φ(取り出し角θ)を変化させたときの分析対象元素のX線強度の変化を表す関数である。
関数FSの傾きが、関数F1の傾きに近い場合には、元素Cが第1層101に含まれているといえる。関数FSの傾きが、関数F2に近い場合には、元素Cが第2層102に含まれているといえる。
なお、上記では、試料SのX線スペクトルを、3つ以上取得して関数FSを得たが、少なくとも2つのX線スペクトルを取得すれば関数FSを導くことができる。
1.2.2. 第2実施例
第2実施例では、試料Sは、第1実施例と同様に、第1層101と、第2層102と、を有している。また、第1層101は、元素Aおよび元素Cを含み、第2層102は、元素Bおよび元素Cを含んでいる。第2実施例では、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求める。
図6は、蛍光X線分析装置100における分析方法の一例を示すフローチャートである
まず、試料Sの傾斜角φの変更と、スペクトルの取得と、を繰り返すことによって、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルを取得する(S200)。本工程は、図2に示す工程S100と同様に行われる。
次に、第1層101に含まれる各元素および第2層102に含まれる各元素の推定濃度を求める(S202)。
例えば、測定された任意のX線スペクトルから、各元素のKレシオを求め、当該Kレシオから各元素の推定濃度を求める。なお、Kレシオは、相対強度であり、純元素のX線強度を1としたときのX線強度である。
例えば、試料Sを水平にして試料Sを測定して得られたX線スペクトルから、試料Sを構成する各元素のKレシオを求める。ここでは、元素AのKレシオが0.5、元素BのKレシオが0.4、元素CのKレシオが0.1とする。
このとき、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比が1:1であると仮定する。この場合、第1層101では、元素AのKレシオが0.5、元素CのKレシオが0.1/2=0.05となる。また、第2層102では、元素BのKレシオが0.4、元素CのKレシオが0.1/2=0.05となる。
したがって、第1層101において、元素Aの推定濃度を91%、元素Cの推定濃度を9%とし、第2層102において、元素Bの推定濃度を89%、第2層102の元素の推定濃度を11%とする。
次に、工程S202で求めた推定濃度に基づいてモデルを作成し(S204)、当該モデルと関数FSを比較して、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求める(S206)。
図7は、層構造が既知の試料において、傾斜角φを変化させたときの元素CのX線強度の変化を示すグラフである。
図7には、関数F1と関数F2を示している。図7には、さらに、モデルとして、関数FMを示している。関数FMは、工程S202で求めた推定濃度に基づいて理論計算により作成された、分析対象元素のX線強度Iの変化を表す関数である。
関数FMは、各層に含まれる元素の濃度がわかれば、薄膜FP法により作成することができる。すなわち、関数FMは、第1層101に含まれる元素Aの濃度と元素Cの濃度、および第2層102に含まれる元素Bの濃度と元素Cの濃度がわかれば、作成することができる。本工程S204では、工程S202で求めた第1層101に含まれる元素Aの推定濃度と元素Cの推定濃度、および第2層102に含まれる元素Bの推定濃度と元素Cの推定濃度に基づいて、関数FMを作成する。
図7に示すように、関数FMの傾きは、関数F1の傾きと関数F2の傾きとの間の値となる。すなわち、第1層101と第2層102の両方に元素Cが含まれている場合のX線強度Iの変化量は、第1層101に元素Cが含まれている場合のX線強度Iの変化量と、第2層102に元素Cが含まれている場合のX線強度Iの変化量と、の間の値となる。
ここで、傾斜角φにおけるX線強度は次式で表される。
φ=a・I1φ+b・I2φ ・・・(1)
ただし、Iφは、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度である。I1φは、傾斜角φにおける第1層101に含まれる分析対象元素のX線強度である。I2φは、傾斜角φにおける第2層102に含まれる分析対象元素のX線強度である。aは、分析対象元素のX線強度のうち、第1層101に含まれる分析対象元素のX線強度の割合であり、bは、分析対象元素のX線強度のうち、第2層102に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。なお、a+b=1である。
工程S206における解析は、元素CのX線強度Iの変化を表す関数FSと、関数FMを比較することで行う。関数FSと関数FMを比較して、上記式(1)の割合aおよび割合bを求める。
なお、上記式(1)は、傾斜角φごとに成り立つため、傾斜角φごとに上記式(1)から割合aおよび割合bを求め、最小二乗法を用いて、確からしい割合aおよび割合bを求める。
これにより、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求めることができる。
ここで、推定濃度が、本来の試料Sの各層に含まれる元素の濃度と大きく異なる場合、薄膜FP法では、関数FMを正確に作成することができない。そのため、工程S206で求めた解析結果から得られた元素の濃度と、推定濃度と、を比較する(S208)。
本工程では、例えば、解析結果から得られた元素の濃度と、推定濃度と、を比較して、解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれがあらかじめ設定された値よりも大きいか否かを判定する。
例えば、解析結果から得られた第1層101の元素Cの濃度と、第1層101の元素Cの推定濃度を比較し、これらの差があらかじめ設定された値よりも大きいか否かを判定する。
解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれが、あらかじめ設定された値より大きい場合(S210のNo)、解析結果から得られた元素の濃度を推定濃度とし(S212)、工程S204に戻って、当該推定濃度に基づいてモデル(関数FM)を作成する。そして、新たに作成された関数FMと関数FSを比較して、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求める(S206)。
このように、解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれが、設定された値よりも小さくなるまで、工程S204、工程S206、工程S208、工程S210、工程S212を繰り返す。
解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれが、あらかじめ設定された値以下となった場合(S210のYes)、この解析結果は確からしいと判断できる。
以上の工程により、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求めることができる。
なお、上記では、工程S202において、測定された任意のX線スペクトルから、各元素のKレシオを求め、当該Kレシオから各層に含まれる元素の推定濃度を求める場合につ
いて説明したがこれに限定されない。推定濃度は、任意の値に設定可能である。例えば、推定濃度と、本来の元素の濃度とのずれが大きい場合でも、工程S204、工程S206、工程S208、工程S210、工程S212を繰り返すことによって、確からしい解析結果が得られる。
1.2.3. 第3実施例
第3実施例では、試料Sは、第1実施例と同様に、第1層101と、第2層102と、を有している。第3実施例では、各層に含まれる元素の割合を求める。すなわち、元素A、元素B、および元素Cが、どの層に、どの割合で含まれているのかを求める。
図8は、蛍光X線分析装置100における分析方法の一例を示すフローチャートである。
まず、試料Sの傾斜角φの変更と、スペクトルの取得と、を繰り返すことによって、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルを取得する(S300)。本工程は、図2に示す工程S100と同様に行われる。
次に、第1層101に含まれる各元素の推定濃度、および第2層102に含まれる各元素の推定濃度を求める(S302)。
本工程S302では、上述した図6に示す工程S202と同様の手法で、各元素の推定濃度を求める。
ここでは、元素AのKレシオが0.5、元素BのKレシオが0.4、元素CのKレシオが0.1とする。
このとき、第1層101に含まれる元素Aの含有量と第2層102に含まれる元素Aの含有量の比が1:1であると仮定する。また、第1層101に含まれる元素Bの含有量と第2層102に含まれる元素Bの含有量の比が1:1であると仮定する。また、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比が1:1であると仮定する。
この場合、第1層101では、元素AのKレシオが0.25、元素BのKレシオが0.2、元素CのKレシオが0.05となる。そのため、第1層101では、元素Aの推定濃度を50%、元素Bの推定濃度を40%、元素Cの推定濃度を10%とする。
また、第2層102では、元素AのKレシオが0.25、元素BのKレシオが0.2、元素CのKレシオが0.05となる。そのため、第2層102では、元素Aの推定濃度を50%、元素Bの推定濃度を40%、元素Cの推定濃度を10%とする。
次に、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素ごとにモデルを作成し(S304)、元素ごとに作成したモデルと、元素ごとに作成した関数FSを比較して、各層に含まれる元素の割合を求める(S306)。
図9は、層構造が既知の試料において、傾斜角φを変化させたときの、元素AのX線強度の変化を示すグラフ、元素BのX線強度の変化を示すグラフ、および元素CのX線強度の変化を示すグラフである。
本工程では、まず、元素Aについて、上述した第2実施例の手法で、第1層101に含まれる元素Aの含有量と第2層102に含まれる元素Aの含有量の比を求める。具体的に
は、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素AのX線強度の変化を示す関数FM(A)を作成する。また、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから、元素AのX線強度Iの変化を表す関数FS(A)を求める。そして、関数FS(A)と関数FM(A)を比較する。これにより、第1層101に含まれる元素Aの含有量と第2層102に含まれる元素Aの含有量の比を求めることができる。
同様に、第1層101に含まれる元素Bの含有量と第2層102に含まれる元素Bの含有量の比を求める。具体的には、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素BのX線強度の変化を示す関数FM(B)を作成する。また、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから、元素BのX線強度Iの変化を表す関数FS(B)を求める。そして、関数FS(B)と関数FM(B)を比較する。これにより、第1層101に含まれる元素Bの含有量と第2層102に含まれる元素Bの含有量の比を求めることができる。
同様に、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求める。具体的には、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素CのX線強度の変化を示す関数FM(C)を作成する。また、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから、元素CのX線強度Iの変化を表す関数FS(C)を求める。そして、関数FS(C)と関数FM(C)を比較する。これにより、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量の比を求めることができる。
次に、解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度を比較する(S308)。解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれがあらかじめ設定された値より大きい場合(S
310のNo)、解析結果から得られた元素の濃度を推定濃度とし(S312)、工程S304に戻って、当該推定濃度に基づいて元素ごとにモデル(関数FM(A)、関数FM(B)、関数FM(C))を作成する。そして、新たに作成された関数FM(A)と関数FS(A)、関数FM(B)と関数FS(B)、関数FM(C)と関数FS(C)をそれぞれ比較して、各層に含まれる元素の割合を求める。
このように、解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれが、設定された値よりも小さくなるまで、工程S304、工程S306、工程S308、工程S310、工程S312を繰り返す。
解析結果から得られた元素の濃度と推定濃度のずれが、あらかじめ設定された値以下となった場合(S310のYes)、この解析結果は確からしいと判断できる。
以上の工程により、各層に含まれる元素の割合を求めることができる。
なお、上記では、試料Sを構成する元素が、元素A、元素B、および元素Cの3つである場合について説明したが、試料Sを構成する元素が3つより多い場合でも、同様に、解析を行うことができる。
1.2.4. 第4実施例
図10は、蛍光X線分析装置100において試料Sを測定している様子を示す図である。
第4実施例では、図10に示すように、試料Sは、第1層101と、第2層102と、第3層103と、を有している。第4実施例では、各層に含まれる元素の割合を求める。
第4実施例における分析方法は、上述した図8に示す第3実施例における分析方法と同様の工程で行われる。そのため、図8を参照しながら、第3実施例と異なる点について説
明し、同様の点については説明を省略する。
工程S302では、第1層101に含まれる各元素の推定濃度、第2層102に含まれる各元素の推定濃度、および第3層103に含まれる各元素の推定濃度を求める。
層の数が増えた場合でも、上述した図8に示す工程S302で説明した2層の場合と同様の手法で、各元素の推定濃度を求めることができる。
例えば、元素AのKレシオが0.3、元素BのKレシオが0.3、元素CのKレシオが0.3、元素DのKレシオが0.1とする。
このとき、第1層101に含まれる元素Aの含有量と第2層102に含まれる元素Aの含有量と第3層103に含まれる元素Aの含有量の比が1:1:1であると仮定する。また、第1層101に含まれる元素Bの含有量と第2層102に含まれる元素Bの含有量と第3層103に含まれる元素Bの含有量の比が1:1:1であると仮定する。また、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量と第3層103に含まれる元素Cの含有量の比が1:1:1であると仮定する。
この場合、第1層101では、元素AのKレシオが0.1、元素BのKレシオが0.1、元素CのKレシオが0.1、元素DのKレシオが0.033(=0.1/3)となる。そのため、第1層101では、元素Aの推定濃度を30%、元素Bの推定濃度を30%、元素Cの推定濃度を30%、元素Dの推定濃度を10%とする。
第2層102および第3層103についても、第1層101と同様に、各元素の推定濃度を求めることができる。例えば、第2層102および第3層103についても、第1層101と同様に推定濃度を求めて、元素Aの推定濃度を30%、元素Bの推定濃度を30%、元素Cの推定濃度を30%、元素Dの推定濃度を10%とする。
工程S304では、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素ごとにモデルを作成し、工程S306では、元素ごとに作成したモデルと、元素ごとに作成した関数FSを比較して、各層に含まれる元素の割合を求める。
工程S304では、まず、工程S302で求めた推定濃度に基づいて元素AのX線強度の変化を示す関数FM(A)を作成する。また、工程S306では、互いに異なる傾斜角φで得られた複数のX線スペクトルから、元素AのX線強度Iの変化を表す関数FS(A)を求め、関数FS(A)と関数FM(A)を比較する。
工程S306における解析では、次式(2)を用いる。
φ=a・I1φ+b・I2φ+c・I3φ・・・・(2)
ただし、Iφは、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度である。I1φは、傾斜角φにおける第1層101に含まれる分析対象元素のX線強度である。I2φは、傾斜角φにおける第2層102に含まれる分析対象元素のX線強度である。aは、分析対象元素のX線強度のうち、第1層101に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。bは、分析対象元素のX線強度のうち、第2層102に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。cは、分析対象元素のX線強度のうち、第3層103に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。なお、a+b+c=1である。
工程S306における解析は、元素AのX線強度Iの変化を表す関数FS(A)と、関数FM(A)を比較することで行う。関数FS(A)と関数FM(A)を比較して、上記
式(2)の割合a、割合b、および割合cを求める。これにより、第1層101に含まれる元素Aの含有量と第2層102に含まれる元素Aの含有量と第3層103に含まれる元素Aの含有量の比を求めることができる。
元素Bについても、元素Aの例と同様に、第1層101に含まれる元素Bの含有量と第2層102に含まれる元素Bの含有量と第3層103に含まれる元素Bの含有量の比を求める。また、元素Cについても、元素Aの例と同様に、第1層101に含まれる元素Cの含有量と第2層102に含まれる元素Cの含有量と第3層103に含まれる元素Cの含有量の比を求める。また、元素Dについても、元素Aの例と同様に、第1層101に含まれる元素Dの含有量と第2層102に含まれる元素Dの含有量と第3層103に含まれる元素Dの含有量の比を求める。
このように、層の数が増えた場合でも、上述した図8に示す工程S304および工程S306で説明した2層の場合と同様の手法で、各層に含まれる元素の割合を求めることができる。
その他の工程は、上述した図8に示す第3実施例と同様である。
なお、上記では、試料Sを構成する元素が、元素A、元素B、元素C、および元素Dの4つである場合について説明したが、試料Sを構成する元素が4つより多い場合でも、同様に、解析を行うことができる。また、上記では、層の数が3である場合について説明したが、層の数が3よりも多い場合でも、同様に、解析を行うことができる。
1.3. 蛍光X線分析装置の動作
図11は、蛍光X線分析装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザーが操作部30を介して、測定条件および解析条件を入力すると、処理部40は、当該測定条件を受け付けて(S1)、試料Sの分析を開始する。
測定条件は、X線スペクトルの数n、傾斜角φを変更するときの角度ステップ、管電圧、管電流などの条件である。解析条件は、薄膜FP法でモデルを作成する際の前提条件である。解析条件は、例えば、層数や、膜の積層順、各膜の構成元素などの条件である。なお、解析条件は、第1~第4実施例で示したように、解析の目的によって異なる。
まず、取り出し角制御部42が、試料傾斜機構8を動作させて、試料Sを水平(第1傾斜角φ1=0°)にする(S2)。これにより、取り出し角θが第1取り出し角θ1となる。
測定制御部43は、分析装置本体10に試料Sの測定を行わせる(S3)。この結果、スペクトル生成部44において、第1X線スペクトルが生成される。
記憶制御部46は、スペクトル生成部44で生成された第1X線スペクトルを、第1X線スペクトルを取得したときの取り出し角θを特定するための情報に関連付けて記憶部34に記憶する(S4)。これにより、記憶部34には、第1傾斜角φ1と、第1傾斜角φ1で得られた第1X線スペクトルが関連付けられて記憶される。
なお、取り出し角θを特定するための情報として、傾斜角φが記憶される場合について説明したが、取り出し角θを特定するための情報は、取り出し角θを特定できる情報であれば特に限定されない。例えば、取り出し角θを特定するための情報は、取り出し角θそのものであってもよい。すなわち、記憶部34には、第1取り出し角θ1と、第1X線ス
ペクトルが関連付けられて記憶されてもよい。
次に、取り出し角制御部42は、試料傾斜機構8を動作させて、試料Sの傾斜角を、測定条件で指定された角度ステップだけ変更する(S2)。これにより、試料Sの傾斜角φが、第1傾斜角φ1から第2傾斜角φ2に変更され、取り出し角θが第1取り出し角θ1から第2取り出し角θ2に変更される。
この状態で、測定制御部43は、分析装置本体10に、試料Sの測定を行わせる(S3)。この結果、スペクトル生成部44において、第2X線スペクトルが生成される。
記憶制御部46は、スペクトル生成部44で生成された第2X線スペクトルを、第2傾斜角φ2に関連付けて記憶部34に記憶する(S4)。
次に、処理部40は、繰り返し回数をmとして、m=nを満たすか否かを判定する。m=nを満たしていない場合(S5のNo)には、m=m+1として、傾斜角φの変更(S2)、X線スペクトルの測定(S3)、およびX線スペクトルの記録(S4)を行う。
一方、m=nを満たした場合には、(S5のYes)、解析部48は、第1~第nX線スペクトルおよび第1~第n傾斜角に基づいて、解析を行う(S6)。
このように、傾斜角φの変更(S2)、X線スペクトルの測定(S3)、およびX線スペクトルの記録(S4)が、第nスペクトルが得られるまで繰り返される。これにより、記憶部34には、第1~第nX線スペクトルが、第1~第n傾斜角に関連付けられて記憶される。
解析部48では、上述した第1~第4実施例で説明した解析手法を用いて、解析が行われる。どの解析を行うかの選択は、例えば、解析条件に基づいて決定される。
例えば、解析部48は、記憶部34から、第1~第nX線スペクトルおよび第1~第n傾斜角の情報を読み出して、第1~第nX線スペクトルおよび第1~第n傾斜角の情報を取得する。解析部48は、第1~第nX線スペクトルおよび第1~第n傾斜角に基づいて、分析対象元素のX線強度の変化を表す関数FSを求める。解析部48は、関数FSの傾き、すなわち、傾斜角φ(取り出し角θ)の変化量に対する分析対象元素のX線強度Iの変化量の比に基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める。
例えば、解析部48は、薄膜FP法でモデル(関数)を作成し、当該モデルと関数FSと、を比較して、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める。
薄膜FP法でモデルを作成する際の条件として、例えば、ユーザーが入力した解析条件を適用することができる。例えば、第2実施例の解析を行う場合には、第1層101が元素Aおよび元素Cを含み、第2層102が元素Aおよび元素Cを含んでいることが前提となる。そのため、ユーザーはこの情報を解析条件として入力する。解析部48は、この条件を考慮して、薄膜FP法により関数FMを作成する。これにより、第2実施例の解析を行うことができる。
また、例えば、第3実施例の解析および第4実施例の解析を行う場合には、解析部48は、任意のX線スペクトルに基づいて推定濃度を求めて、薄膜FP法を作成する際に用いる。
解析部48は、解析結果を表示部32に表示させる。そして、処理部40は処理を終了
する。
1.4. 作用効果
蛍光X線分析装置100における分析方法は、二次X線の取り出し角θを第1取り出し角θ1として、第1X線スペクトルを取得する工程と、二次X線の取り出し角θを第1取り出し角とは異なる第2取り出し角θ2として、第2X線スペクトルを取得する工程と、第1X線スペクトルおよび第2X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める工程と、を含む。
蛍光X線分析装置100における分析方法では、取り出し角θの変化量Δθに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δθが大きいほど、元素が深い位置に存在していることを利用して、第1X線スペクトルおよび第2X線スペクトルに基づいて、試料の深さ方向における元素の情報を求めることができる。したがって、このような分析方法では、蛍光X線分析装置100において、試料の深さ方向における元素の情報を得ることができる。
蛍光X線分析装置100における分析方法では、試料Sを傾斜させることによって、二次X線の取り出し角θを、第1取り出し角θ1から第2取り出し角θ2に変更する工程を含む。そのため、容易に、取り出し角θを変更できる。
蛍光X線分析装置100における分析方法では、二次X線の取り出し角θを、第3取り出し角θ3として、第3X線スペクトルを取得する工程を含み、試料の深さ方向における元素の情報を求める工程では、第1X線スペクトル、第2X線スペクトル、および第3X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める。そのため、蛍光X線分析装置100における分析方法では、試料Sの深さ方向における元素の情報を得ることができる。
蛍光X線分析装置100における分析方法では、取り出し角θの変化量Δθに対するX線強度Iの変化量ΔIの比ΔI/Δθに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める。そのため、例えば、薄膜FP法で作成されたモデルや標準試料を測定して得られた検量線と比較することで、容易に、試料Sの深さ方向における元素の情報を得ることができる。
蛍光X線分析装置100は、試料Sの傾斜角φを制御する試料傾斜機構8を含む。試料Sの傾斜角φは、取り出し角θに1対1に対応する。したがって、蛍光X線分析装置100は、取り出し角θを可変にする機構を含む。そのため、蛍光X線分析装置100では、比ΔI/Δθが大きいほど、元素が深い位置に存在していることを利用して、試料の深さ方向における元素の情報を求めることができる。
蛍光X線分析装置100では、記憶部34と、検出器7で二次X線を検出して取得されたX線スペクトルを、X線スペクトルを取得したときの二次X線の取り出し角θを特定するための情報に関連付けて記憶部34に記憶する記憶制御部46と、を含む。そのため、蛍光X線分析装置100では、容易に、X線スペクトルと、X線スペクトルを取得したときの取り出し角θを特定するための情報とが関連付けられたデータを得ることができる。そのため、蛍光X線分析装置100では、容易に、試料Sの深さ方向における元素の情報を得ることができる。
蛍光X線分析装置100では、X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める解析部48を含み、解析部48は、記憶部34から二次X線の取り出し角を第1取り出し角θ1として取得された第1X線スペクトルを読み出す処理と、記憶部34から二次X線の取り出し角を第2取り出し角θ2として取得された第2X線スペク
トルを読み出す処理と、第1X線スペクトルおよび第2X線スペクトルに基づいて、試料Sの深さ方向における元素の情報を求める処理と、を行う。このように、蛍光X線分析装置100では、解析部48が、試料Sの深さ方向における元素の情報を求めるため、容易に、試料Sの深さ方向における元素の情報を得ることができる。
図12は、取り出し角θを可変にする機構を有しない参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルの一例を示す図である。図12では、第1層101にはニッケルが含まれ、第2層102には鉄が含まれている。
図12に示すように、参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルでは、鉄のピークとニッケルのピークが確認できるが、鉄およびニッケルがどちらの層に含まれてるいるのかは判断できない。
これに対して、蛍光X線分析装置100では、上述したように、互いに取り出し角θの異なる複数のX線スペクトルに基づいて解析を行うことによって、鉄およびニッケルがどちらの層に含まれてるいるのかを判断できる。
図13は、取り出し角θを可変にする機構を有しない参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルの一例を示す図である。図13では、第1層101にはニッケルが含まれ、第2層102にはクロム、鉄、およびニッケルが含まれている。
図13に示すように、参考例に係る蛍光X線分析装置で得られたX線スペクトルでは、第1層101のニッケルと第2層102のニッケルのピークが重なるため、第1層101に含まれるニッケルの含有量、および第2層102に含まれるニッケルの含有量を知ることができない。
これに対して、蛍光X線分析装置100では、上述したように、互いに取り出し角θの異なる複数のX線スペクトルに基づいて解析を行うことによって、第1層101に含まれるニッケルの含有量と第2層102に含まれるニッケルの含有量の比を知ることができる。
例えば、参考例に係る蛍光X線分析装置では、膜厚測定を行う場合、ユーザーが各膜の構成元素などを入力しなければならなかった。これに対して、蛍光X線分析装置100では、上記のように、各膜の構成元素の情報を得ることができるため、ユーザーが各膜の構成元素の情報を入力しなくても、膜厚測定を行うことができる。
2. 第2実施形態
2.1. 蛍光X線分析装置
次に、第2実施形態に係る蛍光X線分析装置について、図面を参照しながら説明する。図14は、第2実施形態に係る蛍光X線分析装置200の構成を示す図である。以下、第2実施形態に係る蛍光X線分析装置200において、第1実施形態に係る蛍光X線分析装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述した蛍光X線分析装置100は、図1に示すように、取り出し角θを可変にする機構として、試料傾斜機構8を備えていた。
これに対して、蛍光X線分析装置200では、図14に示すように、取り出し角θを可変にする機構として、検出器傾斜機構9を備えている。
図15は、検出器傾斜機構9の動作を説明するための図である。
検出器傾斜機構9は、検出器7を傾斜させる。検出器傾斜機構9は、任意の傾斜角ψに検出器7を傾斜させることができる。検出器7を傾斜させることで、試料Sから放射される二次X線の取り出し角θを変更できる。図15に示す例では、検出器傾斜機構9は、検出器7の傾斜角ψを、第1傾斜角ψ1から第2傾斜角ψ2に変更することによって、二次X線の取り出し角θを、第1取り出し角θ1から第2取り出し角θ2に変更している。
検出器傾斜機構9は、例えば、モーターを動作させて検出器7を傾斜させてもよいし、圧電素子を動作させて検出器7を傾斜させてもよい。
2.2. 分析方法
上述した蛍光X線分析装置100における分析方法では、試料傾斜機構8で試料Sを傾斜させることで、取り出し角θを変更していた。これに対して、蛍光X線分析装置200における分析方法は、検出器傾斜機構9で検出器7を傾斜させることで、取り出し角θを変更する。この点を除いて、蛍光X線分析装置200における分析方法は、蛍光X線分析装置100における分析方法と同様であり、その説明を省略する。
2.3. 蛍光X線分析装置の動作
蛍光X線分析装置200では、取り出し角制御部42は、検出器傾斜機構9に検出器7を傾斜させて、取り出し角θを変更する。また、記憶制御部46は、取り出し角θを特定するための情報として、検出器7の傾斜角ψを記憶部34に記憶する。蛍光X線分析装置200の動作は、これらの点を除いて、上述した蛍光X線分析装置100の動作と同様でありその説明を省略する。
2.4. 作用効果
蛍光X線分析装置200では、蛍光X線分析装置100と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…X線管、3…フィルター、4…一次X線コリメーター、5…試料支持板、6…二次X線コリメーター、7…検出器、8…試料傾斜機構、9…検出器傾斜機構、10…分析装置本体、30…操作部、32…表示部、34…記憶部、40…処理部、42…取り出し角制御部、43…測定制御部、44…スペクトル生成部、46…記憶制御部、48…解析部、100…蛍光X線分析装置、101…第1層、102…第2層、103…第3層、200…蛍光X線分析装置

Claims (16)

  1. 一次X線を試料に照射し、前記試料から放射される二次X線を検出してX線スペクトルを取得する蛍光X線分析装置における分析方法であって、
    前記二次X線の取り出し角を第1取り出し角として、第1X線スペクトルを取得する工程と、
    前記二次X線の取り出し角を前記第1取り出し角とは異なる第2取り出し角として、第2X線スペクトルを取得する工程と、
    前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める工程と、
    を含み、
    前記試料は、第1~第N層(N≧2)を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、
    前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表す関数FSを求め、
    前記第1~第N層の各層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表すモデル関数FMを作成し、
    前記関数FSと前記モデル関数FMとを比較して、前記第1~第N層における前記分析対象元素の含有量の比を求める、分析方法。
  2. 請求項1において、
    前記試料を傾斜させることによって、前記二次X線の取り出し角を、前記第1取り出し角から前記第2取り出し角に変更する工程を含む、分析方法。
  3. 請求項1において、
    前記二次X線を検出する検出器を傾斜させることによって、前記二次X線の取り出し角を、前記第1取り出し角から前記第2取り出し角に変更する工程を含む、分析方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記二次X線の取り出し角を、前記第1取り出し角および前記第2取り出し角とは異な
    る第3取り出し角として、第3X線スペクトルを取得する工程を含み、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、前記第1X線スペクトル、前記第2X線スペクトル、および前記第3X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における前記分析対象元素の情報を求める、分析方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、前記二次X線の取り出し角の変化量に対するX線強度の変化量の比に基づいて、前記試料の深さ方向における前記分析対象元素の情報を求める、分析方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記試料は、第1層と、第2層と、を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素AのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素AのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表す関数FS(A)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度および前記第2層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表すモデル関数FM(A)を作成し、
    前記関数FS(A)と前記モデル関数FM(A)とを比較して、次式(1)の割合aおよび割合bを求めて、前記第1層に含まれる元素Aの含有量と前記第2層に含まれる元素Aの含有量の比を求める、分析方法。
    φ =a・I 1φ +b・I 2φ ・・・(1)
    ただし、I φ は、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度であり、I 1φ は、傾斜角φにおける前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度であり、I 2φ は、傾斜角φにおける前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度であり、aは分析対象元素のX線強度のうち、前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合であり、bは分析対象元素のX線強度のうち、前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。
  7. 請求項6において、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素Aとは異なる元素BのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素BのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表す関数FS(B)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度および前記第2層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表すモデル関数FM(B)を作成し、
    前記関数FS(B)と前記モデル関数FM(B)とを比較して、前記式(1)の割合aおよび割合bを求めて、前記第1層に含まれる元素Bの含有量と前記第2層に含まれる元素Bの含有量の比を求める、分析方法。
  8. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記試料は、第1層と、第2層と、第3層と、を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素AのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素AのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表す関数FS(A)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度、前記第2層を構成する各元素の推定濃度、および前記第3層を構成する各元素の推定濃度に基づいて取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表すモデル関数FM(A)を作成し、
    前記関数FS(A)と前記モデル関数FM(A)とを比較して、次式(2)の割合a、割合b、および割合cを求めて、前記第1層に含まれる元素Aの含有量と前記第2層に含まれる元素Aの含有量と前記第3層に含まれる元素Aの含有量の比を求める、分析方法。
    φ =a・I 1φ +b・I 2φ +c・I 3φ ・・・・(2)
    ただし、I φ は、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度である。I 1φ は、傾斜角φにおける前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度である。I 2φ は、傾斜角φにおける前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度である。I 3φ は、傾斜角φにおける前記第3層に含まれる分析対象元素のX線強度である。aは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。bは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。cは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第3層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。
  9. 請求項8において、
    前記分析対象元素の情報を求める工程では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素Aとは異なる元素BのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素BのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表す関数FS(B)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度、前記第2層を構成する各元素の推定濃度、および前記第3層を構成する各元素の推定濃度に基づいて取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表すモデル関数FM(B)を作成し、
    前記関数FS(B)と前記モデル関数FM(B)とを比較して、前記式(2)の割合a、割合b、および割合cを求めて、前記第1層に含まれる元素Bの含有量と前記第2層に含まれる元素Bの含有量と前記第3層に含まれる元素Bの含有量の比を求める、分析方法。
  10. 一次X線を発生させるX線管と、
    試料に前記一次X線が照射されることによって前記試料から放射される二次X線を検出する検出器と、
    前記二次X線の取り出し角を可変にする機構と、
    記憶部と、
    前記検出器で前記二次X線を検出して取得されたX線スペクトルを、前記X線スペクトルを取得したときの前記二次X線の取り出し角を特定するための情報に関連付けて前記記憶部に記憶する記憶制御部と、
    前記X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める解析部を含み、
    前記解析部は、
    前記記憶部から前記二次X線の取り出し角を第1取り出し角として取得された第1X線スペクトルを読み出す処理と、
    前記記憶部から前記二次X線の取り出し角を前記第1取り出し角とは異なる第2取り出し角として取得された第2X線スペクトルを読み出す処理と、
    前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、前記試料の深さ方向における分析対象元素の情報を求める処理と、
    を行い、
    前記試料は、第1~第N層(N≧2)を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める処理では、
    前記第1X線スペクトルおよび前記第2X線スペクトルに基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表す関数FSを求め、
    前記第1~第N層の各層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの前記分析対象元素のX線強度の変化を表すモデル関数FMを作成し、
    前記関数FSと前記モデル関数FMとを比較して、前記第1~第N層における前記分析対象元素の含有量の比を求める、蛍光X線分析装置。
  11. 請求項10において、
    前記機構は、前記試料を傾斜させる傾斜機構である、蛍光X線分析装置。
  12. 請求項10において、
    前記機構は、前記検出器を傾斜させる傾斜機構である、蛍光X線分析装置。
  13. 請求項10ないし12のいずれか1項において、
    前記試料は、第1層と、第2層と、を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める処理では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素AのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素AのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表す関数FS(A)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度および前記第2層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表すモデル関数FM(A)を作成し、
    前記関数FS(A)と前記モデル関数FM(A)とを比較して、次式(1)の割合aおよび割合bを求めて、前記第1層に含まれる元素Aの含有量と前記第2層に含まれる元素Aの含有量の比を求める、蛍光X線分析装置。
    φ =a・I 1φ +b・I 2φ ・・・(1)
    ただし、I φ は、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度であり、I 1φ は、傾斜角φにおける前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度であり、I 2φ は、傾斜角φにおける前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度であり、aは分析対象元素のX線強度のうち、前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合であり、bは分析対象元素のX線強度のうち、前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。
  14. 請求項13において、
    前記分析対象元素の情報を求める処理では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素Aとは異なる元素BのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素BのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表す関数FS(B)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度および前記第2層を構成する各元素の推定濃度に基づいて、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表すモデル関数FM(B)を作成し、
    前記関数FS(B)と前記モデル関数FM(B)とを比較して、前記式(1)の割合aおよび割合bを求めて、前記第1層に含まれる元素Bの含有量と前記第2層に含まれる元素Bの含有量の比を求める、蛍光X線分析装置。
  15. 請求項10ないし12のいずれか1項において、
    前記試料は、第1層と、第2層と、第3層と、を有し、
    前記分析対象元素の情報を求める処理では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素AのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素AのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表す関数FS(A)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度、前記第2層を構成する各元素の推定濃度、および前記第3層を構成する各元素の推定濃度に基づいて取り出し角を変化させたときの元素AのX線強度の変化を表すモデル関数FM(A)を作成し、
    前記関数FS(A)と前記モデル関数FM(A)とを比較して、次式(2)の割合a、
    割合b、および割合cを求めて、前記第1層に含まれる元素Aの含有量と前記第2層に含まれる元素Aの含有量と前記第3層に含まれる元素Aの含有量の比を求める、蛍光X線分析装置。
    φ =a・I 1φ +b・I 2φ +c・I 3φ ・・・・(2)
    ただし、I φ は、傾斜角φにおける分析対象元素のX線強度である。I 1φ は、傾斜角φにおける前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度である。I 2φ は、傾斜角φにおける前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度である。I 3φ は、傾斜角φにおける前記第3層に含まれる分析対象元素のX線強度である。aは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第1層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。bは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第2層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。cは、分析対象元素のX線強度のうち、前記第3層に含まれる分析対象元素のX線強度の割合である。
  16. 請求項15において、
    前記分析対象元素の情報を求める処理では、
    前記第1X線スペクトルにおける元素Aとは異なる元素BのX線強度および前記第2X線スペクトルにおける元素BのX線強度から、取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表す関数FS(B)を求め、
    前記第1層を構成する各元素の推定濃度、前記第2層を構成する各元素の推定濃度、および前記第3層を構成する各元素の推定濃度に基づいて取り出し角を変化させたときの元素BのX線強度の変化を表すモデル関数FM(B)を作成し、
    前記関数FS(B)と前記モデル関数FM(B)とを比較して、式(2)の割合a、割合b、および割合cを求めて、前記第1層に含まれる元素Bの含有量と前記第2層に含まれる元素Bの含有量と前記第3層に含まれる元素Bの含有量の比を求める、蛍光X線分析装置。
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