JP3840503B2 - X線分析方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に薄膜を形成した試料における薄膜の組成と厚さを求めるX線分析方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体ウエハ等の基板上に薄膜を形成した試料について、薄膜の組成と厚さを求めて薄膜を評価する方法のひとつに、波長分散型蛍光X線分析がある。この波長分散型蛍光X線分析では、まず、試料に1次X線を照射して発生する2次X線を分光器で分光し、その分光された2次X線すなわち薄膜中の各成分(元素)から発生する蛍光X線の強度を測定し、各測定強度から各成分が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量を算出し、各成分の付着量およびそれらの総計たる薄膜全体の付着量から薄膜の組成を算出する。そして、代表的な試料における薄膜の密度(既知である)で、前記算出した薄膜の付着量を除して、薄膜の厚さを算出する。ここで、波長分散型蛍光X線分析は、エネルギー分散型蛍光X線分析よりも、分光分解能が高く、薄膜の組成がより正確に求められる。
【0003】
一方、いわゆるX線反射率計を用い、試料に入射角を変化させながら単色X線を照射して、全反射する臨界角から薄膜の密度、入射角に対する反射率の変化の周期から薄膜の厚さを求めることもできる。ただし、X線反射率の測定によって薄膜の組成を求めることはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の波長分散型蛍光X線分析では、分析対象の試料における薄膜の密度と必ずしも一致しない代表的な試料における薄膜の密度を用いるので、薄膜の厚さを十分正確に求めることができない。また、従来のX線反射率測定では、薄膜の厚さが増すにつれ、前記周期が短くなり、しかも下層または基板からの反射X線がその上の層で吸収されて強度が低下するので、膜厚の検出が困難となり、やはり薄膜の厚さを十分正確に求めることができない。
【0005】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、基板上に薄膜を形成した試料における薄膜の組成と厚さを十分正確に求めることができるX線分析方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1のX線分析方法では、まず、基板上に薄膜を形成した試料に1次X線を照射し、試料から発生する2次X線を分光器で分光し、その分光された2次X線の強度を測定し、その測定強度から、薄膜の組成と、薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出する。一方、試料表面に所定の角度で連続X線を照射し、前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進むX線の波長を検出し、その検出波長から薄膜の密度を算出する。そして、その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出する。
【0007】
請求項1の方法によれば、波長分散型蛍光X線分析方法により、まず、薄膜の正確な組成と付着量が得られる。さらに、得られた付着量と、同一の薄膜について臨界角およびX線の波長との関係から算出した密度とを用いて薄膜の厚さを算出することにより、薄膜の厚さを十分正確に求めることができる。
【0008】
請求項2のX線分析装置は、請求項1の方法に用いる装置であり、まず、基板上に薄膜を形成した試料が固定される試料台と、試料に1次X線を照射する第1X線源と、試料から発生する2次X線を分光する分光器と、その分光器で分光された2次X線の強度を測定する第1検出器とを備えている。そして、この装置は、さらに、試料表面に所定の角度で連続X線を照射する第2X線源と、前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進むX線の波長を検出する第2検出器と、以下の算出手段とを備えている。算出手段は、前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成と薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出し、前記第2検出器による検出波長から薄膜の密度を算出し、その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出する。請求項2の装置によっても、請求項1の方法と同様の作用効果がある。
【0009】
請求項3のX線分析装置は、まず、請求項2の装置と同様に、試料台と、第1X線源と、分光器と、第1検出器と、第2X線源とを備えている。そして、この装置は、さらに、第2X線源から照射後のX線を通過させるスリットと、前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進む表面進行X線、または前記所定の角度が臨界角よりも大きく照射後反射する種々の波長の反射X線が前記スリットを通過するように、前記スリットを移動させる移動手段と、前記スリットを通過するX線の波長に対する強度を検出する第2検出器と、以下の第1算出手段と、第2算出手段とを備えている。
【0010】
第1算出手段は、前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成と薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出し、前記第2検出器で検出した前記表面進行X線の波長から薄膜の密度を算出し、その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出する。前記第2算出手段は、前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成を算出し、前記第2検出器で検出した前記反射X線の波長に対する強度に基づいて求められる反射率の変化の周期から薄膜の厚さを算出する。請求項3の装置によれば、請求項2の装置と同様の作用効果がある他、薄膜が薄い場合には、第2算出手段によって、請求項2の装置と同様に正確な薄膜の組成を算出することができるとともに、反射X線の波長に対する強度に基づいて求められる反射率の変化の周期から十分正確な薄膜の厚さを算出することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態のX線分析方法について説明する。まず、この方法に用いる装置について、図1にしたがって説明する。この装置は、半導体ウエハ等のように基板1上に薄膜2を形成したものを試料3とするが、まず、従来の波長分散型蛍光X線分析装置と同様に、試料3が固定される試料台4と、試料3に1次X線5を照射する第1X線源6と、試料3から発生する2次X線7を分光する分光器8と、その分光器8で分光された2次X線9の強度を測定する第1検出器10とを備えている。
【0012】
ここで、この装置は多元素同時分析型であり、第1X線源6は、試料台4の直上に設置され、試料3に含まれる複数の元素から発生する蛍光X線7のそれぞれ9A,9B…を、第1X線源6の周囲に設置した複数の分光器8A,8B…および第1検出器10A,10B…を用いて分析する。ただし、本発明においてはこれに限らず、単一の分光器および検出器を用い、検出器に入射する蛍光X線の波長が変化するように分光器と検出器を連動させるゴニオメータを備えたスキャン型であってもよい。
【0013】
この装置は、さらに、試料3の表面(薄膜2の表面でもある)3aに例えば0.15度程度の小さな所定の角度θで連続X線11を照射する第2X線源12と、第2X線源12から照射後のX線13,18を通過させるスリット17とを備えている。スリット17は、例えば板状で、X線13,18を通過させる孔17aを有する。
【0014】
そして、この装置は、前記所定の角度θを臨界角として照射後試料表面3aに沿って進む表面進行X線13、または前記所定の角度θが臨界角よりも大きく照射後反射する種々の波長の反射X線18がスリット17を通過するように、スリット17を試料表面3aに略垂直に移動させる移動手段19と、スリット17を通過するX線13,18の波長に対する反射率を検出する第2検出器14とを備えている。移動手段19は、例えばモータならびにラックおよびピニオン等からなり、第2検出器14は、SSDのようにエネルギー分解能を有するものである。
【0015】
さらに、この装置は、以下の第1算出手段15と、第2算出手段16とを備えている。第1算出手段15は、第1検出器10による測定強度から薄膜2の組成と薄膜2が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出し、第2検出器14で検出した前記表面進行X線13の波長から薄膜2の密度を算出し、その密度で前記付着量を除して薄膜2の厚さを算出する。前記第2算出手段16は、第1検出器10による測定強度から薄膜2の組成を算出し、第2検出器14で検出した前記反射X線18の波長に対する反射率の変化の周期から薄膜2の厚さを算出する。
【0016】
次に、この装置を用いる本実施形態の方法について説明する。今、分析対象の試料3における薄膜2の組成と厚さを求めるとすると、まず、従来の波長分散型蛍光X線分析方法と同様に、試料3を試料台4に固定し、第1X線源6から1次X線5を照射し、試料3から発生する蛍光X線7を分光器8A,8B…で分光し、その分光された各蛍光X線すなわち薄膜2中の各成分(元素)から発生する蛍光X線9A,9B…の強度を測定し、第1算出手段15で各測定強度から各成分が基板1の単位面積あたりに付着した重量である付着量を算出し、各成分の付着量およびそれらの総計たる薄膜全体の付着量wから薄膜の組成を算出する。これらの算出は、いわゆる検量線法やファンダメンタルパラメータ法による。
【0017】
また、本実施形態の方法では、移動手段19により、前記表面進行X線13がスリット17を通過して第2検出器14に入射するように、スリット17を第1の低い位置に設定しておき(図1に示す状態)、試料表面3aに所定の角度θで第2X線源12から連続X線11を照射し、第2検出器14により、入射する表面進行X線13において波長に対する反射率が最大となる波長を表面進行X線13の波長として検出し、第1算出手段15でその検出波長から薄膜2の密度を算出し、さらに、その密度で前記薄膜の付着量wを除して薄膜2の厚さを算出する。より具体的に説明すると、まず、試料表面3aにX線を照射した場合に、そのX線が全反射されるか否かは、試料表面3aへの入射角が臨界角よりも小さいか否かによるが、その臨界角θC は、X線の波長λおよび薄膜2の密度ρによって異なり、次式(1)で表される。
【0018】
θC =0.51ρ1/2 λ …(1)
【0019】
したがって、所定の角度θで種々の波長のX線を含む連続X線11を照射すると、その所定の角度θが臨界角よりも小さくなるような波長のX線は全反射し、所定の角度θが臨界角よりも大きくなるような波長のX線は一部が反射して残部が薄膜2に入射し、所定の角度θが臨界角θC と一致した波長λのX線13は一部が反射して残部が試料表面3aに沿って進む(以後、このX線13を表面進行X線という)。そこで、この表面進行X線13をエネルギー分解能を有する第2検出器14に入射させれば、波長に対する反射率が最大となる波長λを表面進行X線13の波長λとして検出でき、前式(1)により薄膜2の密度ρを正確に算出できる。そして、次式(2)に示すように、その密度ρで前記薄膜の付着量wを除せば、薄膜2の厚さdが算出できる。
【0020】
d=w/ρ …(2)
【0021】
このように、本実施形態の方法によれば、波長分散型蛍光X線分析方法によりまず、薄膜2の正確な組成と付着量wが得られる。さらに、得られた付着量wと、同一の薄膜2について臨界角θC およびX線の波長λとの関係から算出した密度ρとを用いて薄膜2の厚さdを算出することにより、薄膜2の厚さdを十分正確に求めることができる。
【0022】
さらに、この装置を用いれば、上述したのとは別の方法で薄膜2の厚さdを求めることもできる。まず、その原理について、説明する。前述したように、一般に、1次X線が臨界角θC よりも小さい角度で試料に照射されると、1次X線は全反射する。図2(a)に3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3 における1次X線の角度に対する反射率の特性を対数表示で示す。波長λ1 の1次X線の反射率R1は、臨界角θC1よりも大きい入射角度では低下する。波長λ1 よりも長い波長λ2 のX線の反射率R2 は、臨界角θC2よりも大きい入射角度で低下し、この臨界角θC2は臨界角θC1よりも大きい。波長λ2 よりもさらに長い波長λ3 のX線の反射率R3 は、臨界角θC3よりも大きい入射角度で低下し、この臨界角θC3は臨界角θC2よりも大きい。すなわち、臨界角θC は照射するX線の波長に依存し、X線の波長が大きいほど臨界角θC は大きい。
【0023】
ここで、入射角度θがθf で固定されているとすると、波長λ1 ,λ2 ,λ3 の入射角度θf における反射率P1 ,P2 ,P3 は、図2(b)の1次X線の波長に対する反射率としてプロットされ、波長が短いほど反射率が低下する曲線Rで示す特性が得られる。本実施形態の方法は、この波長に対する反射率特性を利用したものである。
【0024】
次に、この原理を利用した本実施形態の方法を具体的に説明する。まず、図1において、移動手段19により、前記所定の角度θが臨界角θC よりも大きく照射後反射する種々の波長の反射X線18がスリット17を通過して第2検出器14に入射するように、スリット17を第2の高い位置に設定しておく。このとき前記表面進行X線13はスリット17により遮断される。なお、所定の角度θが0.15度で、試料表面3aの中心(入射X線11の入射点)からスリット17までの距離が50cmであるとすると、移動手段19によるスリット17の移動距離は、わずか1.3mm程度でよいことになる。また、第2検出器14に受光面が5mm×5mm程度のものを用いれば、第2検出器14は固定したままでよい。
【0025】
薄膜2の組成については、第2算出手段16により、前述した第1算出手段15による場合と同様に、薄膜2の正確な組成が得られる。なお、第2算出手段16による場合は、薄膜2の厚さdを求めるために、薄膜2の付着量wや薄膜の密度ρを得ておく必要はない。
【0026】
一方、薄膜2の厚さdを求めるために、試料表面3aに所定の角度θで第2X線源12から連続X線11を照射し、第2検出器14により、反射X線18の波長に対する反射率を検出する。図3に、このようにして得られた、鏡面状表面3aの試料3の波長に対する反射率Hと、粗い面3aを有する試料3の波長に対する反射率Jを示す。いずれにおいても、反射X線18の波長に対する反射率の変化の周期、すなわち、うねりの周期は、約500eVで、第2検出器14の分解能が例えば200eVであれば測定が可能である。第2算出手段16によれば、この周期から薄膜2の厚さdが算出できる。これは、前述の原理に基づき、従来のX線反射率計を用い、試料に入射角を変化させながら単色X線を照射して、入射角に対する反射率の変化の周期から薄膜の厚さを求めることができることに対応する。
【0027】
この第2算出手段16による方法は、特に薄膜の厚さdが約2000Å以下の場合に適し、その場合には、第2算出手段16によっても、第1算出手段15による場合と同様に正確な薄膜2の組成を算出することができるとともに、反射X線18の波長に対する反射率の変化の周期から十分正確な薄膜2の厚さdを算出することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、基板上に薄膜を形成した試料における薄膜の組成と厚さを十分正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のX線分析方法に用いる装置を示す概略図である。
【図2】(a)は1次X線の入射角度に対する反射X線の反射率を示す図であり、(b)は1次X線の波長に対する反射X線の反射率を示す図である。
【図3】厚さ約2000Åの薄膜を有する試料における波長に対する反射率を示す図である。
【符号の説明】
1…基板、2…薄膜、3…試料、3a…試料表面、4…試料台、5…1次X線、6…第1X線源、7…試料から発生する2次X線、8…分光器、9…分光された2次X線、10…第1検出器、11…連続X線、12…第2X線源、13…表面進行X線、14…第2検出器、15…第1算出手段、16…第2算出手段、17…スリット、18…反射X線、19…移動手段。
Claims (3)
- 基板上に薄膜を形成した試料に1次X線を照射し、
試料から発生する2次X線を分光器で分光し、
その分光された2次X線の強度を測定し、
その測定強度から、薄膜の組成と、薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出しておき、
試料表面に所定の角度で連続X線を照射し、
前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進むX線の波長を検出し、
その検出波長から薄膜の密度を算出し、
その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出するX線分析方法。 - 基板上に薄膜を形成した試料が固定される試料台と、
試料に1次X線を照射する第1X線源と、
試料から発生する2次X線を分光する分光器と、
その分光器で分光された2次X線の強度を測定する第1検出器とを備えたX線分析装置であって、
試料表面に所定の角度で連続X線を照射する第2X線源と、
前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進む表面進行X線の波長を検出する第2検出器と、
前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成と薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出し、前記第2検出器による検出波長から薄膜の密度を算出し、その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出する算出手段とを備えたX線分析装置。 - 基板上に薄膜を形成した試料が固定される試料台と、
試料に1次X線を照射する第1X線源と、
試料から発生する2次X線を分光する分光器と、
その分光器で分光された2次X線の強度を測定する第1検出器とを備えたX線分析装置であって、
試料表面に所定の角度で連続X線を照射する第2X線源と、
その照射後のX線を通過させるスリットと、
前記所定の角度を臨界角として照射後試料表面に沿って進む表面進行X線、または前記所定の角度が臨界角よりも大きく照射後反射する種々の波長の反射X線が前記スリットを通過するように、前記スリットを移動させる移動手段と、
前記スリットを通過するX線の波長に対する強度を検出する第2検出器と、
前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成と薄膜が基板の単位面積あたりに付着した重量である付着量とを算出し、前記第2検出器で検出した前記表面進行X線の波長から薄膜の密度を算出し、その密度で前記付着量を除して薄膜の厚さを算出する第1算出手段と、
前記第1検出器による測定強度から薄膜の組成を算出し、前記第2検出器で検出した前記反射X線の波長に対する強度に基づいて求められる反射率の変化の周期から薄膜の厚さを算出する第2算出手段とを備えたX線分析装置。
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