JP7054084B2 - 生物由来液獲得方法 - Google Patents

生物由来液獲得方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7054084B2
JP7054084B2 JP2017114814A JP2017114814A JP7054084B2 JP 7054084 B2 JP7054084 B2 JP 7054084B2 JP 2017114814 A JP2017114814 A JP 2017114814A JP 2017114814 A JP2017114814 A JP 2017114814A JP 7054084 B2 JP7054084 B2 JP 7054084B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
extraction
organism
water
container
biological
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017114814A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018007654A (ja
Inventor
康文 福本
紫 川人
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shioda Life Science Inc
Original Assignee
Shioda Life Science Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shioda Life Science Inc filed Critical Shioda Life Science Inc
Publication of JP2018007654A publication Critical patent/JP2018007654A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7054084B2 publication Critical patent/JP7054084B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Description

本発明は、生物から生物由来液を獲得する生物由来液獲得方法に関し、更に詳しくは、抽出溶媒を実質的に添加せずに、生物から、該生物が有する細胞水と失活していない酵素とを含有する生物由来液を獲得する生物由来液獲得方法、該生物由来液獲得方法に使用される抽出装置、該生物由来液獲得方法を使用して得られる生物由来液、並びに、該生物由来液獲得方法を使用して得られる生物由来粉末残渣及び精油に関する。
植物から該植物に含まれる成分を抽出し分離する方法としては、水蒸気蒸留法を用いて抽出して2層に分かれた上層(油相)を分離する方法;水に直接浸漬させて加熱しその2層に分かれたものから主に上層(油相)を分離する直接抽出法;有機溶媒を用いて抽出する溶媒抽出法;油性成分を加えて圧搾することにより抽出する圧搾法;超臨界流体を用いて抽出する超臨界抽出法;フリーズドライ法;等、種々の方法が知られている。
しかしながら、これらの抽出方法は、水相を主な目的物として分離するものではなかった。また、これらの抽出方法によって生じた抽出液や抽出残渣は、抽出溶媒(水、水蒸気、超臨界流体等も含む)の残留によって使用することができない等、用途によっては利用することができなかった。
また、有機溶媒、水(水蒸気)等の抽出溶媒を使用せず、比較的低温で減圧して直接抽出する所謂「低温真空抽出法」も知られている(例えば、特許文献1~4)。
特許文献1には、植物を破砕及び撹拌しながら加熱及び減圧して植物由来の蒸気を生成させる油性成分(香気成分)の抽出方法が記載されている。そして、この方法を用いれば、ハーブ、果物、花又は野菜から香気成分を抽出できるとされている。
また、特許文献2には、シークワーサ由来の香気成分含有抽出液を、比較的低温で減圧して、高濃度の油性成分(精油)を抽出する抽出方法が記載されている。そして、この方法を用いれば、高濃度の精油が得られるので、アロマセラピー用、香料用等に好適であるとされている。
特許文献3には、魚類の養殖に当たり、該魚類と同じ属に属する魚類を真空乾燥して得られた粉末餌を該養殖対象である魚類に与える方法が記載されており、該粉末餌の製造方法として、比較的低温で減圧して得られた抽出残渣(魚類粉末体)を得る方法が記載されている。
また、特許文献4には、泥染めした後に一旦乾燥したイグサを、破砕しつつ比較的低温で減圧して抽出する抽出液の製造方法が記載されている。そして、この方法で抽出された抽出液は、青畳の独特の芳香を有するので、脳機能改善、認知症予防治療に好適であるとされている。
しかしながら、かかる公知文献に記載の方法では、生物が有する細胞膜を破壊させず、また、生物の細胞内の酵素を失活させずに抽出できているとは言えなかった。
更に、生物を原料とし、未同定分子を含む複数の有効成分を効率的に水相として抽出する抽出方法や、該生物の細胞水を含んだままの水性の抽出液の製造方法についても開示されていない。
また、抽出対象である生物の温度を比較的低温に維持しつつ、細胞膜を通過した水性成分のみを獲得する方法についても具体的に開示されていない。例えば、一定値以上の気体排出能力を有する特定の減圧器による細胞水の蒸発熱と、加熱ユニットによる加熱とで温度を特定範囲に調節する方法について具体的に開示されていない。
特開2012-062374号公報 特開2013-203911号公報 特開2014-193158号公報 特開2015-074757号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、今までの抽出方法では得られなかった、すなわち従来知られていない成分組成又は特性・物性を有する「生物由来液と生物由来粉末残渣」を提供することにある。
また、前記問題点を解決し、細胞膜を通過した水性成分を獲得し、細胞内に存在する酵素を失活させずに、生物に由来する液のみを獲得する方法を提供することにあり、また、かかる方法で得られる生物由来液、生物由来粉末残渣、精油等を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の抽出容器を用いて、生物を特定の形状に粗破砕しつつ、特定の抽出方法を用いて抽出することによって、細胞膜を通過した水性成分を獲得し、細胞内に存在する酵素を失活させずに、該生物に由来する液のみを獲得できることを見出した。
また、該抽出方法による抽出残渣も該生物に由来する粉末状のもののみにできることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機、生物及び抽出容器内を加熱する加熱ユニット、生物から発生する気体を取り出す気体取出口、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口を有する抽出容器;
該気体取出口から取り出された気体を冷却する冷却器;
該抽出容器内を減圧する減圧器;並びに;
該冷却器で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液を獲得する回収獲得容器;
を少なくとも具備した固液分離装置を使用して、
抽出溶媒を実質的に添加せずに、生物から、該生物が有する細胞水と該生物が有する失活していない酵素とを含有する生物由来液を獲得する生物由来液獲得方法であって、
該粗破砕撹拌機によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
該加熱ユニットによって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を、該生物が有する酵素を失活させないように、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
該減圧器として、該生物が有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタを用い、
該水エジェクタによって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を10kPa以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することを特徴とする生物由来液獲得方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の生物由来液獲得方法に用いられ得る能力を有し、上記の生物由来液獲得方法を使用する用途に用いる抽出装置であって、
少なくとも、上記粗破砕撹拌機、上記加熱ユニット、上記気体取出口及び上記粉末残渣取出口を有する上記抽出容器、上記冷却器、上記減圧器、並びに、上記回収獲得容器を具備するものであることを特徴とする抽出装置を提供するものである。
また、本発明は、上記の生物由来液獲得方法を使用して得られたものであることを特徴とする生物由来液を提供するものである。
また、本発明は、上記の生物由来液獲得方法を使用して得られたものであることを特徴とする生物由来粉末残渣を提供するものである。
また、本発明は、上記の生物由来液獲得方法を使用して得られたものであることを特徴とする精油を提供するものである。
本発明の方法によって得られた生物由来液や生物由来粉末残渣は、風味;香り;薬効;着色等の外観;肌に対する効果;等に関し、同一の生物から得られたものであっても、今までに知られていない独特の性質を有する。
このことは、本発明によれば、例えば前記したような抽出方法による従来の生物由来物では知られていない(実現できていない)、成分組成や純度;水の2次構造;極微量成分、低沸点成分、不安定物質等を有する態様の「新規な生物由来液、生物由来粉末残渣、精油」を提供できていることを示している。
上記の態様を化学分析で同定することは実際的ではない。例えば、風味や香りは、現在の分析装置では「含有物質の構造や量」では完全に特定できないことは常識である。なお、細胞内の酵素は、高い温度(45℃~50℃)以上では失活する。実際、本発明によれば実質的に失活せずに残存していることを確かめている。
また、前記した従来の抽出技術の問題点や課題を解決し、細胞膜を通過した水や水溶性成分等を獲得でき、細胞内に存在する酵素を失活させずに取り出すことができる。
また、抽出溶媒や抽出蒸気を実質的に添加せず、生物に含有される成分のみを獲得する方法を提供することができる。従来公知の抽出方法では、細胞膜が破壊されるため細胞膜を通過した液は取れないし、抽出対象物を加熱する抽出方法では酵素が失活する。
本発明における粗破砕撹拌機を有する抽出装置を用いて、少なくとも主たる抽出中は特定の大きさに粗破砕することで、被抽出対象物である生物の細胞膜を実質的に破壊しないため(ただし、破壊される細胞膜がある程度はあることは本発明から排除されない)、細胞膜を通過した「水溶性成分を含有する水」を獲得できる。細胞膜を通過した「水溶性成分を含有する細胞水」は、前記したように今までに知られていない独特の性質を有する。
更には、該生物の細胞内に存在する細胞水を、酵素等の水溶性成分の含有組成比を変えずに、生体内に存在する組成のままの状態で獲得できる。生体内に存在する組成のままの細胞水は、前記したように今までに知られていない独特の性質を有する。
特に、大きな気体排出能力を有する特定の減圧器を用いること等によって、抽出対象物である粗破砕された生物の温度の上昇を、水の蒸発熱によって抑制し、少なくとも主たる抽出中は、該温度を特定の範囲に収めておくことが可能になり、過昇温による該生物が細胞内に有する酵素の失活を防止できる。
また、大きな気体排出能力を有する減圧器にしては高い減圧度(抽出容器内の低い圧力)を達成できる減圧器を用いることによって、低い抽出温度にしては長時間を必要とせず効率的に主たる抽出を完了させることができる。
更に、このような比較的高い減圧度によって、細胞膜を通過した細胞液を効果的に抽出でき、また、そこに含まれる水溶性成分(特に失活していない酵素等)を効率的に獲得できる。
更に、このような比較的高い減圧度によって、主たる抽出を終えて最終的に残渣を得るときに、さらさらであって良好な形態の粉末残渣を獲得できる。
また、本発明における「特定の構造を有する粗破砕撹拌機」を有する抽出装置を用いれば、少なくとも主たる抽出中は、細胞膜を実質的に破壊しないで粗破砕できて、上記効果を奏する生物由来液を獲得できるが、また該抽出完了後は、粉末残渣を抽出容器の内壁から良好に掻き取り、粉末残渣取出口に向けて掻き寄せることができ、歩留まり良く、さらさらの生物由来粉末残渣を獲得できる。
本発明の生物由来液獲得方法では、水、水蒸気又は有機溶媒と言った抽出溶媒・抽出蒸気を実質的に使用しないので、植物由来の(細胞水を含む)成分を、水溶液として高濃度で収率良く回収することができる。そして、本発明の方法で得られた生物由来液や生物由来粉末残渣や精油は、「細胞内に含有される物質」以外の物質を含有させないことが可能であるため、水を含め生物由来の成分だけで構成させることができ、極めて安全であり、また安心して提供ができる。また、「生物由来の風味や臭い」以外のもの(抽出溶媒、分解物等)の風味や臭いがない。
本発明に使用する固液分離装置の全体の一形態を示す概略図である。 本発明に使用する固液分離装置に具備されている抽出容器、冷却器、回収獲得容器等の一形態を示す概略断面図である。 本発明に使用する固液分離装置に具備されている抽出容器の一形態を示す概略縦断面図である。 本発明に使用する固液分離装置に具備されている抽出容器が有する粗破砕撹拌機の一形態を示す概略斜視図である。 本発明に使用する装置に具備されている好ましい減圧器である横噴射型の水エジェクタの一形態を示す概略断面図である。 本発明に使用する装置に具備されている好ましい減圧器である横噴射型の水エジェクタと水タンクと循環ポンプ等の一形態を示す概略断面図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の生物由来液獲得方法は、生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機110、生物及び抽出容器100内を加熱する加熱ユニット120、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口140を有する抽出容器100;該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;該抽出容器100内を減圧する減圧器300;並びに;該冷却器200で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液Bを獲得する回収獲得容器400を少なくとも具備した固液分離装置を使用して、
抽出溶媒を実質的に添加せずに、生物から、該生物が有する細胞水と該生物が有する失活していない酵素とを含有する生物由来液Bを獲得する生物由来液獲得方法であって、
該粗破砕撹拌機110によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
該加熱ユニット120によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物及び該抽出容器100内を、該生物が有する酵素を失活させないように、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
該減圧器300として、該生物が有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上常圧体積200m/時間以下の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用い、
該水エジェクタ301によって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を10kPa以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することを特徴とする。
本発明の生物由来液獲得方法に使用される固液分離装置は、例えば一例を図1に示したように、少なくとも、
生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機110、生物及び抽出容器100内を加熱する加熱ユニット120、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口140を有する抽出容器100;
該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;
該抽出容器100内を減圧する減圧器300;並びに;
該冷却器200で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液Bを獲得する回収獲得容器400;を具備している。
抽出対象となる生物は、生物投入口103から抽出容器100に投入される。投入される生物は、予め裁断しておいてもよく、該生物の一部を取り(切り)出しておいてもよいが、該生物の細胞を(特に細胞膜を)、実質的に破壊しないようにする必要がある。なお、全く破壊しないようにする必要はなく、破壊された細胞はあってもよい。本発明における「生物」とは、生物の一部も含まれる。
限定はされないが、抽出の対象となる生物は、本発明の前記した効果を発揮させる目的で、得られる生物由来液Bが細胞水や失活していない酵素を含有するように、更には該生物に含有される水溶性成分の実質的に全てを含有するように、投入前に該生物の乾燥や加熱はしないことが好ましい。
上記生物は、特に限定はなく、動植物;藻類等の原生生物;担子菌(キノコ)等の菌類;等が含まれる。該生物は、具体的には例えば、動物であれば、その全体、内臓、骨、甲殻等が挙げられる。
また、上記生物が植物又はキノコであれば、果物の果皮、果肉若しくは種子;野菜若しくはキノコの全体若しくは一部;植物の幹、茎、葉、花、萼若しくは種子;漢方薬草;又は;香草若しくはハーブ等が挙げられる。該生物は、特に動植物が好ましく、また「食物」として知られているものが好ましい。
本発明によれば、外部から「抽出対象物である生物以外のもの」を実質的には投入しないので、具体的には、抽出溶媒も抽出蒸気も実質的に添加しないので、得られる生物由来液Bは、抽出対象物である生物に含有される成分のみからなり、更に、該生物の細胞に含有される水溶性成分の実質的に全てを含有させることができ、該生物に含有される水溶性成分の実質的に全てを含有させることもできる。
また、本発明の生物由来液獲得方法を使用して抽出後に得られる生物由来粉末残渣Cも、抽出対象物である生物(の細胞)に含有される成分のみからなるようにできる。
従って、本発明によって得られる生物由来液Bと生物由来粉末残渣Cは、上記のような成分組成であることが好ましい。
本発明の趣旨の範囲内であれば、図に示されたものには限定されないが、図2、図3に本発明における固液分離装置の抽出容器100の概略図を示す。
抽出容器100は、生物を収容し、粗破砕撹拌機110で粗破砕しながら撹拌し、該粗破砕・撹拌下に、加熱ユニット120によって外部から熱を加えつつ減圧して抽出する容器である。
本発明における固液分離装置の抽出容器100の粗破砕撹拌機110は、少なくとも、投入された生物を粗破砕しつつ撹拌できるようになっている。
抽出容器100は、粗破砕撹拌機110を収容した下部半円筒部101と、その上に形成された上部角形部102とからなる。少なくとも下部半円筒部101の周囲には、抽出容器100の内部に熱を加える蒸気室121がある。
下部半円筒部101の最下部の中央には、抽出後の残渣を取り出す粉末残渣取出口140が設けられている。
図1~3に示すように、上記上部角形部102の上部には、生物投入口103が設けられていると共に、その生物投入口103を塞ぐ生物投入口蓋104が設けられている。
上記上部角形部102の上部には、吸引される蒸気の気体取出口130が設けられ、言い換えれば、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130が設けられ、この気体取出口130には、冷却器200につながる気体配管131が接続されている。
本発明の生物由来液獲得方法においては、投入された生物を撹拌羽根で粗破砕しながら撹拌し、該粗破砕・撹拌下に抽出を行う。このようにしながら抽出することで、有効成分の熱分解、酸化等による変性を防ぐことができる。
上記粗破砕・撹拌は、「複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112b」及び「抽出装置の内面(好ましくは上記下部半円筒部101の下内面)に設けられた複数の凸型固定刃111」を備えた抽出装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
例えば、図4は、前記粗破砕撹拌機110の構成を示す斜視図であり、粗破砕撹拌機110は、抽出容器100の外部に設けられたモータにより回転されるものであり、抽出容器100の端壁105a、105bに回転可能に支持される左右の端板106a、106bと、その先端間に両端が固定された、ほぼ「く」の字115の形をなす回転刃体112a、112bとによって構成することにより、中心軸を有しない構造(中心軸なしで回転可能の構造)に構成されている。
回転刃体112a、112bをほぼ「く」の字形にすることによって、生物を撹拌羽根で粗破砕しながら撹拌し易くすると共に、抽出完了後は、粉末残渣を抽出容器100の内壁から良好に掻き取り、(抽出容器100の下側のほぼ中央に位置する)粉末残渣取出口140に向けて掻き寄せることによって、歩留まり良く好適に生物由来粉末残渣Cを粉末残渣取出口140から獲得できる。
本発明の生物由来液獲得方法は、上記粗破砕撹拌機110が2個以上の回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを同方向に回転させることで、上記生物を粗破砕しつつ撹拌し、抽出完了後には、粉末残渣を上記抽出容器100の内壁から掻き取り、上記粉末残渣取出口140に向けて掻き寄せることが好ましい。
粗破砕撹拌機110の回転速度、すなわち、抽出容器100の左右の端壁105a、105bに回転可能に支持されている左右の端板106a、106bの回転速度は、1回転/分以上8回転/分以下が好ましく、2回転/分以上6回転/分以下がより好ましく、4回転/分以上5回転/分以下が特に好ましい。
回転速度が低過ぎるときは、粗破砕、撹拌及び/又は抽出の効率が悪くなる場合、抽出容器100内で粗破砕されつつある生物に温度ムラが生じる場合等があり、一方、回転速度が高過ぎるときは、粗破砕撹拌機110に過剰の負荷がかかる場合、細胞膜に障害を与える場合等がある。
本発明の生物由来液獲得方法は、上記抽出容器100の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃111を有すると共に、上記粗破砕撹拌機110は、1個に複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを回転させることによって、抽出容器100内の生物を、該凸型固定刃111と該回転刃113a、113bとで粗破砕する。
図4における111は、下部半円筒部101の内面に固着された複数の凸型固定刃であり、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111に対応する箇所には、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111の部分を通過するための回転刃溝114a、114bが形成され、その溝の両側に、凸型固定刃111との間で生物を粗破砕するための回転刃113a、113bが設けられている。
なお、図4では、凸型固定刃111と回転刃113a、113bとは、噛み合いが時間をずらして順次行われるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより粗破砕撹拌機110の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
1個の回転刃体に設けられる回転刃の対数は、抽出容器100、粗破砕撹拌機110、回転刃体112a、112bの大きさや、抽出の対象となる生物の種類にも依存するが、1個の回転刃体に回転刃が、5対以上20対以下で設けられていることが好ましく、8対以上14対以下が特に好ましい。
1個の回転刃体に設けられた回転刃が少な過ぎると、粗破砕、撹拌及び/又は抽出の効率が悪くなる場合、蒸発が抑制されて温度が上昇する場合等があり、一方、多過ぎると、過度の粗破砕と撹拌が行われるために、回転に負荷がかかる場合、細胞水の抽出速度が上がり過ぎて水の蒸発熱で生物の温度が下がる場合等がある。
なお、回転刃体に設けられた回転刃の上記対数は、1個の回転刃溝に1対の回転刃があるとする。例えば、図4では、1個の回転刃体に回転刃溝が10個設けられているので、1個の回転刃体に回転刃は10対設けられていることになる。
本発明においては、粗破砕撹拌機110によって、少なくとも主たる抽出中は、投入された生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌することが必須である。
主たる抽出中の生物のサイズは、好ましくは1.2mm以上15mm以下、より好ましくは1.4mm以上10mm以下、特に好ましくは1.6mm以上7mm以下である。
上記サイズは、粗破砕された生物の差し渡し長さの重量平均値(体積平均値)である。
上記サイズが小さ過ぎると、生物の細胞膜を破壊する(破壊する細胞膜の割合が大きくなってしまう)場合があり、一方、上記サイズが大き過ぎると、抽出に時間がかかり過ぎる場合がある。
抽出容器100の中には、図3に示すように、下部半円筒部101の片側上部に、この上に載る生物が円滑に落ちるように傾斜面107が設けられている。
抽出容器100には、更に、前記抽出容器100内の真空度を計測する真空計108と温度計109a、109bが設けられている。これらは、抽出工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、抽出時の生物の温度を間接的に測定するために設けられたものであり、また、抽出の開始と終了を判定するために設けられている。
本発明における抽出容器100には、生物及び抽出容器100内を加熱する加熱ユニット120が設置されている。加熱ユニット120では、蒸気供給装置122によって加熱された水蒸気が、抽出容器100(好ましくは抽出容器100の下部半円筒部101)の周囲に設置された蒸気室に送り込まれる。
本発明においては、加熱ユニット120による加熱水蒸気の蒸気室への流量によって加熱をコントロールし、生物からの細胞水の蒸発熱を冷却に利用すべく減圧装置の気体排出量によって冷却をコントロールする。
生物の温度は、上記加熱ユニット120によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を、該生物が有する酵素を失活させないように、25℃以上45℃以下の温度範囲に維持する。特に、主たる抽出中は、細胞水の蒸発熱で生物を冷却し、該加熱ユニット120によって加熱し、温度範囲を25℃以上45℃以下に維持する。
生物の温度は、少なくとも主たる抽出中は、好ましくは27℃以上42℃以下、より好ましくは30℃以上40℃以下、特に好ましくは33℃以上37℃以下にする。
該温度が低過ぎると、商業的規模や工業的規模を考えた場合、蒸発固液分離に時間がかかり過ぎる場合;低い温度における水の蒸気圧の低さに適応した低圧力まで、「商業的規模や工業的規模の生物の量に十分に対応した気体排出能力の大きさを有しつつ、真空度(減圧度)を上げられる減圧器」が、そもそも存在しない又は極めて大型(コスト大)になる場合;等がある。
一方、該温度が高過ぎると、該生物が有する酵素を失活させてしまう場合、該生物の細胞膜に障害を与えてしまい該細胞膜を正常に通過した細胞水が得られない場合がある。
上記温度範囲であると、自然界の生物が有する、成分組成・純度、極微量成分、低沸点成分、不安定物質等を、変質も分解もさせずに得ることができる。また、上記温度範囲であれば、水の2次構造(例えばクラスター等)が安定して存在する。
主たる抽出中の生物の温度(範囲)は、本発明の効果を得るために極めて重要であり、たとえ投入する生物が死んでいたとしても、通常の生物が正常にその生命を維持できる上記温度範囲(温度上限)が望ましい。
細胞水の殆どが細胞膜から出て、抽出容器100の気体取出し口から出てしまった後は、すなわち主たる抽出が終わった後は、該生物の温度は上記上限温度よりも高くしてもよい。
本発明における抽出容器100内の粗破砕撹拌機110は、上記した通り、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、前記したサイズの範囲に粗破砕しつつ撹拌できるようになっているが、抽出が終了した後は、「生物由来粉末残渣C」として確保すべく、温度を上記上限温度より高くして、良好に粉末化を図ることも好ましい。また、該生物中の細胞水が少なくなると、水の蒸発熱による冷却を期待できない場合がある。
主たる抽出が終了して、上記粉末残渣取出口140から粉末残渣を獲得するまでの温度範囲は、特に限定はないが、25℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましく、33℃以上40℃以下が特に好ましい。
ここで、「主たる抽出」とは、抽出初期から、抽出容器100に投入した抽出対象の生物の有する全細胞水の90質量%が抽出されるまでを言う。
抽出容器100に設けられた温度計109a、109bは、粗破砕撹拌機110を含む抽出容器100の熱伝導等を利用して、抽出中の生物の温度は十分正確に測定できるようになっており、細胞水の蒸発熱で生物が急速に冷却されそうになっても、逆に、上記加熱ユニット120によって生物が急速に加熱されそうになっても、抽出中の生物の温度は十分正確に測定できるようになっている。
減圧器300については後述するが、減圧器300の気体排出能力を、「内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上」とすることによって、加熱ユニット120によって生物が急速に加熱されそうになっても、細胞水の蒸発熱で該生物の温度を45℃以下に下げることができるようになっている。
本発明においては、細胞水の蒸発熱によって、該生物の温度を前記温度の上限以下に維持するように、該抽出容器100内を減圧しつつ抽出する。
該減圧器300としては、蒸発熱による冷却によって、前記した生物の温度範囲を好適に維持するため、上記の気体排出能力を有する水エジェクタ301(特に好ましくは水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301)が用いられる。
1回の抽出で使用する生物の質量は、使用する容器の体積に依存するので特に限定はないが、1kg以上1500kg以下が好ましく、3kg以上1200kg以下がより好ましく、5kg以上1000kg以下が特に好ましい。
該質量が小さ過ぎると、バッチを繰り返して抽出することになるので、コストアップになり商業的に使用できなくなる。また、本発明における前記又は後記した特殊な抽出条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粗粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合がある。すなわち、本発明における「主たる抽出中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、蒸発熱を冷却に利用すること、等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。本発明は、生物の量が上記下限以上の時に特にその効果を奏する。言い換えれば、上記下限は、本発明の抽出条件が有効に働く(初めて意味を持つ)ようになる点から重要である。
一方、1回の抽出で使用する生物の質量が大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような、減圧器300が存在しない場合;特に、生物の昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価となる場合;等がある。
抽出容器100の実質体積は特に限定はないが、実質体積の範囲は、本発明における細胞水の蒸発による固液分離の条件が有効に効くか否かの点から重要である。生物の最大投入容量(L)として、すなわち投入できる生物の嵩(L)として、20L以上5000L以下が好ましく、35L以上4000L以下が好ましく、50L以上3000L以下が特に好ましい。なお、生物の最大投入容量(L)は、前記した抽出容器100の下部半円筒部101の体積にほぼ等しい。
抽出容器100の実質体積又は下部半円筒部101の体積が小さ過ぎると、1回の処理量が少なくなり過ぎてコストアップになり、商業的に使用できなくなる場合等がある。
一方、大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような減圧器300がそもそも存在しない場合;具体的には、特に、生物の昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しないか又は極めて高価となる場合;抽出容器100の筐体に減圧負荷がかかり過ぎる場合;等がある。
本発明の生物由来液獲得方法においては、上記抽出容器の体積をV[L]とし、該抽出容器に投入される生物の質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の2倍以上5倍以下に設定することが好ましく、2.2倍以上3.5倍以下がより好ましく、2.5倍以上3.0倍以下が特に好ましい。
V[L]/M[kg]の値が小さ過ぎると、粗破砕、撹拌等を良好に実行できない場合がある。
一方、V[L]/M[kg]の値が大き過ぎると、大きな抽出容器100が無駄になる場合;抽出容器100が大き過ぎて、減圧器300の気体排出能力が十分に発揮できず、その結果、蒸発熱による生物の冷却ができず、該生物の温度が前記温度範囲の上限を超えてしまう場合;等がある。
本発明における抽出容器100には、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130が設置されている。気体取出口130の近傍も、十分な熱伝導等で前記温度範囲に維持して、気体取出口130の近傍で水滴が生じないようにする(結露させないようにする)ことが好ましい。
本発明における抽出容器100には、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口140が設けられている。粉末残渣取出口140は、図4に示したように、抽出容器100のほぼ下部中央(下部半円筒部101の下部中央近傍)に設けられることが好ましい。
粗破砕撹拌機110を前記したような構造にすることによって、すなわち、図4に示したように、回転刃体112a、112bを「く」の字115a、115bの形にすることによって、抽出終了後の粉末残渣を、抽出容器100の下部中央に集め易くなり、該粉末残渣の取出しが容易となるが、そのために、粉末残渣取出口140は、抽出容器100の下部中央近傍に設けられることが好ましい。
かかる形状の回転刃体112a、112bは、生物由来粉末残渣Cを抽出容器100の内壁から良好に掻き取り、抽出容器100の下部中央近傍に設けられた粉末残渣取出口140に向けて掻き寄せることによって、歩留まり良く(さらさらの)生物由来粉末残渣Cが獲得できる。
本発明の生物由来液獲得方法における固液分離装置には、例えば図1に示したように、上記抽出容器100の工程的後ろに、該抽出容器100に設けられた気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200が具備されている。
該冷却器200の冷却媒体としては、「0℃以上であり、上記抽出容器100の気体取出口130から取り出された気体の温度より5℃以上低い(特に好ましくは7℃以上低い)温度」の水を用いることが、冷却して液化する効率の点から好ましい。
冷却媒体である水の温度が高過ぎると、抽出気体の一部が液化されず収率が落ちる場合がある。一方、低過ぎると、得られる生物由来液の温度が低くなり過ぎ、25℃以上45℃以下で得られた好適な水の2次構造が乱れる場合がある。
このような冷却器200は、公知のものが用いられ得る。
本発明の生物由来液獲得方法における固液分離装置には、例えば図1に示したように、上記冷却器200の後ろに、抽出容器100内を減圧する減圧器300が具備されている。
該減圧器300としては、生物が細胞内に有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用いることが必須である。
抽出容器100の内容積が大きければ、大きい気体排出能力を有する減圧器300を用いる必要がある。抽出容器100の内容積に比較して、小さい気体排出能力しか有さない減圧器300を用いると(抽出容器100の内容積に応じて気体排出能力を大きくしていかないと)、細胞水の蒸発熱で生物を冷却することができ難くなり、該生物が昇温してしまう場合がある。
具体的には、例えば、内容積が1mの抽出容器を用いた場合は、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が0.1mの抽出容器を用いた場合は、常圧体積2m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が0.5mの抽出容器を用いた場合は、常圧体積10m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が2mの抽出容器を用いた場合は、常圧体積40m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須である。
「内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力」が必須であるが、該値は、常圧体積22m/時間以上300m/時間以下が好ましく、常圧体積25m/時間以上200m/時間以下がより好ましく、常圧体積27m/時間以上150m/時間以下が特に好ましい。
減圧器300の気体排出能力が小さ過ぎると、抽出効率が落ちる場合、水の蒸発熱による生物の過昇温防止効果が得られ難くなって、該生物の温度が上がり過ぎる場合等がある。
減圧器300の気体排出能力が大き過ぎると、そもそも下記する減圧度を達成しつつ、このような大きな気体排出能力を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価若しくは極めて大型となる場合がある。
図1に一例を示したように、水タンク303に水(好ましくは、予め水チリングユニットで冷却した水)を貯め、水循環ポンプ302で加圧した水を送液し、水エジェクタ301において該加圧水を噴出させることにより減圧する。流動液体は静止液体より圧力が低い性質(ベルヌーイの定理)を用いて気体を排出する。
減圧器300による減圧度は、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を1kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-100.3kPa]以上10kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-91.3kPa]以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することが好ましい。
より好ましくは1.3kPa(1気圧に対して、-100kPa)以上9kPa(1気圧に対して、-92.3kPa)以下であり、特に好ましくは2kPa(1気圧に対して、-99.3kPa)以上8.6kPa(1気圧に対して、-92.7kPa)以下であり、更に好ましくは3.3kPa(1気圧に対して、-98kPa)以上8.3kPa(1気圧に対して、-93kPa)以下である。
減圧度が低過ぎると(圧力が高過ぎると)、水の蒸発熱による生物の冷却が期待できずに、生物の温度が高くなり過ぎる場合、抽出に時間がかかり過ぎる場合等があり、その結果、細胞に含まれる酵素が失活する場合がある。また、細胞膜を通過して細胞水を水蒸気として抽出できない場合がある。
一方、減圧度が高過ぎると(圧力が低過ぎると)、下記する「該圧力における水の沸点」と「生物の前記温度範囲」との関係で、そこまで低圧力にする必要がない場合があり、また、そもそも前記した気体排出能力を有した上に、そこまで減圧度を上げられる減圧器300が存在しない又は極めて大型で極めて高価になる場合等がある。
温度(℃) 水の蒸気圧(kPa)
20 2.3
30 4.2
40 7.4
50 12.3
減圧器300による容器内圧力(減圧度)は、少なくとも主たる抽出中は、細胞水の温度すなわち水の温度における水の蒸気圧の0.1倍以上1倍以下が好ましく、0.2倍以上0.99倍以下がより好ましく、0.4倍以上0.95倍以下が更に好ましく、0.6倍以上0.9倍以下が特に好ましい。
容器内圧力が上記下限以上であると、過度の蒸発熱による生物や細胞水の冷却がない。一方、容器内圧力が上記上限以下であると、商業的規模で十分な気体排出能力を有することを条件で、そのような圧力を実現できる減圧器が商業的規模で存在可能であり、また、細胞水が穏やかに沸騰して細胞膜を破損しない。
上記減圧器300は、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301であることが、高い減圧度と共に高い気体排出能力を有するために好ましい。すなわち、減圧度と気体排出能力の両立ができ、前記本発明の効果を奏し易い点から好ましい。水循環ポンプ302を有して横噴射型であると、特に気体排出能力を上げ易い。
減圧器には、一般的に、ロータリーポンプ、オイル拡散ポンプ、水銀拡散ポンプ、差動ポンプ等がある。例えば、ロータリーポンプでは約1Pa(10-2mmHg)、オイル拡散ポンプでは約0.1mPa(10-6mmHg)という何れも高真空度は達成できるものの気体排出能力が極めて低い。一方、一般的なエジェクタでは、通常は10kPaより高い圧力にしかならない。
上記気体排出能力と減圧度の両立は、「水エジェクタ301」でしか達成し得ないし、特に、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタを用いることによって、好適に両立が可能である。
前記した高い気体排出能力の数値は、かかる水エジェクタで達成できるとは言っても汎用的な数値ではない。前記した高い気体排出能力の数値は、(例えば好ましい態様を下記する)水エジェクタを有する減圧器の構造(特に、吸引孔、水位、消音器等);噴射する水の温度;噴射速度;噴射ノズル径;単位時間当たりの噴射量;噴射距離等を調整して得る。
本発明における特に好ましい「横噴射型の水エジェクタ」の態様を図5と図6に示す。
図5と図6に示した「横噴射型の水エジェクタ」は、水を受ける筒形の水入口片1と、該水入口片1の下流側に設けられ、該水入口片1から流入する水と吸引ガスとを混合する主管スロート6と、該主管スロート6の下流側端部に接続して設けられ、内径が末広がり形状をなすパイプからなる出力片7を有している。
更に要すれば、円筒形状をなし、該出力片7の下流側端部に設けられ、水と吸引ガスとの混合物を流す消音器12と、該消音器12に取付けられ、水が流出する際に該消音器12内に空気を取り入れて、該消音器12内の気圧の急変を防止する吸気管11とを備えている。
また、上記した水エジェクタ301においては、水入口片1と主管スロート6と出力片7とを収容する外被管8を備え、該外被管8に、細胞水と酵素の気体を供給する吸引管3を取付け、該外被管8を消音器12に接続し、主管スロート6は、水入口片1の終端部に連接して設けられ複数個のガス吸引孔4を有する円筒形パイプからなる。
また、前記水タンク303からの水を吸込んで水入口片1より吐出する水循環ポンプ302、前記水入口片1、前記主管スロート6、前記出力片7、及び、前記消音器12を含む循環路を、前記水タンク302内の水位17より低く設定してあることが好ましい。
図5は、水エジェクタ301とそれに連結される消音器12の概略を、図6には、水エジェクタ301を横方向に設置して水タンク303に接続する形態を示す。図5の水エジェクタ301において、水入口片1は、水の流れ抵抗を減少させるため面取りが施されている。
該水入口片1よりも直径の太い主管スロート6が入口片1に接続されている。該主管スロート6の形状は単純なパイプ形状である。
該主管スロート6の入口部には、パイプ管壁を貫通する複数個の吸引孔4が開けられており、該吸引孔4は、吸引管3を通じ真空引き(減圧)する際に、吸込みガス(細胞水と酵素の気体)を主管スロート6内に吸引するためのものである。
主管スロート6の終端付近には、直径が主管スロート6より太いパイプ状の出方片7が連結されている。該出口片7は、出口方向に向かって末広がり状に広がる内部形状を有している。
また、水入口片1、主管スロート6、及び、出口片7を被覆する外被管8が、外側に円筒状に接続されている。これら1~8で示す部材により、水エジェクタ301が構成される。
12は消音器であり、図5のように、該消音器12の内径は、水エジェクタ301の出力片7の出口の内径より太いパイプ形状を有する。
図5に示す水エジェクタ入口片1には、図6に示す水循環ポンプ302からの吐出配管15を、入口側フランジ2を介して接続されている。
真空引き機能は、吸引管3だけを通じて行うように、中空円形状の仕切板5が設けられている。該仕切板5の内側部は、主管スロート6の外側部に固着され、該仕切板5の外周部は、外被管8に固着され十分な気密性が保たれるようになっている。
本発明における減圧器300は、図6に示すように、水エジェクタの極めて高い気体排出能力を図るために、消音器12を漬ける水を溜めた水タンク303を備え、水エジェクタ301で使用された水は、一旦、水タンク303に蓄えられる構造になっている。水タンク303の水は、冷却水で20℃以下に冷却されることが好ましい(図1)。
水エジェクタ301は、その終端の出力側フランジ9を使い、該水タンク303の外側より固着されている。
消音器12は、フランジ10で水タンク303の内側より、出力側フランジ9と同位置に固着されている。これにより水タンク303内では、水エジェクタ301と消音器12は、水タンク303の内部で連結されている。
消音器12は、水平部12aとその先端で直角に下方に曲げた垂直部12bとを有し、終端12cからは、吸引ガスが混合された水が水タンク303内の水中に流出する構成となっている。
また、水流を作る水循環ポンプ302に接続されている戻り配管14を通じて、水が循環して再利用される構造となっている。
戻り配管14、水循環ポンプ302、吐出配管15、水エジェクタ301、及び、消音器12からなる循環路は、水タンク303内の水位17より低く設定されている。
消音器12における水エジェクタ301の連接部近くに、空気を取入れる吸気管11が設けられ、吸気管11の吸気口は、水タンク水位17より上部に位置させることにより、吸気口が水面下に浸らない構造とする。水タンク303には、水位17の設定のためのオーバーフロー通風口18が設置されている。
本発明における好ましい水エジェクタ301は、図5に示したように、主管スロート6に吸引孔4が設けられている。それによって、管同士の隙間からガスを吸込む従来の水エジェクタと比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
また、本発明の好ましい水エジェクタ301とそれに連結される消音器12は、図6のように、水の循環路が水タンク303の水位17より低く、横向き水平に使用設置することが可能となり、該「水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタ」は、従来のエジェクタや水エジェクタの減圧器と比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
本発明の生物由来液獲得方法は、25℃以上45℃以下という比較的低温での水の蒸気圧を勘案しても、該蒸気圧に対し必要以上に抽出容器100内の圧力(減圧度)を必要以上に低くすることに拘らず、その分を気体排出能力の向上に振り向けて、対象となる生物を細胞水等の蒸発熱で冷却することで初めて達成できた(完成した)。また、そのように条件設定することで、商業的工業的規模の生物の量(処理量)でも、十分な圧力(減圧度)と十分な気体排出能力を有する減圧器300が存在し得るようにできた。
生物由来液獲得方法は、減圧器300として、該生物が有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用い、該水エジェクタ301によって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を10kPa以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することを特徴とする。
主たる抽出(抽出初期から、抽出容器に投入した抽出対象の生物の有する全細胞水の90質量%が抽出されるまで)に要する時間は、投入量にもより特に限定はされないが、1時間以上24時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましく、4時間以上16時間以下が特に好ましい。
時間が短過ぎる場合は、蒸発熱による冷却ができないで昇温する場合、そもそも本格生産規模で、45℃以下(好ましくは前記温度以下)と言う比較的低温で、短時間で細胞水を蒸発させるだけの減圧器がない又は極めて大型になる場合等がある。
一方、時間が長過ぎる場合は、時間が無駄でコストアップになる場合;本発明における前記又は後記した特殊な抽出条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粗粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合;等がある。すなわち、本発明における、「主たる抽出中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、「蒸発熱を冷却に利用すること」等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。
本発明の生物由来液獲得方法における固液分離装置には、例えば図1、図2に示したように、上記冷却器200で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液Bを獲得する回収獲得容器400が具備されている。
上記冷却器200からの抽出液を回収獲得容器400に貯めると、下層に水相(水層)401が、上層に油相(油層)402が位置するので、生物由来液取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404から、下層の水相(水層)401である生物由来液Bを最終容器(図示せず)に抜き出す。
本発明の生物由来液獲得方法では、上記回収獲得容器400に回収された抽出液から、比重の差を利用して、下層の水相401を形成する生物由来液を獲得することが好ましい。
回収獲得容器400の側面の途中に、油相(油層)取出し口403を設ければ、油相(油層)402である精油D等の生物由来の油性成分を抜き出すことができる。すなわち、下層の水相(水層)401を下から抜き出して、油相(油層)402がちょうど油相(油層)取出し口403の高さになったときに、油相(油層)取出し口403から、精油D等の生物由来の油性成分を抜き出すことができる。
本発明の生物由来液獲得方法では、上記回収獲得容器400に回収された抽出液から、上層に油相があるときは、比重の差を利用して、該油相をも獲得することが好ましい。
本発明の他の態様は、前記の生物由来液獲得方法に用いられ得る能力を有し、前記の生物由来液獲得方法を使用する用途に用いる抽出装置であって、少なくとも、上記粗破砕撹拌機、上記加熱ユニット、上記気体取出口及び上記粉末残渣取出口を有する上記抽出容器、上記冷却器、上記減圧器、並びに、上記回収獲得容器を具備するものであることを特徴とする抽出装置である。
本発明の生物由来液獲得方法は、下記に限定はされないが、具体的には例えば下記のように行われる。
まず、抽出作業開始に当り、冷却水供給装置に冷却水を充填し、冷却器200に冷却水を循環させる。次いで、生物Aを生物投入口103から抽出容器100内に投入して生物投入口蓋104を閉じる。
そして、粗破砕撹拌機110は、図2~図4の矢印Rの回転方向に回転させ、抽出容器100内の生物Aを撹拌しながら、回転刃113a、113bと凸型固定刃111との間で生物Aを粗破砕する。
かかる粗破砕撹拌機110によって粗破砕することで細胞膜を殆ど破壊せず、また粗破砕しながら抽出することで、細胞水の「変性」や「散逸による減量」を防ぐこともできる。
上記撹拌・粗破砕と同時に、蒸気供給装置から蒸気室121内に加熱用蒸気を供給することにより、外部から熱を加える。抽出容器100に加えられた熱は、生物に伝達され、生物が粗破砕撹拌機110によって撹拌されることにより、抽出が促進されると共に(抽出点、温度等が)均一になる。この抽出は、生物が、回転刃113a、113bと凸型固定刃111とによって粗破砕されて小さくなることによって更に促進され均一になる。
その際、蒸気室121内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調整したり、減圧器300である水エジェクタ301に供給する水の量・圧力・噴射速度等を調整して気体排出能力や抽出容器内の圧力を適切に設定したりして、生物の温度を25℃以上45℃以下の範囲(更にはより好ましい範囲)に維持する。
水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301等の減圧器300で吸引することにより、抽出容器100内の気体、すなわち、抽出液の蒸気及び空気を、気体配管131を通じて吸引し、抽出容器100内の生物に含まれている成分と細胞水の蒸発を開始させる。その際、減圧器300で吸引する量や吸引力を調節して、抽出時の圧力(減圧度)を、前記した好ましい範囲にする。
抽出容器100内の「生物に含まれる成分の蒸気」及び「細胞水の主成分である水の蒸気」(水蒸気)は、気体配管131を通して吸引され、冷却器200に導入され液化されて、回収液となって回収獲得容器400内に溜まる。
回収獲得容器400内に、回収液、すなわち「油相(油層)402及び水相(水層)401」が所定量まで貯まったら、減圧器300での吸引を停止し回収液を回収する。回収液は、要すれば静置して分液をして油相(油層)402を油相(油層)取出し口403から採取して精油D等とし、水相(水層)401を水相(水層)取出し口404から獲得して生物由来液Bとする。
生物由来液B等を獲得後、抽出容器100内に残った生物由来粉末残渣Cを、粉末残渣取出し口140から回収する。
<他の抽出方法との比較>
前記した通り、抽出方法には、本発明以外にも、前記した通り、水蒸気蒸留法、直接抽出法、溶媒抽出法、圧搾法、超臨界抽出法、フリーズドライ法等、種々の方法が知られている。
このうち、水蒸気蒸留法や直接抽出法では、生物Aと媒体を(通常は60℃以上に)加熱するため、酵素を含め有効成分が変性・熱分解する、有効成分が散逸する等で、有効成分をそのまま含む、生物由来液、精油、生物由来粉末残渣が十分に得られない。なお、生物が50℃以上になると、細胞内に存在する酵素が失活する。
また、水蒸気蒸留法では、抽出に用いた水蒸気が液化した水が細胞水に混合することで、全て天然由来の抽出液であると言う本発明の効果がなくなるし、抽出残渣物にも外部からの水(由来物)が混入することになる。
また、溶媒抽出法では、水溶性成分が抽出され難い、抽出溶媒が抽出液中に残留することにより抽出残渣物を有効活用することが困難になり、また、その溶媒を除去する際に有効成分も除去されてしまった。また、溶媒抽出法では、溶媒を使用することが必須であるため、生物由来の細胞水を得ることが難しい。
更に、抽出液の収量も少なかった。抽出溶媒として水を用いる場合でも、抽出のために加えた水が残留するので、全て天然由来の抽出液・抽出残渣物であると言う本発明の効果がなくなる。
圧搾法でも、抽出溶媒として用いた油性成分が抽出液中に残留し、抽出残渣物を有効活用することが困難であり、また、その油性成分を完全に除去することが不可能である。また、抽出溶媒を使用するため、生物由来の細胞水を得ることが難しい。
抽出溶媒を使用しない圧搾法は、沸点が100℃より高い油(例えば、ごま油、つばき油等)を採取するときに通常は用いられるが、水性抽出液を採取する場合や植物から精油を採取する場合は、収率が著しく落ちるため使用できない。
超臨界抽出法では、高圧を要するので高価な設備を必要とする、媒体由来の極微量の不純物が混入する等の問題点がある。
また、フリーズドライ法では、水が氷になるのでその際に細胞膜が破壊され本発明の課題を達成できない。
また、生物Aを破砕・撹拌をしながらではなく、一旦粗破砕・撹拌をした後に抽出する方法では、有効成分が効率的に抽出できない場合があった。すなわち、通常の減圧抽出法等のように、粗破砕・撹拌をしながらではなく加熱・減圧して抽出する方法では、複数の有効成分を十分に抽出できない場合があった。
また、生物Aを「粗破砕しつつではなく」加熱・減圧して抽出する通常の減圧抽出法を含め、上記他の抽出方法では、生物Aの組織や細胞の中に含まれている種々の成分を効率的に利用できない場合があった。
また、従来公知の抽出法では、生物Aの有する細胞膜を通過した液を獲得することは難しかった。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
採りたての長ネギを5cmの長さに切って得られた嵩が約500Lの切断長ネギ(約200kg)を、図1~3に示した抽出容器100(投入容量500L、抽出容器の体積(内容積)1m)に投入し、図2と図4に示したような2個の回転刃体112a、112bを有する粗破砕撹拌機110によって、回転刃体を4回転/分で回転させ、粗破砕しながら抽出液を抽出した。
その際、該粗破砕撹拌機110(1.5kW)によって、少なくとも主たる抽出中は、長ネギの細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該長ネギを撹拌しつつ約2mm~約6mmに粗破砕した。
蒸気量28~140kg/hrの加熱ユニット120で加熱すると共に、水エジェクタ301で真空引きし、水の蒸発熱で長ネギの温度を35℃±2℃に保った。水エジェクタ301の水温と、冷却器200の冷却水の水温は、共に10℃±2℃に保った。
使用した水エジェクタ301は、横噴射型の水エジェクタ(3.7kW)であり、引かれる方がオープンの場合、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタであった。
抽出容器100内の圧力は、少なくとも主たる抽出中は、3.3kPa(1気圧に対して、-98.0kPa)以上6.3kPa(1気圧に対して、-95.0kPa)以下に常に保った。主たる抽出時間は、5~8時間であった。
35℃±2℃の抽出液を回収獲得容器400に回収したので、比重の差を利用して、下層の水相401である生物由来液Bを生物由来液取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404から獲得し、上層である油層402は油相(油層)取出し口403から精油Dとして回収した。
長ネギ及びそれからの抽出液等は、抽出容器内でも冷却・回収時でも下層(水相)獲得時でも常に35℃±2℃を保った。
最後に、抽出容器100の粉末残渣取出し口140から粉末残渣を得た。
得られた長ネギからの生物由来液Bは、水を加えて約50~80℃で加熱抽出した液や、25℃で単純に搾取した液とも、異なった風味(香りと味)がした。成分組成が異なっているものと推認された。また、常に35℃±2℃を保ったので、酵素が失活しないで残っていた。
精油Dも、他の抽出方法で得られたものとは異なった風味(香りと味)がした。また、生物由来粉末残渣Cも着色がなく、さらさらとした粉末であり食することができた。
実施例1の長ネギに代えて、加工していない、鰯、みかん、大葉、蟹の甲羅、及び、ラベンダを用いた以外は、実施例1と同様に、生物由来液B;植物由来粉末残渣C;精油D等の油性成分を得た。
何れも、他の抽出方法で得られた抽出液とは異なった風味(香りと味)がした。また、成分組成が異なっているものと推認された。また、常に35℃±2℃を保ったので、酵素が失活しないで残っていた。
本発明の生物由来液獲得方法で得られた生物由来液は、今までの生物からの抽出液とは異なる成分組成を有し、実質的に完全に生物由来のものであり、独特の風味・香りを有し、また、抽出工程において酵素を失活させるような熱をかけず、抽出溶媒を使用しないので、安全性が極めて高いのみならず、完全に天然の細胞水を有するものであり、抽出残渣物や精油も有効活用することができる。
従って、それらは、一般食品、健康食品、食品添加剤、医薬品等の分野にはもちろんのこと、アロマセラピー用品、芳香剤、介護用品、化粧料、飼料、肥料等の分野においても広く利用されるものである。
1 水入口片
2 入口側フランジ
3 吸引管
4 吸引孔
5 仕切板
6 主管スロート
7 出方片
8 外被管
9 出力側フランジ
10 フランジ
11 吸気管
12 消音器
12a 水平部
12b 垂直部
12c 終端
14 戻り配管
15 吐出配管
17 水タンク水位
18 オーバーフロー通風口
100 抽出容器
101 下部半円筒部
102 上部角形部
103 生物投入口
104 生物投入口蓋
105a 端壁
105b 端壁
106a 端板
106b 端板
107 傾斜面
108 真空計
109a 温度計
109b 温度計
110 粗破砕撹拌機
111 凸型固定刃
112a 回転刃体
112b 回転刃体
113a 回転刃
113b 回転刃
114a 回転刃溝
114b 回転刃溝
115a 「く」の字
115b 「く」の字
120 加熱ユニット
121 蒸気室
122 蒸気供給装置
130 気体取出口
131 気体配管
140 粉末残渣取出口
200 冷却器
300 減圧器
301 水エジェクタ
302 水循環ポンプ
303 水タンク
400 回収獲得容器
401 水相(水層)
402 油相(油層)
403 油相(油層)取出し口
404 水相(水層)取出し口
405 生物由来液取出しバルブ
A 生物
B 生物由来液
C 生物由来粉末残渣
D 精油
R 回転方向

Claims (9)

  1. 生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機、生物及び抽出容器内を加熱する加熱ユニット、生物から発生する気体を取り出す気体取出口、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口を有する抽出容器;
    該気体取出口から取り出された気体を冷却する冷却器;
    該抽出容器内を減圧する減圧器;並びに;
    該冷却器で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液を獲得する回収獲得容器;
    を少なくとも具備した固液分離装置を使用して、
    抽出溶媒も抽出蒸気も実質的に添加せずに、植物又はキノコである生物から、該生物が有する酵素を含有する生物由来液を獲得する、食品、芳香剤、又は、化粧料用の生物由来液獲得方法であって、
    該抽出容器の体積をV[L]とし、該抽出容器に投入される生物の質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の2倍以上5倍以下に設定し、
    該粗破砕撹拌機によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
    該加熱ユニットによって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
    該減圧器として、該生物の温度が45℃を超えないように冷却するために、内容積が1mの抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタを用い、
    該水エジェクタによって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を1kPa以上10kPa以下に維持して、該生物の細胞から酵を含有する生物由来液を抽出することを特徴とする生物由来液獲得方法。
  2. 上記冷却器の冷却媒体として、0℃以上であり、上記抽出容器の気体取出口から取り出された気体の温度より5℃以上低い温度の水を用いる請求項1に記載の生物由来液獲得方法。
  3. 上記抽出容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃を有すると共に、上記粗破砕撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、抽出容器内の生物を、該凸型固定刃と該回転刃で粗破砕する請求項1又は請求項2に記載の生物由来液獲得方法。
  4. 上記粗破砕撹拌機が2個以上の回転刃体を有し、該回転刃体を同方向に回転させることで、上記生物を粗破砕しつつ撹拌し、抽出完了後には、粉末残渣を上記抽出容器の内壁から掻き取り、上記粉末残渣取出口に向けて掻き寄せる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
  5. 上記生物を、少なくとも主たる抽出中は、1.4mm以上15mm以下に粗破砕する請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
  6. 上記回収獲得容器に回収された抽出液から、比重の差を利用して、下層の水相を形成する生物由来液を獲得する請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
  7. 上記回収獲得容器に回収された抽出液から、上層に油相があるときは、比重の差を利用して、該油相をも獲得する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
  8. 抽出完了後に、上記粉末残渣取出口から粉末残渣を獲得する請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
  9. 上記生物が、植物又はキノコであって、果物の果皮、果肉若しくは種子;野菜若しくはキノコの全体若しくは一部;植物の幹、茎、葉、花、萼若しくは種子;漢方薬草;又は;香草若しくはハーブである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
JP2017114814A 2016-06-30 2017-06-12 生物由来液獲得方法 Active JP7054084B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016130711 2016-06-30
JP2016130711 2016-06-30

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018007654A JP2018007654A (ja) 2018-01-18
JP7054084B2 true JP7054084B2 (ja) 2022-04-13

Family

ID=60994071

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017114814A Active JP7054084B2 (ja) 2016-06-30 2017-06-12 生物由来液獲得方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7054084B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7315196B2 (ja) * 2019-02-18 2023-07-26 株式会社野口システム 針葉樹の葉の組織液抽出方法
JP2021050194A (ja) * 2019-09-18 2021-04-01 株式会社野口システム 植物由来粉状体の製造方法及びその利用物並びにこれを使用した飲用品、植物由来の消臭剤又は消毒剤若しくは抗ウイルス薬剤
CN114107013A (zh) * 2021-12-07 2022-03-01 梁小毛 一种玛卡细胞液提取装置及方法
CN114613200B (zh) * 2022-02-23 2023-05-19 长春大学 一种西班牙语翻译练习机

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005214599A (ja) 2004-02-02 2005-08-11 Fec:Kk 真空乾燥装置
JP2009138726A (ja) 2007-12-06 2009-06-25 Yasufumi Fukumoto 水流エゼクターと真空引き装置
JP2012062374A (ja) 2010-09-14 2012-03-29 Kaori Kk 天然香気成分の抽出方法
JP2013203911A (ja) 2012-03-28 2013-10-07 Kaori Renaissance Llc 香気成分含有抽出液
JP2014189512A (ja) 2013-03-26 2014-10-06 Okinawa Tokusan Hanbai Co Ltd フローラルウォーター含有化粧料及びその生産方法
JP2014193158A (ja) 2013-03-01 2014-10-09 Nagase Sanbio Co Ltd 養殖魚用飼料およびその製造方法、ならびに養殖魚用飼料製造装置
WO2015025902A1 (ja) 2013-08-21 2015-02-26 Shiodaライフサイエンス研究所株式会社 経鼻的脳機能調整剤及び経鼻的に脳機能を調整する方法
JP2015074757A (ja) 2013-10-11 2015-04-20 Shiodaライフサイエンス研究所株式会社 イグサからの抽出液の製造方法及び嗅覚による認知症予防治療剤

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005214599A (ja) 2004-02-02 2005-08-11 Fec:Kk 真空乾燥装置
JP2009138726A (ja) 2007-12-06 2009-06-25 Yasufumi Fukumoto 水流エゼクターと真空引き装置
JP2012062374A (ja) 2010-09-14 2012-03-29 Kaori Kk 天然香気成分の抽出方法
JP2013203911A (ja) 2012-03-28 2013-10-07 Kaori Renaissance Llc 香気成分含有抽出液
JP2014193158A (ja) 2013-03-01 2014-10-09 Nagase Sanbio Co Ltd 養殖魚用飼料およびその製造方法、ならびに養殖魚用飼料製造装置
JP2014189512A (ja) 2013-03-26 2014-10-06 Okinawa Tokusan Hanbai Co Ltd フローラルウォーター含有化粧料及びその生産方法
WO2015025902A1 (ja) 2013-08-21 2015-02-26 Shiodaライフサイエンス研究所株式会社 経鼻的脳機能調整剤及び経鼻的に脳機能を調整する方法
JP2015074757A (ja) 2013-10-11 2015-04-20 Shiodaライフサイエンス研究所株式会社 イグサからの抽出液の製造方法及び嗅覚による認知症予防治療剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018007654A (ja) 2018-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7054084B2 (ja) 生物由来液獲得方法
JP5371918B2 (ja) 天然香気成分の抽出方法
Starmans et al. Extraction of secondary metabolites from plant material: a review
Gavahian et al. Ohmic heating as a promising technique for extraction of herbal essential oils: Understanding mechanisms, recent findings, and associated challenges
JP5699358B2 (ja) 材料から抽出物を生成するための方法および同方法を実現するための装置
JP6786029B2 (ja) 香りオイルの製造方法
CN110997151B (zh) 植物材料的低温分离
JP2013203911A (ja) 香気成分含有抽出液
JP2006291007A (ja) 柑橘類から精油を抽出する方法及び減圧蒸留精油抽出装置
JP2013518714A5 (ja)
Al-Hilphy A practical study for new design of essential oils extraction apparatus using ohmic heating
CN105007746A (zh) 咖啡加香方法
Both et al. Mass transfer enhancement for solid–liquid extractions
JP6169641B2 (ja) 抗酸化・抗炎症剤、及び該抗酸化・抗炎症剤を含有するコルチゾール分泌抑制剤
Rassem et al. Yield optimization and supercritical CO 2 extraction of essential oil from jasmine flower
CN104689372B (zh) 一种同种骨超临界二氧化碳脱脂处理的方法
JP2020200309A (ja) 薬水の製造方法
JP6730739B2 (ja) 生物成長材の製造方法
WO2019153083A1 (en) Extraction of cannabinoids from cannabis
US9394504B1 (en) Stovetop extraction apparatus and method for rendering infused lipids for ingestion
JP7162848B2 (ja) 抗酸化剤又は育毛剤の製造方法、及び、該製造方法で製造された抗酸化剤又は育毛剤
CN104140881A (zh) 一种提取八角籽油的方法
JP2024065243A (ja) シマアザミの細胞内水性液体の獲得方法及び該方法を用いて獲得された飲料水
JP2023071387A (ja) ホーリーバジルの部位を固液分離してホーリーバジル水、油、粉を得る製造方法
US20060210654A1 (en) Process for extracting vital components from plants

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170616

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200609

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210324

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210330

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210527

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210914

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211021

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220301

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220318

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7054084

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150