JP7054084B2 - 生物由来液獲得方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの抽出方法は、水相を主な目的物として分離するものではなかった。また、これらの抽出方法によって生じた抽出液や抽出残渣は、抽出溶媒(水、水蒸気、超臨界流体等も含む)の残留によって使用することができない等、用途によっては利用することができなかった。
特許文献1には、植物を破砕及び撹拌しながら加熱及び減圧して植物由来の蒸気を生成させる油性成分(香気成分)の抽出方法が記載されている。そして、この方法を用いれば、ハーブ、果物、花又は野菜から香気成分を抽出できるとされている。
更に、生物を原料とし、未同定分子を含む複数の有効成分を効率的に水相として抽出する抽出方法や、該生物の細胞水を含んだままの水性の抽出液の製造方法についても開示されていない。
また、抽出対象である生物の温度を比較的低温に維持しつつ、細胞膜を通過した水性成分のみを獲得する方法についても具体的に開示されていない。例えば、一定値以上の気体排出能力を有する特定の減圧器による細胞水の蒸発熱と、加熱ユニットによる加熱とで温度を特定範囲に調節する方法について具体的に開示されていない。
また、前記問題点を解決し、細胞膜を通過した水性成分を獲得し、細胞内に存在する酵素を失活させずに、生物に由来する液のみを獲得する方法を提供することにあり、また、かかる方法で得られる生物由来液、生物由来粉末残渣、精油等を提供することにある。
また、該抽出方法による抽出残渣も該生物に由来する粉末状のもののみにできることを見出して、本発明を完成するに至った。
該気体取出口から取り出された気体を冷却する冷却器;
該抽出容器内を減圧する減圧器;並びに;
該冷却器で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液を獲得する回収獲得容器;
を少なくとも具備した固液分離装置を使用して、
抽出溶媒を実質的に添加せずに、生物から、該生物が有する細胞水と該生物が有する失活していない酵素とを含有する生物由来液を獲得する生物由来液獲得方法であって、
該粗破砕撹拌機によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
該加熱ユニットによって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を、該生物が有する酵素を失活させないように、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
該減圧器として、該生物が有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1m3の抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタを用い、
該水エジェクタによって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を10kPa以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することを特徴とする生物由来液獲得方法を提供するものである。
少なくとも、上記粗破砕撹拌機、上記加熱ユニット、上記気体取出口及び上記粉末残渣取出口を有する上記抽出容器、上記冷却器、上記減圧器、並びに、上記回収獲得容器を具備するものであることを特徴とする抽出装置を提供するものである。
このことは、本発明によれば、例えば前記したような抽出方法による従来の生物由来物では知られていない(実現できていない)、成分組成や純度;水の2次構造;極微量成分、低沸点成分、不安定物質等を有する態様の「新規な生物由来液、生物由来粉末残渣、精油」を提供できていることを示している。
また、抽出溶媒や抽出蒸気を実質的に添加せず、生物に含有される成分のみを獲得する方法を提供することができる。従来公知の抽出方法では、細胞膜が破壊されるため細胞膜を通過した液は取れないし、抽出対象物を加熱する抽出方法では酵素が失活する。
また、大きな気体排出能力を有する減圧器にしては高い減圧度(抽出容器内の低い圧力)を達成できる減圧器を用いることによって、低い抽出温度にしては長時間を必要とせず効率的に主たる抽出を完了させることができる。
更に、このような比較的高い減圧度によって、主たる抽出を終えて最終的に残渣を得るときに、さらさらであって良好な形態の粉末残渣を獲得できる。
抽出溶媒を実質的に添加せずに、生物から、該生物が有する細胞水と該生物が有する失活していない酵素とを含有する生物由来液Bを獲得する生物由来液獲得方法であって、
該粗破砕撹拌機110によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
該加熱ユニット120によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物及び該抽出容器100内を、該生物が有する酵素を失活させないように、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
該減圧器300として、該生物が有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1m3の抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m3/時間以上常圧体積200m3/時間以下の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用い、
該水エジェクタ301によって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を10kPa以下に維持して、該生物の細胞から細胞膜を通過した細胞水と酵素とを抽出することを特徴とする。
生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機110、生物及び抽出容器100内を加熱する加熱ユニット120、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口140を有する抽出容器100;
該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;
該抽出容器100内を減圧する減圧器300;並びに;
該冷却器200で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液Bを獲得する回収獲得容器400;を具備している。
また、上記生物が植物又はキノコであれば、果物の果皮、果肉若しくは種子;野菜若しくはキノコの全体若しくは一部;植物の幹、茎、葉、花、萼若しくは種子;漢方薬草;又は;香草若しくはハーブ等が挙げられる。該生物は、特に動植物が好ましく、また「食物」として知られているものが好ましい。
また、本発明の生物由来液獲得方法を使用して抽出後に得られる生物由来粉末残渣Cも、抽出対象物である生物(の細胞)に含有される成分のみからなるようにできる。
従って、本発明によって得られる生物由来液Bと生物由来粉末残渣Cは、上記のような成分組成であることが好ましい。
抽出容器100は、生物を収容し、粗破砕撹拌機110で粗破砕しながら撹拌し、該粗破砕・撹拌下に、加熱ユニット120によって外部から熱を加えつつ減圧して抽出する容器である。
抽出容器100は、粗破砕撹拌機110を収容した下部半円筒部101と、その上に形成された上部角形部102とからなる。少なくとも下部半円筒部101の周囲には、抽出容器100の内部に熱を加える蒸気室121がある。
下部半円筒部101の最下部の中央には、抽出後の残渣を取り出す粉末残渣取出口140が設けられている。
上記上部角形部102の上部には、吸引される蒸気の気体取出口130が設けられ、言い換えれば、生物から発生する気体を取り出す気体取出口130が設けられ、この気体取出口130には、冷却器200につながる気体配管131が接続されている。
上記粗破砕・撹拌は、「複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112b」及び「抽出装置の内面(好ましくは上記下部半円筒部101の下内面)に設けられた複数の凸型固定刃111」を備えた抽出装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
本発明の生物由来液獲得方法は、上記粗破砕撹拌機110が2個以上の回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを同方向に回転させることで、上記生物を粗破砕しつつ撹拌し、抽出完了後には、粉末残渣を上記抽出容器100の内壁から掻き取り、上記粉末残渣取出口140に向けて掻き寄せることが好ましい。
回転速度が低過ぎるときは、粗破砕、撹拌及び/又は抽出の効率が悪くなる場合、抽出容器100内で粗破砕されつつある生物に温度ムラが生じる場合等があり、一方、回転速度が高過ぎるときは、粗破砕撹拌機110に過剰の負荷がかかる場合、細胞膜に障害を与える場合等がある。
なお、図4では、凸型固定刃111と回転刃113a、113bとは、噛み合いが時間をずらして順次行われるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより粗破砕撹拌機110の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
1個の回転刃体に設けられた回転刃が少な過ぎると、粗破砕、撹拌及び/又は抽出の効率が悪くなる場合、蒸発が抑制されて温度が上昇する場合等があり、一方、多過ぎると、過度の粗破砕と撹拌が行われるために、回転に負荷がかかる場合、細胞水の抽出速度が上がり過ぎて水の蒸発熱で生物の温度が下がる場合等がある。
主たる抽出中の生物のサイズは、好ましくは1.2mm以上15mm以下、より好ましくは1.4mm以上10mm以下、特に好ましくは1.6mm以上7mm以下である。
上記サイズは、粗破砕された生物の差し渡し長さの重量平均値(体積平均値)である。
抽出容器100の中には、図3に示すように、下部半円筒部101の片側上部に、この上に載る生物が円滑に落ちるように傾斜面107が設けられている。
本発明においては、加熱ユニット120による加熱水蒸気の蒸気室への流量によって加熱をコントロールし、生物からの細胞水の蒸発熱を冷却に利用すべく減圧装置の気体排出量によって冷却をコントロールする。
生物の温度は、少なくとも主たる抽出中は、好ましくは27℃以上42℃以下、より好ましくは30℃以上40℃以下、特に好ましくは33℃以上37℃以下にする。
上記温度範囲であると、自然界の生物が有する、成分組成・純度、極微量成分、低沸点成分、不安定物質等を、変質も分解もさせずに得ることができる。また、上記温度範囲であれば、水の2次構造(例えばクラスター等)が安定して存在する。
主たる抽出中の生物の温度(範囲)は、本発明の効果を得るために極めて重要であり、たとえ投入する生物が死んでいたとしても、通常の生物が正常にその生命を維持できる上記温度範囲(温度上限)が望ましい。
本発明における抽出容器100内の粗破砕撹拌機110は、上記した通り、少なくとも主たる抽出中は、該生物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、前記したサイズの範囲に粗破砕しつつ撹拌できるようになっているが、抽出が終了した後は、「生物由来粉末残渣C」として確保すべく、温度を上記上限温度より高くして、良好に粉末化を図ることも好ましい。また、該生物中の細胞水が少なくなると、水の蒸発熱による冷却を期待できない場合がある。
ここで、「主たる抽出」とは、抽出初期から、抽出容器100に投入した抽出対象の生物の有する全細胞水の90質量%が抽出されるまでを言う。
本発明においては、細胞水の蒸発熱によって、該生物の温度を前記温度の上限以下に維持するように、該抽出容器100内を減圧しつつ抽出する。
該質量が小さ過ぎると、バッチを繰り返して抽出することになるので、コストアップになり商業的に使用できなくなる。また、本発明における前記又は後記した特殊な抽出条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粗粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合がある。すなわち、本発明における「主たる抽出中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、蒸発熱を冷却に利用すること、等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。本発明は、生物の量が上記下限以上の時に特にその効果を奏する。言い換えれば、上記下限は、本発明の抽出条件が有効に働く(初めて意味を持つ)ようになる点から重要である。
一方、大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような減圧器300がそもそも存在しない場合;具体的には、特に、生物の昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しないか又は極めて高価となる場合;抽出容器100の筐体に減圧負荷がかかり過ぎる場合;等がある。
V[L]/M[kg]の値が小さ過ぎると、粗破砕、撹拌等を良好に実行できない場合がある。
一方、V[L]/M[kg]の値が大き過ぎると、大きな抽出容器100が無駄になる場合;抽出容器100が大き過ぎて、減圧器300の気体排出能力が十分に発揮できず、その結果、蒸発熱による生物の冷却ができず、該生物の温度が前記温度範囲の上限を超えてしまう場合;等がある。
粗破砕撹拌機110を前記したような構造にすることによって、すなわち、図4に示したように、回転刃体112a、112bを「く」の字115a、115bの形にすることによって、抽出終了後の粉末残渣を、抽出容器100の下部中央に集め易くなり、該粉末残渣の取出しが容易となるが、そのために、粉末残渣取出口140は、抽出容器100の下部中央近傍に設けられることが好ましい。
かかる形状の回転刃体112a、112bは、生物由来粉末残渣Cを抽出容器100の内壁から良好に掻き取り、抽出容器100の下部中央近傍に設けられた粉末残渣取出口140に向けて掻き寄せることによって、歩留まり良く(さらさらの)生物由来粉末残渣Cが獲得できる。
該冷却器200の冷却媒体としては、「0℃以上であり、上記抽出容器100の気体取出口130から取り出された気体の温度より5℃以上低い(特に好ましくは7℃以上低い)温度」の水を用いることが、冷却して液化する効率の点から好ましい。
冷却媒体である水の温度が高過ぎると、抽出気体の一部が液化されず収率が落ちる場合がある。一方、低過ぎると、得られる生物由来液の温度が低くなり過ぎ、25℃以上45℃以下で得られた好適な水の2次構造が乱れる場合がある。
このような冷却器200は、公知のものが用いられ得る。
該減圧器300としては、生物が細胞内に有する酵素を失活させないために、細胞水の蒸発熱で該生物の温度が45℃を超えないように、内容積が1m3の抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用いることが必須である。
具体的には、例えば、内容積が1m3の抽出容器を用いた場合は、常圧体積20m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が0.1m3の抽出容器を用いた場合は、常圧体積2m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が0.5m3の抽出容器を用いた場合は、常圧体積10m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須であり、内容積が2m3の抽出容器を用いた場合は、常圧体積40m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301が必須である。
減圧器300の気体排出能力が小さ過ぎると、抽出効率が落ちる場合、水の蒸発熱による生物の過昇温防止効果が得られ難くなって、該生物の温度が上がり過ぎる場合等がある。
減圧器300の気体排出能力が大き過ぎると、そもそも下記する減圧度を達成しつつ、このような大きな気体排出能力を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価若しくは極めて大型となる場合がある。
より好ましくは1.3kPa(1気圧に対して、-100kPa)以上9kPa(1気圧に対して、-92.3kPa)以下であり、特に好ましくは2kPa(1気圧に対して、-99.3kPa)以上8.6kPa(1気圧に対して、-92.7kPa)以下であり、更に好ましくは3.3kPa(1気圧に対して、-98kPa)以上8.3kPa(1気圧に対して、-93kPa)以下である。
一方、減圧度が高過ぎると(圧力が低過ぎると)、下記する「該圧力における水の沸点」と「生物の前記温度範囲」との関係で、そこまで低圧力にする必要がない場合があり、また、そもそも前記した気体排出能力を有した上に、そこまで減圧度を上げられる減圧器300が存在しない又は極めて大型で極めて高価になる場合等がある。
20 2.3
30 4.2
40 7.4
50 12.3
容器内圧力が上記下限以上であると、過度の蒸発熱による生物や細胞水の冷却がない。一方、容器内圧力が上記上限以下であると、商業的規模で十分な気体排出能力を有することを条件で、そのような圧力を実現できる減圧器が商業的規模で存在可能であり、また、細胞水が穏やかに沸騰して細胞膜を破損しない。
前記した高い気体排出能力の数値は、かかる水エジェクタで達成できるとは言っても汎用的な数値ではない。前記した高い気体排出能力の数値は、(例えば好ましい態様を下記する)水エジェクタを有する減圧器の構造(特に、吸引孔、水位、消音器等);噴射する水の温度;噴射速度;噴射ノズル径;単位時間当たりの噴射量;噴射距離等を調整して得る。
図5と図6に示した「横噴射型の水エジェクタ」は、水を受ける筒形の水入口片1と、該水入口片1の下流側に設けられ、該水入口片1から流入する水と吸引ガスとを混合する主管スロート6と、該主管スロート6の下流側端部に接続して設けられ、内径が末広がり形状をなすパイプからなる出力片7を有している。
更に要すれば、円筒形状をなし、該出力片7の下流側端部に設けられ、水と吸引ガスとの混合物を流す消音器12と、該消音器12に取付けられ、水が流出する際に該消音器12内に空気を取り入れて、該消音器12内の気圧の急変を防止する吸気管11とを備えている。
該主管スロート6の入口部には、パイプ管壁を貫通する複数個の吸引孔4が開けられており、該吸引孔4は、吸引管3を通じ真空引き(減圧)する際に、吸込みガス(細胞水と酵素の気体)を主管スロート6内に吸引するためのものである。
また、水入口片1、主管スロート6、及び、出口片7を被覆する外被管8が、外側に円筒状に接続されている。これら1~8で示す部材により、水エジェクタ301が構成される。
12は消音器であり、図5のように、該消音器12の内径は、水エジェクタ301の出力片7の出口の内径より太いパイプ形状を有する。
真空引き機能は、吸引管3だけを通じて行うように、中空円形状の仕切板5が設けられている。該仕切板5の内側部は、主管スロート6の外側部に固着され、該仕切板5の外周部は、外被管8に固着され十分な気密性が保たれるようになっている。
水エジェクタ301は、その終端の出力側フランジ9を使い、該水タンク303の外側より固着されている。
消音器12は、フランジ10で水タンク303の内側より、出力側フランジ9と同位置に固着されている。これにより水タンク303内では、水エジェクタ301と消音器12は、水タンク303の内部で連結されている。
また、水流を作る水循環ポンプ302に接続されている戻り配管14を通じて、水が循環して再利用される構造となっている。
戻り配管14、水循環ポンプ302、吐出配管15、水エジェクタ301、及び、消音器12からなる循環路は、水タンク303内の水位17より低く設定されている。
一方、時間が長過ぎる場合は、時間が無駄でコストアップになる場合;本発明における前記又は後記した特殊な抽出条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粗粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合;等がある。すなわち、本発明における、「主たる抽出中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、「蒸発熱を冷却に利用すること」等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。
本発明の生物由来液獲得方法では、上記回収獲得容器400に回収された抽出液から、比重の差を利用して、下層の水相401を形成する生物由来液を獲得することが好ましい。
本発明の生物由来液獲得方法では、上記回収獲得容器400に回収された抽出液から、上層に油相があるときは、比重の差を利用して、該油相をも獲得することが好ましい。
まず、抽出作業開始に当り、冷却水供給装置に冷却水を充填し、冷却器200に冷却水を循環させる。次いで、生物Aを生物投入口103から抽出容器100内に投入して生物投入口蓋104を閉じる。
そして、粗破砕撹拌機110は、図2~図4の矢印Rの回転方向に回転させ、抽出容器100内の生物Aを撹拌しながら、回転刃113a、113bと凸型固定刃111との間で生物Aを粗破砕する。
かかる粗破砕撹拌機110によって粗破砕することで細胞膜を殆ど破壊せず、また粗破砕しながら抽出することで、細胞水の「変性」や「散逸による減量」を防ぐこともできる。
その際、蒸気室121内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調整したり、減圧器300である水エジェクタ301に供給する水の量・圧力・噴射速度等を調整して気体排出能力や抽出容器内の圧力を適切に設定したりして、生物の温度を25℃以上45℃以下の範囲(更にはより好ましい範囲)に維持する。
前記した通り、抽出方法には、本発明以外にも、前記した通り、水蒸気蒸留法、直接抽出法、溶媒抽出法、圧搾法、超臨界抽出法、フリーズドライ法等、種々の方法が知られている。
また、水蒸気蒸留法では、抽出に用いた水蒸気が液化した水が細胞水に混合することで、全て天然由来の抽出液であると言う本発明の効果がなくなるし、抽出残渣物にも外部からの水(由来物)が混入することになる。
更に、抽出液の収量も少なかった。抽出溶媒として水を用いる場合でも、抽出のために加えた水が残留するので、全て天然由来の抽出液・抽出残渣物であると言う本発明の効果がなくなる。
抽出溶媒を使用しない圧搾法は、沸点が100℃より高い油(例えば、ごま油、つばき油等)を採取するときに通常は用いられるが、水性抽出液を採取する場合や植物から精油を採取する場合は、収率が著しく落ちるため使用できない。
また、フリーズドライ法では、水が氷になるのでその際に細胞膜が破壊され本発明の課題を達成できない。
また、生物Aを「粗破砕しつつではなく」加熱・減圧して抽出する通常の減圧抽出法を含め、上記他の抽出方法では、生物Aの組織や細胞の中に含まれている種々の成分を効率的に利用できない場合があった。
また、従来公知の抽出法では、生物Aの有する細胞膜を通過した液を獲得することは難しかった。
採りたての長ネギを5cmの長さに切って得られた嵩が約500Lの切断長ネギ(約200kg)を、図1~3に示した抽出容器100(投入容量500L、抽出容器の体積(内容積)1m3)に投入し、図2と図4に示したような2個の回転刃体112a、112bを有する粗破砕撹拌機110によって、回転刃体を4回転/分で回転させ、粗破砕しながら抽出液を抽出した。
その際、該粗破砕撹拌機110(1.5kW)によって、少なくとも主たる抽出中は、長ネギの細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該長ネギを撹拌しつつ約2mm~約6mmに粗破砕した。
使用した水エジェクタ301は、横噴射型の水エジェクタ(3.7kW)であり、引かれる方がオープンの場合、常圧体積20m3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタであった。
長ネギ及びそれからの抽出液等は、抽出容器内でも冷却・回収時でも下層(水相)獲得時でも常に35℃±2℃を保った。
最後に、抽出容器100の粉末残渣取出し口140から粉末残渣を得た。
精油Dも、他の抽出方法で得られたものとは異なった風味(香りと味)がした。また、生物由来粉末残渣Cも着色がなく、さらさらとした粉末であり食することができた。
従って、それらは、一般食品、健康食品、食品添加剤、医薬品等の分野にはもちろんのこと、アロマセラピー用品、芳香剤、介護用品、化粧料、飼料、肥料等の分野においても広く利用されるものである。
2 入口側フランジ
3 吸引管
4 吸引孔
5 仕切板
6 主管スロート
7 出方片
8 外被管
9 出力側フランジ
10 フランジ
11 吸気管
12 消音器
12a 水平部
12b 垂直部
12c 終端
14 戻り配管
15 吐出配管
17 水タンク水位
18 オーバーフロー通風口
100 抽出容器
101 下部半円筒部
102 上部角形部
103 生物投入口
104 生物投入口蓋
105a 端壁
105b 端壁
106a 端板
106b 端板
107 傾斜面
108 真空計
109a 温度計
109b 温度計
110 粗破砕撹拌機
111 凸型固定刃
112a 回転刃体
112b 回転刃体
113a 回転刃
113b 回転刃
114a 回転刃溝
114b 回転刃溝
115a 「く」の字
115b 「く」の字
120 加熱ユニット
121 蒸気室
122 蒸気供給装置
130 気体取出口
131 気体配管
140 粉末残渣取出口
200 冷却器
300 減圧器
301 水エジェクタ
302 水循環ポンプ
303 水タンク
400 回収獲得容器
401 水相(水層)
402 油相(油層)
403 油相(油層)取出し口
404 水相(水層)取出し口
405 生物由来液取出しバルブ
A 生物
B 生物由来液
C 生物由来粉末残渣
D 精油
R 回転方向
Claims (9)
- 生物を粗破砕しつつ撹拌する粗破砕撹拌機、生物及び抽出容器内を加熱する加熱ユニット、生物から発生する気体を取り出す気体取出口、及び、抽出後に生物の粉末残渣を取り出す粉末残渣取出口を有する抽出容器;
該気体取出口から取り出された気体を冷却する冷却器;
該抽出容器内を減圧する減圧器;並びに;
該冷却器で冷却されて液化した抽出液を回収し、そこから生物由来液を獲得する回収獲得容器;
を少なくとも具備した固液分離装置を使用して、
抽出溶媒も抽出蒸気も実質的に添加せずに、植物又はキノコである生物から、該生物が有する酵素を含有する生物由来液を獲得する、食品、芳香剤、又は、化粧料用の生物由来液獲得方法であって、
該抽出容器の体積をV[L]とし、該抽出容器に投入される生物の質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の2倍以上5倍以下に設定し、
該粗破砕撹拌機によって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を1mm以上20mm以下に粗破砕しつつ撹拌し、
該加熱ユニットによって、少なくとも主たる抽出中は、該生物を、25℃以上45℃以下の温度範囲を維持し、
該減圧器として、該生物の温度が45℃を超えないように冷却するために、内容積が1m3の抽出容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m3/時間以上の気体排出能力を有する、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタを用い、
該水エジェクタによって、少なくとも主たる抽出中は、該抽出容器内の圧力を1kPa以上10kPa以下に維持して、該生物の細胞から酵素を含有する生物由来液を抽出することを特徴とする生物由来液獲得方法。 - 上記冷却器の冷却媒体として、0℃以上であり、上記抽出容器の気体取出口から取り出された気体の温度より5℃以上低い温度の水を用いる請求項1に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記抽出容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃を有すると共に、上記粗破砕撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、抽出容器内の生物を、該凸型固定刃と該回転刃で粗破砕する請求項1又は請求項2に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記粗破砕撹拌機が2個以上の回転刃体を有し、該回転刃体を同方向に回転させることで、上記生物を粗破砕しつつ撹拌し、抽出完了後には、粉末残渣を上記抽出容器の内壁から掻き取り、上記粉末残渣取出口に向けて掻き寄せる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記生物を、少なくとも主たる抽出中は、1.4mm以上15mm以下に粗破砕する請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記回収獲得容器に回収された抽出液から、比重の差を利用して、下層の水相を形成する生物由来液を獲得する請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記回収獲得容器に回収された抽出液から、上層に油相があるときは、比重の差を利用して、該油相をも獲得する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
- 抽出完了後に、上記粉末残渣取出口から粉末残渣を獲得する請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
- 上記生物が、植物又はキノコであって、果物の果皮、果肉若しくは種子;野菜若しくはキノコの全体若しくは一部;植物の幹、茎、葉、花、萼若しくは種子;漢方薬草;又は;香草若しくはハーブである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の生物由来液獲得方法。
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