JP7054000B2 - 構造体及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、構造体及びその製造方法に関する。
特許文献1には、弾性を有する樹脂材で形成された外層部と、荷重印加時に変形しかつ該荷重が印加されなくなったときに形状を保持する材料からなる内層部を備えたことを特徴とするクッション材が開示されている。特許文献1のクッション材は、上記構成を有するので、形状を保ちつつ柔軟性も確保できるという効果を有する。
特開2018-15381号公報
ところで、クッション材の用途によっては、利用者ごとに最適形状を設定し、使用中にはその最適形状がくずれないことが好ましい場合がある。特許文献1のクッション材の内層部は、荷重印加時に変形してしまうので、このような用途には用いることができない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、利用者ごとに設定された形状に容易に変形させることができ、かつその形状が使用時には維持され、しかも、使用感が優れた構造体を提供するものである。
本発明によれば、基材層と、前記基材層の少なくとも一部を被覆する被覆層を備える構造体であって、前記基材層は、形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料で形成され、前記被覆層は、軟性材料で形成される、構造体が提供される。
本発明の構成では、基材層が形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料で形成され、被覆層が軟性材料で形成される。形状記憶ポリマーは、ガラス転移温度の近傍で弾性率が大きく変化する性質を有するので、構造体の形状を変形させたいときは、基材層をガラス転移温度よりも高い温度にまで昇温し、形状を変形させた後は基材層をガラス転移温度よりも低い温度にまで降温させることによって、構造体の形状を利用者ごとに設定された形状に容易に変形させることができ、かつその形状が使用時には維持されるようにすることができる。一方、このような基材層が利用者に直接接触すると使用感が悪い場合があるが、本発明の構造体の被覆層が軟性材料で形成されているので、利用者に接触する部位に被覆層を設けることによって、使用感を向上させることができる。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の構造体であって、前記形状記憶ポリマーは、ガラス転移温度Tgが35~100℃である、構造体である。
好ましくは、前記記載の構造体であって、前記形状記憶ポリマーは、(Tg-20℃)での弾性率/(Tg+20℃)での弾性率の値が10以上である、構造体である。
好ましくは、前記記載の構造体であって、前記基材層及び前記被覆層は、線状樹脂が二次元走査されて構成された線状構造体が積層されて構成されている、構造体である。
好ましくは、前記記載の構造体であって、前記線状構造体は、平行に延びる複数の溝を備える、構造体である。
好ましくは、前記記載の構造体であって、積層方向に隣接する2つの線状構造体の一方の溝が、他方の溝と交差する、構造体である。
好ましくは、基材層形成工程と、被覆層形成工程を備える、構造体の製造方法であって、前記基材層形成工程では、形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料からなる第1線状樹脂を二次元走査して形成する第1線状構造体を積層して基材層を形成し、前記被覆層形成工程では、軟性材料からなる第2線状樹脂を二次元走査して形成する第2線状構造体を積層して被覆層を形成し、前記被覆層は、前記基材層の少なくとも一部を被覆する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記被覆層形成工程は、前記基材層形成工程の後に行われ、前記基材層を下地として前記被覆層が形成される、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記被覆層形成工程は、前記基材層形成工程の前に行われ、前記被覆層を下地として前記基材層が形成され、前記基材層の最下層を形成する際の第1線状樹脂の温度は、前記基材層の残りの層を形成する際の第1線状樹脂の平均温度よりも高い、方法である。
本発明の第1実施形態の構造体1の斜視図である。 図2Aは、線状樹脂4bを主に横方向に走査して形成された線状構造体4の平面図であり、図2Bは、線状樹脂5bを主に縦方向に走査して形成された線状構造体5の平面図であり、図2Cは、線状構造体4と線状構造体5を交互に重ねて形成された造形物7の平面図である。 本発明の第2実施形態の構造体1の斜視図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
1.第1実施形態
1-1.構造体1の構成
図1に示すように、本発明の第1実施形態の構造体1は、基材層2と、被覆層3を備える。構造体1としては、看護分野(褥瘡予防サポーター、尖足予防サポーター、子供用シーネなど)、スポーツ用途(シューズのインソールなど)などで用いられるものが挙げられる。本実施形態の構造体1は、軟性材料で形成された被覆層3を設けることによって使用感が高められるのが特徴であるので、被覆層3を生体(例:人体)に接触させて利用する用途に好適に用いられる。図1に示す構造体1は、シューズのインソールである。
<基材層2>
基材層2は、形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料で形成された層である。形状記憶材料は、形状記憶特性を有する材料であり、所定の回復温度以上に加熱することによって弾性によって原形状に復帰する特性を有する。形状記憶材料は、形状記憶ポリマーのみを含むことが好ましいが、形状記憶特性が損なわれない限り、別の成分を含んでいてもよい。形状記憶ポリマー以外の成分としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの樹脂や、フィラーなどが挙げられる。形状記憶材料中の形状記憶ポリマーの割合は、例えば50~100質量%であり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。形状記憶材料の回復温度は、通常、形状記憶ポリマーのガラス転移温度と一致する。
形状記憶ポリマーは、Tgを超える温度に加熱することによって弾性によって原形状に復帰する特性を有する。Tgは、例えば35~100℃であり、好ましくは、40~75℃であり、具体的には例えば、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Tgを超える温度で外力を加えて二次形状に賦形し、外力を維持したままTg未満の温度に冷却すると、二次形状が固定される。Tg未満の温度では、外力を取り除いても原形状に復帰しない。一方、二次形状が付された形状記憶ポリマーをTgを超える温度に加熱し、外力を加えない状態にすると、弾性によって原形状に復帰する。原形状は、例えば形状記憶ポリマーを溶融させて所望の形状に成形することによって設定することができる。形状記憶ポリマーとしては、ゴム弾性を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリノルボルネン、トランスポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリウレタンなどが挙げられる。
形状記憶ポリマー及びこれを含む形状記憶材料は、Tgの近傍で弾性率が大きく変化する性質を有する。例えば、(Tg-20℃)での弾性率/(Tg+20℃)での弾性率の値が10以上である。この場合、(Tg-20℃)での弾性率が(Tg+20℃)での弾性率の10倍以上であるので、例えば、(Tg+20℃)以上の温度で構造体1を変形させ、(Tg-20℃)以下の温度で構造体1を利用することができる。このため、構造体の形状を利用者ごとに設定された形状に容易に変形させることができ、かつその形状が使用時には維持されるようにすることができる。(Tg-20℃)での弾性率/(Tg+20℃)での弾性率の値は、例えば10~1000であり、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
また、温度(℃)を表すx軸が通常の目盛で、弾性率(Pa)を表すy軸が対数目盛である片対数グラフにおいて、Tgでのグラフの傾きは、例えば-1~-0.025であり、-0.5~-0.1であることが好ましい。この傾きの値は、具体的には例えば、-1、-0.9、-0.8、-0.7、-0.6、-0.5、-0.4、-0.3、-0.2、-0.1、-0.075、-0.050、-0.025であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。グラフの傾きが-1であるとは、1℃の温度低下で弾性率が10倍になることを意味し、グラフの傾きが-0.025であるとは、40℃の温度低下で弾性率が10倍になることを意味する。
別の表現では、Tg+X℃からTg-X℃への温度変化で弾性率が10倍以上になるときのXは、20以下が好ましく、例えば0.5~20であり、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本明細書では、弾性率は、動的粘弾性試験により求めた貯蔵弾性率を意味し、JIS K7244に従って測定することができる。
なお、仮に、形状記憶材料以外の熱可塑性樹脂で基材層2を形成した場合でも、昇温に伴って基材層の弾性率を低下させることは可能であるが、形状記憶材料以外の熱可塑性樹脂では、通常、昇温に伴う弾性率の低下が緩やかであるので、基材層2を昇温させて変形させた後に降温させて変形後の形状を維持するという作業を行うのが容易ではないので、基材層2は、形状記憶材料で形成する必要がある。
<被覆層3>
被覆層3は、基材層2の少なくとも一部を被覆する。被覆層3は、軟性材料で形成される。軟性材料とは、常温において容易に弾性変形可能な材料であり、一例では、Tgが常温未満であるエラストマーが挙げられる。エラストマーとしては、スチレン系エラストマーが挙げられる。軟性材料のTgは、20℃以下が好ましく、10℃以下がさらに好ましく、0℃以下がさらに好ましい。軟性材料は、常温(25℃)において形状記憶材料よりも軟性であることが好ましく、常温において形状記憶材料よりも弾性率が低いことが好ましい。基材層2は、通常、常温での剛性が大きいので、基材層2が利用者に押圧されると利用者に痛みを生じさせたりする虞があったりする。そこで、本実施形態では、利用者に接触する部位において基材層2を、軟性材料で形成された被覆層3で被覆することによって構造体1の使用感を向上させる。
1-2.構造体1の製造方法
構造体1の製造方法は、特に限定されず、射出成形や3Dプリンタ造形などの方法によって形成可能である。射出成形の場合、形状記憶材料と軟性材料と用いた二色成形によって基材層2と被覆層3を一体成形することができる。また、基材層2と被覆層3の一方を射出成形で形成し、その上に他方を3Dプリンタ造形で形成してもよい。さらに、基材層2と被覆層3の両方を3Dプリンタ造形によって形成してもよい。3Dプリンタ造形では、構造体1が利用者ごとに設定された形状になるように形成可能であるので、基材層2と被覆層3の少なくとも一方は、3Dプリンタ造形によって形成することが好ましい。
3Dプリンタ造形では、ヘッドから溶融樹脂を押し出すことによって形成した線状樹脂を、図2A~図2Bに示すように、二次元走査して線状構造体4,5を形成し、線状構造体4,5を積層することによって造形物を形成することができる。ヘッドには、樹脂をフィラメントの形態で供給してもよく、ペレットの形態で供給してもよい。後者の場合、フィラメントの形状にしにくい軟性材料でも線状樹脂にすることができる。
線状構造体4,5は、線状樹脂4b,5bを一筆書きになるように二次元走査して形成したものである。線状構造体4は、線状樹脂4bを主に横方向に走査して形成された線状構造体であり、線状構造体5は、線状樹脂5bを主に縦方向に走査して形成された線状構造体である。線状構造体4,5を交互に積層すると、図2Cに示すように平面視で格子状となった造形物7が得られる。
線状樹脂が形状記憶材料からなるものである場合、造形物7として基材層2が得られる。一方、線状樹脂が軟性材料である場合、造形物7として被覆層3が得られる。
図2A~図2Cに示すように、線状構造体4,5は、それぞれ、平行に延びる複数の溝4a,5aを有する。溝4aは、線状構造体4を構成する線状樹脂4bが平行に延在することによって形成される。溝5aは、線状構造体5を構成する線状樹脂5bが平行に延在することによって形成される。また、積層方向に隣接する2つの線状構造体4,5の一方の溝4aが他方の溝5aと交差する。本実施形態では、溝4a,5aは直交しているが、溝4a,5aが直角以外の角度で交わるようにしてもよい。このような構造の造形物は、内部に空間があるために、比較的軽量である。また、造形物が被覆層3である場合、被覆層3内部に空間があるために被覆層3が変形されやすくなり、被覆層3のクッション性が向上する。
造形物の物性は、線状構造体4,5の二次元形状や、線状構造体4,5を構成する線状樹脂4b,5bの直径や密度(単位面積当たりの本数)を変更することによって適宜変更可能である。例えば、被覆層3について、線状樹脂4b,5bの直径を小さくしたり、線状樹脂4b,5bの密度を低くしたりすることによって、被覆層3をより柔軟にすることができる。また、図2A~図2Bでは、線状樹脂4b,5bの密度やパターンが線状構造体4,5の全体で均一であるが、部分的に密度やパターンを変更することによって造形物の物性を変更することも可能である。このように、基材層2と被覆層3を3Dプリンタ造形によって形成する場合、利用者のニーズに合わせて、構造体1の物性を適宜変更することが可能になる。
基材層2と被覆層3の両方を3Dプリンタ造形によって形成する場合、基材層2を先に形成して、基材層2を下地として被覆層3を形成してもよく、被覆層3を先に形成して、被覆層3を下地として基材層2を形成してもよい。後述する実施例で示すように、前者の方が基材層2と被覆層3の密着性が良好になるので好ましい。
ところで、被覆層3を下地として基材層2を形成する場合、基材層2を形成する際の線状樹脂の温度を高くすると基材層2と被覆層3の密着性を向上させることができる。一方、形状記憶材料は高温にすると劣化しやすい場合があるので、基材層2を形成する際の線状樹脂の温度はなるべく低くしたい。このため、基材層2の最下層を形成する際の線状樹脂の温度が、基材層2の残りの層を形成する際の線状樹脂の平均温度よりも高くなるようにすることによって、密着性を向上させつつ形状記憶材料の劣化を抑制できる。
2.第2実施形態
図2を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は第1実施形態に類似しており、表皮材6を備える点が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
表皮材6は、被覆層3上に形成される。表皮材6は、不織布等によって構成される。表皮材6は、基材層2と被覆層3が積層された構造体を形成した後に被覆層3に貼り付けてもよく、表皮材6を下地として被覆層3及び基材層2をこの順に3Dプリンタ造形するようにしてもよい。後者の場合、表皮材6を貼り付ける手間が不要であり、かつ表皮材6と被覆層3の密着性が高いので、好ましい。
形状記憶材料及び軟性材料を用いた3Dプリンタ造形によって構造体1を製造した。基材層2を形成するための形状記憶材料として、ポリウレタンからなる形状記憶ポリマー(SMPテクノロジーズ製、グレード名:MM5520、造形最適温度:215℃、Tg:55℃)を用いた。被覆層3を形成するための軟性材料として、スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ製、グレード名:アーネストンJS20N、最適造形温度:238℃)を用いた。表皮材6として、PET製の不織布を用いた。以下の説明での「造形温度」は、造形の際に線状樹脂を吐出するヘッドの設定温度である。
<実施例1>
造形温度215℃で基材層2を形成し、基材層2を下地として、造形温度238℃で被覆層3を形成した。基材層2と被覆層3の結合性は良好であった。
<実施例2>
表皮材6を下地として、造形温度238℃で被覆層3を形成し、被覆層3を下地として、造形温度215℃で基材層2を形成した。表皮材6と被覆層3の結合性は良好であった。被覆層3と基材層2の界面の結合力が乏しかった。
<実施例3>
表皮材6を下地として、造形温度238℃で被覆層3を形成し、被覆層3を下地として基材層2を形成した。基材層2の最下層を形成する際の造形温度を238℃とし、残りの層を形成する際の造形温度を215℃とした。表皮材6と被覆層3の結合性、及び被覆層3と基材層2の結合性はどちらも良好であった。
1 :構造体
2 :基材層
3 :被覆層
4 :線状構造体
4a:溝
4b:線状樹脂
5 :線状構造体
5a:溝
5b:線状樹脂
6 :表皮材
7 :造形物

Claims (7)

  1. 基材層と、前記基材層の少なくとも一部を被覆する被覆層を備える構造体であって、
    前記基材層は、形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料で形成され、
    前記被覆層は、エラストマーで形成され
    前記基材層及び前記被覆層は、線状樹脂が二次元走査されて構成された線状構造体が積層されて構成されている、構造体。
  2. 請求項1に記載の構造体であって、
    前記形状記憶ポリマーは、ガラス転移温度Tgが35~100℃である、構造体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の構造体であって、
    前記形状記憶ポリマーは、(Tg-20℃)での弾性率/(Tg+20℃)での弾性率の値が10以上である、構造体。
  4. 請求項1~請求項3の何れか1つに記載の構造体であって、
    前記線状構造体は、平行に延びる複数の溝を備える、構造体。
  5. 請求項に記載の構造体であって、
    積層方向に隣接する2つの前記線状構造体の一方の溝が、他方の溝と交差する、構造体。
  6. 基材層形成工程と、被覆層形成工程を備える、構造体の製造方法であって、
    前記基材層形成工程では、形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料からなる第1線状樹脂を二次元走査して形成する第1線状構造体を積層して基材層を形成し、
    前記被覆層形成工程では、エラストマーからなる第2線状樹脂を二次元走査して形成する第2線状構造体を積層して被覆層を形成し、
    前記被覆層は、前記基材層の少なくとも一部を被覆する、方法。
  7. 請求項に記載の方法であって、
    前記被覆層形成工程は、前記基材層形成工程の後に行われ、前記基材層を下地として前記被覆層が形成される、方法。
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