JP7053513B2 - 難燃性タフテッドカーペット - Google Patents

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本発明は鉄道車輌等の床面に好適に使用可能な難燃性タフテッドカーペットに関する。
鉄道車輌、バス、自動車等の床面に使用されるタフテッドカーペットは、火災時の安全性確保のために所定の難燃性が要求される(国土交通省令第83条)。その難燃性を満足するため、従来からカーペットの表皮繊維層にウール繊維を用いたカーペットが用いられてきたが、ウール繊維は短繊維であるため、鉄道車輌に施工後、重度の歩行等によりウール繊維の抜け落ち等が発生し耐磨耗性が弱く、耐久性に問題があった。
これを解決する手段として、より耐久性を期待できる長繊維であるナイロン繊維等を用いる事が挙げられるが、ナイロン繊維はウール繊維に比べて難燃性が劣るため、上記難燃性を満足するためには、カーペットを構成する各層に難燃性を施す必要がある。なお、難燃性カーペットに関しては例えば特許文献1や特許文献2の発明が知られている。
特開2012-223366号公報 特開2014-217430号公報
特許文献1のカーペットは基布にグアニルスルフォアミド系難燃剤を含浸させたものである。また特許文献2のカーペットはパイル層に難燃剤を付与したもので、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤などの有機難燃剤、金属水酸化物、アンチモン系難燃剤などの無機難燃剤が挙げられている。しかし、これら難燃性カーペットにおいても、耐久性、難燃性および風合いの面で、なお改善の余地があることが分かった。
本発明の目的は、十分な耐久性、難燃性および良好な風合いを有するタフテッドカーペットを提供することにある。
前記課題を解決する本発明の難燃性タフテッドカーペットは、ポリプロピレン織物を有する基布層と、66ナイロン長繊維糸にグアニルスルフォアミド系難燃剤が付加され、前記基布層の表面に植設されてなるパイル層と、前記基布層と前記パイル層の間に配設された難燃レーヨン綿層と、前記基布層の裏面に配設された難燃樹脂を含む裏貼樹脂層とを有することを特徴とする。
以上のように構成した本発明による難燃性タフテッドカーペットは、十分な耐久性、難燃性および良好な風合いを有する。
本発明の実施形態に係るタフテッドカーペットの概略断面図である。 本発明のタフテッドカーペットの実施例と比較例を示す図である。 難燃性を試験する試験設備の概略斜視図である。
以下、本発明の一実施形態を説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る難燃性タフテッドカーペット10は、上から順にパイル層1、難燃レーヨン綿層2、基布層3および裏貼樹脂層4を有する。パイル層1は難燃レーヨン綿層2を載せた基布層3の表面に所定密度でタフトされている。
このパイル層1は、66ナイロン長繊維糸にグアニルスルフォアミド系難燃剤を付与(塗布又は散布)したものである。難燃剤は原料糸に付与(原着)してもよいし、タフテッドカーペット10を製造した後に付与(塗布・散布)してもよい。
パイル層1は、66ナイロン長繊維糸にグアニルスルフォアミド系難燃剤を付加したものである。ナイロンとウールのLOI値を比べると、ウールのLOI値24-26に比べてナイロンは20-22であるから難燃性が劣るが、66ナイロンは6ナイロンよりは融点が高く、難燃性がある。
パイル層1の目付けは1050g/m2にしてある。パイル層1の目付けは800~1500g/m2の範囲内であればフロアカーペットとして十分なクッション性を有する。目付けが800g/m2よりも少ないと底付き感が出る。
この「底付き感」とは、足が沈み込んでカーペットの下の床面(施工面)に当たったような硬い印象を歩行者が感じることをいう。この反対に目付けが1500g/m2よりも多いと沈み込みが大きくなりすぎ、良好な歩行感が得難くなる。
グアニルスルフォアミド系難燃剤の付与量(塗布量又は散布量)は40g/m2である。難燃剤の量は、後述するように40g/m2~100g/m2の間で増減させても難燃性の変化は格別生じなかった。
難燃剤の量を40g/m2から増やすにしたがい、風合い(ベトツキ感)は徐々にではあるが悪くなる傾向がある。そこで本実施形態では難燃剤の塗布量(散布量)を最低限の40g/m2にした。
難燃レーヨン綿層2はパイル層1と基布層3の間に目付け100g/m2で配設されている。レーヨンのLOI値は綿と同等で17-19であるが、試験片の燃焼試験において炎が当たった部分の難燃レーヨン綿が炭化して壁になるので、燃焼した部分に穴ができて延焼するのを防止することができる。
難燃レーヨン綿層2の目付けは50~150g/m2あれば前記炭化壁を形成することができる。目付けが50g/m2未満では燃焼した部分に穴ができることがある。この反対に目付けを150g/m2超に増やしても難燃性には格別影響がなかった。
難燃レーヨン綿層2は、例えば原料セルロースに難燃剤を練り込んだものを使用することができる。このように難燃剤を練り込むことで難燃性を高めることができる。当該難燃剤としては例えばリン系難燃剤を使用することができる。なお、難燃剤は原料セルロースに練り込む他、後述するようにレーヨン繊維外周に付与してもよく、また難燃剤もリン系難燃剤に限られない。
リン系難燃剤としては、赤リン系、芳香族縮合リン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、その他芳香族リン酸エステル、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、その他含ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル類、ポリリン酸塩類などがある。
基布層3は目付け90g/m2のポリプロピレン織物で構成している。当該目付けは50~150g/m2あればパイル層1に必要な抜糸力を確保することができる。
一般的にタフテッドカーペットの基布層3にはポリプロピレン織物やポリエステル織物が使用されるが、後述するようにポリエステル織物を基布層3に使用した場合は難燃性をクリアできず、難燃安定性も問題があることが分かった。これは燃焼温度域でのポリエステルの溶融粘度がポリプロピレンよりも比較的低く熱収縮性も比較的大きいことから、燃焼試験において炎が当たった部分が溶融滴下して穴開きが発生しやすいためである。これに対してポリプロピレン織物は、炎が当たって溶融しても滴下せず穴開きが発生しない。このためポリプロピレン織物を基布層3に使用した場合は難燃性と難燃安定性の両方をクリアできる。
裏貼樹脂層4は基布層3の裏面に難燃樹脂をロールコーティングにより塗工したものである。この難燃樹脂はスチレンブタジエンラバーに難燃剤として水酸化アルミニウムを配合したものである。この水酸化アルミニウムは、燃焼時に水分を発生するので難燃性を高めることが分かっている。
難燃剤として水酸化アルミニウムなどを配合しないと、燃焼試験において炎が裏面に達して燃焼が拡大しやすい。水酸化アルミニウムの配合割合は2:8~4:6の範囲内であれば難燃性をクリアできる。この実施形態ではスチレンブタジエンラバーと水酸化アルミニウムを3:7の割合で配合している。
(比較例と実施例について)
以下、比較例1~比較例4-3と、実施例1~2の燃焼試験等の結果について、図2を参照して説明する。各比較例と実施例の難燃性および難燃安定性は、図3の試験装置100で調べた。
図3の試験装置100は国土交通省令第83条に準拠したもので、基板101と、試験片であるB5大のタフテッドカーペット10の両端を支持して基板101上に45度で傾斜配設された左右一対のステー102と、タフテッドカーペット10のパイル面中央に延びた支柱103と、支柱103の上端に設けられた支持台104と、支持台104上のアルコールランプ105で構成される。アルコールランプ105の容器底面から炎が当たるパイル面までの距離を25.4mm(1インチ)とし、アルコールランプ105の規定量のアルコールが燃え尽きるまで試験片を約1分余り加熱する。
難燃性と難燃安定性を、燃焼中の状態(着火、着炎、煙など)および燃焼後の状態(残煙、残じん、炭化など)から3段階(○、△、×)で判定した。「○」が難燃性と難燃安定性の両方とも良好、「△」がいずれか一方のみ良好、「×」が両方とも不良である。
比較例1はパイル繊維にウールを使用したものである。ウールは風合いが良好でLOI値も24-26と高く自己消火性があり難燃性のレベルは高いが、短繊維のため比較的耐久性が弱く、耐摩耗性の面で問題がある。
比較例2は、上記比較例1の耐久性、耐磨耗性の弱さを克服するために、パイル繊維を耐久性、耐磨耗性のある長繊維である6ナイロン長繊維に変えたものである。但し、6ナイロンはLOI値が20-22でウールに劣るため、6ナイロンのパイル繊維にリン系難燃剤を付加して難燃性を改善した。しかし、本比較例2では結果的に難燃性をクリアすることはできなかった。これは基布層に綿層が無いためであると考えられる。
比較例3-1~3-3は、パイル層1と基布層の間に難燃ポリエステル綿層や難燃レーヨン綿層を介在させ、基布もポリエステル基布やポリプロピレン基布を使用した。
難燃レーヨン綿は、レーヨン繊維に難燃剤を内包させたり外周に付与したものである。難燃剤の内包・付与の処理方法は周知の任意の方法を採用することができる。難燃剤としては、リン系難燃剤、ブロム系難燃剤など周知のものを任意に採用可能である。市販のものでは、レンチング社製「LenzingFR(登録商標)」などが例示される。
基布層3をポリエステル織物にした比較例3-2と、基布層3をポリプロピレン織物にした比較例3-3では、他の条件が同じでも比較例3-3の方が難燃性が良いことが分かった。これは前述したようにポリエステルの方がポリプロピレンより溶融粘度が低く、燃焼試験で炎が当たった部分に穴開きが発生するためである。ポリプロピレン織物は炎が当たった部分で穴開きが発生せず、難燃性と難燃安定性の両方をクリアできる。しかし安定性にはやや欠ける面があった。
次に、比較例4-1以降で、パイル層1の繊維を6ナイロン長繊維から66ナイロン長繊維に変更した上で、基布層3とその上の繊維の種類を変えて燃焼試験を行った。66ナイロンは融点265℃で6ナイロンの融点225℃より高く耐熱性があり機械的強度も高い。
この結果、比較例4-3のようにポリプロピレン織物の基布層3の上に難燃レーヨン綿を配設すると難燃性をクリアできることが分かった。これは難燃レーヨン綿層の炭化で穴あき防止壁が形成されることによるものと考えられる。
比較例5はパイル層1に難燃剤をまったく付与しないで難燃性をクリアできるか試行した結果である。パイル層1に難燃剤を使用しないので当然風合いは満足する。しかしながら、難燃剤の有無以外は同条件の比較例4-3でクリアした難燃性は、比較例5ではクリアできなかった。
以上の結果から、難燃性をクリアするためには、パイル層1に難燃剤を使用する必要があり、さらにより風合をよくするために難燃剤をリン系難燃剤から他の種類に変更する必要があることが分かった。実施例1と2では、パイル層1にリン系難燃剤に代えてグアニルスルフォアミド系難燃剤を使用した。
その結果、実施例1と2で十分な難燃性が得られることが分かった。これは難燃レーヨン綿層の炭化による穴あき防止壁との相乗効果によるものと考えられる。
グアニルスルフォアミド系難燃剤の使用量は40~100g/m2の範囲内で変えてみたが、難燃性の程度に格別の違いはなかった。そこで使用量を最低の40g/m2にしたものが実施例2である。この実施例2は難燃性をクリアできることは勿論のこと、風合いも実施例1より優れていた。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば裏貼樹脂層はスチレンブタジエンラバーに配合する難燃剤は水酸化アルミニウムに限定されるものではなく、水酸化マグネシウムやリン系難燃剤など他の難燃剤を使用することも可能である。
1:パイル層
2:難燃レーヨン綿層
3:基布層
4:裏貼樹脂層
10:タフテッドカーペット

Claims (5)

  1. ポリプロピレン織物を有する基布層と、
    66ナイロン長繊維糸にグアニルスルフォアミド系難燃剤が付加され、前記基布層の表面に植設されてなるパイル層と、
    前記基布層と前記パイル層の間に配設された難燃レーヨン綿層と、
    前記基布層の裏面に配設された難燃樹脂を含む裏貼樹脂層と、
    を有し、
    前記難燃レーヨン綿層の目付けを50~150g/m2の範囲内にし、
    前記パイル層の目付けを800~1500g/m 2 の範囲内にした、
    ことを特徴とする難燃性タフテッドカーペット。
  2. 前記難燃レーヨン綿層は、原料セルロースに難燃剤が練り込まれていることを特徴とする請求項1の難燃性タフテッドカーペット。
  3. 前記難燃レーヨン綿層の前記難燃剤がリン系難燃剤であることを特徴とする請求項2の難燃性タフテッドカーペット。
  4. 前記裏貼樹脂層の難燃樹脂が、スチレンブタジエンラバーに水酸化アルミニウムを配合してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項の難燃性タフテッドカーペット
  5. 前記スチレンブタジエンラバーと前記水酸化アルミニウムの配合割合を重量比で2:8~4:6の範囲内にしたことを特徴とする請求項4の難燃性タフテッドカーペット。
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