以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態によるエレベータ運行管理システムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるエレベータ運行管理システムを示す。このエレベータ運行管理システム1は、エレベータホール2の入口に設置された個人認証装置3と、建物内のいずれかの場所に設置された制御サーバ4と、エレベータホール2内に設置された行先階修正装置5と、エレベータホール2内に当該エレベータホール2内の全景を撮影できるように設置されたカメラ6とを備えて構成される。
個人認証装置3は、非接触通信部3A及び表示部3Bを備えたセキュリティゲート装置から構成される。非接触通信部3Aは、通過するエレベータ利用者7により翳された非接触型IC(Integrated Circuit)カードからなる個人認証カード(図示せず)と非接触通信を行い、その個人認証カードに記録されたそのエレベータ利用者7の利用者IDなどの識別情報を取得する機能を有する通信装置である。非接触通信部3Aにより取得されたそのエレベータ利用者7の識別情報は、制御サーバ4に送信される。また表示部3Bは、例えば液晶ディスプレイなどから構成され、必要な情報を表示するために利用される。
なお、かかる個人認証カードとしては、本エレベータ運行管理システム1専用の非接触型ICカードだけでなく、社員証などの他のシステムで利用する非接触型ICカードを併用することもできる。個人認証カードとして本エレベータ運行管理システム1に専用の非接触型ICカードを利用する場合には、各エレベータ利用者7には、当該エレベータ運行管理システム1において固有の識別子が利用者IDとしてそれぞれ付与される。また他のシステムで利用する非接触型ICカードを個人認証カードと併用する場合には、そのシステムでそのエレベータ利用者7に付与されてその非接触型ICカードに記録された社員番号等の識別子が本エレベータ運行管理システム1におけるそのエレベータ利用者7の利用者IDとして利用される。
制御サーバ4は、エレベータ8の運行を管理するサーバ装置である。制御サーバ4には、本エレベータ運行管理システム1が設置された建物内のエレベータ8を利用する可能性がある各人物の利用者ID、氏名及び行先階(例えば、その人物のデスクがあるフロアの階層)が予め登録される。ここで「建物内のエレベータ8を利用する可能性がある人物」とは、例えば、その建物がオフィスビルである場合には、そのオフィスビルに入居する会社の社員などが該当し、その建物がホテルなどの宿泊施設である場合には、その宿泊施設の宿泊者などが該当する。
そして制御サーバ4は、このように登録された各人物の行先階と、個人認証装置3から通知された当該個人認証装置3を通過したエレベータ利用者7の識別情報とに基づいて、行先階が同じ又は近いエレベータ利用者7同士を同じエレベータ8に案内すべく、エレベータ利用者7が個人認証装置3を通過する際に、そのエレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8を個人認証装置3の表示部3Bに表示させる。また制御サーバ4は、これと併せて、そのエレベータ8に案内した各エレベータ利用者7の登録された行先階にそれぞれ停車するようそのエレベータ8の停車階を設定する。
行先階修正装置5は、エレベータ利用者7が、そのエレベータ利用者7について予め登録された行先階と異なる階層に行く際に、行先階を修正するために利用するユーザインタフェース装置である。行先階修正装置5は、図2に示すように、表示装置5A及び入力装置5Bを備えて構成される。表示装置5Aは、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどから構成され、入力装置5Bは、例えば、キーボード及びマウスやタッチパッドなどから構成される。以下においては、行先階修正装置5は、表示装置5A及び入力装置5Bが一体化したタッチパネルを備えるものとする。
図2は、制御サーバ4の詳細構成を示す。制御サーバ4は、CPU10、主記憶装置11、補助記憶装置12及び通信装置13などの情報処理資源を備えた汎用のサーバ装置から構成される。
CPU10は、制御サーバ4全体の動作制御を司るプロセッサである。また主記憶装置11は、半導体メモリなどから構成され、CPU10のワークメモリとして利用される。補助記憶装置12は、例えばハードディスク装置やSSD(Solid-State Drive)などの大容量の不揮発性記憶装置から構成され、各種プログラムや必要なデータを長期間保存するために利用される。
通信装置13は、個人認証装置3や行先階修正装置5などとの通信時におけるプロトコル制御を行うインタフェース装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)などから構成される。
(1-2)本実施の形態による行先階修正支援機能
次に、本エレベータ運行管理システム1に搭載された第1の行先階修正支援機能について説明する。本エレベータ運行管理システム1には、個人認証装置3を通過してエレベータホール2に入場してきたエレベータ利用者7をカメラ6の撮影映像上で追跡し、当該エレベータ利用者7が行先階修正装置5に近づいた場合には、そのエレベータ利用者7について登録されている行先階を行先階修正装置5に表示し、この行先階をそのエレベータ利用者7が容易に変更できるユーザインタフェースを提供する行先階修正支援機能が搭載されている。
実際上、本エレベータ運行管理システム1において、制御サーバ4は、カメラ6から与えられる映像データに基づく当該カメラ6の撮影映像内の各エレベータ利用者7をそれぞれ特定し、かかる撮影映像内のこれらエレベータ利用者7を追跡する。
そして制御サーバ4は、いずれかのエレベータ利用者7が行先階修正装置5に近づいてきた場合には、そのエレベータ利用者7について登録されている行先階を修正する可能性があると判断して、登録されているそのエレベータ利用者7の行先階を行先階修正装置5に表示させる。
また制御サーバ4は、そのエレベータ利用者7が行先階修正装置5を操作して行先階を修正した場合には、これに応じてそのエレベータ利用者7が利用すべき新たなエレベータ8を決定し、そのエレベータ8に乗車するようそのエレベータ利用者7を案内すると共に、これに応じてその修正後の行先階に停車するようそのエレベータ8の運行を制御する。
以上のような本実施の形態による行先階修正支援機能を実現するための手段として、制御サーバ4の主記憶装置11には、図2に示すように、行先階決定部20、利用者検出部21、追跡部22、行動判定部23、表示制御部24及び行先階修正部25が格納され、制御サーバ4の補助記憶装置12には、登録者管理テーブル26、追跡利用者管理テーブル27及びエレベータ行先管理テーブル28が格納されている。
行先階決定部20は、各エレベータ利用者7が個人認証装置3を通過する際に当該エレベータ利用者7の個人認証カードから取得されて当該個人認証装置3から送信されてくるそのエレベータ利用者7の利用者IDに基づいて、そのエレベータ利用者7の行先階を特定する機能を有するプログラムである。行先階決定部20は、そのエレベータ利用者7を追跡対象として、そのエレベータ利用者7の利用者ID等の情報を追跡利用者管理テーブル27に登録する。
利用者検出部21は、カメラ6から送信されてくる映像データに基づく撮影映像内から、個人認証装置3を通過してエレベータホール2に入場してくる各エレベータ利用者7をそれぞれ特定してエレベータ利用者7ごとの特徴等を検出する機能を有するプログラムである。利用者検出部21は、検出した各エレベータ利用者7の顔及び服の色などの特徴等をそのエレベータ利用者7の利用者IDと対応付けて追跡利用者管理テーブル27に登録すると共に、各エレベータ利用者7の追跡指示を追跡部22に出力する。
追跡部22は、利用者検出部21から与えられる追跡指示に応じて、利用者検出部21により検出されたエレベータ利用者7の特徴等の情報に基づいてエレベータホール2内のエレベータ利用者7をカメラ6の撮影映像内でそれぞれ追跡する機能を有するプログラムである。実際上、追跡部22は、利用者検出部21から追跡指示が与えられた各エレベータ利用者7のエレベータホール2内の座標位置を周期的(例えば、数ミリ秒単位)にそれぞれ検出する。そして追跡部22は、検出した各エレベータ利用者7の座標を対応する利用者IDと対応付けて追跡利用者管理テーブル27に登録すると共に、これらエレベータ利用者7の利用者IDを行動判定部23に通知する。
行動判定部23は、エレベータホール2内の各エレベータ利用者7の現在の状態を判定する機能を有するプログラムである。本実施の形態の場合、行動判定部23は、かかる「エレベータ利用者の現在の状態」として、行先階修正装置5の近傍に位置する第1の状態と、エレベータ8に乗車した第2の状態と、これら第1及び第2の状態以外の第3の状態とのいずれの状態にあるかをエレベータ利用者7ごとにそれぞれ判定する。そして行動判定部23は、第1の状態のエレベータ利用者7を検出した場合には、そのエレベータ利用者7の利用者IDを含む登録行先階表示指示を表示制御部24に与える。また行動判定部23は、第2の状態のエレベータ利用者7を検出した場合には、そのエレベータ利用者7の追跡を終了するよう追跡部22に指示を与える。
表示制御部24は、行先階修正装置5が表示する情報を制御する機能を有するプログラムである。実際上、表示制御部24は、行動判定部23から上述の登録行先階表示指示が与えられた場合には、対応するエレベータ利用者7の登録された行先階を含む図9について後述する登録行先階表示画面30を行先階修正装置5に表示させる。この登録行先階表示画面30は、エレベータ利用者7が行先階を修正する旨の操作を行った場合に、図10について後述する行先階修正画面31に切り替えられる。そして表示制御部24は、かかる行先階修正画面31を用いてそのエレベータ利用者7が行先階を修正した場合には、修正後の行先階と、そのエレベータ利用者7が乗車すべきエレベータのエレベータ番号とを含む図11について後述する乗車エレベータ案内画面32を行先階修正装置5に表示させる。
行先階修正部25は、エレベータ利用者7が行先階修正装置5を操作して、自己の行先階を登録された行先階から異なる行先階に修正した場合に、図4について後述する追跡利用者管理テーブル27に登録されているそのエレベータ利用者7の行先階を修正後の行先階に修正する機能を有するプログラムである。行先階修正部25は、エレベータ利用者7の行先階を修正した場合、そのエレベータ利用者7が乗車すべき新たなエレベータ8を決定し、決定したエレベータ8の識別子(エレベータID)と、修正後のそのエレベータ利用者7の行先階とを含む乗車エレベータ案内表示指示を表示制御部24に与える。この結果、表示制御部24によって上述の乗車エレベータ案内画面32(図11)が行先階修正装置5に表示される。
一方、登録者管理テーブル26は、予め行先階等が登録された各エレベータ利用者7の管理情報を管理するために利用されるテーブルであり、図3に示すように、利用者ID欄26A、氏名欄26B及び行先階欄26Cを備えて構成される。登録者管理テーブル26では、1つの行が行先階が登録された一人の登録者(エレベータ利用者)に対応する。
そして利用者ID欄には、対応する登録者の利用者IDが格納される。また氏名欄26Bには、予め登録されたその登録者の氏名が格納され、行先階欄26Cには、その登録者について登録された通常の行先階が格納される。
また追跡利用者管理テーブル27は、追跡部22(図2)が追跡中の各エレベータ利用者7の情報を管理するために利用するテーブルであり、図4に示すように、利用者ID欄27A、氏名欄27B、行先階欄27C、指定エレベータ欄27D、位置欄27E、移動軌跡欄27F及び特徴情報欄27Gを備えて構成される。追跡利用者管理テーブル27では、1つの行が追跡部22により追跡中の一人のエレベータ利用者7に対応する。
そして利用者ID欄27Aには、対応するエレベータ利用者7の利用者IDが格納され、氏名欄27Bには、登録者管理テーブル26から取得されたそのエレベータ利用者7の氏名が格納される。また行先階欄27Cには、登録者管理テーブル26から取得されたそのエレベータ利用者7の登録された行先階が格納される。
さらに指定エレベータ欄27Dには、そのエレベータ利用者7が個人認証装置3を通過する際にそのエレベータ利用者7に乗車するよう案内した(個人認証装置3の表示部3Bに表示させた)エレベータ8のエレベータIDが格納される。
また位置欄27Eには、追跡部22により最後に検出されたエレベータホール2内におけるそのエレベータ利用者7の位置(座標)が格納され、移動軌跡欄27Fには、過去一定期間内に追跡部22により順次検出されたそのエレベータ利用者7のエレベータホール2内の各座標(座標列)が、そのエレベータ利用者7の移動軌跡として格納される。さらに特徴情報欄27Gには、利用者検出部21により検出された、そのエレベータ利用者7の特徴を表す情報が格納される。
エレベータ行先管理テーブル28は、制御サーバ4が各エレベータ8の運行を制御するために利用されるテーブルであり、図5に示すように、エレベータID欄28A、利用者ID欄28B及び行先階欄28Cを備えて構成される。エレベータ行先管理テーブル28では、1つの行がエレベータホール2に存在する一人のエレベータ利用者7(追跡部22により追跡されている一人のエレベータ利用者7)に対応する。
そして利用者ID欄28Bには、そのときエレベータホール2に存在するエレベータ利用者7のうちの対応するエレベータ利用者7の利用者IDが格納され、行先階欄28Cには、そのエレベータ利用者7の行先階(行先階が修正された場合には修正後の行先階)が格納される。またエレベータID欄28Aには、そのエレベータ利用者7に対して案内した当該エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8のエレベータIDが格納される。
従って、図5の例の場合、例えば、「1」という利用者IDのエレベータ利用者7の行先階は「4」階で、「10」という利用者IDのエレベータ利用者7の行先階は「3」階であり、「1」というエレベータIDのエレベータ8に乗車するよう案内したことが示されている。従って、この場合、制御サーバ4は、「1」というエレベータIDのエレベータ8については、少なくとも「3」階及び「4」階にそれぞれ停車するよう運行を制御する。
(1-3)行先階修正支援機能に関する処理の流れ
図6は、かかる行先階修正支援機能に関連して本エレベータ運行管理システム1においてエレベータ利用者7ごとに実行される一連の処理の流れを示す。この処理は、エレベータ利用者7が個人認証装置3の非接触通信部3Aに個人認証カードを翳すことにより開始される(S1)。以下においては、このエレベータ利用者7を対象エレベータ利用者7と呼ぶものとする。
このとき個人認証装置3は、個人認証カードから、当該個人認証カードに登録された対象エレベータ利用者7の利用者IDを読み出し(S2)、読み出した利用者IDを制御サーバ4に通知する(S3)。
また、この利用者IDを受領した制御サーバ4の行先階決定部20(図2)は、その利用者IDに対応する対象エレベータ利用者7について登録されている対象エレベータ利用者7の管理情報(利用者ID、氏名及び行先階)を登録者管理テーブル26(図3)から読み出し、読み出した管理情報を追跡利用者管理テーブル27(図4)に新規に登録する(S4)。
そして行先階決定部20は、ステップS4で登録者管理テーブル26から読み出した対象エレベータ利用者7の登録された行先階に基づいて、そのとき対象エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8を決定し、そのエレベータ8のエレベータIDと、かかる行先階とを個人認証装置3に送信する(S5)。かくして、個人認証装置3は、これらエレベータID及び行先階を受信すると、これらエレベータID及び行先階を表示部3B(図2)に表示する(S6)。
また制御サーバ4の行先階決定部20は、上述のように決定した対象エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8(正確には、そのエレベータ8の制御装置)のエレベータIDと、対象エレベータ利用者7の利用者IDと、当該対象エレベータ利用者7の登録された行先階とをエレベータ行先管理テーブル28(図5)に登録する(S7)。
かくして制御サーバ4は、この後、このエレベータ行先管理テーブル28(図5)に登録された情報に基づいて、各エレベータ8がそれぞれそのエレベータ8についてエレベータ行先管理テーブル28に登録された各行先階に停車するよう各エレベータ8に設定する(S8)。
一方、制御サーバ4では、この後、対象エレベータ利用者7に対する追跡処理が開始され、カメラ6から送信される映像データに基づいて、図7について後述する追跡処理が実行される(S9)。そして、この後、その対象エレベータ利用者7がエレベータ8に乗り込むと、当該対象エレベータ利用者7に対する追跡処理が終了する(S10)。
図7は、図6のステップS9で制御サーバ4において実行される追跡処理の具体的な処理内容を示す。制御サーバ4では、まず、利用者検出部21(図2)が、カメラ6から与えられる映像データの中から1フレーム分の映像データを取得し(S20)、取得した映像データに基づくフレーム画像内の対象エレベータ利用者7を検出する(S21)。この際、利用者検出部21は、その対象エレベータ利用者7の特徴を検出し、検出した特徴を追跡利用者管理テーブル27(図4)における対象エレベータ利用者7に対応するレコード(行)の特徴情報欄27G(図4)に登録する。また利用者検出部21は、その対象エレベータ利用者7の利用者IDを含む追跡指示を追跡部22(図2)に出力する。
追跡部22は、利用者検出部21から与えられた追跡指示に応じて、対象エレベータ利用者7の特徴と、現在位置及び移動軌跡が登録されている場合にはこれらの情報とを追跡利用者管理テーブル27における対象エレベータ利用者7に対応するレコードの特徴情報欄27G(図4)、位置欄27E(図4)及び移動軌跡欄27F(図4)からそれぞれ読み出し、読み出したこれらの情報に基づいて、直前にステップS20又はステップS27で取得したIフレーム分の映像データに基づくフレーム画像内における対象エレベータ利用者7のエレベータホール2内の座標を算出し、算出結果に基づいて追跡利用者管理テーブル27を更新する(S22)。
具体的に、追跡部22は、対象エレベータ利用者7の移動軌跡の情報に基づいてかかるフレーム画像内の対象エレベータ利用者7の座標を推定し、推定結果と、その対象エレベータ利用者7の特徴とに基づいてかかるフレーム画像内の対象エレベータ利用者7を特定し、特定した対象エレベータ利用者7のエレベータホール2内の座標を算出する。ただし、追跡部22によるフレーム画像内の対象エレベータ利用者7の座標の算出方法としては、この他種々の方法を広く適用することができる。そして追跡部22は、このようにして算出した対象エレベータ利用者7の座標を追跡利用者管理テーブル27におけるその対象エレベータ利用者7に対応するレコード(行)の位置欄27Eに上書きすると共に、当該座標を移動軌跡欄27Fに追記する。そして追跡部22は、この後、その対象エレベータ利用者7の利用者IDを含む行動判定指示を行動判定部23(図2)に出力する。
行動判定部23は、追跡部22から与えられた行動判定指示に応じて、当該行動判定指示において指定された対象エレベータ利用者7の座標を追跡利用者管理テーブル27から取得し、取得した対象エレベータ利用者7の座標に基づいて、対象エレベータ利用者7と、行先階修正装置5(図1)との距離d1を算出する(S23)。なお、カメラ6の撮影映像における行先階修正装置5の座標は、予め行動判定部23に与えられているものとする。
また行動判定部23は、算出した距離d1が予め設定された閾値未満であるか否か(つまり上述した第1の状態にあるか否か)を判定する(S24)。そして行動判定部23は、この判断で否定結果を得た場合には、対象エレベータ利用者7の利用者IDを含む登録行先階表示指示を表示制御部24(図2)に出力する。この結果、図8について後述する行先階修正処理が制御サーバ4及び行先階修正装置5により実行される(S25)。
また行動判定部23は、ステップS24の判断で否定結果を得た場合には、対象エレベータ利用者7がエレベータ8に乗車したか否か(つまり上述した第2の状態にあるか否か)を判定する(S26)。この判定は、種々の方法により行うことができる。例えば、各エレベータ8の入口直前に仮想的な境界線K1(図1)を設定し、ステップS22で取得した対象エレベータ利用者7の座標が境界線K1を越えていずれかのエレベータの入口側に位置している場合にその対象エレベータ利用者7がエレベータ8に乗車したと判定するようにしてもよい。
そして行動判定部23は、この判断で否定結果を得た場合には、対象エレベータ利用者7の利用者IDを含む追跡指示を追跡部22に出力する。かくして、この追跡指示を受領した追跡部22は、カメラ6から与えられる映像データの中から1フレーム分の映像データを取得する(S27)。
そして制御サーバ4では、この後、ステップS26で肯定結果が得られるまでステップS22~ステップS27の処理が繰り返し実行される。そして、やがて行動判定部23がステップS26で肯定結果を得ると、行動判定部23は、対象エレベータ利用者7の追跡を終了すべき旨の指示を追跡部22に与えると共に、追跡利用者管理テーブル27及びエレベータ行先管理テーブル28に登録されている対象エレベータ利用者7に関するレコードを削除する(S28)。以上により、この一連の追跡処理が終了する。
他方、図8は、かかる追跡処理(図7)のステップS24で行動判定部23が肯定結果を得た場合に制御サーバ4及び行先階修正装置5により実行される行先階修正処理の流れを示す。
この場合、行動判定部23は、図7のステップS24で肯定結果を得ると、上述のように対象エレベータ利用者7の利用者IDを含む登録行先階表示指示を表示制御部24(図2)に出力する。また、この登録行先階表示指示が与えられた表示制御部24は、登録行先階表示指示において指定された利用者IDのエレベータ利用者(対象エレベータ利用者)7について追跡利用者管理テーブル27(図4)に登録されている氏名及び行先階と、その対象エレベータ利用者7に案内したエレベータ8のエレベータIDとを当該追跡利用者管理テーブル27から取得し、取得したこれらの情報を登録行先階情報として行先階修正装置5に送信する(S30)。
行先階修正装置5は、この登録行先階情報を受領すると、受領した登録行先階情報に基づいて、図9に示すような登録行先階表示画面30を表示装置5A(図2)に表示する(S31)この登録行先階表示画面30は、図9に示すように、登録情報表示フィールド30Aと、変更ボタン30Bとを備えて構成される。そして、登録情報表示フィールド30Aには、対象エレベータ利用者7について登録されている行先階と、対象エレベータ利用者7が個人認証装置3を通過する際に当該個人認証装置3の表示部3B(図2)に表示したその対象エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8のエレベータIDが表示される。
そして対象エレベータ利用者7は、自己の行先階を変更する場合、変更ボタン30Bにタッチする(S32)。この結果、行先階修正装置5の表示画面が図9の登録行先階表示画面30から図10に示す行先階修正画面31に切り替わる(S33)。
この行先階修正画面31は、修正後行先階指定フィールド31Aと、修正後行先階表示フィールド31B、変更ボタン31Cとを備えて構成される。そして修正後行先階指定フィールド31Aには、その建物の各階層にそれぞれ対応させて、対応する階層の階数が表示された複数の階層指定ボタン31AAが表示される。かくして対象エレベータ利用者7は、修正後行先階指定フィールド31Aに表示された階層指定ボタン31AAの中からそのとき行きたい階層の階数が表示された階層指定ボタン31AAにタッチする(S34)。これによりその階層指定ボタン31AAに対応する階層を修正後の行先階として指定することができる。
そしてこのように修正後の行先階が指定された場合、指定された修正後の行先階が修正後行先階表示フィールド31Bに表示される。そして対象エレベータ利用者7は、この後、変更ボタン31Cをタッチすることにより、行先階をそのとき修正後行先階表示フィールド31Bに表示されている階層に変更することができる。
このとき行先階修正装置5は、対象エレベータ利用者7により指定された修正後の行先階と、対象エレベータ利用者7の利用者IDとを含む行先階変更要求を制御サーバ4に送信する(S35)。
また、この行先階変更要求を受領した制御サーバ4の行先階修正部25(図2)は、追跡利用者管理テーブル27(図4)における対象エレベータ利用者7に対応するレコードの行先階欄27C(図4)に格納されている行先階を行先階変更要求において指定された行先階に書き換える(S36)。
さらに行先階修正部25は、このステップS36において、そのとき対象エレベータ利用者7が乗車すべき新たなエレベータ8を決定し、追跡利用者管理テーブル27における対象エレベータ利用者7に対応するレコードの指定エレベータ欄27D(図4)に格納されたエレベータIDをそのとき決定したエレベータ8のエレベータIDに書き換える。
そして行先階修正部25は、このとき決定した対象エレベータ利用者7が乗車すべき新たなエレベータ8のエレベータIDを表示制御部24(図2)に通知する。かくして、表示制御部24は、行先階修正部25から通知されたエレベータIDを行先階修正装置5に通知する(S37)。
かくして、このエレベータIDを受領した行先階修正装置5は、表示画面を行先階修正画面31(図10)から、図11に示すように、そのとき通知されたエレベータIDのエレベータ8に対象エレベータ利用者7が乗車すべき旨のメッセージが表示され乗車エレベータ案内画面32に切り替える(S38)。
また行先階修正部25は、ステップS36において、エレベータ行先管理テーブル28(図5)における対象エレベータ利用者7に対応するレコードのエレベータID欄28A(図5)に格納されているエレベータIDをステップS36で決定した対象エレベータ利用者7が乗車すべき新たなエレベータ8のエレベータIDに変更すると共に、そのレコードの行先階欄28C(図5)に格納されている行先階をステップS35で受領した行先階変更要求において指定された行先階に変更する。これにより、この変更後のエレベータ行先管理テーブル28に基づいて各エレベータ8の運行が制御サーバ4により制御される(S39)。
(1-4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のエレベータ運行管理システム1では、個人認証装置3で認証したエレベータ利用者7を追跡し、そのエレベータ利用者7が行先階修正装置5に近づいたときに、そのエレベータ利用者7について予め登録されている行先階が表示された登録行先階表示画面30が行先階修正装置5に表示されるため、エレベータ利用者が行先階を修正する際に自己について登録されている行先階を入力する必要がない。従って、本エレベータ運行管理システム1によれば、エレベータ利用者7が行先階を修正する際に要する時間を短縮化することができる。
また本エレベータ運行管理システム1では、エレベータ利用者7が行先階修正装置5に近づいた場合にのみ、そのエレベータ利用者7について登録された行先階を修正することができるため、エレベータ利用者7以外の他人がそのエレベータ利用者7の行先階を勝手に修正することができず、エレベータ利用者7の行先階が悪意ある他人によって勝手に変更されることを有効に防止することができる。
従って、本エレベータ運行管理システム1によれば、エレベータ利用者7の利便性及びエレベータ8の運行効率を向上させながら、エレベータ利用者7の行先階が他人によって勝手に変更されたことに起因するエレベータ利用者7間のトラブルの発生を防止することができる。
(2)第2の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付した図12に示すように、建物の中には、エレベータホール2を通って階層間の移動手段として設置された階段40に移動できるようになされたものがある。
このような建物に第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1を適用した場合、階段40を利用する者(以下、これを階段利用者と呼ぶ)が自己について登録された行先階をキャンセルしない限り、その階段利用者に案内されたエレベータ8が、当該階段利用者の乗車の有無に係らずその階段利用者について登録された行先階に停車するため、エレベータ8の運行効率が悪くなる問題がある。
しかしながら、階段利用者に対してエレベータ8の行先階の登録をキャンセルさせる操作を強要することは、階段利用者の利便性を損なうばかりでなく、階段40の利用を止めてエレベータ8を利用する動機付けともなり得るために、エレベータ8の利用者数が増加し、エレベータ8の運行効率が却って低下するおそれもある。
そこで、本実施の形態によるエレベータ運行管理システム41には、このような階段利用者については、当該階段利用者の手を煩わせることなく、その階段利用者についての行先階のエレベータ8への登録を自動的にキャンセル(その階段利用者に関するエレベータ8の制御をキャンセル)する機能を追加した上述の行先階修正支援機能が搭載されている。
なお、本実施の形態のエレベータ運行管理システム41と、第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1との違いは、この点だけであり、これ以外に関しては、本実施の形態のエレベータ運行管理システム41及び第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1の構成は全く同じである。
実際上、本実施の形態によるエレベータ運行管理システム41においても、制御サーバ42が、個人認証装置3を通過してエレベータホール2に入場してきたエレベータ利用者7をカメラ6からの映像データに基づいて追跡する。
そして制御サーバ42は、そのエレベータ利用者7が図12のように階段40の入口周辺に設定された仮想的な境界線K2を越えて階段40の入口に近づいた場合にそのエレベータ利用者7の追跡を終了し、追跡利用者管理テーブル27(図4)及びエレベータ行先管理テーブル28(図5)からそのエレベータ利用者7の情報を削除する。これにより、そのエレベータ利用者(階段利用者)7について対応するエレベータ8に登録された行先階がキャンセルされて、そのエレベータ8がその行先階に不要に停車することを防止することができる。
図13は、このような本実施の形態による行先階修正支援機能に関連して、図7について上述した追跡処理に代えて制御サーバ42により実行される本実施の形態による追跡処理の処理手順を示す。
この図13の追跡処理は、ステップS46の処理が第1の実施の形態による追跡処理のステップS26と異なるだけで、他のステップS40~ステップS45、ステップS47及びステップS48の処理は、第1の実施の形態による追跡処理のステップS20~ステップS25、ステップS27及びステップS28と同様に実行される。
そして本実施の形態の追跡処理のステップS46では、制御サーバ42の行動判定部23が、対象エレベータ利用者7がエレベータ8に乗車し、又は、階段40を利用するか否かを判断する(S46)。この場合における対象エレベータ利用者7がエレベータ8に乗車したか否かの判断方法は第1の実施の形態のステップS26と同様である。また対象エレベータ利用者7が階段40を利用するか否かの判断方法は、上述のようにその対象エレベータ利用者7が図12のように階段40の入口周辺に設定された境界線K2を越えて階段40の入口に近づいたか否かを判断することにより行う。
このステップS46の判断で否定結果が得られた場合には、ステップS47が図7のステップS27と同様に処理され、この後、ステップS42以降が図7のステップS22以降と同様に処理される。
またステップS46の判断で肯定結果が得られた場合には、ステップS48が図7のステップS28と同様に処理される。具体的には、行動判定部23が、対象エレベータ利用者7の追跡を終了すべき旨の指示を追跡部22に与えると共に、追跡利用者管理テーブル27及びエレベータ行先管理テーブル28に登録されている対象エレベータ利用者7に関するレコードを削除する。そして、この後、この追跡処理が終了する。
以上のように本実施の形態のエレベータ運行管理システム41では、エレベータ利用者7が階段40の入口周辺に設定された境界線K2を越えて階段40の入口に近づいた場合に、そのエレベータ利用者について登録されている行先階を自動的にキャンセルするため、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、階段利用者に起因するエレベータ8の運行効率の低下を確実に防止することができるという効果をも得ることができる。
(3)第3の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図14は、第3の実施の形態によるエレベータ運行管理システム50を示す。このエレベータ運行管理システム50は、図14(A)に示すように、エレベータホール2に行先階修正装置が設置されず、図14(B)に示すように、各エレベータ51の乗りかご内に行先階修正装置52が設定される点と、各エレベータ51の乗りかご内にも当該乗りかご内の俯瞰映像を撮影できるようにカメラ53が設置される点とが第1の実施の形態によるエレベータ運行管理システム1と相違する。
この場合、本実施の形態の制御サーバ54は、エレベータホール2に設置されたカメラ6からの映像データと、各エレベータ51の乗りかご内に設置されたカメラ53からの映像データとに基づいて、第1の実施の形態と同様にして各エレベータ利用者7を追跡する。
また本実施の形態の行先階修正装置は、従来からエレベータ51の乗りかご内に設置されている、エレベータ利用者7が行先階を登録するための行先階登録装置に行先階の修正機能を追加することにより構成されている。
図15は、かかる行先階修正装置52の操作部52Xの構成例を示す。この図15からも明らかなように、本実施の形態の行先階修正装置52の操作部52Xには、各階層にそれぞれ対応させて設けられた行先階登録ボタン52Aが設けられている。
行先階修正支援機能に関連して本実施の形態のエレベータ運行管理システム50において実行される一連の処理の流れは、図6~図8について上述した第1の実施の形態による処理の流れとほぼ同様である。ただし、本実施の形態では、図7のステップS25の処理(図8)の内容と、図7のステップS26において判定される追跡処理の終了条件とが異なる。
実際上、本エレベータ運行管理システム50では、制御サーバ54により追跡されている対象エレベータ利用者7がエレベータ51に乗車し、行先階修正装置52に近づいた場合に(図7のステップS24:YES)、図8のステップS30と同様にして、その対象エレベータ利用者7の利用者IDと、当該対象エレベータ利用者7について登録されている行先階とが制御サーバ54の表示制御部24(図2)から行先階修正装置52に通知される。
行先階修正装置52は、制御サーバ54から対象エレベータ利用者7の登録された行先階が通知されると、通知された行先階に対応する行先階登録ボタン52Aを所定の第1の発光方法(例えば、白色等の所定色で点灯)で発光させる。なお図15では、対象エレベータ利用者7の登録された行先階が5階であり、このため行先階修正装置52の5階に対応する行先階登録ボタン52Aが第1の発光方法で発光している状態を示している。
そしてエレベータ利用者7は、行先階を修正する場合、行先階修正装置52における修正後の行先階に対応する行先階登録ボタン52Aを押圧又はタッチする。この結果、押圧又はタッチされた行先階登録ボタン52Aが第1の発光方法と異なる第2の発光方法(例えば、赤色等の所定色で点滅)で発光される。なお図15では、対象エレベータ利用者7が3階を修正後の行先階とすべく、3階に対応する行先階登録ボタン52Aを押圧又はタッチしたことにより、その行先階登録ボタン52Aが第2の発光方法で発光している状態を示している。
また、このとき図8のステップS35と同様にして、対象エレベータ利用者7により指定された修正後の行先階と、対象エレベータ利用者7の利用者IDとを含む行先階変更要求が制御サーバ54に送信され、これらの情報に基づいて、制御サーバ54において図8のステップS36と同様にして対象エレベータ利用者7の行先階が修正される。
一方、本実施の形態による追跡処理の終了条件は、対象エレベータ利用者7が乗車したエレベータ51のドア51A(図14(B))が閉じたことである。従って、本実施の形態の場合、図7のステップS26では、対象エレベータ利用者7が乗車したエレベータ51のドア51Aが閉じたか否かを判断することになる。
以上の構成のエレベータ運行管理システム50によれば、エレベータ利用者7が行先階修正装置52を従来のエレベータ51に設置されている行先階登録装置の拡張として認識するため、エレベータ利用者7が違和感なく、従来と同じ要領で修正後の行先階を設定することができる。
(4)第4の実施の形態
第1の実施の形態によるエレベータ運行管理システム1がホテル等の宿泊施設に設置された場合について考える。この場合、その宿泊施設に宿泊する家族の構成員については、その家族が宿泊するフロアが行先階として登録されることになる。
このような状況において、その家族がレストランや大浴場などの宿泊階とは異なる階層の施設に行く場合、その家族の構成員は、エレベータに乗車するに際してそれぞれ自己の行先階を修正する必要がある。これは、その家族の構成員の一人だけが行先階を修正するだけでは、他の構成員について登録されている行先階に停車するようエレベータが制御されてしまい、エレベータの運用効率が低下するからである。
しかしながら、このような行先階の修正作業は、エレベータ利用者の立場からすれば面倒であり、また相応の時間を要する。このため上述のような状況下において、家族全員の行先階の修正が行われず、エレベータが無駄に運行される事態が発生することが予想される。
そこで本実施の形態においては、第1の実施の形態について上述した行先階修正支援機能に加えて、各エレベータ利用者7が所属する集団(例えば、家族)の情報をも予め登録するようにし、この情報と、撮影映像内における各エレベータ利用者7間の距離とに基づいて各エレベータ利用者7をグループ分けし、エレベータ利用者7の操作に応じて、そのエレベータ利用者7が属するグループ内のすべてのエレベータ利用者7の行先階を一括して修正する行先階修正支援機能(以下、これを集団行先階修正支援機能と呼ぶ)をエレベータ運行管理システムに搭載する。
図1において、60は全体として第4の実施の形態によるエレベータ運行管理システムを示す。このエレベータ運行管理システム60は、第1の実施の形態による行先階修正支援機能に加えて、上述した集団行先階修正支援機能を備える点が第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1(図1)と相違する。このため以下においては、第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1との相違点である本実施の形態による集団行先階修正支援機能についてのみ説明する。なお、集団行先階修正支援機能以外の点については、エレベータ運行管理システム60の機能及び構成は、第1の実施の形態のエレベータ運行管理システム1と同様である。
図16は、図3について上述した第1の実施の形態の登録者管理テーブル26に代えて、本実施の形態の制御サーバ61により保持される登録者管理テーブル63の構成を示す。この登録者管理テーブル63は、予め登録された各エレベータ利用者7の管理情報を管理するために利用されるテーブルであり、利用者ID欄63A、氏名欄63B、行先階欄63C及び集団ID欄63Dを備えて構成される。登録者管理テーブル63では、1つの行が一人のエレベータ利用者に対応する。
そして利用者ID欄63A、氏名欄63B及び行先階欄63Cには、それぞれ図3について上述した第1の実施の形態による登録者管理テーブル26の対応する欄(利用者ID欄26A、氏名欄26B又は行先階欄26C)に格納される情報と同様の情報が格納される。また集団ID欄63Dには、対応するエレベータ利用者7が所属する集団(上述の例では家族)に対して付与されたその集団に固有の識別子(集団ID)が格納される。
一方、図17は、図4について上述した第1の実施の形態の追跡利用者管理テーブル27に代えて、本実施の形態の制御サーバ61により保持される追跡利用者管理テーブル64の構成を示す。この追跡利用者管理テーブル64は、追跡部22(図2)が追跡中の各エレベータ利用者7の情報を管理するために利用するテーブルであり、利用者ID欄64A、氏名欄64B、行先階欄64C、指定エレベータ欄64D、位置欄64E、移動軌跡欄64F、特徴情報欄64G、集団ID欄64H及びグループID欄64Iを備えて構成される。追跡利用者管理テーブル64では、1つの行が追跡部22により追跡中の一人のエレベータ利用者7に対応する。
そして利用者ID欄64A、氏名欄64B、行先階欄64C、指定エレベータ欄64D、位置欄64E、移動軌跡欄64F及び特徴情報欄64Gには、図4について上述した第1の実施の形態による追跡利用者管理テーブル27の対応する欄(利用者ID欄27A、氏名欄27B、行先階欄27C、指定エレベータ欄27D、位置欄27E、移動軌跡欄27F又は特徴情報欄27G)に格納される情報と同様の情報が格納される。
また集団ID欄64Hには、対応するエレベータ利用者7が属する集団に対して付与された集団IDが格納され、グループID欄64Iには、そのエレベータ利用者7が属するグループに付与されたそのグループに固有の識別子(グループID)が格納される。なお、ここでの「グループ」とは、それぞれ追跡部22により追跡中の同一の集団に属する複数のエレベータ利用者7のうち、その時点で近くにいるエレベータ利用者7同士をまとめた部分的な集団を指す。
図18は、図7について上述した第1の実施の形態の追跡処理に代えて、本実施の形態の制御サーバ61により実行される追跡処理の処理手順を示す。この追跡処理よりも前の処理は、図6について上述した第1の実施の形態におけるステップS1~ステップS8の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
この図18に示すように、本実施の形態による追跡処理は、ステップS52及びステップS54の間にステップS53の処理が挿入されている点のみが図7の追跡処理と異なり、これ以外のステップS50~ステップS52及びステップS54~ステップS59の処理内容は図7のステップS20~ステップS22及びステップS23~ステップS28と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図19は、かかる本実施の形態による追跡処理のステップS53で制御サーバ61(図16)の行動判定部65(図2)により実行されるグループ情報更新処理の具体的な処理内容を示す。このグループ情報更新処理は、ステップS60~ステップS62の「グループの離脱」と、ステップS63~ステップS65の「グループの併合」との2つの処理から構成され、これらの処理がこの順番で実施される。
具体的に、図18について上述した追跡処理において処理がステップS53に進むと、行動判定部65によりこのグループ情報更新処理が開始される。そして行動判定部65は、まず、追跡利用者管理テーブル64(図17)を参照して、対象エレベータ利用者7と同じグループに属する他のエレベータ利用者7であって、そのとき追跡部22により追跡されている各エレベータ利用者7及びいずれのグループにも属さないエレベータ利用者7(追跡利用者管理テーブル64のグループID欄64IにグループIDが格納されていないエレベータ利用者7)と、対象エレベータ利用者7との距離のうちで最小の距離d2を算出する(S60)。
そして行動判定部65は、算出した距離d2が当該距離d2について予め設定された第1の閾値よりも大きいか否かを判断する(S61)。なお、この第1の閾値は、行動を共にするエレベータ利用者7同士がこれ以上離れて行動しないであろうと予測されるエレベータ利用者7間の最小の距離である。
従って、ステップS61の判断で否定結果を得ることは、対象エレベータ利用者7が、当該対象エレベータ利用者7と同じグループに属する他のエレベータ利用者7と行動を共にしていると推定することができる。かくして、このとき行動判定部65は、ステップS63に進む。
これに対して、ステップS61の判断で肯定結果を得ることは、対象エレベータ利用者7が、当該対象エレベータ利用者7と同じグループに属する他のエレベータ利用者7と行動を共にしていないと推定することができる。かくして、このとき行動判定部65は、追跡利用者管理テーブル64の対象エレベータ利用者7に対応するレコード(行)におけるグループID欄64IからグループIDを削除することにより、対象エレベータ利用者7をかかるグループから削除する(S62)。
続いて、行動判定部65は、対象エレベータ利用者7と同じ集団に属する他のエレベータ利用者7であって、そのとき追跡部22により追跡されている各エレベータ利用者7及びいずれのグループにも属さないエレベータ利用者7(追跡利用者管理テーブル64のグループID欄64IにグループIDが格納されていないエレベータ利用者7)と、対象エレベータ利用者7との距離のうちで最小の距離d3を算出する(S63)。
そして行動判定部65は、算出した距離d3が当該距離d3について予め設定された第2の閾値よりも大きいか否かを判断する(S64)。なお、この第2の閾値は、行動を共にするエレベータ利用者7同士はこれよりも近づいて行動するであろうと予測されるエレベータ利用者7間の最大の距離である。
従って、この判断で否定結果を得ることは、対象エレベータ利用者7が、当該対象エレベータ利用者7が属する集団内の他のエレベータ利用者7やいずれのグループにも属さないエレベータ利用者7と行動を共にしていないと推定することができる。かくして、このとき行動判定部65は、このグループ情報更新処理を終了する。
これに対して、ステップS64の判断で肯定結果を得ることは、対象エレベータ利用者7が、当該対象エレベータ利用者7が属する集団内の他のエレベータ利用者7又はいずれのグループにも属さないエレベータ利用者7であって、対象エレベータ利用者7に第2の閾値よりも近い位置にいるエレベータ利用者7と行動を共にしていると推定することができる。かくして、このとき行動判定部65は、対象エレベータ利用者7が属するグループと、当該対象エレベータ利用者7と第2の閾値未満の距離にいるかかるエレベータ利用者7が属するグループとを併合する(S65)。
具体的に、行動判定部65は、ステップS65において、併合後のグループのグループIDを併合前の各グループのグループIDのうちの最小のグループIDとするよう、追跡利用者管理テーブル64における対応する各エレベータ利用者7(対象エレベータ利用者7を含む)のグループID欄64Iの値を更新する。また行動判定部65は、併合後のグループを構成するすべてのエレベータ利用者7(対象エレベータ利用者7を含む)がいずれのグループにも属していない場合には、そのとき追跡利用者管理テーブル64に登録されているグループIDの最大値よりも1つ大きい値をかかる併合後のグループのグループIDとするよう、追跡利用者管理テーブル64における対応する各エレベータ利用者7(対象エレベータ利用者7を含む)のグループID欄64Iの値を更新する。
そして行動判定部は、この後、このグループ情報更新処理を終了する。
一方、図18について上述した本実施の形態の追跡処理のステップS56で実行される行先階修正処理の具体的な内容は、図8について上述した第1の実施の形態による行先階修正処理の内容とほぼ同様である。
ただし、本実施の形態の場合、図8のステップS30では、対象エレベータ利用者7の氏名及び登録された行先階と、その対象エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8のエレベータIDとに加えて、そのとき対象エレベータ利用者7と行動を共にしていると推定されたエレベータ利用者7(追跡利用者管理テーブル64の対応するグループID欄64Iに対象エレベータ利用者7のグループIDと同じグループIDが格納されたエレベータ利用者7)の氏名が制御サーバ61の表示制御部66(図2)から行先階修正装置62に登録行先階情報として送信される。
そして行先階修正装置62は、この登録行先階情報に基づいて、図9について上述した第1の実施の形態の登録行先階表示画面30に代えて、図20に示すような登録行先階表示画面67を表示する。
この登録行先階表示画面67は、登録情報表示フィールド67A、変更ボタン67B及びグループ一括変更ボタン67Cを備えて構成される。そして、登録情報表示フィールド67Aには、対象エレベータ利用者7について登録されている行先階と、対象エレベータ利用者7が個人認証装置3(図1)を通過する際に当該個人認証装置3の表示部3B(図1)に表示したその対象エレベータ利用者7が乗車すべきエレベータ8のエレベータIDと、対象エレベータ利用者7と行動を共にしていると推定された当該対象エレベータ利用者7と同じグループ内の他のエレベータ利用者7の名前とが表示される。
そして対象エレベータ利用者7は、自己の行先階を変更する場合には変更ボタン67Bにタッチし、登録情報表示フィールド67Aに表示された他のエレベータ利用者7の行先階をも併せて修正する場合にはグループ一括変更ボタン67Cにタッチする。
そして行先階修正装置62は、かかるグループ一括変更ボタン67Cがタッチされた場合には、図8のステップS35において、対象エレベータ利用者7が属するグループ内のすべてのエレベータ利用者7の行先階をも変更すべき旨のフラグ情報を含む行先階変更要求を制御サーバ61に送信する。
かくして、この行先階変更要求を受信した制御サーバ61では、続くステップS36において、行先階修正部68(図2)が、追跡利用者管理テーブル64(図17)における対象エレベータ利用者7に対応するレコードの行先階欄64C(図17)に格納されている行先階と、追跡利用者管理テーブル64(図17)における対象エレベータ利用者7と同じグループのエレベータ利用者7の行先階とを行先階変更要求において指定された行先階にそれぞれ書き換える。
以上のように本実施の形態のエレベータ運行管理システム60によれば、複数のエレベータ利用者7がグループで行動する場合に、そのうちの一人が行先階を修正する際に当該グループ内の他のエレベータ利用者7の行先階をも併せて修正することができる。従って、本エレベータ運行管理システム60によれば、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、エレベータ利用者7がグループで行動する際の各エレベータ利用者7の行先階の修正作業を容易化しながらエレベータの運用効率の低下を抑制できるという効果をも得ることができる。
(5)他の実施の形態
なお上述の第1~第4の実施の形態においては、エレベータ利用者が乗車すべきエレベータを表示のみによって案内したり、エレベータ利用者が登録された行先階を修正するためのユーザインタフェースを表示のみで構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、個人識別装置や行先階修正装置にスピーカ等からなる音声発生装置を搭載し、エレベータ利用者が盲目者の場合などには、そのエレベータ利用者に対して音声発生装置から音声によりそのエレベータ利用者が乗車すべきエレベータを案内したり、行先階修正装置において、対話方式でそのエレベータ利用者の行先階を修正できるようにしてもよい。
この場合には、例えば、個人認証カードに当該個人認証カードを所持するエレベータ利用者が盲目者であるか否かの情報を追加登録するようにし、この情報に基づいて制御サーバがそのエレベータ利用者が盲目者であるか否かを判断できるようにすればよい。
また上述の第1~第4の実施の形態においては、各エレベータ利用者の通常の行先階を予め制御サーバに登録するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、かかる通常の行先階を個人認証カードに登録しておくようにしてもよい。この場合には、かかる行先階を必要に応じて書き換えられるようにしておくと、勤務部署変更などによりエレベータ利用者の通常の行先階が変更された場合にも容易に対応することができる。
さらに上述の第1~第4の実施の形態においては、エレベータ利用者7の認証を個人認証カードにより行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、制御サーバ4,42,54,61が、登録されたエレベータ利用者7の顔を記憶しておき、カメラ6,53や、個人認証装置3に配置される個人認証用のカメラ(図示せず)から与えられる撮影映像の映像データに基づいて画像処理によりエレベータ利用者7を認証し、認証結果に基づいてエレベータ8,51の運行制御を行うようにしてもよい。
さらに上述の第2の実施の形態においては、対象エレベータ利用者7が階段40(図12)の入口周辺に設定された境界線K2(図12)を越えて階段40の入口に近づいた否かにより対象エレベータ利用者7が階段を利用することを検知するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、対象エレベータ利用者7が階段40の入口近傍においてカメラ6の撮影映像から居なくなったが否かに基づいて対象エレベータ利用者7が階段40を利用することを検知するようにしてもよく、対象エレベータ利用者7が階段40を利用することを検知する方法としては、この他種々の検知方法を広く適用することができる。
さらに上述の第2の実施の形態においては、対象エレベータ利用者7が階段40を利用することを検知した場合に当該対象エレベータ利用者7に関するエレベータ8の制御をキャンセルするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばエレベータホール2やその近傍にエスカレータが存在する場合にも第2の実施の形態の階段40のときと同様に本発明を適用することができる。要は、対象エレベータ利用者7がエレベータ8以外の上層階又は下層階への移動手段を利用することを検知した場合に当該対象エレベータ利用者7に関するエレベータ8の制御をキャンセルするようにすればよい。