以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述するプロジェクターの光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について、図1~図3を参照して説明する。図1は第1実施形態の液晶装置の構成を示す概略平面図、図2は図1に示すH-H’線に沿う液晶パネルの概略断面図、図3は第1実施形態の液晶装置における液晶パネルの電気的な構成を示す等価回路図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これらの基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10の基材10s及び対向基板20の基材20sは、それぞれ透明な例えば石英基板やガラス基板が用いられている。
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外縁に沿って配置されたシール部40を介して間隔を置いて貼り合わされている。シール部40において途切れた部分が注入口41となっており、真空注入法により注入口41から上記間隔に正又は負の誘電異方性を有する液晶が注入され、封止剤42を用いて注入口41が封入されている。なお、上記間隔に液晶を封入する方法は、真空注入法に限定されるものではなく、例えば、額縁状に配置されたシール部40の内側に液晶を滴下して、減圧下で素子基板10と対向基板20とを貼り合わせるODF(One Drop Fill)法を採用してもよい。
シール部40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール部40には、一対の基板の上記間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
シール部40の内側には、マトリックス状に配列した複数の画素Pを含む画素領域Eが設けられている。また、シール部40と画素領域Eとの間に画素領域Eを取り囲んで見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。なお、詳しくは後述するが、画素領域Eには表示に寄与する有効な画素Pの他に、ダミー画素DPが配置されている。
素子基板10には、複数の外部接続用端子104が配列した端子部が設けられている。該端子部に沿った第1の辺部とシール部40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、第1の辺部に対向する第2の辺部に沿ったシール部40と画素領域Eとの間に検査回路103が設けられている。さらに、第1の辺部と直交し互いに対向する第3及び第4の辺部に沿ったシール部40と画素領域Eとの間に走査線駆動回路102が設けられている。第2の辺部のシール部40と検査回路103との間に、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、第1の辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101と画素領域Eとの間のシール部40の内側に沿った位置に設けてもよい。
以降、第1の辺部に沿った方向をX方向とし、第3の辺部に沿った方向をY方向として説明する。また、対向基板20側から素子基板10側に向かう方向に沿って見ることを「平面視」または「平面的に」と言う。
図2に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光反射性の画素電極15及びスイッチング素子である薄膜トランジスター(以降、TFTと呼称する)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。素子基板10は、基材10sと、基材10s上に形成された画素電極15、TFT30、信号配線、配向膜18を含むものである。
素子基板10に対向配置される対向基板20は、基材20sと、基材20s上に形成された見切り部21と、これを覆うように成膜された平坦化層22と、平坦化層22を覆い、少なくとも画素領域Eに亘って設けられた共通電極として機能する対向電極23と、対向電極23を覆う絶縁膜24と、絶縁膜24を覆う配向膜25とを含むものである。
見切り部21は、図1に示すように画素領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの回路に入射する光を遮蔽して、これらの回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
平坦化層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して見切り部21を覆うように設けられている。このような平坦化層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
対向電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層22を覆うと共に、図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106に電気的に接続されている。上下導通部106は、素子基板10側の配線に電気的に接続している。上下導通部106は、対向電極23に対向電極電位が供給される給電点である。
絶縁膜24は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して対向電極23を覆うように設けられている。このような絶縁膜24の形成方法としては、平坦化層22と同様に、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。絶縁膜24の膜厚は例えば200nm程度である。
画素電極15側の配向膜18及び対向電極23側の配向膜25は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。配向膜18,25は、例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施された有機配向膜や、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。
このような液晶装置100は反射型であって、電圧無印加状態で画素Pの光の反射率が最大となるノーマリーホワイトモードや、電圧無印加状態で画素Pの光の反射率が最小となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。素子基板10と対向基板20とを含む液晶パネル110の光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
本実施形態では、以降、配向膜18,25として前述した無機配向膜と、負の誘電異方性を有する液晶とを用い、ノーマリーブラックモードの光学設計が適用された例について説明する。
次に図3を参照して、液晶パネル110の電気的な構成について説明する。
図3に示すように、画素領域Eには、例えば、1920×1080個の画素Pが配列されている。本実施形態では、X方向(画素領域Eの長辺方向)において画素Pが1920個並んでおり、Y方向(画素領域Eの短辺方向)において画素Pが1080個並んでいる場合について説明するが、画素Pの個数や配列形態はこれに限定されず、適宜変えることができる。
画素領域Eには、X方向に延びる複数の走査線3aと、複数の走査線3aと交差しY方向に延びる複数のデータ線6aとが設けられている。また、データ線6aと並行するようにY方向に延びる複数の容量線6cとが設けられている。複数の容量線6cは一つに纏められて固定電位が与えられる。本実施形態では、複数の容量電6cには対向電極23に与えられる対向電極電位(Vcom)と同じ固定電位が与えられている。
走査線3aとデータ線6aとの交差部に対応して画素Pが設けられている。各々の画素Pは、走査線3a及びデータ線6aに接続されたスイッチング素子である薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)30と、TFT30に接続された画素電極15と、容量線6cと画素電極15との間に設けられた保持容量16とを有している。これらの画素電極15、保持容量16、TFT30は、素子基板10上に形成されている。
走査線3a及びデータ線6aは、それぞれ画素領域Eの外側まで引き出されている。走査線3aは走査線駆動回路102と接続され、データ線6aはデータ線駆動回路101と接続されている。
走査線駆動回路102には、トリガー信号Dy及びクロック信号Clyが入力される。トリガー信号Dyは各走査線3aに対応した表示データにおける各フレームの開始タイミングを規定する信号である。クロック信号Clyは、各フレームの期間のうちで各走査線3aに走査信号を供給するタイミングを規定する信号である。走査線駆動回路102は、トリガー信号Dy及びクロック信号Clyに基づいて、複数の走査線3aに走査信号G1~G1080を供給し、線順次で選択状態とする。走査線3aが選択状態とされるとこの走査線3aに接続されたTFT30がオン状態となる。
データ線駆動回路101は、サンプリング信号出力回路131と、データ線6aにそれぞれ対応して設けられたデータ入力スイッチ132とを備えている。データ入力スイッチ132のソースには、データ信号Vidが供給されるデータ入力配線3bが接続されている。データ線駆動回路101は、走査線駆動回路102による走査線3aの選択動作に同期して、データ線6aにデータ信号Vidを供給する。
具体的には、サンプリング信号出力回路131には、制御信号Ctrl-xが入力される。サンプリング信号出力回路131は、制御信号Ctrl-xにしたがって、データ入力スイッチ132を順次オン状態とする。このとき、データ入力配線3bには、1本の走査線3aに接続された各画素用の階調データを含む直列データとしてデータ信号Vidが供給されており、オン状態のデータ入力スイッチ132を介してデータ線6aにデータ信号Vidが入力される。データ信号Vidは、選択状態の走査線3aに接続された画素PのTFT30を介して画素電極15に書き込まれる。
例えば、i行j列の画素Pに階調データを書き込む場合には、i行目の走査線3aが選択状態とされているタイミングで、データ線駆動回路101からj列目のデータ線6aにデータ信号Vid(階調データ)を供給する。これにより、i行j列の画素Pのオン状態のTFT30を介して画素電極15に階調データが書き込まれる。
画素電極15に書き込まれたデータ信号Vid(階調データ)は、画素電極15と対向電極23との間の液晶層50を含む液晶容量によって保持されると共に、容量線6cと画素電極15との間の保持容量16によって保持される。これによって、データ信号Vidに基づく表示が画素領域Eにおいて行われる。
なお、図3には表示に寄与する1920×1080個の画素Pを示したが、実際には、画素領域Eには、画素Pの電気的な構成と同じ構成を有するダミー画素DPが配置されている。ダミー画素DPの配置については後述する。
次に、液晶パネル110における画素Pの構造について図4を参照して説明する。図4は、第1実施形態の液晶装置における液晶パネルの画素の構造を示す概略断面図である。
図4に示すように、素子基板10の基材10s上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(下地絶縁膜)11aが形成され、第1絶縁膜11a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、第1ソース・ドレイン領域、接合領域、チャネル領域、接合領域、第2ソース・ドレイン領域を有するLDD(Lightly Doped Drain)構造が形成されている。
半導体層30aを覆うように第2絶縁膜(ゲート絶縁膜)11bが形成される。さらに第2絶縁膜11bを挟んでチャネル領域に対向する位置にゲート電極30gが形成される。
ゲート電極30gと第2絶縁膜11bとを覆うようにして第3絶縁膜11cが形成され、半導体層30aのそれぞれの端部と重なる位置に第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを貫通する2つのコンタクトホールCNT1,CNT2が形成される。
そして、2つのコンタクトホールCNT1,CNT2を埋めると共に第3絶縁膜11cを覆うようにAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の導電材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT1を介して第1ソース・ドレイン領域に繋がるソース電極31及びデータ線6aが形成される。同時にコンタクトホールCNT2を介して第2ソース・ドレイン領域に繋がるドレイン電極32(第1中継電極6b)が形成される。
次に、データ線6a及び第1中継電極6bと第3絶縁膜11cを覆って第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなる。そして、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT3が形成される。このコンタクトホールCNT3を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT3を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13aが形成される。第2層間絶縁膜13aも、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができる。
第2層間絶縁膜13aの第2中継電極7bと重なる位置にコンタクトホールCNT4が形成される。このコンタクトホールCNT4を被覆すると共に第2層間絶縁膜13aを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの遮光性の金属からなる導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aと第3中継電極16dとが形成される。
第1容量電極16aのうち、後に形成される誘電体層16bを介して第2容量電極16cと対向する部分の外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。また、第3中継電極16dのうちコンタクトホールCNT5と重なる部分を除いた外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。
絶縁膜13bと第1容量電極16aを覆って誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハフニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、又はこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いてもよい。平面的に第3中継電極16dと重なる部分の誘電体層16bはエッチング等により除かれる。誘電体層16bを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aに対向配置され、第3中継電極16dに繋がる第2容量電極16cが形成される。誘電体層16bと、誘電体層16bを挟んで対向配置された第1容量電極16aと第2容量電極16cとにより保持容量16が構成される。
次に、第2容量電極16cと誘電体層16bとを覆う第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、CMP処理などの平坦化処理が施される。第2容量電極16cのうち第3中継電極16dと接する部分に至るように第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。
このコンタクトホールCNT5を被覆し、第3層間絶縁膜14を覆うように例えばAlやAlを含む合金などからなる電極膜が成膜される。この電極膜をパターニングしてコンタクトホールCNT5を介して第2容量電極16c及び第3中継電極16dと電気的に繋がる画素電極15が形成される。
第2容量電極16cは第3中継電極16d、コンタクトホールCNT4、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT3、第1中継電極6bを介してTFT30のドレイン電極32と電気的に接続すると共に、コンタクトホールCNT5を介して画素電極15と電気的に接続している。
第1容量電極16aは複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(図3参照)における容量線6cとして機能している。第1容量電極16aには前述した固定電位が与えられる。これにより、TFT30のドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位(データ信号Vid)を第1容量電極16aと第2容量電極16cとの間において保持することができる。
このように素子基板10の基材10s上には、複数の配線が形成されているが、素子基板10における配線構造はこれに限定されるものではない。
画素電極15を覆うように配向膜18が形成され、液晶層50を介して素子基板10に対向配置される対向基板20の対向電極23を覆うように絶縁膜24と配向膜25とが形成される。前述したように、配向膜18,25は無機配向膜であって、酸化シリコンなどの無機材料を所定の方向から例えば斜め蒸着して柱状に堆積させた柱状体18a,25aの集合体からなる。このような配向膜18,25に対して負の誘電異方性を有する液晶分子LCは、配向膜面の法線方向に対して柱状体18a,25aの傾斜方向に3度~5度のプレチルト角度θpを有して略垂直配向(VA;Vertical Alignment)する。画素電極15と対向電極23との間に交流電圧(駆動電圧)を印加して液晶層50を駆動することによって液晶分子LCは画素電極15と対向電極23との間に生ずる電界方向に傾くように挙動(振動)する。言い換えれば、液晶分子LCはプレチルトの方向において振動する。
図5は無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図である。図5に示すように、画素領域Eは、表示に寄与する画素PがX方向とY方向とにマトリックス状に配置された表示領域E1と、表示領域E1を囲むようにして複数のダミー画素DPが配置されたダミー画素領域E2とにより構成されている。画素Pには画素電極15が配置され、ダミー画素DPにはダミー画素電極15dが配置されている。本実施形態において、平面視における画素P(画素電極15)及びダミー画素DP(ダミー画素電極15d)の形状は正方形であるが、これに限定されるものではない。
また、本実施形態では、表示領域E1をX方向及びY方向に挟んだ両側にそれぞれ3個ずつのダミー画素DPが配置されているが、ダミー画素DPの数はこれに限定されるものではない。ダミー画素DPは、表示領域E1をX方向及びY方向に挟んだ両側にそれぞれ少なくとも2個ずつ配置されることが、後述する液晶装置100の駆動方法を適用する観点から好ましい。
配向膜18,25となる柱状体18a,25aを形成するところの無機材料の斜め蒸着方向は、図5に示すように、例えば、素子基板10側では、破線の矢印で示したように右上から左下に向かって所定の角度θaでY方向と交差する方向である。素子基板10に対して対向配置される対向基板20側では、実線の矢印で示したように左下から右上に向かって所定の角度θaでY方向と交差する方向である。所定の角度θaは例えば45度である。なお、図5に示した斜め蒸着方向は、液晶装置100を対向基板20側から見たときの方向であり、図5に示した方位に限定されない。
液晶層50を駆動することにより、液晶分子LCの挙動(振動)が生じ、液晶層50と配向膜18,25との界面近傍に図5に示した破線あるいは実線の矢印で示した斜め蒸着方向に液晶分子LCのフロー(流れ)が生ずる。仮に液晶層50に正極性または負極性のイオン性不純物が含まれていると、イオン性不純物は液晶分子LCのフロー(流れ)に沿って、表示に寄与する画素Pが配置された表示領域E1の角部に向かって移動し偏在(凝集)するおそれがある。イオン性不純物の偏在により角部に位置する画素Pにおいて液晶層50の絶縁抵抗が低下すると、当該画素Pにおいて駆動電位の低下を招き、図5に示すような表示のムラや通電による焼き付き現象が顕著となる。特に、配向膜18,25に無機配向膜を用いた場合には、無機配向膜がイオン性不純物を吸着し易いので、有機配向膜に比べてイオン性不純物の偏在による表示のシミ、ムラや焼き付き現象が目立ち易い。
イオン性不純物は、液晶パネル110を製造する工程で用いられる例えば接着剤や封止剤42などの部材に含まれていたり、工程の環境から侵入したりすることが考えられる。また、本実施形態の液晶装置100は後述する投射型表示装置(プロジェクター)の光変調手段(液晶ライトバルブ)として用いられることから、直視型の液晶装置に比べて入射する照明光の強度が強い。液晶層50に強い強度の照明光が入射することにより有機化合物である液晶分子LCの末端基が外れてイオン性不純物となるおそれがある。
本実施形態の液晶装置100は、このようなイオン性不純物による表示不具合を低減すべく、イオン性不純物を表示領域E1からダミー画素DPが配置されたダミー画素領域E2へ、さらにダミー画素領域E2から外側へ掃き寄せ可能な本実施形態の液晶装置100の駆動方法を適用することができる回路構成を備えている。
<液晶装置の回路構成>
次に、液晶装置100の回路構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6は第1実施形態の液晶装置の電気的な構成を示すブロック図、図7は表示データ処理回路の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、本実施形態の液晶装置100は、液晶パネル110と、制御装置111と、電圧生成回路120とを備えている。液晶パネル110は、前述したように、例えばアクティブマトリックス駆動の反射型である。
電圧生成回路120は、DC/DCコンバーターなどを含んで構成される。電圧生成回路120は、制御装置111の制御のもと、液晶装置100の各部で使用する複数レベルの直流電圧を生成する。例えば、電圧生成回路120は、液晶パネル110の対向電極23に印加される対向電極電位(Vcom)を生成し、液晶パネル110に出力する。電圧生成回路120が、上記の各種電圧を生成する上で必要な電力は、例えば液晶装置100の内部又は外部の電源から供給される。
制御装置111は、表示データVideoや各種の制御信号の入力に対応して液晶パネル110の動作等を制御する回路モジュールにより構成される。制御装置111は、例えばフレキシブル基板(FPC)を介して液晶パネル110と接続されている。制御装置111は、制御回路112と、表示データ処理回路113と、クロック発生回路114と、フレームメモリー115と、DAコンバーター116と、を備えている。
制御回路112は、制御装置111及び電圧生成回路120を総合的に制御する。制御回路112は、液晶パネル110と接続されると共に、制御装置111内の表示データ処理回路113及びクロック発生回路114と接続されている。制御回路112にはタイミング信号発生回路117が内蔵されている。
クロック発生回路114は、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路117に出力する。タイミング信号発生回路117は、クロック発生回路114から入力されるクロック信号と、外部装置(図示省略)から供給される垂直同期信号VS、水平同期信号HS及びドットクロック信号Dclkとに基づいて、液晶パネル110を制御するための各種の制御信号を生成する。タイミング信号発生回路117は、生成した制御信号Ctrl-x、トリガー信号Dy、クロック信号Clyを液晶パネル110に対して出力する。またタイミング信号発生回路117は、垂直同期信号VS、水平同期信号HS、ドットクロック信号Dclk等を、タイミング調整しつつ表示データ処理回路113に対して出力する。
表示データ処理回路113は、制御回路112、フレームメモリー115、及びDAコンバーター116と接続されている。図7に示すように、表示データ処理回路113は、メモリーI/F151と、γ補正回路152と、オフセット電圧付与回路153と、記憶回路154とを備えている。
メモリーI/F151は、表示データ処理回路113に入力される表示データVideoをフレームメモリー115に順次記憶する。また、液晶パネル110に表示させるための表示データVideoをフレームメモリー115から読み出し、γ補正回路152に出力する。表示データVideoは、液晶パネル110における画素Pの階調を規定する画像信号である。表示データ処理回路113の各部は、表示データVideoを1フレーム単位で受け渡す。
γ補正回路152は、入力された表示データVideoに対して、液晶パネル110の表示特性に合わせるための階調補正を行う。γ補正後の表示データVideoは、オフセット電圧付与回路153に出力される。
オフセット電圧付与回路153は、γ補正回路152から入力される表示データVideoに対して、所定のオフセット電圧を付与し、補正表示データVideo1を生成する。オフセット電圧付与回路153は、生成した補正表示データVideo1をDAコンバーター116に出力する。表示データVideoに所定のオフセット電圧を付与するとは、画素電極15に印加される矩形波からなる交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)よりも高い電位あるいは低い電位にずらして設定する(オフセットする)ことを言う。
記憶回路154は、オフセット電圧付与回路153により参照されるLUT(ルックアップテーブル)を保持したROM(Read Only Memory)である。記憶回路154に保持されたLUTは、表示データVideoにおける画素Pごとのデータのアドレスと、付与すべき画素Pごとのオフセット電圧との関係を記録したテーブルである。換言すると、上記LUTは、液晶パネル110の画素領域Eにおける複数の画素Pのオフセット電圧の分布を記録したテーブルである。なお、上記LUTには、画素領域Eにおける複数のダミー画素DPのオフセット電圧の分布も同様に記録されている。
DAコンバーター116は、表示データ処理回路113(オフセット電圧付与回路153)から入力される補正表示データVideo1をアナログのデータ信号Vid(駆動電圧)に変換し、生成したデータ信号Vidを液晶パネル110に出力する。
本実施形態における垂直同期信号VSは、周波数を120Hz(周期8.33ミリ秒)とするが、本発明の適用範囲は垂直同期信号VSの周波数に限定されない。ドットクロック信号Dclkについては、表示データVideoのうち、1画素分が供給される期間を規定するものとする。つまり、制御回路112は、表示データVideoの供給に同期して各部を制御している。
なお、オフセット電圧付与回路153を備えた表示データ処理回路113を含む制御装置111は、本発明における交流電圧生成回路の一例である。
<液晶装置の駆動方法>
次に、本実施形態の液晶装置100の駆動方法について、図8~図14を参照して説明する。
本実施形態の液晶装置100の駆動方法は、複数の画素電極15が配置された表示領域E1と複数のダミー画素電極15dが配置されたダミー画素領域E2とを含む画素領域Eの面内において、対向電極電位(Vcom)を基準として中心電位が一方向に電位勾配を有するように設定された交流電圧を複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加する。
具体的には、図8は、第1実施形態の画素の等価回路図である。図8に示すように、画素Pは、画素電極15と対向電極23との間において電気的に直列に接続された液晶層50と絶縁膜24とを含む構成として表される。液晶層50は、電気的に抵抗成分R_LCDと、容量成分C_LCDとが並列接続された構成として表される。対向電極23を覆う絶縁膜24は、電気的に抵抗成分R_PSVと、容量成分C_PSVとが並列接続された構成として表される。ダミー画素DPの等価回路もまた画素Pと同様に表される。
図9は、第1実施形態の画素領域の複数の画素電極及びダミー画素電極に印加される交流電圧の中心電位における電位勾配を示す概略平面図である。本実施形態では、画素領域Eにおいて一方向としてのY方向に複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が電位勾配を有するようにオフセットされている。図9では、交流電圧の中心電位のオフセット状態をY方向に濃淡が変化するグラデーションとして表している。グラデーションの境界、すなわちオフセット電圧が同じ部分を一点鎖線の等電位線で示している。画素領域EのY方向における一方の端部をF1とし、画素領域EのY方向における他方の端部をF2とし、画素領域EのY方向における中心をF0として示している。F1,F2にはダミー画素DP(ダミー画素電極15d)が存在する。F0には画素P(画素電極15)が存在する。図9では、F1からF2の間において、ダミー画素電極15d及び画素電極15に印加される交流電圧の中心電位は、電位勾配を示すために段階的にオフセットされているように表されているが、連続的にオフセットされることが好ましい。
図10は、第1実施形態の交流電圧の中心電位のオフセット状態を示す図である。F1からF2の間において、ダミー画素電極15d及び画素電極15に印加される交流電圧の中心電位は、F0におけるオフセット電圧を「0」とし、F0を基準としてF1のオフセット電圧が+α(mV)、F2のオフセット電圧が-α(mV)となるように連続的にオフセットした例を示している。オフセット電圧αの絶対値を、100mV以上に設定することが、後述するイオン性不純物を掃き寄せる観点から好ましい。
図11は、第1実施形態のダミー画素電極及び画素電極に印加される交流電圧と対向電極に印加される対向電極電位との関係を示す図である。なお、図11では、F1及びF2におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の波形と、F0における画素電極15に印加される交流電圧の波形を示すものである。
図11に示すように、F0における画素電極15に印加される交流電圧は、矩形波であって、その中心電位V0は対向電極電位(Vcom)と同じであって例えば0(V)である。これに対して、F1におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位V01は、+α(mV)オフセットされている。F2におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位V02は、-α(mV)オフセットされている。
言い換えれば、液晶装置100は、電圧生成回路120から液晶パネル110に対向電極電位(Vcom)として例えば0Vの電位を供給する。その一方で、対向電極電位(Vcom)を基準として、画素領域Eの面内においてY方向に中心電位が電位勾配を有するように設定された交流電圧を制御装置111のDAコンバーター116から液晶パネル110に出力する。表示データ処理回路113は、記憶回路154に保持されたLUTを参照し、画素領域Eの各ダミー画素DP及び画素Pのそれぞれに予め設定されたオフセット電圧の値に応じて、γ補正回路152から入力される表示データVideoに対して、所定のオフセット電圧を付与し、補正表示データVideo1を生成してDAコンバーター116に出力する。DAコンバーター116は入力された補正表示データVideo1をアナログ信号に変換しデータ信号Vidとして液晶パネル110に出力する。
例えば、F1に位置するダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位V01を対向電極電位(Vcom)である0Vに対して+100mVオフセットした場合には、F1とF0との間に存在するダミー画素DP及び画素Pの数で+100mVを除した値のオフセット電圧を付与する。あるいは、+100mVのオフセット電圧の値を例えば20段階に分けて5mVずつ中心電位をオフセットした交流電圧をF1とF0との間に存在するダミー画素電極15d及び画素電極15に印加してもよい。F2に位置するダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位V02を対向電極電位(Vcom)である0Vに対して-100mVオフセットした場合も同様に、F0とF2との間に存在する画素P及びダミー画素DPの数で-100mVを除した値のオフセット電圧を付与する。あるいは、-100mVのオフセット電圧の値を例えば20段階に分けて-5mVずつ中心電位をオフセットした交流電圧をF0とF2との間に存在する画素電極15及びダミー画素電極15dに印加してもよい。
図12は、第1実施形態の画素電極あるいはダミー画素電極に印加される交流電圧と絶縁膜の表面電位との関係を示す図である。
図12に示すように、画素電極15あるいはダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が+α(mV)オフセットされていたとする。交流電圧の矩形波が対向電極電位(Vcom)に対して正極性であるとき、対向電極23を覆う絶縁膜24の界面間電圧は、対向電極電位(Vcom)が0Vであることから、絶縁膜24の表面電位V_psvと等しくなる。正極性となる半周期中に絶縁膜24を充電する方向に移動する電荷量をQ_psv(p)とすると、電荷移動量Q_psv(p)は、以下の数式(1)で与えられる。
R_LCDは図8に示したように液晶層50の電気的な抵抗成分であり、tは交流電圧における半周期(1フレーム)の時間である。
交流電圧の矩形波が対向電極電位(Vcom)に対して負極性であるとき、負極性となる半周期中に対向電極23を覆う絶縁膜24に充電する方向に移動する電荷量をQ_psv(n)とすると、電荷移動量Q_psv(n)は、以下の数式(2)で与えられる。
したがって、交流電圧の1周期あたりに絶縁膜24に充電する方向に移動する電荷量Q_psvは、正極性のときと負極性のときの電荷移動量の合計であることから、数式(3)によって与えられる。
充分な時間が経過して平衡な状態に達すると絶縁膜24の界面間電圧の交流電圧の1周期の平均値は、ある一定の値となって変化しなくなる。これは、上記数式(3)で示した交流電圧の1周期における絶縁膜24への充電する方向に移動する電荷量の総和Q_psv(p)+Q_psv(n)が「0」となることと等価である。
このことから上記数式(3)の右辺(2α+2V_psv)/R_LCD×tも「0」となる。すなわち、V_psv=αとなり、平衡な状態となった絶縁膜24の界面間電圧=表面電位V_psvは、この場合、+α(mV)となる。
同様にして、画素電極15あるいはダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が-α(mV)オフセットされていたとすると、平衡な状態となった絶縁膜24の表面電位V_psvは、この場合、-α(mV)となる。
画素電極15あるいはダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が対向電極電位(Vcom)に対してオフセットされていない場合は、DC成分が生じないことから、平衡な状態における絶縁膜24の表面電位V_psvは、対向電極電位(Vcomと同じ0Vとなる。
一方で、液晶層50に印加される電圧V_LCDは、中心電位に対して半周期(1フレーム)ごとに極性が反転するが、その絶対値|V_LCD|はいずれの極性においてもVとなる。すなわち、液晶層50には、前述したようにデータ信号Vidに基づく所定の電圧Vが印加される。
図13は、第1実施形態の画素電極電位と対向電極電位と絶縁膜の表面電位との関係を示す図である。図13に示すように、対向電極電位(Vcom)は固定電位であって例えば0Vである。これに対して、画素電極15やダミー画素電極15dに与えられる電位Vdriveは、F0を基準としてF1からF2の間でオフセット電圧±αに基づく電位勾配を有する。上述したように、対向電極23を覆う絶縁膜24の表面電位V_psvもまたF0における対向電極電位(Vcom)を基準としてオフセット電圧±αに基づく電位勾配を有することになる。したがって、実際に液晶層50に印加される電圧V_LCDの絶対値|V_LCD|=Vは、F1~F2の間で一定である。
図14は、第1実施形態のオフセット電圧とイオン性不純物の移動との関係を示す図である。上述したように、画素領域Eにおいて、画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位がY方向において電位勾配を有し、対向電極23を覆う絶縁膜24の表面電位V_psvもまた同様な電位勾配を有する(図13参照)。したがって、図14に示すように、F0とF1との間では、F0からF1に向かう横電界が生じ、これによって負極性のイオン性不純物(図14中ではマイナス(-)の符号で示す)は、F0側からF1側に向かって液晶層50中を移動することになる。また、F0とF2との間では、F0からF2に向かう横電界が生じ、これによって正極性のイオン性不純物(図14中ではプラス(+)の符号で示す)は、F0側からF2側に向かって液晶層50中を移動することになる。つまり、液晶層50において画素領域Eの中央側にイオン性不純物が存在していたとしても、当該イオン不純物を効率的に表示領域E1からダミー画素領域E2へ、さらにダミー画素領域E2の外側へ掃き寄せることができる。当然のことながら画素電極電位も正極性の期間、負極性の期間で絶縁膜24の表面電位V_psvと同様の電位勾配を有することになる。このため、液晶層50内のイオン性不純物の厚み方向の位置に係らずイオン性不純物を掃き寄せる上記効果を得ることができる。
上記第1実施形態の液晶装置100とその駆動方法によれば、複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)に対して画素領域Eの面内において一方向としてのY方向に電位勾配を有するようにオフセットした交流電圧を印加する。つまり交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)に対してオフセットすると、オフセット量に応じた直流成分(DC成分)が生ずる。対向電極23は絶縁膜24で覆われているため、画素電極15あるいはダミー画素電極15dと対向電極23との間に交流電圧を印加すると、DC成分の電荷が絶縁膜24に充電される。充電された電荷に応じて絶縁膜24に表面電位V_psvが生ずる。つまり、画素領域Eの面内において、画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位がY方向において電位勾配を有し、絶縁膜24の表面にもY方向に電位勾配が生ずるため、液晶層50中に存在するイオン性不純物は、Y方向の電位勾配に沿って液晶層50中を移動することになる。正極性のイオン性不純物は当該電位勾配における対向電極電位(Vcom)よりも低い電位側に移動し、負極性のイオン性不純物は当該電位勾配における対向電極電位(Vcom)よりも高い電位側に移動する。すなわち、液晶層50中のイオン性不純物を、Y方向に沿って画素領域Eの外側に掃き寄せることが可能な液晶装置100の駆動方法を提供することができる。なお、複数の画素電極15やダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)に対してオフセットしても、DC成分は絶縁膜24に充電され、液晶層50には交流電圧に応じた実効的な駆動電圧Vが印加されるので、DC成分に起因する例えば焼き付きやフリッカーなどの表示不具合は発生し難い。また、絶縁膜24に充電されたDC成分は、液晶装置100の駆動を止めると駆動回路を通じて放電される。
なお、本実施形態においてF0における画素電極15に印加される交流電圧の中心電位V0を対向電極電位(Vcom)と同電位としたが、同電位としなくても平衡状態における絶縁膜24の表面電位V_psvが変化するだけで同様の効果となることは、以上の説明から自明である。制御装置111からのデータ信号Vid(駆動電圧)は、液晶パネル110内部のトランジスターを介して画素電極まで伝達する際にトランジスターのフィードスルーなどにより、無視できない大きさのオフセットを生じることがある。この場合もF0における画素電極15に印加される交流電圧の中心電位V0と対向電極電位(Vcom)を同電位としなくてよいから、補正表示データVideo1の生成時に利用するLUT(ルックアップテーブル)設定時にトランジスターのフィードスルーなどによるオフセット分を考慮する必要がなくなる。
また、本実施形態の液晶装置100は、反射型であって、画素電極15(ダミー画素電極15d)は、光反射性を有する例えばAl(アルミニウム9やその合金などを用いて形成される。一方で対向電極23は例えばITOなどの透明導電膜を用いて形成される。したがって、電極材料が異なるすなわち仕事関数が異なる一対の電極間に液晶層50が挟持されることにより、対向電極電位(Vcom)が変動するおそれがあるが、対向電極23を覆う絶縁膜24の材料構成を工夫することで仕事関数に係る対向電極電位(Vcom)の変動を抑えることも可能である。
次に、液晶装置100の駆動方法について、変形例1~変形例5を挙げて説明する。
(変形例1)
画素領域Eにおいて、複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位に電位勾配を付与する方向は、図9に示したようにY方向であることに限定されない。図15は変形例1の画素領域の複数の画素電極及びダミー画素電極に印加される交流電圧の中心電位における電位勾配を示す概略平面図である。図15に示すように、例えば、画素領域Eの対角線上における右上の角部をF1とし、左下の角部をF2とし、対角線上における中央をF0とする。F1におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)に対して+α(mV)オフセットする。F2におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位を対向電極電位(Vcom)に対して-α(mV)オフセットする。F0における画素電極15に印加される交流電圧の中心電位は対向電極電位(Vcom)と同じで0Vとする。さらに、画素領域Eの面内においてX方向に対して角度θaで交わる方向Fにおいて、中心電位のオフセット電圧が+α(mV)から-α(mV)の間で変化するように、交流電圧の中心電位を段階的あるいは連続的にオフセットする。なお、図15には図9と同様にしてグラデーションの境界、すなわちオフセット電圧が同じ部分を一点鎖線の等電位線で示している。
これによれば、方向Fは、図5に示した液晶層50における液晶分子LCの1軸垂直配向方向(プレチルトの方位)に合致する。したがって、交流電圧の中心電位の電位勾配による横電界の作用に加えて、液晶層50を駆動することで生ずる液晶分子LCのフロー(流れ)が作用することから、液晶層50中のイオン性不純物を表示領域E1からダミー画素領域E2へ、さらにダミー画素領域E2の外側へとより効率的に掃き寄せることができる。なお、角度θaは例えば45度である。つまり、変形例1は、液晶分子LCのプレチルトの方位と交流電圧の中心電位に電位勾配を設ける方向とを合致させた例である。なお、液晶分子LCのプレチルトの方位は、これに限定されるものではない。
(変形例2)
画素領域Eの面内において、絶縁膜24は、対向電極23だけを覆うように設けられることに限定されない。図16は変形例2の画素の等価回路図である。変形例2の画素Pは、画素電極15と対向電極23との間において電気的に直列に接続された絶縁膜17、液晶層50、絶縁膜24を含む構成として表される。絶縁膜17は画素電極15を覆って形成され、絶縁膜24は対向電極23を覆って形成される。対向電極23には固定電位である例えば0Vの対向電極電位(Vcom)が与えられている。絶縁膜17,24は、例えば酸化シリコン膜からなり、それぞれの膜厚は例えば100nmである。以降、対向電極23側の絶縁膜24を第1絶縁膜と呼び、画素電極15側の絶縁膜17を第2絶縁膜と呼ぶこととする。前述したように、液晶層50は、電気的に抵抗成分R_LCDと、容量成分C_LCDとが並列接続された構成として表される。対向電極23を覆う第1絶縁膜は、電気的に抵抗成分R_PSV1と、容量成分C_PSV1とが並列接続された構成として表される。画素電極15を覆う第2絶縁膜は、電気的に抵抗成分R_PSV2と、容量成分C_PSV2とが並列接続された構成として表される。ダミー画素DPの等価回路もまた画素Pと同様に表される。
このような画素P及びダミー画素DPの構成において、例えば、図9に示したように、画素領域EのY方向に沿ったF1からF2の間において、中心電位が電位勾配を有するように交流電圧を複数のダミー画素電極15d及び画素電極15に印加する。
図17は変形例2の交流電圧と第1絶縁膜及び第2絶縁膜の表面電位との関係を示す図である。対向電極23側に第1絶縁膜を設け、画素電極15側に第2絶縁膜を設けた場合の、第1絶縁膜の表面電位V_psv1と、第2絶縁膜の表面電位V_psv2とについて、図17を参照して説明する。
図17に示すように、例えば、画素電極15あるいはダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が+α(mV)オフセットされていたとする。対向電極23を覆う第1絶縁膜(絶縁膜24)の界面間電圧は、前述したように、第1絶縁膜の表面電位V_psv1と等しくなる。画素電極15を覆う第2絶縁膜17の界面間電圧をV_psv2とする。交流電圧の矩形波が対向電極電位(Vcom)に対して正極性であるとき、この半周期中に第1絶縁膜を充電する方向に移動する電荷量をQ_psv1(p)、第2絶縁膜(絶縁膜17)を充電する方向に移動する電荷量をQ_psv2(p)とすると、正極性時において第2絶縁膜の表面電位は、V+α-V_psv2となるから、電荷Q_psv1(p),Q_psv2(p)は、以下の数式(4)で与えられる。
R_LCDは図16に示したように液晶層50の電気的な抵抗成分であり、tは交流電圧における半周期(1フレーム)の時間である。
同様にして交流電圧の矩形波が対向電極電位(Vcom)に対して負極性であるとき、第1絶縁膜を充電する方向に移動する電荷量をQ_psv1(n)とし、第2絶縁膜を充電する方向に移動する電荷量をQ_psv2(n)とすると、負極性時において第2絶縁膜の表面電位は、-V+α-V_psv2=-(V-α+V_psv2)となるから、電荷Q_psv1(n),Q_psv2(n)は、以下の数式(5)で与えられる。
したがって、交流電圧の1周期あたりにそれぞれの絶縁膜を充電する方向に移動する電荷量Q_psvは、正極性のときの電荷移動量と負極性のときの電荷移動量の合計であることから、数式(6)によって与えられる。
充分な時間が経過して平衡な状態に達すると第1絶縁膜の界面間電圧V_psv1、第2絶縁膜の界面間電圧V_psv2の交流電圧の1周期の平均値がある一定の値となって変化しなくなる。これは、数式(6)で示した交流電圧の1周期における絶縁膜への充電する方向に移動する電荷量の総和、すなわち、Q_psv1(p)+Q_psv1(n)=Q_psv2(p)+Q_psv2(n)が「0」となることと等価である。
このことから上記数式(6)の右辺(2α-2V_psv1-2V_psv2)/R_LCD×tも「0」となる。すなわち、V_psv1+V_psv2=α、かつ、本変形例2においては、第1絶縁膜と第2絶縁膜は、同質、同膜厚であるからV_psv1=V_psv2となり、平衡な状態となったときの第1絶縁膜と第2絶縁膜の界面間電圧(表面電位)であるV_psv1、V_psv2は、前述した実施形態のように対向電極23に絶縁膜24を設けた場合の半分の+α/2(mV)となる。
同様にして、画素電極15あるいはダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位が-α(mV)オフセットされていたとすると、平衡な状態となったときの各絶縁膜の界面間電圧(表面電位)V_psv1=V_psv2は、この場合、半分の-α/2(mV)となる。
図18は変形例2の画素電極電位、対向電極電位、第1絶縁膜及び第2絶縁膜の表面電位の関係を示す図である。図18に示すように、対向電極電位(Vcom)は固定電位であり例えば0Vである。対向電極23を覆う第1絶縁膜の表面電位V_psv1は、F1からF2の間において、F0の対向電極電位(Vcom)を基準として±α/2(mV)の電位勾配を有する。画素電極電位Vdriveは、F1からF2の間において、F0を基準としてオフセット電圧±α(mV)の電位勾配を有する。一方で、画素電極15あるいはダミー画素電極15dを覆う第2絶縁膜の表面電位V_psv2は、F1からF2の間において、F0を基準として±α/2(mV)の電位勾配を有する。したがって、実際に液晶層50に印加される電圧V_LCDの絶対値|V_LCD|=Vは、F1からF2の間で一定となる。
変形例2におけるF0を基準とした電位勾配は±α/2(mV)であって、対向電極23だけを絶縁膜24で覆う場合に比べて、電位勾配の値が半分になる。したがって、画素領域EにおいてY方向における横電界が小さくなることからイオン性不純物を表示領域E1よりも外側に掃き寄せる力は弱くなるが、対向電極23側の第1絶縁膜における表面電位と、画素電極15側における第2絶縁膜における表面電位とのバランスを図ることができる点で、表示に与える影響を小さくすることができる。
なお、画素電極15側だけに絶縁膜を設ける構成では、上述したように、当該絶縁膜に充電される電荷によって生ずる界面間電圧の方向は、交流電圧が正極性のときに高電位VHから対向電極電位(Vcom)に向かう方向となり、交流電圧が負極性のときに対向電極電位(Vcom)からマイナス(-)に向かう方向になることから、平衡な状態のときの表面電位V_psvは電位勾配を有しない。つまり、画素電極15側だけに絶縁膜を設ける構成では、本発明を成り立たせることができない。
(変形例3)
ダミー画素電極15dや画素電極15に印加される交流電圧の中心電位のF1からF2の間における電位勾配は必ずしも一定でなくてもよい。図19は変形例3の画素領域におけるダミー画素電極や画素電極に印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧を示すグラフである。図19に示すように、例えば、画素領域Eのうち表示領域E1の画素電極15に印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧をF0を基準として±α(mV)とする。そして、ダミー画素領域E2におけるダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧を±α(mV)よりも大きな±β(mV)とする。つまり、ダミー画素領域E2における交流電圧の中心電位の電位勾配の大きさを表示領域E1における交流電圧の電位勾配の大きさよりも大きくする。これによれば、イオン性不純物の移動速度は、横電界における電位勾配の大きさに依存することから、表示領域E1からダミー画素領域E2に向かってより効率的にイオン性不純物を掃き寄せることができる。
(変形例4)
ダミー画素電極15dや画素電極15に印加される交流電圧の中心電位のF1からF2の間における電位勾配は必ずしも一定でなくてもよい。図20は変形例4の画素領域におけるダミー画素電極や画素電極に印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧を示すグラフである。図20に示すように、例えば、画素領域Eのうち表示領域E1とダミー画素領域E2の一部において、画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧をF0を基準として±α(mV)とする。そして、ダミー画素領域E2における残りのダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位のオフセット電圧を±α(mV)よりも大きな±β(mV)として一定とする。つまり、ダミー画素領域E2における外周側に位置するダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位の大きさを他の領域における交流電圧の電位勾配の大きさよりも大きくする。これによれば、ダミー画素領域E2の外周側に掃き寄せられたイオン性不純物は、当該外周側において横電界が生じ難い状態となっているため、表示領域E1に向かって戻り難くなる。つまり、一旦掃き寄せられたイオン性不純物の表示領域E1側への再拡散を抑えることができる。
なお、上記変形例3及び上記変形例4において、オフセット電圧αの絶対値を例えば100mVとしたとき、オフセット電圧βの絶対値としては、例えば3倍の300mVである。オフセット電圧βにおける絶対値の設定は、ダミー画素DPにおいて絶縁膜による直流成分排除の限界に伴う光漏れが生じない範囲とする。
(変形例5)
画素領域Eにおいて、ダミー画素電極15dや画素電極15に中心電位が一方向に電位勾配を有するように、対向電極電位(Vcom)を基準としてオフセット電圧が付与された交流電圧を印加する方法は、表示が開始されてからすぐに行われることに限定されない。例えば、表示を開始してから所定の時間経過するまでの間に、電位勾配がゼロから所定の値に徐々に変化するように交流電圧を印加するとしてもよい。
この方法によれば、当該電位勾配の与え方により対向電極23を覆う絶縁膜24の表面電位V_psvが徐々に変化することから、表面電位V_psvの急激な変化による例えばフリッカーなどの表示不具合の発生を抑制することができる。なお、上記所定の時間としては、例えば2分~3分である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液晶装置とその駆動方法について、図21~図23を参照して説明する。図21は第2実施形態の液晶装置における対向電極電位の電位勾配の状態を示す概略平面図、図22は第2実施形態の画素電極電位及び対向電極電位の電位勾配の状態を示す図であり、図23は第2実施形態の対向電極電位のオフセット電圧とイオン性不純物の移動の状態とを示す図である。
第2実施形態の液晶装置は、上記第1実施形態の液晶装置100に対して対向電極23を覆う絶縁膜24を無くすと共に、画素領域Eにおけるダミー画素電極15dや画素電極15に印加される交流電圧において、基準となる対向電極電位(Vcom)を固定電位とせずに電位勾配を与えるものである。したがって、上記第1実施形態の液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態の液晶装置200は、素子基板10と対向基板20との間に液晶層50が挟持されたものである。素子基板10は、基材10sと、基材10sに形成された画素電極15と、画素電極15をスイッチング制御するTFT30と、TFT30に接続された各種の信号配線と、画素電極15を覆う配向膜18とを含むものである。対向基板20は、基材20sと、基材20sに形成された見切り部21と、平坦化層22と、対向電極23と、対向電極23を覆う配向膜25とを含むものである。上述したように、対向電極23と配向膜25との間に絶縁膜24は形成されていない。また、液晶装置200は、上記第1実施形態の液晶装置100と同じ回路構成を有するものである。すなわち、液晶装置200は、オフセット電圧付与回路153を有する表示データ処理回路113を含む制御装置111を備えている(図6及び図7参照)。
本実施形態の液晶装置200の駆動方法は、複数の画素電極15が配置された表示領域E1と複数のダミー画素電極15dが配置されたダミー画素領域E2とを含む画素領域Eの面内において、基準電位に対して一方向に電位勾配を有する対向電極電位を対向電極23に印加し、当該対向電極電位を基準とした交流電圧を複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加する。
具体的には、図21に示すように、液晶装置200において、対向電極23は平面視でX方向に長い長方形であって、その四隅には、給電点としての上下導通部106A,106B,106C,106Dが設けられている。図面上において左上と右上の上下導通部106A,106Bが本発明の第1給電点の一例であり、左下と右下の上下導通部106C,106Dが本発明の第2給電点の一例である。つまり、対向電極23においてY方向の一方の端部側に第1給電点としての上下導通部106A,106Bが設けられ、Y方向の他方の端部側に第2給電点としての上下導通部106C,106Dが設けられている。
画素領域EにおいてY方向に沿った一方の端部をJ1とし、他方の端部をJ2とする。J1とJ2とを結ぶ線分の中央をJ0とする。J1及びJ2にはダミー画素DP(ダミー画素電極15d)が存在する。J0には画素P(画素電極15)が存在する。
本実施形態では、J0における対向電極電位を基準電位である例えば0Vとする。J0では0Vを中心電位とした交流電圧を画素電極15に印加する。J1では、J0を基準として0Vから+α(mV)オフセットした第1対向電極電位を与える。そして第1対向電極電位を中心電位とする交流電圧をダミー画素電極15dに印加する。J2では、J0を基準として0Vから-α(mV)オフセットした第2対向電極電位を与える。そして第2対向電極電位を中心電位とする交流電圧をダミー画素電極15dに印加する。これによって、J1からJ2の間において対向電極電位に0Vを基準とする±α(mV)の電位勾配を発生させる。同じく、J1からJ2の間においてダミー画素電極15d及び画素電極15に印加される交流電圧の中心電位にJ0を基準として±α(mV)のオフセット電圧を付与して電位勾配を発生させる。
より具体的には、電圧生成回路120(図6参照)は、上記電位勾配に基づいて、第1給電点としての上下導通部106A,106Bに第1対向電極電位を出力し、第2給電点としての上下導通部106C,106Dに第1対向電極電位と異なる第2対向電極電位を出力する。その一方で、画素領域Eの面内においてY方向に中心電位が電位勾配を有するように設定された交流電圧を制御装置111のDAコンバーター116から液晶パネル110に出力する。表示データ処理回路113は、記憶回路154に保持されたLUTを参照し、画素領域Eの各ダミー画素DP及び画素Pのそれぞれに予め設定された中心電位のオフセット電圧の値に応じて、γ補正回路152から入力される表示データVideoに対して、所定のオフセット電圧を付与し、補正表示データVideo1を生成してDAコンバーター116に出力する。DAコンバーター116は入力された補正表示データVideo1をアナログ信号に変換しデータ信号Vidとして液晶パネル110に出力する。
平面視でX方向に長い長方形の対向電極23に対して、第1給電点としての上下導通部106A,106Bに第1対向電極電位(+α(mV))を出力し、第2給電点としての上下導通部106C,106Dに第2対向電極電位(-α(mV))を出力すると、実際には、対向電極23の電気抵抗により、画素領域Eにおける対向電極電位の分布は、図21にグラデーションで示したように、等電位線がY方向に一定の間隔とならない。各上下導通部106A,106B,106C,106Dから最も離れた位置では、J0からJ1へ行くほど、同じくJ0からJ2に行くほど等電位線の間隔が広がると考えられる。そうすると、表示データ処理回路113における記憶回路154に記録されるLUTも上記等電位線で示された対向電極電位の電位勾配に対応したオフセット電圧を予め設定する必要がある。したがって、オフセット電圧の設定が複雑化するおそれがあるため、対向電極23の電気抵抗を下げることが好ましい。対向電極23は透明導電膜により構成されることから、電気抵抗を低下させようとして単純に透明導電膜の膜厚を厚くすると、対向電極23の透過率が低下して表示における明るさに影響を及ぼす。それゆえに、対向電極23におけるダミー画素領域E2もしくはダミー画素領域E2よりも外側に電気抵抗を下げる補助電極(補助配線)を設けることが好ましい。なお、図21では、一点鎖線にて対向電極電位の等電位線を表し、対向電極電位の電位勾配をグラデーション(濃淡)で表現したが、対向電極電位は、Y方向に連続的に変化する状態であることが好ましい。
図22に示すように、対向電極電位(Vcom)はJ1からJ2の間においてJ0を基準とした電位勾配を有する。同様に、画素電極電位Vdriveも画素領域EのY方向においてJ1からJ2の間で電位勾配を有することになる。複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加される交流電圧の中心電位がオフセットされても、同様に対向電極電位(Vcom)がオフセットされることから、交流電圧を印加することに伴ってDC成分は生じない。ゆえに、液晶層50には絶対値が|V_LCD|で示される駆動電圧Vが印加される。
そして、図23に示すように、画素領域Eにおいて、J0からJ1の間では対向電極電位は0Vから+α(mV)にオフセットされ、J0からJ2の間では対向電極電位は0Vから-α(mV)にオフセットされる。また、画素領域Eの複数の画素電極15及びダミー画素電極15dには、オフセットされた対向電極電位を基準とした交流電圧が印加される。液晶層50に含まれる負極性のイオン性不純物はJ0からJ1側に向かう横電界によって表示領域E1からダミー画素領域E2へ、そしてダミー画素領域E2から外側へ掃き寄せられる。同様に、液晶層50に含まれる正極性のイオン性不純物はJ0からJ2側に向かう横電界によって表示領域E1からダミー画素領域E2へ、そしてダミー画素領域E2から外側へ掃き寄せられる。
上記第2実施形態の液晶装置200とその駆動方法によれば、画素領域Eの面内において、対向電極23に基準電位(例えば0V)に対して一方向としてのY方向に電位勾配が与えられる。電位勾配が与えられた対向電極電位(Vcom)を基準とした交流電圧を複数の画素電極15及びダミー画素電極15dに印加すると、画素電極電位Vdriveにもまた電位勾配が与えられる。液晶層50中に存在するイオン性不純物は、Y方向の電位勾配に沿って液晶層50中を移動することになる。正極性のイオン性不純物は当該電位勾配における基準電位よりも低い電位側に移動し、負極性のイオン性不純物は当該電位勾配における基準電位よりも高い電位側に移動する。すなわち、液晶層50中のイオン性不純物を、Y方向に沿って表示領域E1の外側に掃き寄せることが可能な液晶装置200とその駆動方法を提供することができる。
画素電極電位Vdriveと対向電極電位(Vcom)はそれぞれ同じ傾きの電位勾配を有することから、交流電圧を印加することに伴ってDC成分は生ぜず、液晶層50には絶対値が|V_LCD|で示される駆動電圧Vが印加される。つまり、DC成分による焼き付きやフリッカーなどの表示不具合は発生し難い。すなわち、上記第1実施形態のように対向電極23を覆う絶縁膜24を設けなくても、液晶層50中に含まれるイオン性不純物を表示領域E1よりも外側に掃き寄ることができる。
次に、液晶装置200の駆動方法について、変形例6を挙げて説明する。
(変形例6)
画素領域Eにおいて、基準電位(例えば0V)に対して一方向に電位勾配を有するように対向電極23に対向電極電位(Vcom)を印加すると共に、電位勾配が付与された当該対向電極電位(Vcom)を中心電位としてダミー画素電極15dや画素電極15に交流電圧を印加する方法は、表示が開始されてからすぐに行われることに限定されない。例えば、表示を開始してから所定の時間経過するまでの間に、当該電位勾配がゼロから所定の値に徐々に変化するように対向電極電位(Vcom)及び交流電圧を印加するとしてもよい。この方法によれば、当該電位勾配の急激な変化による例えばフリッカーなどの表示不具合の発生を抑制することができる。なお、上記所定の時間としては、例えば2分~3分である。
(第3実施形態)
<電子機器>
次に、図24を参照しつつ、本実施形態の液晶装置を適用した電子機器の一例を説明する。図24は、電子機器の一例であるプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
図24に示すプロジェクター1000は、光源1001、インテグレーター光学系1002、色分離光学系としてのダイクロイックミラー1003,1004,1007、反射ミラー1005,1006、3系統の液晶ライトバルブ1100R,1100G,1100B、色合成素子としてのダイクロイックプリズム1201、及び投射光学系としての投射レンズ群1202を備えている。
光源1001から射出された光源光は、インテグレーター光学系1002に入射する。インテグレーター光学系1002に入射した光源光は、照度を均一化されるとともに偏光状態を揃えられて射出される。インテグレーター光学系1002から射出された光源光は、色分離光学系であるダイクロイックミラー1003,1004により赤色光LR、緑色光LG、青色光LBに分離される。赤色光LRは、反射ミラー1005によって反射され、液晶ライトバルブ1100Rに入射する。緑色光LGと青色光LBは、反射ミラー1006によって反射されダイクロイックミラー1007に入射する。緑色光LGは、ダイクロイックミラー1007によって再び反射され、液晶ライトバルブ1100Gに入射する。青色光LBは、ダイクロイックミラー1007を透過して、液晶ライトバルブ1100Bに入射する。
液晶ライトバルブ1100Rは赤画像を形成し、液晶ライトバルブ1100Gは緑画像を、液晶ライトバルブ1100Bは青画像をそれぞれ形成する。すなわち、各液晶ライトバルブ1100R,1100G,1100Bに入射した色光は、表示すべき画像の表示データに基づいて変調され、画像光となる。3系統の液晶ライトバルブ1100R,1100G,1100Bから射出された3色の画像光は、色合成素子であるダイクロイックプリズム1201により合成された後、投射レンズ群1202によりスクリーン等の被投射面(図示略)に投射される。これにより、被投射面にフルカラーの画像が表示される。
3系統の液晶ライトバルブ1100R,1100G,1100Bは共通の構成を備えている。ここでは赤画像用の液晶ライトバルブ1100Rについて説明する。
液晶ライトバルブ1100Rは、光変調素子1105、入射側偏光板1101、偏光分離素子1102、光学補償板1103、及び射出側偏光板1104を有する。入射側偏光板1101は、偏光分離素子1102に向けて例えばP偏光の赤色光を透過させる。偏光分離素子1102を透過した赤色光は、光学補償板1103を通って反射型の光変調素子1105に入射して変調され、画像を示す偏光成分(偏光分離素子1102に対するS偏光)を含んだ光として射出される。
光変調素子1105から射出された光は、光学補償板1103を経由して偏光分離素子1102に入射する。光変調素子1105によって変調された光に含まれるS偏光成分は、偏光分離素子1102で反射され、射出側偏光板1104に入射する。射出側偏光板1104に入射した上記S偏光成分は、射出側偏光板1104を透過してダイクロイックプリズム1201に入射し、他の色の画像光と合成された後に投射される。
上記構成を備えたプロジェクター1000は、光源光を変調する光変調素子1105として、例えば上記第1実施形態の液晶装置100が用いられている。これにより、液晶装置100において、表示領域E1からダミー画素領域E2へ、そしてダミー画素領域E2から外側にイオン性不純物が効率良く掃き寄せられ、表示品質の低下が効果的に抑制される。よって本実施形態のプロジェクター1000によれば、高コントラストの表示が可能であり、しかも表示品質において優れた信頼性を得ることができる。なお、光変調素子1105には、上記第2実施形態の液晶装置200を適用してもよい。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置及び液晶装置の駆動方法ならびに該液晶装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例7)上記各実施形態では、画素領域Eに表示領域E1とダミー画素領域E2とが含まれる構成において、液晶装置100の駆動方法あるいは液晶装置200の駆動方法を適用したが、これに限定されない。ダミー画素領域E2がない状態の表示領域E1に対して上記各実施形態の液晶装置の駆動方法を適用してもよい。これによれば、表示領域E1の外側にイオン性不純物を掃き寄せることができる。
(変形例8)上記第1実施形態の駆動方法が適用される液晶装置100や、上記第2実施形態の駆動方法が適用される液晶装置200は、反射型であることに限定されず、透過型であっても適用可能である。すなわち、上記第1実施形態の駆動方法が適用される液晶装置100や、上記第2実施形態の駆動方法が適用される液晶装置200を液晶ライトバルブとして用いるプロジェクターもまた反射型に限定されない。
(変形例9)上記第1実施形態の駆動方法が適用される液晶装置100や、上記第2実施形態の駆動方法が適用される液晶装置200を表示部として用いる電子機器は、プロジェクター1000に限定されない。例えば、液晶装置として画素にカラーフィルターを備える構成とすることで、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。