本発明に係る印刷装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、印刷装置10の第1の実施形態を簡略的に示す全体構成図であり、図2は、印刷装置10のレイアウトを簡略的に示す平面図である。
この印刷装置10は、レタープレス印刷やフレキソ印刷に好適に用いられる多色刷り可能なドラム型印刷機である。印刷装置10は、図1に示すように、給紙部Aと、印刷部Bと、乾燥部Cと巻取部Dとの4つの基本的構造を有する。
印刷装置10は、給紙部Aに巻出しローラ11がブレーキ可能で回転フリーに設置される。巻出しローラ11に巻装された連続フォーム12は、引張装置13の駆動により、フォーム蛇行補正装置14を経て繰り出される。連続フォーム12は回転フリーの供給側ガイドローラ列15を通って入口側ガイドローラ15aから印刷部Bの共通圧胴16に案内される。入口側ガイドローラ15aは供給側ガイドローラ列15の最終側に位置される。連続フォーム12は、入口側ガイドローラ15aから共通圧胴16に沿って時計方向に走行される。
ところで、連続フォーム12は、被印刷媒体として一般の連続紙(連続ウェブ)や軟包装フォルム(プラスチックフィルム)、段ボール紙等の被印刷物である。連続フォーム12は幅方向に10cm~数m、例えば40cm~2mの幅を有する。
印刷部Bにはセンタードラムタワーとしての架台18が設けられる。この架台18に単一の共通圧胴16の中央ロッドとしての回転シャフト19がモータ駆動により軸受20を介して回転自在に支持される。共通圧胴16は、センタードラムを構成する直径40cm~3mの円筒状密閉型の金属容器であり、大径の重量物である。共通圧胴16は、例えば外径が1mで、シリンダ壁が2cm~10cm好ましくは5cm~10cm、より好ましくは、7cm~10cm、例えば10cmの厚肉の密閉円筒状の金属シリンダで構成される。単一の共通圧胴16の周りには複数、例えば4色の印刷ユニット21が周方向に間隔を置いて配置される。印刷ユニット21は、架台18のサポート枠にそれぞれ設置され、各印刷ユニット21により、黄(イエロー)、赤(マゼンタ)、青(シアン)、および黒(ブラック)の4色のインキにより、多色(4色)刷りの印刷が施される。大きな共通圧胴16では、例えば1mの共通圧胴16の他に、直径2m~3mのより大径の共通圧胴が用いられる。直径40cmの共通圧胴では、2色の印刷ユニット21が周囲に設けられる。この場合、印刷ユニット21は、共通圧胴の外側で略直径方向に対向してサポート枠に固定される。直径2m~3mの共通圧胴では周囲に6色~10色の印刷ユニットが設けられる。
印刷ユニット21は無端帯状の樹脂凸版印刷版を備えた印刷機構22と、印刷機構22にUVインキを供給するインキング機構26とを備える。印刷機構22は長尺の感光性樹脂凸版印刷版からなる無端帯状印刷プレート25を備える。印刷機構22は、プレートシリンダ(プレートローラ)23とガイドローラ24との間に無端帯状印刷プレート25が巻き掛けられて構成される。
プレートシリンダ23は、鍛鉄やステンレス鋼等の鋼鉄材料で成形された16cmφ~25cmφの無垢の中実シリンダ(ローラ)であり、ガイドローラ24は、アルミニウム等の軽金属材料や軽合金材料で形成される。無端帯状印刷プレート25の版厚は、0.70mm~2.70mm、例えば0.95mmに成形される。
無端帯状印刷プレート25は、特許第5389769号公報や特許第6628201号公報に記載された長尺の感光性樹脂凸版印刷版を、例えば2m~6mの所定の長手方向長さに切断したり、短尺の樹脂凸版印刷版を所定の長手方向長さに接続し、両端部を接着テープで無端状に接続することにより構成される。無端帯状印刷プレート25が巻かれた印刷ユニット21は印刷機構22のプレートシリンダ23側に共通圧胴16に対向する版胴が構成される。
無端帯状印刷プレート25はガイドローラ24側にインキング機構26からUVインキが塗布される。
インキング機構26は、図3に示すように、UVインキを貯留するインキ皿27と、インキ皿27に貯えられたUVインキを取り出すアニロックスロールとしてのインキ転位ロール28と、インキ転位ロール28に取り出されるインキ量を制御するドクターブレード29とを有し、ドクターブレード29で制御されたUVインキは、インキ転位ロール28から(印刷ユニット21の)無端帯状印刷プレート25の版面に転位される。
ところで、UVインキは、着色剤としての顔料と、重合により被膜が形成されるモノマーと、UVエネルギー光等の活性光を吸収してモノマーの重合反応をスタートさせる光重合開始剤と、インキの液体状態を保護するその他のUV材料との4つの成分を有する。印刷ユニット21のガイドローラ24側でUVインキはインキ転位ロール28から無端帯状印刷プレート25の版面に転位される。転位されたUVインキは、途中で乾燥されることなくプレートシリンダ23側に搬送される。プレートシリンダ23側で無端帯状印刷プレート(版胴)25の版面から、(共通圧胴16周りに走行する)連続フォーム12に転写され、印刷される。UVインキは無端帯状印刷プレート25の搬送途中に乾燥されることがないので、版面の目詰まりを有効的に防止することができる。UVインキは速乾性がないので、インキング機構26を版胴の近くに配置する必要がなく、インキング機構26の配置や取付の自由度が向上する。
各印刷ユニット21の下流側には、色間に図1および図3に示すように、乾燥ユニット31がそれぞれ設けられる。乾燥ユニット31は、隣り合う印刷ユニット12の色間で架台18に取り付けられるUV光源等の活性光源装置である。この活性光源装置から300nm~400nmの波長域の活性光、例えばUVエネルギー光(紫外線)が連続フォーム12に向かって照射される。乾燥ユニット31は、所定強さの活性光を照射することにより、印刷されたUVインキは光硬化反応により瞬時に凝固されて固まる。
連続フォーム12は印刷されたUVインキが活性光照射による光硬化反応により固まるので、インキの液分が瞬時に失われる。ここでは乾燥ユニット31によるUVインキの乾燥であると擬制する。
ところで、乾燥ユニット31の活性光源装置には、UV光の紫外線源の他に、300nm~400nmの波長域の活性光を出力する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノンランプやLEDランプ等がある。
また、印刷装置10の各印刷ユニット21は、印圧調整機構32により、プレートシリンダ23側の版胴と共通圧胴16との印圧(押付力)が10μm単位の押圧変形量(沈み込み量)で調節制御される。無端帯状印刷プレート25は樹脂材料やゴム材料で構成され、弾力性を有するため、印刷の印圧(押圧変形量)は10μm単位で調整することができる。なお、符号33は張力調整機構であり、この張力調整機構33により印刷機構22の無端帯状印刷プレート25の張力が制御される。また、符号34は、インキ転位ロール28の無端帯状印刷プレート25への押付力を調節する押付圧力調整機構である。
また、無端帯状印刷プレート25の版面上のUVインキが連続フォーム12の被印刷体に転位(転写)するのに最低で40μm~50μmの許容量を考慮すると0.08~0.11mmの印圧(押圧変形量)をかけないと、インキは連続フォーム12の被印刷体に充分転位されない。たた、フレキソ印刷では、キスプレスが最良といわれるが、このキスプレスをコンスタントに得るためには印刷装置10の機械精度や周辺機材に高い精度が要求される。
印刷装置10は、駆動モータ(後述する)駆動により、重量物の共通圧胴16が回転駆動される。共通圧胴16の回転駆動により、共通圧胴16の入口側(ガイドローラ15a)で連続フォーム12は屈曲され、共通圧胴16の周りを時計方向に、共通圧胴16の回転と一体的に走行して出口側(ガイドローラ36a)に導かれる。
連続フォーム12は、共通圧胴16の回転とともにその周りを走行する間に、複数の印刷ユニット12と下流側の乾燥ユニット31とを交互に通り、印刷と乾燥が繰り返されて多色印刷される。印刷された連続フォーム12は、共通圧胴16の出口側で屈曲して出口側ガイドローラ36aから引張装置35により取り出される。取り出された連続フォーム12は回転フリーのガイドローラ列36に案内され、見当カメラ37、見当モニタ38を順次経て巻取りローラ40に巻き取られる。見当カメラ37は走行する連続フォーム12の被印刷物を写して、被印刷物の色ズレや見当状態を見当モニタ38でモニタリングし、表示している。見当モニタ38は、ガイドローラ側36を遮る連続フォーム12の被印刷物を見当カメラ37で取ってモニタ表示し、被印刷物の色ズレや見当状態を常時監視することができる。
しかし、連続フォーム12は、センタードラムとしての大径の共通圧胴16の回転に従って走行するので、印刷ユニット21間で伸縮やたるみが起きにくく、見当精度が良好であるため、精度よく印刷できて印刷精度を向上させ、良好な印刷品質を確保することができる。
また、連続フォーム12には、センタードラムとしての大径の共通圧胴16の回転とともに、共通圧胴16の周りに沿って走行するため、印刷ユニット21間で伸縮やたるみが起きにくく、見当精度が良好でテンションの変化が生じない。連続フォーム12はテンションの変化がなく、あるいは少なく、一様な状態で印刷ユニット21により印刷される。各印刷ユニット21から連続フォーム12への印刷は、テンションが各々合っているため、印刷不良(ヤレ)の発生が少ない。従来の印刷装置で印刷された印刷物に比べ、1/3~1/4程度に印刷不良を抑えることができる。
さらに、本実施形態の印刷装置10では、連続フォーム12への印刷精度を向上させることができ、印刷時に連続フォーム12に加わるテンションは一様な状態に保たれ、各印刷ユニット21毎に変化することがない。連続フォーム12に加わるテンションが一様に保持された状態で印刷ユニット21により印刷され、印刷時に連続フォーム12のテンションが狂わないので、印刷位置を常時監視して合わせる必要がないメリットがある。
ところで、印刷装置10は、図2に示すように操作パネル44を運転操作することにより、制御盤45が作動制御される。制御盤45の作動制御により、共通圧胴16を回転駆動させる駆動モータ46や引張装置13および35を駆動させる駆動モータ47および48は、連続フォーム12が一様なテンションを保って走行するように制御される。駆動モータ46は減速装置46aを介して共通圧胴16の回転シャフト19にギア連結されて、共通圧胴16を所要の回転速度で回転駆動させるように構成される。
共通圧胴16の周速は、低速運転時には50m/分の速度程度で、通常運転時には100m/分~120m/分の速度に、高速運転時には、150m/分~200m/分の速度で走行されるように運転制御される。このため、印刷装置10の駆動により、差出しローラ15から所定のライン速度で繰り出された連続フォーム12は、共通圧胴16の周りを、共通圧胴16の回転と共に一体的に走行し、その走行の間に印刷され、巻取りローラ40に巻き取られる。連続フォーム12の印刷速度は、制御盤45の作動制御により、ライン速度に応じて調整され、各駆動モータ46、47、48がモータ駆動で運転制御される。低速運転時や通常運転時、高速運転時の走行がそれぞれの運転速度で、連続フォーム12のテンションを一様に保つように運転制御される。
また、印刷装置10の共通圧胴16は、図2および図4に示すように、回転シャフト19が架台18に軸受け20を介して回転自在に支持される。共通圧胴16は重量物であるため、駆動モータ46により大きな慣性力でスムーズに回転駆動される。共通圧胴16は密閉型の大径の円筒容器であり、円筒状の厚肉金属シリンダ53と回転シャフト19とが一体に構成されている。
鍛鉄、ステンレス鋼等の鋼鉄材料の金属シリンダ53は、外径40cmφ~3mφ、好ましくは1mφ~2mφ、例えば1mφで、シリンダ壁が2cm~10cm、好ましくは7cm~10cm、例えば10cmの肉厚を有する厚肉の重量物であり、内部空間(空洞)にオイルや水の液体54が満たされ、重量が増加せしめられる。金属シリンダ53の内周壁には液体54を案内するフィン55が螺旋状に設けられる。フィンは回転シャフト19の外周側に螺旋状に設けてもよい。メンテナンス時に、共通圧胴16を架台18から取り外したり着脱する場合には金属シリンダ53内の液体54を抜き、空にした状態で着脱作業が実施される。
さらに、単一の共通圧胴16は、金属シリンダ53と回転シャフト19とが放射状の支持脚59で連結され、共通圧胴16を円筒状にサポートしている。支持脚59は回転シャフト19から放射状に延びて金属シリンダ53の内周壁に固定され、共通圧胴16は金属シリンダ53の円筒度が真円となるようにサポートされる。
さらに、図2に示すように、共通圧胴16の回転シャフト19の一側に流入孔56が、他側に流出孔57がそれぞれ形成されている。液体54は、図示しない貯蔵タンクからクーラ等の温度調節装置58により温度調節され、流入孔56を経て金属シリンダ53の空洞内に供給される。密閉円筒状の金属シリンダ53は、温度調節されたオイルや水等の液体54で満たされ、空洞内を循環している。温度調節装置58は液体を18℃~30℃、好ましくは20℃~25℃に金属シリンダ53を温度調節している。金属シリンダ53は、共通圧胴16の回転により、流入孔56から金属シリンダ53内に流入して満たされる。流入した液体54は共通圧胴16の回転により、金属シリンダ53を所定の温度に保つ一方、流入孔56から流出孔57側に案内され、流出孔57から貯蔵タンクに回収される。
一方、図2および図4に示すように、共通圧胴16の一側外周には、サンギア60が設けられる。このサンギア60は(各印刷ユニット21の)印刷機構22のプレートシリンダ23に設けられたピニオン61と、ギア結合している。駆動モータ47は、共通圧胴16のサンギア60が回転すると、各印刷ユニット21の印刷機構22のピニオン61が同期をとって回転駆動される。ピニオン61は(各印刷ユニット21の)印刷機構22の駆動ギアを構成している。各印刷ユニット21は、ピニオン61の回転駆動により、無端帯状印刷プレート25が運転され、インキング機構26から供給されるUVインキは、プレートシリンダ23側の無端帯状印刷プレート25(版胴)の版面から連続フォーム12に転位(転写)される。各インキング機構26のインキ皿27には、図2に示された各インキタンク64~67に貯えられた黒(ブラック)、青(シアン)、赤(マゼンタ)および黄(イエロー)のUVインキがインキ供給ポンプ68、69等により供給されるようになっている。
各印刷ユニット21の印刷機構22はプレートシリンダ23側で、無端帯状印刷プレート25(版胴)の版面から、(共通圧胴16の周りに沿って走行する)連続フォーム12にUVインキが転写され、印刷される。
その際、駆動モータ46により回転駆動される共通圧胴16は、重量物である大径の金属シリンダ53で構成される。しかも厚肉の金属シリンダ53内の空洞はオイル等の液体54で満たされているので、さらに、重量が増加し、共通圧胴16は大重量物で構成される。このため、回転に伴う慣性量が大きい。共通圧胴16は、大きな慣性力でスムーズに安定的に回転駆動されるので、回転に伴うガタ付きやバウンシングの発生が少なく安定した回転力でなめらかに回転駆動される。
しかも、共通圧胴16の周りを共通圧胴16の回転とともに一体的に走行する連続フォーム12は、温度調節されたオイル等の液体により、所要の温度、例えば20℃~25℃に温度調節されている。連続フォーム12は共通圧胴16の回転と一体的に回転するので、連続フォーム12に『たるみ』、伸縮がなくテンションの変化が生じない。このため、薄くて伸縮しやすい軟包装フィルムでも、見当精度が良好で、精度の良い印刷を施すことができる。したがって、印刷品質や印刷精度を向上させることができ、良好な品質の被印刷物が得られる。
一方、レタープレス印刷にしてもフレキソ印刷にしても、現在のドラム型印刷機に使用されている共通圧胴は圧胴の重量が軽くなるように薄肉シリンダが使用されている。共通圧胴の周囲に複数の印刷ユニットを配設し、印刷ユニットの版胴は樹脂凸版印刷版を版胴シリンダに巻装して印刷機構を構成している。各印刷機構は、多数の版胴に樹脂凸版印刷版を装着して印刷すると、印圧がバラバラに作用し、印圧の係り具合如何で軽量の共通圧胴に振動が起きてバウンシングが発生し、印刷精度が悪く、良好な印刷品質を得ることができない。
これに対し、本実施形態の印刷装置10は、単一の共通圧胴16は、例えば直径1mの大径の円筒シリンダで構成され、シリンダ壁が7cm~10cmの(例えば10cm)厚肉の金属シリンダ53の重量物である。共通圧胴16が厚肉の金属シリンダ53であっても、シリンダ内は80cmΦ程度の空洞がある。金属シリンダ53は空洞にオイル等の液体54を充填させて満タンにすることで重量が一層加算される。その上、オイル等の液体54は充填されて18℃~30℃、好ましくは20℃~25℃に温度調節されており、印刷装置10の運転時に共通圧胴16は表面温度が所要の温度に温度調節される。
印刷装置10は共通圧胴16を備えた重量物であり、金属シリンダ53内の空洞にオイル等の液体54が循環され満たされる。しかも、センタードラムを構成する共通圧胴16の周りに連続フォーム12が入口側ガイドローラ15aから出口側ガイドローラ36aまで略全周にわたって旋回され、共通圧胴16の回転と一体的に走行されるので、連続フォームの見当精度が良好で、走行中に伸縮やたるみが起きにくい。連続フォーム12は、所要温度の共通圧胴16に沿って走行し、印刷されるので、薄くて伸縮しない軟包装フィルムでも精度よく印刷することができる。印刷品質を向上させることができ、安定して被印刷物を確保することができる。
また、印刷装置10は、運転を止めて時間が経つと、通常印刷時の場合、時間の経過とともに温度が変わってきて、インキの濃度や粘度に変化が現れる。特に、休みが続いた後の運転立ち上がり時の印刷ではインキ濃度の変化が顕著である。インキ濃度が変化すると、印刷ムラやインキムラのため、印刷精度が劣化し、良好な印刷品質を得ることができない。ヤレ(印刷不良)の発生が多くなる。
しかし、本実施形態の印刷装置10では、共通圧胴16内に温度調整されたオイル等の液体54が供給され、循環される。金属シリンダ53内の空洞は温度調整された液体で満たされている。このため、共通圧胴16は供給される液体54の影響を受けて、インキ温度の変化が少ない。連続フォーム12は印刷されるインキによる印刷ムラやインキムラが発生しないため、印刷精度を向上させて良好な印刷品質を保つことができ、ヤレ(印刷不良)の発生の減少を図ることができる。
その上、印刷装置10では、印刷ユニット21の下流側に設けられる乾燥ユニット31に、活性光源装置が設けられる。活性光源装置では、300nm~400nmの波長域の活性光例えばUV光が連続フォーム12に照射される。この活性光の照射により連続フォーム12に印刷されたUVインキは光硬化反応により瞬時に凝固され、固まる。インキの液分が瞬時に失われて乾燥される。その際、乾燥ユニット42は印刷ユニット21の色間に大きな設置スペースを必要としないので、印刷ユニット21間の色間距離を長くとる必要がない。また、各印刷ユニット21や乾燥ユニット31は単一の共通圧胴16の周りに設けられるので、各印刷ユニット21に対応する複数の独立した圧胴を直線状に配列する必要がない。
しかも、各印刷ユニット21は直線状で列状に配設する必要がないので、各印刷ユニット21の設置に大きな設置床面積を必要としない。複数の印刷ユニット21は、単一の共通圧胴16周りに設置したので、多色刷りの印刷装置10を設けても、設置床面積を少なくし、省スペース化、コンパクト化を図ることができる。
さらに、本実施形態の印刷装置10は、多色刷りであっても、設置床面積を小さく、コンパクトに構成することができるので、複数の印刷ユニット21を備えた共通圧胴16の下流側に空きスペースが得られる。この空きスペースを利用して縦横ミシン加工装置やファイルパンチ、コーナカット装置、さらに連続フォーム12をジグザグ折りする公知の折り装置等の後加工装置を必要に応じて着脱自在に設置してもよい。印刷装置10の巻取部Dに折り装置の後加工装置を設置した場合には、被印刷物を巻き取る巻取りローラを必ずしも設ける必要がなく、被印刷物を受け取るスタッカー等の堆積装置が設けられる。
加えて、本実施形態の印刷装置10は、重量物である大径の共通圧胴16の周りに沿って連続フォーム12が走行され、連続フォーム12は、共通圧胴16周りを走行する間に各印刷ユニット21により印刷され、印刷されたUVインキが乾燥ユニット31により凝固され(乾燥され)て、印刷と乾燥が繰り返されて多色印刷の被印刷物を得ることができる。
その際、単一の共通圧胴16の周りに沿って走行される連続フォーム12は各印刷機構22間で伸縮したり、たるみが生じたり、テンションに変化が生じることがなく、見当精度よく案内される。しかも、共通圧胴16は、大きな重量物であり、金属シリンダ53内に充填され満たされるオイル等の液体で重量がさらに加算される。このため、共通圧胴16は回転による慣性量が大きく、ガタ付きやバウンシングの発生がないので、印刷ムラが発生しない。安定した印刷品質や印刷精度を確保することができ、レタープレス印刷やフレキソ印刷に適した印刷装置を提供することができる。
さらに、印刷ユニット21は、印刷機構22が樹脂凸版印刷版を無端状に接続した無端帯状印刷プレート25をプレートシリンダ23とガイドローラ24とに巻装されて構成されるので、印刷機構22の駆動によりプレートシリンダ23側に巻かれる無端帯状印刷プレート25からなる版胴が作られる。各印刷機構22の版胴は重量物である単一の共通圧胴16の間に連続フォーム12が通されて印刷されるので、見当精度が良好となり、凸版印刷版を用いても多色印刷の印刷精度を向上させることができる。
なお、図2において、符号70はコンプレッサであり、符号71~74は、(印刷装置10を設置した)建物の室内に空気を供給したり、室内の空気を室外に排出する送風機である。
[第2の実施形態]
図5は、印刷装置の第2の実施形態を簡略的に示す全体構成図である。
第2の実施形態に示された印刷装置80は、第1の実施形態に示された印刷装置10と印刷ユニット81の構成を主に異にする。印刷装置80の他の構成は、第1の実施形態の印刷装置10と実質的に異ならないので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略あるいは簡略化する。
第2の実施形態の印刷装置80は、レタープレス印刷やフレキソ印刷に適したセンタードラムを備えたドラム型印刷機である。印刷装置80は、重量物である大径の共通圧胴16を有する。共通圧胴16は、直径40cmφ~3mφ、好ましくは1mφ~2mφ、例えば1mφの円筒状の密閉型金属容器を備える。共通圧胴16は、例えば外径が1m中で、シリンダ壁が2cm~10cm、好ましくは7cm~10cm、例えば10cmの肉厚の金属シリンダ53で構成される。単一の共通圧胴16の周りには、複数、例えば4組(4色)の印刷ユニット81が周方向に間隔をおいて設けられる。印刷ユニット81は、架台18のサポート枠にそれぞれ設置される。4組の印刷ユニット81を順次通ることにより、連続フォーム12は黄(イエロー)、赤(マゼンダ)、青(シアン)及び黒(ブラック)の4色のインキにより。多色刷りの印刷が施される。
また、印刷ユニット81は、版面を有する版胴82と版銅の版面にUVインキを供給するインキング装置83とから構成される。版胴82は図6および図7に示された印刷装置のように、円筒状の版胴シリンダ84と、この版胴シリンダ84に巻装される樹脂凸版印刷版85とを有する。樹脂凸版印刷版85は、特許第5,389,769号公報や特許第6,628,201号公報に記載された製造技術で製作される。所定の長手方向長さに切断された樹脂凸版印刷版85が版胴シリンダ84に巻装されて、版胴82が構成される。
一方、インキング装置83は、UVインキを貯留したインキ皿87と、インキ皿87からUVインキを取り出す送りロールとしてのファウンテンロール88と、アニロックスロール等のインキ転位ロール89とから構成される。ファウンテンロール88からインキ転位ロール(アニロックスロール)89に供給されるUVインキは、両ロール間のニップ圧により、インキ供給量が制御される。制御されたUVインキはインキ転位ロール89から版胴82の版面に均一に転位される。連続フォーム12は、版胴82と共通圧胴16との間を通って送られる。
連続フォーム12に転写されたUVインキには、印刷ユニット81の下流側で色間に設けられた乾燥ユニット31の活性光源装置から活性光が照射される。活性光源装置から300nm~400nmの波長域の活性光、例えばUV光が照射される。活性光の照射により、UVインキの液分が瞬時に取り除かれる。連続フォーム12に印刷されたUVインキは活性光の照射による光硬化反応により、瞬時に固まりUVインキの液分が瞬時に除去される。結果として連続フォーム12に印刷されたUVインキは脱水状態となり、乾燥される。
共通圧胴16に送られた連続フォーム12は、共通圧胴16の回転駆動により、入口側から共通圧胴16の周りを図5および図6において時計方向に走行し、出口側に案内される。連続フォーム12は共通圧胴16の周りを走行する間に各印刷ユニット81からの印刷と各乾燥ユニット31からの活性光の照射で、光硬化作用による凝固(脱水状態)による乾燥とが交互に繰り返され、多色刷りの印刷が施される。なお、図7では、印刷ユニット81の版胴82で印刷される連続フォーム12は直線状に走行される例を簡略化のために示したが、実際には、連続フォーム12は共通圧胴16の外表面と接触状態を保って、共通圧胴16の回転駆動に伴い、共通圧胴16の周りに沿って共通圧胴16とともに走行し、案内される。
印刷装置80で印刷された連続フォーム12は、共通圧胴16の出口側ガイドローラ35aから取り出され、回転フリーのガイドローラ列36を通り、引張装置35、見当カメラ37等を経て巻取りローラ40に巻き取られる。
第2の実施形態に示された印刷装置80に備えられる複数、例えば4個(4色)の印刷ユニット81は版胴82とインキング装置83とにより構成される。この印刷ユニット81は図1および図3に示された印刷ユニット21のように印刷機構22も長尺の無端帯状印刷プレート25を備えていない。したがって、印刷ユニット81をコンパクトに構成することができる。このため、第2の実施形態の印刷装置80は、第1の実施形態印刷装置10より専有スペースが小さく、コンパクトにすることができ、印刷部Bの設置床面積をよりコンパクトに構成することができる。
第2の実施形態に示された印刷装置80は、図5および図6に示すように、版胴82の共通圧胴16への押付力は印圧調整機構91により調節される。また、インキ供給量調整機構92によりファウンテンロール88とアニロックスクロール89とのニップ圧が調節され、UVインキのインキ供給量が判断される。
印圧調整機構91およびインキ供給量調整機構92は、印刷ユニット81の外側にそれぞれ揃えて設けられるので、版胴8の押付力やインキ供給量の調節操作が容易で、操作性が良好となる。
図5および図6において、符号93は共通圧胴16内に放射状に設けられた支持脚である。この支持脚93は回転シャフト19と金属シリンダ53の内表面とを連結しており、、金属シリンダ53の円筒度を維持している。
また、図8は第2の実施形態に示された印刷装置80の印刷ユニット81の変形例を示すものである。この変形例に示された印刷ユニット81Aは、印刷ユニット81の構成をより簡略化し、コンパクトにしたものである。印刷ユニット81A以外の構成は図5および図6に示された印刷装置80と攻勢を同じくするので、図示を省略する。
印刷ユニット81Aはセンタードラムとしての単一の共通圧胴16の周囲に複数、例えば4組配置される。印刷ユニット81Aは版面を有する版胴82にUVインキを供給するインキング装置95とから構成される。版胴82は、版胴シリンダ84に巻装される樹脂凸版印刷版85で形成され、図6および図7に示された版胴82と同じ構成を有し異ならない。インキング装置95は、UVインキを貯留したインキ皿96と、インキ皿96内のUVインキを取り出すアニロックスロール97と取り出されたUVインキのインキ量を制御するドクターブレード98とから構成される。ドクターブレード98はアニロックスロール97に接触させてアニロックスロール97のUVインキ量を制御するものである。ドクターブレード98は、印刷速度やインキ粘度の差によるインキ量の変化が少なく調整でき安定したUVインキ量が供給される。
変形例に示された印刷ユニット81Aは、図7に示された印刷ユニット81より構造をより簡素化でき、コンパクトに構成することができる。このため、図8の印刷ユニット81Aを備えた印刷装置80は印刷部Bの構成を簡素化してよりコンパクトにすることができる。
印刷装置80は、第2の実施形態では印刷ユニット81(81A)に無端帯状印刷プレートを備えておらず、センタードラムとしての大きな共通圧胴16の周囲に複数の印刷ユニット81(81A)を配置しても、印刷装置80全体のコンパクト化を図ることができ、設置床面積を少なくすることができる。
[第3の実施形態]
図9は印刷装置の第3の実施形態を示す腰部の構成図である。
第3の実施形態に示された印刷装置100は第1の実施形態に示された印刷装置10の印刷部Bおよび乾燥部Cの構成を異にしたものである。この印刷装置100は連続フォーム12の表裏両面に多色刷りの印刷をそれぞれ施すドラム型印刷機である。このドラム型を構成する印刷装置100は、印刷部B1および乾燥部C1の構成を第1の実施形態の印刷部Bおよび乾燥部Cの構成と異にするが、他の構成(給紙部Aおよび巻取部Dの構成)は第1の実施形態と構成を同じくするので、同じ構成には同じ符号を付して説明し、図示を省略する。
図9に示された印刷装置100は連続フォーム12の両面に印刷を施すために2台の共通圧胴101,102を備える。第1共通圧胴101と第2共通圧胴102は並設され、モータ駆動で同期をとって互いに反対方向に回転駆動される。並設された2台の共通圧胴101,102構造は、図5および図6に示された重量的である共通圧胴16と異ならないので、同じ構成には同じ符号を付して説明を簡略化する。
給紙部Aの巻出しローラ11から繰り出される連続フォーム12は、フォーム蛇行補正装置14、引張装置13を経て、回転フリーのガイドローラ列15から第1の共通圧胴101の入り口側に案内される。連続フォーム12は第1の共通圧胴101の入り口側(ガイドローラ15a)から共通圧胴101の時計方向の回転に伴い共通圧胴101の周りを図9において時計方向に沿って走行し、出口側ガイドローラ106aに案内される。
連続フォーム12が共通圧胴101の周りを時計方向移送される間に、印刷ユニット81により版胴82の版面からインキが連続フォーム12に転写され、印刷される。連続フォーム12に印刷を施す印刷ユニット81の構成は第2の実施形態に示された印刷ユニット81の構成と同じであるので、版胴82とインキング装置83の具体的説明は省略する。
印刷ユニット81は図8に示される印刷ユニット81Aと構成を同じにしてもよい。第3の実施形態では、印刷ユニット81に用いられるインキはUVインキに限定されず、速乾性の水性インキや油性インキを用いてもよい。速乾性の水性インキは、環境にやさしいインキである。印刷ユニット81の下流側で色間に設けられる乾燥ユニット105には、ヒータ等の加熱乾燥装置が設けられる。加熱乾燥装置には連続フォーム12に向けて温風あるいは熱風を吹き出す送風装置が備えられる。速乾性の水性インキや油性インキを用いる場合には、乾燥ユニット105の加熱作用により、連続フォーム12に印刷されたインキは水分が加熱蒸発して乾燥される。印刷ユニット81によりUVインキを用いた場合には乾燥ユニット105に第1または第2の実施形態に用いられる活性光源装置が用いられる。なお、UVインキには速乾性のUVインキも存在する。速乾性のUVインキを用いた場合には乾燥ユニット31に加熱乾燥装置を用いてもよい。
しかして連続フォーム12は、第1共通圧胴101の回転に伴って第1共通圧胴101の周りを走行する間に複数(4色)の印刷ユニット81(の版胴82)による印刷と複数の乾燥ユニット105による乾燥とが交互に繰り返されて多色刷りの印刷が施される。第1共通圧胴101の周りに沿って走行される間に連続フォーム12は、複数(4つ)の印刷ユニット81と4つの乾燥ユニット105とにより印刷と乾燥が繰り返されて」多色刷りの印刷が施され、第1共通圧胴101の出口側ガイドローラ106aに案内される。
連続フォーム12は続いて第1の共通圧胴101の出口側(ガイドローラ106a)から中間のガイドローラ列106に案内され、第2の共通圧胴102の入口側(ガイドローラ106b)に導かれる。中間の回転フリーのガイドローラ106の途中に連続フォーム12に所要のテンションを付与したり維持するために、引張装置107を必要に応じて設けられる。引張装置107は給紙部Aの引張装置13や巻取部Dの引張装置35と同様に構成され、連続フォーム12の搬送速度が等しくなるように同期をとってモータ駆動される。
また第2の共通圧胴102は、第1の共通圧胴101と同様にモータ駆動により同期をとって回転駆動されるが、第1の共通圧胴101の回転方向と異なる反対の回転方向、例えば反時計方向に回転駆動される。そして第2の共通圧胴102の入り口側に案内された連続フォーム12は印刷面が第2の共通圧胴102の金属シリンダに表面接触するように導かれる。
続いて連続フォーム12は、第2の共通圧胴102の入り口側(ガイドローラ106b)から第2の共通圧胴102の周りに沿って反時計方向に一体的に走行する。この走行の間に複数(4個)の印刷ユニット81(の版胴82)からの印刷と乾燥ユニット105(の加熱乾燥装置)からの乾燥とが交互に繰り返されて連続フォーム12の表面側に多色刷りの印刷が施される。この印刷装置100は並設された第1及び第2の共通圧胴101,102の周囲の複数の印刷ユニット81と乾燥ユニット105とが交互に働いて印刷と乾燥を繰り返すことにより、連続フォーム12の表裏両面に多色刷りの印刷が施される。
続いて連続フォーム12の両面に印刷された第2の共通圧胴102の出口側から巻取部Dの引張装置135に引き出され、回転フリーのガイドローラ列36を通り、見当カメラ37、見当モニタ38を経て巻取りローラ40に巻き取られる。
第3の実施形態に示された印刷装置100では、互いに反対方向に回転駆動される第1および第2の共通圧胴101,102を並設し、各共通圧胴101,102の周囲に印刷ユニット81と乾燥ユニット105とを交互に配置し、各印刷ユニット81の版胴82に樹脂凸版印刷版を巻装して構成される。印刷ユニット81の版胴82に長尺の無端帯状印刷プレートを備えないので、印刷ユニット81をコンパクトに構成することができる。印刷ユニット81をコンパクトに構成しても、連続フォーム12は両面に多色刷りの印刷を施すことができる。この印刷装置100は連続フォーム12の両面に凸版印刷を施すレタープレス印刷やフレキソ印刷ができるドラム型印刷機を提供することができる。
第3の実施形態の印刷装置100をフレキソ印刷のドラム型印刷機に用いた場合には、印刷ユニット81のインキング装置83に速乾性の水性インキを用いると、環境に優しい印刷装置100を提供することができる。印刷ユニット81は版胴82に長尺の無端帯状印刷プレートを備えていないので、インキ搬送経路を短くすることができる。このため速乾性インキがインキ搬送途中で乾燥してしまうのを有効に防止することができる。版面の乾燥を防止できるので、印刷後の版胴82の版面に目詰まりが生じるのを防ぐことができ、印刷制度や印刷品質を良好に維持することができる。
なお、本発明の各実施形態に示された印刷装置10(80、100)は、共通圧胴16、101,102を構成する円筒状の金属シリンダの外径が1mΦで、シリンダ壁が2cm~10cm、好ましくは7cm~10cm、例えば10cmの厚肉の重量物に製作し、共通圧胴の周囲に複数色の印刷ユニットと色間に乾燥ユニットとを配設して構成される多色刷りのドラム型印刷機の例を示した。共通圧胴は直径2m~3mのより大径の金属シリンダを構成し、この金属シリンダを2cm~10cm、好ましくは7cm~10cm、例えば10cmのシリンダ肉厚の重量物に製作し、大径の共通圧胴の周囲に、例えば直径2mの共通圧、好ましくは7cm~10cm、例えば10cm胴では6色の印刷ユニットと色間に乾燥ユニットを設けることができる。また、直径3mの共通圧胴では、8~10色の印刷ユニットおよび色間に乾燥ユニットを設けることができる。共通圧胴は重量物で回転慣性が大きいのでバウンシングの発生を防止でき、より多色刷りの印刷を施しても、印刷精度や印刷品質が良好な印刷物を得ることができる。
また、第3の実施形態に示された印刷装置100では、互いに反対方向に回転する2台の共通圧胴101,102を並設し、モータ駆動で回転させる例を示したが、2台の共通圧胴を並設し、モータ駆動で同じ方向に回転させるようにしてもよい。この場合には、2台の共通圧胴の間に連続フォームの表裏を反転させる公知のフォーム反転装置が設けられる。
[第4の実施形態]
本発明に係る印刷装置の第4の実施形態について、図10~図13を参照して説明する。
第4の実施形態に係る印刷装置110は、第1の実施形態に記載の印刷装置10と、共通圧胴16の構成が基本的に異なり、それ以外の構成は実質的に異ならないので、図示を省略し、同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略ないしは簡略化する。
図10は、第4の実施形態の印刷装置110に備えられる共通圧胴111の製造方法を説明するものである。
第4の実施形態に示された印刷装置の共通圧胴111は鍛造品等の鋼鉄材料で製作される。共通圧胴111は回転シャフト112の周りに複数、例えば4個の円筒状金属シリンダ113(113a~113d)が同心状に設けられる。金属シリンダ113の一方側はディスク状側板114に溶接にて固定され、金属シリンダ113の他方側はリング状側板115(115a~115d)が溶接されて固定される。金属シリンダ113の内部に複数の円筒状あるいはトーラス状の空洞116(116a~116d)が同心状に密閉されて配置される。
具体的には、共通圧胴111は中心軸を構成する回転シャフト112の周りに複数の金属シリンダ113(113a~113d)が同心状に配置され、多重筒構造に設けられる。共通圧胴111は一方のディスク状側板114にそれぞれ円筒状をなす外周側金属シリンダ113aと第1の中間金属シリンダ113bと第2の中間金属シリンダ113cと内周側金属シリンダ113dとの(各一端部)がそれぞれ溶接される。
続いて、共通圧胴111は、外周側金属シリンダ113aとその内側の第1の中間金属シリンダ113bの他端部にリング状外周側側板115aが溶接される。内部には密閉された外周側空洞116aが円筒状あるいはトーラス状に構成される。そして、外周側空洞116aに液体、例えば水が、例えば10気圧に加圧して注入され、満たされる。この加圧液体により外周側空洞116aの液洩れが検査される。
外周側空洞116aの液洩れ検査後に(外周側空洞116aの内側の)第1の中間金属シリンダ113bとその内側の第2の中間金属シリンダ113cとの他端部にリング状第1の中間側板115bが溶接され、内部に第1の中間空洞116bが構成される。第1の中間空洞116bは密閉されて円筒状あるいはトーラス状空間が形成される。この第1の中間空洞116bに水等の液体が加圧して注入され、満たされる。この加圧液体の注入により第1の中間空洞116bの液洩れが検査される。
第1の中間空洞116bの液洩れ検査後に、第2の中間金属シリンダ113cと内周側金属シリンダ113dとの他端部にリング状第2の中間側板115cが溶接されて、内部に密閉された第2の中間空洞116cが構成される。第2の中間空洞116cは円筒状あるいはトーラス状空間に形成される。第2の中間空洞116cにも水等の液体が加圧して注入され、満たされる。この加圧液体により第2の中間空洞116cの液洩れが検査される。
続いて、(第2の中間空洞116cの内側に配設された)内周側金属シリンダ113dの他端部に内周側側板115dが溶接され、各金属シリンダ113(113a~113d)は同心状に配設され、圧胴形状が構成される。そして、内周側金属シリンダ113dの内側にセンターチャンバとしてシリンダ内空間116dが構成される。
その後、内周側金属シリンダ113dの他端側から中央のシリンダ内空間116dに回転シャフト112を挿通させて所定位置で固定させる。これにより、多重筒構造の共通圧胴111が製造される。
なお、図10では、共通圧胴111は4個の金属シリンダ113(113a~113d)を同心状に配設した4重筒構造の例を示したが、共通圧胴は3個の金属シリンダを同心状に配設した3重筒構造であっても、5個以上の金属シリンダを同心状に配設した多重筒構造であってもよい。
第4の実施形態の印刷装置110に備えられる共通圧胴111は、図11に示すように印刷装置110の架台18に回転可能に取付けられる。印刷装置110の全体的構成は、図1~図4に示された第1の実施形態の印刷装置10と基本的なレイアウト構成を実質的に同じくするので、同じ構成には同一符号を付して図示を省略し、重複的な説明は省略あるいは簡略化する。
図11に示された共通圧胴111は、鍛造品の鋼鉄材料で製作される。共通圧胴111は、センター軸としての回転シャフト112の周りに複数、例えば4個の円筒状金属シリンダ113(113a~113d)が同心状に配設され、多重筒構造に構成される。各金属シリンダ113の一端は一方の側板114(114a、114b)に溶接して固定される。各金属シリンダ113の他端は、他方の側板115(115a~115d)に溶接にて固定される。各金属シリンダ113(113a~113d)内に円筒状あるいはトーラス状(スリーブ状)の空洞116(116a~116d)が同心状に構成される。
多重筒構造の金属シリンダ113は、図11および図12に示すように、外周側金属シリンダ113aとその内側の(第1)中間金属シリンダ113bとの間に密閉された外周側空洞116aが円筒状あるいはトーラス状に形成される。第1中間金属シリンダ113bと第2中間金属シリンダ113cとの間に第1中間空洞116bが円筒状あるいはトーラス状に形成され、さらに第2中間金属シリンダ113cと内周側金属シリンダ113dとの間に密閉された第2中間空洞116cが円筒状あるいはトーラス状に形成される。そして、内周側金属シリンダ113dの内側にシリンダ内空洞116dが形成される。各金属シリンダ113(113a~113d)の内側に形成される円筒状あるいはトーラス状空洞116(116a~116d)も同心状に構成される。
共通圧胴111は、図1および図11に示すように、印刷装置110のセンタードラムタワーの架台18に設けられる。共通圧胴111の回転シャフト112は架台18に軸受20を介して取付けられ、モータ駆動により回転自在に支持される。共通圧胴111は、金属シリンダ113の外径が40cmφ~3mφ、好ましくは1mφ~2mφ(一例では1.5mφ)で、シリンダ壁が2cm~10cm、好ましくは6cm~10cm、例えば10cmの厚肉の密閉型の円筒状金属容器である。共通圧胴111は、例えば鍛造品の鋼鉄材料で製作された重量物である。
具体的には、共通圧胴111は複数の同心状金属シリンダ113(113a~113d)で多重筒構造に構成された密閉型の円筒状金属容器である。共通圧胴111の外周側金属シリンダ113aは、外径が1m50cmでシリンダ壁の肉厚が6cm~10cm、例えば10cmの円筒状金属容器である。外周側金属シリンダ113aの内側の中間金属シリンダ113bの肉厚は3cm~5cm、例えば4cmであり、第2中間金属シリンダ113cおよび内周側金属シリンダ113dの肉厚は2cm~3cm、例えば3cmである。一方の側板114および他方の側板115の板厚は30mm~35mmである。
また、共通圧胴111の回転シャフト112は、軸方向中央部が大径部に形成されて、40cmφ程度の直径を有し、中央部から両側方に向かうに従って段階的に小径化される。回転シャフト112の軸受部は20cmφ程度の直径を有する。
さらに、多重筒構造の金属シリンダ113は、好ましくは、外周側金属シリンダ113aとその内側の中間金属シリンダ113bの軸方向長さが、50cm~60cmで、第2の中間金属シリンダ113cおよび内周側金属シリンダ113dの軸方向長さ30cm~40cmより長い。各金属シリンダ113(113a~113d)の軸方向長さは、全て同じ長さに形成してもよい。
このようにして、センタードラムとしての共通圧胴111は、金属シリンダ113(113a~113d)内の空洞116(116a~116c)に液体を注入しない場合には、ドラム重量が4200kg程度に、液体を注入した場合、4500kg程度に構成され、重量物である。
また、共通圧胴111の金属シリンダ113(113a~113d)の密閉された各空洞116(116a~116c)には、図示しない貯蔵タンクからクーラ等の温度調節装置58(図2)で温度調節された液体が液供給装置120より供給系統を経て供給される。金属シリンダ113内の各空洞116(116a~116c)は温度調節されたオイルや水等の液体で満たされる。金属シリンダ113の空洞116(116a~116c)内の液体は、液回収装置121の回収系統を経て貯蔵タンクに回収され、各空洞116内を循環するようになっている。
液供給装置120は、共通圧胴111の金属シリンダ113の一方側に設けられ、金属シリンダ113の他方側に液回収装置121が設けられる。液供給装置120は、図11に示すように、温度調節装置58(図2)から液供給ホース122を介して接続されるロータリジョイント123と、このロータリジョイント123から回転シャフト112の軸孔および軸孔端部から分岐されて放射状に延びる供給孔124と、各供給孔124に取付けられ、図11および図13に示すように、各空洞116(116a~116c)の流入口に接続される複数のフレキシブルホース125(125a~125c)と、フレキシブルホース125に設けられたバルブ126(126a~126c)とを備える。
一方、液回収装置121は、金属シリンダ113に対して、液供給装置120の反対側に設けられる。金属シリンダ113内の各空洞116(116a~116c)の各排出口から回転シャフト112の放射状の排出口に接続されるフレキシブルホース128(128a~128c)と、フレキシブルホース128に設けられたバルブ129(129a~129c)と、回転シャフト112の排出孔から合流されて(回転シャフト112の反対側の)軸孔に案内される回収孔130と、ロータリジョイント131と、ロータリジョイント121から液体が貯蔵タンクに回収される液回収ホース132とを有する。液供給装置120と液回収装置131とにより、オイルや水等の液体循環構造を有する例を示したが、必ずしも循環サイクルを有する構成に限定されない。
さらに、第4の実施形態では、共通圧胴111の金属シリンダ113(113a~113c)内の各空洞116(116a~116c)の全てに液体を供給し、充填させる例を示したが、液体は外周側空洞116a内のみに供給し、金属シリンダ118の外表面を所定の温度に冷却するものであってもよい。他の第1および第2の中間空洞116b、116c内へは液体の供給を選択することができ、これにより共通圧胴111の総重量を選択的に調節することができる。
そして、印刷装置110の架台18に設けられたセンタードラムとしての共通圧胴111は、その周りに図1および図3に示すように複数、例えば4色の印刷ユニット21が周方向に間隔をおいて配置される。印刷ユニット21は架台18のサポート枠にそれぞれ設けられる。各印刷ユニット21は、第1の実施形態に示された印刷ユニット21と乾燥ユニット31とを交互に有する。各印刷ユニット21により、黄(イエロー)、赤(マゼンタ)、青(シアン)および黒(ブラック)の4色のインキにより、多色刷りの印刷が施される。
また、印刷装置110は、図11に示すように回転シャフト112の端部にサンギア135が設けられる。サンギア135はモータ駆動で回転駆動される回転シャフト112と一体的に回転させられる。サンギア135は、図1および図3に示された各印刷ユニット21の(版胴)プレートシリンダ23のピニオンとそれぞれ噛み合い、各印刷機構22のプレートシリンダ23を同期的に回転駆動させる。
印刷ユニット21は、印刷装置110がフレキソ印刷のドラム型印刷機として用いられる場合、第1の実施形態に示された印刷ユニット21の印刷装置10と同様、UVインキが用いられる。一方、印刷装置110がレタープレス印刷のドラム型印刷機として用いられる場合には、UVインキに代えて油性インキが用いられる。油性インキは速乾性を有するので、インキング機構26は版胴の近くに設けられる。さらに、油性インキはインキ皿27から複数の練りローラ列を通して印刷機構22の無端帯状印刷プレート25に移送され、プレートシリンダ(版胴)23から共通圧胴111に沿って案内される連続フォーム12に転写され、印刷される。
各印刷ユニット21の下流側には、色間に図1および図3に示すように乾燥ユニット31がそれぞれ設けられる。乾燥ユニット31は、隣り合う印刷ユニット21の色間で架台18のサポート部に取り付けられるUV光源等の活性光源装置である。この活性光源装置から300nm~400nmの波長域の活性光(エネルギ光)を連続フォーム12に照射されて、印刷されたUVインキや油性インキが乾燥され、固化される。
そして、印刷装置110は、駆動モータの駆動により、重量物の共通圧胴111が回転駆動される。共通圧胴111の回転駆動により、図1に示すように巻出しローラ11から繰り出された連続フォーム12は共通圧胴111の入口側(ガイドローラ15A)で屈曲され、共通圧胴111に案内される。続いて連続フォーム12は共通圧胴111の周りを時計方向に共通圧胴111の回転に伴って一体的に走行して出口側(ガイドローラ36A)に導かれ、共通圧胴111から取り出される。
連続フォーム12は、共通圧胴111の回転とともにその周りを走行する間に、複数、例えば4個の印刷ユニット21と下流側の乾燥ユニット31とを交互に通り、印刷と乾燥が繰り返されて多色印刷される。印刷された連続フォーム12は、所要の通路を経て巻取りローラ40に巻き取られる。
このとき、印刷装置110で印刷される連続フォーム12は、センタードラムとしての大径の共通圧胴111は大きな慣性力でガタ付くことなくスムーズに回転される。連続フォーム12は、印刷ユニット21間で伸縮やたるみが起きにくく、見当精度が良好であるため、精度よく印刷できて印刷精度が向上し、良好な印刷品質を確保することができる。
また、連続フォーム12は大径の共通圧胴111の回転とともに、共通圧胴111の周りに沿って走行する。印刷装置110の複数の印刷ユニット21は、図11に示された回転シャフト112のサンギア135の回転駆動に、各印刷ユニット21のピニオンが噛み合わされて回転駆動される。このため、各印刷ユニット21は同期して回転駆動され、印刷ユニット21間で伸縮やたるみが起きにくく、見当精度が良好であり、連続フォーム12にテンションの変化が生じない。連続フォーム12はテンションの変化が少なく、一様な印刷状態で印刷ユニット21により印刷される。連続フォーム12への各印刷ユニット21からの印刷は、テンションが一様に保持された状態で行われるので、印刷不良(ヤレ)の発生が少ない。従来のインライン型印刷装置で印刷された印刷物に比べ印刷不良を1/3~1/4程度格段に抑えることができる。
なお、図11において、符号137は金属シリンダ113の両側に着脱自在に設けられるバランサリングである。バランサリング137により共通圧胴111は回転バランスし、一層円滑かつスムーズに回転されるようになっている。符号138は、メンテナンス時等に利用される吊上げ用ワイヤである。
また、印刷装置110の共通圧胴111は、例えば鍛造品等の鋼鉄材料で製作され、回転シャフト112が架台18に軸受20を介して回転自在に支持される。共通圧胴111は、4000kg超の重量物であるため、駆動モータ46(図2)により大きな慣性力で軸ブレやがたつきが生じることなくスムーズに回転駆動される。共通圧胴111は、密閉型の大径の円筒容器であり、多重筒構造の円筒状厚肉金属シリンダ113(113a~113d)と回転シャフト112とが、回転バランスや左右のバランスが保たれて、一体に構成されている。
多重筒構造の金属シリンダ113の外周側金属シリンダ113aは、外径1mφ~2mφ、例えば1.5mφでシリンダ壁が6cm~10cm、例えば10cmの肉厚を有する重量物であり、金属シリンダ113内の空洞116(116a~116c)にオイルや水等の液体が満たされ、重量が増加せしめられる。メンテナンス時に、架台18から共通圧胴111を取り外したり着脱する場合には、金属シリンダ113内の液体を抜き、空にした状態で着脱作業が実施される。
さらに、金属シリンダ113内の外周側空洞116aには、18℃~30℃の液体が供給されて満たされ、円筒状金属シリンダ113の表面を冷却している。金属シリンダ113の第1中間金属シリンダ113bや第2中間金属シリンダ113c内の中間空洞116b、116cは重量調節用に構成される。共通圧胴111に重量の増加が要求されるときは、増加する重量に応じて中間空洞116bおよび116c内に液体が選択的に供給される。
各印刷ユニット21の印刷機構22は、図1および図3に示すようにプレートシリンダ(版胴)23側で、無端帯状印刷プレート(版胴)25の版面から(共通圧胴111の周りに沿って走行する)連続フォーム12にUVインキ等が転写され、印刷される。その際、共通圧胴111は、重量物である多重筒構造の大径の金属シリンダ113で構成される。しかも、厚肉の金属シリンダ113内の空洞116はオイル等の液体で満たされているので重量がより増加し、共通圧胴111は4000kg超の大重量物で構成される。このため、共通圧胴111は回転に伴う慣性量が大きい。共通圧胴111は、大きな慣性力でスムーズに回転駆動されるので、回転に伴うガタ付きやバウンシングの発生が少なく安定した回転力でなめらかに回転駆動される。
その上、共通圧胴111の周りを共通圧胴111の回転に伴って走行する連続フォーム12には、温度調節されたオイル等の液体により、所要の温度、例えば20℃~25℃に冷却され、温度調節される。連続フォーム12は共通圧胴111の回転に伴って、金属シリンダ113に接触して一体的に回転するので、連続フォーム12にたるみや伸縮がなく、テンションの変化が生じない。このため、薄くて伸縮し易い軟包装フィルムでも、見当精度が良好で、精度の良い印刷を施すことができる。したがって、印刷品質や印刷精度を向上させ、良好な印刷の被印刷物が得られる。
ところで、現在のドラム型印刷機に用いられている共通圧胴は、圧胴の重量が軽くなるように薄肉シリンダが使用されている。共通圧胴の周囲を複数の印刷ユニットを配設し、各印刷ユニットの版胴シリンダは樹脂凸版印刷版を巻装して印刷機構を構成している。各印刷機構は、多数の版胴に樹脂凸版印刷版を装着して印刷すると、印圧がバラバラに作用する。この印圧の作用により、軽量の共通圧胴に振動が生じてバウンシングが発生し、印刷精度が悪く、良好な印刷品質を得ることができない。
これに対し、第4実施形態の印刷装置110は、単一の共通圧胴111が、例えば直径1.5mφの大径の円筒状金属シリンダ113で多重筒構造に構成される。しかも、外周側金属シリンダ113aは、シリンダ壁が6cm~10cm(例えば10cm)の厚肉で円筒状に構成される。共通圧胴111が同心状の多重筒構造の金属シリンダ113(113a~113d)で構成される大重量物である。その上、共通圧胴111は金属シリンダ113内に形成された同心状の空洞116(116a~116c)にオイル等の液体が充填されることで重量が一層加算される。しかも、オイル等の液体は、18℃~30℃、好ましくは20℃~30℃に温度調節されており、印刷装置110の運転時に共通圧胴111は表面温度が冷却され、所要温度に温度調節される。
その上、印刷装置110は図1および図3に示すように、センタードラムを構成する共通圧胴111の周りに連続フォーム12が入口側ガイドローラ15aから出口側ガイドローラ36aまで略円周にわたって旋回され、共通圧胴111の回転と一体になって走行される。連続フォーム12は、見当精度が良好で、走行中に伸縮やたるみが起きにくい。連続フォーム12は、所要温度の共通圧胴111の回転に伴なって走行し、印刷されるので、薄くて伸縮しやすい軟包装フィルムでも精度よく印刷でき、印刷品質の向上を図ることができる。
また、印刷装置110は、運転を止めて時間が経つと、通常印刷時の場合、時間の経過とともに温度が変わってきて、インキの濃度や粘度に変化が現れる。特に、休みが続いた後の運転立ち上がり時の印刷ではインキ濃度の変化が顕著である。インキ濃度が変化すると、印刷ムラやインキムラのため、印刷精度が劣化し、良好な印刷品質を得ることができない。ヤレ(印刷不良)の発生が多くなる。
しかし、第4の実施形態の印刷装置110では、共通圧胴111内に温度調整されたオイル等の液体が供給され、循環される。金属シリンダ113内の空洞は温度調整された液体で満たされている。このため、共通圧胴111は供給される液体の影響を受けて、インキ温度の変化が少ない。連続フォーム12は印刷されるインキによる印刷ムラやインキムラが発生しないため、印刷精度を向上させて良好な印刷品質を保つことができ、ヤレ(印刷不良)の発生の減少を図ることができる。
さらに、印刷装置110では、印刷ユニット21の下流側に設けられる乾燥ユニット31に、活性光源装置が設けられる。活性光源装置では、300nm~400nmの波長域の活性光例えばUV光が連続フォーム12に照射される。この活性光の照射により連続フォーム12に印刷されたUVインキは光硬化反応により瞬時に凝固され、固まる。インキの液分が瞬時に失われて乾燥される。その際、乾燥ユニット31は印刷ユニット21の色間に大きな設置スペースを必要としないので、印刷ユニット21間の色間距離を長くとる必要がない。また、各印刷ユニット21や乾燥ユニット31は単一の共通圧胴111の周りに設けられるので、各印刷ユニット21に対応する複数の独立した圧胴を直線状に配列する必要がない。
しかも、各印刷ユニット21は直線状で列状に配設する必要がないので、各印刷ユニット21の設置に大きな設置床面積を必要としない。複数の印刷ユニット21は、単一の共通圧胴111周りに設置したので、多色刷りの印刷装置110を設けても、設置床面積を少なくし、省スペース化、コンパクト化を図ることができる。
さらに、本実施形態の印刷装置110は、多色刷りであっても、設置床面積が小さく、コンパクトに構成することができるので、複数の印刷ユニット21を備えた共通圧胴111の下流側に空きスペースが得られる。この空きスペースを利用して縦横ミシン加工装置やファイルパンチ、コーナカット装置、さらに連続フォーム12をジグザグ折りする公知の折り装置等の後加工装置を必要に応じて着脱自在に設置してもよい。印刷装置110の巻取部Dに折り装置の後加工装置を設置した場合には、被印刷物を巻き取る巻取りローラを必ずしも設ける必要がなく、被印刷物を受け取るスタッカー等の堆積装置が設けられる。
加えて、第4の実施形態の印刷装置110は、重量物である大径の共通圧胴111の周りに沿って連続フォーム12が走行され、連続フォーム12は、共通圧胴111周りを走行する間に各印刷ユニット21により印刷され、印刷されたUVインキが乾燥ユニット31により凝固され(乾燥され)て、印刷と乾燥が繰り返されて多色印刷の被印刷物を得ることができる。
その際、単一の共通圧胴111の周りに沿って走行される連続フォーム12は各印刷機構22間で伸縮したり、たるみが生じたり、テンションに変化が生じることがなく、見当精度よく案内される。しかも、共通圧胴111は、大きな重量物であり、金属シリンダ113内に充填され満たされるオイル等の液体で重量がさらに加算される。このため、共通圧胴111は回転による慣性量が大きく、ガタ付きやバウンシングの発生がないので、印刷ムラが発生しない。安定した印刷品質や印刷精度を確保することができ、レタープレス印刷やフレキソ印刷に適した印刷装置を提供することができる。
さらに、印刷ユニット21は、印刷機構22が樹脂凸版印刷版を無端状に接続した無端帯状印刷プレート25をプレートシリンダ(プレートローラ)23とガイドローラ24とに巻装されて構成されるので、印刷機構22の駆動によりプレートシリンダ23側に巻かれる無端帯状印刷プレート25からなる版胴が作られる。各印刷機構22の版胴は重量物である単一の共通圧胴111の間に連続フォーム12が通されて印刷されるので、見当精度が良好となり、凸版印刷版を用いても多色印刷の印刷精度を向上させることができる。
第4の実施形態の印刷装置110は、図10~図13に示される共通圧胴111を、第1の実施形態記載の共通圧胴16に代えて用いる例を説明した。第4の実施形態に示される共通圧胴111は、第2の実施形態に示された共通圧胴16に代えて用いてもよく、さらに共通圧胴111を2台(個)使用し、第3の実施形態に示された共通圧胴101、102に代えて用いるようにしてもよい。
[第5の実施形態]
本発明に係る印刷装置の第5の実施形態について、図14~図16を参照して説明する。
第5の実施形態に係る印刷装置140は、第1の実施形態の図1および図3の印刷装置10に備えられる共通圧胴16の構成が基本的に異なり、他の構成は実質的に異ならないので、図示を省略し、同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略ないしは簡略化する。
図14は、第5の実施形態に係る印刷装置140に備えられる共通圧胴141を示すものである。印刷装置140は、センタードラムタワーを構成する架台18に共通圧胴141が回転自在に設けられる。共通圧胴141は、中央に回転シャフト142をセンター軸として備える。回転シャフト142は、架台18に軸受20を介して取り付けられ、モータ駆動により回転自在に設けられる。
共通圧胴141は、ステンレス鋼や鍛造品の鋼鉄材料で製作され、大径の金属シリンダ143を有する。金属シリンダ143は、円筒状の外周側金属シリンダ143aと内周側金属シリンダ143bとにより、同心状の二重筒構造に構成される。両金属シリンダ143aと143bの間に円筒状あるいはトーラス状(スリーブ状)の空洞144が形成される。この空洞134は、外周側金属シリンダ143aと内周側金属シリンダ143bとの少なくとも一方あるいは両方を凹設することにより構成してもよい。
また、共通圧胴140の金属シリンダ143の両側に、ディスク状側板145、146が設けられる。両側板145、146には、複数例えば8つの窓孔147が花弁状に周方向に配設され、両側板145、146間に内部チャンバ148が形成される。内部チャンバ148は、エアが流出入可能に設けられる。両側板145、146の一側、例えば内側に複数の支持脚149a、149bが放射状に取り付けられ、共通圧胴140が強度的に補強される。
さらに、共通圧胴140内の密閉された空洞144には、図示しない貯蔵タンクからクーラ等の温度調節装置58(図2)に18℃~30℃に温度調節された液体が液供給装置150より供給系統を介して供給され、温度調節された液体で満たされる。一方、金属シリンダ143内の液体は、液回収装置151の回収系統を経て貯蔵タンクに回収され、空洞144内を循環するようになっている。
液供給装置150は、共通圧胴141の金属シリンダ143の一側に設けられ、金属シリンダ143の他側に液回収装置151が設けられ、第4の実施形態に示された液供給装置120、液回収装置121と略同様に構成される。
具体的に、液供給装置150は、図14に示すように、温度調節装置58(図2)から液供給ホース152およびロータリジョイント153を経て回転シャフト142の軸孔154、軸孔の端部から分岐された放射状の分岐孔を経てフレキシブルホース156に案内され、流入口から空洞144内に供給される。空洞144内は温度調節されたオイルや水等の液体で満たされる。金属シリンダ143は、空洞144内に満たされた液体により運転中は冷却され、金属シリンダ143の表面は冷却され、所要温度に温度調節される。
また、金属シリンダ143の空洞144内の液体は、各排出口からフレキシブルホース158を経て、集孔から回転シャフト142の他側の軸孔159に集められる。続いてこの軸孔に159からロータリジョイント160を経て液回収ホース161により貯蔵タンクに回収される。液供給装置150と液回収装置151により共通圧胴140の空洞144は所要温度の液体が循環され、金属シリンダ143の表面が所要温度に維持される。
そして、印刷装置140の架台18に設けられた共通圧胴141は、その周りに図1および図3に示すように複数、例えば4色の印刷ユニット21が周方向に間隔をおいて配置される。印刷ユニット21は、架台18のサポート枠にそれぞれ設けられる。各印刷ユニット21は第1の実施形態に示された印刷装置10と同様、印刷機構22とインキング機構26とを備える。印刷ユニット21に印刷された連続フォーム12は、乾燥ユニット31により乾燥される。連続フォーム12は共通圧胴141の金属シリンダ143に沿って案内される間に印刷と乾燥が交互に繰り返されて多色印刷される。
また、印刷装置140は、図14に示すように回転シャフト142の端部にサンギア135が設けられる。サンギア135は、モータ駆動で回転駆動される回転シャフト142と一体に回転される。サンギア135は、図1および図3に示された印刷機構22の各プレートシリンダ23のピニオンとそれぞれ噛み合い、各印刷機構22のプレートシリンダ(版胴)23は、同期をとって回転駆動される。
そして、印刷装置140は、第1の実施形態に示された印刷装置10、第4の実施形態に示された印刷装置110と同様に駆動され、金属シリンダ143に沿って案内される連続フォーム12に印刷ユニット21により色合せされて印刷され、印刷された連続フォーム12は乾燥ユニット31により乾燥される。共通圧胴141の金属シリンダ143に沿って案内された連続フォーム12は、印刷ユニット21による印刷と乾燥ユニット31による乾燥とが交互に繰り返されて多色印刷され、共通圧胴141から取り出される。
次に、第5の実施形態に示された印刷装置140に備えられる共通圧胴141の寸法関係の一例を説明する。
共通圧胴141を構成する円筒状金属シリンダ143および回転シャフト142は鍛造品等の鋼鉄材料で製作される。共通圧胴141の外周側金属シリンダ143aの外径は、40cm~3m、好ましくは1m~2m、一例では1.5mで、シリンダ壁が2cm~10cm、好ましくは6cm~10cm、一例では10cmの厚肉の円筒状の金属容器で重量物である。金属シリンダ143は外周側金属シリンダ143aの軸方向長さが50cm~60cm、一例では55cm程度に形成され、内周側金属シリンダ143bの軸方向長さは50cm~55cmに形成される。
金属シリンダ143内に形成される空洞144は、円筒状あるいはトーラス状(スリーブ状)に構成され、空洞144内は密閉空間に形成される。空洞144の厚さは1cm~7cm、好ましくは3cm~7cmに形成される。金属シリンダ143の両側に設けられる側板145、146は30mm~35mmの板厚を有する。
そして、共通圧胴141の回転シャフト142は、軸方向中央部が大径部として構成され、大径部は40cmφ程度の直径を有し、中央部から両側方に向かうに従って段階的に小径化される。回転シャフト142の軸受部は20cmφ程度の直径を有し、両側の軸受部からセンタードラムタワーの架台18に軸受20を介して回転自在に支持される。
このようにして構成された共通圧胴141は、2500Kg超の重量物に構成される。この共通圧胴141を備えた第5の実施形態の印刷装置140は、第4の実施形態に示された印刷装置110と同様に駆動される。
第5の実施形態に係る印刷装置140は、重量物の共通圧胴141を備え、共通圧胴141は厚肉の外周側金属シリンダ143Aと内周側金属シリンダ143bとの同心状の二重筒構造に構成されるので、回転シャフト142周りの回転により慣性量が大きい。共通圧胴141は重量物で慣性量が大きいので、回転バランスが良く、ガタ付きやバウンシングの発生を抑えることができ、共通圧胴周りを案内される連続フォームの伸縮やたるみ、テンションの変化を防止して、精度の良い印刷が可能で安定した印刷品質と印刷精度を確保することができる。
また、第5の実施形態の印刷装置140は、第4の実施形態の印刷装置110と同様に、図14~図16に示される共通圧胴141を、第1の実施形態に記載の共通圧胴16に代えて用いる例を説明した。第5の実施形態に示される共通圧胴141は、第2の実施形態に示された共通圧胴16に代えて用いてもよく、さらに、共通圧胴141を2台(個)使用し、第3の実施形態に示された共通圧胴101および102に代えて用いるようにしてもよい。
本発明に係る印刷装置の各実施形態に重量物の共通圧胴を備えた例を説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形した共通圧胴が考えられる。