以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1及び図2は歩行車10を斜め前方から見た斜視図であり、図3及び図4は歩行車10を示す側面図である。図1及び図3では、歩行車10の脚体部11が開脚された開脚状態を示しており、図2及び図4では、脚体部11が閉脚された閉脚状態を示している。なお、以下の説明では、歩行車10を移動させる際の移動方向を前後方向とし、その前後方向に対して直交する方向を左右方向とする。また、以下においては、特に説明がない場合、脚体部11の開脚状態における歩行車10の構成をいうものとする。
図1及び図3に示すように、歩行車10は、左右方向に離間して設けられた一対の脚体部11と、それら脚体部11の間に設けられた座部12と、各脚体部11にそれぞれ連結され背もたれ14を形成するための背もたれ構成部13とを備える。
各脚体部11はそれぞれ、前脚フレーム15と後脚フレーム16とを有している。これら各脚フレーム15,16はアルミニウム等の軽金属により形成されている。各脚フレーム15,16は前後に並んで配置され、互いに交差してはいない。
前脚フレーム15の下端部には前輪17が取り付けられ、後脚フレーム16の下端部には後輪18が取り付けられている。前輪17は、左右に延びる回転軸17aを有し、その回転軸17aを中心として回転可能とされている。また、後輪18は、左右に延びる回転軸18aを有し、その回転軸18aを中心として回転可能とされている。なお、回転軸17aが前輪回転軸に相当し、回転軸18aが後輪回転軸に相当する。
前脚フレーム15は、その上下方向の中間部に曲げ部15aを有している。前脚フレーム15は、その曲げ部15aよりも上側が上側フレーム部15bとなっており、曲げ部15aよりも下側が下側フレーム部15cとなっている。上側フレーム部15bと下側フレーム部15cとはいずれも、側面視にて、下方に向かうにつれ前方に傾斜するよう延びている。この場合、上側フレーム部15bが鉛直方向に対して前方に傾斜する傾斜角度は、下側フレーム部15cが鉛直方向に対して前方に傾斜する傾斜角度よりも大きくなっている。また、各脚体部11の前脚フレーム15は、互いの下端部間に架け渡された下部フレーム23により連結されている。なお、前脚フレーム15の曲げ部15aが第2曲げ部に相当する。
ちなみに、本実施形態では、上側フレーム部15bが正面視にて鉛直方向に延びているのに対し、下側フレーム部15cが正面視にて下方に向かうにつれ左右方向の内側に傾斜している。ただ、下側フレーム部15cは必ずしも正面視にて傾斜させる必要はなく、鉛直方向に延びるようにしてもよい。
後脚フレーム16は、下端部に後輪18が取り付けられた第1フレーム21と、その第1フレーム21の上側に連結された第2フレーム22とを有する。第1フレーム21は、筒状をなしており、その上下方向の中間部に曲げ部21aを有している。第1フレーム21は、その曲げ部21aよりも上側が上側フレーム部21bとなっており、曲げ部21aよりも下側が下側フレーム部21cとなっている。上側フレーム部21bは鉛直方向に延びており、下側フレーム部21cは下方に向かうにつれ後方に傾斜するように延びている。なお、曲げ部21aが第1曲げ部に相当する。
第2フレーム22は、金属製の棒材からなり、上下方向に延びている。第2フレーム22は、第1フレーム21の上側フレーム部21bに上方から挿入されており、その挿入状態で一部が第1フレーム21から上方に突出している。第2フレーム22は、第1フレーム21への挿入状態において、上下方向に位置調整が可能となっている。この場合、その上下位置調整により、後脚フレーム16の高さ寸法(上下方向の長さ)を調整することが可能となっている。また、第2フレーム22は、位置調整された位置において第1フレーム21にねじ部材24を用いて固定されるようになっている。
第2フレーム22の上端部には、取付部25を介してハンドル26とブレーキレバー27とが取り付けられている。ハンドル26は、使用者が歩行車10を移動させる際に把持する部分であり、棒状に形成されている。ハンドル26は、取付部25から後方に延びるように当該取付部25に取り付けられている。また、ハンドル26は、第2フレーム22の上下位置調整により後脚フレーム16の高さ寸法を調整することで、その高さ位置(ハンドル高さ)を調整することが可能となっている。
ここで、上述したように、後脚フレーム16の第1フレーム21は曲げ部21aを有している。この曲げ部21aにより、後脚フレーム16は、曲げ部21aよりも上側部分(つまり上側フレーム部21b及び第2フレーム22)が鉛直方向に延びているのに対し、曲げ部21aよりも下側部分(つまり下側フレーム部21c)が下方に向け後方に傾斜して延びている。これにより、上記下側部分の下端部に取り付けられた後輪18の回転軸18aが、上記上側部分の上端側に設けられたハンドル26よりも後方に位置している。
ブレーキレバー27は、ブレーキ操作を行うためのもので、ハンドル26の下方に設けられている。ブレーキレバー27は、ハンドル26と同じく、取付部25から後方に延びるように当該取付部25に取り付けられている。なお、本実施形態では、取付部25が環状をなしており、その環状孔の上側部分が持ち手部25aとなっている。これにより、段差等で歩行車10を持ち上げる際には、この持ち手部25aを持って歩行車10を持ち上げることが可能となっている。
各脚体部11において、前脚フレーム15の上端部にはブラケット28が固定されている。また、後脚フレーム16の上部、詳しくは第1フレーム21の上端部にはブラケット29が固定されている。これら各ブラケット28,29はいずれも樹脂製であり、左右方向に延びる回動軸33を介して回動可能に連結されている。これにより、各脚体部11では、前脚フレーム15が後脚フレーム16に対して回動軸33を中心として回動可能となっている。そして、その回動によって、各脚体部11は、前脚フレーム15の下部が後脚フレーム16の下部から離間した開脚状態(図1及び図3に示す状態)と、前脚フレーム15の下部が後脚フレーム16の下部に接近した閉脚状態(図2及び図4に示す状態)とに移行可能とされている。
ここで、閉脚状態における脚体部11の構成について説明する。
図2及び図4に示すように、脚体部11の閉脚状態では、脚体部11が折り畳まれた状態となる。この折り畳み状態において歩行車10は自立可能となっている。脚体部11の閉脚状態では、後脚フレーム16が、脚体部11の開脚状態と比べ、後方に傾いた状態とされる。具体的には、脚体部11の閉脚状態では、後脚フレーム16において曲げ部21aよりも上側部分(上側フレーム部21b及び第2フレーム22)が上方に向かうにつれ後方に傾斜して配置されるのに対し、曲げ部21aよりも下側部分(下側フレーム部21c)が下方に向かうにつれ後方に傾斜して配置される。この場合、後脚フレーム16は、曲げ部21aが前方に突出するようにくの字状をなして配置される。
また、脚体部11の閉脚状態では、前脚フレーム15が、くの字状をなす後脚フレーム16に沿うように配置される。この場合、前脚フレーム15は、その曲げ部15aが後脚フレーム16の曲げ部21aと前後に並ぶように配置される。また、上側フレーム部15bは下方に向かうにつれ前側に傾斜して配置される一方、下側フレーム部15cは略鉛直方向に延びるように配置される。
図1及び図3に示すように、座部12は、前後に離間して設けられた2つの座部フレーム31,32により支持されている。各座部フレーム31,32は、左右方向に延びる金属製のパイプ材からなる。各座部フレーム31,32のうち、前側の座部フレーム31は、その両端部が各脚体部11の前脚フレーム15に固定されている。詳しくは、座部フレーム31の両端部は、各前脚フレーム15の上側フレーム部15bに固定されている。また、後側の座部フレーム32は、その両端部が各脚体部11の後脚フレーム16の第1フレーム21に固定されている。詳しくは、座部フレーム32の両端部は、各第1フレーム21の上側フレーム部21bに固定されている。
座部12は、樹脂製のシート材からなり、各座部フレーム31,32に跨がって設けられている。座部12は、その前端部が座部フレーム31に取り付けられ、後端部が座部フレーム32に取り付けられている。この場合、各脚体部11が開脚状態から閉脚状態に移行すると、各座部フレーム31,32が互いに接近し、それに追従して座部12が折り畳まれるように変形する(図2等参照)。
続いて、背もたれ構成部13について説明する。
背もたれ構成部13は、各脚体部11にそれぞれ連結され、各脚体部11から前方に向けて延びるように設けられている。背もたれ構成部13は、その平面視においてコ字状をなしており、前方に向けて凸となるように(換言すると後方にコ字状溝部を向けて)配置されている。背もたれ構成部13は、背もたれ14を形成する背もたれフレーム36と、背もたれフレーム36の両端部に設けられた一対の連結具37とを有している。背もたれフレーム36は、金属製の棒材又はパイプ材により形成されている。背もたれフレーム36は、背もたれ構成部13の前端部において左右方向に延びており、その左右方向の両端側がそれぞれ後方に曲げられている。また、連結具37は前後に延びる金具であり、その前端部が背もたれフレーム36に固定され、後端部が脚体部11に連結されている。
背もたれ構成部13(詳しくは各連結具37)は各脚体部11に回動軸33を介して回動可能に連結されている。この場合、背もたれ構成部13は、脚体部11の前脚フレーム15及び後脚フレーム16を連結する回動軸33によって脚体部11に連結されている。
背もたれ構成部13は、各回動軸33を中心として上下に回動可能とされている。そして、背もたれ構成部13は、その回動により、背もたれ14を形成する背もたれ位置(図1及び図3参照)と、その背もたれ位置から上方に退避される退避位置(図2及び図4参照)との間で移動可能とされている。背もたれ位置では、背もたれ構成部13が各脚体部11から前方に向けて上方傾斜するように配置される。なお、背もたれ構成部13が「回動操作部」に相当する。また、背もたれ位置が「第2位置」に相当し、退避位置が「第1位置」に相当する。
なお、背もたれ構成部13は、側面視において、回動軸33から前方に離間する側に延びており、その離間する側となる前端側が回動先端側、それとは反対側となる後端側が回動基端側となっている。
背もたれ構成部13(詳しくは背もたれフレーム36)には、その前端部、換言すると回動先端部に取手部材39が取り付けられている。取手部材39は樹脂製であり、左右方向に延びている。取手部材39は、左右に貫通して延びる孔部を有し、その孔部に背もたれフレーム36を挿通させた状態で当該背もたれフレーム36に取り付けられている。また、取手部材39は、その左右方向の中央部が前方に突出しており、その突出した部分が把持部39aとなっている。この把持部39aは、使用者が背もたれ構成部13を回動操作する際に把持する部分となっており、背もたれフレーム36に対して前方に突出して配置されている。
歩行車10には、背もたれ構成部13の回動に連動させて、脚体部11を開脚状態と閉脚状態とに切り替える連動機構40が設けられている。連動機構40は、各脚体部11ごとに設けられ、それぞれ脚体部11と背もたれ構成部13とを連結している。この連動機構40により、背もたれ構成部13が背もたれ位置にある場合には脚体部11が開脚状態とされ、背もたれ構成部13が退避位置にある場合には脚体部11が閉脚状態とされるよう、それら両者11,13が互いに連動されるようになっている。
続いて、連動機構40の構成について図5及び図6を用いながら詳しく説明する。図5及び図6はいずれも連動機構40周辺の構成を拡大して示す側面図である。図5では脚体部11の開脚状態を示しており、図6では閉脚状態を示している。
図5及び図6に示すように、連動機構40は、脚体部11の前脚フレーム15及び後脚フレーム16を連結するリンク部41と、そのリンク部41と背もたれ構成部13とを連結するリンク連結部42とを有する。リンク部41は、背もたれ構成部13よりも下方に配置され、直線状に延びる金属製の一対のリンク43,44と、それらリンク43,44の端部同士を連結する軸部45とを有している。軸部45は左右方向に延びており、その軸部45を中心として各リンク43,44が互いに回動可能とされている。
一対のリンク43,44のうち、一方のリンク43は前脚フレーム15に軸部47を介して回動可能に連結され、他方のリンク44は後脚フレーム16に軸部48を介して回動可能に連結されている。これらの軸部47,48はいずれも軸部45と同じく左右方向に延びている。より詳しくは、前脚フレーム15にはリンク受け部49が固定され、そのリンク受け部49にリンク43の反軸部45側の端部が軸部47を介して連結されている。また、後脚フレーム16の第1フレーム21には、リンク44の反軸部45側の端部が軸部48を介して連結されている。
リンク部41は、各リンク43,44が軸部45を中心として互いに回動となっている。リンク部41は、それら各リンク43,44の回動により、各リンク43,44が前後に延びるように展開される展開状態(図5参照)と、各リンク43,44が上方に突出するように折り曲げられる折り曲げ状態(図6参照)とに変形可能とされている。この場合、リンク部41が展開状態とされると、それに伴い脚体部11が開脚状態とされ、リンク部41が折り曲げ状態とされると、それに伴い脚体部11が閉脚状態とされるようになっている。なお、リンク部41において、軸部45はリンク部41(詳しくは各リンク43,44)を折り曲げ可能とする「折り曲げ部」に相当する。
リンク43には、リンク部41が展開状態にある場合に、リンク44と当接する当接部51が設けられている(図5参照)。当接部51は、円柱状のピンからなり、リンク43においてリンク44との境界部に設けられている。この場合、この当接部51にリンク44に設けられた被当接部44aが当接することで、各リンク43,44が下方に突出するよう折れ曲がることが規制されている。そして、この規制により、脚体部11が開脚状態からさらに開脚側へと動作することが規制されている。
また、リンク部41が折り曲げ状態にある場合には、リンク44に設けられた被当接部44bが当接部51と当接する(図6参照)。この場合、この当接により、各リンク43,44がさらに折れ曲がることが規制されている。そして、この規制により、脚体部11が閉脚状態からさらに閉脚側へと動作することが規制されている。これにより、脚体部11は、開脚状態から閉脚状態までの範囲においてのみ動作することが可能となっている。
なお、当接部51は必ずしもリンク43に設ける必要はなく、リンク44に設けてもよい。また、上記では、リンク部41が展開状態にある場合にリンク44の被当接部44aが当接する当接部と、リンク部41が折り曲げ状態にある場合にリンク44の被当接部44bが当接する当接部とを同じ当接部51としたが、これら各当接部を別々に設けてもよい。
リンク連結部42は、直線状に延びる長尺材からなり、リンク部41と背もたれ構成部13とを上下に連結している。リンク連結部42は、リンク部41と背もたれ構成部13とにそれぞれ回動可能に連結されている。このリンク連結部42により、背もたれ構成部13が背もたれ位置にある場合には、リンク部41が展開状態とされ、背もたれ構成部13が退避位置にある場合には、リンク部41が折り曲げ状態とされるよう、背もたれ構成部13とリンク部41とが互いに連動されるようになっている。
リンク連結部42は、棒状をなす本体部42aと、その本体部42aの両端部に固定された一対の連結部42b,42cとを有する。本体部42aは金属製の棒材からなり、連結部42b,42cは金属製の板材からなる。リンク連結部42は、一方の連結部42bが背もたれ構成部13の連結具37に軸部53を介して回動可能に連結され、他方の連結部42cがリンク部41に軸部45を介して回動可能に連結されている。軸部53は、左右方向に延びる軸であり、背もたれ構成部13の回動軸33よりも前方に配置されている。
続いて、上述した連動機構40により、背もたれ構成部13の回動操作に連動して、各脚体部11が開脚状態と閉脚状態とに切り替えられる(移行する)際の作用について説明する。なお、図7は、脚体部11が開脚状態から閉脚状態へ移行する際の様子を示す側面図であり、(a)が脚体部11の開脚状態を示し、(b)が開脚状態から閉脚状態へ移行する移行途中の状態を示し、(c)が閉脚状態を示している。
まず、脚体部11が開脚状態から閉脚状態へ切り替えられる際の作用について説明する。脚体部11が開脚状態にある場合には、図7(a)に示すように、背もたれ構成部13が背もたれ位置に位置している。また、リンク部41が展開状態とされている。
図7(b)に示すように、背もたれ構成部13が背もたれ位置から上方に向けて回動されると、それに伴い、リンク部41がリンク連結部42を介して背もたれ構成部13により上方に引き上げられる。この引き上げに際し、リンク部41は、各リンク43,44が上方に折れ曲がるようにして変形する。そして、その変形に伴い、前脚フレーム15の下部が後脚フレーム16の下部に対して接近する。なお、図7(b)では、この際の背もたれ構成部13、リンク部41(リンク連結部42)、前脚フレーム15の動作向きを実線矢印にて示している。
図7(c)に示すように、背もたれ構成部13が退避位置まで回動されると、リンク部41が折り曲げ状態とされる。そして、それに伴い、前脚フレーム15が後脚フレーム16に対して折り畳まれた状態とされる。これにより、脚体部11が閉脚状態とされる。このように、本歩行車10では、背もたれ構成部13を背もたれ位置から退避位置へと回動することで、脚体部11を開脚状態から閉脚状態へ切り替える閉脚操作を行うことが可能となっている。
次に、脚体部11が閉脚状態から開脚状態へ切り替えられる際の作用について説明する。まず、脚体部11が閉脚状態にある場合には、図7(c)に示すように、背もたれ構成部13が退避位置に位置しており、また、リンク部41が折り曲げ状態とされている。
図7(b)に示すように、背もたれ構成部13が退避位置から背もたれ位置へ向けて下方に回動されると、それに伴い、リンク部41がリンク連結部42を介して背もたれ構成部13により押し下げられる。すると、それに伴い、リンク部41の各リンク43,44が前後に展開され、その展開に伴い前脚フレーム15の下部が後脚フレーム16の下部に対して前方に離間する。なお、図7(b)では、この際の背もたれ構成部13、リンク部41(リンク連結部42)、前脚フレーム15の動作向きを点線矢印にて示している。
図7(a)に示すように、背もたれ構成部13が背もたれ位置まで回動されると、リンク部41が展開状態とされる。そして、それに伴い、前脚フレーム15が後脚フレーム16から離間し脚体部11が開脚状態とされる。このように、本歩行車10では、背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置へと回動することで、脚体部11を閉脚状態から開脚状態へ切り替える開脚操作を行うことが可能となっている。
ここで、本歩行車10では、脚体部11の開脚操作を好適に行えるようにすべく、脚体部11の閉脚状態における構成に特徴を有している。そこで、以下では、かかる特徴的構成について図2、図4及び図6を参照しながら説明する。なお、以下では、その特徴的構成により奏する作用効果についても併せて説明する。
図2及び図4に示すように、脚体部11が閉脚状態にある場合、つまり背もたれ構成部13が退避位置にある場合には、背もたれ構成部13が、側面視にて回動軸33から前方に向けて上方傾斜するように配置される。この場合、背もたれ構成部13に設けられた取手部材39の把持部39aが、側面視にて、回動軸33に対し前側であってかつ斜め上方となる位置に配置される。
かかる構成によれば、使用者が開脚操作において、把持部39aを持って背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置へ向けて移動させる際、その移動に伴う下向きの力を発生させ易く、その結果、その発生した下向きの力により前脚フレーム15を後脚フレーム16から離間する側へ移動させ易くすることができる。そのため、ハンドル26が後脚フレーム16に設けられた本歩行車10において、脚体部11の開脚操作を容易に行うことが可能となる。
ここで、背もたれ構成部13が退避位置にある場合に把持部39aが回動軸33に対し前方であってかつ斜め上方に配置される上述の構成では、把持部39aを持って背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置に向けて回動させる際、つまり脚体部11の開脚操作を行う際、背もたれ構成部13に対し前側へ向けた斜め下向きの力が作用することになる。そのため、開脚操作に際し歩行車10が前方に倒れる前倒れが生じることが懸念される。特に、本歩行車10では、脚体部11の閉脚状態において、後脚フレーム16が、その下側部分(下側フレーム部21c)を前方に傾斜させて配置されるとともに、その後脚フレーム16に沿うようにして前脚フレーム15が配置されるため、開脚操作に際し、歩行車10の前倒れが生じ易いと考えられる。
そこで、かかる点を鑑み、本歩行車10では、脚体部11の閉脚状態において把持部39aが前輪17の回転軸17aよりも後方に配置されるようになっている。これにより、上述した構成を有する本歩行車10において、脚体部11の開脚操作に際し、歩行車10が前倒れするのを抑制することができる。
また、脚体部11の閉脚状態において、後脚フレーム16が、その下側部分を前側に傾斜させて配置される構成では、その前側傾斜された後脚フレーム16に連結されるリンク部41が後輪18に対して大きく前側に位置することが考えられ、そうすると、リンク部41の軸部45(折り曲げ部に相当)が前輪17の回転軸17aよりも前側に位置してしまうおそれがある。そうなると、背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置に回動させリンク部41を折り曲げ状態から展開状態に変形させることで、脚体部11を閉脚状態から開脚状態に移行させる際、その移行をスムーズに行えないおそれがある。
そこで、このような点に鑑み、本歩行車10では、脚体部11の閉脚状態において、リンク部41の軸部45が前輪17の回転軸17aよりも後方でかつ後輪18の回転軸18aよりも前方に位置するようにしている。この場合、リンク部41を折り曲げ状態から展開状態に変形させることで脚体部11を閉脚状態から開脚状態に移行させる際、その移行をスムーズに行うことが可能となる。これにより、上述した構成を有する本歩行車10においても、脚体部11の開脚操作を容易に行うことが可能となる。
また、脚体部11の閉脚状態では、図6に示すように、リンク部41が上方に突出する折り曲げ状態とされて、リンク部41の(後側の)リンク44が上下に延びるように配置される。また、リンク部41と背もたれ構成部13とを連結するリンク連結部42も上下に延びるように配置される。ここで、リンク44とリンク連結部42との位置関係について詳しく説明すると、リンク44の両端部には各軸部45,48が設けられ、リンク連結部42の両端部には各軸部45,53が設けられている。この場合、側面視において各軸部45,53(詳しくはそれらの中心)を結ぶ仮想直線L1と、側面視において各軸部45,48(詳しくはそれらの中心)を結ぶ仮想直線L2とは、軸部45よりも下方において互いに所定の角度αをなしている。詳しくは、仮想直線L2は、軸部45よりも下方において仮想直線L1に対して後方に傾斜しており、その傾斜した傾斜角度が角度αとなっている。本実施形態では、この角度αが12°となっている。これにより、背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置へ向けて回動させることで、リンク部41がリンク連結部42を介して背もたれ構成部13により押し下げられる際、その押し下げ力によりリンク部41を折り曲げ状態から展開状態に好適に移行させることができる。
すなわち、例えば角度αが0°~5°である場合には、リンク連結部42とリンク44とが一列に並ぶように配置されるため、リンク連結部42を介してリンク44に作用する背もたれ構成部13からの上記押し下げ力によりリンク44を下方へ回動させるのが困難になると考えられ、その結果、リンク部41を折り曲げ状態から展開状態に移行させるのが困難になると考えられる。その点、本歩行車10では、上述したように、角度αが12°に設定されていることで、上記押し下げ力によりリンク部41を折り曲げ状態から展開状態に好適に移行させることができる。このため、脚体部11を閉脚状態から開脚状態に好適に移行させることができる。なお、角度αは必ずしも12°である必要はなく、10°以上であれば、詳しくは10°~20°の範囲内であれば、上記の効果を得ることができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、上述した効果の他に、以下の優れた効果が得られる。
後脚フレーム16における上下方向の中間部に曲げ部21aを設けることで、脚体部11の開脚状態では、後脚フレーム16において後輪18が取り付けられた下側部分(曲げ部21aよりも下側部分)が、ハンドル26が設けられた上側部分(曲げ部21aよりも上側部分)よりも後方に延びるようにした。これにより、脚体部11の開脚状態において後輪18をハンドル26に対して後方に位置させ易くすることができるため、歩行車10を安定した状態で走行させることが可能となる。
また、曲げ部21aにより後脚フレーム16がその中間高さにて前側(詳しくは前側の斜め下)に凸となるよう曲げられるため、後脚フレーム16の中間高さ付近においては後脚フレーム16を比較的前側に位置させることができる。この場合、左右の後脚フレーム16を中間高さで連結する座部フレーム32を前側に位置させ易く、それにより、歩行車10を走行させる使用者に対し座部フレーム32を前側に離間配置させ易い。このため、使用者の前方に所定のスペースを確保し易く、使用者が歩行車10を走行させる上で好適な構成とすることが可能となる。
前脚フレーム15における上下方向の中間部に曲げ部15aを設けることで、脚体部11の閉脚状態において、前脚フレーム15が後脚フレーム16に沿うように配置されるようにした。この場合、脚体部11の閉脚状態において歩行車10をコンパクトにすることが可能となる。
連動機構40により、背もたれ構成部13が背もたれ位置にある場合には脚体部11を開脚状態とし、背もたれ構成部13が退避位置にある場合には脚体部11を閉脚状態とするよう、背もたれ構成部13と脚体部11とを連動させるようにした。この場合、背もたれ構成部13を退避位置から背もたれ位置に回動することで脚体部11を閉脚状態から開脚状態に移行させることができ、また背もたれ構成部13を背もたれ位置から退避位置に回動することで脚体部11を開脚状態から閉脚状態に移行させることができる。したがって、この場合、背もたれ構成部13を用いて脚体部11の開脚操作だけでなく閉脚操作を行うことも可能となる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、背もたれ構成部13が退避位置にある場合に把持部39aが前輪17の回転軸17aよりも後方に配置されるようにしたが、これを変更して、背もたれ構成部13が退避位置にある場合に把持部39aが前後方向にて回転軸17aと同じ位置か又はそれよりも前方に配置されるようにしてもよい。ただし、開脚操作の際に歩行車10が前倒れするのを抑制する上では、把持部39aが前輪17の回転軸17aよりも後方に配置されるのが望ましい。
・上記実施形態では、回動操作部として、背もたれ14を形成する背もたれ構成部13を用いたが、回動操作部としては必ずしも背もたれ構成部13を用いる必要はない。例えば、背もたれ構成部13とは別に開脚操作専用の回動操作部を設けるようにしてもよい。
・上記実施形態では、背もたれ構成部13(ひいては回動操作部)を用いて、脚体部11の開脚操作に加え、脚体部11の閉脚操作も行えるようにしたが、これを変更して、回動操作部を用いて脚体部11の開脚操作のみ行えるようにしてもよい。この場合、脚体部11の閉脚操作を行う閉脚操作用の操作部を別途設ける必要がある。
・脚体部11を構成する前脚フレーム15及び後脚フレーム16の形状は必ずしも上記実施形態の形状に限定されない。例えば、上記実施形態では、前脚フレーム15について、曲げ部15aを有する曲げ形状としたが、これに代えて、曲げ部15aを設けず下方に向かうにつれ前側に傾斜する直線形状としてもよい。また、後脚フレーム16についても同様に、曲げ部21aを設けず下方に向かうにつれ後側に傾斜する直線形状としてもよい。
・後脚フレーム16は、必ずしも第1フレーム21と第2フレーム22とを有する2部材構成とする必要はなく、例えば単一部材(一のフレーム材)により形成してもよい。
・上記実施形態では、リンク部41を、一対のリンク43,44を軸部45(折り曲げ部に相当)を介して回動可能に連結することで、リンク部41(詳しくはリンク43,44)を軸部45において折り曲げられる折り曲げ状態と、折り曲げ状態に対して展開される展開状態とに変形可能としたが、リンク部の構成は必ずしもかかる構成に限定されない。例えば、リンク部を単一の部材により形成してもよい。この場合、リンク部を、折り曲げ部(例えば折り曲げ線)において折り曲げ変形可能な金属製又は樹脂製の帯板材により形成することが考えられる。この場合にも、リンク部を、折り曲げ部において折り曲げられた折り曲げ状態と、その折り曲げ状態に対して展開された展開状態とに変形可能とすることが可能となる。
・上記実施形態では、背もたれ構成部13に把持部39aを有する取手部材39を設けたが、背もたれ構成部13に取手部材39を設けず背もたれフレーム36の前端部を把持部として用いてもよい。