JP7048223B2 - 包装済食物の製造方法、及び、包装済食物 - Google Patents
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Description
前記洗浄工程によって洗浄された前記対象食物を無菌状態で裁断加工する裁断工程と、
前記裁断工程において裁断加工された前記対象食物を無菌状態で包装する包装工程と、
を続けて行う包装済食物の製造方法。
<2> 前記洗浄工程は、1つの吐出口当たり洗浄槽容積に対し1秒間で0.05体積%以上、且つ、圧力0.01MPa以上で吐出された前記微細気泡を含む液体で前記対象食物を洗浄する前記<1>に記載の包装済食物の製造方法。
<3> 前記微細気泡の直径が10nm~500nmである前記<1>又は<2>に記載の包装済食物の製造方法。
<4> 前記液体中の前記微細気泡の濃度が106個/ml以上である前記<1>~<3>のいずれか一つに記載の包装済食物の製造方法。
<5> 前記洗浄工程における洗浄時間が2秒間~30分間である前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の包装済食物の製造方法。
<6> 前記対象食物が、層状構造を有する野菜である前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の包装済食物の製造方法。
<7> 直径1μm未満の微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄された後、無菌状態で裁断加工及び包装された包装済食物。
<8> 1つの吐出口当たり洗浄槽容積に対し1秒間で0.05体積%以上、且つ、圧力0.01MPa以上で吐出された前記微細気泡を含む液体で前記微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄された前記<8>に記載の包装済食物。
<9> 前記微細気泡の直径が10nm~500nmである前記<7>又は<8>に記載の包装済食物。
<10> 前記液体中の前記微細気泡の濃度が106個/ml以上である前記<7>~<9>のいずれか一つに記載の包装済食物。
<11> 前記液体の噴流による洗浄時間が2秒間~30分間である前記<7>~<10>のいずれか一つに記載の包装済食物。
<12> 前記対象食物が、層状構造を有する野菜である前記<7>~<11>のいずれか一つに記載の包装済食物。
本実施形態の包装済食物の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称することがある。)は、対象食物を直径1μm未満の微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程によって洗浄された前記対象食物を無菌状態で裁断加工する裁断工程と、前記裁断工程において裁断加工された前記対象食物を無菌状態で包装する包装工程と、を続けて行う。ここで、各工程を「続けて行う」とは、洗浄工程と、裁断工程と、包装工程とが、各工程の間に次亜塩素酸等を用いた除菌工程が介されることなく続けて行われることを意味する。ただし、各工程は、洗浄工程で使用する液体と共存する状態で行われてもよい。また、洗浄工程、裁断工程及び包装工程は除菌工程の以外にも極力他の工程が含まれないことが望ましいが、無菌状態が維持されることを条件として、各工程の間又は各工程自体に脱水処理、異物検出、重量チェック等を行う工程が含まれていてもよい。以下、直径1μm未満の微細な気泡を適宜「UFB」と称することがある。
本実施形態における「洗浄工程」は、対象食物を直径1μm未満の微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄する工程である。洗浄工程は、上述のように付着した泥やごみなどを洗い流すための予備洗浄や不食部位を除去などの準備工程を経て準備された対象食物を用いることができる。また、本実施形態の製造方法は、洗浄工程において次亜塩素酸等の殺菌剤を用いずに対象食物の洗浄及び殺菌が可能なことから、洗浄工程の後に別途殺菌剤等を除去するための工程をおこなわない。このため、大量のチラー水等を用いる必要がなく、コスト及び資源的観点からも優れている。
本実施形態における「対象食物」は液体で洗浄できる食物であれば特に限定されず、例えば、野菜や果物などの青果物に加えて、魚介類や肉類などの生鮮食品、豆腐やこんにゃくなどの加工食品等が挙げられる。特に、加熱殺菌しない調理品が好適な対象として挙げられる。本実施形態の製造方法は青果物に対して好適であり、特に棒ネギやタマネギ等の層状構造を有する野菜に好適に用いることができる。
本実施形態における「微細気泡」は、直径1μm未満の微細気泡であり、所謂「ウルトラファインバブル」と称されるナノオーダーの微細気泡を好適に用いることができる。微細気泡の直径が1μm以上であると、直径が1μm未満の微細気泡と比べ液体中において上昇速度が速く、水面浮上して消失しやすくなり十分な洗浄効果が得られない。この際の微細気泡の上昇速度は、以下の式(Stokes式)に従う。
上昇速度U=ρgd2/18μ
d:球形気泡の直径、g:重力加速度、ρ:液密度、μ:液粘度
本実施形態における微細粒子の直径は1μm未満であれば特に限定されるものではないが、10nm~500nmであることが好ましい。液体中のUFBの存在は、例えばレーザー光の散乱を用いることによって確認することができる。
本実施形態における洗浄工程においては、UFBを含む液体(以下、「UFB水」と称することもある)の噴流を用いる。ここで、「噴流」とは、速度を持った流体が圧力をかけて吐出口から空間中にほぼ一方向の流れとなって噴出する現象である。前記洗浄工程では、UFBを含む洗浄用水を除菌洗浄対象である対象食物を含む洗浄槽に一定時間噴射して洗浄対象(対象食物)と混合させる。洗浄工程における洗浄条件は洗浄槽の形状、サイズ、噴出孔の数や位置、洗浄対象である対象食物(青果等)のサイズや比重などを考慮して決定することができる。一方、噴流の強度の範囲は対象の青果が沈降するあるいは浮いたままの状態よりも強く、青果が噴流によって傷つくより弱い、という必要がある。このような観点から、前記洗浄工程において「微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄する」とは、1つの吐出口当たり洗浄槽容積に対し1秒間で0.05体積%以上、且つ、圧力0.01MPa以上で吐出された微細気泡を含む液体で対象食物を洗浄することを意味する。
本明細書を通じて、吐出口から微細気泡を含む液体を吐出するため圧力を「吐出圧力」(単位:Pa)と称する。また、1つの吐出口から1秒間洗浄槽容積に吐出される洗浄槽容器の容積に対する微細気泡を含む液体の量の比を「吐出量」(単位:体積%)と称する。
UFBを含む液体の吐出圧力が0.01MPa未満又は1秒間の吐出量が0.05体積%未満のUFB水量で洗浄した場合、菌体が潜んでいる対象食物の表面構造内にUFBが十分に侵入できず、殺菌効果を十分に発揮することができない。前記吐出圧力としては、対象食物の鮮度(ダメージの受け具合)と洗浄及び殺菌作用とのバランス、並びに工場稼働エネルギーの観点から、0.01~0.10MPaであることが好ましく、0.01~0.05MPaであることが更に好ましい。また、前記吐出量は、対象食物の鮮度(ダメージの受け具合)と洗浄及び殺菌作用とのバランス、並びに工場稼働エネルギーの観点から調整される。当該吐出量として、経験的には、洗浄槽容積の0.05体積%~50.00体積%であることが好ましく、0.05体積%~5.00体積%であることが更に好ましい。
本実施形態における洗浄工程においては、UFBを含む液体の噴流を用いれば特に他の洗浄条件に限定はないが、例えば、液体の噴流による洗浄時間は、対象食物の鮮度(ダメージの受け具合)と洗浄及び殺菌作用とのバランス、及び工程の稼働効率の観点から、2秒間~30分間であることが好ましく、10秒間~5分間であることが更に好ましい。特に本実施形態の製造方法によれば、噴流を用いるため浸漬振盪する場合に比して短い洗浄時間で、洗浄効果及び殺菌効果を奏することができる。また、洗浄時における液体の温度についても特に限定はないが、殺菌効果と対象食物の鮮度維持との観点から、2~25℃であることが好ましく、5~15℃であることが更に好ましい。
本実施形態における裁断工程は、洗浄工程によって洗浄された前記対象食物を無菌状態で裁断加工する工程である。本実施形態の製造方法は、洗浄工程に続けて無菌状態にて裁断工程を行うことで、洗浄工程おいて施された殺菌効果を維持したまま対象食物を裁断することができる。
具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、各工程(少なくとも裁断工程及び包装工程)を本実施形態における“無菌状態”で実施するためには、少なくとも対象食品と接する可能性がある装置及びその周辺の環境が、環境中の一般生菌数が5CFU/cm2以下、大腸菌群が陰性となる状態を基準とすることができる。
また、無菌上の対象としては、上述の殺菌の対象となる菌が挙げられる。前記無菌状態は、例えば、裁断加工に用いられる装置及び当該装置が設置される部屋の床や壁や他の設置物、或いは、裁断加工を行う人等に対して、前記殺菌の対象となる菌の除菌処理を施すことで達成することができる。また、無菌状態を維持するために、クリーンベンチやクリーンルームを利用してもよい。無菌状態における裁断加工は、クリーンベンチ内でヒトの手を介して行ってよく、また、工業用ロボット等を用いて自動的に行うものであってよい。
尚、無菌状態の確保は、消費者の口に入る製品やその原料が次亜塩素等の化学物質に触れないことを前提として、設備や施設を殺菌することによって行うことが好ましい。即ち、設備施設の殺菌剤としては次亜塩素でも可能であり、複数の殺菌処理を組み合わせることが好ましい。
また、裁断加工時における加工条件も特に限定はないが、例えば、炭酸ガス雰囲気下で、湿度(RH)50%~90%程度、温度1℃~15℃程度(好ましくは、2℃~5℃)で実施することが好ましい。
本実施形態における包装工程は、裁断工程において裁断加工された前記対象食物を無菌状態で包装する工程である。本実施形態の製造方法は、洗浄工程による殺菌効果を維持したまま対象食物を包装するため、裁断後カット野菜の切断面に次亜塩素酸等の殺菌剤やこれを除去するための大量の水等が接触することがなく、対象食物の本来の香味や旨味等を維持することができる。前記無菌状態は、上述の裁断工程におけるものと同義であるが、上述の定義に当てはまるものであれば、裁断工程と異なる条件であってもよい。
(準備工程)
まず、根部(例えば3cm幅)で裁断除菌した後、水道水で青ネギを洗浄し、表面の土などの不純物を除去した後、遠心分離により脱水した(予備洗浄)。次いで、葉側を切り落として10cmの長さとし(トリミング)、対象食物とした。
一般生菌数が105CFU/g以下、大腸菌群が陰性となる製品(本実施例においてはカット青ネギ)を調整できる水準の無菌状態のクリーンルーム内にて、得られた青ネギ(対象食物)0.5kgを10Lの水槽に移し、水道水中にウルトラファインバブルで充満されたウルトラファインバブル水(以下、「UFB水」と称する)の噴流にて5分間、15℃の水温下で洗浄・殺菌処理を行った。UFB水は(株)ナノクス製の装置(装置名:ナノフレッシャー(登録商標))を用いた。具体的には、水道水200Lをナノフレッシャーによって室温・2時間の条件で炭酸ガス(CO2)によって通気処理を行い、気泡の直径が10~500nm及び濃度が108個/ml以上となるようにUFBを生成した(UFBの濃度についてはマイクロトラックベル社製のゼータビュー(登録商標)で測定)。噴流は、圧力0.01~0.05MPa、吐出量0.1~0.5L/sの条件下で行った。
洗浄工程に続き、クリーンルーム内で、洗浄された対象食物を無菌状態で1mmの厚さで輪切りにし、商品形態とした(裁断工程)。また、対象商品は輪切りにした後脱水処理(水切り)を行った。同様に、裁断工程に続き、クリーンルーム内で、裁断された対象食物を無菌状態で食品包装用に封入し(包装工程)、包装済食物を製造した。
洗浄工程において、UFBを含む水道水に5分間対象食物を浸漬し予洗(“予洗”とは裁断前の洗浄のことを意味する。以下同じ)した以外は実施例1と同様にして、包装済食物を製造した。浸漬は試料を沈降装置させて行った。
予洗を行わず上述の裁断工程を経て調整したカット青ネギを水道水に次亜塩素酸ナトリウムを加え塩素濃度が200ppmになるように調整し、当該水道水の噴流によって対象食物を洗浄し、その後大量の水道水で濯いだ以外は実施例1と同様にして、包装済食物を製造した。噴流・洗浄の条件(時間、水温、圧力及び吐出量)は実施例1と同様とした。なお、使用した水道水の塩素濃度は1ppm以下であった。
[比較例3]
予洗を行わず上述の裁断工程を経て調整したカット青ネギを水道水の噴流によって対象食物を洗浄した以外は実施例1と同様にして、包装済食物を製造した。噴流・洗浄の条件(時間、水温、圧力及び吐出量)は実施例1と同様とした。なお、使用した水道水の塩素濃度は1ppm以下であった。
予洗を行わず上述の裁断工程を経て調整したカット青ネギを水道水に5分間対象食物を浸漬させた以外は実施例1と同様にして、包装済食物を製造した。浸漬は試料を沈降装置させて行った。なお、使用した水道水の塩素濃度は1ppm以下であった。
各実施例及び比較例において製造した包装済食物(青ネギ)を5℃以下で保存した。
各操作について一般的な微生物実験の手順に従い、保存したサンプルを用いて菌数検査を行った。菌数検査は保存したサンプル10gに対し90mlのリン酸バッファー(pH7.0)とストマッカーとを用いて1分間処理して菌を抽出し、10倍段階希釈の後、これをプレートに1ml塗布し48時間培養した後、一般細菌と大腸菌群とのCFU/gを測定した。当該測定値に基づき、洗浄殺菌の前後での菌数を求め残菌率を算出した。なお、「残菌率」とは未処理のサンプルを100%とした時の一般生菌数の減少割合を示す。
各実施例及び比較例において製造された包装済食物を開封し、青ネギを実食して下記基準に従い香味及び旨味を評価した。評価は、製造に携わる10名をパネルとして、サンプルをブラインドで供試することにより行った。各評価結果としては、前記10名のパネル中6名以上が一致したものを示している。
A:青ネギ本来の香味及び旨味が感じられた。
B:青ネギ本来のものには至らないものの、十分に香味及び旨味が感じられた。
C:青ネギの香味及び旨味が損なわれていた。
Claims (10)
- 対象食物を直径1μm未満の微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄及び殺菌する洗浄工程と、
前記洗浄工程によって洗浄された前記対象食物を無菌状態で裁断加工する裁断工程と、
前記裁断工程において裁断加工された前記対象食物を無菌状態で包装する包装工程と、
を続けて行い、
前記洗浄工程は、1つの吐出口当たり洗浄槽容積に対し1秒間で0.05体積%以上、且つ、圧力0.01MPa以上で吐出された前記微細気泡を含む液体の噴流によって前記対象食物を殺菌する、包装済食物の製造方法。 - 前記微細気泡の直径が10nm~500nmである請求項1に記載の包装済食物の製造方法。
- 前記液体中の前記微細気泡の濃度が106個/ml以上である請求項1又は請求項2に記載の包装済食物の製造方法。
- 前記洗浄工程における洗浄時間が2秒間~30分間である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の包装済食物の製造方法。
- 前記対象食物が、層状構造を有する野菜である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の包装済食物の製造方法。
- 直径1μm未満の微細気泡を含む液体の噴流によって洗浄及び殺菌された後、無菌状態で裁断加工及び包装された包装済食物であって、
1つの吐出口当たり洗浄槽容積に対し1秒間で0.05体積%以上、且つ、圧力0.01MPa以上で吐出された前記微細気泡を含む液体の噴流によって殺菌された包装済食物。 - 前記微細気泡の直径が10nm~500nmである請求項6に記載の包装済食物。
- 前記液体中の前記微細気泡の濃度が106個/ml以上である請求項6又は請求項7に記載の包装済食物。
- 前記液体の噴流による洗浄時間が2秒間~30分間である請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の包装済食物。
- 前記対象食物が、層状構造を有する野菜である請求項6~請求項9のいずれか一項に記載の包装済食物。
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