JP7048177B2 - 可変容量圧縮機 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている可変容量圧縮機では、供給通路の開度を制御する制御弁の下流側に、供給通路を開閉する第一弁部と放圧通路を開閉する第二弁部とを有し、前後差圧に応じて移動するスプールを含む、切換弁を設けている。そして、制御弁と切換弁との間の供給通路の圧力がクランク室の圧力よりも高いときは、第一弁部が供給通路を開き、第二弁部が放圧通路を閉鎖する。一方、供給通路の圧力がクランク室の圧力よりも低いときは、第一弁部が供給通路を閉鎖し、第二弁部が放圧通路の開度を最大開度とする。
しかしながら、供給通路には、絞り通路よりも通路断面積の大きい通路であるスプールの内部通路を介して、クランク室内の冷媒が流入するため、供給通路の圧力が速やかに吸入室の圧力まで低下しない。このため、スプールの移動、ひいては、クランク室の圧力調整(クランク室の圧力の低下)が遅れてしまうという問題点がある。
また、切換弁は、背圧室と弁室とが区画されており、背圧室に受圧部が設けられ、弁室に弁部が設けられる構成となる。このため、駆動軸の軸方向に沿った切換弁の長さが長くなり、可変容量圧縮機の内部に、切換弁を配置することが困難となる。
そこで、本発明は、内部に切換弁を容易に配置することが可能であり、且つクランク室等の制御圧室の圧力調整の遅れを防止することが可能な可変容量圧縮機を提供することを目的とする。
また、弁室と背圧室とを区画する必要が無く、さらに、弁内通路の一方の開口を第一壁面と対峙するように設けたので、切替弁の軸長を短縮することが可能となり、可変容量圧縮機の内部への、切替弁の配置が容易となる。
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図5を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
(可変容量圧縮機)
図1中に示すように、可変容量圧縮機1は、シリンダブロック2と、フロントハウジング3と、バルブプレート4と、シリンダヘッド5と、駆動軸6と、供給通路7と、排出通路8と、制御弁9と、切換弁10を備える。なお、図1における上方は、鉛直方向の上方である。同様に、図1における下方は、鉛直方向の下方である。
第一実施形態では、一例として、可変容量圧縮機1が、車両用(車載)のエアコンシステム(エア・コンディショナー・システム)に適用される、クラッチレス可変容量圧縮機として構成されている場合について説明する。
シリンダブロック2と、フロントハウジング3と、バルブプレート4と、シリンダヘッド5は、図示しないガスケットを介し、通しボルト11により締結されることで、可変容量圧縮機1のハウジングを形成している。
シリンダブロック2には、複数のシリンダボア21と、一つのセンタボア22が形成されている。
複数のシリンダボア21は、環状に配列されている。
シリンダボア21の内部には、ピストン23が収容されている。
センタボア22は、環状に配列された複数のシリンダボア21の径方向内側で中心に配置されており、シリンダブロック2を貫通する空間である。
フロントハウジング3は、シリンダブロック2の一端側(図1中では、左側)を閉塞している。また、フロントハウジング3は、シリンダブロック2と共に、クランク室30を形成している。
クランク室30は、フロントハウジング3とシリンダブロック2によって形成された空間であり、斜板31が配置されている。また、クランク室30の内部には、駆動軸6が、軸方向を水平に向けて配置されている。
斜板31は、円環状に形成されており、駆動軸6を径方向から包囲している。
また、斜板31は、駆動軸6に固定されたロータ32に、リンク機構33を介して連結されており、駆動軸6と共に回転する。
リンク機構33は、第一アーム33aと、第二アーム33bと、リンクアーム33cを含む。
第一アーム33aは、ロータ32の斜板31と対向する面から突出している。第二アーム33bは、斜板31のロータ32と対向する面から突出している。リンクアーム33cの一端側は、第一連結ピン33dを介して第一アーム33aと回転可能に連結されている。リンクアーム33cの他端側は、第二連結ピン33eを介して第二アーム33bと回転可能に連結されている。
ロータ32と斜板31の間には、斜板31が最小傾角となるまで、斜板31の傾角を減少させる方向に付勢する傾角減少バネ35が装着されている。また、斜板31とバネ支持部材36との間には、斜板31の傾角を増大させる方向に付勢する傾角増大バネ37が装着されている。
斜板31の外周部は、ピストン23のうち、クランク室30側に突出している端部に形成された内側空間に収容されている。これにより、斜板31は、一対のシュー38を介して、ピストン23と連動する構成となっている。したがって、駆動軸6の回転に伴う斜板31の回転により、各ピストン23が、収容されているシリンダボア21の内部を往復動する。すなわち、斜板31とシュー38は、駆動軸6の回転をピストン23の往復動に変換する往復動変換部を形成する。
バルブプレート4は、シリンダブロック2とシリンダヘッド5との間に設けられており、一方の面がシリンダブロック2の他端側(図1中では、右側)を閉塞することで、各シリンダボア21を閉塞している。
また、バルブプレート4には、吐出孔41と、吸入孔42が形成されている。
吐出孔41と吸入孔42は、それぞれ、各シリンダボア21と連通している。
シリンダヘッド5は、バルブプレート4を間に挟んで、シリンダブロック2と対向して配置されている。すなわち、シリンダヘッド5は、バルブプレート4を介して、シリンダブロック2の他端側に設けられている。
また、シリンダヘッド5には、吸入室51と吐出室52が、シリンダヘッド5の内部に区画されて形成されている。なお、吸入室51と吐出室52は、バルブプレート4の他方の面により閉塞されている。
また、吸入室51は、吸入ポート53と吸入通路54を介して、エアコンシステムが有する吸入側の外部冷媒回路と接続されており、吸入側の外部冷媒回路から、低圧側の冷媒(冷媒ガス)を吸入する。
さらに、吸入室51は、バルブプレート4に設けられた吸入孔42と、吸入弁(図示せず)を介して、各シリンダボア21と連通している。
吐出室52は、駆動軸6の軸方向から見て、吸入室51を環状に包囲する位置に配置されている。
また、吐出室52は、吐出弁(図示せず)と、バルブプレート4に設けられた吐出孔41を介して、各シリンダボア21と連通している。
さらに、吐出室52は、吐出通路55と吐出ポート56を介して、エアコンシステムが有する吐出側の外部冷媒回路と接続されている。したがって、吐出室52へ吐出された、圧縮部によって圧縮された冷媒は、吐出通路55と吐出ポート56を介して、吐出側の外部冷媒回路へ、高圧側の冷媒(冷媒ガス)が吐出される。
吐出逆止弁57は、吐出室52(上流側)と吐出通路55(下流側)との圧力差に応答して動作する。そして、吐出逆止弁57は、圧力差が予め設定した閾値の圧力よりも小さい場合には、吐出室52と吐出通路55との間を遮断して、吐出通路55から吐出室52への冷媒の移動を阻止する。一方、吐出逆止弁57は、圧力差が閾値の圧力よりも大きい場合には、吐出室52と吐出通路55との間を連通させる。
したがって、吐出室52から、吐出通路55と吐出ポート56を介して、吐出側の外部冷媒回路へ吐出される高圧側の冷媒は、吐出逆止弁57によって、逆流を阻止されている。
駆動軸6は、フロントハウジング3及びシリンダブロック2の内部へ配置されており、両端がフロントハウジング3とシリンダブロック2に、回転可能に支持されている。
駆動軸6の一端は、センタボア22へ挿入されている。駆動軸6とセンタボア22との間には、第一滑り軸受61が配置されている。
また、駆動軸6のバルブプレート4と対向する側の端面は、円環状のスラストプレート62で支持されている。
駆動軸6とスラストプレート62との接触状態(隙間)は、シリンダブロック2に対する調整ねじ63の取り付け状態によって調整されている。
調整ねじ63は、円環状に形成されており、外径面に雄ねじ(図示せず)が形成されている。また、センタボア22のうち、調整ねじ63の外径面と対向する面には、調整ねじ63に形成されている雄ねじと嵌合する雌ねじ(図示せず)が形成されている。
したがって、調整ねじ63は、センタボア22の雌ねじに雄ねじを嵌合させることで、駆動軸6よりもバルブプレート4に近い位置で、センタボア22の内部へ配置されている。
また、調整ねじ63は、調整ねじ63の駆動軸6と対向する面と調整ねじ63の外径面とを連通させるねじ側通路63aが形成されている。
ねじ側通路63aは、駆動軸6の軸方向から見て、調整ねじ63の駆動軸6と対向する面の一部を切除した形状に形成されている。したがって、調整ねじ63の駆動軸6と対向する面のうち、ねじ側通路63aを形成していない部分が、スラストプレート62と接触している。
駆動軸6とフロントハウジング3との間には、第二滑り軸受64と、軸封装置65が配置されている。第二滑り軸受64は、駆動軸6を、ラジアル方向から回転可能に支持している。また、駆動軸6の他端側に向かうスラスト方向の荷重を、ロータ32を介してスラスト軸受66で支持している。
軸封装置65は、クランク室30の内部を、外部空間から遮断している。
なお、可変容量圧縮機1の内部には、潤滑用のオイル(図示せず)が封入されており、駆動軸6が回転すると、オイルが攪拌される。また、可変容量圧縮機1の内部を冷媒が移動すると、冷媒と共にオイルが移動して、可変容量圧縮機1の内部が潤滑される。
供給通路7は、吐出室52の冷媒をクランク室30へ供給する通路である。
また、供給通路7は、図2中に示すように、ヘッド側供給通路形成部71と、プレート側供給通路形成部72と、軸内通路81を有する。
ヘッド側供給通路形成部71は、供給通路7のうちシリンダヘッド5に形成されている通路であり、供給通路7のうち吐出室52から供給された冷媒を排出する部分と、プレート側供給通路形成部72とを連通させている。
プレート側供給通路形成部72は、供給通路7のうちバルブプレート4に形成されている部分であり、ヘッド側供給通路形成部71と、弁室100とを連通させている。なお、バルブプレート4には、供給通路7のうちプレート側供給通路形成部72と吸入室51とを連通させる絞り通路74が形成されている。また、弁室100の詳細な説明は、後述する。
軸内通路81は、供給通路7のうち駆動軸6の内部に形成されている通路である。
軸内通路81の一端は、駆動軸6の側面に開口しており、オイル導入通路39を介して、クランク室30と連通している。軸内通路81の他端は、駆動軸6のバルブプレート4と対向する側の端面に開口している。
したがって、軸内通路81は、クランク室30と、弁室100とを連通させている。
オイル導入通路39は、フロントハウジング3のうち、可変容量圧縮機1の車載時において駆動軸6よりも鉛直方向で上側となる位置に形成されており、クランク室30と、軸封装置65を収容する空間である収容空間67とを連通する通路である。
オイル導入通路39のうち、収容空間67に開口する開口部は、軸封装置65よりも、駆動軸6の軸方向に沿って、クランク室30に近い側に形成されている。
排出通路8は、クランク室30の冷媒を吸入室51へ排出する通路である。
また、排出通路8は、第一排出通路8aと、第二排出通路8bを有する。
第一排出通路8aは、軸内通路81と、ブロック側排出通路形成部82と、プレート側排出通路形成部83を有する。
軸内通路81は、排出通路8のうち駆動軸6の内部に形成されている通路である。
ブロック側排出通路形成部82は、排出通路8のうちシリンダブロック2に形成されている通路であり、拡張部82aと、排出部82bを備える。
すなわち、排出通路8が有する拡張部82aは、弁室100よりもクランク室30に近い位置に設けられて第三ポートP3と連通しているとともに、第三ポートP3よりも流路断面積が大きい。なお、第三ポートP3の説明は、後述する。
排出部82bは、シリンダブロック2のうち、拡張部82aよりもクランク室30から遠い位置に形成されている通路であり、拡張部82aと、プレート側排出通路形成部83とを連通させている。
なお、ブロック側排出通路形成部82は、例えば、センタボア22のうち、拡張部82aのクランク室30側の開口部を閉塞部材84で閉塞することで形成されている。
プレート側排出通路形成部83は、排出通路8のうちバルブプレート4に形成されている開口部であり、排出部82bと、吸入室51とを連通させている。
第二排出通路8bは、閉塞部材84に形成された絞り84aを備えている。
絞り84aは、クランク室30と拡張部82aとを連通させる通路である。
絞り84aの内径は、排出部82bの内径よりも小さい。
以上により、第二排出通路8bは、クランク室30と吸入室51とを常に連通させる絞り84aを経由して、クランク室30の冷媒を吸入室51へ排出する通路である。
したがって、第一排出通路8aのうち第三ポートP3から吸入室51へ冷媒を排出する経路は、吸入室51へ至る前に、第二排出通路8bのうち絞り84aから吸入室51へ冷媒を排出する経路と合流している。
制御弁9は、シリンダヘッド5の内部において、吐出室52とクランク室30とを連通させており、供給通路7の途中(両端部間)に配置されている。
また、制御弁9は、供給通路7の開度(断面積)を調整して変化させることが可能である。
制御弁9によって供給通路7の開度を制御することで、吐出室52からクランク室30への冷媒の導入量を制御することが可能である。したがって、制御弁9によって供給通路7の開度を制御することによって、クランク室30の圧力を変化させ、斜板31の傾斜角を変化させると、ピストン23のストロークを変化させることが可能となる。そして、ピストン23のストロークを変化させると、可変容量圧縮機1の吐出容量(吐出する冷媒の流量)を、可変制御することが可能となる。
また、例えば、空調装置の非作動時、すなわち、可変容量圧縮機1を作動させていない状態では、制御弁9に内蔵されるソレノイドを通電させないことにより、供給通路7を強制的に開放し、可変容量圧縮機1の吐出容量を最小に制御する。
以上により、可変容量圧縮機1では、供給通路7を介して吐出室52内の冷媒を制御圧室(クランク室30)に供給すると共に、排出通路8を介してクランク室30の冷媒を吸入室51に排出することで、クランク室30の圧力が調整されて吐出容量が制御される。
切換弁10は、図5中に示すように、供給通路7における制御弁9よりも制御圧室(クランク室30)側に設けられており、弁室100と、主弁体110と、副弁体120を備えている。
(弁室)
弁室100は、センタボア22のうち、バルブプレート4に近い側の一部によって形成されている。
また、弁室100は、図3中に示すように、センタボア22の内部において、駆動軸6の他端側の端面とバルブプレート4との間に形成された空間である。駆動軸6の他端側の端面とは、バルブプレート4と対向する側の端面である。
さらに、弁室100は、第一壁面101と、第二壁面102と、周壁面103とで区画されており、軸内通路81の他端と連通している。
また、弁室100と、軸内通路81との間には、スラストプレート62が有する空隙部と、調整ねじ63が有する空隙部により、通路が形成されている。スラストプレート62が有する空隙部の内径は、軸内通路81の内径よりも大きい。調整ねじ63が有する空隙部の内径は、スラストプレート62が有する空隙部の内径よりも大きい。
第一実施形態では、一例として、第一壁面101を、吸入弁形成板104によって形成した場合について説明する。吸入弁形成板104は、シリンダブロック2とバルブプレート4との間に配置した板状の部材である。
第一ポートP1は、供給通路7における制御弁9とバルブプレート4との間の領域と、センタボア22とを連通させる開口部である。すなわち、第一ポートP1は、上流側供給通路に連通する。
第二ポートP2は、調整ねじ63が有する空隙部と弁室100とを連通させる開口部である。すなわち、第二ポートP2は、軸内通路81を介してクランク室30と弁室100とを連通させる開口部である。
また、図4中に示すように、第二ポートP2は、駆動軸6の軸方向から見て、センタボア22のうち駆動軸6が配置されている領域を含む。
第三ポートP3は、拡張部82aと弁室100とを連通させる開口部である。すなわち、第三ポートP3は、弁室100と吸入室51とを連通させる開口部である。
また、図4中に示すように、第三ポートP3は、駆動軸6の軸方向から見て、センタボア22のうち駆動軸6が配置されている領域よりも外側に配置されている。
周壁面103は、第一壁面101と第二壁面102とを連続させる壁面であり、駆動軸6の軸方向から見て、円環状に形成されている。
主弁体110は、円板状に形成されており、弁室100に収容されている。
なお、弁室100は、例えば、センタボア22に駆動軸6とスラストプレート62を配置し、さらに、シリンダブロック2に調整ねじ63を取り付けたときに、調整ねじ63の端面とバルブプレート4との間のセンタボア22内の空間を用いて形成することが可能である。このため、弁室100は、可変容量圧縮機1の内部に、切換弁10を配置するために、専用の収容室として形成した空間ではなく、可変容量圧縮機1に既存の構成を利用して形成することが可能な構成である。
主弁体110の厚さ方向は、駆動軸6の軸方向と平行である。
また、主弁体110は、図5中に示すように、大径部110aと、小径部110bと、突出部110cを備えている。
大径部110aは、小径部110bよりも駆動軸6に近い側に配置されている。
大径部110aの外径は、周壁面103の内径よりも小さい。
大径部110aのうち、駆動軸6と対向する面である第二受圧面112には、第二凹部112aが形成されている。
第二受圧面112のうち、第二凹部112aが形成されていない部分の一部は、駆動軸6の軸方向から見て、第三ポートP3と対向している。
したがって、第二受圧面112は、第二ポートP2及び第三ポートP3と対向する面である。また、第二受圧面112は、第二壁面102に当接または離間して第三ポートP3を開閉するとともに、第二ポートP2を介して下流側供給通路の圧力を受ける第二端面を形成する。すなわち、主弁体110は、第二端面(第二受圧面112)を有する第二弁部を含む。
小径部110bの外径は、大径部110aの外径よりも小さい。また、小径部110bが形成する円の中心と、大径部110aが形成する円の中心は、駆動軸6の軸方向から見て重なっている。
小径部110bのうち、バルブプレート4と対向する面である第一受圧面111には、第一凹部111aが形成されている。
したがって、第一受圧面111は、第一ポートP1と対向する面である。また、第一受圧面111は、第一壁面101に当接または離間して第一ポートP1を開閉するとともに、第一ポートP1を介して上流側供給通路の圧力を受ける第一端面を形成する。すなわち、主弁体110は、第一端面(第一受圧面111)を有する第一弁部を含む。さらに、主弁体110は、第一端面(第一受圧面111)が第一壁面101に当接したときに、第一ポートP1からの上流側供給通路の圧力を受ける第一受圧面111を含む。
また、主弁体110は、第一受圧面111と第二受圧面112とを連通させる弁内通路113を有している。
弁内通路113は、第一凹部111aの領域と第二凹部112aの領域とを連通させる通路であり、第一凹部111aから第二凹部112aへ向かうにつれて、内径が三段階で拡大している。すなわち、弁内通路113は、第一端面(第一受圧面111)に一方が開口するとともに、第二端面(第二受圧面112)に他方が開口する通路である。
弁内通路113の一方の開口の軸線(中心軸線)は、第一ポートP1の軸線(中心軸線)から、弁内通路113の径方向にオフセットして設けられている。すなわち、第一ポートP1の軸線は、弁内通路113の一方の開口の軸線から、弁内通路113の径方向にオフセットして設けられている。
キャップ114は、円筒形に形成されており、駆動軸6の軸方向から見て、キャップ114の中心を貫通するキャップ内通路114aを有している。
キャップ114の内径は、弁内通路113の内径が最大の部分と内径が最小の部分との間の部分(以降の説明では、「弁内通路113の中間内径部分」と記載する場合がある)と、同じ内径である。
キャップ114の端面の、駆動軸6の軸方向に沿った方向の高さは、キャップ114が第一受圧面111と同一平面となる高さに設定する。
弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部(キャップ114に開口する開口部)は、駆動軸6の軸方向から見て、第一ポートP1と重ならない位置に配置されている。
副弁体120は、小径部121と、弁部122と、大径部123と、内部通路124を備えている。
小径部121は、円柱状に形成されており、弁内通路113の内径が最小の部分に配置されている。
小径部121の軸方向は、駆動軸6の軸方向と平行である。
弁部122は、円柱状に形成されており、弁内通路113の中間内径部分に配置されている。
弁部122の一端は、駆動軸6の軸方向から見て、キャップ内通路114aと対向している。
また、大径部123は、駆動軸6の軸方向から見て、弁内通路113の内径が最小の部分と対向している。したがって、弁内通路113の内径が最小の部分は、副弁体120の弁内通路113からの逸脱を規制する逸脱規制部125を形成している。また、小径部121と大径部123は、弁部122を支持する支持部を形成している。
第一実施形態では、一例として、内部通路124の、弁部122の側面に開口する端部が、間隔を空けて複数形成されている場合について説明する。
内部通路124の、小径部121の駆動軸6と対向する端面に開口する端部は、軸内通路81と対向している。
副弁体120を形成する材料としては、例えば、金属材料や樹脂材料を用いることが可能であるが、副弁体120を主弁体110よりも軽量化するためには、副弁体120を形成する材料として樹脂材料を用いることが好適である。副弁体120を樹脂材料で形成する場合、樹脂材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂や、ナイロン(ポリアミド)樹脂等を用いることが可能である。
以上により、副弁体120は、主弁体110よりも軽量であり、弁内通路113の内部へ移動可能に配置されて、主弁体110に収容されている。
図1から図5を参照しつつ、図6から図8を用いて、第一実施形態の可変容量圧縮機1で行う動作の一例と、作用を説明する。
可変容量圧縮機1の作動時には、駆動軸6の回転がピストン23の往復動に変換され、シリンダボア21の内部に供給された冷媒を圧縮する。
ピストン23のストロークは、制御弁9によって供給通路7の開度を制御することで変化する。
ここで、第一実施形態の構成では、弁室100に、主弁体110と副弁体120を備える切換弁10を収容している。
主弁体110は、第一受圧面111と、第二受圧面112と、第一受圧面111と第二受圧面112とを連通させる弁内通路113を有する。さらに、副弁体120は、主弁体110よりも軽量であり、且つ弁内通路113の内部へ移動可能に配置される。
このため、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力によって、主弁体110が押される。そして、主弁体110は、バルブプレート4から離れる方向へ移動する。
第二受圧面112が第二壁面102に当接すると、主弁体110によって第三ポートP3が閉じられるため、クランク室30と吸入室51とが、第二排出通路8bが備える絞り84aのみを介して連通する。これにより、排出通路8の開度が最小となる。
また、第一受圧面111が第一壁面101から離間すると、弁内通路113に冷媒が流入して副弁体120の一端壁を押圧し、副弁体120が弁内通路113を開放するとともに、内部通路124を介して第二ポートP2に冷媒が供給される。第二ポートP2に供給された冷媒は、軸内通路81を経由してクランク室30に供給される。
そして、図7中に示すように、軸内通路81から内部通路124を経由して弁内通路113へ移動する冷媒の流れに押圧されて副弁体120が移動する。これにより、副弁体120がキャップ114の内端面に接触して、キャップ内通路114aを閉鎖し、弁内通路113を閉じる。
制御弁9が供給通路7を閉じた後、主弁体110に作用する差圧(Pc-Ps)が、予め設定した閾値の圧力を超えると、主弁体110がクランク室30の圧力Pcにより押されて移動し、図8中に示すように、第二受圧面112が第二壁面102から離間する。なお、図8中には、図6と同様、冷媒の流れを、破線の矢印で示す。
また、図8中に示すように、第一端面(第一受圧面111)が第一壁面101に当接したときに、第一ポートP1と弁内通路113との連通が遮断される。
すなわち、副弁体120は、制御弁9が供給通路7を閉じることで、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力が、第二ポートP2を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力よりも低くなったときに、弁内通路113を閉鎖する。副弁体120により弁内通路113を閉鎖された主弁体110は、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力が、第二ポートP2を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力よりも低くなったときに、第二壁面102から離間する。これにより、主弁体110と第二壁面102との間隔を最大値として、排出通路8の開度を最大とする。
なお、大径部110aの外周面は、主弁体110が弁室100の内部を移動する際の、ガイド面を形成する。
したがって、弁室100に収容された主弁体110は、上流側供給通路の圧力と下流側供給通路の圧力との圧力差に応じて、第一壁面101と第二壁面102との間を移動する。
すなわち、弁室100と、主弁体110及び副弁体120を含む切換弁10は、供給通路7の圧力変化に応じて、排出通路8の開度を変化させる。
したがって、切換弁10は、制御弁9の開閉に連動して、第一の状態と第二の状態とに切り替わる。第一の状態は、第一ポートP1と第二ポートP2とを連通させる状態である。第二の状態は、第三ポートP3と第二ポートP2とを連通させて制御圧室(クランク室30)の冷媒を吸入室51に排出するための排出通路8の一部として下流側供給通路を機能させる状態である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
第一実施形態の可変容量圧縮機1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)切換弁10が、制御弁9の開閉に連動して、第一の状態と第二の状態とに切り替わる。これに加え、切換弁10が含む主弁体110が、上流側供給通路の圧力と下流側供給通路の圧力との圧力差に応じて、第一壁面101と第二壁面102との間を移動する。さらに、切換弁10が含む副弁体120が、上流側供給通路の圧力が下流側供給通路の圧力より高くなると弁内通路113を開き、上流側供給通路の圧力が下流側供給通路の圧力より低くなると弁内通路113を閉じるように動作する。
その結果、主弁体110の移動の遅れと、主弁体110の移動の遅れに伴うクランク室30の圧力の低下の遅れを抑制することが可能な可変容量圧縮機1を提供することが可能となる。
その結果、駆動軸6の軸方向に沿った方向への大型化を抑制することが可能な可変容量圧縮機1を提供することが可能となる。
その結果、供給通路7の開度を制御する際に、制御弁9が供給通路7を開くと、冷媒の流れが第一受圧面111に衝突した後に、弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部に流入するため、主弁体110を、副弁体120よりも先に作動させ易くなる。
その結果、第一受圧面111に作用する冷媒圧力による力が大きくなり、主弁体110を、バルブプレート4から離れる方向へ効率的に移動させることが可能となる。
その結果、供給通路7の開度を制御する際に、制御弁9が供給通路7を開くと、冷媒の流れが第一受圧面111に衝突した後に、弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部に流入するため、主弁体110を、副弁体120よりも先に作動させ易くなる。
その結果、制御弁9が供給通路7を開くと、第一受圧面111に作用する冷媒圧力が瞬時に昇圧し、主弁体110が第一壁面101から素早く離間する。
(6)副弁体120の一端は、弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部に配置され、副弁体120の他端は、駆動軸6の弁室100と対向する面に開口する軸内通路81と対向している。
その結果、軸内通路81から弁室100へ移動する冷媒を、副弁体120によって効率的に受けることが可能となり、副弁体120を、主弁体110よりも先に作動させ易くなる。
その結果、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力を、第一凹部111aで効率的に受けることが可能となり、主弁体110を、バルブプレート4から離れる方向へ効率的に移動させることが可能となる。また、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力を受ける受圧面を、第一受圧面111へ明確に区画することが可能となる。
その結果、切換弁10の構成を、副弁体120を主弁体110に内蔵した構成とすることが可能となり、可変容量圧縮機1の組立性を向上させることが可能となる。
(9)排出通路8が、第一排出通路8aと第二排出通路8bを有する。これに加え、第一排出通路8aのうち第三ポートP3から吸入室51へ冷媒を排出する経路は、吸入室51へ至る前に、第二排出通路8bのうち絞り84aから吸入室51へ冷媒を排出する経路と合流している。
その結果、排出通路8の形成が容易となる。
(1)第一実施形態では、弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部を、駆動軸6の軸方向から見て、第一ポートP1と重ならない位置に配置したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図9中に示すように、弁内通路113の第一受圧面111に開口する開口部を、駆動軸6の軸方向から見て、第一ポートP1と対向している構成としてもよい。
この場合、バルブプレート4に凹部4aを設けることにより、第一ポートP1を通過して弁室100へ移動する冷媒の圧力を、第一受圧面111で効率的に受けることが可能となり、主弁体110を、バルブプレート4から離れる方向へ効率的に移動させることが可能となる。
すなわち、例えば、図10中に示すように、主弁体110の一部をシリンダヘッド5の内部に配置してもよい。
(3)第一実施形態では、駆動軸6の内部に形成した軸内通路81により、排出通路8の一部を形成したが、これに限定するものではなく、駆動軸6に軸内通路81を形成しない構成としてもよい。
この場合、排出通路8の一部を、例えば、駆動軸6と第一滑り軸受61との間に形成されている隙間(駆動軸6を回転させるために確保している隙間)によって形成してもよい。
(4)第一実施形態では、軸内通路81の一端が、オイル導入通路39を介してクランク室30と連通している構成としたが、これに限定するものではなく、軸内通路81の一端が、直接、クランク室30と連通している構成としてもよい。
すなわち、例えば、図11中に示すように、キャップ114の高さを、キャップ114が第一受圧面111よりも第二凹部112aに近くなる高さに設定してもよい。
この構成では、第一端面の構成を、弁内通路113の外周側に形成され、且つ第一壁面101に当接する当接面と、当接面よりも第一端面の内周側に配置され、且つ弁内通路113の一方の開口が形成される開口孔形成面を備える構成とする。これに加え、当接面が第一壁面101に当接したときに、開口孔形成面と第一壁面101との間に形成された隙間を介して、第一ポートP1と弁内通路113とが連通する構成とする。
これに対し、図11中に示す構成であれば、主弁体110が第一壁面101に当接したときに、キャップ114と第一壁面101との間に微小な隙間(絞り)が設けられる。このため、第一ポートP1からの冷媒が第三ポートP3を介して漏れることを抑制することが可能となる。
すなわち、例えば、図12中に示すように、絞り通路74を、第一壁面101のうち第一端面(第一受圧面111)と対峙し、且つ第一ポートP1と異なる位置に開口するように形成してもよい。
具体的には、絞り通路74を、吸入弁形成板104に形成した孔と、バルブプレート4に形成した溝によって形成する。なお、バルブプレート4に形成した溝は、吸入弁形成板104に形成した孔とプレート側排出通路形成部83とを連通させる形状に形成する。
この構成であれば、供給通路7から第一ポートP1に流入する冷媒流を増加させることが可能となり、供給通路7から第一ポートP1に流入する冷媒流が第一弁部を押圧する力を増大させて、主弁体110を安定させて保持することが可能となる。
Claims (7)
- 供給通路を介して吐出室内の冷媒を制御圧室に供給すると共に排出通路を介して前記制御圧室の冷媒を吸入室に排出することで前記制御圧室の圧力が調整されて吐出容量が制御される可変容量圧縮機であって、
前記供給通路の開度を調整する制御弁と、
前記供給通路における前記制御弁よりも前記制御圧室側に設けられた切替弁と、
前記供給通路のうち前記制御弁と前記切替弁との間である上流側供給通路と前記吸入室とを連通する絞り通路と、を含み、
前記切替弁は、前記上流側供給通路に連通する第一ポートが開口する第一壁面と、前記供給通路のうち前記切替弁と前記制御圧室との間である下流側供給通路に連通する第二ポート及び前記吸入室に連通する第三ポートが開口するとともに前記第一壁面に対峙する第二壁面と、前記第一壁面及び前記第二壁面と第一壁面と第二壁面との間に設けられた周壁とで区画された弁室と、前記弁室に収容され、且つ前記上流側供給通路の圧力と前記下流側供給通路の圧力との圧力差に応じて前記第一壁面と前記第二壁面との間を移動する主弁体と、前記主弁体に収容され、且つ前記主弁体より軽量に形成された副弁体と、を含み、さらに、前記制御弁の開閉に連動して、前記第一ポートと前記第二ポートとを連通させる第一の状態と、前記第三ポートと前記第二ポートとを連通させて前記制御圧室の冷媒を前記吸入室に排出するための前記排出通路の一部として前記下流側供給通路を機能させる第二の状態と、に切り替わり、
前記主弁体は、前記第一壁面に当接または離間して前記第一ポートを開閉するとともに前記第一ポートを介して前記上流側供給通路の圧力を受ける第一端面を有する第一弁部と、前記第二壁面に当接または離間して前記第三ポートを開閉するとともに、前記第二ポートを介して前記下流側供給通路の圧力を受ける第二端面を有する第二弁部と、前記第一端面に一方が開口するとともに前記第二端面に他方が開口する弁内通路と、を含み、
前記副弁体は、前記上流側供給通路の圧力が前記下流側供給通路の圧力より高くなると前記弁内通路を開き、前記上流側供給通路の圧力が前記下流側供給通路の圧力より低くなると前記弁内通路を閉じるように動作することを特徴とする可変容量圧縮機。 - 前記主弁体は、前記第一端面が前記第一壁面に当接したときに、前記第一ポートからの前記上流側供給通路の圧力を受ける第1受圧面を含み、
前記第1受圧面は、前記弁内通路の一方の開口よりも弁内通路の径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載した可変容量圧縮機。 - 前記第一端面が前記第一壁面に当接したときの前記第一ポートと前記第1受圧面との間には、前記第一ポートの開口径よりも拡径した空間が前記第1受圧面及び前記第一壁面のうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載した可変容量圧縮機。
- 前記第一ポートの軸線は、前記弁内通路の一方の開口の軸線から弁内通路の径方向にオフセットして設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した可変容量圧縮機。
- 前記第一端面が前記第一壁面に当接したときに、前記第一ポートと前記弁内通路との連通が遮断されることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した可変容量圧縮機。
- 前記第一端面は、前記弁内通路の外周側に形成され、且つ前記第一壁面に当接する当接面と、前記当接面よりも前記第一端面の内周側に配置され、且つ前記弁内通路の一方の開口が形成される開口孔形成面と、を備え、
前記当接面が前記第一壁面に当接したときに、前記開口孔形成面と前記第一壁面との間に形成された隙間を介して前記第一ポートと前記弁内通路とが連通することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した可変容量圧縮機。 - 前記絞り通路は、前記第一壁面のうち前記第一端面と対峙し、且つ前記第一ポートと異なる位置に開口することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した可変容量圧縮機。
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