従来、たとえばフライスカッターおよびドリルのような切削工具が開発されている。
[本開示が解決しようとする課題]
切削によって生じる切削工具の歪を計測することにより、たとえば切削抵抗を把握することができる。このような歪を計測可能な優れた技術が望まれる。
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することが可能な切削工具、モジュール、切削工具ユニットおよび切削システムを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部を備え、前記シャフト部は、前記シャフト部のうちの他の部分よりも径が太い拡径部を含み、前記拡径部は、前記拡径部の周面に形成された凹部を有する。
このように、シャフト部が拡径部を含み、拡径部が凹部を有する構成により、拡径部の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(2)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部を備え、前記シャフト部は、前記シャフト部の周面に形成された凹部と、前記凹部近傍に設けられ、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含む。
このように、シャフト部にセンサ取付部を設けることで、凹部および凹部周辺において生じる歪を歪センサにより検出可能になる。また、このような構成により、たとえばシャフト部全体の剛性が一定程度確保されている場合にシャフト部の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(3)好ましくは、前記凹部は、前記シャフト部の周方向に沿って形成され、前記シャフト部の中心軸を含む断面視で矩形である。
このような構成により、シャフト部の周方向における剛性の調節を行いやすくなるため、周方向における歪の調節を行いやすくなる。また、凹部の加工は比較的容易である。したがって、切削工具の歪計測の精度確保の両立をより確実に行うことができる。
(4)好ましくは、前記凹部は、前記シャフト部の中心軸を法線とする平面において、前記中心軸と前記平面との交点に対して点対称をなす形状を有する。
このような構成により、異方性のある歪の発生を抑制することができるため、たとえば、シャフト部の周面に複数の歪センサが取り付けられる場合に、切削工具の状態を各歪センサの計測値により正確に反映させることができる。
(5)好ましくは、前記シャフト部は、前記シャフト部の中心軸を法線とする平面において、前記中心軸と前記平面との交点に対して点対称をなす位置に設けられた少なくとも1組の前記凹部を有する。
このような構成により、異方性のある歪の発生を抑制することができるため、たとえば、シャフト部の周面に複数の歪センサが取り付けられる場合に、切削工具の状態を各歪センサの計測値により正確に反映させることができる。
(6)より好ましくは、前記1組の前記凹部は、互いに、幅が同じであり、かつ深さが同じである。
このような構成により、異方性のある歪の発生をより確実に抑制することができるため、たとえば、シャフト部の周面に複数の歪センサが取り付けられる場合に、切削工具の状態を各歪センサの計測値にさらに正確に反映させることができる。
(7)好ましくは、前記シャフト部の中心軸を含む断面における前記凹部の底面の形状が丸みを帯びている。
このような構成により、凹部の底面付近に必要以上の応力集中が生じることを抑制することができるため、切削工具の耐久性を向上させることができる。
(8)好ましくは、前記シャフト部に、歪センサを取り付ける位置を示す目印が設けられる。
このような構成により、ユーザは、シャフト部の適切な位置に歪センサを取り付けることができる。したがって、歪センサの取付位置のズレにより計測値への影響が生じることを抑制することができる。
(9)好ましくは、前記凹部の底面から前記シャフト部の中心軸までの距離は、前記シャフト部における前記拡径部以外の部分の半径以上である。
このような構成により、凹部の深さが刃先の変位に及ぼす影響を小さくすることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。
(10)好ましくは、前記凹部の底面から前記シャフト部の中心軸までの距離は、前記シャフト部における前記拡径部以外の部分の半径より小さい。
このような構成により、切削時に局所的に生じる歪の増大が促進されるため、歪をより一層精度よく計測することができる。
(11)好ましくは、前記切削工具は、さらに、前記シャフト部に取り付けられた歪センサを備える。
このような構成により、歪センサを用いて、切削時にシャフト部において生じる歪を精度よく計測することができる。
(12)より好ましくは、前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように前記シャフト部に取り付けられる。
このような構成により、歪がより大きく現れやすい部分に歪センサを配置することができるため、切削によって生じる切削工具の歪をさらに精度よく計測することができる。
(13)好ましくは、前記凹部の幅は、0.1mm以上かつ10mm以下である。
このような構成により、凹部の幅による以下の効果を奏することができる。すなわち、このような幅を採用することにより、凹部の幅が刃先の変位に及ぼす影響を小さくすることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。また、切削時において凹部の相対向する壁面が互いに接触する可能性を低くすることができる。また、歪センサが凹部を跨ぐように取り付けられる、つまり歪センサが橋状に取り付けられる場合、歪センサの比較的広い範囲が宙に浮いた状態となるため、歪センサの中央付近における応力分布が均一に近くなり、歪センサの取付位置のズレによる計測値への影響を小さくすることができる。
(14)好ましくは、前記凹部の深さは、2mm以上かつ40mm以下である。
このような構成により、凹部の深さによる以下の効果を奏することができる。すなわち、このような深さを採用することにより、凹部の深さが刃先の変位に及ぼす影響を小さくすることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。また、歪の増幅効果が大きくなるため、歪をより一層精度よく計測することができる。
(15)本開示の実施の形態に係るモジュールは、シャフト部を備える切削工具の前記シャフト部に取付可能なモジュールであって、前記シャフト部が挿通可能な円筒形状を有し、内周面が前記シャフト部の周面を覆うように前記シャフト部に取付可能な本体を備え、前記本体は、前記本体の外周面に形成された凹部を有する。
このように、シャフト部の周面に取付可能である円筒状の本体を備え、本体に凹部が形成される構成により、モジュールの剛性が局所的に低下する。このため、モジュールをシャフト部に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時にモジュールにおいて生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる歪を精度よく計測することができる。
(16)本開示の実施の形態に係るモジュールは、シャフト部を備える切削工具の前記シャフト部に取付可能なモジュールであって、前記シャフト部の軸方向に沿って前記シャフト部に取付可能な柱状の本体を備え、前記本体は、前記本体の周面に形成された凹部と、前記凹部近傍に設けられ、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含む。
このように、シャフト部に取付可能な柱状の本体を備え、本体の周面に凹部が形成される構成により、モジュールの剛性が局所的に低下する。このため、モジュールをシャフト部に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時にモジュールにおいて生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる歪を精度よく計測することができる。
(17)本開示の実施の形態に係る切削工具ユニットは、シャフト部を含む切削工具と、上記(15)に記載のモジュールとを備える。
このように、シャフト部の周面に取付可能である筒状の本体を含み、本体に凹部が形成されたモジュールを備える構成により、モジュールの剛性が局所的に低下する。このため、モジュールをシャフト部に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時にモジュールにおいて生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる歪を精度よく計測することができる。
(18)本開示の実施の形態に係る切削工具ユニットは、シャフト部を含む切削工具と、上記(16)に記載のモジュールとを備える。
このように、シャフト部に取付可能な柱状の本体を含み、本体の周面に凹部が形成されたモジュールを備える構成により、モジュールの剛性が局所的に低下する。このため、モジュールをシャフト部に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時にモジュールにおいて生じる歪が局所的に増大する。したがって、モジュールにおいて剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる歪を精度よく計測することができる。
(19)本開示の実施の形態に係る切削システムは、上記(11)に記載の切削工具と、管理装置とを備え、前記切削工具は、前記歪センサの計測結果を示すセンサ情報を送信し、前記管理装置は、前記切削工具から前記センサ情報を受信し、受信した前記センサ情報が示す計測結果を処理する。
このように、センサ情報が示す計測結果を処理する構成により、たとえば、シャフト部における歪が生じている位置および歪の大きさに基づいて、刃部に破損が生じているか否か、および刃部の寿命を推定することができる。
(20)本開示の実施の形態に係る切削システムは、上記(17)または上記(18)に記載の切削工具ユニットと、管理装置とを備え、前記切削工具ユニットは、さらに、前記モジュールに取り付けられた歪センサを含み、前記切削工具ユニットは、前記歪センサの計測結果を示すセンサ情報を送信し、前記管理装置は、前記切削工具ユニットから前記センサ情報を受信し、受信した前記センサ情報が示す計測結果を処理する。
このように、センサ情報が示す計測結果を処理する構成により、たとえば、モジュールにおける歪が生じている位置および歪の大きさに基づいて、刃部に破損が生じているか否か、および刃部の寿命を推定することができる。
(21)本開示の実施の形態に係る切削工具は、刃取付部と、前記刃取付部につながるシャフト部とを備え、前記シャフト部は、前記シャフト部の中心軸に垂直な断面において、円形または多角形の周面を持つ棒形状であり、前記シャフト部は、前記中心軸方向に沿った一部である第1区間と、前記中心軸方向において前記第1区間の一方側に隣り合う第2区間と、前記中心軸方向において前記第1区間の他方側に隣り合う第3区間とを含み、前記第1区間の剛性は、第2区間の剛性および第3区間の剛性よりも低い。
このように、シャフト部が第1区間を備える構成により、シャフト部の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(22)好ましくは、前記シャフト部は、前記刃取付部に連続する切削側区間と、前記刃取付部側の端部とは異なる端部を含む把持側区間と、前記切削側区間と前記把持側区間との間に位置する中間区間とを含み、前記中間区間は、前記切削側区間および前記把持側区間よりも太い形状を有し、前記第1区間、前記第2区間および前記第3区間は、前記中間区間に設けられている。
このような構成により、シャフト部において他の部分よりも拡径した中間区間の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(23)好ましくは、前記第1区間は、前記第1区間の周面に形成された凹部と、前記凹部近傍に設けられ、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含む。
このように、シャフト部にセンサ取付部を設けることで、凹部および凹部周辺において生じる歪を歪センサにより検出可能になる。また、このような構成により、たとえばシャフト部全体の剛性が一定程度確保されている場合にシャフト部の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(24)好ましくは、前記第1区間は、前記第1区間の周面に形成された凹部を有する。
このように、シャフト部における第1区間が凹部を有する構成により、シャフト部の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。したがって、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサを取り付けることにより、切削によって生じる切削工具の歪を精度よく計測することができる。
(25)好ましくは、前記第1区間は、前記第1区間の内部に形成された空洞部を含む。
このように、第1区間の内部に空洞部が形成されるため、加工熱は、シャフト部の内部において空洞部を避けるように伝わり、シャフト部の周面近傍を伝わる。したがって、シャフト部の周面の温度を測定することで、シャフト部に生じる熱歪を把握することができ、より正確に歪を測定することができる。
(26)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部を備え、前記シャフト部は、前記シャフト部のうちの他の部分よりも径が太い拡径部を含み、前記拡径部は、前記拡径部の内部に形成された空洞部を含む。
このように、拡径部の内部に空洞部が形成されるため、加工熱は、拡径部の内部において空洞部を避けるように伝わり、拡径部の周面近傍を伝わる。したがって、拡径部の周面の温度を測定することで、拡径部に生じる熱歪を把握することができ、より正確に歪を測定することができる。
(27)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部を備え、前記シャフト部は、前記シャフト部の内部に形成された空洞部と、前記シャフト部の周面において、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含み、前記センサ取付部は、前記シャフト部の中心軸方向に垂直な方向において前記空洞部を前記シャフト部の周面に投影した場合に、前記空洞部と重なる。
このように、シャフト部の内部に空洞部が形成されるため、加工熱は、シャフト部の内部において空洞部を避けるように伝わり、シャフト部の周面近傍を伝わる。したがって、シャフト部の周面の温度を測定することで、シャフト部に生じる熱歪を把握することができ、より正確に歪を測定することができる。
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す斜視図である。
切削工具101は、たとえば、フライス盤等において使用されるエンドミルであり、金属等からなる切削対象物を切削するために使用される。
図1を参照して、切削工具101は、シャフト部11と、刃取付部12と、図示しない刃部と、歪センサ14とを備える。なお、切削工具101は、刃部を備えていない構成であってもよい。また、刃部は、刃取付部12に一体に固定されたものであってもよいし、刃取付部12に着脱可能に取り付けられるものであってもよい。
図4に示す例では、シャフト部11と刃取付部12との境界を二点鎖線41により示している。
シャフト部11は、その中心軸17に垂直な断面において、円形または多角形の周面を持つ棒形状である。シャフト部11の基材は、たとえば、切削工具用の超硬合金または金型用鋼により構成されている。
[課題]
切削によって生じる切削工具の歪を計測することにより、たとえば切削抵抗を把握することができる。このような歪を計測可能な優れた技術が望まれる。しかしながら、切削工具は剛性が高く製造されているため、発生する歪が小さく、そのままでは歪を計測することが困難な場合がある。
このような課題を解決するために、切削工具の剛性を意図的に低下させることが考えられる。しかしながら、単に切削工具の剛性を低下させるだけでは、切削抵抗による切削工具の変位が大きくなるため、精密な切削加工が困難になるとともに、切削工具の耐久性が低下する可能性がある。
そこで、本開示の実施の形態に係る切削工具では、以下のような構成により、このような課題を解決する。
シャフト部11は、シャフト部11のうちの他の部分よりも径が太い拡径部15を含む。
詳細には、シャフト部11において、切削工具101の軸方向、具体的には長手方向Xに沿った一部の領域(中間区間)に、長手方向Xと直交する方向である直交方向Yにシャフト部11の径を拡大する拡径部15が設けられる。
シャフト部11において、中間区間である拡径部15の刃取付部12側には切削側区間1101が設けられる。切削側区間1101は、拡径部15から刃取付部12に向かって延び、シャフト部11の一方側の端部、すなわち刃取付部12側の端部を含む。刃取付部12側の端部において、シャフト部11は刃取付部12とつながる。
シャフト部11において、中間区間である拡径部15の刃取付部12側と反対側には把持側区間1102が設けられる。把持側区間1102は、拡径部15から切削側区間1101とは逆方向に延び、シャフト部11の他方側の端部、すなわち刃取付部12側の端部とは異なる端部を含む。把持側区間1102において、シャフト部11の端部から所定の距離の部分はシャンク1103を構成する。
切削工具101の長手方向Xは、シャフト部11の長手方向に沿っている。たとえば、切削工具101の長手方向Xおよびシャフト部11の長手方向は、互いに平行である。
拡径部15は、たとえば多角柱状、具体的には正多角柱状に形成されている。拡径部15の中心軸は、シャフト部11の中心軸17上に位置している。
より具体的には、たとえば、拡径部15は八角柱状に形成されている。なお、拡径部15は、八角柱状であるのが好ましいが、たとえば、四角柱状、六角柱状、十角柱状、または十二角柱状等であってもよい。また、拡径部15は、円柱状であってもよい。
拡径部15は、シャフト部11の径を、シャフト部11の周方向全体にわたり拡大している。つまり、拡径部15の径は、シャフト部11における拡径部15以外の部分の径よりも大きい。換言すれば、拡径部15は、シャフト部11における拡径部15以外の部分よりも太い。なお、拡径部15の径は、中心軸17方向視で、中心軸17を通り、拡径部15の周面上に両端がある線分のうち最大のものを言う。図1に示す例では、拡径部15の径は、八角柱の端面における対角線に相当する。
拡径部15は、シャフト部11の剛性を高める部分である。シャフト部11に歪センサ14を取り付けるためにシャフト部11の長さを延ばしたとしても、拡径部15を設けることにより、シャフト部11の剛性の低下を抑えることができる。
拡径部15は、その周面(外周面)に凹部16を有する。この場合、凹部16は、シャフト部11の中心軸17に向かって凹となるように形成される。
図1に示す例では、凹部16は、シャフト部11の周方向に沿って形成され、シャフト部11の中心軸17を含む断面視で矩形である。凹部16は、たとえば、シャフト部11の周方向全体にわたり連続的に形成されている。なお、シャフト部11の周方向は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面上にシャフト部11を投影した場合に、シャフト部11の周面に沿う方向を意味する。
このような構成により、シャフト部11の周方向における剛性の調節を行いやすくなるため、周方向における歪の調節を行いやすくなる。また、凹部16の加工は比較的容易である。これにより、切削工具101の剛性の確保および切削工具101の歪計測の精度確保の両立をより確実に行うができる。
凹部16は、シャフト部11の中心軸17方向において、拡径部15の中央部分(第1区間)に形成される。拡径部15において、第1区間に隣接する部分のうち、シャンク1103側の部分は第2区間であり、刃取付部12側の部分は第3区間である。
凹部16は、拡径部15において生じる歪を局所的に増大させる機能を有する部分である。具体的には、凹部16は、(i)拡径部15の第1区間の剛性を第2区間および第3区間の剛性よりも低下させる、つまり拡径部15の剛性を局所的に低下させ、(ii)シャフト部11の中心軸17から歪センサ14が取り付けられる位置までの距離を、シャフト部11の中心軸17から拡径部15における凹部16の底面までの距離よりも大きくし、(iii)拡径部15に局所的に応力集中を生じさせる部分である。
すなわち、上記(i)に関しては、拡径部15の断面係数を局所的に小さくすることで、拡径部15の剛性を局所的に小さくし、これにより、拡径部15において発生する歪を局所的に大きくすることができる。したがって、拡径部15の凹部16または凹部16近傍に歪センサ14を取り付けることで、歪センサ14は、シャフト部11における拡径部15以外の位置に取り付けられる場合と比べて、より大きな値の歪を計測することができる。
歪センサ14は、たとえば、凹部16を跨ぐように、すなわち橋状にシャフト部11に取り付けられる。この場合、歪センサ14は、シャフト部11の中心軸17に沿って凹部16を跨いでもよいし、シャフト部11の中心軸17に対して傾斜する方向に凹部16を跨いでもよい。傾斜角度は、たとえば、シャフト部11の中心軸17に対して45°とすることができる。
なお、歪センサ14は、凹部16を跨がないようにシャフト部11に取り付けられてもよい。この場合、歪センサ14は、たとえば、シャフト部11における、凹部16近傍に取り付けられる。
上記(ii)に関しては、拡径部15の周面に歪センサ14を取り付けることにより、歪センサ14の取付位置および切削工具101の中心軸17間の距離が、拡径部15における凹部16の底および切削工具101の中心軸17間の距離よりも大きくなる。以下、具体的に説明する。
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における歪の増幅について説明する模式図である。詳細には、図2は、切削工具101の中心軸17からの距離に応じて、切削工具101において生じる歪の大きさが異なることを模式的に示す図である。
図2を参照して、シャフト部11において生じる歪は、中心軸17からの距離が大きいほど大きくなる。つまり、中心軸17から遠い位置の歪εaは、中心軸17から近い位置の歪εbより大きい。したがって、拡径部15の周面に歪センサ14を取り付けることで、歪センサ14は、より大きな値の歪を計測することができる。
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における歪の増幅について説明する模式図である。具体的には、拡径部15において凹部16の周辺に応力集中が生じる様子を力の流れにより模式的に示す図である。
上記(iii)に関しては、図3に示すように、拡径部15における凹部16近傍において、力の流れを示す流線30の密度が高く、または流線30が曲がっている。このような箇所には応力集中が生じるため、歪が大きくなり易い。特に、凹部16の底付近の部分40では、流線30の密度が高く、かつ流線30が曲がっている。したがって、凹部16または凹部16近傍に歪センサ14を取り付けることで、歪センサ14は、より大きな歪を計測することができる。
このように、凹部16が有する上記(i)~(iii)の機能により、歪を増幅、すなわち凹部16および凹部16近傍において歪が局所的に大きく現れるようにする。剛性が局所的に低下した箇所に歪センサ14を取り付けることにより、切削工具101の剛性を確保しながら、切削によって生じる切削工具101の歪、たとえば切削抵抗によって生じる歪を精度よく計測することができる。
歪センサ14は、凹部16を跨ぐようにシャフト部11に取り付けられた場合には、凹部16を跨がないようにシャフト部11に取り付けられた場合と比べて、より増幅された歪を計測することができるため、計測の精度をより高めることができる。
刃取付部12は、たとえば、シャフト部11と一体に形成されている。刃取付部12の基材は、たとえば、切削工具用の超硬合金または金型用鋼により構成されている。
刃取付部12は、刃部を着脱可能に取り付けることが可能に構成されている。具体的には、たとえば、刃取付部12および刃部には、ネジ穴がそれぞれ形成されている。刃取付部12および刃部の各ネジ穴を位置合わせした状態において、各ネジ穴にネジを螺合することにより、刃取付部12に刃部を取り付けることができる。
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。
拡径部15をシャフト部11の中心軸17を通る平面20で切断したときの凹部16の断面の大きさおよび形状は、シャフト部11の周方向全体にわたり同じになっている。なお、図4においては、平面20を想像線である二点鎖線により示している。
なお、凹部16は、シャフト部11の周方向に沿って断続的に形成されてもよい。すなわち、複数の凹部16が、互いに不連続の状態で形成されてもよい。
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における拡径部を、歪センサを取り外した状態で示す側面図である。
図5を参照して、シャフト部11には、歪センサ14を取り付ける位置を示す目印(センサ取付部)21が設けられる。目印21は、たとえば、歪センサ14が取り付けられる領域を示す輪郭線である。
このような構成により、ユーザは、シャフト部11の適切な位置に歪センサ14を取り付けることができる。したがって、歪センサ14の取付位置のズレにより計測値への影響が生じることを抑制することができる。
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図6は、図1におけるA方向から見た矢視図である。
図6を参照して、凹部16は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18において、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称をなす形状を有する。なお、図6においては、平面18を想像線である二点鎖線により示している。
このような構成により、異方性のある歪の発生を抑制することができるため、たとえば、シャフト部11の周面に複数の歪センサ14が取り付けられる場合に、切削工具101を各歪センサ14の計測値により正確に反映させることができる。
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における凹部の機能について説明するための図である。詳細には、図7は、図1に示す切削工具を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的断面図である。
図7を参照して、切削工具101は、以下の係数および変数を有する片持ち梁であるとする。また、図7に示す例では、凹部16は、拡径部15の周方向に沿って形成され、シャフト部11の中心軸17を含む断面視で矩形であるとする。また、凹部16の底面は円筒状の面であるとする。そして、切削工具101の長手方向Xにおける先端部45に荷重、すなわち切削抵抗F[N]が加えられた場合、凹部16の底面において生じる歪ε1[ε]、および凹部16の開口部付近において生じる歪ε2[ε]は、それぞれ、以下の式(1)および式(2)により表される。なお、歪ε1および歪ε2はいずれも無名数である。しかしながら、本明細書では、ε1およびε2が歪であることを明示するために、ε1およびε2の後に[ε]を記載する。
ここで、Eはヤング係数[MPa]であり、Zは断面係数[mm^3]であり、Mは曲げモーメント[Nmm]であり、eは歪センサ14の取付位置と切削工具101の中心軸17との距離[mm]である。Dは、シャフト部11において凹部16が形成されて細くなっている部分、すなわちくびれている部分であるくびれ部の直径である。くびれ部は、言い換えれば、シャフト部11の幅が局所的に狭くなっている幅狭部である。Fは切削工具の先端部45に加えられる荷重、すなわち切削抵抗[N]であり、Lは切削工具の先端部45と凹部16の長手方向Xにおける中心位置との距離[mm]であり、aは応力集中による歪増大の度合いを示す係数である。なお、シミュレーションの結果によると、凹部16の幅が3mm以上である場合、aは1.5である。また、演算子「^」は、べき乗を表す。
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における凹部の機能について説明するための図である。詳細には、図8は、凹部16が形成されていない拡径部15を有する切削工具を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的断面図である。
図8を参照して、切削工具101Aは、拡径部15が四角柱状である片持ち梁であるとする。具体的には、拡径部15において、切削工具101の長手方向Xと直交する断面は、正方形状である。切削工具101Aの先端部に荷重Fすなわち切削抵抗が加えられた場合、拡径部15の周面において生じる歪εorigin[ε]は、以下の式(3)により表される。なお、歪εoriginは無名数である。しかしながら、本明細書では、εoriginが歪であることを明示するために、εoriginの後に[ε]を記載する。
ここで、Eはヤング係数[MPa]、Zは断面係数[mm^3]、Mは曲げモーメント[Nmm]、eは歪センサ14の取付位置と切削工具101の中心軸17との距離[mm]、Hは、拡径部15において、切削工具101の長手方向Xと直交する正方形状の断面の一辺の長さ[mm]、Fは切削工具の先端部に加えられる荷重、すなわち切削抵抗[N]、Lは切削工具の長手方向Xにおける切削工具の先端部と歪センサ14との距離[mm]である。
式(2)および式(3)から、歪ε2[ε]は、以下の式(4)により表される。
すなわち、εorigin[ε]に対するε2[ε]の倍率αは、以下の式(5)により表される。
式(5)を参照して、拡径部15に凹部16を形成することにより、歪がα倍に増大することがわかる。また、式(2)において、e/(D/2)の値が大きいほど、ε2[ε]の値が大きくなることから、凹部16の深さが大きいほど、ε2[ε]の値が大きくなることがわかる。
図9は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図9は、シャフト部の一部を、シャフト部の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
図9を参照して、凹部16の幅W1について説明する。凹部16の幅W1は、凹部16における2つの開口端間の中心軸17方向の距離である。図9に示す例では、凹部16の幅W1は、シャフト部11の周方向にわたって一定である。なお、凹部16の幅W1が一定ではない場合、凹部16の幅W1は、凹部16における2つの開口端間の中心軸17方向の距離のうち、最長のものとする。また、凹部16が、シャフト部11の周面に円形状に開口する円筒状の孔または四角形状に開口する四角筒状の孔である場合、凹部16の幅W1は、凹部16の開口縁のさし渡し長さのうち、最長のものとする。
凹部16の幅W1が小さいほど、刃先の剛性への影響が小さくなるため、切削作業時における刃先の変位量を小さく保つことができる。その一方で、切削抵抗による変形により凹部16が閉じる方向に大きく変位し、凹部16を形成する、相対向する壁面が互いに接触する可能性が高くなる。また、凹部16および凹部16周辺における応力分布内における応力変化が大きくなり、歪センサ14の取付位置のズレによる計測値への影響が大きくなる。
また、幅W1が大きいほど、凹部16において生じる応力集中の度合いが高まって、歪センサ14の感度が高くなる。また、たとえば、凹部16を跨ぐように、つまり橋状に歪センサ14を取り付ける場合、歪センサ14の比較的広い範囲が宙に浮いた状態となるため、歪センサ14の中央位置における応力分布が均一に近くなり、歪センサ14の取付位置のズレによる計測値への影響が小さくなる。その一方で、刃先の剛性への影響が大きくなるため、切削作業時における刃先の変位量が大きくなる。
凹部16の幅W1の大小による、このようなメリットおよびデメリットを比較考量して、幅W1が適切に設定される。幅W1は、たとえば、0.1mm以上かつ10mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上かつ4mm以下であり、より好ましくは、1mm以上かつ3mm以下である。なお、幅W1は、0.1mm未満であってもよいし、10mmより大きくてもよい。
このような構成により、凹部16の幅による以下の効果を奏することができる。すなわち、このような幅を採用することにより、凹部16の幅が刃先の変位に及ぼす影響を小さく抑えることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。また、切削時において凹部16の相対向する壁面が互いに接触する可能性を低くすることができる。また、歪センサ14が凹部16を跨ぐように取り付けられる、つまり歪センサ14が橋状に取り付けられる場合、歪センサ14の比較的広い範囲が宙に浮いた状態となるため、歪センサ14の中央付近における応力分布が均一に近くなり、歪センサ14の取付位置のズレによる計測値への影響を小さくすることができる。
次に、凹部16の深さDe1について説明する。凹部16の深さDe1は、シャフト部11の半径方向に沿った、拡径部15の周面から凹部16の底面34までの距離である。図9に示す例では、凹部16の深さDe1は、シャフト部11の周方向にわたって一定である。凹部16がシャフト部11の拡径部15以外の部分に設けられる場合、凹部16の深さDe1はシャフト部15の周面から凹部16の底面34までの距離となる。要するに、凹部16の深さDe1は、シャフト部11の半径方向に沿った、凹部16が開口するシャフト部11の面から凹部16の底面34までの距離である。なお、凹部16の底面34が湾曲している場合、凹部16の深さDe1は、凹部16が開口するシャフト部11の面から凹部16の底面34までの距離のうち、最長のものとする。
凹部16の深さDe1が小さいほど、刃先の剛性への影響が小さくなるため、切削作業時における刃先の変位量を小さく保つことができる。その一方で、断面二次モーメントの低減による効果と、切削工具101の中心軸17からシャフト部11における拡径部15以外の部分の周面までの距離に比べて、中心軸17から歪センサ14の位置までの距離が大きいことによる効果とが小さくなるため、歪量の増幅効果が小さくなる。すなわち、歪センサ14の感度が低くなる。
また、凹部16の深さDe1が大きいほど、断面二次モーメントの低減による効果と、切削工具101の中心軸17からシャフト部11における拡径部15以外の部分の周面までの距離に比べて、中心軸17から歪センサ14の位置までの距離が大きいことによる効果とが大きくなり、また、凹部16において生じる応力集中の度合いが高まるため、歪量の増幅効果が大きくなる。すなわち、歪センサ14の感度が高くなる。その一方で、刃先の剛性への影響が大きくなるため、切削作業時における刃先の変位量が大きくなる。
凹部16の深さDe1の大小による、このようなメリットおよびデメリットを比較考量して、深さDe1が適切に設定される。深さDe1は、たとえば、2mm以上かつ40mm以下であり、好ましくは、2mm以上かつ20mm以下であり、より好ましくは、2.5mm以上かつ10mm以下である。なお、深さDe1は、2mm未満であってもよいし、40mmより大きくてもよい。
このような構成により、凹部16の深さによる以下の効果を奏することができる。すなわち、このような深さを採用することにより、凹部16の深さが刃先の変位に及ぼす影響を小さく抑えることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。また、歪量の増幅効果が高くなるため、歪をより一層精度よく計測することができる。
また、拡径部15をシャフト部11の中心軸17を通る平面20で切断したときの、平面20上における凹部16の底面34の形状は、図9に示すように、直線状となっている。
また、凹部16の底面34からシャフト部11の中心軸17までの距離D1は、たとえば、シャフト部11における拡径部15以外の部分の半径r1以上である。なお、凹部16の底面34の形状が円弧状等の直線状ではない場合、距離D1は凹部16の底面34からシャフト部11の中心軸17までの距離のうち、最短のものとする。
このような構成により、凹部16の深さが刃先の変位に及ぼす影響を小さく抑えることができるため、切削時における刃先の変位量を小さく保つことができる。
図10は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の他の例を示す図である。詳細には、図10は、シャフト部の一部を、切削工具の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
拡径部15をシャフト部11の中心軸17を通る平面で切断したときの、平面20上における凹部16の底面34の形状は、直線状に限定されるものではなく、たとえば、図10に示すように、丸みを帯びた形状、具体的には、円弧状等であってもよい。
このような構成により、凹部16の底面付近に必要以上の応力集中が生じることを抑制することができるため、切削工具101の耐久性を向上させることができる。
図11は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の他の例を示す図である。具体的には、シャフト部の一部を、切削工具の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
図11を参照して、距離D1は、半径r1より小さくてもよい。
このような構成により、切削時に局所的に生じる歪の増大が促進されるため、歪をより一層精度よく計測することができる。
図12は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における歪センサの一例を示す図である。
図12を参照して、歪センサ14は、たとえば、半導体チップ31と、支持部32と、取付部33とを含む。
半導体チップ31は、たとえば、センサ素子、制御回路、アンプ回路およびA/D(Analog to Digital)コンバータが集積された1つの半導体集積回路である。
支持部32は、半導体チップ31を支持する金属製で板状の台座である。半導体チップ31および支持部32は、合成樹脂により封止されている。
取付部33は、半導体チップ31および支持部32を、取付対象物であるシャフト部11に接着して取り付けるためのシート状の部材である。
歪センサ14は、接着剤等により、シャフト部11に取り付けられる。具体的には、たとえば、ユーザは、シャフト部11において目印21によって示される取付位置に、歪センサ14を取り付けることができる。
このような構成により、歪センサ14を用いて、切削時にシャフト部11において生じる歪を精度よく計測することができる。
歪センサ14は、たとえば、凹部16を跨ぐように、すなわち橋状に拡径部15に取り付けられる。この場合、歪センサ14は、凹部16と直交する方向に沿って、すなわち切削工具101の長手方向Xに沿って取り付けられる。歪センサ14は、歪センサ14の重心がシャフト部11の半径方向において凹部16と対向する位置に取り付けられるのが好ましい。なお、歪センサ14は、凹部16を跨がないように拡径部15に取り付けられてもよい。この場合、歪センサ14は、たとえば、拡径部15における、凹部16近傍に取り付けられる。より詳細には、歪センサ14は、凹部16から中心軸17方向に5mm以内の位置に取り付けられる。
歪センサ14は、凹部16を跨ぐように拡径部15に取り付けられた場合には、凹部16を跨がないように拡径部15に取り付けられた場合と比べて、より増幅された歪を計測することができるため、計測の精度をより高めることができる。
歪センサ14は、たとえば、切削工具101が切削対象物を切削しているときに、シャフト部11において生じる引張歪および圧縮歪を計測することができる。
歪センサ14としては、たとえば、グローセル社製のものを使用することができる。
図13は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図13は、切削工具が、図2に示す構成要素に加えて、さらに、電池、無線通信装置およびハウジングを備えた状態を示す図である。なお、図13においては、電池、無線通信装置およびハウジングを想像線である二点鎖線により示している。
図13を参照して、切削工具101は、図4に示す構成に加えて、さらに、電池22と、無線通信装置23と、ハウジング24とを備える。
電池22は、図示しない電力線を介して、歪センサ14および無線通信装置23と接続されている。電池22は、電力線を介して、歪センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する。電力線には、電力供給のオンおよびオフを切り替えるスイッチが設けられている。
無線通信装置23は、図示しない信号線を介して、歪センサ14と接続されている。歪センサ14は、シャフト部11に生じた歪を示す計測信号を信号線を経由して無線通信装置23へ出力する。
無線通信装置23は、歪センサ14から計測信号を受けると、受けた計測信号の示す計測結果を無線信号に含めて外部のパーソナルコンピュータ等の後述の管理装置へ送信する。管理装置は、たとえば、受信した計測結果を蓄積し、蓄積した計測結果を解析する。なお、管理装置は、計測結果の解析に限らず、他の種類の処理を行ってもよい。
ハウジング24は、底板部25と、側壁部26とを含む。
ハウジング24は、たとえば、拡径部15の下面に固定される。ハウジング24は、拡径部15、電池22、無線通信装置23、電力線および信号線を収容した状態、具体的には、拡径部15および電池22等をこれらの下方および側方から覆った状態において、電池22および無線通信装置23を保持する。
底板部25は、たとえば、円板状に形成されている。底板部25には、拡径部15に対応する位置に、図示しない複数のネジ穴が形成されている。また、拡径部15の下面にも複数のネジ穴が形成されている。
底板部25のネジ穴と拡径部15のネジ穴とを位置合わせした状態において、底板部25および拡径部15の各ネジ穴にネジを螺合することにより、底板部25を拡径部15に固定することができる。
側壁部26は、たとえば、円筒状に形成されている。側壁部26の下端部には、底板部25の周縁部に対応する位置に、図示しない複数のネジ穴が形成されている。また、底板部25の周縁部にも複数のネジ穴が形成されている。
底板部25のネジ穴と側壁部26のネジ穴とを位置合わせした状態において、底板部25および側壁部26の各ネジ穴にネジを螺合することにより、側壁部26を底板部25に固定することができる。
図14は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの構成を示す図である。
図14を参照して、切削システム210は、フライス盤等の切削装置211と、管理装置213とを備える。
切削装置211は、切削工具101と、図示しない駆動部と、駆動部を制御する図示しない制御部とを含む。駆動部は、切削工具101を駆動するモータ等である。制御部は、駆動部の回転数等を制御する。
切削工具101は、歪センサ14の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置213は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す計測結果を処理する。
具体的には、管理装置213は、無線通信部214と、制御部215と、記憶部216と、操作入力部217と、表示部218とを含む。
無線通信部214は、切削工具101の無線通信装置23と無線による通信を行う。具体的には、無線通信部214は、切削工具101の無線通信装置23から、センサ情報を含む無線信号を受信する。
操作入力部36は、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む。操作入力部217は、ユーザからの指示およびデータ入力を受け付ける。
記憶部216は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部216は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)またはBD-ROM(Blu-ray(登録商標) Disc Read Only Memory)等の補助記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部216は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の半導体メモリを含む。
記憶部216には、制御部215を動作させるためのプログラムおよびデータ、無線通信部214が切削工具101から受信した計測結果、ならびに制御部215の解析結果等が保存される。
制御部215は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部215は、歪センサ14の計測結果を解析する。詳細には、制御部215は、記憶部216に蓄積された計測結果を解析する。また、制御部215は、管理装置213における各ユニットの制御を行う。
具体的には、たとえば、制御部215は、シャフト部11における歪が生じている位置および歪の大きさに基づいて、刃部に破損が生じているか否か、および刃部の寿命を推定する。
表示部218は、たとえば、ディスプレイである。表示部218は、制御部215の解析結果を表示する。なお、表示部218は、管理装置213の外部に設けられてもよい。
また、切削システム210は、切削装置211および管理装置213間の距離が長い等の理由により、両者の間において無線信号の送受信を直接行うことが困難である場合には、両者の間に中継装置を備えてもよい。この場合、切削装置211は、無線信号を中継装置経由で管理装置213へ送信する。
[使用方法]
図13および図14を参照して、切削工具101の使用方法について説明する。
まず、切削工具101のシャンク1103を、たとえば、フライス盤における、アーバ等のホルダに固定する。
次に、電力線に設けられたスイッチをオフからオンへ切り替えることにより、電池22から歪センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する。
次に、切削工具101を回転駆動することにより、切削工具101は、切削対象物の切削を開始する。
切削が開始されると、切削工具101が切削対象物から受ける切削抵抗により、刃部、刃取付部12およびシャフト部11に応力が生じて歪が生じる。
歪センサ14は、シャフト部11に生じた歪を示す計測信号を無線通信装置23へ出力する。
次に、無線通信装置23は、歪センサ14から受けた計測信号を示すセンサ情報を無線信号に含めて外部の管理装置213へ送信する。
管理装置213において、無線通信部214は、無線通信装置23から受信した無線信号に含まれるセンサ情報の示す計測結果を記憶部216に保存する。記憶部216は、無線通信部214が切削工具101から受信した計測結果を蓄積する。制御部215は、ユーザから操作入力部217を介して入力された指示に応じて、記憶部216に蓄積された計測結果を解析する。表示部218は、解析結果を表示する。
なお、凹部16は上述した矩形、すなわち、拡径部15の周方向に沿って形成され、シャフト部11の中心軸17を含む断面視で矩形でなくてもよい。具体的には、たとえば、凹部16は、円形状に開口する円筒状の孔、四角形状に開口する四角筒状の孔等であってもよい。
また、歪センサ14は、凹部16に対して斜めの方向、すなわち切削工具101の長手方向Xに対して斜めの方向に沿って、拡径部15に取り付けられてもよい。具体的には、たとえば、歪センサ14は、長手方向Xに対して45°の角度をなす方向に沿って拡径部15に取り付けられてもよい。
また、複数の歪センサ14が設けられる場合、一部の歪センサ14は、凹部16に対して直交する方向、すなわち切削工具101の長手方向Xに沿った方向に取り付けられ、他の歪センサ14は、凹部16に対して傾斜する方向に沿って、拡径部15に取り付けられてもよい。
具体的には、たとえば、4つの歪センサ14が設けられる場合、2つの歪センサ14は、凹部16に対して直交する方向に沿って取り付けられ、他の2つの歪センサ14は、凹部16に対して傾斜する方向に沿って拡径部15に取り付けられる。
また、凹部16は、シャフト部11の周方向に沿って形成されていなくてもよい。凹部16は、シャフト部11の周方向に対して傾いた方向に沿って形成されてもよい。すなわち、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面と交差するように形成されていてもよい。
また、凹部16は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18において、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称でない形状を有してもよい。具体的には、たとえば、シャフト部11の周方向において深さおよび幅の少なくともいずれか一方が均一でない凹部16が、シャフト部11の周方向に沿って形成されてもよい。
また、シャフト部11は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18において、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称をなさない位置に設けられた少なくとも1組の凹部を有してもよい。具体的には、たとえば、3つの凹部16が、拡径部15の周面において、それぞれ、交点19を中心として0°,120°,240°をなす位置に設けられてもよい。
図15は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図15は、第1の実施の形態に係る切削工具である3つの実施例1~3、および2つの比較例1,2を片持ち梁であるとみなして、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合における片持ち梁全体の変位を示している。図15において、実施例1~3および比較例1,2は、それぞれ、グラフG1~G5に対応している。
3つの実施例1~3、および比較例1,2の条件は以下の通りである。比較例1は、拡径部15および凹部16が形成されていない切削工具である。具体的には、シャフト部11の長さおよび直径は、それぞれ、65mmおよび25mmである。比較例2は、歪センサ14を取り付ける領域の長さとして、比較例1と比べて全長を40mm延長したものである。
実施例1では、歪センサ14を取り付けるための領域の長さとして、比較例1と比べて長さが40mm延長されるとともに、延長された部分が四角柱状に拡径された拡径部15となっている。拡径部15は、1辺が55mmの正方形状の断面を有している。また、実施例1は、拡径部15の周方向に沿って幅3mmの凹部16が形成されたものである。シャフト部11において凹部16が形成されて細くなっている部分であるくびれ部の直径は、35mmである。
実施例2は、実施例1と比べて、くびれ部の直径が25mmである。実施例3は、実施例1と比べて、くびれ部の直径が20mmである。
図15を参照して、比較例2のように全長を40mm延長すると、比較例1と比べて剛性が大きく低下して、刃先での変位が大きくなることが分かる。また、実施例1~3のように拡径部15を設けると、剛性が高まり、比較例2と比べて刃先の変位が小さく抑えられていることが分かる。
ここで、本発明者らは、一例として、実施例2および比較例2における切削工具の剛性を計算によって求め、比較した。具体的には、まず、3次元スキャナを用いて、実施例2の切削工具の寸法を計測した。次に、計測結果に基づき、実施例2の切削工具に対応する3次元CAD(Computer Aided Design)モデルを作成した。作成したCADモデルから凹部16を有する拡径部15を除く処理を行い、比較例2の切削工具に対応するCADモデルを作成した。これらのCADモデルそれぞれの剛性を有限要素法によって算出した。
その結果、実施例2に対応するCADモデルの剛性は、比較例2に対応するCADモデルの剛性の2.54倍であった。これより、凹部16を有する拡径部15が設けられた切削工具の剛性は、当該拡径部15が設けられない切削工具の剛性の1.1倍以上であるのが好ましく、より好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは2.0倍以上である。
図16は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図16は、上記実施例1~3および比較例1,2について、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合にシャフト部11において生じる歪を示している。図16において、実施例1~3および比較例1,2は、それぞれ、グラフG21~G25に対応している。
図16を参照して、実施例1~3のように、シャフト部11に拡径部15を形成すると、剛性が高まり、歪が小さくなることが分かる。また、実施例1~3のように、拡径部15に凹部16を形成すると、拡径部15の剛性が局所的に低下して、歪が大きくなることが分かる。また、実施例1~3のようにくびれ部の直径を変更すると、歪の大きさを制御できることが分かる。たとえば、実施例1~3のように、くびれ部の直径が小さくなるにつれて、つまり凹部16の深さが大きくなるにつれて、歪が大きくなることが分かる。たとえば、実施例3のくびれ部は、実施例1のくびれ部と比べて直径が小さいため、実施例1のくびれ部と比べて剛性が低い。このため、実施例の3のくびれ部では、実施例1のくびれ部と比べて、歪の増幅度合いが大きい。
図17は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の凹部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図17は、第1の実施の形態に係る切削工具である3つの実施例4~9を片持ち梁であるとみなして、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合に、凹部16の幅が歪センサ14の応力分布に及ぼす影響の度合いを示している。ここで、歪センサ14は、凹部16を跨ぐように拡径部15に取り付けられるものとする。
図17における横軸および縦軸は、それぞれ、歪センサ14において凹部16を跨いでいる部分、すなわち凹部16上の部分における片持ち梁の先端部側の端部から根本側への複数のサンプリング位置までの距離、ならびに当該複数のサンプリング位置において発生する応力を示している。図17において、実施例4~9は、それぞれ、グラフG31~G36に対応している。
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における凹部および歪センサの一部を拡大した状態で示している。詳細には、図7は、歪センサ14における複数のサンプリング位置Pの一例を示している。
図7を参照して、サンプリング位置Pは、歪センサ14における凹部16を跨いでいる部分において、片持ち梁の先端部側の端部141より根本側の或る位置をサンプリング位置Pの始点として、当該始点から根本側へ0.25mmおきに設けられる。すなわち、上記始点を含む複数の位置にサンプリング位置Pが設けられる。上記始点は、たとえば、端部141から根本側へ0.25mm離れた位置である。
なお、サンプリング位置Pは、端部141をサンプリング位置Pの始点として、当該始点から根本側へ0.25mmおきに設けられてもよい。すなわち、端部141にサンプリング位置Pが設けられてもよい。
6つの実施例4~9の条件は以下の通りである。実施例4~9では、拡径部15は、正八角柱状に形成されている。正八角柱の互いに対向する面同士の距離は、56mmである。実施例4~9は、拡径部15の周方向に沿って凹部16が形成されたものである。
シャフト部11において凹部16が形成されて細くなっている部分であるくびれ部の直径は、32mmである。正八角柱の各側面と凹部16の底面との距離、すなわち凹部16の深さは、12mmである。
実施例4~9の凹部16の幅は、それぞれ、0.5mm,1mm,2mm,3mm,6mm,10mmである。
図17を参照して、凹部16の幅が0.5mm~1mmの範囲では、幅が狭いことにより、応力のばらつきが大きい。平均すると、19MPa~28MPa程度であり、幅が広がるにつれて応力が大きくなっている。ただし、幅が3mm以上の範囲では、応力が30MPa程度で飽和している。このため、幅を0.5mmから10mmに広げた場合の応力の増加は、約1.5倍となっている。
図18は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の凹部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図18は、第1の実施の形態に係る切削工具である6つの実施例4~9を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えたときの当該先端部における剛性を比較した場合に、凹部の幅が当該先端部の剛性比に及ぼす影響の度合いを示している。図18は、横軸および縦軸は、それぞれ、凹部の幅および剛性比を示している。
図18を参照して、凹部16の幅を0.5mmから10mmに変更した場合、剛性比は約5%低下する。
図19は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の凹部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図19は、第1の実施の形態に係る切削工具である4つの実施例10~13を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えた場合に、凹部16の深さが歪センサ14の応力分布に及ぼす影響の度合いを示している。ここで、歪センサ14は、凹部16を跨ぐように拡径部15に取り付けられるものとする。
図19における横軸および縦軸は、それぞれ、歪センサ14において凹部16を跨いでいる部分、すなわち凹部16上の部分における片持ち梁の先端部側の端部から根本側への複数のサンプリング位置までの距離、ならびに当該複数のサンプリング位置において発生する応力を示している。図19において、実施例10~13は、それぞれ、グラフG41~G44に対応している。
図7に示すように、サンプリング位置Pは、歪センサ14における凹部16を跨いでいる部分において、片持ち梁の先端部側の端部141より根本側の或る位置をサンプリング位置Pの始点として、当該始点から根本側へ0.25mmおきに設けられる。すなわち、上記始点を含む複数の位置にサンプリング位置Pが設けられる。上記始点は、たとえば、端部141から根本側へ0.25mm離れた位置である。
なお、サンプリング位置Pは、端部141をサンプリング位置Pの始点として、当該始点から根本側へ0.25mmおきに設けられてもよい。すなわち、端部141にサンプリング位置Pが設けられてもよい。
4つの実施例10~13の条件は以下の通りである。実施例10~13の凹部16の深さは、それぞれ、0.5mm,5.5mm,12mm,15.5mmである。また、実施例10~13の凹部16の幅は3mmである。なお、実施例10~13における凹部16の底の直径は、それぞれ、55mm,45mm,32mm,25mmである。
図19を参照して、凹部16の深さが0.5mmである場合、応力は2MPa程度である。これに対し、凹部16の深さが15.5mmである場合、応力は31MPa程度となる。つまり、凹部16の深さを0.5mmから15.5mmへ変更すると、応力が約15倍に増幅される。
図20は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の凹部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図20は、第1の実施の形態に係る切削工具である4つの実施例10~13を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えたときの当該先端部における剛性を比較した場合に、凹部の深さが当該先端部の剛性比に及ぼす影響の度合いを示している。図20では、縦軸は剛性比を示している。また、横軸は、凹部の底の直径および凹部の深さを示している。
図20を参照して、凹部16の深さを0.5mmから15.5mmへ増加させても、剛性比は約4%しか低下しない。
以上の結果から、凹部16の幅および深さを比較すると、凹部16の幅よりも凹部16の深さの方が、剛性比の変化量に対する応力の増加率が高いことが分かる。つまり、片持ち梁の先端部における剛性の低下を抑えつつ、シャフト部11の剛性を低下させて、歪を増幅させるには、凹部16の幅を大きくするよりも、凹部16の深さを大きくする方が効果的であることが分かる。
なお、切削工具101は、歪センサ14を備えず、シャフト部11が歪センサ14を着脱可能な構成であってもよい。
[変形例1]
図21は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す斜視図である。
図21を参照して、変形例1に係る切削工具201は、図1に示す凹部16の代わりに、複数の凹部161を備える。
図21に示す例では、凹部161は、円形状に開口する孔部である。凹部161は、シャフト部11の中心軸17に向かって凹となるように形成されている。なお、凹部161は、円形状以外の形状に開口する孔部であってもよい。たとえば、凹部161は、四角形状に開口する孔部であってもよい。
図21に示す例では、複数の凹部161が、シャフト部11の周方向に沿って互いに間隔をあけて形成されている。具体的には、凹部161の数は、4つである。4つの凹部161のうち、2つの凹部161は、シャフト部11の中心軸17を介して互いに反対の位置に設けられている。また、他の2つの凹部161は、シャフト部11の中心軸17を介して互いに反対の位置に設けられている。また、各凹部161は、シャフト部11の周方向に沿って等間隔で並ぶ位置に設けられている。なお、凹部161の数は、4つに限定されず、たとえば、1つ、2つ、3つ、または5つ以上であってもよい。
図22は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す矢視図である。詳細には、図22は、図21におけるA方向から見た矢視図である。
図22を参照して、拡径部15は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18において、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称をなす位置に設けられた少なくとも1組の凹部161を有する。図22に示す例では、拡径部15は、2組の凹部161を有する。
具体的には、当該位置に設けられた少なくとも1組の凹部161は、互いに、幅が同じであり、かつ深さが同じである。
また、拡径部15を平面18で切断したときの各凹部161の断面の大きさおよび形状は、同じになっている。また、拡径部15を平面18で切断したときの、平面18上における凹部161の底面191の形状は、直線状となっている。
図23は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す側面図である。
図23を参照して、拡径部15をシャフト部11の中心軸17を通る平面20で切断したときの各凹部161の断面の大きさおよび形状は、同じになっている。
また、拡径部15を平面20で切断したときの、平面20上における凹部161の底面191の形状は、直線状となっている。
図24は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図24は、シャフト部の一部を、切削工具の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
図24を参照して、凹部161の深さDe2は、たとえば、図5における凹部16の深さDe1と同じ範囲内の値に設定される。
また、凹部161における、深さ方向と直交する方向の長さ、具体的には径Di1は、たとえば、図9における凹部16の幅W1と同じ範囲内の値に設定される。
また、凹部161の底面191からシャフト部11の中心軸17までの距離D2は、たとえば、シャフト部11における拡径部15以外の部分の半径r1以上である。
図25は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の他の例を示す図である。詳細には、図25は、シャフト部の一部を、切削工具の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
拡径部15をシャフト部11の中心軸17を通る平面20で切断したときの、平面20上における凹部161の底面191の形状は、直線状に限定されるものではなく、たとえば、図25に示すように、円弧状であってもよい。
図26は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の他の例を示す図である。詳細には、図26は、シャフト部の一部を、切削工具の中心軸を含む平面で切断した状態で示す部分断面図である。
図26を参照して、距離D2は、半径r1より小さくてもよい。
なお、拡径部15が有する凹部161の対の数は、2組に限定されるものではなく、たとえば、1組または3組以上であってもよい。
その他の構成は、上述した切削工具101と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
凹部161が、シャフト部11の中心軸17に向かって凹となるように形成される構成により、シャフト部11において歪が大きく現れやすいシャフト部11の周面、具体的には、たとえば拡径部15の周面に凹部16を形成して、シャフト部11の剛性をより一層低下させることができる。したがって、切削によって生じる切削工具101の歪をさらに精度よく計測することができる。
拡径部15が、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称をなす位置に設けられた少なくとも1組の凹部161を有する構成により、異方性のある歪の発生を抑制することができるため、たとえば、シャフト部11の周面に複数の歪センサ14が取り付けられる場合に、切削工具101の状態を各歪センサ14の計測値により正確に反映させることができる。
[変形例2]
図27は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例2を示す側面図である。図28は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例2を分割した状態で示す側面図である。
図27および図28を参照して、変形例2に係る切削工具301のシャフト部11は、シャフト部11の長手方向Xに分割可能に構成されている。
具体的には、たとえば、シャフト部11は、拡径部15よりも刃取付部12側の位置において、刃取付部12側の部分である刃側部分111と、刃取付部12とは反対側の部分である反刃側部分114とに分割可能に構成されている。
刃側部分111における、刃取付部12とは反対側の端部には、雄ネジ部111Aが設けられている。また、反刃側部分114における、刃取付部12側の端部には、雌ネジ部114Aが設けられている。雄ネジ部111Aと雌ネジ部114Aとが螺合することにより、刃側部分111と反刃側部分114とが連結される。また、雄ネジ部111Aと雌ネジ部114Aとの螺合を解除することにより、刃側部分111と反刃側部分114とが分割される。
なお、刃側部分111における、刃取付部12とは反対側の端部に雌ネジ部が設けられるとともに、反刃側部分114における、刃取付部12側の端部に雄ネジ部が設けられてもよい。
また、シャフト部11は、たとえば、拡径部15よりも刃取付部12とは反対側の位置において、刃取付部12側の部分と、刃取付部12とは反対側の部分とに分割可能に構成されてもよい。
その他の構成は、上述した切削工具101と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
[変形例3]
図29は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の変形例3を示す側面図である。
図29を参照して、変形例3に係る切削工具401の拡径部15は、歪センサ14が取り付けられる位置に凹部27を有している。以下、凹部27を取付凹部27とも称する。図29に示す例では、取付凹部27は、拡径部15における、凹部16と直交する位置に形成されている。
取付凹部27は、シャフト部11の中心軸17に向かって凹となるように形成されている。取付凹部27の開口部および底面は、各々、歪センサ14よりも大きい。具体的には、取付凹部27の開口部および底面は、各々、たとえば、歪センサ14を相似的に拡大したような形状を有している。取付凹部27の深さは、たとえば、凹部16の深さと同じである。
図30は、図29における拡径部付近を拡大して示す側面図である。なお、図30では、便宜上、歪センサを図示していない。
図30を参照して、取付凹部27の底面には、目印21が設けられている。ユーザは、目印21によって示される取付位置に、歪センサ14を取り付けることができる。
その他の構成は、上述した切削工具101と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本開示の第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて凹部の形状を変更した切削工具に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。
図31は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成を示す斜視図である。図32は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。図33は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図33は、図21におけるA方向から見た矢視図である。
図31~図33を参照して、切削工具501は、図1に示す切削工具101と比較して、シャフト部11の代わりに、シャフト部110を備えている。また、シャフト部110には拡径部が形成されていない。また、シャフト部110の周面には、図1に示す凹部16の代わりに、凹部162が形成されている。凹部162近傍には歪センサ14を取付可能なセンサ取付部21が設けられている。
図32に示す例では、シャフト部110と刃取付部12との境界を二点鎖線41により示している。
凹部162は、シャフト部110のセンサ取付部21に歪センサ14が取り付けられた状態において切削工具501による切削が行われた場合に、凹部162および凹部162周辺の少なくともいずれか一方において生じる歪を歪センサ14により検出可能に形成されている。
図31~図33に示す例では、凹部162は、シャフト部110の周方向に沿って形成される。
凹部162は、シャフト部110の周方向全体にわたり連続的に形成されている。図33においては、凹部162を破線で示している。なお、凹部162は、シャフト部110の周方向に沿って断続的に形成されてもよい。すなわち、複数の凹部162が、互いに不連続の状態で形成されてもよい。
シャフト部110は、一定程度の剛性を有するものであれば、シャフト部110に拡径部が形成されていなくても、高い剛性を確保できることから、凹部162の形成による剛性低下の影響を小さくすることができる。これにより、歪センサ14による歪の計測を可能にしながら、切削抵抗によるシャフト部110の変位を小さく抑えることができる。
図34~図37は、それぞれ、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成の他の例を示す側面図である。
図31に示す例は、凹部162が転削工具の一種であるエンドミルに形成される構成であるが、これに限定されるものではない。たとえば、図34を参照して、凹部162は、転削工具の一種であるドリル502におけるシャフト部の一例であるボディ部125に形成されてもよい。
図34に示す例では、シャフト部110、ボディ部125および刃取付部12が、この順序で並んで一体に形成されている。ボディ部125と刃取付部12との境界を二点鎖線42により示している。
また、図35および図36を参照して、凹部162は、転削工具の一種であるフライスカッター503におけるシャフト部の一例であるボス部120に形成されてもよい。
図35および図36に示す例では、ボス部120および刃取付部12が一体に形成されている。図36において、ボス部120と刃取付部12との境界を二点鎖線43により示している。
図35および図36に示す例では、ボス部120における刃取付部12とは反対側の端部に、シャフト部121が連結されている。なお、シャフト部121は、ボス部120に連結されなくてもよい。
また、図37を参照して、凹部162は、旋削工具の一種であるバイト504において、シャフト部122に形成されてもよい。
図37に示す例では、シャフト部122および刃取付部12が一体に形成されている。シャフト部122と刃取付部12との境界を二点鎖線44により示している。
[変形例1]
図38は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す斜視図である。図39は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す側面図である。
図38および図39を参照して、変形例1に係る切削工具601は、図32に示す凹部162の代わりに、複数の凹部163を含む。
図38および図39に示す例では、凹部163は、円形状に開口する孔部である。凹部163は、シャフト部123の中心軸17に向かって凹となるように形成されている。なお、凹部163は、円形状以外の形状に開口する孔部であってもよい。たとえば、凹部163は、四角形状に開口する孔部であってもよい。
図38および図39に示す例では、複数の凹部163が、シャフト部123の周方向に沿って互いに間隔をあけて形成されている。具体的には、凹部163の数は、4つである。4つの凹部163のうち、2つの凹部163は、シャフト部123の中心軸17を介して互いに反対の位置に設けられている。
また、他の2つの凹部163が、シャフト部123の中心軸17を介して互いに反対の位置に設けられている。また、各凹部163は、シャフト部123の周方向に沿って等間隔で並ぶ位置に設けられている。なお、凹部163の数は、4つに限定されず、たとえば、2つ、3つ、または5つ以上であってもよい。
図40は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の変形例1を示す図である。詳細には、図40は、図38におけるA方向から見た矢視図である。
図40を参照して、シャフト部123は、シャフト部123の中心軸17を法線とする平面18において、中心軸17と平面18との交点19に対して点対称をなす位置に設けられた少なくとも1組の凹部163を有する。図40に示す例では、シャフト部123は、2組の凹部163を有する。
また、シャフト部123を平面18で切断したときの各凹部163の断面の大きさおよび形状は、同じになっている。また、シャフト部123を平面18で切断したときの、平面18上における凹部163の底面191の形状は、直線状となっている。
なお、シャフト部123が有する凹部163の対の数は、2組に限定されるものではなく、たとえば、1組または3組以上であってもよい。
その他の構成は、上述した切削工具501と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
このように、シャフト部110に形成された凹部162が、凹部162および凹部162周辺の少なくともいずれか一方において生じる歪を歪センサ14により検出可能に形成されている構成により、たとえばシャフト部110全体の剛性が一定程度確保されている場合にシャフト部110の剛性を局所的に低下させることができる。これにより、切削時において生じる歪が局所的に増大する。
したがって、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具では、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサ14を取り付けることにより、切削工具501の剛性を確保しながら、切削によって生じる切削工具501の歪を精度よく計測することができる。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第3の実施の形態>
本開示の第3の実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて、切削工具に拡径部が設けられておらず、拡径部の代わりに拡径モジュールを備える切削工具ユニットに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。
図41は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具ユニットの構成を示す斜視図である。
図41を参照して、切削工具ユニット701は、切削工具801と、拡径モジュール150とを備える。
切削工具801は、シャフト部であるシャフト部113と、シャフト部113の端部に設けられる刃取付部12または刃部を含む。
シャフト部113は、図1に示す拡径部15を含まない。また、シャフト部113には、図31に示す凹部162が形成されていない。
拡径モジュール150は、シャフト部113に取付可能に構成されている。すなわち、切削工具ユニット701は、図1に示す切削工具101と比較して、拡径部15の代わりに、拡径モジュール150を備える。
具体的には、拡径モジュール150は、本体151と、図示しない連結機構と、歪センサ14とを含む。
本体151は、円筒状に形成されている。また、本体151は、シャフト部113が挿通可能な円筒形状を有し、内周面がシャフト部113の周面を覆うようにシャフト部113に取付可能である。また、本体151の周面には、凹部160が形成されている。
凹部160は、たとえば、図1に示す凹部16と同じ形状および寸法を有する。
図42は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具ユニットの構成を示す図である。詳細には、図42は、拡径モジュールを取り外した状態の切削工具、および拡径モジュールを、図41におけるA方向から見た矢視図である。
図42を参照して、本体151は、周方向において複数の部分に分割可能に構成されている。図42に示す例では、本体151は、2つの部分、すなわちA方向から見て略半円状をなす2つの弧状部151a,151bに分割可能に構成されている。
弧状部151aおよび弧状部151bは、図示しない連結機構により互いに連結される。具体的には、たとえば、弧状部151aおよび弧状部151bは、ボルトおよびナットにより連結される。弧状部151aおよび弧状部151bは、互いに連結された状態においてシャフト部113の周面に密着して固定されるような寸法を有する。
歪センサ14は、本体151に対して、図1に示す歪センサ14と同様の位置に取り付けられる。
切削工具ユニット701は、上述の連結機構による連結および連結解除を行うことにより、拡径モジュール150をシャフト部113に着脱することができる。拡径モジュール150をシャフト部113に取り付けた後、切削工具ユニット701を、図1に示す切削工具101と同様の方法により使用することができる。
なお、切削工具801は、エンドミル以外の他の種類の切削工具であってもよい。たとえば、切削工具801は、転削工具の一種であるドリルであってもよい。また、切削工具801は、旋削工具の一種であるバイトであってもよい。
このように、シャフト部113の周面に取付可能である筒状の本体151を備え、本体151に凹部160が形成される構成により、拡径モジュール150の剛性が局所的に低下する。このため、拡径モジュール150をシャフト部113に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時に拡径モジュール150において生じる歪が局所的に増大する。
また、シャフト部113の周面に取付可能である筒状の本体151を含み、本体151に凹部160が形成された拡径モジュール150を備える構成により、拡径モジュール150の剛性が局所的に低下する。このため、拡径モジュール150をシャフト部113に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時に拡径モジュール150において生じる歪が局所的に増大する。
したがって、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具ユニットでは、剛性が局所的に低下した箇所に歪センサ14を取り付けることにより、切削に必要な剛性を確保しながら、切削によって生じる歪、たとえば切削抵抗によって生じる歪を精度よく計測することができる。
その他の構成は、上述した切削工具101と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
なお、切削工具ユニット701は、図41に示す構成に加えて、さらに、図13に示すような電池22、無線通信装置23、およびハウジング24を備えた構成であってもよい。ハウジング24は、たとえば、ねじ等の固定部材により拡径モジュール150に固定される。
また、切削工具ユニット701を備えた切削システムを構築してもよい。具体的には、たとえば、本開示の第3の実施の形態に係る切削システムは、図14に示す切削システム210と比べて、図4に示す切削工具101の代わりに、図41に示す切削工具ユニット701を備える。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第4の実施の形態>
本開示の第4の実施の形態は、第2の実施の形態の他の例に係る切削工具であるフライスカッター503と比べて、フライスカッターに凹部が形成されておらず、さらに取付モジュールを備える切削工具ユニットに関する。以下で説明する内容以外は第2の実施の形態の他の例に係るフライスカッター503と同様である。
図43は、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具ユニットの構成を示す斜視図である。図44は、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具ユニットを分割した状態で示す側面図である。図45は、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具を示す斜視図である。
図43~図45を参照して、切削工具ユニット902は、切削工具901と、取付モジュール1123とを備える。
切削工具901は、シャフト部112と、シャフト部112の端部に設けられる刃取付部12または図示しない刃部とを含む。切削工具901は、図45に示す例では、フライスカッターである。
シャフト部112は、シャフト部112の軸方向、具体的には回転軸方向X1に分割可能に構成されている。具体的には、シャフト部112は、刃取付部12側の部分である刃側部分1121と、刃取付部12とは反対側の部分である反刃側部分1122とに分割可能に構成されている。図43~図45に示す例では、刃側部分1121はボス部であり、反刃側部分1122はシャフト部である。
詳細には、刃側部分1121における、刃取付部12とは反対側の端部には、刃取付部12側に凹む凹部1121Bが形成されている。また、反刃側部分1122における、刃取付部12側の端部には、刃取付部12側へ突出する凸部1122Bが形成されている。
矢印B1で示すように、凹部1121Bと凸部1122Bとが係合することにより、刃側部分1121と反刃側部分1122とが連結される。つまり、切削工具901が構成される。一方、凹部1121Bと凸部1122Bとの螺合を解除することにより、シャフト部112は、刃側部分1121と反刃側部分1122とに分割される。
取付モジュール1123は、シャフト部112に取付可能な部材である。具体的には、取付モジュール1123は、本体1123Cと、本体1123Cをシャフト部112に取り付ける取付部である凸部1123Aおよび凹部1123Bとを含む。
本体1123Cは、刃側部分1121の軸方向に沿って、具体的には回転軸170に沿って刃側部分1121に取付可能な柱状の部材である。
具体的には、取付モジュール1123における、刃取付部12側の端部には、刃取付部12側へ突出する凸部1123Aが形成されている。また、取付モジュール1123における、刃取付部12とは反対側の端部には、刃取付部12側へ凹む凹部1123Bが形成されている。
矢印B2で示すように、凹部1121Bと凸部1123Aとが係合することにより、刃側部分1121と取付モジュール1123とが連結される。また、矢印B3で示すように、凹部1123Bと凸部1122Bとが係合することにより、取付モジュール1123と反刃側部分1122とが連結される。つまり、切削工具ユニット902が構成される。
一方、凹部1121Bと凸部1123Aとの係合を解除し、凹部1123Bと凸部1122Bとの係合を解除することにより、切削工具ユニット902は、刃側部分1121、取付モジュール1123および反刃側部分1122に分割される。
取付モジュール1123の周面には、凹部1620が形成されている。凹部1620は、取付モジュール1123がシャフト部112に取り付けられ、かつ取付モジュール1123に歪センサ14が取り付けられた状態において切削工具ユニット902による切削が行われた場合に、凹部1620または凹部1620周辺において生じる歪を歪センサ14により検出可能に形成されている。
図43および図44に示す例では、凹部1620は、取付モジュール1123の周方向に沿って形成される。
凹部1620は、取付モジュール1123の周方向全体にわたり連続的に形成されている。なお、凹部1620は、取付モジュール1123の周方向に沿って断続的に形成されてもよい。すなわち、複数の凹部1620が、互いに不連続の状態で形成されてもよい。
なお、刃側部分1121における、刃取付部12とは反対側の端部に凸部が形成されるとともに、取付モジュール1123における、刃取付部12側の端部に凹部が形成されてもよい。また、取付モジュール1123における、刃取付部12とは反対側の端部に凸部が形成されるとともに、反刃側部分1122における、刃取付部12側の端部に凹部が形成されてもよい。
その他の構成は、上述したフライスカッター503と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
なお、切削工具901は、フライスカッター以外の他の種類の切削工具であってもよい。たとえば、切削工具901は、転削工具の一種であるドリルであってもよい。また、切削工具901は、旋削工具の一種であるバイトであってもよい。
このように、取付モジュール1123が、シャフト部112に取付可能な柱状の本体1123Cを備え、本体1123Cの周面に凹部1620が形成される構成により、取付モジュール1123の剛性が局所的に低下する。このため、取付モジュール1123をシャフト部112に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時に取付モジュール1123において生じる歪が局所的に増大する。
また、シャフト部112に取付可能な柱状の本体1123Cを含み、本体1123Cの周面に凹部1620が形成された取付モジュール1123を備える構成により、取付モジュール1123の剛性が局所的に低下する。このため、取付モジュール1123をシャフト部112に取り付けた状態で切削を行うことにより、切削時に取付モジュール1123において生じる歪が局所的に増大する。
したがって、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具ユニットでは、取付モジュール1123において剛性が局所的に低下した箇所に歪センサ14を取り付けることにより、切削に必要な剛性を確保しながら、切削によって生じる歪、たとえば切削抵抗によって生じる歪を精度よく計測することができる。
なお、切削工具ユニット902は、図43に示す構成に加えて、さらに、図13に示すような電池22、無線通信装置23、およびハウジング24を備えた構成であってもよい。ハウジング24は、たとえば、ねじまたはボルト等の固定部材により取付モジュール1123に固定される。
また、切削工具ユニット902を備えた切削システムを構築してもよい。具体的には、たとえば、本開示の第4の実施の形態に係る切削システムは、図14に示す切削システム210と比べて、図4に示す切削工具101の代わりに、図43に示す切削工具ユニット902を備える。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第5の実施の形態>
本開示の第5の実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101における凹部に代えて空洞部が形成される切削工具に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。
図46は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具の構成を示す斜視図である。
図46を参照して、切削工具1001は、シャフト部130と、刃取付部12と、図示しない刃部と、歪センサ14とを備える。
シャフト部130は、シャフト部130のうちの他の部分よりも径が太い拡径部152を含む。拡径部152は、たとえば八角柱形状である。拡径部152の周面には、凹部は形成されておらず、周面を構成する8つの面は概ね平坦である。
拡径部152の周面には、歪センサ14を取り付ける位置を示す目印(センサ取付部)21が設けられる。より詳細には、拡径部152の周面を構成する8つの面の各々には、センサ取付部21が設けられる。センサ取付部21は、たとえば、歪センサ14が取り付けられる領域を示す輪郭線である。各歪センサ14は、中心軸17に対して点対称に配置される。
図47は、図46の切削工具をシャフト部の中心軸を含む面で切断した断面図である。
図47を参照して、拡径部152は、拡径部152の内部に形成された空洞部28を含む。空洞部28は、拡径部152の内部に形成された概略円柱形状の密閉空間である。ただし、空洞部28は、拡径部152の内部に形成された概略多角柱形状の密閉空間であってもよく、その形状は特に限定されない。
空洞部28の中心軸は、シャフト部130の中心軸17と一致する。中心軸17方向において、空洞部28の長さは、拡径部152の長さよりも短い。空洞部28は、中心軸17方向において、拡径部152の中央部分に形成される。拡径部152の中央部分は、第1区間に相当する。すなわち、拡径部152における第1区間は、第1区間の内部に形成された空洞部28を含む。第1区間は、拡径部152において、径方向の内側に空洞部28が形成される部分であり、拡径部152のうち、空洞部28の一方の端面から他方の端面までの部分である。
拡径部152において、第1区間に隣接する部分のうち、シャンク1103側の部分は第2区間であり、刃取付部12側の部分は第3区間である。
歪センサ14は、拡径部152の周面において、第1区間を跨ぐように取り付けられる。歪センサ14は、空洞部28を中心軸17に垂直な方向、すなわち拡径部152の径方向に沿って拡径部152の周面に投影した場合、投影された空洞部28と重複する。歪センサ14および空洞部28は、第1区間において、中心軸17を法線とする平面と交差する。
歪センサ14は、中心軸17に対して傾斜する方向に第1区間を跨いでもよいし、第1区間を跨がないように拡径部152に取り付けられてもよい。ただし、歪センサ14は、拡径部152の周面において、第1区間の近傍に設けられる。より詳細には、歪センサ14は、空洞部28を拡径部152の径方向に沿って拡径部152の周面に投影した場合、投影された空洞部28から中心軸17方向に5mm以内の位置に取り付けられる。
空洞部28は、拡径部152の第1区間の断面二次モーメントを低減し、第1区間の剛性を第2区間および第3区間の剛性よりも低下させる。拡径部152の断面二次モーメントを局所的に低減することで、拡径部152において発生する歪を局所的に大きくすることができる。したがって、歪センサ14は、シャフト部130における拡径部152の第1区間以外の位置に取り付けられる場合と比べて、より大きな値の歪を計測することができる。
また、空洞部28は、拡径部の剛性を局所的に低下させつつ、シャフト部130の中心軸17から歪センサ14が取り付けられる位置までの距離を長くする。中心軸17から遠い位置の歪は、中心軸17から近い位置の歪より大きいため、歪センサ14は、より大きな値の歪を計測することができる。
さらに、切削加工により生じた熱は、刃部からシャフト部130へ伝達される。この加工熱は、シャフト部が中実の場合、シャフト部の中心軸近傍部分を主として伝わるため、シャフト部の中心軸近傍部分と、歪センサが取り付けられるシャフト部の周面とでは温度が異なる。そのため、歪センサが取り付けられるシャフト部の周面において、シャフト部の周面の温度を測定しても、シャフト部に生じる熱歪を正確に把握することは難しい。
これに対し、第5の実施の形態に係る切削工具1001では、拡径部152の内部に空洞部28が形成されるため、加工熱は、図47中に矢印で示すように空洞部28を避けるように伝わり、拡径部152の周面近傍を通る。したがって、シャフト部130の周面の温度を測定すれば、シャフト部130に生じる熱歪を把握することができ、より正確に歪を測定することができる。なお、切削工具1001は、たとえば金属三次元プリンタによって製造することができる。
図48は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図48は、第5の実施の形態に係る切削工具1001である実施例14、第1の実施の形態に係る切削工具101である実施例1、および3つの比較例1~3を片持ち梁であるとみなして、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合における片持ち梁全体の変位を示している。なお、実施例1,14および比較例1~3のいずれにおいても、計算の簡素化のため、切削工具は、拡径部も含めて四角柱形状のシャフト部を有するものとした。図48において、実施例1,14および比較例1~3は、それぞれ、グラフG51~G55に対応している。なお、実施例1の変位および比較例3の変位は僅かな差であるため、グラフG51およびG55は図面上重なっている。
実施例1および比較例1,2の条件は、第1の実施の形態における条件と同じである。実施例14および比較例3の条件は以下の通りである。比較例3は、歪センサ14を取り付けるための領域の長さとして、比較例1と比べて長さが40mm延長されるとともに、延長された部分が四角柱状に拡径された拡径部となっている。拡径部は、1辺が55mmの正方形状の断面を有している。ただし、拡径部には、凹部および空洞部は形成されていない。
実施例14では、歪センサ14を取り付けるための領域の長さとして、比較例1と比べて長さが15mm延長されるとともに、延長された部分が四角柱状に拡径された拡径部152となっている。拡径部152は、1辺が30mmの正方形状の断面を有している。また、実施例14は、凹部に代えて拡径部152の内部に円柱形状の空洞部28が形成されている。空洞部28の中心軸17方向の長さは3mmであり、直径は25mmである。
図48を参照して、実施例14では、拡径部152に空洞部28を形成しても、実施例1とほぼ同等に、刃先の変位がおよそ-0.04mmと小さく抑えられていることが分かる。
図49は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図49は、上記実施例1,14および比較例1~3について、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合にシャフト部において生じる歪を示している。図49において、実施例1,14および比較例1~3は、それぞれ、グラフG61~G65に対応している。
図49を参照して、実施例14のように空洞部28を形成すると、実施例1よりも歪の数値変動が大きい。歪の増幅効果は、歪の絶対値ではなく、歪の変化の比率に依存するため、実施例14の方が実施例1よりも歪の増幅効果は大きいことが分かる。また、実施例14の歪は、実施例1の歪よりも大きいことが分かる。
図50は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具の空洞部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図50は、第5の実施の形態に係る切削工具である実施例15~20を片持ち梁であるとみなして、それぞれ、先端部に同一の荷重を加えた場合に、空洞部28の中心軸17方向の長さが歪センサ14の応力分布に及ぼす影響の度合いを示している。ここで、歪センサ14は、内部に空洞部28が形成されている第1区間を跨ぐように拡径部152に取り付けられるものとする。
図50における横軸および縦軸は、それぞれ、歪センサ14において第1区間を跨いでいる部分、すなわち第1区間上の部分における片持ち梁の先端部側の端部から根本側への複数のサンプリング位置までの距離、ならびに当該複数のサンプリング位置において発生する応力を示している。図50において、実施例15~20は、それぞれ、グラフG71~G76に対応している。実施例15~20の条件は以下の通りである。
実施例15では、歪センサ14を取り付けるための領域の長さとして、上述の比較例1と比べて長さが40mm延長されるとともに、延長された部分が四角柱状に拡径された拡径部152となっている。拡径部152は、1辺が55mmの正方形状の断面を有している。また、実施例15は、凹部に代えて拡径部152の内部に円柱形状の空洞部28が形成されている。空洞部28の中心軸17方向の長さは3mmであり、直径は45mmである。
実施例16~20では、拡径部152は、正四角柱形状である。拡径部152の周面における互いに対向する面同士の距離は、55mmである。実施例16~20は、拡径部152の内部に円柱形状の空洞部28が形成されたものである。実施例16~20における空洞部28の直径は、実施例14と同じく、45mmである。
実施例16は空洞部28の中心軸17方向の長さが0.5mm、実施例17は空洞部28の中心軸17方向の長さが1.0mm、実施例18は空洞部28の中心軸17方向の長さが2.0mm、実施例19は空洞部28の中心軸17方向の長さが6.0mm、実施例20は空洞部28の中心軸17方向の長さが10.0mmである。実施例15~20において、その他の条件は同じである。
図50を参照して、実施例15を基準に、たとえば距離0mmにおける実施例16~20の歪の大きさを見ると、実施例16~20における歪の大きさはそれぞれ、実施例15に対して約5%以内となっている。すなわち、実施例16~20における歪の増幅度合いは、実施例15と概ね同程度であることが分かる。
図51は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具の空洞部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図51は、第5の実施の形態に係る切削工具1001である6つの実施例15~20を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えたときの当該先端部における剛性を比較した場合に、空洞部28の中心軸17方向の長さが当該先端部の剛性比に及ぼす影響の度合いを示している。図51は、横軸および縦軸は、それぞれ、空洞部28の中心軸17方向の長さおよび実施例15を基準とした剛性比を示している。
図51を参照して、実施例16~20における切削工具の剛性は、実施例15における切削工具の剛性とほとんど同じであった。
図52は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具の空洞部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図52は、第5の実施の形態に係る切削工具1001である4つの実施例15,21~23を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えた場合に、円柱形状の空洞部28の直径が歪センサ14の応力分布に及ぼす影響の度合いを示している。ここで、歪センサ14は、内部に空洞部28が形成されている第1区間を跨ぐように拡径部152に取り付けられるものとする。
図52における横軸および縦軸は、それぞれ、歪センサ14において第1区間を跨いでいる部分、すなわち拡径部152の第1区間上の部分における片持ち梁の先端部側の端部から根本側への複数のサンプリング位置までの距離、ならびに当該複数のサンプリング位置において発生する応力を示している。図52において、実施例15,21~23は、それぞれ、グラフG81~G84に対応している。
実施例15の条件は、上述の通りである。実施例21~23の条件は以下の通りである。実施例21~23の空洞部28の直径は、それぞれ、35mm,40mm,50mmである。また、実施例15,21~23の空洞部28の中心軸17方向の長さは3mmである。実施例15,21~23において、その他の条件は同じである。
図52を参照して、空洞部28の直径が35mmである場合、応力は約3.2MPaであり、歪センサ14の一端部から他端部まで概ね一定であった。空洞部28の直径が40mmである場合、応力は約3.1MPa~3.5MPaであり、歪センサ14の一端部から他端部まで大きな変化はなかった。空洞部28の直径が40mmである場合、応力は約3.8MPa~4.0MPaであり、歪センサ14の一端部から他端部まで大きな変化はなかった。空洞部28の直径が50mmである場合、応力は約4.7MPa~4.9MPaであり、歪センサ14の一端部から他端部まで大きな変化はなかった。また、空洞部28の直径を35mmから50mmへ変更すると、応力が約1.5倍に増幅される。
図53は、本開示の第5の実施の形態に係る切削工具の空洞部の形状についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図53は、第5の実施の形態に係る切削工具1001である4つの実施例15,21~23を片持ち梁であるとみなして、それぞれの先端部に同一の荷重を加えたときの当該先端部における剛性を比較した場合に、空洞部28の直径が当該先端部の剛性比に及ぼす影響の度合いを示している。図53では、縦軸は実施例15を基準とする剛性比を示している。また、横軸は、空洞部28の直径を示している。
図53を参照して、実施例21~23における切削工具の剛性は、実施例15における切削工具の剛性とほとんど同じであった。
以上の結果から、拡径部153の内部に空洞部28が形成された切削工具1001は、拡径部152の周面に凹部が形成された切削工具と同等の剛性を有することが分かる。ただし、実施例15の歪の大きさの変動は、実施例1の歪の大きさの変動よりも大きい。そのため、空洞部28が形成された切削工具の方が、凹部が形成された切削工具よりもひずみの絶対値が大きく、歪増幅効果が大きいことが分かる。
[変形例1]
図54は、本開示の第5の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す斜視図である。
図54を参照して、切削工具1002は、図46に示す切削工具1001と比較して、シャフト部130の代わりに、シャフト部131を備えている。また、シャフト部131には拡径部が形成されていない。
図55は、本開示の第5の実施の形態の変形例1に係る切削工具をシャフト部の中心軸を含む面で切断した断面図である。
図55を参照して、シャフト部131は、シャフト部131の内部に形成された空洞部28と、シャフト部131の周面において、歪センサ14を取付可能なセンサ取付部21とを含む。
センサ取付部21は、シャフト部131の中心軸17方向に垂直な方向において空洞部28をシャフト部131の周面に投影した場合に、空洞部28と重なる。空洞部28の詳細は、上述と同様であるので、ここでは詳細な説明は行わない。要するに、第5の実施の形態の変形例1に係る切削工具1002は、第2の実施の形態に係る切削工具における凹部を空洞部28に置き換えたものである。
このような構成であっても、上述と同様に、シャフト部131の断面二次モーメントを局所的に低減することで、シャフト部131において発生する歪を局所的に大きくすることができる。また、加工熱がシャフト部131の周面近傍を通るため、シャフト部131の周面の温度を測定すれば、シャフト部131に生じる熱歪を把握することができ、より正確に歪を測定することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
たとえば、第2の実施の形態に係る切削工具において、シャフト部は、ホルダと一体となっていてもよい。
図56は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の別例を示す側面図である。図56を参照して、切削工具505は、ホルダ部115と、シャフト部116と、刃取付部12とを備える。
ホルダ部115は、切削装置の主軸29に取り付けられる。ホルダ部115の上部は円錐台形状を有し、ホルダ部115の下部は中央がくびれた円筒形状を有する。
シャフト部116は、八角柱形状を有し、中心軸方向における中央にシャフト部116の周方向に沿って形成された凹部164を含む。シャフト部116の一端側は、ホルダ部115に接続される。シャフト部116は、ホルダ部115にねじ等によって固定され、ホルダ部115と一体となっている。シャフト部116の径、すなわち八角柱の端面における対角線は、ホルダ部115の直径と同じかまたは小さい。なお、図56では、シャフト部116とホルダ部115との境界を二点鎖線46により示している。
刃取付部12は、シャフト部116の他端側にねじ等によって固定される。刃取付部12におけるシャフト部116との接続部分は、円柱形状を有する。刃取付部12の接続部分の直径は、シャフト部116の径と同じかまたは大きい。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
切削工具であって、
シャフト部を備え、
前記シャフト部は、前記シャフト部のうちの他の部分よりも径が太い拡径部を含み、
前記拡径部は、前記拡径部の周面に形成された凹部を有し、
前記凹部は、前記拡径部の周方向に沿って形成され、
前記切削工具は、さらに、
前記シャフト部に取り付けられる歪センサを備え、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、切削工具。
[付記2]
切削工具であって、
シャフト部を備え、
前記シャフト部は、
前記シャフト部の周面に形成された凹部と、
前記凹部近傍に設けられ、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含み、
前記凹部は、前記拡径部の周方向に沿って形成され、
前記切削工具は、さらに、
前記センサ取付部に取り付けられる歪センサを備え、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、切削工具。
[付記3]
シャフト部を備える切削工具の前記シャフト部に取付可能なモジュールであって、
前記シャフト部が挿通可能な円筒形状を有し、内周面が前記シャフト部の周面を覆うように前記シャフト部に取付可能な本体を備え、
前記本体は、前記本体の外周面に形成された凹部を有し、
前記モジュールは、さらに、
前記モジュールに取り付けられる歪センサを備え、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、モジュール。
[付記4]
シャフト部を備える切削工具の前記シャフト部に取付可能なモジュールであって、
前記シャフト部の軸方向に沿って前記シャフト部に取付可能な柱状の本体を備え、
前記本体は、
前記本体の周面に形成された凹部と、
前記凹部近傍に設けられ、歪センサを取付可能なセンサ取付部とを含み、
前記モジュールは、さらに、
前記モジュールに取り付けられる歪センサを備え、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、モジュール。
[付記5]
シャフト部を含む切削工具と、
付記3または付記4に記載のモジュールとを備え、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、切削工具ユニット。
[付記6]
付記1または付記2に記載の切削工具と、
管理装置とを備え、
前記切削工具は、前記歪センサの計測結果を示すセンサ情報を送信し、
前記管理装置は、前記切削工具から前記センサ情報を受信し、前記センサ情報が示す計測結果を解析し、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、切削システム。
[付記7]
付記5または付記6に記載の切削工具ユニットと、
解析装置とを備え、
前記切削工具は、前記歪センサの計測結果を示すセンサ情報を送信し、
前記解析装置は、前記切削工具から前記センサ情報を受信し、受信した前記センサ情報が示す計測結果を解析し、
前記歪センサは、前記凹部を跨ぐように取り付けられる、切削システム。
[付記8]
シャフト部を備え、
前記シャフト部は、軸方向に沿った一部の領域に、前記シャフト部の径を前記軸方向と直交する方向に拡大する拡径部を含み、
前記拡径部は、前記拡径部の周面に形成された凹部を有する、切削工具。