以下、本発明の実施の形態を、本発明に係るインバータ装置を、直流電源から入力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する、いわゆるパワーコンディショナとして用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を示すブロック図である。
図1に示すように、インバータ装置A1は、インバータ回路2、フィルタ回路3、変圧回路4、および、制御回路5を備えている。インバータ回路2の入力側には直流電源1が接続されている。インバータ回路2は三相インバータであり、インバータ回路2、フィルタ回路3、および変圧回路4は、この順で、U相、V相、W相の出力電圧の出力ラインにより、直列に接続されている。出力ラインは、図示しない開閉器を介して三相の電力系統Bに接続している。インバータ回路2には制御回路5が接続されている。インバータ装置A1は、いわゆるパワーコンディショナであり、開閉器によって電力系統Bに連系し、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2で交流電力に変換して、電力系統Bに供給する。なお、インバータ装置A1には各種センサが設けられており、制御回路5は当該センサによる検出値に基づいて制御を行う。しかし、図1においては、各種センサの記載を省略している。また、インバータ装置A1の構成は、これに限られない。例えば、変圧回路4に代えて、直流電源1とインバータ回路2との間にDC/DCコンバータ回路を設ける、いわゆるトランスレス方式であってもよい。
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよい。また、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、フィルタ回路3に出力するものである。インバータ回路2は、スイッチング素子を備えた三相のPWM制御型インバータであり、各相の出力相電圧が3レベルの電位となる3レベルインバータ回路である。インバータ回路2は、制御回路5から入力されるPWM信号Pに基づいて、各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ回路2の詳細な説明は後述する。
フィルタ回路3は、インバータ回路2から入力される交流電圧から、スイッチングによる高周波成分を除去するものである。フィルタ回路3は、リアクトルとコンデンサとからなるローパスフィルタ(図示しない。)を備えている。フィルタ回路3で高周波成分を除去された交流電圧は、変圧回路4に出力される。なお、フィルタ回路3の構成はこれに限定されず、高周波成分を除去するための周知のフィルタ回路であればよい。変圧回路4は、フィルタ回路3から出力される交流電圧を電力系統Bの系統電圧とほぼ同一のレベルに昇圧または降圧する。
制御回路5は、インバータ回路2のスイッチング素子のスイッチングを制御するPWM信号Pを生成するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路5は、図示しない各種センサから検出信号を入力され、インバータ回路2にPWM信号Pを出力する。制御回路5は、インバータ装置A1が出力する相電圧の波形を実際に指令するための指令信号Xu1,Xv1,Xw1を各種センサから入力される検出信号に基づいて生成し、当該指令信号Xu1,Xv1,Xw1に基づいてPWM信号Pを生成する。インバータ回路2は、入力されるPWM信号Pに基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、指令信号Xu1,Xv1,Xw1に対応した相電圧を出力する。制御回路5は、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形を変化させてインバータ回路2が出力する相電圧を変化させることで出力電流を制御している。これにより、制御回路5は、各種フィードバック制御を行っている。制御回路5の詳細な説明は後述する。
次に、図2を参照して、インバータ回路2の内部構成および詳細な説明を行う。
図2は、インバータ回路2の内部構成を示す回路図である。インバータ回路2は、三相のPWM制御型の3レベルインバータ回路である。
同図に示すように、インバータ回路2は、12個のスイッチング素子S1~S12、12個の環流ダイオードD1~D12、および2個の分圧用コンデンサC1,C2を備えている。本実施形態では、スイッチング素子S1~S12としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)を使用している。なお、スイッチング素子S1~S12はIGBTに限定されず、バイポーラトランジスタ、MOSFET、逆阻止サイリスタなどであってもよい。また、環流ダイオードD1~D12、分圧用コンデンサC1,C2の種類も限定されない。
分圧用コンデンサC1,C2は、静電容量が同一のコンデンサであり、直流電源1から入力される直流電圧を分圧するものである。分圧用コンデンサC1と分圧用コンデンサC2とは点Oで直列接続されて、直流電源1の正極に接続する点Pと負極に接続する点Nとの間に並列接続されている。直流電源1の負極は接地されているので、点Nの電位は「0」である。直流電源1の正極の電位、すなわち点Pの電位を「E」とすると、点Oの電位は、点Nの電位「0」と点Pの電位「E」の中間の電位である「(1/2)E」となる。
スイッチング素子S1とS4とは、スイッチング素子S1のエミッタ端子とスイッチング素子S4のコレクタ端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子S1のコレクタ端子は点Pに接続され、スイッチング素子S4のエミッタ端子は点Nに接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子S2とS5とが直列接続されてブリッジ構造を形成し、スイッチング素子S3とS6とが直列接続されてブリッジ構造を形成している。スイッチング素子S1,S2,S3は直流電源1の正極側に接続されているので、スイッチング素子S1,S2,S3を区別しない場合は、「正極側スイッチSp」と記載する場合がある。一方、スイッチング素子S4,S5,S6は、直流電源1の負極側に接続されているので、スイッチング素子S4,S5,S6を区別しない場合は、「負極側スイッチSn」と記載する場合がある。各スイッチング素子S1~S6のベース端子には、それぞれ、制御回路5から出力されるPWM信号P(Pup,Pvp,Pwp,Pun,Pvn,Pwn)が入力される。なお、各PWM信号の詳細は後述する。
スイッチング素子S1とS4とで形成されているブリッジ構造をU相アームとし、スイッチング素子S2とS5とで形成されているブリッジ構造をV相アームとし、スイッチング素子S3とS6とで形成されているブリッジ構造をW相アームとする。U相アームのスイッチング素子S1とS4との接続点UにはU相の出力ラインが接続され、V相アームのスイッチング素子S2とS5との接続点VにはV相の出力ラインが接続され、W相アームのスイッチング素子S3とS6との接続点WにはW相の出力ラインが接続されている。
接続点Uは、スイッチング素子S7およびS8からなる中間側スイッチを介して、点Oに接続されている。スイッチング素子S7とS8とは、それぞれのコレクタ端子が接続されて、直列接続されている。スイッチング素子S7のエミッタ端子は点Oに接続され、スイッチング素子S8のエミッタ端子は点Uに接続されている。同様に、接続点Vは、スイッチング素子S9およびS10からなる中間側スイッチを介して、点Oに接続されている。スイッチング素子S9とS10とは、それぞれのコレクタ端子が接続され、スイッチング素子S9のエミッタ端子は点Oに接続され、スイッチング素子S10のエミッタ端子は点Vに接続されている。また、接続点Wは、スイッチング素子S11およびS12からなる中間側スイッチを介して、点Oに接続されている。スイッチング素子S11とS12とは、それぞれのコレクタ端子が接続され、スイッチング素子S11のエミッタ端子は点Oに接続され、スイッチング素子S12のエミッタ端子は点Wに接続されている。スイッチング素子S7およびS8は、同じタイミングでオンオフ動作を行い、オン状態のときに点Oと点Uとの接続を導通させ、オフ状態のときに接続を導通させないようにする。同様に、スイッチング素子S9およびS10も、同じタイミングでオンオフ動作を行い、オン状態のときに点Oと点Vとの接続を導通させ、オフ状態のときに接続を導通させないようにする。また、スイッチング素子S11およびS12も、同じタイミングでオンオフ動作を行い、オン状態のときに点Oと点Wとの接続を導通させ、オフ状態のときに接続を導通させないようにする。なお、各中間側スイッチを区別しない場合は、「中間側スイッチSo」と記載する場合がある。スイッチング素子S7およびS8のベース端子、スイッチング素子S9およびS10のベース端子、スイッチング素子S11およびS12のベース端子には、それぞれ、制御回路5から出力されるPWM信号P(Puo,Pvo,Pwo)が入力される。
各スイッチング素子S1~S12は、PWM信号Pに基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替えられる。正極側スイッチSpがオン状態で負極側スイッチSnおよび中間側スイッチSoがオフ状態の場合、当該相の出力ラインの電位は点Pの電位(すなわち、直流電源1の正極側の電位「E」)となる。負極側スイッチSnがオン状態で正極側スイッチSpおよび中間側スイッチSoがオフ状態の場合、当該相の出力ラインの電位は点Nの電位(すなわち、直流電源1の負極側の電位「0」)となる。また、中間側スイッチSoがオン状態で正極側スイッチSpおよび負極側スイッチSnがオフ状態の場合、当該相の出力ラインの電位は点Oの電位(すなわち、直流電源1の正極側と負極側の中間の電位「(1/2)E」)となる。これにより、各出力ラインから出力される出力相電圧は、直流電源1の正極側の電位「E」、負極側の電位「0」、中間の電位「(1/2)E」の3レベルの電位となる。また、出力ライン間の電圧である出力線間電圧は、5レベルの電位となる。
環流ダイオードD1~D12は、スイッチング素子S1~S12のコレクタ端子とエミッタ端子との間に、それぞれ逆並列に接続されている。すなわち、環流ダイオードD1~D12のアノード端子はそれぞれスイッチング素子S1~S12のエミッタ端子に接続され、環流ダイオードD1~D12のカソード端子はそれぞれスイッチング素子S1~S12のコレクタ端子に接続されている。環流ダイオードD1~D12は、スイッチング素子S1~S12の切り替えによって発生する逆起電力による逆方向の高い電圧がスイッチング素子S1~S12に印加されないようにするためのものである。
次に、図3~図8を参照して、制御回路5の内部構成および詳細な説明を行う。
図3は、制御回路5の内部構成を示すブロック図である。
制御回路5は、フィードバック制御部51、指令信号生成部52、およびPWM信号生成部53を備えている。なお、制御回路5は、過電流、地絡、短絡、単独運転などを検出してインバータ回路2の運転を停止させる構成や、最大電力点追従のための構成なども有しているが、本発明の説明に関係しないので、図3への記載および説明を省略している。
フィードバック制御部51は、各種センサより入力される検出信号と予め設定されている目標値との偏差に基づいてフィードバック制御を行い、インバータ装置A1の出力相電圧の波形を指令するための相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを生成して、指令信号生成部52に出力するものである。フィードバック制御部51で行われるフィードバック制御の詳細については記載を省略している。フィードバック制御部51が行うフィードバック制御は、インバータ装置A1が出力する出力電流や出力電圧、出力有効電力、出力無効電力を制御するものであってもよいし、直流電源1から出力される直流電圧を制御するものであってもよい。
指令信号生成部52は、フィードバック制御部51から入力される相電圧指令信号Xu,Xv,Xwに基づいて指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成し、PWM信号生成部53に出力する。指令信号Xu1,Xv1,Xw1は、インバータ装置A1が出力する相電圧の波形を実際に指令するための信号である。すなわち、指令信号生成部52は、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを指令信号Xu1,Xv1,Xw1に変換するものである。指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形は、後述する図4(d)に示す波形Xu1,Xv1,Xw1のように特殊な形状の波形となる。
指令信号生成部52は、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwから線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuを生成する。線間電圧指令信号Xuvは、V相に対するU相の線間電圧の波形を指令するための信号である。指令信号生成部52は、相電圧指令信号XuとXvとの差分によって線間電圧指令信号Xuvを生成する。線間電圧指令信号Xvwは、W相に対するV相の線間電圧の波形を指令するための信号である。指令信号生成部52は、相電圧指令信号XvとXwとの差分によって線間電圧指令信号Xvwを生成する。線間電圧指令信号Xwuは、U相に対するW相の線間電圧の波形を指令するための信号である。指令信号生成部52は、相電圧指令信号XwとXuとの差分によって線間電圧指令信号Xwuを生成する。本実施形態では、正規化のために相電圧指令信号Xu,Xv,Xwの振幅を「1」にしているので(図4(a)参照)、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅は√(3)になっている(図4(b)参照)。
また、指令信号生成部52は、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの極性を反転させた信号Xvu,Xwv,Xuwを生成する。なお、極性を反転させるのではなく、相電圧指令信号XvとXuとの差分によって信号Xvuを生成し、相電圧指令信号XwとXvとの差分によって信号Xwvを生成し、相電圧指令信号XuとXwとの差分によって信号Xuwを生成するようにしてもよい。
指令信号生成部52は、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwu、信号Xvu,Xwv,Xuw、値が「0」であるゼロ信号、および、値が「2」である信号を用いて、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する。指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値は、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅以上の値にする必要がある。したがって、本実施形態では、当該上限値を「2」にするために、値が「2」である信号を用いている。なお、当該上限値は線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅以上の値であればよいので、設定する変調度に応じて、√(3)以上の所定の値が上限値として設定される。
図4は、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形を説明するための図である。
図4(a)に示す波形Xu,Xv,Xwは、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwの波形をそれぞれ示している。図4(b)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの波形をそれぞれ示している。図4(c)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、信号Xvu,Xwv,Xuwの波形をそれぞれ示している。図4においては、U相の相電圧指令信号Xuの位相を基準として記載している。
図4(d)に示す波形Xu1は、U相の指令信号Xu1の波形である。指令信号Xu1は、モード1~6に分けて生成される。波形Xu1は、モード1(0≦θ≦π/3)においては波形Xuv、モード2(π/3≦θ≦2π/3)においては「2」に固定された波形、モード3(2π/3≦θ≦π)においては波形Xuw、モード4(π≦θ≦4π/3)においては波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード5(4π/3≦θ≦5π/3)においては「0」に固定された波形、モード6(5π/3≦θ≦2π)においては波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となっている。同様に、波形Xv1は、モード1においては「0」に固定された波形、モード2においては波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード3においては波形Xvw、モード4においては「2」に固定された波形、モード5においては波形Xvu、モード6においては波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となっている。また、波形Xw1は、モード1においては波形Xwv、モード2においては波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード3においては「0」に固定された波形、モード4においては波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード5においては波形Xwu、モード6においては「2」に固定された波形となっている。
指令信号Xu1,Xv1,Xw1は、周期の1/6で「0」に固定され、周期の1/6で「2」に固定される。
図5は、指令信号生成部52で行われる、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuから指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する処理(以下では、「指令信号生成処理」とする。)について説明するためのフローチャートである。指令信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
まず、相電圧指令信号Xu,Xv,Xw、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwu、および信号Xvu,Xwv,Xuwが取得される(S1)。次に、Xuの絶対値がXvの絶対値より大きいか否かが判別される(S2)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S2:YES)、Xuの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S3)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S3:YES)、すなわち、Xuの絶対値が最大の場合、ステップS5に進む。一方、Xuの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S3:NO)、すなわち、Xwの絶対値が最大の場合、ステップS6に進む。ステップS2において、Xuの絶対値がXvの絶対値以下の場合(S2:NO)、Xvの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S4)。Xvの絶対値の方が大きい場合(S4:YES)、すなわち、Xvの絶対値が最大の場合、ステップS7に進む。一方、Xvの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S4:NO)、すなわち、Xwの絶対値が最大の場合、ステップS6に進む。ステップS2~S4では、Xu,Xv,Xwのうち絶対値が最大のものを判定している。
Xuの絶対値が最大と判定されてステップS5に進んだ場合、Xuが正の値であるか否かが判別される(S5)。Xuが正の値である場合(S5:YES)、指令信号Xu1は「2」とされ、指令信号Xv1は「2」にXvuを加算した値とされ、指令信号Xw1は「2」にXwuを加算した値とされる(S8)。一方、Xuが「0」以下の場合(S5:NO)、Xu1は「0」とされ、Xv1はXvuとされ、Xw1はXwuとされる(S9)。
Xwの絶対値が最大と判定されてステップS6に進んだ場合、Xwが正の値であるか否かが判別される(S6)。Xwが正の値である場合(S6:YES)、Xu1は「2」にXuwを加算した値とされ、Xv1は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw1は「2」とされる(S10)。一方、Xwが「0」以下の場合(S6:NO)、Xu1はXuwとされ、Xv1はXvwとされ、Xw1は「0」とされる(S11)。
Xvの絶対値が最大と判定されてステップS7に進んだ場合、Xvが正の値であるか否かが判別される(S7)。Xvが正の値である場合(S7:YES)、Xu1は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv1は「2」とされ、Xw1は「2」にXwvを加算した値とされる(S12)。一方、Xvが「0」以下の場合(S67:NO)、Xu1はXuvとされ、Xv1は「0」とされ、Xw1はXwvとされる(S13)。
つまり、指令信号生成処理では、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大の相電圧指令信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令信号Xu1,Xv1,Xw1を決定している。なお、図5に示すフローチャートは、指令信号生成処理の一例であって、これに限られない。
指令信号生成処理により生成された、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形は、図4(d)に示す波形Xu1,Xv1,Xw1のようになる。すなわち、モード1においては、図5のフローチャートにおいてステップS13に進むので、波形Xu1は波形Xuv(図4(b)参照)となり、波形Xv1は「0」に固定された波形となり、波形Xw1は波形Xwv(図4(c)参照)となる。また、モード2においては、図5のフローチャートにおいてステップS8に進むので、波形Xu1は「2」に固定された波形となり、波形Xv1は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw1は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード3においては、図5のフローチャートにおいてステップS11に進むので、波形Xu1は波形Xuwとなり、波形Xv1は波形Xvwとなり、波形Xw1は「0」に固定された波形となる。モード4においては、図5のフローチャートにおいてステップS12に進むので、波形Xu1は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv1は「2」に固定された波形となり、波形Xw1は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード5においては、図5のフローチャートにおいてステップS9に進むので、波形Xu1は「0」に固定された波形となり、波形Xv1は波形Xvuとなり、波形Xw1は波形Xwuとなる。モード6においては、図5のフローチャートにおいてステップS10に進むので、波形Xu1は波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv1は波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw1は「2」に固定された波形となる。
図3に戻って、PWM信号生成部53は、その内部で生成される所定の周波数(例えば、4kHz)のキャリア信号(例えば、三角波信号)と、指令信号生成部52から入力される指令信号Xu1,Xv1,Xw1とに基づいてPWM信号Pを生成し、インバータ回路2に出力するものである。
指令信号Xu1,Xv1,Xw1は、上限値「2」と下限値「0」との間で変化する(図4(d)参照)。PWM信号生成部53は、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値「2」と、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の中間値(上限値「2」と下限値「0」の中間の値)「1」との間で変化するキャリア信号(以下では、「P側キャリア信号」とする。)と、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の中間値「1」と、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値「0」との間で変化するキャリア信号(以下では、「N側キャリア信号」とする。)の、2つのキャリア信号を生成する。本実施形態では、上限値「2」が本発明の「第1の値」に相当し、下限値「0」が本発明の「第2の値」に相当し、中間値「1」が本発明の「第3の値」に相当する。P側キャリア信号とN側キャリア信号とは、互いに反転させた逆相の信号になっている。PWM信号生成部53は、P側キャリア信号と指令信号Xu1,Xv1,Xw1とに基づいてそれぞれPWM信号Pup,Pvp,Pwpを生成し、N側キャリア信号と指令信号Xu1,Xv1,Xw1とに基づいてそれぞれPWM信号Pun,Pvn,Pwnを生成する。
図6は、指令信号Xu1とP側キャリア信号およびN側キャリア信号とからPWM信号Pup,Punを生成する方法を説明するための図である。同図においては、指令信号Xu1を波形X、P側キャリア信号を波形Ca1、N側キャリア信号を波形Ca2で示している。なお、図6は、概念を説明するためのものなので、各キャリア信号(波形Ca1,Ca2)の周波数が低い場合で記載しているが、実際には各キャリア信号の周波数はもっと高い。
同図(a)に示すように、P側キャリア信号の波形Ca1は「2」と「1」との間で変化する三角波であり、N側キャリア信号の波形Ca2は「1」と「0」との間で変化する三角波である。P側キャリア信号とN側キャリア信号とは逆相であって、P側キャリア信号の波形Ca1が「2」のときにN側キャリア信号の波形Ca2は「0」になっており、P側キャリア信号の波形Ca1が「1」のときにN側キャリア信号の波形Ca2は「1」になっている。指令信号Xu1の波形XがP側キャリア信号の波形Ca1およびN側キャリア信号の波形Ca2と比較されて、PWM信号Pup,Punが生成される。なお、キャリア信号は三角波信号に限定されない。
また、PWM信号生成部53は、PWM信号PupとPWM信号PunとからPWM信号Puoを生成し、PWM信号PvpとPWM信号PvnとからPWM信号Pvoを生成し、PWM信号PwpとPWM信号PwnとからPWM信号Pwoを生成する。
図7は、PWM信号生成部53の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、PWM信号生成部53は、P側キャリア生成部531、N側キャリア生成部532、P側比較部533、N側比較部534、およびNOR部535を備えている。
P側キャリア生成部531は、「2」と「1」との間で変化する三角波信号を生成し、P側キャリア信号として出力する。出力されたP側キャリア信号は、P側比較部533に入力される。P側キャリア生成部531が本発明の「第1キャリア生成手段」に相当し、P側キャリア信号が本発明の「第1キャリア信号」に相当する。
N側キャリア生成部532は、P側キャリア信号が「2」のときに「0」になり、P側キャリア信号が「1」のときに「1」になる三角波信号、つまり、P側キャリア信号を反転させた逆相の信号を生成し、N側キャリア信号として出力する。出力されたN側キャリア信号は、N側比較部534に入力される。なお、N側キャリア生成部532は、P側キャリア生成部531からP側キャリア信号を入力されて、これに基づいてN側キャリア信号を生成するようにしてもよい。N側キャリア生成部532が本発明の「第2キャリア生成手段」に相当し、N側キャリア信号が本発明の「第2キャリア信号」に相当する。
P側比較部533は、指令信号生成部52から入力される指令信号Xu1,Xv1,Xw1と、P側キャリア生成部531から入力されるP側キャリア信号とを比較して、それぞれPWM信号Pup,Pvp,Pwpを生成する。P側比較部533が本発明の「第1パルス生成手段」に相当し、PWM信号Pup,Pvp,Pwpが本発明の「第1パルス信号」に相当する。
図6(b)は、指令信号Xu1とP側キャリア信号とからPWM信号Pupを生成する方法を説明するための図である。同図(b)においては、PWM信号Pupを波形P1で示している。P側比較部533は、指令信号Xu1がP側キャリア信号以上となる期間にハイレベルとなり、指令信号Xu1がP側キャリア信号より小さい期間にローレベルとなるパルス信号をPWM信号Pupとして生成する。したがって、同図(b)において、波形Xが波形Ca1以上となる期間に波形P1がハイレベルとなっており、波形Xが波形Ca1より小さい期間に波形P1がローレベルとなっている。
指令信号Xv1とP側キャリア信号とからPWM信号Pvpを生成する方法、および、指令信号Xw1とP側キャリア信号とからPWM信号Pwpを生成する方法も同様である。生成されたPWM信号Pup,Pvp,Pwpは、それぞれインバータ回路2のスイッチング素子S1,S2,S3のベース端子に入力される。また、PWM信号Pup,Pvp,Pwpは、NOR部535にも入力される。
N側比較部534は、指令信号生成部52から入力される指令信号Xu1,Xv1,Xw1と、N側キャリア生成部532から入力されるN側キャリア信号とを比較して、それぞれPWM信号Pun,Pvn,Pwnを生成する。N側比較部534が本発明の「第2パルス生成手段」に相当し、PWM信号Pun,Pvn,Pwnが本発明の「第2パルス信号」に相当する。
図6(c)は、指令信号Xu1とN側キャリア信号とからPWM信号Punを生成する方法を説明するための図である。同図(c)においては、PWM信号Punを波形P2で示している。N側比較部534は、指令信号Xu1がN側キャリア信号より大きい期間にローレベルとなり、指令信号Xu1がN側キャリア信号以下となる期間にハイレベルとなるパルス信号をPWM信号Punとして生成する。したがって、同図(c)において、波形Xが波形Ca2より大きい期間に波形P2がローレベルとなっており、波形Xが波形Ca2以下となる期間に波形P2がハイレベルとなっている。
指令信号Xv1とN側キャリア信号とからPWM信号Pvnを生成する方法、および、指令信号Xw1とN側キャリア信号とからPWM信号Pwnを生成する方法も同様である。生成されたPWM信号Pun,Pvn,Pwnは、それぞれインバータ回路2のスイッチング素子S4,S5,S6のベース端子に入力される。また、PWM信号Pun,Pvn,Pwnは、NOR部535にも入力される。
NOR部535は、P側比較部533からPWM信号Pup,Pvp,Pwpを入力され、N側比較部534からPWM信号Pun,Pvn,Pwnを入力されて、PWM信号Puo,Pvo,Pwoを生成する。NOR部535が本発明の「第3パルス生成手段」に相当し、PWM信号Puo,Pvo,Pwoが本発明の「第3パルス信号」に相当する。また、N側比較部534、N側比較部534、およびNOR部535が、本発明の「パルス生成手段」に相当する。
図8は、PWM信号PupとPWM信号PunとからPWM信号Puoを生成する方法を説明するための図である。同図においては、PWM信号Pup,Pun,Puoをそれぞれ波形P1,P2,P3で示している。NOR部535は、PWM信号PupとPWM信号Punとの否定論理和を演算して、PWM信号Puoを生成する。したがって、同図において、波形P1と波形P2とが両方ともローレベルの期間のみ、波形P3がハイレベルになっている。
同様に、NOR部535は、PWM信号PvpとPWM信号Pvnとの否定論理和を演算してPWM信号Pvoを生成し、PWM信号PwpとPWM信号Pwnとの否定論理和を演算してPWM信号Pwoを生成する。生成されたPWM信号Puoはインバータ回路2のスイッチング素子S7およびS8のベース端子に入力され、PWM信号Pvoはスイッチング素子S9およびS10のベース端子に入力され、PWM信号Pwoはスイッチング素子S11およびS12のベース端子に入力される。
図6(b)に示すように、PWM信号Pup(波形P1)は指令信号Xu1(波形X)が「1」以上のときにしかハイレベルにならない(指令信号Xu1が「1」未満のときはローレベルを継続する)。また、図6(c)に示すように、PWM信号Pun(波形P2)は指令信号Xu1が「1」未満のときにしかハイレベルにならない(指令信号Xu1が「1」以上のときはローレベルを継続する)。つまり、PWM信号PupとPWM信号Punのハイレベル期間が重なることはない。また、PWM信号Puoは、PWM信号PupおよびPWM信号Punがともにローレベルのときにハイレベルになる。したがって、PWM信号Pup、PWM信号Pun、PWM信号Puoのいずれかのみがハイレベルとなる(図8参照)。
PWM信号Pupがハイレベルのとき、スイッチング素子S1がオン状態、スイッチング素子S4およびスイッチング素子S7,S8がオフ状態となるので、U相の出力相電圧は点Pの電位(すなわち、直流電源1の正極側の電位「E」)となる(図2参照)。PWM信号Punがハイレベルのとき、スイッチング素子S4がオン状態、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S7,S8がオフ状態となるので、U相の出力相電圧は点Nの電位(すなわち、直流電源1の負極側の電位「0」)となる。また、PWM信号Puoがハイレベルのとき、スイッチング素子S7,S8がオン状態、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S4がオフ状態となるので、U相の出力相電圧は点Oの電位(すなわち、直流電源1の正極側と負極側の中間の電位「(1/2)E」)となる。これにより、U相の出力相電圧は、直流電源1の正極側の電位「E」、負極側の電位「0」、中間の電位「(1/2)E」の3レベルの電位となる。
同様に、V相およびW相の出力相電圧も、直流電源1の正極側の電位「E」、負極側の電位「0」、中間の電位「(1/2)E」の3レベルの電位となる。また、V相に対するU相の出力線間電圧は、U相の出力相電圧とV相の出力相電圧との差となっている。したがって、V相に対するU相の出力線間電圧は、「-E」、「-(1/2)E」、「0」、「(1/2)E」、「E」の5レベルの電位となる。なお、W相に対するV相の出力線間電圧およびU相に対するW相の出力線間電圧も同様である。
図8における期間t1では、PWM信号Pup(波形P1)がハイレベルに固定され、PWM信号Pun(波形P2)およびPWM信号Puo(波形P3)がローレベルに固定される。この場合、PWM信号Pup,Pun,Puoがそれぞれ入力されるスイッチング素子S1,S4,S7とS8は、スイッチングを停止している。期間t2では、PWM信号Pup(波形P1)およびPWM信号Puo(波形P3)がローレベルに固定され、PWM信号Pun(波形P2)がハイレベルに固定される。この場合も、スイッチング素子S1,S4,S7とS8は、スイッチングを停止している。
なお、PWM信号生成部53の構成は、上述したものに限定されない。指令信号Xu1,Xv1,Xw1から、正極側スイッチ、負極側スイッチ、中間側スイッチをそれぞれ駆動するためのPWM信号を生成することができるものであれば、他の方法を用いてもよい。例えば、瞬時空間ベクトル選択方式を適用する構成としてもよい。
なお、制御回路5は、デジタル回路として実現してもよいし、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路5として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
本実施形態において、制御回路5の指令信号生成部52は図4(d)に示す波形となる指令信号Xu1,Xv1,Xw1を出力し、PWM信号生成部53は指令信号Xu1,Xv1,Xw1に基づいてPWM信号Pを生成してインバータ回路2に出力する。インバータ回路2は、PWM信号Pに基づいて、スイッチング素子S1~S12のスイッチングを行う。これにより、直流電源1が出力する直流電力は、交流電力に変換されて出力される。
インバータ装置A1が出力する相電圧信号Vu1,Vv1,Vw1の波形は、図4(d)に示す指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形と同様になる。図4から判るように、指令信号Xu1とXv1との差分信号は線間電圧指令信号Xuvに一致する。同様に、指令信号Xv1とXw1との差分信号は線間電圧指令信号Xvwに一致し、指令信号Xw1とXu1との差分信号は線間電圧指令信号Xwuに一致する。したがって、相電圧信号Vu1,Vv1,Vw1の差分信号である線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuの波形は、図4(b)に示す線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。よって、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、電力系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、インバータ装置A1が出力する交流電力を電力系統Bに供給することができる。また、インバータ装置A1の出力電流の波形も、正弦波になる。
次に、図9を参照して、インバータ装置A1を実際に駆動させたときの出力電流の波形について説明する。
図9(b)は、インバータ装置A1を実際に駆動させたときに検出された、三相交流の出力電流の波形を示している。また、図9(a)は、インバータ装置A1のPWM信号生成部53において、N側キャリア生成部532が生成するN側キャリア信号を、P側キャリア信号の同相信号にした場合、すなわち従来のインバータ装置の出力電流の波形を示している。図9(a),(b)において示す破線は、過電流検出器に設定されている、過電流を検出するための閾値電流を示している。
図9(a)に示すように、従来のインバータ装置の場合、出力電流に大きなリップルが発生しており、出力電流の瞬時値が閾値電流に達している(図9(a)に示す丸印参照)。出力電流の瞬時値が閾値電流に達すると、過電流検出器は、過電流と判定して、インバータ装置を停止させる。P側キャリア信号とN側キャリア信号とが同相の場合、P側キャリア信号とN側キャリア信号とは波形が上下対称になっていない。したがって、指令信号に対して上下対称に比較を行うことができない。そのため、P側比較部533で生成されるPWM信号Pup,Pvp,Pwpと、N側比較部534で生成されるPWM信号Pun,Pvn,Pwnとでは、わずかなずれが生じる。これにより、出力電流のリップルが大きくなる。
一方、図9(b)に示すように、インバータ装置A1の場合、出力電流にリップルが発生しているが、リップルが小さいので、出力電流の瞬時値は閾値電流に達しない。インバータ装置A1の場合、P側キャリア信号とN側キャリア信号とは逆相のため、P側キャリア信号とN側キャリア信号とは波形が上下対称になっている。したがって、指令信号に対して上下対称に比較を行うことができる。そのため、P側比較部533で生成されるPWM信号Pup,Pvp,Pwpと、N側比較部534で生成されるPWM信号Pun,Pvn,Pwnとでのずれが生じない。これにより、出力電流のリップルが抑制される。
次に、本実施形態に係るインバータ装置A1の作用および効果について説明する。
本実施形態によると、N側キャリア生成部532は、N側キャリア信号を、P側キャリア信号の逆相の信号として生成する。つまり、P側キャリア信号とN側キャリア信号とは、互いに反転された逆相の信号になっている。PWM信号生成部53は、当該P側キャリア信号およびN側キャリア信号と、指令信号Xu1,Xv1,Xw1とを比較することでPWM信号Pを生成して、インバータ回路2に出力する。P側キャリア信号とN側キャリア信号とは、波形が上下対称になっているので、指令信号Xu1,Xv1,Xw1に対して上下対称に比較を行うことができる。よって、インバータ装置A1から出力される三相交流の出力電流は、リップルが抑制された波形になる(図9参照)。これにより、過電流検出器が過電流と誤判定することを抑制することができる。
また、本実施形態によると、指令信号Xu1,Xv1,Xw1は、周期的な信号となり、所定の期間で「0」に固定され、他の所定の期間で「2」に固定される(図4(d)参照)。したがって、指令信号Xu1,Xv1,Xw1とP側キャリア信号とを比較することで生成されるPWM信号Pup,Pvp,Pwpは、指令信号Xu1,Xv1,Xw1が「2」に固定されている期間でハイレベルを継続することになる(図6(b)参照)。また、指令信号Xu1,Xv1,Xw1とN側キャリア信号とを比較することで生成されるPWM信号Pun,Pvn,Pwnは、指令信号Xu1,Xv1,Xw1が「0」に固定されている期間でハイレベルを継続することになる(図6(c)参照)。さらに、PWM信号Pup,Pvp,PwpとPWM信号Pun,Pvn,Pwnとの否定論理和としてそれぞれ生成されるPWM信号Puo,Pvo,Pwoは、PWM信号Pup,Pvp,Pwpがハイレベルを継続する期間およびPWM信号Pun,Pvn,Pwnがハイレベルを継続する期間で、ローレベルを継続することになる(図8参照)。各PWM信号がハイレベルまたはローレベルを継続する期間でスイッチング素子のスイッチングが停止されるので、スイッチング回数を低減することができ、スイッチングロスを低減することができる。
なお、本実施形態においては、P側キャリア信号およびN側キャリア信号が三角波信号である場合について説明したが、これに限られない。P側キャリア信号およびN側キャリア信号は、図10(a),(b)に、波形Ca1,Ca2で示すようなのこぎり波であってもよい。
本実施形態においては、P側キャリア信号の上限値が指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値「2」に一致し、N側キャリア信号の下限値が指令信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値「0」に一致する場合について説明したが、これに限られない。P側キャリア信号の上限値は指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値「2」以下の値であればよく、N側キャリア信号の下限値は指令信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値「0」以上であればよい。つまり、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値がP側キャリア信号の上限値以上の値であり、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値がN側キャリア信号の下限値以下の値であればよい。
本実施形態においては、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値が「2」で下限値が「0」の場合について説明したが、これに限られない。例えば、上限値が「1」で下限値が「-1」となるように、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成するようにしてもよい。この場合、P側キャリア信号およびN側キャリア信号の上限値および下限値を変更する必要がある。すなわち、P側キャリア信号の上限値を「1」、下限値を「0」とし、N側キャリア信号の上限値を「0」、下限値を「-1」とする必要がある。
本実施形態においては、直流電源1の負極が接地されて点Nの電位が「0」である場合について説明したが、これに限られない。例えば、直流電源1の正極が接地されて点Pの電位が「0」である場合や、点Oが接地されて点Oの電位が「0」である場合でも、本発明を適用することができる。
本実施形態においては、点Oの電位が、点Nの電位「0」と点Pの電位「E」の中間の電位である「(1/2)E」である場合について説明したが、これに限られない。分圧用コンデンサC1の静電容量と分圧用コンデンサC2の静電容量とが異なれば、点Oの電位は中間の電位にならない。例えば、分圧用コンデンサC1の静電容量と分圧用コンデンサC2の静電容量との比を2:1として、点Oの電位を「(2/3)E」としてもよい。この場合、P側キャリア信号およびN側キャリア信号の振幅を変更する必要がある。本変形例の場合、正極側スイッチSpに印加される電圧をより低くすることができるので、正極側スイッチSpにより耐圧の低いスイッチング素子を用いることができる。
本実施形態においては、指令信号生成部52が、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する場合について説明したが、これに限られない。指令信号生成部52は、図11(a),(b),(c)に示す波形の指令信号を生成するようにしてもよい。図11(a),(b),(c)においては、U相の指令信号のみを記載しており、V相およびW相の指令信号の記載を省略している。
図11(a)は、指令信号生成部52が、線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大のものに対応する相電圧指令信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令信号Xu2,Xv2,Xw2を生成するようにした場合の、指令信号Xu2の波形を示している。
図9(c)は、指令信号生成部52が指令信号Xu1,Xv1,Xw1に代えて、指令信号Xu2,Xv2,Xw2を生成するようにした場合の、インバータ装置A1の出力電流の波形を示している。図9(c)において示す破線は、過電流検出器に設定されている、過電流を検出するための閾値電流を示している。図9(c)に示すように、本変形例(指令信号Xu2,Xv2,Xw2を生成する)の場合、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する場合(図9(b)参照)と比較して、出力電流のリップルがより小さくなっている。したがって、過電流検出器が過電流と誤判定することを、より抑制することができる。
図4(d)および図6(a)に示すように、指令信号Xu1,Xv1,Xw1の波形は、P側キャリア信号とN側キャリア信号との境界である「1」を挟んで上下する部分を含んでいる。例えば、図4(d)に示す指令信号Xu1の波形は、位相が「0」の直前に「1」以上になり、位相が「0」のときに「1」以下になり、位相が「0」の直後に「1」以上になっている。この境界「1」での上下動の部分では、各キャリア信号との比較によるPWM信号の生成において、指令信号と各キャリア信号との位相の関係によってパルスが生じる場合と生じない場合とがある。このパルスの有無によって、出力電流が変動するので、リップルが発生しやすい。一方、図11(a)に示すように、指令信号Xu2の波形は、境界である「1」を挟んで上下する部分を含んでいない。指令信号Xv2,Xw2も同様である。したがって、指令信号Xu2,Xv2,Xw2を用いた場合(図9(c)参照)、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を用いた場合(図9(b)参照)と比較して、出力電流のリップルが小さくなる。
図11(b)は、指令信号生成部52が、図11(a)の場合と同様にして、指令信号Xu3,Xv3,Xw3を生成するようにした場合の、指令信号Xu3の波形を示している。指令信号Xu3,Xv3,Xw3は、各モードで適用する線間電圧指令信号Xuv,Xvw,Xwuの波形が、指令信号Xu2,Xv2,Xw2の場合と異なっている。本変形例(指令信号Xu3,Xv3,Xw3を生成する)の場合も、指令信号Xu3,Xv3,Xw3の波形が、境界である「1」を挟んで上下する部分を含んでいないので、出力電流のリップルの大きさは、指令信号Xu2,Xv2,Xw2を生成する場合(図9(c)参照)と同程度になる。
図11(c)は、指令信号生成部52が、1周期を6つのモードに分割する代わりに、12のモードに分割して、指令信号Xu4,Xv4,Xw4を生成するようにした場合の、指令信号Xu4の波形を示している。本変形例では、指令信号生成部52は、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwのうち絶対値が中間の大きさのもの(最大でも最小でもないもの)を判定し、絶対値が中間の大きさの相電圧指令信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令信号Xu4,Xv4,Xw4を決定している。本変形例(指令信号Xu4,Xv4,Xw4を生成する)の場合も、指令信号Xu4,Xv4,Xw4の波形が、境界である「1」を挟んで上下する部分を含んでいないので、出力電流のリップルの大きさは、指令信号Xu2,Xv2,Xw2を生成する場合(図9(c)参照)と同程度になる。なお、指令信号生成部52は、1周期を24のモードに分割して指令信号を生成するようにしてもよいし、1周期を36のモードに分割して指令信号を生成するようにしてもよい。なお、図11(a),(b),(c)に示す変形例の各指令信号の生成方法の詳細は、特許文献1に記載されている。
また、指令信号が、指令信号Xu1,Xv1,Xw1などのような特殊な形状の波形ではなく、通常の正弦波形状であってもよい。従来のインバータ装置の場合、指令信号が通常の正弦波形状であっても、出力電流のリップルは大きくはないが発生している。したがって、過電流を検出するための閾値を小さく設定した場合、リップルによって過電流と誤判定するという問題は生じる。本実施形態に係るインバータ装置A1の場合、リップルを抑制できるので、この問題が発生することを抑制できる。
図12~図15は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記第1実施形態に係るインバータ装置A1と同一または類似の要素には同一の符号を付している。
〔第2実施形態〕
図12は、本発明の第2実施形態に係るインバータ装置A2を説明するための図であり、PWM信号生成部53’の内部構成を示すブロック図である。図12に示すインバータ装置A2は、N側比較部534に入力されるキャリア信号を、N側キャリア信号と、N側キャリア信号を反転させた信号とで切り替える点で、第1実施形態に係るインバータ装置A1(図7参照)と異なっている。
PWM信号生成部53’は、PWM信号生成部53と比較して、キャリア反転部536およびキャリア切替部537をさらに備えている点で異なる。本実施形態において、N側キャリア生成部532は、N側キャリア信号をキャリア反転部536およびキャリア切替部537に出力する。キャリア反転部536は、N側キャリア生成部532からN側キャリア信号を入力され、N側キャリア信号を反転させたキャリア信号を生成して、キャリア切替部537に出力する。N側キャリア信号を反転させたキャリア信号は、P側キャリア信号と同相の信号になるので、以下では「同相キャリア信号」と記載する。なお、キャリア反転部536は、N側キャリア生成部532から入力されるN側キャリア信号を反転させるのではなく、「1」と「0」との間を変動する三角波信号であって、P側キャリア信号の同相のキャリア信号を生成して、同相キャリア信号としてキャリア切替部537に出力してもよい。本実施形態におけるキャリア反転部536が、本発明の「第3キャリア生成部」に相当する。また、同相キャリア信号が、本発明の「第3キャリア信号」に相当する。
キャリア切替部537は、N側キャリア生成部532から入力されるN側キャリア信号と、キャリア反転部536から入力される同相キャリア信号とを切り替えて、N側比較部534に出力する。キャリア切替部537は、例えば、インバータ装置A2の出力電力に応じて、キャリア信号を切り替える。具体的には、キャリア切替部537は、インバータ装置A2の出力電力が小さい場合(例えば定格出力の20%未満の場合)、N側キャリア信号をN側比較部534に出力する。一方、インバータ装置A2の出力電力が大きい場合(例えば定格出力の20%以上の場合)、N側キャリア信号を反転させたキャリア信号をN側比較部534に出力する。インバータ装置A2の出力電力は、インバータ装置A2の出力端に配置される電流センサおよび電圧センサ(図示なし)の検出結果から演算より算出されて、キャリア切替部537に入力される。N側比較部534は、指令信号生成部52から入力される指令信号Xu1,Xv1,Xw1と、キャリア切替部537から入力されるキャリア信号とを比較して、それぞれPWM信号Pun,Pvn,Pwnを生成する。
インバータ装置A2の出力電力が小さい場合、出力電流の波形が乱れやすいので、リップルが大きいと、出力電流が過電流を検出するための閾値に達する可能性が高くなる。したがって、出力電流のリップルを抑制する必要がある。一方、インバータ装置A2の出力電力が大きい場合、出力電流の波形は乱れにくいので、リップルにより出力電流が過電流を検出するための閾値に達する可能性は低い。また、同相キャリア信号を用いる場合の方が、N側キャリア信号を用いる場合より、出力効率が良くなる。したがって、本実施形態では、出力電力が小さい場合、リップルを抑制することを重視して、N側キャリア信号を用いる。一方、出力電力が大きい場合、出力効率を重視して、同相キャリア信号を用いる。実験によると、出力電力が定格出力の20%程度より小さい場合に出力電流の波形が乱れやすかったので、本実施形態では、定格出力の20%をキャリア信号の切り替えの境界値としている。なお、切り替えの境界値は、これに限定されない。
本実施形態によると、インバータ装置A2の出力電力が小さい場合、P側キャリア信号の逆相のN側キャリア信号がN側比較部534に出力される。したがって、インバータ装置A2から出力される三相交流の出力電流は、リップルが抑制された波形になる。これにより、過電流検出器が過電流と誤判定することを抑制することができる。一方、インバータ装置A2の出力電力が大きい場合、P側キャリア信号と同相の同相キャリア信号がN側比較部534に出力される。したがって、インバータ装置A2の出力効率を、N側キャリア信号を用いた場合より向上させることができる。これにより、インバータ装置A2は、出力電力に応じて、リップルを抑制する状態と、出力効率を向上させる状態とを切り替えることができる。
なお、本実施形態においては、キャリア切替部537が、インバータ装置A2の出力電力に応じてキャリア信号を切り替える場合について説明したが、これに限られない。例えば、インバータ装置A2の出力電圧や出力電流、その他の検出値に応じてキャリア信号を切り替えるようにしてもよい。また、本実施形態においては、キャリア反転部536がN側キャリア信号を反転させて同相キャリア信号を生成する場合について説明したが、これに限られない。同相キャリア信号を先に生成して、同相キャリア信号を反転させることでN側キャリア信号を生成するようにしてもよい。また、本実施形態では、N側比較部534に入力するキャリア信号を切り替える場合について説明したが、これに限られない。P側比較部533に入力するキャリア信号を、P側キャリア信号とこれを反転させたキャリア信号とを切り替えるようにしてもよい。
〔第3実施形態〕
図13は、本発明の第3実施形態に係るインバータ装置A3を説明するための図であり、制御回路5’の内部構成を示すブロック図である。図13に示すインバータ装置A3は、PWM信号生成部53に入力される指令信号を、指令信号Xu1,Xv1,Xw1と相電圧指令信号Xu,Xv,Xwとで切り替える点で、第1実施形態に係るインバータ装置A1(図3参照)と異なっている。
制御回路5’は、制御回路5と比較して、指令信号切替部54をさらに備えている点で異なる。本実施形態において、フィードバック制御部51は、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを指令信号生成部52および指令信号切替部54に出力する。指令信号切替部54は、指令信号生成部52から入力される指令信号Xu1,Xv1,Xw1と、フィードバック制御部51から入力される相電圧指令信号Xu,Xv,Xwとを切り替えて、PWM信号生成部53に出力する。指令信号切替部54は、例えば、インバータ装置A3の出力電力に応じて、指令信号を切り替える。具体的には、指令信号切替部54は、インバータ装置A3の出力電力が小さい場合(例えば定格出力の20%未満の場合)、相電圧指令信号Xu,Xv,XwをPWM信号生成部53に出力する。一方、インバータ装置A3の出力電力が大きい場合(例えば定格出力の20%以上の場合)、指令信号Xu1,Xv1,Xw1をPWM信号生成部53に出力する。PWM信号生成部53は、指令信号切替部54から入力される指令信号に基づいて、PWM信号Pを生成する。
インバータ装置A3の出力電力が小さい場合、出力電流の波形が乱れやすいので、リップルが大きいと、出力電流が過電流を検出するための閾値に達する可能性が高くなる。したがって、出力電流のリップルを抑制する必要がある。相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを用いる場合の方が、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を用いる場合より、出力電流のリップルを抑制できる。一方、インバータ装置A3の出力電力が大きい場合、出力電流の波形は乱れにくいので、リップルにより出力電流が過電流を検出するための閾値に達する可能性は低い。指令信号Xu1,Xv1,Xw1を用いる場合の方が、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを用いる場合より、スイッチングロスを低減できるので、出力効率が良くなる。したがって、本実施形態では、出力電力が小さい場合、リップルを抑制することを重視して、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを用いる。一方、出力電力が大きい場合、出力効率を重視して、指令信号Xu1,Xv1,Xw1を用いる。実験によると、出力電力が定格出力の20%程度より小さい場合に出力電流の波形が乱れやすかったので、本実施形態では、定格出力の20%を、PWM信号生成部53に出力する信号の切り替えの境界値としている。なお、切り替えの境界値は、これに限定されない。
本実施形態によると、インバータ装置A3の出力電力が小さい場合、相電圧指令信号Xu,Xv,XwがPWM信号生成部53に出力される。したがって、インバータ装置A3から出力される三相交流の出力電流は、リップルが抑制された波形になる。これにより、過電流検出器が過電流と誤判定することを抑制することができる。一方、インバータ装置A3の出力電力が大きい場合、指令信号Xu1,Xv1,Xw1がPWM信号生成部53に出力される。したがって、インバータ装置A3の出力効率を、相電圧指令信号Xu,Xv,Xwを用いた場合より向上させることができる。これにより、インバータ装置A3は、出力電力に応じて、リップルを抑制する状態と、出力効率を向上させる状態とを切り替えることができる。
なお、本実施形態においては、指令信号切替部54が、インバータ装置A3の出力電力に応じて指令信号を切り替える場合について説明したが、これに限られない。例えば、インバータ装置A3の出力電圧や出力電流、その他の検出値に応じて指令信号を切り替えるようにしてもよい。
〔第4実施形態〕
図14および図15は、本発明の第4実施形態に係るインバータ装置A4を説明するための図である。図14はインバータ回路2’の内部構成を示す回路図であり、図15はPWM信号生成部53”の内部構成を示すブロック図である。図14および図15に示すインバータ装置A4は、他の種類の3レベルインバータ回路を用いる点で、第1実施形態に係るインバータ装置A1(図2および図7参照)と異なっている。
インバータ回路2’は、三相のPWM制御型インバータであり、各相の出力相電圧が3レベルの電位となる3レベルインバータ回路である。同図に示すように、インバータ回路2’の各相のアームは、4つの直列接続されたスイッチング素子(例えば、U相アームの場合、スイッチング素子S1,S1’,S4’,S4)と各スイッチング素子にそれぞれ逆並列接続された4つのダイオードとからなる。また、直流電源1の正極に接続する点Pと負極に接続する点Nとの間には、静電容量が同一で直列接続された2つの分圧用コンデンサC1,C2が並列接続されている。各アームの正極側の2つのスイッチング素子(例えば、U相アームの場合、スイッチング素子S1およびS1’)の接続点は、クランプダイオードDc1を介して、分圧用コンデンサC1と分圧用コンデンサC2の接続点Oに接続されている。また、各アームの負極側の2つのスイッチング素子(例えば、U相アームの場合、スイッチング素子S4’およびS4)の接続点は、クランプダイオードDc2を介して接続点Oに接続されている。各アームの両極に接続しない2つのスイッチング素子(例えば、U相アームの場合、スイッチング素子S1’およびS4’)の接続点には当該相の出力ラインが接続されている。
インバータ回路2’のU相の出力相電圧は、スイッチング素子の状態によって3レベルの電位となる。直流電源1の負極の電位を「0」、正極の電位を「E」とすると、スイッチング素子S1およびS1’がオン状態でスイッチング素子S4およびS4’がオフ状態の場合、出力ラインの電位は「E」となり、スイッチング素子S4およびS4’がオン状態でスイッチング素子S1およびS1’がオフ状態の場合、出力ラインの電位は「0」となり、スイッチング素子S1’およびS4’がオン状態でスイッチング素子S1およびS4がオフ状態の場合、出力ラインの電位は「(1/2)E」となる。なお、インバータ回路2’の内部構成は限定されず、他の3レベルインバータ回路であってもよい。
PWM信号生成部53”は、OR部538およびOR部539を設け、スイッチング素子S1’~S6’に入力するためのPWM信号を生成するようにしている点で、図7に示すPWM信号生成部53と異なる。
OR部538は、P側比較部533からPWM信号Pup,Pvp,Pwpを入力され、NOR部535からPWM信号Puo,Pvo,Pwoを入力されて、スイッチング素子S1’~S3’に入力するためのPWM信号を生成する。OR部538は、PWM信号PupとPWM信号Puoとの論理和を演算して、スイッチング素子S1’に入力するためのPWM信号を生成する。したがって、スイッチング素子S1’に入力するためのPWM信号は、PWM信号Pupがハイレベルのとき、または、PWM信号Puoがハイレベルのとき(すなわち、PWM信号PupおよびPWM信号Punがともにローレベルのとき)に、ハイレベルとなる。同様に、OR部538は、PWM信号PvpとPWM信号Pvoとの論理和を演算して、スイッチング素子S2’に入力するためのPWM信号を生成する。また、PWM信号PwpとPWM信号Pwoとの論理和を演算して、スイッチング素子S3’に入力するためのPWM信号を生成する。
OR部539は、N側比較部534からPWM信号Pun,Pvn,Pwnを入力され、NOR部535からPWM信号Puo,Pvo,Pwoを入力されて、スイッチング素子S4’~S6’に入力するためのPWM信号を生成する。OR部539は、PWM信号PunとPWM信号Puoとの論理和を演算して、スイッチング素子S4’に入力するためのPWM信号を生成する。したがって、スイッチング素子S4’に入力するためのPWM信号は、PWM信号Punがハイレベルのとき、または、PWM信号Puoがハイレベルのとき(すなわち、PWM信号PupおよびPWM信号Punがともにローレベルのとき)に、ハイレベルとなる。同様に、OR部539は、PWM信号PvnとPWM信号Pvoとの論理和を演算して、スイッチング素子S5’に入力するためのPWM信号を生成する。また、PWM信号PwnとPWM信号Pwoとの論理和を演算して、スイッチング素子S6’に入力するためのPWM信号を生成する。
なお、PWM信号生成部53”の構成は、上述したものに限定されない。指令信号Xu1,Xv1,Xw1から、各スイッチング素子をそれぞれ駆動するためのPWM信号を生成することができるものであれば、他の方法を用いてもよい。
第4実施形態においても、P側キャリア信号とN側キャリア信号とは、互いに反転された逆相の信号になっている。したがって、インバータ装置A4から出力される三相交流の出力電流は、リップルが抑制された波形になる。これにより、過電流検出器が過電流と誤判定することを抑制することができる。また、指令信号Xu1,Xv1,Xw1に基づいて生成されたPWM信号が入力されるので、スイッチング素子のスイッチング回数を低減することができ、スイッチングロスを低減することができる。
上記第1ないし第4実施形態においては、インバータ装置A1~A4を、パワーコンディショナとして用いた場合を例として説明したが、これに限られない。本発明は、他のシステムのインバータ装置にも適用することができる。
本発明に係るインバータ装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るインバータ装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。