以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、中性点クランプ式電力変換器に接続される外部装置として、モータジェネレータを述べるが、これは力行と回生の説明のための一例であって、電力の供給を受けるだけの負荷装置、逆に電力を供給する電源装置であってもよい。これらの場合、負荷装置の場合はモータジェネレータにおける力行のみが行われると考えることができ、電源装置の場合はモータジェネレータにおける回生のみが行われると考えることができる。以下では、中性点クランプ式電力変換器を三相型として述べるが、これは説明のための例示であって、三相以外の複数相型であってもよい。
以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、中性点クランプ式電力変換システム10の構成図である。中性点クランプ式電力変換システム10は、中性点クランプ式電力変換装置12と制御装置40とを含んで構成される。中性点クランプ式電力変換装置12は、直流電源14と、中性点用コンデンサ部16と、中性点クランプ式電力変換器18を含んで構成される。また、図1には、中性点クランプ式電力変換システム10の構成要素ではないが、中性点クランプ式電力変換器18に接続される外部装置であるモータジェネレータ20が図示されている。以下では、特に断らない限り、「中性点クランプ式」の語を省略し、中性点クランプ式電力変換システム10を電力変換システム10、中性点クランプ式電力変換装置12を電力変換装置12、中性点クランプ式電力変換器18を電力変換器18とする。
直流電源14は、充放電可能な高電圧用の蓄電装置である。かかる直流電源14としては、二次電池、高容量コンデンサ等を用いることができる。二次電池としては、例えばリチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池の他、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等を用いることができる。高電圧とは、例えば、約200Vから600Vとすることができる。
母線間電圧検出部26は、直流電源14の正極側に接続される正母線22と負極側に接続される負母線24との間の電圧である母線間電圧VBを検出する電圧検出手段である。したがって、母線間電圧VBは、直流電源14の端子間電圧に相当する電圧である。かかる母線間電圧検出部26としては、高電圧用の電圧計を用いることができる。検出された母線間電圧VBは、適当な信号線で制御装置40に伝送される。
中性点用コンデンサ部16は、正母線22と負母線24の間に互いに直列接続される2つのコンデンサ28,30である。図1でCLとして示されるコンデンサ28とCHとして示されるコンデンサ30は、同じ容量を有し、中性点32で互いに接続される。つまり、コンデンサ28の一方側端子は正母線22に接続され、他方側端子は中性点32に接続される。コンデンサ30の一方側端子は中性点32に接続され、他方側端子は負母線24に接続される。したがって、コンデンサ28,30が同じように充放電を行って常に同じ電荷を蓄積しているとすれば、中性点32と負母線24との間の電圧である中性点電圧VCLは、(VB/2)の値にクランプされることになる。
中性点電圧検出部34は、中性点電圧VCLを検出する電圧検出手段である。図1で示されるように、中性点電圧VCLは、CLとして示されるコンデンサ30の端子間電圧に相当する。上記のように、コンデンサ28,30が同じように充放電を行って常に同じ電荷を蓄積しているとすれば、VCL=(VB/2)になる。しかし、中性点32に流れ込む電流と中性点32から流出する電流が相違し、あるいはスイッチング素子の特性ばらつきや動作ばらつきによる電流不均衡があったり、コンデンサ28,30の容量ばらつきがあると、VCLは(VB/2)にクランプされない。中性点電圧検出部34は、VCLが(VB/2)とどの程度異なるかを監視する機能を有する。かかる中性点電圧検出部34としては、母線間電圧検出部26と同様な高電圧用の電圧計を用いることができる。検出された中性点電圧VCLは、適当な信号線で制御装置40に伝送される。
電力変換器18は、正母線22と中性点32の間の電圧である正側電圧が供給される正母線側のPWMインバータ、及び中性点32と負母線24との間の電圧である負側電圧が供給される負母線側のPWMインバータの2つで構成される。正母線側のPWMインバータと負母線側のPWMインバータは、正母線22と負母線24の間に直列に多重化されて配置され、正電圧と零電圧と負電圧の3レベルの三相交流出力電圧VU,VV,VWを外部装置であるモータジェネレータ20に出力する3レベル電力変換器である。
電力変換器18は、三相交流出力電圧のうちVUを出力するU相アームと、VVを出力するV相アームと、VWを出力するW相アームで構成される。
U相アームを例にとって説明すると、正母線22から負母線24に向かって、4つのスイッチング素子QU1,QU2,QU3,QU4がこの順に直列に接続され、各スイッチング素子にそれぞれダイオードが並列に逆接続される。逆接続とは、スイッチング素子のドレイン端子にダイオードのカソード端子が接続され、スイッチング素子のソース端子にダイオードのアノード端子が接続されるものである。そして、QU1とQU2の接続点とQU3とQU4の接続点には、直列に逆接続された2つのダイオードが並列に接続される。この2つのダイオードの間の接続点は、中性点32に接続される。かかる構成において、QU2とQU3との間の接続点からU相出力電圧VUが出力される。
同様に、V相アームも正母線22から負母線24に向かって4つのスイッチング素子QV1,QV2,QV3,QV4がこの順に直列に接続され、スイッチング素子のそれぞれにダイオードが並列に逆接続される。また、QV1とQV2の接続点とQV3とQV4の接続点に直列に逆接続された2つのダイオードが並列に接続され、この2つのダイオードの間の接続点が中性点32に接続される。そして、QV2とQV3との間の接続点からV相出力電圧VVが出力される。また、W相アームも同様の構成で、QW2とQW3との間の接続点からW相出力電圧VWが出力されるが、その他の構成はU相アーム、V相アームと同様であるので、詳細な説明を省略する。
スイッチング素子としては、高電圧大電流用のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。
モータジェネレータ20は、車両に搭載される回転電機で、直流電源14側から電力変換器18を介して三相出力電圧VU,VV,VWに対応する三相交流電力が供給されるときはモータとして作用し、車両を走行駆動する。これがモータジェネレータ20の力行状態である。車両が制動されるときは発電機として作用し、制動エネルギを回収して三相交流電力に対応する三相出力電圧VU,VV,VWとして出力し、電力変換器18を介して直流電力に変換し、直流電源14を充電する。これがモータジェネレータ20の回生状態である。
このように、電力変換器18は、モータジェネレータ20が力行状態のときは直流電源14の直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ20に供給する直交変換器として作用し、モータジェネレータ20が回生状態のときはモータジェネレータ20が発電する三相交流電力を直流電力に変換して直流電源14に供給する交直変換器として作用する。
制御装置40は、中性点クランプ式電力変換装置12の動作を全体として制御する中性点クランプ式電力変換装置用の制御装置である。制御装置40は、図示されていないシステム制御部から出力される三相電圧指令値VU *,VV *,VW *を受け取って、モータジェネレータ20がこれに従った動作をするように制御する。
PWM制御信号生成部46は、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の信号と搬送波信号とを比較してPWM(Pulse Wide Modulation)制御信号を生成し、電力変換器18の複数のスイッチング素子にそれぞれ供給される。これにより、電力変換器18は、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *に対応するPWMの三相出力電圧VU,VV,VWをモータジェネレータ20の各相巻線に供給する。搬送波信号としては、所定のキャリア周波数を有する三角波を用いることができる。三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の信号と搬送波信号の関係の詳細については後述する。かかる制御装置40は、コンピュータで構成される。
制御装置40は、ここでは、特に、中性点電圧VCLが(VB/2)から変動することを抑制する制御を行う。そのために、制御装置40は、PWM制御信号生成部46の他に、モード状態判定部48、力行回生判定部50、中性点電圧制御部52を含んで構成される。
モード状態判定部48は、母線間電圧VBの1/2と中性点電圧VCLとの間の電圧差である中性点電圧差ΔVC={(VB/2)−VCL}に基づいて、現在の中性点電圧状態が、中性点電圧VCLを上昇させる必要があるモードU、中性点電圧VCLを下降させる必要があるモードD、中性点電圧VCLをそのままとするモードNの3つのモードのいずれに該当するかを判定する。
力行回生判定部50は、モータジェネレータ20が力行状態にあるか回生状態にあるかを判定する。かかる判定は、モータジェネレータ20と電力変換器18との間の三相電力線に流れる電流の方向に基づいて行うことができる。その他に、図示されていないシステム制御部からの力行指令あるいは回生指令を受け取って判定を行うことができる。例えば、モータジェネレータ20が搭載される車両のアクセルペダルの踏込量が増大することを力行指令とし、ブレーキペダルが踏み込まれたことを回生指令とし、これらに基づいて、モータジェネレータ20が力行状態か回生状態かを判定することができる。
中性点電圧制御部52は、モード状態判定部48の判定に基づいて、現在がモードUまたはモードDである場合には、三相電圧指令値の内の一相の電圧指令値を搬送波信号の電圧値の最大値または最小値に合わせるための零相電圧指令値を三相電圧指令値のそれぞれに加算し、現在がモードNである場合には、三相電圧指令値をそのままとする制御を行う。
かかる機能は、コンピュータである制御装置40がソフトウェアとしての中性点電圧制御プログラムを実行することで実現できる。かかる機能を一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
制御装置40に接続される記憶部44は、制御装置40に用いられるプログラム等を格納する記憶装置である。特に、モード状態判定部48において用いられるモード状態判定図54が記憶される。モード状態判定図54の詳細については後述する。
上記構成の作用について、図2以下を用いてさらに詳細に説明する。最初に、モータジェネレータ20の動作制御に伴って、中性点32の電圧である中性点電圧VCLが変動することを説明し、次に、中性点電圧VCLの変動を抑制するために、制御装置40の各機能がどのように作用するかを説明する。
図2から図5は、モータジェネレータ20の動作制御に伴って、中性点32の電圧である中性点電圧VCLが変動することを力行状態と回生状態に分けて示す図である。
図2、図3は、力行状態のときの電流の流れを示す図である。力行状態では、直流電源14からモータジェネレータ20に電力を供給するため、電力変換器18におけるインバータの相電圧の高い方から低い方に向けて電流が流れる。
図2は、三相アームの中の1つのU相アームにおいてQU1とQU2がオンで、他の2つのV相アームとW相アームにおいてはそれぞれQV2とQV3がオン、QW2とQW3がオンの場合である。このときは、破線の矢印で示すように、電流は正母線からU相アームのQU1とQU2を通ってモータジェネレータ20のU相巻線に流れ、モータジェネレータ20の巻線中性点を通り、V相巻線からV相アームのQV3とその逆接続ダイオードを通り中性点用コンデンサ部16の中性点32に流れ込み、また、W相巻線からW相アームのQW3とその逆接続ダイオードを通って中性点用コンデンサ部16の中性点32に流れ込む。このようにして、中性点32に電流が流れ込むことで、中性点電圧VCLが上昇する。この状態のときは、次の段階として、中性点電圧VCLの上昇を抑制するために中性点電圧VCLを下降させる処理を行うことがよいので、モードDの状態に相当することになる。
上記では、U相アームのQU1とQU2がオン、V相アームのQV2とQV3がオン、W相アームのQW2とQW3がオンとしたが、U相アームのQU1とQU2がオンのままで、V相アームのQV1とQV2もオンとし、W相アームのQW2とQW3がオンとしても、同様に中性点32に電流が流れ込み、中性点電圧VCLが上昇する。また、上記の例で、U相、V相、W相を入れ替えた場合も同様である。
図3は、三相アームの中の1つのW相アームにおいてQW3とQW4がオンで、他の2つのU相アームとV相アームにおいてはそれぞれQU2とQU3がオン、QV2とQV3がオンの場合である。このときは、破線の矢印で示すように、電流は負母線24からコンデンサ30を通り中性点32からU相アームのQU2とその逆接続ダイオードを通ってモータジェネレータ20のU相巻線に流れ、また、V相アームのQV2とその逆接続ダイオードを通ってモータジェネレータ20のV相巻線に流れ、モータジェネレータ20の巻線中性点を通り、W相巻線からW相アームのQW3とQW4を通り負母線24に戻る。このようにして、中性点32から電流が流出することで、中性点電圧VCLが下降する。この状態のときは、次の段階として、中性点電圧VCLの下降を抑制するために中性点電圧VCLを上昇させる処理を行うことがよいので、モードUの状態に相当することになる。
上記では、W相アームのQW3とQW4がオン、U相アームのQU2とQU3がオン、V相アームのQV2とQV3がオンとしたが、W相アームのQW3とQW4がオンのままで、V相アームのQV3とQV4もオンとし、U相アームのQW2とQW3がオンとしても、同様に中性点32から電流が流出し、中性点電圧VCLが下降する。また、上記の例で、U相、V相、W相を入れ替えた場合も同様である。
図4、図5は、回生状態のときの電流の流れを示す図である。回生状態では、モータジェネレータ20から直流電源14に電力を供給するため、電力変換器18におけるインバータの相電圧の低い方から高い方に向けて電流が流れる。
図4は、スイッチング素子のオンオフ状態が力行状態における図3に対応するものであるが、回生状態であるため、電流の流れる向きが逆になる。すなわち、三相アームの中の1つのW相アームにおいてQW3とQW4がオンで、他の2つのU相アームとV相アームにおいてはそれぞれQU2とQU3がオン、QV2とQV3がオンの場合である。このときは、破線の矢印で示すように、電流は負母線24からモータジェネレータ20のW相巻線に流れ、モータジェネレータ20の巻線中性点を通り、V相巻線からV相アームのQV3とその逆接続ダイオードを通って中性点32に流れ込み、U相巻線からU相アームのQU3とその逆接続ダイオードを通って中性点32に流れ込む。このようにして、中性点32に電流が流れ込むことで、中性点電圧VCLが上昇する。この状態のときは、次の段階として、中性点電圧VCLの上昇を抑制するために中性点電圧VCLを下降させる処理を行うことがよいので、モードDの状態に相当することになる。
上記では、W相アームのQW3とQW4がオン、U相アームのQU2とQU3がオン、V相アームのQV2とQV3がオンとしたが、W相アームのQW3とQW4がオンのままで、V相アームのQV3とQV4もオンとし、U相アームのQW2とQW3がオンとしても、同様に中性点32に電流が流れ込み、中性点電圧VCLが上昇する。また、上記の例で、U相、V相、W相を入れ替えた場合も同様である。
図5は、スイッチング素子のオンオフ状態が力行状態における図2に対応するものであるが、回生状態であるため、電流の流れる向きが逆になる。すなわち、三相アームの中の1つのU相アームにおいてQU1とQU2がオンで、他の2つのV相アームとW相アームにおいてはそれぞれQV2とQV3がオン、QW2とQW3がオンの場合である。このときは、破線の矢印で示すように、電流は中性点32からV相アームのQV2とその逆接続ダイオードを通ってモータジェネレータ20のV相巻線に流れ、また、W相アームのQW2とその逆接続ダイオードを通ってモータジェネレータ20のW相巻線に流れ、モータジェネレータ20の巻線中性点を通り、U相巻線からU相アームのQU2とQU1を通り正母線22に流れる。このようにして、中性点32から電流が流出することで、中性点電圧VCLが下降する。この状態のときは、次の段階として、中性点電圧VCLの下降を抑制するために中性点電圧VCLを上昇させる処理を行うことがよいので、モードUの状態に相当することになる。
上記では、U相アームのQU1とQU2がオン、V相アームのQV2とQV3がオン、W相アームのQW2とQW3がオンとしたが、U相アームのQU1とQU2がオンのままで、V相アームのQV1とQV2もオンとし、W相アームのQW2とQW3がオンとしても、同様に中性点32から電流が流出し、中性点電圧VCLが下降する。また、上記の例で、U相、V相、W相を入れ替えた場合も同様である。
このように、モータジェネレータ20の力行状態、回生状態における動作制御に伴って、中性点電圧VCLが上昇または下降する変動が生じる。ここで、中性点電圧VCLが変動することを抑制するには、中性点電圧VCLが(VB/2)より過度に上昇するときに中性点電圧VCLを下降させる処理を行えばよく、中性点電圧VCLが(VB/2)より過度に下降するときに中性点電圧VCLを上昇させる処理を行えばよく、中性点電圧VCLが(VB/2)を中心に適当な範囲内で収まっているときはそのままとすることがよいことになる。そこで、次に、図6以下を用いて、制御装置40の各機能がどのように作用するかを説明する。
図6は、制御装置40の中性点電圧制御の内容を説明する図である。ここでは、まず、母線間電圧検出部26から伝送される母線間電圧VBからその1/2である(VB/2)を算出し、減算器56を用いて、中性点電圧検出部34から伝送される中性点電圧VCLを(VB/2)から減算し、中性点電圧差ΔVC={(VB/2)−VCL}を算出する。
モード状態判定部48では、中性点電圧差ΔVCを予め定めた第1閾値電圧ΔV1と第2閾値電圧ΔV2とそれぞれ比較し、その結果に基づいて、現在の中性点電圧状態が中性点電圧VCLを上昇させる必要があるモードU、中性点電圧VCLを下降させる必要があるモードD、中性点電圧VCLをそのまま維持するモードNの3つのモードのいずれに該当するかを判定する。
第1閾値電圧ΔV1、第2閾値電圧ΔV2は、電力変換システム10の仕様に基づいて設定される。なお、第1閾値電圧ΔV1の絶対値は、第2閾値電圧ΔV2の絶対値よりも小さく設定される。例えば、第1閾値電圧ΔV1の絶対値を母線間電圧VBの0.3〜0.5%程度、第2閾値電圧ΔV2の絶対値を、第1閾値電圧ΔV1の絶対値の2倍程度とすることができる。一例として、母線間電圧VBを約600Vとして、第1閾値電圧ΔV1の絶対値を約2Vとし、第2閾値電圧ΔV2の絶対値を約4Vとすることができる。これは一例であるので、これ以外の値に設定することもできる。
モード状態判定は、中性点電圧制御の制御周期毎に行われる。そして、判定のチャタリングを抑制するために、ヒステリシス処理が行われる。すなわち、現在から1制御周期前の中性点電圧状態が、モードUとモードDとモードNのどのモードに該当するか、及び第1閾値電圧ΔV1と第2閾値電圧ΔV2と現在の中性点電圧差ΔVCとの大小関係に基づいて、現在の中性点状態が、モードUとモードDとモードNのいずれに該当するかを判定する。
図7は、モード状態判定に用いられるモード状態判定図54である。ここでは、現在のモードが、現在から1制御周期前のモード別に、現在の中性点電圧状態の区分に従って判定される内容が示される。
すなわち、現在から1制御周期前がモードUであるとき、現在の中性点電圧状態がΔVC≧ΔV1のときは、中性点電圧の上昇が不足しているので、今回、すなわち現在のモードをモードUのままとし、継続して中性点電圧を上昇させることが適当と判定される。これに対し、現在の中性点電圧状態がΔVC<ΔV1となったときは、中性点電圧の上昇が十分行われて(VB/2)に近くなっているので、現在のモードがモードNに変更され、中性点電圧を上昇させることを止めて、現在の中性点電圧の状態をそのまま維持することが適当と判定される。
また、現在から1制御周期前がモードNであって、現在のΔVCが(−ΔV2)と(+ΔV2)の間にあるときは、中性点電圧が(VB/2)に近い状態であるので、モードNをそのまま維持することが適当と判定される。現在の中性点電圧状態がΔVC≧ΔV2のとき、中性点電圧が下降し過ぎなので、現在のモードをモードUに変更し、中性点電圧を上昇させることが適当と判定される。また、現在の中性点電圧状態がΔVC≦−ΔV2のときは、中性点電圧が上昇し過ぎなので、現在のモードをモードDに変更し、中性点電圧を下降させることが適当と判定される。
さらに、現在から1制御周期前がモードDであるとき、現在の中性点電圧状態がΔVC>−ΔV2のときは、中性点電圧の下降が不足しているので、現在のモードをモードDのままとし、継続して中性点電圧を下降させることが適当と判定される。これに対し、現在の中性点電圧状態がΔVC≦−ΔV1となったときは、中性点電圧の下降が十分行われて(VB/2)に近くなっているので、現在のモードをモードNに変更し、中性点電圧を下降させることを止めて、現在の中性点電圧の状態をそのまま維持することが適当と判定される。
かかるモード状態判定図54は、記憶部44に記憶される。図7では、表形式でモード状態判定図54を示したが、現在から1制御周期前のモード別に、現在の中性点電圧状態の区分に従って、現在のモードが検索できる形式であれば、他の形式であってもよい。例えば、マップ形式、数式等で記憶部44に記憶するものとできる。
図8は、現在の中性点電圧VCLと第1閾値電圧ΔV1、第2閾値電圧ΔV2との関係で、モードU、モードD、モードNが判定される例を示す図である。図8(a)は、中性点電圧VCLが目標値である(VB/2)よりも過度に低下している場合で、この状態のときはモードUとして、中性点電圧を上昇させることがよい、と判定される。図8(b)は、中性点電圧VCLが目標値である(VB/2)よりも過度に上昇している場合で、この状態のときはモードDとして、中性点電圧を下降させることがよいと判定される。図8(c)は、中性点電圧VCLが目標値である(VB/2)とほぼ同等であるので、この状態のときはモードNとして、中性点電圧をそのまま維持することがよいと判定される。
再び図6に戻り、モード状態判定部48において、ヒステリシスを考慮して現在の中性点電圧の状態に適したモードが判定されると、次に中性点電圧制御部52において、中性点電圧を上昇または下降させるための零相電圧指令値V0が算出され、加算手段58を用いて、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *にそれぞれ加算される。加算後の三相電圧指令値は、それぞれVUC *,VVC *,VWC *として示した。
中性点電圧制御部52は、モード状態判定部48の判定の結果がモードUのときは中性点電圧を上昇させ、モードDのときは中性点電圧を下降させ、モードNのときは中性点電圧を上昇も下降もさせずその状態で維持する処理を行う。
中性点電圧を上昇させるには、中性点に電流を流れ込ませればよい。力行状態のときは図2の場合に中性点に電流が流れ込む。回生状態のときは図4の場合に中性点に電流が流れ込む。したがって、力行状態のときに中性点電圧を上昇させたいときは図2の電流の流れとなるように、回生状態のときに中性点電圧を上昇させたいときは図4の電流の流れとなるように、スイッチング素子の状態を変更すればよい。
力行の図2では、三相出力電圧VU,VV,VWのうち、1つのU相出力電圧VUが正母線電圧になっている。図2は1つの例であるので、VVまたはVWが正母線電圧となっていてもよい。回生の図4では、三相出力電圧VU,VV,VWの中の1つのW相出力電圧VWが負母線電圧になっている。図4は1つの例であるので、VUまたはVVが負母線電圧となっていてもよい。
このように、力行状態で中性点電圧を上昇させるには、三相出力電圧VU,VV,VWのうち、1つの相の出力電圧を強制的に最大電圧に引き上げればよい。他の相の出力電圧は、その引き上げた電圧分だけ同様に引き上げれば、各相間の線間電圧をもとのまま維持できる。同様に、回生状態で中性点電圧を上昇させるには、三相出力電圧VU,VV,VWの中の1つの相の出力電圧を強制的に最小電圧に引き下げればよい。他の相の出力電圧は、その引き下げた電圧分だけ同様に引き下げれば、各相間の線間電圧をもとのまま維持できる。
中性点電圧を下降させるには、中性点から電流を流出させればよい。力行状態のときは図3の場合に中性点から電流が流出する。回生状態のときは図5の場合に中性点から電流が流出する。したがって、力行状態のときに中性点電圧を下降させたいときは図3の電流の流れとなるように、回生状態のときに中性点電圧を下降させたいときは図5の電流の流れとなるように、スイッチング素子の状態を変更すればよい。
力行の図3では、三相出力電圧VU,VV,VWの中の1つのW相出力電圧VWが負母線電圧になっている。図3は1つの例であるので、VUまたはVVが負母線電圧となっていてもよい。回生の図5では、三相出力電圧VU,VV,VWの中の1つのU相出力電圧VUが正母線電圧になっている。図5は1つの例であるので、VVまたはVWが正母線電圧となっていてもよい。
このように、力行状態で中性点電圧を下降させるには、三相出力電圧VU,VV,VWのうち、1つの相の出力電圧を強制的に最小電圧に引き下げればよい。他の相の出力電圧は、その引き下げた電圧分だけ同様に引き下げれば、各相間の線間電圧をもとのまま維持できる。同様に、回生状態で中性点電圧を下降させるには、三相出力電圧VU,VV,VWのうち、1つの相の出力電圧を強制的に正母線電圧に引き上げればよい。他の相の出力電圧は、その引き上げた電圧分だけ同様に引き上げれば、各相間の線間電圧をもとのまま維持できる。
零相電圧指令値V0は、中性点電圧を上昇させ、または下降させるために、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれについて強制的に引き上げ、または引き下げる電圧である。図9は、中性点電圧を上昇させるモードU、中性点電圧を下降させるモードD、中性点電圧をそのまま維持するモードNのそれぞれについて、力行状態と回生状態を区別して、零相電圧指令値V0を整理した図である。
ここで、V0=VNUは、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれについて強制的に引き上げるときの零相電圧指令値である。ここでは、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の大きさを規格化して、その最大振幅の大きさを1.0とした。三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の最大振幅の大きさの限度は母線間電圧VBであるが、PWM制御を行うときの三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の最大振幅の大きさは、搬送波信号の最大値と最小値で定まる。
V0=VNUは、中性点電圧制御を行う時における三相電圧指令値VU *,VV *,VWのうちの最大値となる相の規格化された電圧指令値を1.0から差し引いた値である。このV0=VNUを三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算することで、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の1相の電圧指令値がPWM制御における電圧の最大値、すなわち、搬送波信号の最大値に引き上げられ、他の相の規格化された電圧指令値は、各相間の線間電圧をもとのまま維持するようにそれぞれ同じV0=VNUだけ引き上げられる。これによって、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *は、PWM制御における電圧の最大値を超えることがない。
V0=VNLは、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれについて強制的に引き下げるときの零相電圧指令値である。ここでも、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の大きさを規格化して、その最大振幅の大きさを1.0とした。V0=VNUは、中性点電圧制御を行う時における三相電圧指令値VU *,VV *,VWのうちの最小値となる相の規格化された電圧指令値を1.0から差し引いた値である。三相出力電圧VU,VV,VWの中の最大値となる相の出力電圧を1.0から差し引いた値である。このV0=VNUを三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算することで、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *のうちの1相の電圧指令値がPWM制御における電圧の最小値、すなわち、搬送波信号の最小値に引き下げられ、他の相の電圧指令値は、各相間の線間電圧をもとのまま維持するようにそれぞれ同じV0=VNLだけ引き下げられる。これによって、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *は、PWM制御における電圧の最小値を下回ることがない。
図9に示されるように、力行状態において、モードUでは、零相電圧指令値V0はVNUに設定され、モードDでは、零相電圧指令値V0はVNLに設定される。回生状態において、モードUでは、零相電圧指令値V0はVNLに設定され、モードDでは、零相電圧指令値V0はVNUに設定される。モードNでは、力行状態でも回生状態でも零相電圧指令値V0は零(0)に設定される。
図10は、U相電圧指令値VU *と、搬送波60,62との関係、および、モード状態判定部48の判定タイミング、中性点電圧制御部52における制御処理のタイミングを示す図である。なお、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *は、互いに電気角で120度の位相差を有している正弦波電圧波形であるので、ここではU相電圧指令値VU *で代表させることにした。
図10の横軸は時間、縦軸は電圧である。搬送波60,62は、電力変換器18における2つのインバータについてそれぞれ適用される2つの搬送波信号である。搬送波60,62は、母線間電圧VBの範囲内において周期Tで山と谷を繰り返す三角波信号である。ここでは、最大値を正母線22の電圧、最小値を負母線24の電圧としてある。搬送波60は、正母線22の電圧とVB/2の範囲内において周期Tで山と谷を繰り返し、搬送波62は、VB/2と負母線24の電圧の範囲内において周期Tで山と谷を繰り返す。
制御装置40のPWM制御信号生成部46は、搬送波60,62の電圧と三相電圧指令値VU *,VV *,VW *とを比較して、スイッチング素子に対するPWM制御信号を生成する。図10の場合は、搬送波60,62の電圧とU相電圧指令値VU *とを比較して、U相アームのスイッチング素子に対するPWM制御信号を生成する。PWM制御信号をモータジェネレータ20の回転一周期に渡って生成するには、三相電圧指令値VU *,VV *,VW *は、搬送波60,62の最大値と最小値の範囲内で変化する正弦波信号となる。図10の場合、U相電圧指令値VU *の最大値=搬送波60,62の最大値=正母線22の電圧値で、U相電圧指令値VU *の最小値=搬送波60,62の最小値=負母線24の電圧値とした。
図10において、時間t1からt10のそれぞれは、搬送波60,62が谷となるタイミングである。モード状態判定部48の判定、中性点電圧制御部52における制御処理は、この時間t1からt10、つまり、搬送波60,62が谷となるタイミングで実行される。したがって、モード状態判定部48の判定、中性点電圧制御部52における制御処理は、搬送波60,62の周期Tごとに行われる。すなわち、中性点電圧制御の制御周期は搬送波60,62の周期と同じTである。場合によって、モード状態判定および中性点電圧制御を実行するタイミングを三角波の山のタイミングと谷のタイミングとして、制御周期を搬送波60,62の周期の半分のT/2としてもよい。これにより、よりきめ細かく中性点電圧制御を実行することができる。
図11から図14は、図9におけるモードUの力行と回生、モードDの力行と回生のそれぞれについて、零相電圧指令値を適用して、中性点電圧を上昇させあるいは下降させる処理の例を示す図である。
図11は、モードUで力行状態の場合であり、図12は、モードUで回生状態の場合であり、図13は、モードDで力行状態の場合であり、図14は、モードDで回生状態の場合である。それぞれの図において、左側の図(a)は、零相電圧指令値を加算する処理の前の状態を示し、右側に示す図(b)は、零相電圧指令値を加算する処理の後の状態を示す。
これらの図(a),(b)においては、横軸に時間をとり、縦軸に電圧をとって、各要素の時間変化を示した。これらの図(a),(b)において、図の上段側から下段側に向かって、搬送波60,62と規格化された三相電圧指令値VU *,VV *,VW *の時間変化、U相アームの4つのスイッチング素子のオンオフ状態の時間変化、V相アームの4つのスイッチング素子のオンオフ状態の時間変化、W相アームの4つのスイッチング素子のオンオフ状態の時間変化を、この順で示した。そして、これらから求められる中性点電圧の上昇期間を(+ΔT)で示し、中性点電圧の下降期間を(−ΔT)で示した。
U相アームの各スイッチング素子のオンオフは、VU *と搬送波60,62との大小関係で定まる。すなわち、VU *が搬送波60よりも大きいとき、QU1はオンで、VU *が搬送波60よりも小さいときQU1はオフである。VU *が搬送波62よりも大きいとき、QU2はオンで、VU *が搬送波62よりも小さいときQU2はオフである。QU3はQU1の反転、QU4はQU2の反転であるが、QU1とQU3が同時にオンとならないように、QU2とQU4が同時にオンとならないように、いずれかの信号が修正される。
V相アーム各スイッチング素子のオンオフは、U相アームのVU *をVV *に置き換えたものに相当し、W相アーム各スイッチング素子のオンオフは、U相アームのVU *をVW *に置き換えたものに相当するので、これらについては詳細な説明を省略する。
図11は、モードUで力行状態であるので、図9によって、零相電圧指令値は、V0=VNU=[1.0−MAX(VU *,VV *,VW *)]が用いられる。図11(a)の最上段には、搬送波60,62に対し、各相の電圧指令値VU *,VV *,VW *が示されている。ここで、VU *,VV *,VW *を比較すると、MAX(VU *,VV *,VW *)は、VU *である。したがって、V0=VNU=(1.0−VU *)となる。
中性点電圧制御では、図6で説明したように、このV0=VNU=(1.0−VU *)を、VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算する。ここで、加算後のそれぞれをVUC *,VVC *,VWC *とする。したがって、VU *に零相電圧指令値V0=VNU=(1.0−VU *)を加算した後は、VUC *={VU *+(1.0−VU *)}=1.0となる。すなわち、MAX(VU *,VV *,VW *)にV0=VNUを加算すると、加算後のMAX(VU *,VV *,VW *)の電圧指令値は、1.0となり、PWM制御における電圧の最大値となる。今の場合、搬送波60,62の最大値になる。そのことが、図11(a),(b)のそれぞれの最上段の図に示される。
力行状態において、中性点電圧が上昇する期間(+ΔT)は、図2を参照して、U相アームにおいてQU1がオン、QU2がオン、QU3がオフ、QU4がオフであり、さらにV相アームにおいて、QV1がオフ、QV2がオン、QV3がオン、QV4がオフであり、さらにW相アームにおいて、QW1がオフ、QW2がオン、QW3がオン、QW4がオフとなるときである。
力行状態において、中性点電圧が下降する期間(−ΔT)は、図3を参照して、U相アームにおいてQU1がオフ、QU2がオン、QU3がオン、QU4がオフであり、さらにV相アームにおいて、QV1がオフ、QV2がオン、QV3がオン、QV4がオフであり、さらにW相アームにおいて、QW1がオフ、QW2がオフ、QW3がオン、QW4がオンとなるときである。
図11(a),(b)のそれぞれについて、12個のスイッチング素子のオンオフ状態から(+ΔT)と(−ΔT)を求めると、零相電圧指令値を加算する前の(a)に比べ、零相電圧指令値を加算した後の(b)の方が、(+ΔT)が拡大し(−ΔT)が減少したことが示される。
このように、中性点電圧が(VB/2)に比べ下降しすぎているモードUで力行状態のときは、零相電圧指令値V0=VNU=[1.0−MAX(VU *,VV *,VW *)]を、VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算することで、中性点電圧が上昇する。これによって、中性点電圧の変動を抑制できる。
図12は、モードUで回生状態の場合であるので、図9によって、零相電圧指令値は、V0=VNL=[1.0−MIN(VU *,VV *,VW *)]が用いられる。図12(a)に示されるように、MIN(VU *,VV *,VW *)はVW *である。したがって、零相電圧指令値V0=VNL=(1.0−VW *)となり、これをVU *,VV *,VW *のそれぞれに加算する。その様子が図13(a),(b)の最上段の図に示される。
回生状態において、中性点電圧が上昇する期間(+ΔT)は、図4を参照して、U相アームにおいてQU1がオフ、QU2がオン、QU3がオン、QU4がオフであり、さらにV相アームにおいて、QV1がオフ、QV2がオン、QV3がオン、QV4がオフであり、さらにW相アームにおいて、QW1がオフ、QW2がオフ、QW3がオン、QW4がオンとなるときである。
回生状態において、中性点電圧が下降する期間(−ΔT)は、図5を参照して、U相アームにおいてQU1がオン、QU2がオン、QU3がオフ、QU4がオフであり、さらにV相アームにおいて、QV1がオフ、QV2がオン、QV3がオン、QV4がオフであり、さらにW相アームにおいて、QW1がオフ、QW2がオン、QW3がオン、QW4がオフとなるときである。
図12(a),(b)のそれぞれについて、12個のスイッチング素子のオンオフ状態から(+ΔT)と(−ΔT)を求めると、零相電圧指令値を加算する前の(a)に比べ、零相電圧指令値を加算した後の(b)の方が、(+ΔT)が拡大し(−ΔT)が減少したことが示される。
このように、中性点電圧が(VB/2)に比べ下降しすぎているモードUで回生状態のときは、零相電圧指令値V0=VNL=[1.0−MIN(VU *,VV *,VW *)]を、VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算することで、中性点電圧が上昇する。これによって、中性点電圧の変動を抑制できる。
図13(a),(b)は、中性点電圧が(VB/2)に比べ上昇しすぎているモードDで力行状態の場合である。このときは図9に従い、零相電圧指令値V0=VNL=[1.0−MIN(VU *,VV *,VW *)]を、VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算する。図11、図12の説明の内容と同様に、この処理を行うことで、図13(a),(b)の比較から、(+ΔT)が縮小し(−ΔT)が拡大することが示される。これにより中性点電圧が下降し、中性点電圧の変動を抑制できる。
図14(a),(b)は、中性点電圧が(VB/2)に比べ上昇しすぎているモードDで回生状態の場合である。このときは図9に従い、零相電圧指令値V0=VNU=[1.0−MAX(VU *,VV *,VW *)]を、VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算する。図11、図12の説明の内容と同様に、この処理を行うことで、図14(a),(b)の比較から、(+ΔT)が縮小し(−ΔT)が拡大することが示される。これにより中性点電圧が下降し、中性点電圧の変動を抑制できる。
図15は、U相電圧指令値VU *の一周期について、零相電圧指令値が適用される期間を示す図である。図15(a)から(f)の各図の横軸は時間、縦軸は電圧であるが、横軸は、(a)に比べ、(b)から(f)については拡大して、U相電圧指令値VU *の一周期の全体を示すようにした。縦軸は、(b)は(a)に比べ拡大した。(c)から(e)の縦軸は、最大値を+1、最小値を−1と規格化して示した。(f)の縦軸はオンオフの2値である。
図15(a)は、中性点用コンデンサ部16の2つのコンデンサの端子間電圧、(b)は(a)の拡大図である。これらの図の縦軸=1.0が中性点電圧=(VB/2)の状態である。(b)に示されるように、中性点電圧が時間について変動することがわかる。
図15(c)は、搬送波とU相電圧指令値VU *の時間変化を示す図である。ここで示されるように、搬送波は規格化された+1と0、0と−1の間で繰り返す2つの三角波である。ここでは、U相電圧指令値VU *の最大値と最小値の範囲は、搬送波の最大値と最小値の範囲内となっている。
図15(d)は零相電圧指令値の時間変化を示す図である。このように、零相電圧指令値の波形は、連続的な繰り返し波形でなく、必要な時に出力される離散的波形である。
図15(e)は、零相電圧指令値がU相電圧指令値VU *に加算された電圧指令値VUC *を示す図である。ここでは、搬送波が重ねて示される。搬送波の波形と零相電圧指令値の波形との関係をみると、搬送波の谷と山の一周期が零相電圧指令値のパルス幅となっていることがわかる。これは、中性点電圧制御の制御周期が搬送波の周期と同じで、中性点電圧制御は、搬送波が谷となるタイミングごとに実行されるからである。中性点電圧制御は、図9に従って行われるので、モードNのときは零相電圧指令値=0とされ、そのときは、電圧指令値VUC *=VC *のままとされる。これが、零相電圧指令値の波形が必要な時に出力される離散的波形となる理由である。
図15(f)は、U相アームの4つのスイッチング素子のオンオフ状態を示す図である。
。図15(d)において零相電圧指令値が(+の値)のときは、QU1がオン、QU3がオフし、零相電圧指令値が(−の値)のときは、QU2がオフし、QU4がオンする様子が示される。これによって、中性点に電流が流入または中性点から流出し、中性点電圧の変動が抑制されることになる。
このように上記構成によれば、中性点電圧を上昇または下降させる必要のあるときに、中性点から電流を流出させまたは中性点に電流を流入させることができる零相電圧指令値を電圧指令値VU *,VV *,VW *のそれぞれに加算するので、簡単な構成で、各相間の線間電圧をそのままとして、中性点の変動を抑制できる。また、中性点電圧を上昇または下降させる必要がないときは、電圧指令値VU *,VV *,VW *をそのままとするので、制御が簡単となる。また、中性点電圧を上昇させるか、下降させるか、そのまま維持するかを判定するのに用いられる閾値に特別な制約がないので、広い範囲で、中性点の変動を抑制できる。