JP7045272B2 - 加硫ゴム用離型剤 - Google Patents

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Description

本発明は、加硫ゴム用離型剤に関する。
ゴムホース等のゴム製品は、自動車をはじめ、様々な機械の部品として広範に使用されている。ゴム製品の多くは、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の原料ゴムに硫黄や架橋剤を添加してゴム分子同士を架橋させる加硫を行い、該原料ゴムに伸縮性や弾性を付与した加硫ゴムを、押出成型や金型成型等で成型したものである。例えば、ゴムホースは、主に、所定の形状に成型されたマンドレルなどの金型に加硫ゴムを挿入して成型した後に引き抜く方法、又は、前記金型に未加硫の原料ゴム組成物を挿入して加硫・成型した後に引き抜く方法によって製造されている。
このようなゴム製品の成型においては、成型後の加硫ゴム製品と金型とを離し易くするため、又は成型前の原料ゴム組成物を金型に挿入しやすくするために離型剤が用いられており、かかる加硫ゴム用の離型剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、脂肪酸石鹸、ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル等が知られている。
また、例えば、特開2004-114472号公報(特許文献1)には、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基にエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とがランダム状に共重合した化合物を含有する加硫ゴム用離型剤が記載されており、特開2004-306409号公報(特許文献2)には、分子量が2000~4000で、式HO(EO)(PO)(EO)Hで表され、オキシエチレン基(エチレンオキシ基、EO)が全分子中に占める含有率が20%以上40%未満であるポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを有効成分として含有するホース製造用マンドレル離型剤が記載されており、特開平7-292236号公報(特許文献3)には、各アルキレンオキサイド付加物がエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとが交互に結合したものであるジアミンのアルキレンオキサイド付加物からなる加硫ゴム用離型剤が記載されている。
特開2004-114472号公報 特開2004-306409号公報 特開平7-292236号公報
しかしながら、従来の加硫ゴム用離型剤においては、成型後の加硫ゴム製品の引き抜き作業を容易にする特性(離型性)、及び成型後の加硫ゴム製品の表面に付着している離型剤の除去が容易である特性(洗浄性)をいずれも向上させることが困難であり、例えば、特許文献1に記載の離型剤では、良好な洗浄性は発揮できるものの、離型性が十分ではないという問題を有していることを本発明者らは見い出した。他方、特許文献2~3に記載の離型剤では、ある程度良好な離型性は発揮できるものの、洗浄性が十分ではなく、特に、水温が高く(例えば、40℃程度)なると洗浄性がさらに低下してしまうという問題を有していることを本発明者らは見い出した。
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる加硫ゴム用離型剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリアミンのアルキレンオキサイド付加物にカルボン酸アミド化合物を組み合わせることによって、加硫ゴム用離型剤の洗浄性が大きく向上することを見い出した。さらに、前記ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物と前記カルボン酸アミド化合物とを組み合わせて含有する加硫ゴム用離型剤においては離型性もより向上し、優れた離型性及び優れた洗浄性をいずれも発揮できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記一般式(1):
Figure 0007045272000001
[式(1)中、AO及びAOは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、a及びaはそれぞれ前記アルキレンオキシ基AO及びAOの平均付加モル数であって、それぞれ独立に、1~40の数を示し、b及びbはそれぞれ独立に1又は2を示し、c及びcはそれぞれ独立に0又は1を示し、b、b、c、及びcの合計は4であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(11):
Figure 0007045272000002
[式(11)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、aは前記アルキレンオキシ基AOの平均付加モル数であって1~40の数を示す。]
で表される基を示し、dは0又は1又は2を示す。]
で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物と、
下記一般式(2):
Figure 0007045272000003
[式(2)中、Rは炭素数8~22の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~2のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは、下記一般式(21)~(2):
-COOM …(21)
-SOM …(22
式(21)~(2)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。]
のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示す。]
で表されるカルボン酸アミド化合物と、
を含有することを特徴とするものである。
本発明の加硫ゴム用離型剤としては、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量が3~99.95質量%であり、かつ、前記カルボン酸アミド化合物の含有量が0.05~50質量%であることが好ましい。
さらに、本発明の加硫ゴム用離型剤としては、前記一般式(1)中のAO、AO、及びAOが、それぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、また、前記一般式(2)中のRが、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基であることも好ましい。
本発明によれば、優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる加硫ゴム用離型剤を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記一般式(1)で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物と、下記一般式(2)で表されるカルボン酸アミド化合物とを含有することを特徴とする。
(ポリアミンアルキレンオキサイド付加物)
本発明において、ポリアミンアルキレンオキサイド付加物とは、2以上の第1級アミノ基(-NH)を有するポリアミンの窒素原子に結合する水素原子(活性水素)に代えてアルキレンオキサイド鎖が付加された構造を有する化合物のことをいう。本発明に係るポリアミンアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1):
Figure 0007045272000004
[式(1)中、AO(式中ではOA)及びAOは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、a及びaはそれぞれ前記アルキレンオキシ基AO及びAOの平均付加モル数であって、それぞれ独立に、1~40の数を示し、b及びbはそれぞれ独立に1又は2を示し、c及びcはそれぞれ独立に0又は1を示し、b、b、c、及びcの合計は4であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(11):
Figure 0007045272000005
[式(11)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、aは前記アルキレンオキシ基AOの平均付加モル数であって1~40の数を示す。]
で表される基を示し、dは0又は1又は2を示す。]
で表される。
一般式(1)において、AO及びAO、又は、Rが一般式(11)で表される基である場合にはAO、AO、及びAOが示すアルキレンオキシ基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、さらに、それぞれ複数あるAO、AO、及びAO内においても、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。前記アルキレンオキシ基としては、それぞれ独立に、炭素数が2~4のアルキレンオキシ基、すなわち、炭素数2のエチレンオキシ基(以下、場合により「EO」と示す。)、炭素数3のプロピレンオキシ基(以下、場合により「PO」と示す。)、又は炭素数4のブチレンオキシ基(以下、場合により「BO」と示す。)であることが必要である。前記アルキレンオキシ基の炭素数としては2~3であること、すなわち、前記アルキレンオキシ基がEO又はPOであることがより好ましい。前記炭素数が前記範囲内にあると、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性が良好となる。
これらのアルキレンオキシ基が付加してなる前記アルキレンオキサイド鎖(-(AO)-Hで示される基)としては、前記アルキレンオキシ基のうちの1種の基の単独付加からなる鎖であっても2種以上の基の共付加からなる鎖であってもよく、共付加である場合にはブロック付加であってもランダム付加であってもよい。これらの中でも、前記アルキレンオキシ基の付加形態としては、水中での分散性及び金型への付着性がより向上し、また、加硫ゴム用離型剤の洗浄性により優れる傾向にある観点から、共付加(ランダム付加又はブロック付加)であることが好ましく、EOとPOとの共付加であることがより好ましい。また、前記アルキレンオキシ基の付加形態がEOとPOとの共付加である場合には、POの付加の後にEOが付加したブロック付加であることがさらに好ましい。
さらに、前記アルキレンオキサイド鎖がアルキレンオキシ基としてEOを含む場合には、一般式(1)中の全アルキレンオキサイド鎖に対する全EOの含有量が、35質量%以下であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましい。前記全アルキレンオキサイド鎖に対する全EOの含有量が前記上限を超えると、加硫ゴム用離型剤の離型性や洗浄性が低下する傾向にある。
一般式(1)において、a及びa、又は、Rが一般式(11)で表される基である場合にはa、a、及びaが示すアルキレンオキサイド鎖1本あたりのアルキレンオキシ基の平均付加モル数は、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記アルキレンオキシ基の平均付加モル数としては、それぞれ独立に、1~40であることが必要であり、5~36であることが好ましく、10~32であることがより好ましい。前記アルキレンオキシ基の平均付加モル数が前記下限未満であると、加硫ゴム用離型剤の離型性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、洗浄性が低下する傾向にある。
本発明に係るポリアミンアルキレンオキサイド付加物において、前記ポリアミンが有する2以上の第1級アミノ基(-NH)においては、それぞれ2つの水素原子(活性水素)のうち、少なくとも1つに代えて前記アルキレンオキサイド鎖が付加していればよい。したがって、一般式(1)中、b及びbはそれぞれ独立に1又は2を示し、c及びcはそれぞれ独立に0又は1を示し、b、b、c、及びcの合計は4である。本発明に係るポリアミンアルキレンオキサイド付加物としては、前記アルキレンオキシ基の含有量をより多くすることができて加硫ゴム用離型剤の離型性がより向上する傾向にある観点から、b及びbがいずれも2であり、c及びcがいずれも0であることがより好ましい。
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。本発明において、R及びRとしては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、いずれもエチレン基であることが特に好ましい。
一般式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(11):
Figure 0007045272000006
で表される基を示す。一般式(11)中のAO及びaは上記のとおりである。本発明において、Rとしては、前記アルキレンオキシ基の含有量をより多くすることができて加硫ゴム用離型剤の離型性がより向上する傾向にある観点から、一般式(11)で表される基であることが好ましい。
また、一般式(1)において、dは、0又は1又は2を示す。本発明において、dとしては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、0又は1であることが特に好ましい。
このようなポリアミンアルキレンオキサイド付加物は、常法に従って、例えば、ポリアミン(アルキレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミン等)を原料として、この窒素原子に結合する水素原子(活性水素)に代えて前記アルキレンオキシ基を付加重合させて得ることができる。また、前記ポリアミンに代えて、例えば、前記ポリアミンの活性水素に代えてヒドロキシアルキレン基が付加した化合物(N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシアルキル)アルキレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタキス(2-ヒドロキシアルキル)ジアルキレントリアミン等)を原料として用い、このヒドロキシ基の水素原子(活性水素)に代えて前記アルキレンオキシ基を付加重合させて得ることもできる。
前記アルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、具体的には、例えば、前記ポリアミン等の原料を耐圧反応器に仕込み、不活性ガス雰囲気下において加熱し、所定量のアルキレンオキサイドを導入(圧入)して付加させる方法が挙げられ、反応触媒として水酸化アルカリ等を使用することができる。また、前記アルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、1種のアルキレンオキサイドを1段階で導入して付加させる方法、2種以上のアルキレンオキサイドを混合して1段階で導入して付加させる方法のほか、1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを多段階に分けて導入して付加させる方法等、目的とするアルキレンオキシ基の付加形態に応じて選択することができる。
(カルボン酸アミド化合物)
本発明において、カルボン酸アミド化合物は、下記一般式(2):
Figure 0007045272000007
[式(2)中、Rは炭素数8~22の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~2のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは、下記一般式(21)~(23):
-COOM …(21)
-SOM …(22)
-POM …(23)
[式(21)~(23)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。]
のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示す。]
で表される。
一般式(2)において、Rは、炭素数8~22の炭化水素基を示す。前記炭化水素基の炭素数としては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、8~18であることが好ましく、12~18であることがより好ましい。また、前記炭化水素基としては、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状構造を含んでいてもよいが、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、直鎖状炭化水素基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることがより好ましい。
このようなRが示す炭素数8~22の炭化水素基としては、より具体的には、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基であることが好ましく、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Rは、炭素数1~2のアルキレン基を示す。また、一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。
一般式(2)において、Xは、下記一般式(21)~(23):
-COOM …(21)
-SOM …(22)
-POM …(23)
のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示し、一般式(21)~(23)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。
前記一価のカチオン基としては、一般式(21)~(23)中のアニオンと対塩を形成して中和することができるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アンモニウム(NH)、アルカノールアミン(モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン等;好ましくは、炭素数1~4のアルカノールアミン)が挙げられる。一般式(21)~(23)において、Mとしては、入手のし易さ等の観点からは、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであることが好ましい。また、本発明において、前記アニオン性基としては、水素原子又は前記カチオン基を除いた酸性基であってもよく、その中和度に関しては特に限定はなく、適宜調整することができる。
本発明において、Xとしては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、一般式(21)又は(22)で表されるアニオン性基であることが特に好ましい。
このようなカルボン酸アミド化合物としては、より具体的には、N-ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、N-パルミトイルサルコシン、N-ステアロイルサルコシン、N-オレオイルサルコシン等のN-アシルサルコシン;N-ラウロイルメチルタウリン、N-ミリストイルメチルタウリン、N-パルミトイルメチルタウリン、N-ステアロイルメチルタウリン、N-オレオイルメチルタウリン等のN-アシル-N-メチルタウリンが挙げられ、これらのうちの1種が単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。中でも、前記カルボン酸アミド化合物としては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、N-アシルサルコシン及びN-アシル-N-メチルタウリンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、N-アシルサルコシンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
(加硫ゴム用離型剤)
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物と前記カルボン酸アミド化合物とを含有する。前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物及び前記カルボン酸アミド化合物としては、それぞれ、1種が単独で含有されていても2種以上が組み合わせて含有されていてもよい。
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して3~99.95質量%であることが好ましく、5~99.90質量%であることがより好ましく、10~99.85質量%であることがさらに好ましい。前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量が前記上限を超えると、離型性は向上するものの洗浄性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満であると、洗浄性は向上するものの離型性が低下する傾向にある。
また、本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記カルボン酸アミド化合物の含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して0.05~50質量%であることが好ましく、0.10~30質量%であることがより好ましく、0.15~20質量%であることがさらに好ましい。前記カルボン酸アミド化合物の含有量が前記上限を超えても、それ以上の離型性及び洗浄性の向上効果は期待できないために経済性が悪化する傾向にあり、他方、前記下限未満であると、離型性及び洗浄性が低下する傾向にある。
また、本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量と前記カルボン酸アミド化合物の含有量との質量比としては、75:25~99.95:0.05であることが好ましく、80:20~99.90:0.10であることがより好ましく、83:17~99.85:0.15であることがさらに好ましい。前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量に対する前記カルボン酸アミド化合物の含有量が前記上限を超えても、それ以上の離型性及び洗浄性の向上効果は期待できないために経済性が悪化する傾向にあり、他方、前記下限未満であると、離型性及び洗浄性が低下する傾向にある。
本発明の加硫ゴム用離型剤としては、水をさらに含有していてもよい。本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記のように、使用時に必要に応じて水で適宜希釈して用いることができる。前記水としては特に制限されず、精製水、滅菌水、天然水、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、本発明の加硫ゴム用離型剤としては、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物及び前記カルボン酸アミド化合物に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の成分をさらに含有していてもよい。
前記他の成分としては、石鹸等の界面活性剤;ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル等のシリコーン;ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等の防錆剤;鉱物油;植物油や、従来公知の離型剤成分が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明において、加硫ゴム用離型剤が前記他の成分をさらに含有する場合、その含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量及び前記カルボン酸アミド化合物の含有量の合計100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物及び前記カルボン酸アミド化合物の混合物をそのまま本発明の加硫ゴム用離型剤としてもよく、前記水及び必要に応じて前記他の成分をさらに混合して本発明の加硫ゴム用離型剤としてもよい。このような混合方法としては特に限定されない。
本発明の加硫ゴム用離型剤はまた、必要に応じて、使用時に低濃度となるように水で希釈し、離型剤溶液として用いることができる。本発明の加硫ゴム用離型剤は水に容易に溶解し、また、金型への付着性に優れるため、低濃度であっても優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる。このような離型剤溶液における前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量及び前記カルボン酸アミド化合物の含有量の合計としては、使用方法に応じて適宜調整されるため特に限定されないが、3~100質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがさらに好ましい。
本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、金型の加硫ゴム又は未加硫ゴムと接する部分に予め前記離型剤溶液を塗布する方法;未加硫ゴムホースの末端に前記離型剤溶液を塗布する方法;及びこれらの方法を組み合わせた方法等で使用することができる。本発明の加硫ゴム用離型剤においては、加硫中にゴムから滲み出る成分と混合されても優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができるため、金型に加硫ゴムを挿入して成型した後に引き抜く方法にも、前記金型に未加硫の原料ゴム組成物を挿入して加硫・成型した後に引き抜く方法にも、好適に用いることができる。
前記金型としては、鉄製、ステンレス製、ジェラルミン製等の金型が挙げられ、形状は特に制限されないが、本発明の加硫ゴム用離型剤は、加硫ゴムホースの成型に用いるマンドレルに適用する離型剤として好適に用いることができる。前記塗布の方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができ、スプレーガンを用いて吹き付ける方法(スプレー塗布)や刷毛で塗布する方法等が挙げられる。塗布量は、前記離型剤溶液の濃度、加硫ゴム又は未加硫ゴムの種類や挿入速度、金型の温度等によって適宜調整することができる。
前記加硫ゴムとしては、特に制限されず、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を加硫したものが挙げられる。本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを加硫した加硫ゴムに対して好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1 エチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物)
先ず、1Lのオートクレーブに原料としてのテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシアルキル)アルキレンジアミン)70.0gと触媒としての48質量%水酸化カリウム水溶液4.5gとを仕込み、反応装置内を窒素で十分に置換した後昇温し、減圧脱水した。温度が120℃に達したところでプロピレンオキサイド(PO’)584.0gの導入を開始し、120~150℃に保ちながら圧力0.5MPa未満で反応させた。プロピレンオキサイド(PO’)を全量導入後、圧力の低下がなくなるまで熟成させた。次いで、温度を120~150℃に保ったまま、これにエチレンオキサイド(EO’)63.2gを導入し、圧力0.5MPa未満で反応させた。エチレンオキサイド(EO’)を全量導入後、圧力の低下がなくなるまで熟成させた。その後冷却し、50℃にて99質量%酢酸を2.3g添加して触媒を中和し、目的の化合物であるエチレンジアミンの42モルプロピレンオキサイド-6モルエチレンオキサイド付加物(エチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物)を717.2g得た。
得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物は、エチレンジアミンのアミノ基の4つの水素原子に代えてアルキレンオキサイド鎖(アルキレンオキサイド鎖:-PO付加(PO付加モル数:42モル/4鎖(平均付加モル数:10.5モル/鎖))-EO付加(EO付加モル数:6モル/4鎖(平均付加モル数:1.5モル/鎖))-水素原子;-PO-EOブロック付加)が付加してなる化合物である。
(合成例2 エチレンジアミン-(48PO-16EO)付加物)
原料、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO’、EO’、及び99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ下記の表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にしてエチレンジアミンの48モルプロピレンオキサイド-16モルエチレンオキサイド付加物(エチレンジアミン-(48PO-16EO)付加物)を905.9g得た。得られたエチレンジアミン-(48PO-16EO)付加物は、エチレンジアミンのアミノ基の4つの水素原子に代えてアルキレンオキサイド鎖(アルキレンオキサイド鎖:-PO付加(PO付加モル数:48モル/4鎖(平均付加モル数:12モル/鎖))-EO付加(EO付加モル数:16モル/4鎖(平均付加モル数:4モル/鎖))-水素原子;-PO-EOブロック付加)が付加してなる化合物である。
(合成例3 ジエチレントリアミン-(55PO-10EO)付加物)
原料としてジエチレントリアミンの5モルプロピレンオキサイド付加物(ジエチレントリアミン(5PO)付加物:ジエチレントリアミンのアミノ基の5つの水素原子に代えてプロピレンオキサイド鎖(-PO単独付加(PO付加モル数:5モル/5鎖(平均付加モル数:1モル/鎖))-水素原子)が付加してなる化合物)を用い、原料、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO’、EO’、及び99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ下記の表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にしてジエチレントリアミンの55モルプロピレンオキサイド-10モルエチレンオキサイド付加物(ジエチレントリアミン-(55PO-10EO)付加物)を724.8g得た。得られたジエチレントリアミン-(55PO-10EO)付加物は、ジエチレントリアミンのアミノ基の5つの水素原子に代えてアルキレンオキサイド鎖(アルキレンオキサイド鎖:-PO付加(PO付加モル数:55モル/5鎖(平均付加モル数:11モル/鎖))-EO付加(EO付加モル数:10モル/5鎖(平均付加モル数:2モル/鎖))-水素原子;-PO-EOブロック付加)が付加してなる化合物である。
(合成例4 (10EO-65PO)-グリコール)
原料としてトリプロピレングリコールを用い、原料、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO’、EO’、及び99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ下記の表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして10モルポリオキシエチレン-65モルポリオキシプロピレングリコール((10EO-65PO)-グリコール)を660.8g得た。得られた(10EO-65PO)-グリコールは、トリプロピレングリコールの2つの水酸基の水素原子に代えてアルキレンオキサイド鎖(アルキレンオキサイド鎖:-PO付加(PO付加モル数:65モル/2鎖(平均付加モル数:32.5モル/鎖))-EO付加(EO付加モル数:10モル/2鎖(平均付加モル数:5モル/鎖))-水素原子;-PO-EOブロック付加)が付加してなる化合物である。
Figure 0007045272000008
(実施例1)
合成例1で得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物18質量部と、N-ラウロイルサルコシン0.2質量部と、水と、を合計100質量部となるように混合・撹拌し、加硫ゴム用離型剤を得た。配合の組成を下記の表2に示す。
(実施例2、5)
下記の表2に示す組成となるようにエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物、N-ラウロイルサルコシン、及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、各加硫ゴム用離型剤を得た。
(実施例3)
N-ラウロイルサルコシンに代えてN-オレオイルサルコシンを用い、下記の表2に示す組成となるようにエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物、N-オレオイルサルコシン、及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
(実施例4)
合成例1で得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物に代えて合成例2で得られたエチレンジアミン-(48PO-16EO)付加物を用い、下記の表2に示す組成となるようにエチレンジアミン-(48PO-16EO)付加物、N-ラウロイルサルコシン、及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
(実施例6)
合成例1で得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物に代えて合成例3で得られたジエチレントリアミン-(55PO-10EO)付加物を用い、N-ラウロイルサルコシンに代えてN-ラウロイルメチルタウリンを用い、下記の表2に示す組成となるようにジエチレントリアミン-(55PO-10EO)付加物、N-ラウロイルメチルタウリン、及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
(比較例1)
N-ラウロイルサルコシンを用いず、下記の表2に示す組成となるようにエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
(比較例2~4)
N-ラウロイルサルコシンに代えてラウリン酸(比較例2)、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(比較例3)、又はN-ラウロイルグルタミン酸(比較例4)を用い、下記の表2に示す組成となるように各成分を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、各加硫ゴム用離型剤を得た。
(比較例5)
合成例1で得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物に代えて合成例4で得られた(10EO-65PO)-グリコールを用い、N-ラウロイルサルコシンを用いず、下記の表2に示す組成となるように(10EO-65PO)-グリコール及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
(比較例6)
合成例1で得られたエチレンジアミン-(42PO-6EO)付加物に代えて合成例4で得られた(10EO-65PO)-グリコールを用い、下記の表2に示す組成となるように(10EO-65PO)-グリコール、N-ラウロイルサルコシン、及び水を混合・撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、加硫ゴム用離型剤を得た。
<離型剤の評価>
実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤について、それぞれ以下の方法で離型性評価及び洗浄性評価を実施した。
(離型性評価)
先ず、実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤に、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)の未加硫のゴムホース(直径:7.5mm×長さ:80mm)を、その先端から40mmの部位まで浸漬して取り出した。次いで、加硫ゴム用離型剤に浸漬した側の先端から40mmの部位まで前記ゴムホースの内側に60℃に加温した円柱状のステンレス棒(SUS304製、直径:8.0mm×長さ:300mm)を挿し込んで試料とした。これを乾燥機に入れて180℃で14分間加熱して加硫処理を行い、その後、乾燥機の温度を100℃に降温して、100℃で5分間冷却した。冷却後の試料を乾燥機から取り出した後、ステンレス棒の表面温度が100℃以下であることを表面温度計で確認し、ステンレス棒を固定してゴムホース引き抜き、その際のゴムホースとステンレス棒との抵抗を、下記の基準:
4:スムーズに抜ける
3:抜ける
2:抵抗は強いが抜ける
1:抜けない
に従って点数をつけた。評価は10サンプルについて行い、その平均を評価結果(点)とした。なお、評価結果が3.0点以上で、離型性に優れた加硫ゴム用離型剤であると認められる。
(洗浄性評価)
先ず、実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤を0.3gずつ、EPDM板(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)の未加硫のゴム片に塗布した後、乾熱乾燥機により180℃で10分加熱乾燥し、空冷後に質量(w1)を測定し、これを試験片とした。次いで、500mLビーカーに洗浄液(水道水、40℃)を500mL入れ、撹拌数250rpm(プロペラ型、4枚羽根)で撹拌させながら、前記試験片を洗浄液に10分間浸漬した。浸漬後の試験片を風乾させた後、質量(w2)を測定した。試験片の質量変化がなくなるまで前記浸漬及び風乾を繰り返して洗浄し、質量(W、ブランク質量)を測定した。測定された各質量(w1、w2、及びW)から、洗浄後の離型剤の洗浄率を下記計算式:
洗浄率(%)=(w1-w2)×100/(w1-W)
により算出した。なお、洗浄率が75%以上で、洗浄性に優れた加硫ゴム用離型剤であると認められる。
実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤について上記の離型性評価及び洗浄性評価を実施して得られた結果をそれぞれ各加硫ゴム用離型剤の組成と併せて下記の表2に示す。なお、比較例5の加硫ゴム用離型剤については、洗浄性評価を実施したところ加硫ゴム用離型剤の成分が水によって膨潤し、洗浄によりかえって重量が増加するという結果になった。
Figure 0007045272000009
以上説明したように、本発明によれば、優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる加硫ゴム用離型剤を提供することが可能となる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0007045272000010
    [式(1)中、AO及びAOは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、a及びaはそれぞれ前記アルキレンオキシ基AO及びAOの平均付加モル数であって、それぞれ独立に、1~40の数を示し、b及びbはそれぞれ独立に1又は2を示し、c及びcはそれぞれ独立に0又は1を示し、b、b、c、及びcの合計は4であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(11):
    Figure 0007045272000011
    [式(11)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、aは前記アルキレンオキシ基AOの平均付加モル数であって1~40の数を示す。]
    で表される基を示し、dは0又は1又は2を示す。]
    で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物と、
    下記一般式(2):
    Figure 0007045272000012
    [式(2)中、Rは炭素数8~22の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~2のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは、下記一般式(21)~(2):
    -COOM …(21)
    -SOM …(22
    式(21)~(2)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。]
    のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示す。]
    で表されるカルボン酸アミド化合物と、
    を含有することを特徴とする加硫ゴム用離型剤。
  2. 前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量が3~99.95質量%であり、かつ、前記カルボン酸アミド化合物の含有量が0.05~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の加硫ゴム用離型剤。
  3. 前記一般式(1)中のAO、AO、及びAOが、それぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加硫ゴム用離型剤。
  4. 前記一般式(2)中のRが、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基であることを特徴とする請求項1~3のうちのうずれか一項に記載の加硫ゴム用離型剤。
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