JP7043308B2 - 太陽電池の製造方法、および、太陽電池 - Google Patents

太陽電池の製造方法、および、太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法、および、裏面電極型の太陽電池に関する。
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。
裏面電極型の太陽電池では、高性能化のために、裏面側に、p型半導体層およびn型半導体層等の半導体層パターンを高精度に形成する必要がある。半導体層パターンを高精度に形成する方法として、マスクを利用したCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相堆積)法またはPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相堆積)法が一般的に知られている。CVD法またはPVD法で利用されるマスクとしては、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスク、または、メタルマスクが知られている。
特許文献1には、メタルマスクを利用したCVD法により、半導体層パターンを形成する方法が記載されている。
特開2009-200267号公報
裏面電極型の太陽電池では、短絡を回避するため、p型半導体層からキャリアを回収する電極とn型半導体層からキャリアを回収する電極とを分離する。そのため、これらの電極の間において、半導体層が露出してしまい、太陽電池の信頼性が低下する可能性がある。
この点に関し、特許文献1に記載の太陽電池では、絶縁層が、p型半導体層の端部上からn型半導体層の端部上まで覆うので、すなわち、絶縁層が、電極の間において半導体層を覆うので、太陽電池の信頼性の低下が抑制されると推測される。
しかしながら、CVD法またはPVD法による半導体層パターンの形成方法では、真空環境下で半導体層パターンの形成を行うため、太陽電池の製造が煩雑となる。更に、フォトリソグラフィ技術を用いてマスクを形成する場合、塗布、露光、現像等を行う必要があるため、太陽電池の製造が更に煩雑となる。
本発明は、太陽電池の信頼性の低下を抑制しつつ、太陽電池の製造の簡易化が可能な太陽電池の製造方法、および、太陽電池を提供することを目的とする。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、2つの主面を有する半導体基板と、半導体基板の一方の主面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、第1導電型半導体層に対応する第1電極層および第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、半導体基板の一方の主面側の一部に、第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、半導体基板の一方の主面側の他の一部に、第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、第1導電型半導体層上に第1電極層を形成し、第2導電型半導体層上に第2電極層を形成する電極層形成工程とを含み、第2導電型半導体層形成工程では、第2導電型半導体材料、絶縁性樹脂および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させることにより、第2導電型半導体層を形成し、電極層形成工程では、第2導電型半導体層の周縁の一部において乖離するように、第1電極層および第2電極層を形成する。
本発明に係る太陽電池は、2つの主面を有する半導体基板と、半導体基板の一方の主面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、第1導電型半導体層に対応する第1電極層および第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、第2導電型半導体層は、周縁に、印刷材料における絶縁性樹脂が偏在して形成された絶縁層を有し、第1電極層と第2電極層とは、絶縁層の一部において乖離する。
本発明によれば、信頼性が高い太陽電池が簡易に製造される。
本実施形態に係る太陽電池モジュールの一例を示す側面図である。 本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。 図2の太陽電池におけるIII-III線断面図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層および第1導電型半導体層の形成工程の一部を示す図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層および第1導電型半導体層の形成工程の他の一部を示す図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層および第2導電型半導体層の形成工程の一部を示す図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層および第2導電型半導体層の形成工程の他の一部を示す図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層の形成工程の一部を示す図である。 本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層の形成工程の他の一部を示す図である。 本実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図である。 本実施形態の変形例に係る他の太陽電池の断面図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングおよび部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
(太陽電池モジュール)
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの一例を示す側面図である。図1に示すように、太陽電池モジュール100は、二次元状に配列された複数の太陽電池セル1を備える。
太陽電池セル1は、配線部材2によって直列および/または並列に接続される。具体的には、配線部材2は、太陽電池セル1の電極におけるバスバー部(後述)に接続される。配線部材2は、例えば、タブ等の公知のインターコネクタである。
太陽電池セル1および配線部材2は、受光面保護部材3と裏面保護部材4とによって挟み込まれている。受光面保護部材3と裏面保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池セル1および配線部材2は封止される。受光面保護部材3は、例えばガラス基板であり、裏面保護部材4は、ガラス基板、金属板、または金属層と樹脂層とで多層化した複合シートが挙げられる。封止材5は、例えば透明樹脂である。
以下、太陽電池セル(以下、太陽電池という。)1について詳細に説明する。
(太陽電池)
図2は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図2に示す太陽電池1は、裏面電極型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1導電型領域7と第2導電型領域8とを有する。
第1導電型領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿ってX方向(第2方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、X方向に交差するY方向(第1方向)に延在する。
同様に、第2導電型領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿ってX方向(第2方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、Y方向(第1方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、Y方向(第1方向)に延在する帯状をなしており、X方向(第2方向)に交互に並んでいる。
なお、第1導電型領域7および第2導電型領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
図3は、図2の太陽電池におけるIII-III線断面図である。図3に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13と反射防止層15とを備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(主に、第1導電型領域7)に順に積層された真性半導体層23と、第1導電型半導体層25と、第1電極層27とを備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2導電型領域8)に順に積層された真性半導体層33と、第2導電型半導体層35と、第2電極層37とを備える。
<半導体基板>
半導体基板11としては、導電型単結晶シリコン基板、例えばn型単結晶シリコン基板またはp型単結晶シリコン基板が用いられる。これにより、高い光電変換効率が実現する。
半導体基板11は、n型単結晶シリコン基板であると好ましい。これにより、結晶シリコン基板内のキャリア寿命が長くなる。これは、p型単結晶シリコン基板では、光照射によってp型ドーパントであるB(ホウ素)が影響して再結合中心となるLID(Light Induced Degradation)が起こる場合があるが、n型単結晶シリコン基板ではLIDをより抑制するためである。
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
さらに、導電型半導体層を印刷法(詳細は後述)にて形成し絶縁性樹脂の染み出しを利用する場合、ピラミッド構造を有している方が毛細管現象により平坦な表面に比べて染み出しやすい。
半導体基板11の厚さは、50μm以上300μm以下であると好ましく、60μm以上230μm以下であるとより好ましく、70μm以上210μm以下であると更に好ましい。
半導体基板11の膜厚が上記の上限値以下であると、シリコンの使用量が減少するため、シリコン基板が確保し易くなり、低コスト化が図れる。更に、シリコン基板内で光励起により生成された正孔と電子とを裏面側のみで回収するバックコンタクト構造では、各励起子の自由行程の観点からも、半導体基板11の膜厚が上記の上限値以下であると好ましい。
半導体基板11の膜厚が上記の下限値以上であると、適切な機械的強度が得られ、また外光(太陽光)が十分に吸収され、適切な短絡電流密度が得られる。
半導体基板11の主面にテクスチャ構造が形成されている場合、半導体基板11の膜厚は、受光面側および裏面側のそれぞれの凹凸構造における凸の頂点を結んだ直線間の距離で表される。
なお、半導体基板11として、導電型多結晶シリコン基板、例えばn型多結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板を用いてもよい。この場合、より安価に太陽電池が製造される。
<反射防止層>
反射防止層15は、半導体基板11の受光面側に真性半導体層13を介して形成されている。反射防止層15は、半導体基板11の受光面側に入射する太陽光の反射を抑制する機能を有する。
反射防止層15の材料としては、太陽光を透過させる透光性を有する材料であれば特に限定されず、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、または酸化チタンが挙げられる。反射防止層15の屈折率および膜厚は、太陽電池モジュールの光学設計に基づいて決定されればよい。
真性半導体層13は、真性シリコン系層で形成される。真性半導体層13は、パッシベーション層として機能し、半導体基板11におけるキャリアの再結合を抑制する。
本実施形態では、受光面側に電極が形成されていないため(裏面電極型)、太陽光の受光率が高く、光電変換効率が向上する。
<第1導電型半導体層および第2導電型半導体層>
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の裏面側の一部(主に、第1導電型領域7)に真性半導体層(第1真性半導体層)23を介して形成されており、第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2導電型領域8)に真性半導体層(第2真性半導体層)33を介して形成されている。これにより、第1導電型半導体層25および真性半導体層23と、第2導電型半導体層35および真性半導体層33とは、Y方向(第1方向)に延在する帯状をなしており、X方向(第2方向)に交互に並んでいる。これにより、半導体基板11で生じた光励起キャリアは、各導電型半導体層を介して効率よく回収される。
第2導電型半導体層35(絶縁層35Iを含む)および真性半導体層33の一部は、第1導電型半導体層25および真性半導体層23の一部と重なり合っている。これにより、製造誤差を考慮しても半導体層が形成されない領域が存在することがなく、光電変換効率が高まる。
第1導電型半導体層25は、第1導電型シリコン系層、例えばp型シリコン系層で形成される。第2導電型半導体層35は、第1導電型と異なる第2導電型の半導体材料、例えばn型半導体材料で形成される。なお、第1導電型半導体層25がn型シリコン系層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。
第1導電型半導体層25を形成するp型シリコン系層およびn型シリコン系層は、非晶質シリコン層、または、非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む微結晶シリコン層で形成される。なお、不純物拡散の抑制または直列抵抗の抑制の観点から、p型シリコン系層およびn型シリコン系層は、非晶質シリコンで形成されると好ましい。p型シリコン系層のドーパント不純物としては、B(ホウ素)が好適に用いられ、n型シリコン系層のドーパント不純物としては、P(リン)が好適に用いられる。
なお、詳細は後述するが、n型シリコン系層を第1導電型半導体層25として用いる場合、アルカリ耐性の観点から、n型酸化シリコン系層が用いられてもよい。
また、第2導電型半導体層35を形成するp型半導体材料およびn型半導体材料についての詳細も、後述する。
第1導電型半導体層25の膜厚は、特に限定されないが、後述するようにCVD法またはPVD法が用いられる場合、2nm以上20nm以下であると好ましい。
一方、第2導電型半導体層35の膜厚は、後述するように印刷法が用いられるため、第1導電型半導体層25および真性半導体層23,33の膜厚よりも厚い。第2導電型半導体層35の膜厚は、10nm以上100nm以下であると好ましく、15nm以上50nm以下であると更に好ましい。
本実施形態では、詳細は後述するが、真性半導体層33は、第2導電型半導体層35および絶縁層35Iから露出した部分をエッチングにより除去することにより形成される。そのため、真性半導体層33の側端は、第2導電型半導体層35における絶縁層35Iの側端と揃っている。そのため、真性半導体層33と第2導電型半導体層35のエッチングレートが近い場合であっても、少なくとも真性半導体層33より第2導電型半導体層35の膜厚が厚いことにより、第2導電型半導体が消失するのを防ぐことができる。
第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の幅は、50μm以上3000μm以下であると好ましく、80μm以上500μm以下であるとより好ましい。第2導電型半導体層35同士の乖離間隔は、3000μm以下であると好ましく、1000μm以下であるとより好ましい。
ところで、半導体基板11で生成した光励起子が、第1導電型半導体層25または第2導電型半導体層35を介して取り出される場合、正孔の有効質量は電子の有効質量よりも大きい。そのため、輸送損を低減させる観点から、p型半導体層の幅がn型半導体層の幅よりも細いと好ましい。例えば、p型半導体層の幅が、n型半導体層の幅の0.5倍以上0.9倍以下であると好ましく、n型半導体層の幅の0.6倍以上0.8倍以下であるとより好ましい。
なお、半導体層の幅、および、後述する電極層の幅は、特に断りがない限り、パターン化された各層の一部分の長さで、パターン化により、例えば帯状になった一部分の延び方向と直交する方向の長さである。
<絶縁層>
第2導電型半導体層35の周縁には、絶縁層35Iが形成される。絶縁層35Iは、第2導電型半導体層35の印刷材料における絶縁性樹脂が偏在して形成される(詳細は後述する)。
<真性半導体層>
真性半導体層23,33は、真性シリコン系層で形成される。真性半導体層23,33は、パッシベーション層として機能し、半導体基板11におけるキャリアの再結合を抑制する。また、真性半導体層23は、第1導電型半導体層25から半導体基板11への不純物の拡散を抑制し、真性半導体層33は、第2導電型半導体層35から半導体基板11への不純物の拡散を抑制する。
なお、「真性(i型)」との用語は、導電型不純物を含まない完全に真性であるものに限られず、シリコン系層が真性層として機能し得る範囲で微量のn型不純物またはp型不純物を含む「弱n型」または「弱p型」の実質的に真性な層も包含する。
真性半導体層23,33としては、特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜(a-Si薄膜)であると好ましく、シリコンと水素とを含む水素化非晶質シリコン系薄膜(a-Si:H薄膜)であるとより好ましい。また、真性半導体層23,33は、水素化酸化ケイ素系薄膜であってもよい。
真性半導体層23,33の膜厚は、特に限定されないが、2nm以上20nm以下であると好ましい。膜厚が2nm以上であると、パッシベーション層としての効果が高まり、膜厚が20nm以下であると、高抵抗化により生じる変換特性の低下が抑制される。
本実施形態では、後述するように、真性半導体層33は、第2導電型半導体層35および絶縁層35Iから露出した部分をエッチングにより除去することにより形成される。そのため、真性半導体層33の側端は、第2導電型半導体層35における絶縁層35Iの側端と揃っている。
真性半導体層33の露出した部分をエッチングにより除去する場合、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の材料はエッチング液への耐性を有していることが好ましい。一般的に真性半導体である非晶質シリコンを用いる場合、アルカリ溶液によってエッチングされる。この場合、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の材料として、アルカリ耐性を有する材料が用いられると好ましい。アルカリ耐性を有する材料としては、p型である場合、ボロン添加非晶質シリコン、酸化シリコン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、PEDOT-PSS等が挙げられる。またn型の材料としては、酸化シリコン、酸化チタン、フッ化リチウム等が挙げられる。
<第1電極層および第2電極層>
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に形成されており、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に形成されている。これにより、第1電極層27および第2電極層37は、Y方向(第1方向)に延在する帯状をなしており、X方向(第2方向)に交互に並んでいる。
第1電極層27は、第1導電型半導体層25で回収されるキャリアを導く輸送層として機能し、第2電極層37は、第2導電型半導体層35で回収されるキャリアを導く輸送層として機能する。
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
このように、金属電極層29,39と第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35との間に透明電極層28,38が設けられることにより、金属電極層29,39と第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35との電気的接合が向上し、金属電極層29,39から第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35への原子拡散が抑制される。
なお、第1電極層27は、透明電極層28および金属電極層29のうちの何れか一方のみで形成されてもよい。同様に、第2電極層37は、透明電極層38および金属電極層39のうちの何れか一方のみで形成されてもよい。
第1電極層27と第2電極層37と(すなわち、透明電極層28と透明電極層38と、または、金属電極層29と金属電極層39と)は、第2導電型半導体層35の周縁の一部、すなわち絶縁層35Iにおいて乖離する。これにより、第1電極層と第2電極層との間において、半導体層が絶縁層で被覆され、露出しないので、太陽電池1の信頼性が高まる。
第1電極層27の幅(すなわち、透明電極層28の幅および金属電極層29の幅)は、第1導電型半導体層25の幅と略同一であると好ましい。なお、第1電極層27の幅は、第1導電型半導体層25の幅よりも狭くてもよい。また、第1電極層27と第2電極層37との間のリークが防止されていれば、第1電極層27の幅は、第1導電型半導体層25の幅よりも広くてもよい。
同様に、第2電極層37の幅(すなわち、透明電極層38の幅および金属電極層39の幅)は、第2導電型半導体層35の幅と略同一であると好ましい。なお、第2電極層37の幅は、第2導電型半導体層35の幅よりも狭くてもよい。また、第1電極層27と第2電極層37との間のリークが防止されていれば、第2電極層37の幅は、第2導電型半導体層35の幅よりも広くてもよい。
<<透明電極層>>
透明電極層28,38は、透明導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、透明導電性金属酸化物、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、およびそれらの複合酸化物等が用いられる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。更に、信頼性またはより高い導電率を確保するため、インジウム酸化物にドーパントを添加すると好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、またはS等が挙げられる。
透明電極層の厚みは、50nm以上200nm以下であると好ましい。
<<金属電極層>>
金属電極層29,39は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの合金が用いられる。
また、金属電極層の膜厚は、20μm以上80μm以下であると好ましい。
(太陽電池の製造方法)
次に、図4A~図4Fを参照して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。図4Aおよび図4Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層(第1真性半導体層)および第1導電型半導体層の形成工程を示す図であり、図4Cおよび図4Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層(第2真性半導体層)および第2導電型半導体層の形成工程を示す図であり、図4Eおよび図4Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層の形成工程を示す図である。
<真性半導体層(第1真性半導体層)および第1導電型半導体層の形成工程>
まず、図4Aに示すように、少なくとも裏面側に凹凸構造を有する半導体基板(例えば、n型単結晶シリコン基板)11の裏面側の全面に真性半導体材料膜(例えば、真性シリコン系層)23Zを積層する。本実施形態では、このとき、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層(例えば、真性シリコン系層)13を積層する。
その後、真性半導体材料膜23Z上に、すなわち半導体基板11の裏面側の全面に、第1導電型半導体材料膜(例えば、p型シリコン系層)25Zを積層する。
真性半導体材料膜23Z、第1導電型半導体材料膜25Z、および真性半導体層13の形成方法は特に限定されないが、CVD法またはPVD法を用いると好ましく、例えばプラズマCVD法を用いると好ましい。プラズマCVD法を用いると、半導体基板11への不純物の拡散が抑制され、半導体基板11の表面のパッシベーション効果が有効に得られる。また、プラズマCVD法によれば、真性半導体層23,13の膜中水素濃度を膜厚方向で変化させることにより、キャリア回収において有効なエネルギーギャッププロファイルを形成できる。
プラズマCVD法による製膜条件としては、例えば、基板温度100℃以上300℃以下、圧力20Pa以上2600Pa以下、高周波パワー密度0.003W/cm以上0.5W/cmが好適に用いられる。材料ガスとしては、例えばSiH、Si等のシリコン含有ガス、またはこれらのシリコン系ガスとHとの混合ガスが好適に用いられる。
第1導電型半導体材料膜25Zのドーパント添加ガスとしては、p型の場合、例えばBまたはB(CHが好適に用いられ、n型の場合、例えばPHが好適に用いられる。なお、B(ホウ素)、P(リン)等の不純物の添加量は微量でよいため、ドーパントガスを原料ガスで希釈させた混合ガスが用いられてもよい。
なお、上記の材料ガスに、CH、NH、GeH等の異種元素を含むガスを添加して、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、または、シリコンゲルマニウム等のシリコン合金を形成することにより、適宜、薄膜のエネルギーギャップを変更してもよい。
また、光の透過性を向上させるために、上記の材料ガスに、例えば酸素または炭素といった不純物を微量添加してもよい。その場合、例えば、COまたはCHといったガスをCVD製膜の際に導入する。
次に、第1導電型半導体材料膜25Zおよび真性半導体材料膜23Zの一部をエッチングにより除去し、半導体層のパターニングを行う。これにより、図4Bに示すように、第1導電型半導体層25および真性半導体層(第1真性半導体層)23を形成するとともに、半導体基板11が露出した第1導電型半導体層25の非形成領域を形成する。
第1導電型半導体層25および真性半導体層23の形成方法(パターニング)は特に限定されないが、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いると好ましい。フォトリソグラフィ技術によるマスクを用いたエッチング法によれば、高精度なパターニングが可能である。
以上の真性半導体層および第1導電型半導体層の形成工程では、CVD法またはPVD法により半導体基板の裏面側の全面に半導体材料膜を製膜した後に、マスクを用いてエッチングを行うことにより半導体層のパターニングを行ったが、CVD法またはPVD法により製膜する際に、マスクを利用して半導体層の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
<真性半導体層(第2真性半導体層)および第2導電型半導体層形成工程>
次に、図4Cに示すように、第1導電型半導体層25、および第1導電型半導体層25の非形成領域における半導体基板11上に、すなわち半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体材料膜(例えば、真性シリコン系層)33Zを積層する。
真性半導体材料膜33Zの形成方法は特に限定されないが、上述した真性半導体材料膜23Zおよび第1導電型半導体材料膜25Zと同様に、CVD法またはPVD法を用いると好ましく、例えばプラズマCVD法を用いると好ましい。
その後、真性半導体材料膜33Z上の、第1導電型半導体層25の非形成領域に、第2導電型半導体層(例えば、n型シリコン系層)35を積層する。
第2導電型半導体層35は、印刷材料(例えば、インク)を印刷することにより形成される。第2導電型半導体層35の形成方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、グラビアコーティング法、またはディスペンサー法等が挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷法が好ましい。スクリーン印刷法によれば、インクがスクリーン印刷用のスクリーン版を通過する時のせん断力によって、後述する半導体材料が半導体層パターンの厚み方向(基板の平均面に対して垂直方向。平均面とは、基板のテクスチャ構造に依存しない基板面をさす)に配向する。
印刷材料は、絶縁性樹脂中に、半導体特性を示す半導体材料を含む。印刷材料は、粘度または塗工性の調整のために、溶媒、レベリング剤、消泡剤等を含んでもよい。
p型の半導体材料としては、有機化合物であれば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレン硫化物(PEDOT-PSS)等のポリチオフェン類が代表的な例として挙げられる。また、p型の半導体材料として、無機化合物であれば、酸化銅、酸化ニッケル、および酸化モリブデン等の金属酸化物、または、チオシアン酸銅、銅-インジウム-ガリウム-硫黄、および銅-インジウム-ガリウム-セレン等の金属化合物が挙げられる。
n型の半導体材料としては、無機化合物であれば、酸化チタンおよび酸化亜鉛等の金属酸化物、または、フッ化リチウムが挙げられる。
なお、無機化合物による半導体材料の場合、樹脂内に分散させる観点から、粒子状であることが好ましく、粒子径は、0.001μm以上10.00μm以下であると好ましく、0.05μm以上2.00μm以下であるとより好ましい。粒子径が上記上限値より大きいと、粒子間の接触面積が小さくなり、抵抗による性能低下を招く。
また、半導体材料の形状は、特に限定されず、上述のような粒子状であっても構わないし、液体状であっても構わない。
絶縁性樹脂としては、マトリクス樹脂等が挙げられる。詳説すると、絶縁性樹脂としては、高分子化合物であると好ましく、特に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂であると好ましく、ポリエステルまたはシリコーン系の樹脂等が代表例である。
ここで、絶縁性樹脂として、熱可塑性樹脂、特にガラス転移温度が150℃以下の樹脂を用いない。これは、太陽電池またはモジュール化のプロセスにおける加熱処理時に、樹脂が軟化して流れてしまうおそれがあるためである。また、水酸化ナトリウム水溶液などアルカリ溶液を用いて真性半導体をエッチングする場合、アルカリ耐性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。アルカリ耐性の高い材料として、ウレタン樹脂(ポリエステル系ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等)、ウレタン結合を有するフッ素系樹脂、エポキシ樹脂(ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、アニリン誘導体エポキシ樹脂等)、シリコーンオイル(ジフェニルシロキサン等)が挙げられる。
印刷材料における半導体材料の含有量は、絶縁性樹脂を100とした重量部で表すと、120重量部以上180重量部以下であると好ましく、140重量部以上170重量部以下であると更に好ましい。この比率によれば、第2導電型半導体層35からの樹脂の染み出しが適度に広がり、電極形成後に両極電極間の短絡を防ぐことができる(詳細は後述する)。
絶縁性樹脂中の半導体材料の分散度は、例えばスクリーン印刷のスクリーンを通過できないような凝集体が存在しない程度であればよい。
印刷材料の粘度は、印刷時の広がりおよび擦れ抑制の観点から、10ポイズ以上1000ポイズ以下(すなわち、1Pa・s以上100Pa・s以下)であると好ましく、2000ポイズ以上6000ポイズ以下(すなわち、200Pa・s以上600Pa・s以下)であるとより好ましい。
更に、印刷材料は、チキソトロピー性を有すると好ましい。
次に、第2導電型半導体層35の印刷後、加熱処理または紫外線照射処理により、第2導電型半導体層35における絶縁性樹脂を硬化させる。このとき、絶縁性樹脂が第2導電型半導体層35の周縁に染み出し、第2導電型半導体層35の周縁に絶縁層35Iが形成される。
次に、第2導電型半導体層35および絶縁層35Iから露出した真性半導体材料膜33Zをエッチングにより除去し、図4Dに示すように、真性半導体層33を形成する。
真性半導体層33の形成方法(パターニング)は特に限定されないが、上述した第1導電型半導体層25および真性半導体層23と同様に、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いると好ましい。
このとき、真性半導体層33のパターニングに、例えば、アルカリ性のエッチング溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を使用する場合、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35がアルカリ耐性を有すると、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35がエッチングのストップ層として機能し、真性半導体材料膜33Zのエッチングが容易となる。
<電極層の形成工程>
次に、図4Eに示すように、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極材料膜28Zを積層する。透明電極材料膜28Zの形成方法としては、例えば、スパッタリング法等のPVD法、または、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用したMOCVD法等が用いられる。
その後、図4Fに示すように、第2導電型半導体層35の周縁の一部、すなわち絶縁層35Iにおいて乖離するように、透明電極材料膜28Zの一部をエッチングにより除去し、第1導電型半導体層25上に透明電極層28を形成し、第2導電型半導体層35上に透明電極層38を形成する。
透明電極層28,38の形成方法(パターニング)は特に限定されないが、上述した第1導電型半導体層25および真性半導体層23,33と同様に、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いると好ましい。或いは、透明電極層28,38は、レーザ法を用いて切断されてもよい。
次に、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成する。金属電極層29,39の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷法、メッキ法、導線接着法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタリング法等が用いられる。特に、Agペーストを用いたスクリーン印刷法、銅メッキを用いたメッキ法が好ましい。
このとき、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に反射防止層15を形成してもよい(図示省略)。反射防止層15の形成方法は特に限定されないが、塗布法を用いると好ましい。例えば、上述した酸化亜鉛または酸化チタン等の酸化物のナノ粒子を分散させた樹脂材料を、真性半導体層13上に塗布することにより、反射防止層15を形成する。
なお、半導体基板11に、真性半導体層23,13、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35、第1電極層27および第2電極層37、および、反射防止層15を積層させた段階で、各接合界面のパッシベーション、半導体層およびその界面における欠陥準位の発生抑制、透明電極層における透明導電性酸化物の結晶化を目的として、アニール処理を施す。
アニール処理としては、例えば、各層を配置した半導体基板11を150℃以上200℃以下に過熱したオーブンに投入して加熱する加熱処理が挙げられる。この場合、オーブン内の雰囲気は、大気でも構わないが、水素または窒素を用いることで、より効果的なアニール処理が行える。また、アニール処理は、各層を配置した半導体基板11に対して赤外線ヒーターを用いて赤外線を照射させるRTA(Rapid Thermal Annealing)処理であってもよい。
以上の工程により、本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が完成する。
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、印刷法を用いて第2導電型半導体層35を形成する。そのため、真空環境下で半導体層パターンの形成を行うCVD法またはPVD法による半導体層パターンの形成方法と比較して、太陽電池1の製造を簡易化できる。更に、印刷法を用いたパターン化は、CVD法またはPVD法においてフォトリソグラフィ技術を用いてマスクを形成する場合と比較して、レジストコート、露光、現像、レジスト剥離等のプロセスが不要であり、太陽電池1の製造を更に簡易化できる。
ここで、本願発明者らは、半導体層の印刷材料に絶縁性樹脂を含ませると、印刷材料が硬化する際に、絶縁性樹脂が半導体層の周縁に染み出し、半導体層の周縁に絶縁層が形成されることを見出した。
本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第2導電型半導体層35の印刷材料が絶縁性樹脂を含み、電極層層形成工程において、第2導電型半導体層35の周縁、すなわち絶縁層35Iにおいて乖離するように、第1電極層27および第2電極層37を形成する。これにより、第1電極層27と第2電極層37との間において、半導体層が絶縁層35Iで被覆され、露出しないので、太陽電池1の信頼性が高まる。
また、第1電極層27および第2電極層37のパターニングをレーザを用いて行う場合には、絶縁層35Iが保護層となり、レーザによる半導体層のダメージを低減できる。
ここで、従来、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とを重ねると、製造誤差を考慮しても半導体層が形成されない領域が存在することがなく、光電変換効率の低下が抑制される。しかしながら、第1導電型半導体層から第2電極層への電流リーク、または、第2導電型半導体層から第1電極層への電流リークが増大する可能性がある。
この点に関し、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1導電型半導体層25と第2電極層37との間に、かつ、第2導電型半導体層35と第1電極層27との間に、絶縁層35Iが介在する。これにより、第1導電型半導体層25から第2電極層37への電流リーク、および、第2導電型半導体層35から第1電極層27への電流リークが抑制され、太陽電池1の高性能化が可能である。
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、太陽電池1の信頼性の低下を抑制しつつ、太陽電池1の製造の簡易化が可能である。その結果、製造コストを削減できる。
ところで、特許文献1に記載の太陽電池では、絶縁層が、p型半導体層の端部上からn型半導体層の端部上まで覆い、電極層は絶縁層上において乖離する。
これに対して、本実施形態の太陽電池の製造方法によって製造された太陽電池1では、第2導電型半導体層35は、周縁に、印刷材料における絶縁性樹脂が偏在して形成された絶縁層35Iを有し、第1電極層27と第2電極層37とは、絶縁層35Iの一部において乖離する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、第1導電型半導体層形成工程において、第1導電型半導体層25とともに真性半導体層23をもエッチング除去した。しかし、本発明はこれに限定されず、図5に示すように、第1導電型半導体層形成工程において、真性半導体層23をエッチング除去せず、半導体基板11の表面を露出させないようにしてもよい。例えば、CVD法、特にプラズマCVD法を用いたプラズマエッチングによれば、第1導電型半導体層25のみを選択的にエッチングし、真性半導体層23を残すことが可能である。
なお、図5に示すように、第1導電型半導体層形成工程において、真性半導体層23をエッチング除去せず、半導体基板11の表面を露出させない場合、図6に示すように、第2導電型半導体層35は、第1導電型半導体層25と乖離してもよい。この場合、第2導電型半導体層形成工程において、第2導電型半導体層35の印刷材料が硬化する際に、第2導電型半導体層35の周縁に、すなわち第2導電型半導体層35と第1導電型半導体層25との隙間に、絶縁性樹脂材料が染み出し、この隙間に絶縁層35Iが形成される。
また、上述した実施形態では、第2導電型半導体層35の形成方法として印刷法が用いられたが、更に第1導電型半導体層25の形成方法にも印刷法が用いられてもよい。
例えば図6に示すように、半導体基板11の裏面側の全面に真性半導体層23を積層し、真性半導体層23上の一部に第1導電型半導体層25をパターン印刷し、その後、上述したように真性半導体層23上の他部に第2導電型半導体層35をパターン印刷する。第1導電型半導体層25の印刷方法および印刷材料(絶縁性樹脂、半導体材料等)は、第2導電型半導体層35の印刷方法および印刷材料と同様であればよい。
この場合、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の印刷材料が硬化する際に、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の周縁に、すなわち第2導電型半導体層35と第1導電型半導体層25との隙間に、絶縁性樹脂材料が染み出し、この隙間に絶縁層35Iが形成される。
この場合、真性半導体層23をエッチングによりパターン処理する必要がない。そのため、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の印刷材料は、アルカリ耐性を有さなくてもよい。
これによれば、太陽電池の製造を更に簡易化でき、製造コストを更に削減できる。
更には、真性半導体層23,33の形成方法にも印刷法が用いられてもよい。これによれば、太陽電池の製造を更に簡易化でき、製造コストを更に削減できる。
なお、上述した実施形態のように、第1導電型半導体層25の形成方法としてCVD法またはPVD法が用いられると、半導体層の品質が高まり、太陽電池の高性能化が可能である(実施例を参照)。
また、上述した実施形態では、図3に示すようにヘテロ接合型の太陽電池およびその製造方法を例示したが、本発明の特徴の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の形成方法は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池およびその製造方法に適用される。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下のとおり、図2および図3に示す太陽電池1を、図4A~図4Fに示す工程に従って作製した。
以下において、各半導体層の膜厚、および、印刷材料における半導体粒子の粒子径は、SEM(フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡S4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、10万倍の倍率で観察されることにより求められた。
<半導体基板>
まず、半導体基板11として、厚さ200μmの単結晶シリコン基板を採用した。単結晶シリコン基板の表面側をレジスト材料で保護し、単結晶シリコン基板の裏面側に異方性エッチングを行うことにより、裏面側にピラミッド型のテクスチャ構造が形成された半導体基板11を得た。
<真性半導体層および第1導電型半導体層の形成>
半導体基板11の表面側のレジスト材料を除去した後、半導体基板11をCVD装置へ導入し、半導体基板11の受光面側に真性半導体層13として水素化非晶質シリコン(a-p―Si:H)を8nmの膜厚で製膜した。また、半導体基板11の裏面側に真性半導体材料膜23Zとして水素化非晶質シリコンを8nmの膜厚で製膜した。
水素化非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度150℃、圧力120Pa、SiH/H流量比3/10、パワー密度0.011W/cmであった。
次に、CVD装置において、半導体基板11の裏面側の真性半導体材料膜23Z上に、第1導電型半導体材料膜25Zとして、p型非晶質シリコン系薄膜を4nmの膜厚で製膜した。p型非晶質シリコン系薄膜の製膜条件は、基板温度150℃、圧力60Pa、SiH/B流量比1/3、パワー密度0.01W/cmであった。なお、Bガス流量は、BがHにより5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
次に、フォトリソグラフィ法によるマスクを用いて、半導体基板11の裏面側の第1導電型半導体材料膜25Zおよび真性半導体材料膜23Zの一部を、HFおよびHNOの混酸によるエッチングで除去し、第1導電型半導体層25および真性半導体層23を形成するとともに、半導体基板11が露出した第1導電型半導体層25の非形成領域を形成した。
<真性半導体層および第2導電型半導体層の形成>
次に、CVD装置において、第1導電型半導体層25、および第1導電型半導体層25の非形成領域における半導体基板11上に、真性半導体材料膜33Zとして水素化非晶質シリコンを8nmの膜厚で製膜した。水素化非晶質シリコンの製膜条件は、上述同様であった。
次に、CVD装置から取り出し、真性半導体材料膜33Z上の、第1導電型半導体層25の非形成領域上に、印刷材料を印刷することにより、膜厚20nmの第2導電型半導体層35を形成した。印刷方法としては、スクリーン印刷法を用いた。スクリーン版の目開きは50μmであった。
印刷材料は、以下に示す(C-1)の絶縁性樹脂100重量部に対して、(C-2)を15重量部、(C-3)を0.4重量部加え、更に第2導電型半導体材料としてナノ粒子状のn型半導体材料(酸化チタン:TiO)を150重量部添加し、混錬して得た。得られた樹脂組成物の粘度は500ポイズであった。
(C-1)アルケニル基を有する化合物:アクリロイル基末端ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製アクリル変性シリコーンオイル)
(C-2)ヒドロシリル基を有する化合物:KF-99(信越化学工業(株)製メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ヒドロシリル基16.6mmol/g含有)
(C-3)ヒドロシリル化触媒:白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(3重量%白金イソプロパノール溶液)
その後、第2導電型半導体層35を150℃のオーブンで2時間加熱処理した。これにより、印刷材料における絶縁性材料が第2導電型半導体層35の周縁に染み出し、第2導電型半導体層35の周縁に絶縁層35Iが形成された。
次に、第2導電型半導体層35および絶縁層35Iをマスクとして、露出した真性半導体材料膜33Zをエッチングにより除去し、第1導電型半導体層25を露出させた。エッチングには水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
<電極層形成>
次に、マグネトロンスパッタリング装置を用いて、半導体基板11の裏面側の第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上に、透明電極材料膜として透明導電性酸化物を100nmの膜厚で製膜した。透明導電性酸化物の製膜では、酸化スズを10重量%含有した酸化インジウム(ITO)をターゲットとして使用し、装置のチャンバー内に、アルゴンと酸素との混合ガスを導入させて、そのチャンバー内の圧力を0.6Paとなるように設定した。なお、アルゴンと酸素との混合比率は、抵抗率が最も低くなる条件(いわゆる、ボトム条件)とした。また、透明導電性酸化物の製膜では、直流電源を用いて、0.4W/cmの電力密度で、製膜を行った。
次に、フォトリソグラフィ法によるマスクを用いて、第2導電型半導体層35の周縁の絶縁層35Iにおいて乖離するように塩酸を用いてエッチングを行い、第1導電型半導体層25上に透明電極層28を形成し、第2導電型半導体層35上に透明電極層38を形成した。このように、透明電極層28と透明電極層38とが離間することにより、これらの透明電極層の間での導通が防止される。また、透明電極層28と透明電極層38との間において、半導体層が絶縁層35Iで被覆され、半導体層の露出が回避される。
次に、透明電極層28および透明電極層38上に、Agペースト(藤倉化成製 ドータイトFA-333)をスクリーン印刷により塗布して、150℃のオーブンで60分間、加熱処理して、金属電極層29および金属電極層39を形成した。透明電極層28と金属電極層29が第1電極層27を構成し、透明電極層38と金属電極層39とが第2電極層37を構成する。
(実施例2)
印刷材料における第2導電型半導体材料であるナノ粒子状のn型半導体材料(酸化チタン:TiO2)の添加量を、170重量部に変えた点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池1を作製した。
(実施例3)
第1導電型半導体層25の材料および第2導電型半導体層35の材料を変えた点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池1を作製した。
第1導電型半導体層25の材料として、膜厚10nmのn型水素化非晶質酸化シリコン系薄膜(a-n―SiO:H)を用いた。n型非晶質酸化シリコン系薄膜の製膜条件は、基板温度150℃、圧力60Pa、SiH/CO/PH流量比1/0.2/2、パワー密度0.011W/cmであった。なお、PHガス流量は、PHがHにより5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。また、第1導電型半導体材料膜25Zおよび真性半導体材料膜23Zの一部をエッチングするのに使用したエッチング溶液は、オゾンをフッ化水素酸に溶解させた溶液(以下、オゾン/フッ酸液;O /HF水溶液)である。
第2導電型半導体層35の印刷材料における第2導電型半導体材料としては、液体状のp型半導体材料(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレン硫化物:PEDOT-PSS)を用い、その添加量を140重量部とした。
(実施例4)
印刷材料における第2導電型半導体材料である液体状のp型半導体材料(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレン硫化物:PEDOT-PSS)の添加量を、170重量部に変えた点を除いて、実施例3と同様にして太陽電池1を作製した。
(実施例5)
第2導電型半導体層35の材料を変えた点を除いて、実施例3と同様にして太陽電池1を作製した。
第2導電型半導体層35の印刷材料における第2導電型半導体材料としては、ナノ粒子状のp型半導体材料(酸化銅:CuO)を用い、その添加量を150重量部とした。
(実施例6)
第1導電型半導体層25も、第2導電型半導体層35と同様に、印刷材料を印刷した。第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35を印刷にて実施する際は、真性半導体層23をパターン処理する必要がない。つまり、真性半導体層23を半導体基板11に製膜し、その上に第1導電型半導体層25を印刷し、その後、第2導電型半導体層35を印刷して、パターン形成を行った。第2導電型半導体層35の染み出し部分により、少なくとも第1導電型半導体層25との間で真性半導体が剥き出しにならないようにした。
第1導電型半導体層25の印刷材料としては、半導体材料を変えた点を除いて、実施例1の第2導電型半導体層35の印刷材料と同様である。第1導電型半導体層25の印刷材料における第1導電型半導体材料としては、液体状のp型半導体材料(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレン硫化物:PEDOT-PSS)を用い、その添加量を150重量部とした。第1導電型半導体層25の膜厚は、第2導電型半導体層35と同様に、20nmであった。
以上のように作製した実施例1~6の太陽電池の性能特性として、短絡電流密度Jsc、開放端電圧Voc、曲線因子FF、および変換効率Effをシミュレーションした。このシミュレーションでは、ソーラーシミュレータを用い、AM(エアマス)1.5の基準太陽光を、100mW/cmの光量で照射した。
その結果を表1に示す。
Figure 0007043308000001
表1によれば、第1導電型半導体層25をCVD法で形成した実施例1~5は、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の両方を印刷法で形成した実施例6と比較して、太陽電池の性能が高かった。また、第1導電型半導体層25をp型とした実施例1および2は、第1導電型半導体層25をn型とした実施例3~5と比較して、太陽電池の性能が高かった。
これは、印刷材料よりも、CVD製膜の半導体層の方が、半導体層としての品質がよいためであると考えられる。特に、有効質量が大きく、平均自由工程が短い正孔を輸送するp型半導体層は、CVD法で製膜すると好ましいことがわかる。
以上より、本発明によって、半導体層の形成方法として印刷法を適用しても、良好な裏面電極型の太陽電池を製造可能であることがわかった。
1 太陽電池
2 配線部材
3 受光面保護部材
4 裏面保護部材
5 封止材
7 第1導電型領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2導電型領域
11 半導体基板
13 真性半導体層
15 反射防止層
23 真性半導体層(第1真性半導体層)
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 金属電極層
33 真性半導体層(第2真性半導体層)
35 第2導電型半導体層
35I 絶縁層
37 第2電極層
100 太陽電池モジュール

Claims (9)

  1. 2つの主面を有する半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層に対応する第1電極層および前記第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
    前記半導体基板の前記一方の主面側の一部に、前記第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、
    前記半導体基板の前記一方の主面側の他の一部に、前記第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、
    前記第1導電型半導体層上に前記第1電極層を形成し、前記第2導電型半導体層上に前記第2電極層を形成する電極層形成工程と、
    を含み、
    前記第2導電型半導体層形成工程では、
    第2導電型半導体材料、絶縁性樹脂および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させることにより、前記第2導電型半導体層を形成し、
    前記第2導電型半導体層は、前記主面側からみた周縁に、前記印刷材料における前記絶縁性樹脂の一部が染み出すことにより形成される絶縁層を含み、
    前記第2導電型半導体層の前記絶縁層以外の部分は、前記印刷材料における前記第2導電型半導体材料および前記絶縁性樹脂の前記一部以外の残りを含み、
    前記電極層形成工程では、
    前記第1導電型半導体層上および前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側の部分上に前記第1電極層を形成し、
    前記第2導電型半導体層の前記絶縁層以外の部分上および前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側と反対側の部分上に前記第1電極層を形成し、かつ、
    前記第2導電型半導体層の周縁の前記絶縁層の部分上であって、前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側の部分と前記反対側の部分との間の部分上において互いに乖離するように、前記第1電極層および前記第2電極層を形成する、
    太陽電池の製造方法。
  2. 前記印刷材料は、チキソトロピー性を有する、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
  3. 前記印刷材料の粘度は、200Pa・s以上600Pa・s以下である、請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
  4. 前記印刷材料における前記第2導電型半導体材料の含有量は、前記絶縁性樹脂100重量部に対して120重量部以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  5. 前記第1導電型半導体層形成工程では、前記半導体基板の前記一方の主面側の一部に、第1真性半導体層を介して前記第1導電型半導体層を形成し、
    前記第2導電型半導体層形成工程では、前記半導体基板の前記一方の主面側の他の一部に、第2真性半導体層を介して前記第2導電型半導体層を形成した後、前記第2導電型半導体層から露出した第2真性半導体層をエッチングにより除去する、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  6. 前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層は、アルカリ耐性を有する、請求項5に記載の太陽電池の製造方法。
  7. 2つの主面を有する半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層に対応する第1電極層および前記第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、
    前記第2導電型半導体層は、第2導電型半導体材料および絶縁性樹脂を含む印刷材料を印刷して硬化させたことにより形成されており、
    前記第2導電型半導体層は、前記主面側からみた周縁に、前記印刷材料における絶縁性樹脂の一部が偏在して形成された絶縁層を有し、
    前記第2導電型半導体層の前記絶縁層以外の部分は、前記印刷材料における第2導電型半導体材料および前記絶縁性樹脂の前記一部以外の残りを含んでおり、
    前記第1電極層は、前記第1導電型半導体層上および前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側の部分上に形成されており、
    前記第2電極層は、前記第2導電型半導体層の前記絶縁層以外の部分上および前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側と反対側の部分上に形成されており、
    前記第1電極層と前記第2電極層とは、前記絶縁層の前記第1導電型半導体層側の部分と前記反対側の部分との間の部分上において乖離する、
    太陽電池。
  8. 前記第1導電型半導体層と前記半導体基板との間に配置された第1真性半導体層と、
    前記第2導電型半導体層と前記半導体基板との間に配置された第2真性半導体層と、
    を備え、
    前記第2真性半導体層の前記主面側からみた側端と前記第2導電型半導体層の前記絶縁層の前記主面側からみた側端とは、揃っている、
    請求項7に記載の太陽電池。
  9. 前記第2導電型半導体層の前記絶縁層以外の部分は、前記第2真性半導体層よりも厚い、請求項8に記載の太陽電池。
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