JP7041784B1 - タウリンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反応時間を短縮させ、反応の温度及び圧力を低下させることができ、収率が高く、エネルギー消費量が低いタウリンの製造方法を提供する。【解決手段】本発明は、タウリンの製造方法を開示する。本発明では、エチレンオキシドと重亜硫酸塩を反応させてイセチオン酸塩を生成し、イセチオン酸塩をアンモニアとマイクロ波条件下でアンモニア分解反応させた後、アンモニアを除去し、タウリン塩溶液を得る。タウリン塩溶液を酸性化、イオン交換、イオン膜又は加熱などの方式によってタウリン溶液に転化し、これを濃縮して結晶化させてタウリンを抽出する。本発明は、反応時間を短縮させ、反応温度や圧力を低下させ、高収率を達成させてエネルギー消費量を削減させることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、タウリンの製造方法に関する。
タウリンは、化学名が2-アミノエタンスルホン酸であり、人体に必須の非蛋白質アミノ酸であり、遊離した形でヒトや哺乳動物のほとんどすべての臓器に存在する。タウリンはウシ胆汁中に最初に発見されたため、コール酸、エチルアミンスルホン酸とも呼ばれる。タウリンは、作用が他のアミノ酸の作用と異なり、蛋白質を構成する必須アミノ酸ではないが、生体に不可欠であり、生体制御因子に類似している。研究によると、タウリンは消炎、解熱、鎮痛、抗痙攣や血圧降下などの作用があり、乳幼児の脳発育、神経伝導、視覚機能の完備及びカルシウムの吸収に良好な作用がある。また、心臓を保護し、心脳血管疾患を予防・治療するなど多くの重要な機能を持っており、心血管系に対して一連の独特な機能があり、体質を増強し、疲労を解消することができる。このため、タウリンは高い薬用と医療用の価値があり、重要な栄養物質であり、機能性飲料、ペットフード、健康食品、飼料、医薬などの分野に広く応用されている。さらに、生化学試薬や他の高付加価値製品の合成中間体としても有用であり、幅広い応用価値を有するファインケミカルである。
タウリンの化学合成プロセスは、主にエチレンオキシド法とエタノールアミン法を含む。従来のタウリンの生産にはエタノールアミン法が採用されていたが、この合成方法は反応周期が長く、特にスルホン化反応には30時間以上の反応時間が必要であり、また、タウリンの総収率が低く、生産コストが高く、現在では淘汰されつつある。現在主流の製造プロセスはエチレンオキシド法を採用しており、その重要な反応ステップは、イセチオン酸ナトリウムとアンモニアを200~280℃の高温及び14~21MPaの高圧という過酷な条件で反応させることである。ただし、このような高温高圧条件下でも転化率は高くなく、特許文献1に示すように、アンモニア分解反応によるタウリンナトリウムの転化率はわずか71%である。その結果、後続の抽出プロセスが複雑になり、品質要求を達成するためには何度も抽出して再結晶する必要がある。このため、アンモニア分解と精製のプロセス全体のエネルギー消費コストが非常に高く、高温高圧の反応条件により製造プロセスの安全上のリスクが高くなる。
エチレンオキシド法によるタウリン製造では、主要な反応過程は以下のとおりである。
(1)エチレンオキシドを出発原料として、エチレンオキシドと重亜硫酸ナトリウムとを付加反応させてイセチオン酸ナトリウムを得る。主要な反応は次のとおりである。
Figure 0007041784000001
(2)イセチオン酸ナトリウムをアンモニア分解してタウリンナトリウムを得る。
Figure 0007041784000002
(3)酸性化又は他の方式でタウリン及び塩を得る。
特許文献2から4は、タウリンを循環的に生産する方法を紹介しており、アンモニア分解反応において塩基性触媒を添加する必要があること、反応温度150~280℃、圧力として常圧力から260barで反応を行うこと、その後、タウリンと硫酸ナトリウムの溶解度の違いを利用して分離することを主に記載されている。その記述によれば、反応条件は依然として厳しく、副生物の問題は解決されておらず、操作過程は非常に複雑であり、エネルギー消費量が高すぎる。
特許文献5は、イセチオン酸ナトリウムをアンモニア分解してタウリンを製造して循環的に利用するプロセスを記載しており、タウリン粗生成物の含有量を90%とし、硫酸ナトリウムを不純物に対する要求の低い水ガラス生成物に転化することにより、硫酸ナトリウム処理の問題を解決している。このプロセス方法では、アンモニア分解反応の温度と圧力が依然として高く、副生物が多く、プロセスが長すぎて複雑であり、エネルギー消費量も高い。
特許文献6は、母液再利用を含むアンモニア分解反応において、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩(酸式炭酸塩を含む)、鉄系/アルミニウム系金属塩、NiO/CeO2、希土類酸化物のうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを触媒として添加することにより、タウリンナトリウム収率を90~95%まで高めることができることを開示しているが、反応には255~265℃の高温と19~20MPaの圧力が必要であり、条件は依然として厳しい。
特許文献7には、アンモニア分解反応の過程において、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムのうちのいずれか1種又はいずれか2種以上の混合物を触媒として選択することが開示されており、この場合、アンモニア分解反応は250~270℃、10~15MPaで行うことができる。この条件は特許文献6の条件に比べてわずかに温和である。
特許文献8では、イセチオン酸ナトリウムからタウリンを製造する方法が紹介されいる。モリブデン酸塩均一触媒を用いてイセチオン酸ナトリウムのアンモニア分解反応を触媒し、その後、中和、結晶分離などのステップを経て、タウリン完成品を得る。このプロセスは、従来の塩基性触媒に比べて、イセチオン酸ナトリウムのアンモニア分解反応の温度及び圧力を大幅に低下させ、反応時間を短縮することができる。しかし、その最大の問題は、生産プロセスに新たな化学物質が導入され、均一触媒のその後の分離や精製が困難であるとともに、定期的な交換が必要であり、生産の操作が煩雑であることである。良好な転化率を達成し、反応温度を下げるには、依然として反応時間を増加させる必要がある。
特許文献9は、N,N-二置換アミノエタンスルホン酸である高純度タウリン製造用触媒を開示しており、前記触媒は、タウリンを製造するアンモニア分解のステップに添加される。しかし、その不利な点はやはり新たな化学物質が導入され、これが生成物から分離しにくいこと、同様に反応時間の問題を解決することができず、反応30minでタウリン転化率は50%未満であることである。
以上のように、現行のタウリン製造プロセスの欠点は、主にアンモニア分解反応工程にあり、反応条件はいずれも高温高圧である必要があり、反応時間が長すぎて転化率が高くない。一部の特許のプロセスは、アンモニア分解触媒によって反応条件を低減させているが、反応時間が長く、また新たな化学物質が導入されており、生成物の後続の分離精製に影響を与えてしまう。
東独特許219023号明細書 米国特許第9428450号明細書 米国特許第9428451号明細書 欧州特許第3133060号明細書 中国特許出願公開第109020839号明細書 中国特許出願公開第105732440号明細書 中国特許出願公開第107056659号明細書 中国特許第108329239号明細書 中国特許出願公開第110252395号明細書
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、反応時間を短縮させ、反応の温度及び圧力を低下させることができ、収率が高く、エネルギー消費量が低いタウリンの製造方法を提供する。
以上の発明目的を達成するために、本発明が上記技術的課題を解决するための技術案は以下のとおりである。
エチレンオキシド法によるタウリン生産プロセスにおいて、本発明のコア技術は、イセチオン酸塩をアンモニアとマイクロ波条件下でアンモニア分解反応させることにある。
上記マイクロ波条件下でアンモニア分解反応を行う時間は0.4~60min、好ましくは0.5~35min、より好ましくは1~10minであり、反応温度は50~260℃、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~150℃であり、反応圧力は0.1~22MPa、好ましくは1~10MPa、より好ましくは3~6MPaである。上記のように反応条件を最適化させることにより、従来技術に比べて、反応時間を減少させ、生産周期を大幅に短縮し、反応温度や反応圧力も明らかに低下させる。
上記マイクロ波下のアンモニア分解反応は、バッチ式反応釜内で行われてもよく、連続マイクロ波反応であってもよい。前記マイクロ波の周波数は、任意の作動周波数であってもよいが、好ましくは915MHz又は2450MHzである。
本発明のイセチオン酸塩とアンモニアとの反応系では、すべての物質が極性物質であり、すべての物質の誘電率、双極性が大きく、反応系はイオン状態で存在し、マイクロ波を吸収し伝導する能力が非常に強い。マイクロ波は反応液中の水酸基、水、アンモニアを直接活性化させ、反応を促進することができる。イセチオン酸塩とアンモニアが反応してタウリン塩が生成すると、アンモニアが過剰になる場合、マイクロ波によりこれらの反応は結合角や立体障害の影響を強く受けるようになり、このため、生成される副生物であるジタウリン塩やトリタウリン塩は大幅に減少する。マイクロ波場における媒体の加熱も主に双極子転向分極と界面分極という2種類の分極方式によって実現され、極性が低い第二級アミン、第三級アミンや比較的高分子量のアルコールはマイクロ波を吸収する能力が劣るため、ジタウリン塩やトリタウリン塩を生成する機会はより少なくなり、さらには遮断されることになる。これにより、アンモニアがわずかに過剰な反応条件下でイセチオン酸塩の定量的な反応が可能となる。それによって、反応が完結し、反応後のイセチオン酸塩の残留や副生成物の生成が大幅に低減される。さらに意外なことに、マイクロ波条件下でアンモニア分解すると、タウリン粗生成物の純度が大幅に向上し、完成品は柱状結晶形を呈する。それによって、タウリン完成品の結晶形を根本的に変化させ、生成物の結晶形をより均一にし、粒子をより大きくし、生成物の固結時間を大幅に延長することができる。
分析の結果、本発明では、化学反応に対するマイクロ波の作用は、主に「熱的効果」と「非熱的効果」の2つの側面の影響を受ける。
マイクロ波加熱は、外部熱源による放熱を通じて表面から内部へ伝導するような加熱である一般的な従来の加熱方式とは異なる。マイクロ波場は電子分極や原子分極を引き起こさず、双極子偏向分極や界面分極の時間がマイクロ波の周波数と丁度一致する。マイクロ波場における媒体の加熱も主にこの2つの分極方式によって実現される。すなわち、マイクロ波加熱は、電磁界における材料の誘電損失によるバルク加熱である。この加熱の利点は明らかであり、高周波誘電加熱技術と類似しており、ただし、使用される作動周波数がマイクロ波帯である。マイクロ波加熱とは、マイクロ波の電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することを意味し、そのエネルギーは空間又は媒質を介して電磁波の形で伝達されるので、消費されるエネルギーはそれほど多くない。そのため、マイクロ波は物質を効率的に均一に加熱する作用があり、エネルギーを節約し、化学反応を速めるという役割を果たす。
また、マイクロ波場では、分子双極子作用により毎秒4.9×109回の超高速で振動し、分子の平均エネルギーが上昇し、反応温度と速度が急激に上昇する。マイクロ波の作用下では、すべての極性分子は共振と見做すことができる。これは、共振によってしかマイクロ波のエネルギーを極性分子に効率的に伝達することができず、マイクロ波が非極性分子には作用しないためである。化学反応は分子間の破壊的な衝突であり、マイクロ波は極性分子の運動を前例のないほど加速させ、いずれの場合も、運動によって急速に昇温する程度に達することができ、それにより、分子間の衝突の破壊力を前例のないほど増加させ、2つの分子が衝突する時間及び1回の化学反応を完了する時間は百億分の1秒を超えることはない。マイクロ波を追加することにより、1回当たりの衝突力が増加するだけでなく、単位時間当たりの衝突回数も必ず増加するので、反応速度が速くなる。マイクロ波は微視的な超高速撹拌と言っても過言ではない。マイクロ波の作用により反応動力学が変化し、反応活性化エネルギーが低下し、反応温度、圧力や時間を低下させる効果が得られる。
具体的には、イセチオン酸塩とアンモニアとのモル比は1:1~1:15、好ましくは1:3~1:15、より好ましくは1:5~1:10であり、反応におけるアンモニア比を下げ、アンモニアの含有量がそれに伴い下がる。
具体的には、前記イセチオン酸塩の濃度は20%~55%、好ましくは30%~45%である。
上記のイセチオン酸塩は、イセチオン酸ナトリウム、イセチオン酸アンモニウム、イセチオン酸カリウム又はイセチオン酸リチウムであってもよい。
具体的には、アンモニアは、液体アンモニア、高濃度アンモニア水又はアンモニアガスであってもよく、混合溶液中、アンモニアの濃度は5%~28%、好ましくは10%~25%である。
上記のマイクロ波条件下でのアンモニア分解反応を用いたタウリンの製造方法は以下のとおりであってもよい。エチレンオキシドと重亜硫酸塩を反応させてイセチオン酸塩を生成し、イセチオン酸塩をアンモニアとマイクロ波でアンモニア分解反応させた後、アンモニアを除去し、タウリン塩溶液を得る。酸性化、イオン交換、イオン膜又は加熱などの方式のうちの1種又は複数種によってタウリン塩溶液をタウリン溶液に転化し、その後、濃縮して結晶化させてタウリンを抽出する。
主要な反応式には以下のものが含まれる。
Figure 0007041784000003
ここで、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、水素など、カチオン(正イオン)を形成し得る物質であってもよい。
具体的には、
エチレンオキシドと重亜硫酸塩溶液を反応させてイセチオン酸塩を得るステップS1と、
S1で得られたイセチオン酸塩とアンモニアを混合して反応液を得るステップS2と、
S2における反応液をマイクロ波作用下でアンモニア分解反応させるステップS3と、
アンモニア分解反応後、アンモニアを除去し、得られたタウリン塩をタウリンに転化し、結晶化と分離を行い、タウリン生成物を得るステップS4と、
母液を回収して、S4でタウリン生成物を抽出した後、S2に戻すステップS5とを含む。
ここで、S1における重亜硫酸塩は、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、又は重亜硫酸リチウムなど、他の重亜硫酸金属塩であり、好ましくは、重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸アンモニウムが使用される。
具体的には、S1では、重亜硫酸塩溶液の濃度は9%~50%であり、重亜硫酸塩とエチレンオキシドとのモル比は1:0.95~1:1である。
具体的には、S2で加えるイセチオン酸塩の濃度は20%~55%、好ましくは30%~45%である。
具体的には、S2では、イセチオン酸塩とアンモニアとのモル比は1:1~1:15、好ましくは1:3~1:15、より好ましくは1:5~1:10である。
具体的には、S2では、混合して得られた反応液中、アンモニアの濃度は5%~28%、好ましくは10%~25%である。
具体的には、S3では、マイクロ波下で行われるアンモニア分解は、バッチ式反応釜で行われてもよく、連続マイクロ波反応であってもよく、好ましくは、マイクロ波の周波数は915MHZ又は2450MHZである。
具体的には、S3では、反応時間は0.4~60min、好ましくは0.5~35min、より好ましくは1~10minである。
具体的には、S3では、反応温度は50~260℃、好ましくは温度80~200℃、より好ましくは100~150℃である。
具体的には、S3では、反応圧力は0.1~22MPaであり、好ましくは1~10MPa、より好ましくは3~6MPaである。
具体的には、S4における酸性化は、硫酸、塩酸、リン酸、水溶性カルボン酸、スルホン酸又は固体酸等を用いてもよいが、好ましくは硫酸及び塩酸である。
具体的には、S4におけるイオン交換は、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、イオン交換膜などを用いて行ってもよく、好ましくは弱酸性カチオン交換樹脂及びイオン交換膜を用いる(例えば、中国特許出願公開第201710456576.2号明細書、発明の名称「タウリンを高収率で循環的に生産する方法」において、イオン交換処理方法が開示されている)。
具体的には、S4では、タウリン塩がタウリンに転化された後の水溶液のpHは4~9、好ましくは6~8である。
具体的には、S5では、タウリン生成物が抽出された母液は、電解イオン状態の形でS3の反応に関与する。母液が全て電解イオン状態の形で存在しない場合、母液をS2にリサイクルする前又はS2において金属塩電解質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムのうちのいずれか1種又はいずれか2種以上の混合物、好ましくは水酸化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを添加する必要がある。
検出の結果から、上記の全ての方法で得られたタウリン完成品の結晶形が柱状結晶形であることが明らかになる。
従来の生産プロセスに比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1、本発明では、マイクロ波技術が使用されており、反応速度が高く、効率が高く、エネルギー損失が少なく、エネルギー消費量が低い。
2、本発明では、エチレンオキシド法を用いてタウリンを製造することにより、新たな化学原料を導入せずにタウリンを製造する。このため、反応時間が短く、選択性に優れ、収率が高く、簡単で効率的である。
3、本発明では、反応のプロセスを加速し、反応をより完全にし、また、副生物に極微量のジタウリン塩やトリタウリン塩だけが含有されるか、または含有されておらず、母液を再利用するとタウリンの総収率は95%以上、さらに99%以上に達する。
4、本発明で得られたタウリンは、柱状結晶形であり、生成物の粒子がより大きくなり、生成物の固結時間が明らかに長くなる。
5、本発明では、反応条件がより温和であり、反応の安全性が向上し、安全上のリスクが低減される。
以下、特定実施例にて本発明の具体的な内容をさらに詳しく説明するが、挙げられる例は本発明を解釈するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の製造方法の技術的効果を説明するために、以下、例を挙げて説明する。以下の実施例で使用される原料は、特に断らない限り、全て市販製品であり、使用される方法は、特に断らない限り、全て常法であり、特に断らない限り、材料の含有量は全て質量体積百分率を表す。実施例で使用される高圧密閉マイクロ波反応器は従来の設備であり、作動周波数を2450MHzとするが、他の適切な作動周波数も可能である。後処理とは上記ステップS4のことであり、タウリン塩をタウリンに転化する方式は制限されず、以下の実施例では、イオン交換樹脂による処理方式が使用される。
実施例1
イセチオン酸ナトリウム0.16molを30%アンモニア水125mL(2.21mol)に溶解し、高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ230℃、200℃、150℃で0.5min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、その後、後処理を経てタウリンを抽出し、精製後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表1に示す。
Figure 0007041784000004
上記実験結果から明らかなように、反応時間が0.5分、圧力が6~15MPa、温度が150~230℃に設定された場合、タウリンナトリウムの収率は全て92%を超え、イセチオン酸ナトリウムの残留量は全て0.4%未満であった。このように、反応時間が大幅に短くなり、反応温度や反応圧力が低下した。
実施例2
イセチオン酸ナトリウム0.16molを30%アンモニア水125mLに溶解し、高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ230℃、200℃、150℃、100℃で1min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、その後、後処理を経てタウリンを抽出し、精製後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表2に示す。
Figure 0007041784000005
上記実験結果から明らかなように、反応時間が1分間、圧力が3~15MPa、温度が100~230℃に設定された場合、タウリンナトリウムの収率は全て95%を超え、イセチオン酸ナトリウムの残留量は全て0.4%未満であった。このことは、反応が完結し、且つ反応時間が大幅に短くなり、反応温度及び反応圧力を低下できることを示している。また、アンモニア分解反応が150℃以上の反応温度又は6MPa以上の反応圧力で行われていなくても、非常に高い収率が得られることを示している。
実施例3
イセチオン酸ナトリウム0.16molを30%アンモニア水125mLに溶解し、高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ230℃、200℃、150℃、100℃、80℃、50℃で10min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、その後、後処理を経てタウリンを抽出し、精製後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表3に示す。
Figure 0007041784000006
上記実験結果から明らかなように、反応時間が10分間、圧力が3~15MPa、温度が100~230℃に設定された場合、タウリンナトリウムの収率は全て95%を超え、イセチオン酸ナトリウムの残留量は全て0.1%未満であった。このように、反応時間を大幅に短縮し、反応温度及び反応圧力を低下させることができた。また、反応温度100~200℃、圧力3~10MPaの反応時間の条件下では、タウリンナトリウムの収率はほぼ同じであり、全て97%を超え、再利用された後でもタウリンの総収率は全て97%を超えた。これらの結果は、反応が十分であることを示している。
実施例4
イセチオン酸ナトリウム0.16molを30%アンモニア水125mLに溶解し、高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ230℃、200℃、150℃、100℃で35min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、その後、後処理を経てタウリンを抽出し、精製後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表4に示す。
Figure 0007041784000007
上記実験結果から明らかなように、反応時間が35分間、圧力が3~15MPa、温度が100~230℃に設定された場合、イセチオン酸ナトリウムの残留量は全て0.1%未満であった。反応時間が短い実施例1~3、5と比較し、タウリンナトリウムの収率は全体として低下した。また、反応時間がある程度に達すると、反応温度が低いほど、タウリンの収率が高いことが分かった。つまり、反応時間がある程度に増大すると、反応温度が100℃である場合、より高温の150℃、200℃などの場合よりも、タウリンナトリウムの収率は高い。
実施例5
(1)イセチオン酸ナトリウム0.16molを2.21、1.76、0.88、0.44molのアンモニアにそれぞれ加え、次に一定量の水を添加し、各溶液を高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ、150℃、反応圧力6MPaで5min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、次に、後処理を経てタウリンを抽出し、抽出後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表5(番号1-4)に示す。
(2)イセチオン酸ナトリウム0.16molを1.76、0.8molのアンモニアにそれぞれ加え、次に一定量の水を添加し、各溶液を高圧密閉マイクロ波反応器に加えて、それぞれ100℃、反応圧力6MPaで5min反応させた。反応完了後、アンモニアを除去し、次に、後処理を経てタウリンを抽出し、抽出後の母液をアンモニア分解反応に再利用した。結果を表5(番号5-6)に示す。
Figure 0007041784000008
上記実験結果から明らかなように、反応時間が5分間、温度が150℃に設定された場合、アンモニア/イセチオン酸ナトリウムのモル比が1:3を超えると、反応効果が高く、1:5の場合、タウリンナトリウムの収率は97.65%に達した。
実施例1~5の異なるマイクロ波反応時間での実験結果から分かるように、5分間反応した結果、イセチオン酸ナトリウムの残留量は極めて低く、反応は十分であった。1分間の場合と5分間の場合を比較すると、反応収率は増加する傾向があり、10分間では、タウリンの収率はわずかに低下しており、35分間では、収率の低下は明らかになった。このことから、マイクロ波でのアンモニア分解反応は非常に速く、反応時間を大幅に短縮できることを示している。
実施例6
様々なプロセスにより得られた生成物の結晶形の比較実験
(1)上記実施例1~5の各群の実験で得られたタウリンナトリウム溶液については、全てアンモニアを除去した後イオン交換方法で処理してタウリン溶液を得て、濃縮して結晶化させてタウリン粗生成物を得た。その後、粗生成物を脱色して再結晶し、分離し、乾燥することでタウリン完成品を得た。遠心分離後の母液は再利用されて粗生成物とともに結晶化され得る。タウリン完成品の結晶形を選別した結果、全て柱状結晶形のタウリンであった。実施例5における番号1、2の2群の実験データを例として表6に示す。
(2)一般的な生産プロセスに従って、イセチオン酸ナトリウム(1mol)、水酸化ナトリウム、アンモニア(14mol)を混合した後、高圧反応釜にて250℃に加熱し、反応圧力15MPaで60min反応させ、タウリンナトリウム溶液を調製した。アンモニアを除去した後、イオン交換で処理して、タウリン溶液を得た。タウリン溶液を濃縮して結晶化させてタウリン粗生成物を得て、粗生成物を脱色して再結晶し、結晶を分離、乾燥して、タウリン完成品を得た。遠心分離後の母液は再利用されて粗生成物とともに結晶化され得る。タウリン完成品の結晶形を選別して得られた具体的なデータを表6に示す。
Figure 0007041784000009
上記実験結果から分かるように、マイクロ波条件下でアンモニア分解反応させて得たタウリン完成品の結晶形は柱状である一方、従来技術で得られたタウリン完成品は針状結晶形であった。
実施例7
比較例:一般的な触媒を用いた比較実験
イセチオン酸ナトリウム0.16molを30%アンモニア水125mLに溶解し、次に水酸化ナトリウム0.02molを加えて混合した後、混合物を高圧密閉マイクロ波反応器に加え、それぞれ220℃で30min、60min、90min反応させた。アンモニア分解反応の結果は以下のとおりであり、結果は表7に示される。
Figure 0007041784000010

上記実験から分かるように、従来技術のようにアンモニア分解反応に触媒を加える製造方法によれば、反応温度が220℃、反応圧力が12MPaである場合、収率は反応時間の増加に伴い増加した。反応時間が30分間に設定された場合、タウリンナトリウムの収率は43%であり、90分間に設定された場合にも、タウリンナトリウムの収率は91%にしか達していない。
以上の実施例から明らかなように、本発明特許における方法は、アンモニア分解による収率を明らかに向上させ、副生物を顕著に減少させ、反応をより完全にし、また、反応に必要な時間、温度や圧力を大幅に低下させ、反応時間が1~10分間である場合、タウリンの総収率は95%以上に達する。そして、タウリン完成品の結晶形が柱状結晶形であり、根本的に変わる。柱状の場合は、顆粒がより大きく丈夫であり、それにより、生成物の固結時間が短いという問題が解決された。本発明特許における方法は、環境に優しく、簡単で効率的な化学工業用のプロセスである。
なお、以上の実施例は本発明の技術を説明する目的にのみ使用され、本発明を制限するものではない。前述実施例を参照して本発明を詳しく説明しているが、当業者にとって自明なように、前述の各実施例に記載の技術について製造の反応条件を修正、置換したり、その一部の技術的特徴に対して同等置換を行ったりすることができる。これらの修正や置換により、対応する技術の主旨が本発明の各実施例の技術のコンセプトや範囲から逸脱することはない。

Claims (10)

  1. エチレンオキシド法によるタウリン生産プロセスにおいて、イセチオン酸塩をアンモニアとマイクロ波条件下でアンモニア分解反応させることを特徴とするタウリンの製造方法であり、前記エチレンオキシド法は、エチレンオキシドと重亜硫酸塩から前記イセチオン酸塩を得るステップを含む、タウリンの製造方法
  2. 前記マイクロ波条件下でアンモニア分解反応を行う時間は0.4~60minであり、反応温度は50~260℃であり、反応圧力は0.1~22MPaであることを特徴とする請求項1に記載のタウリンの製造方法。
  3. イセチオン酸塩とアンモニアとのモル比は1:1~1:15であることを特徴とする請求項2に記載のタウリンの製造方法。
  4. 前記イセチオン酸塩の濃度は20%~55%であることを特徴とする請求項3に記載のタウリンの製造方法。
  5. 前記アンモニアの濃度は5%~28%であることを特徴とする請求項4に記載のタウリンの製造方法。
  6. 前記イセチオン酸塩はイセチオン酸ナトリウム、イセチオン酸アンモニウム、イセチオン酸カリウム又はイセチオン酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載のタウリンの製造方法。
  7. 前記マイクロ波条件下で行われるアンモニア分解反応は、バッチ式反応釜内で行われるか、連続マイクロ波反応であることを特徴とする請求項1に記載のタウリンの製造方法。
  8. 得られるタウリン完成品は柱状結晶形であることを特徴とする請求項1に記載のタウリンの製造方法。
  9. エチレンオキシドと重亜硫酸塩溶液を反応させてイセチオン酸塩を得るステップS1と、
    S1で得られたイセチオン酸塩とアンモニアを混合して反応液を得るステップS2と、
    S2における反応液を前記マイクロ波条件下でアンモニア分解反応させるステップS3と、
    アンモニア分解反応後、アンモニアを除去し、得たタウリン塩をタウリンに転化し、結晶化して分離し、タウリン生成物を得るステップS4と、
    母液を回収して、S4でタウリン生成物を抽出した後、S2に戻すステップS5とを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のタウリンの製造方法。
  10. 前記タウリン塩をタウリンに転化する方式は、酸性化、イオン交換、イオン膜又は加熱方式であることを特徴とする請求項9に記載のタウリンの製造方法。
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