JP7040323B2 - キッチンペーパーロールおよびキッチンペーパーロールの製造方法 - Google Patents
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図1は、本発明の一実施形態に係るキッチンペーパーロールの全体斜視図である。ここで、図中における、矢印MDの示す方向は、キッチンペーパー1の長手方向を示し、矢印CDの示す方向は、キッチンペーパー1の幅方向を示すものである。
図2は、本実施形態の丈夫さの評価指標を説明するためのグラフであり、(a)は、本実施形態の丈夫さの評価指標(引張エネルギー吸収量)における引張荷重-伸び曲線、(b)及び(c)は、従来の丈夫さの評価指標(乾燥引張強度)と本実施形態の丈夫さの評価指標(引張エネルギー吸収量)とを比較する引張荷重-伸び曲線、をそれぞれ表す。ここで、図2(b)及び図2(c)において矢印Aで示される引張荷重-伸び曲線は、同一のものを示す。
本実施形態のキッチンペーパーの製造方法は、パルプを含むスラリーを抄紙し、1プライのキッチンペーパーウェブを得る工程と、キッチンペーパーロールにエンボス加工を施す工程と、キッチンペーパーウェブを積層する工程とを含むものである。以下に、キッチンペーパーの製造工程について、順に説明する。
パルプの配合工程において、キッチンペーパー1に適した既知の組成のパルプ繊維が採用されて作製されており、バージンパルプを90~100質量%含むのが適している。本発明の特有の効果が顕著になるパルプ組成としては、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプと、を適宜の比率で配合するものがよく、特に、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比を、10:90~90:10にするのが最適である。この針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比を上記範囲内とすることにより、キッチンペーパー1のTEAを所望の範囲内とすることが容易になる。
パルプの叩解工程において、パルプ繊維に機械的な叩解処理(例えば、ダブルディスクレファイナー等)が施される。この時、針葉樹パルプと広葉樹パルプをそれぞれ単独で叩解してもよいし、混合させた後に叩解してもよい。このパルプ繊維は、叩解処理によってフィブリル化することにより、キッチンペーパーウェブの紙質を調整することができる。ここで、叩解の程度を表すキッチンペーパー1中に含有される繊維成分(パルプ成分)のCSF:カナディアン・スタンダード・フリーネスで表されるフリーネスを、300~650mlにするのが適切である。この繊維成分のフリーネスを上記範囲内とすることにより、キッチンペーパー1のTEAを所望の範囲内とすることが容易になる。
薬品の添加工程において、パルプ繊維に対し任意成分が添加されてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。この任意成分を添加することにより、キッチンペーパー1のTEAを所望の範囲内とすることが容易になる。
供給工程において、網状のワイヤー上にパルプを含むスラリーが供給されてパルプの薄層が形成される。一般に、ワイヤーは、金属またはプラスチック製の網を環にしたものである。ここで、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプスラリーを抄紙して均一な1つの層として湿紙を形成する方法、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプスラリーを抄き合わせて1枚の湿紙を形成する方法、針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層を抄き合わせて1枚の湿紙を形成する方法などがあるが、いずれの手法を採用してもよい。
脱水工程において、プレスパートに向かって移送されながら、パルプの薄層の水分が網の下へ抜かれることでパルプの薄層は脱水される。脱水工程の後、プレス工程において、湿紙はワイヤーからフェルトへと移動する。フェルトを介してプレスロールで湿紙に圧力を加えることにより、湿紙はさらに機械的に搾水される。ここで、湿紙にウェットクレープ加工(ウェットクレープ加工工程)を施すことによって、キッチンペーパー1の幅方向に延在する複数のクレープを付与することができ、キッチンペーパーウェブの紙質を調整することができる。
プレス工程後の乾燥工程において、例えば、湿紙に向かって熱風を吹き付ける工程、もしくは、ドライヤシリンダーを外周面に圧着させる工程であることが好ましい。ここで、乾燥した紙にドライクレープ加工(ドライクレープ加工工程)を施すことによって、キッチンペーパー1の幅方向に延在する複数のクレープを付与することができ、キッチンペーパーウェブの紙質を調整することができる。
乾燥工程の後、原紙巻取り工程が設けられる。原紙巻取り工程では、上記の工程を経て仕上げられたキッチンペーパーウェブが巻取られることで、1プライの原紙巻取が得られる。原紙巻取は、キッチンペーパーウェブの巻外側面側が外周面となるように巻取ることが好ましい。
エンボス加工工程は、例えば、スチールラバー式のエンボス付与装置を用い、エンボスの付与されたエンボスロールにより加圧することで行う。エンボスロールの押し込み量または押し込み圧を変更することによって、所定のエンボス高さを有するエンボス形状を形成することができる。ここで、エンボス加工は、後述する貼り合わせ工程の前に行ってもよく、貼り合わせ工程の後に行ってもよい。なお、手触り感を良化する観点からエンボス加工は貼り合わせ工程の前に行うことが好ましい。ここで、キッチンペーパー1にエンボスを設ける場合には、エンボス凹部の直径(1個分)を、0.10~10.0mmにすることが適切である。また、キッチンペーパー1に施されるエンボスの密度は、0.1~25個/cm2にすることが適切である。このエンボスの直径及び密度を上記範囲内とすることにより、キッチンペーパー1のTEAを所望の範囲内とすることが容易になる。
貼り合わせ工程は、1プライのキッチンペーパーウェブを2枚以上積層し、貼り合わせを行う。1プライの原紙巻取の巻外側面同士が外側にくるように2プライへの貼り合わせを行うことが好ましい。この工程では、例えば、原紙を重ねた後に製品の端部となる部分に幅狭のコンタクトエンボスを付与することによって貼り合わせることができる。その際、エンボスロールによって押し込まれた面を外側にして貼り合わせる方が、手触り感の観点から好ましい。
ミシン目加工工程は、走行する2プライの貼り合わせたキッチンペーパーウェブを、回転するパーフォレーションロール等に当接させることにより、キッチンペーパーウェブの幅方向に亘るミシン目2を、キッチンペーパーウェブの長手方向に所定間隔おきに形成することができる。
本発明の実施例1乃至実施例4の各実施例に係るキッチンペーパーロール10において、物性に係る27個のパラメータについて、比較例1及び比較例2に対する比較評価を行った。その比較評価について、以下の表1に示す。
キッチンペーパーロール10から巻き解かれるとともに、切り取られて使用される2プライでの坪量(表1参照)は、30~50g/m2であるのが好ましく、38~46g/m2であるのがより好ましい。なお、2プライ坪量は、JIS P 8124(1998)による。
本実施形態のキッチンペーパー1の紙厚(表1参照)は、厚さ計(ハイブリッジ製作所製)を用いて、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときの値を読み取った。なお、紙厚は8サンプルの平均値を算出したものとした。紙厚の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
キッチンペーパー1の密度(表1参照)は、2枚(2プライ)あたりの坪量g/m2からキッチンペーパー1の紙厚μmを除した値g/cm3である。
実施例1乃至実施例4、比較例1及び比較例2に係るキッチンペーパー1に対し、丈夫さ、所望のミシン目での切れやすさ及び柔軟性について官能評価を実施した。評価は次の基準で行った。すなわち、実施例1乃至実施例4、比較例1及び比較例2で得たキッチンペーパー1について、水準を隠した状態で官能評価を実施した。50人のモニターに製品を触ってもらい、製品の「丈夫さ」、「所望のミシン目での切れやすさ」及び「柔軟性」について、「特に優れている」と感じたものを3点、「優れている」と感じたものを2点、「やや劣る」と感じたものを1点、「劣る」と感じたものを0点とした4段階の評価を行ってもらった。
キッチンペーパー1のカット長さLcからタイ長さLtを除した値は、3~10であることが好ましく、4~9であることがさらに好ましい。ここで、Lc/Ltが3以上であると、キッチンペーパー1をミシン目2で破断する際に、ミシン目2に沿わずに破断されてしまうことを抑制することができる。他方、10未満であると、キッチンペーパー1を引張り巻き解く際に、望んでいないミシン目2で破断されてしまうことを防ぎ、確実に、所望のミシン目2に沿って破断させることができる。ここで、キッチンペーパー1のカット長さLcは、3~10mmであるのが好ましい。
JIS P 8113に準拠し、各キッチンペーパー1の引張試験を行い、引張荷重、伸びおよび乾燥引張強度の測定を行うとともに、キッチンペーパー1が破断するまでに得た引張荷重および伸びをプロットして引張荷重-伸び曲線を得、TEAJ/m2を算出する。また、引張破断伸びを基に伸び率%の算出を行う。測定は、2プライのキッチンペーパー1のサンプルを、幅が15mmとなるよう切り出し、スパン長100mmで、引張速度50mm/分の条件で測定をし、10回の測定の平均を算出した値である。乾燥引張強度の測定には、横型引張試験機(熊谷理機工業株式会社製)を用いた。なお、乾燥引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
各キッチンペーパー1の引張試験を行い、湿潤引張強度の測定を行う。測定は、幅を15mmにカットしたミシン目を含まないキッチンペーパー1のサンプルを用いる。サンプル中央部に50μlの水を滴下し1秒後、スパン長100mmで、引張速度50mm/分の条件で測定をし、10回の測定の平均を算出した値である。湿潤引張強度の測定には、横型引張試験機(熊谷理機工業株式会社製)を用いた。なお、湿潤引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
Ts7値(柔らかさ),Ts750値(滑らかさ)及びD値(ふんわり感)は、ティシューソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて、以下の方法により測定する。まず、ティシューソフトネスアナライザーのサンプル台に、直径112.8mmの円形にカットしたサンプルを固定する。このサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込んだ後、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、振動周波数を測定する。引き続き、ブレード付きローターを回転させない状態で100mNと、600mNの圧力で上方から押し込み、サンプルを変形させたときの上下方向の変形変位量(mm/N、剛性D)を計測する。なお、Ts7値,Ts750値及びD値の測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
実施例1乃至実施例4の官能評価の対比から明らかなように、キッチンペーパー1におけるTEAが30.0~150.0J/m2であれば、柔軟性及び丈夫さの官能評価をバランス良く高めるともに、ミシン目2での切れやすさの官能評価を高めることができるとの結論を得た。
本発明は、上述した各形態や、各実施例、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
2 ミシン目
2c カット(切り込み)
2t タイ(切り残り)
10 キッチンペーパーロール
11 表面シート
11e 第1エンボス凸部
12 裏面シート
12e 第2エンボス凸部
13 紙管
D ふんわり感を表す手触り感の指標
Lc カット長さ
Lt タイ長さ
Td キッチンペーパー1の長さ方向(ミシン目を含まない)部分の乾燥引張強度
Tdm キッチンペーパー1の長さ方向(ミシン目を含む)部分の乾燥引張強度
TEA キッチンペーパー1の長さ方向(ミシン目を含まない)部分の引張エネルギー吸収量
Ts7 柔らかさを表す手触り感の指標
Ts750 滑らかさを表す手触り感の指標
Tw キッチンペーパー1の長さ方向(ミシン目を含まない)部分の湿潤引張強度
ε キッチンペーパー1の長さ方向(ミシン目を含まない)部分の伸び率
Claims (8)
- 同一構成のキッチンペーパーウェブが積層された2プライのキッチンペーパーロールであって、シートの長手垂直方向に一定間隔のミシン目を有し、前記ミシン目を含まないシート長手方向の引張エネルギー吸収量が30~150J/m2であり、前記シートに一様に形成されたエンボスは、ドット状のみであり、前記エンボスの凹部の直径が0.10~10.0mmであり、前記シートのエンボス密度が0.1~25個/cm 2 であることを特徴とするキッチンペーパーロール。
- 前記ミシン目におけるカット長さからタイ長さを除した値が、3~10であることを特徴とする請求項1に記載のキッチンペーパーロール。
- 前記ミシン目を含まない前記シート長手方向の乾燥引張強度から前記ミシン目を含む前記シート長手方向の乾燥引張強度を除した値が、5.0~15.0であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキッチンペーパーロール。
- 前記ミシン目を含まない前記シート長手方向の乾燥引張強度が0.40~1.0kN/mかつ、前記ミシン目を含む前記シート長手方向の乾燥引張強度が0.050~0.15kN/mであることを特徴とする請求項3に記載のキッチンペーパーロール。
- 前記ミシン目を含む前記シート長手方向の乾燥引張強度から前記ミシン目を含まない前記シート長手方向の湿潤引張強度を除した値が、0.30~1.5であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のキッチンペーパーロール。
- 前記ミシン目を含まない前記シート長手方向の湿潤引張強度が0.10~0.30kN/mであることを特徴とする請求項5に記載のキッチンペーパーロール。
- 手触り感の指標であるTs7値、Ts750値及びD値は、それぞれ20~40dB/V2rms、100~250dB/V2rms及び2.0~3.0mm/Nであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のキッチンペーパーロール。
- 請求項1から7のいずれか一項に記載のキッチンペーパーロールを製造する方法であって、前記シートの丈夫さにおける評価指標として前記引張エネルギー吸収量を採用し、前記引張エネルギー吸収量が30~150J/m2となるように、前記シートにクレープ加工及びエンボス加工を施す工程を含むことを特徴とする方法。
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