そこで、本発明は、浴槽側壁の上面に載置される固定フレームと、固定フレームの上にスライド可能に取り付けられた可動フレームとからなる浴槽用手摺りにおいて、可動フレームをスライド移動等する時、可動フレームに支承された押圧受け部が固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かることがなく、可動フレームを最大限に固定フレームへ近づけることができる浴槽用手摺りを提供することを目的とする。
本発明者等は、固定フレームと可動フレームについて、可動フレームのスライド部の下面と固定フレームの載置部の端部により形成される段差を解消するための構造や形状などについて鋭意検討を重ねた結果、可動フレームのスライド部の一部に固定フレームの載置部の下面と同じレベルを形成するレベル補正具を設け、また、固定フレームにはレベル補正具を受け入れることが可能な開口部を設けることで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
浴槽側壁の上面に直置きされる固定フレームと、前記固定フレームの上にスライド可能に取り付けられる可動フレームとを備えた浴槽用手摺りにおいて、
前記固定フレームは、浴槽側壁の一方の側面を押圧するために、前記固定フレームに対して近接離間する押圧部を有しており、
前記可動フレームは、浴槽側壁の他方の側面を押圧する押圧受け部と、前記可動フレームを前記固定フレームへ取付けた時、前記固定フレームの底面と略同じレベルとなる下端部を備えたスカートとを有している浴槽用手摺りが提供される。
本発明の浴槽用手摺りの基本形は、浴槽側壁の上面に載置される水平部分の載置部を備えた固定フレームと、固定フレームの載置部の上に取り付けられるスライド部を備えた可動フレームとを備えており、そして固定フレームの垂直部分を構成する基部には、浴槽側壁を押圧するために可動フレームの垂直部に対して前進後退する押圧部が装着されていることである。可動フレームのフレーム幅やスライド長には特に制限はないが、本発明の浴槽用手摺りでは、可動フレームのスライド部のフレーム幅を固定フレームの載置部のフレーム幅よりも幅狭とし、スライド長を長くすることで、軽量構造にて多様な厚みの浴槽側壁に適合できるようにしている。
可動フレームのスライド部には、可動フレームを固定フレームへ取り付けた時、固定フレームの載置部の底面と略同じレベルとなる下端部を有するスカートが設けられている。ただし、スカートは可動フレームのスライド部の全長に亘り設けられている必要がなく、スライド部が固定フレームの載置部の上をスライドする量と略同等の長さか、やや長目の長さを有していれば足りる。
スカートは、可動フレームのスライド部の底面が平坦である場合、可動フレームのスライド部の底面から下方へ且つ可動フレームのスライド方向へ延びているリブを形成するような形態であってもよい。また、上述のように可動フレームのスライド部の底面が平坦である場合、スカートはスライド部の幅方向における左側領域及び右側領域のそれぞれに配置されていることが好ましい。
例えば可動フレームがスライド方向と直交する断面において下向きのコの字形状を有している場合、スライド部の下向きコの字形断面の両端部に形成される側壁が固定フレームの載置部の底面と略同じレベルとなる下端部を有していれば、前記下端面を有している側壁部分をスカートとして利用(兼用)することができる。
また、スカートが可動フレームのスライド部の下方に延びた壁を形成している場合は、スカートを可動フレームの補強リブとして機能させることもできる。
本発明において、スカートをスライド部の幅方向における左側領域及び右側領域のそれぞれに配置するのが好ましいのは、可動フレームの移動時に生じる押圧受け部の揺動を、押圧受け部の上端の幅方向の2箇所から規制することで、可動フレームおよび押圧受け部を安定してスライド移動等させることができるからである。
すなわち、浴槽側壁の上面に載置される固定フレームと、固定フレームの上にスライド可能に取り付けられた可動フレームとからなる一般的な浴槽用手摺りにおいては、可動フレームをスライド移動等する時に、可動フレームに支承された押圧受け部が周方向に揺動するため、固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かってしまうことがある。
ところが、本発明では、押圧受け部が揺動しようとすると押圧受け部の上端の左側領域又は右側領域がスカートの下端部と当接するため、可動フレームの移動時に生じる押圧受け部の揺動を確実に規制することができる。しかも、スカートの下端部は固定フレームの載置部の底面と略同じレベルに設定されているので、可動フレームの移動時、押圧受け部は可動フレームのスカートの下端部と固定フレームの載置部の底面との間で引っ掛かりを生じることなくスムーズに移動することができる。
本発明では、スカートは可動フレームの一部分を形成する一体部品として構成する必要はなく、可動フレームに対して着脱可能に可動フレームとは分離独立した別部品として構成してもよい。
例えば、スカートを断面視において下向きのコの字形状を有するように構成した場合は、スカートを可動フレームのスライド部に対して横方向からスライド挿入することにより、或いは上方向から嵌め込むことにより、スライド部の上に簡単にスライド可能に取り付けることができる。また、スカートは所定の高さ(位置)に下端部を備えていれば可動フレームのような高い剛性を求められることはないので、形状が重視されるスカートを強度が重視される可動フレームから分離することにより、過剰な材料の使用を抑制して効率よく製作することができる。
可動フレームのスライド方向に沿ったスカートの長さを一定にする場合、浴槽用手摺りの固定フレームには、スカートをスライド方向に受け入れることができる切欠き部を設けることが好ましい。
本発明の浴槽用手摺りでは、固定フレームの水平部分(横部材)を構成する載置部へ所定の高さ(位置)に下端部を備えたスカートのリブをスライド方向に受け入れることができる切欠き部を設けているので、スカートが可動フレームのスライド方向に沿った長さを調節できない場合でも、スカートを固定フレームと干渉させることなく、可動フレームを最大限に固定フレームへ近づけることができる。
例えば、可動フレームを固定フレームに対して最も近接した位置に固定しようとすると、所定の高さ(位置)に下端部を備えたスカートのリブが固定フレームの載置部と干渉するので、可動フレームの垂直部や垂直部に取り付けられた押圧受け部をスカートの長さ以下の距離に固定フレームへ近接させることができなくなる。ところが、本発明の浴槽用手摺りでは、固定フレームの載置部へ、スカートのリブをスライド方向に受け入れることができる切欠き部を設けているので、スカートのリブを固定フレームの載置部と干渉させることなく、可動フレームのスライド部の大半を固定フレームの載置部と重なり合うように近接させることができる。
また、本発明の浴槽用手摺りでは、可動フレームのスライド部の大半が固定フレームの載置部と重なり合う場合においても、スカートの下端部が固定フレームの切欠き部の中で載置部の底面と略同じレベルに保持されるため、押圧受け部が固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かることがなく、可動フレームをスムーズに固定フレームへ近づけることができる。
本発明のスカート及び切欠き部は、特許文献1に記載されているような押圧部と押圧部を動かすための移動措置が固定フレームに取り付けられており、そして、押圧受け部は可動フレームのスライドのみによって移動するようなタイプの浴槽用手摺りに対して適用しても最大限に利益を享受し得る。
より具体的には、押圧部を支承するボルト軸と、ボルト軸と螺合し且つ固定フレームの縦部材を構成する基部に回動自在に取り付けられているナットと、ナットを回動するためのハンドルノブとを含んでいる移動手段や、或いは押圧部を支承するボルト軸と、ボルト軸と螺合し且つ固定フレームの縦部材を構成する基部に回動不能に固定されているナットと、ボルト軸を回動するためのハンドルノブとを含んでいる移動手段を備えているタイプの浴槽用手摺りが、本発明のスカート及び切欠き部を適用することにより最大限に利益を享受し得る。
なぜなら、上述のようなタイプの浴槽用手摺りへ本発明のスカート及び切欠き部を適用すると、押圧部の押圧面の中心(例えば荷重点)が押圧受け部の受け面から外れることがないように、押圧受け部の上端を可能な限り固定フレームの載置部の下面へ近接させることができるようになると共に、可動フレームをスライド移動等する時、可動フレームに支承された押圧受け部が固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かることなく、可動フレームを最大限に固定フレームへ近づけることもできるようになるからである。
その結果、本発明の浴槽用手摺りでは、押圧受け部の上端の全部又は一部を押圧部の押圧面の中心よりも高い位置に配置することができるので、押圧部の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部の受け面からその領域外へ外れることにより生じる、浴槽側壁のねじり応力を効果的に抑制することができる。また、押圧部の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部の受け面から外れることにより、押圧受け部の受け面が浴槽側壁に対して傾斜(回転)した状態で押圧することも防止されるので、押圧受け部の上端の縁部や角部が浴槽側壁を局部的に押圧する(応力集中を起す)ことも効果的に防止することができる。
また、本発明の浴槽用手摺りでは、押圧受け部の上端を可能な限り固定フレームの載置部の下面へ近づけることにより、押圧受け部の浴槽側壁(側面)との当接面の上端が押圧部の浴槽側壁(側面)との当接面の上端と同じ高さとなるように配置することができるので、押圧受け部の上端或いは押圧受け部の浴槽側壁(側面)との当接面上端の縁部や角部が浴槽内壁を局部的に押圧することがなくなる結果、応力集中による浴槽内壁の破壊を防止することができる。
なお、本願明細書において、押圧部の浴槽側壁(側面)との「当接面」とは、浴槽側壁(側面)と対向する押圧部の「押圧面」の内、クランプ時、実際に浴槽側壁(側面)と当接(接触)する面を意味し、押圧受け部の浴槽側壁(側面)との「当接面」とは、浴槽側壁(側面)と対向する押圧受け部の「受け面」の内、クランプ時、実際に浴槽側壁(側面)と当接(接触)する面を意味する。
本願明細書において、当接面の上端の「高さ」とは絶対的な高さを意味するのではなく、例えば本体フレームの載置部の下面から当接面上端までの距離のように、本体フレームのある部分を基準とした場合の当該部分に対する相対的な位置(高さ)を意味する。
また、本願明細書において、押圧部の当接面の上端と押圧受け部の当接面の上端が「同じ高さ」である態様とは、厳密な意味において同じ高さである必要はなく、例えば押圧部の当接面の上端と押圧受け部の当接面の上端とが互いに高さ方向に5mm程度ズレているような場合であっても、「同じ高さ」である態様として取り扱っている。
本発明の浴槽用手摺りによれば、固定フレームの水平部分(横部材)を構成する載置部へ所定の下端部を備えたスカートと、該スカートのリブをスライド方向に受け入れることができる切欠き部を設けているので、固定フレームに対する可動フレームの近接離間位置に拠らず、可動フレームのスライド部の底面をスカートの下端部を介して固定フレームの載置部の底面と略同じレベルに接続できるため、可動フレームに支承された押圧受け部が固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かることがなく、可動フレームを最大限に固定フレームへ近づけることができる。
その結果、本発明の浴槽用手摺りによれば、押圧受け部の上端の全部又は一部を押圧部の押圧面の中心よりも高い位置に配置することができるので、押圧部の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部の受け面からその領域外へ外れることにより生じる、浴槽側壁のねじり応力を効果的に抑制することができる。また、押圧部の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部の受け面から外れることにより、押圧受け部の受け面が浴槽側壁に対して傾斜(回転)した状態で押圧することも防止されるので、押圧受け部の上端の縁部や角部が浴槽側壁を局部的に押圧する(応力集中を起す)ことも効果的に防止することができる。
また、本発明の浴槽用手摺りよれば、押圧受け部の上端を可能な限り固定フレームの載置部の下面へ近づけることにより、押圧受け部の浴槽側壁(側面)との当接面の上端が押圧部の浴槽側壁(側面)との当接面の上端と同じ高さとなるように配置することができるので、押圧受け部の上端或いは押圧受け部の浴槽側壁(側面)との当接面上端の縁部や角部が浴槽内壁を局部的に押圧することがなくなる結果、応力集中による浴槽内壁の破壊を防止することができる。
本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺りの全体概要図である。
図1に示される浴槽用手摺りの分解図である。
図1に示される浴槽用手摺りをボルト軸に沿って切り取った断面図である。
本実施形態の浴槽用手摺りにおいて、固定フレームと可動フレームとを(a)分離した状態、(b)離間接続した状態、(c)近接接続した状態を示した概要図である。
図4に示される浴槽用手摺りにおいて、固定フレームと可動フレームとを(a)離間接続した状態、(b)近接接続した状態を示した側面図である。
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺り1の主な構成を説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺り1の全体概要が示されており、図2には、図1に示される浴槽用手摺り1を主な部品に分解した態様が示されている。
図1,2に示されているように、浴槽用手摺り1の基本的骨格は、浴槽側壁の上面へ直接載置される載置部21と、載置部21と連結しており浴槽側壁の一の側面に当接される基部22とを備えた倒L字形の固定フレーム2と、固定フレーム2の載置部21の上にスライド可能に取り付けられるスライド部31と、スライド部31と連結しており浴槽側壁の他の側面に当接される垂直部32とを備えた倒L字形の可動フレーム3とから構成される。また、可動フレーム3のスライド部31には、可動フレーム3を固定フレーム2へ取付けた時、固定フレーム2の載置部21の底面と略同じレベルとなる下端部41を備えたスカート4が着脱自在に取り付けられている。
なお、可動フレーム3のフレーム幅やスライド長には特に制限はないが、本実施形態の浴槽用手摺り1では、可動フレーム3のスライド部31のフレーム幅を固定フレーム2の載置部21のフレーム幅よりも幅狭とし、スライド長を長くすることで、軽量構造にて多様な厚みの浴槽側壁に適合できるようになっている。
固定フレーム2の基部22には、浴槽側壁の側面を押圧する押圧部6と、押圧部6を前進及び後退させるための移動装置8が取り付けられており、固定フレーム2の基部22の外側であって固定フレーム2の上方には、使用者の身体を支えるためのメイングリップ(手摺り本体)23と、浴槽用手摺り1の傾転を防止するための脚部5が取り付けられている。一方、可動フレーム3の垂直部32には、押圧部6とは反対側の浴槽側壁の側面と当接する押圧受け部7と、浴槽内の使用者の動きを補助するためのサブグリップ33が取り付けられている。また、移動装置8はナット81を回転させるためのハンドルノブ80を含んでおり、ナット81の回転により螺進退されるボルト軸82の先端には、矩形平面を有する板状の押圧部6が首振り自在に取り付けられている。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1では、着脱自在に装着可能な保護カバー24,34を用いて固定フレーム2の載置部21と可動フレーム3のスライド部31と、そして可動フレーム3の垂直部32を覆うことにより、凹凸部などの危険箇所を減らしたり、通常は操作不要な部位の誤操作を防止したりすると共に、視覚的に見栄えを良くして清潔にしている(図2参照)。
メイングリップ23は、平面視が略矩形のリング状の上部グリップ230と、上部グリップ230と連結されており、複数の固定孔231が設けられている1対のグリップ支持部232とを含んでおり、メイングリップ23は、グリップ支持部232の固定孔231へ、固定フレーム2に取り付けられた挿入・解除手段の挿入ピン(図示せず)を挿入することより任意の高さに固定することができる。
脚部5は、ネジ50により固定フレーム2へネジ止めされる主脚部51と、主脚部51の内部に設けられた雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が外周面に設けられた補助脚部52とから構成されている。脚部5は、主脚部51に対し補助脚部52を回転させることによりその長さを調節することができる。
図2を参照して理解されるように、本実施形態の固定フレーム2の載置部21には、載置部21から基部22に亘り連続して延びている2本の補強リブ20と、可動フレーム3のスライド部31に装着されたスカート4を受け入れるための1対の切欠き部40と、そして載置部21の幅方向において、グリップ支持部232よりも外側へ向けて延びた延出部25が設けられている。
延出部25は、浴槽側壁の長手方向に沿って水平方向の力がメイングリップ23へ加えられた時、浴槽側壁の上面と当接することによりメイングリップ23に働く回転モーメントに抗するようにメイングリップ23を支えるので、メイングリップ23が浴槽側壁の上面上で浴槽側壁の長手方向へ回転したり転倒したりするのを強力に阻止する。なお、「載置部21の幅方向」とは、固定フレーム2の載置部21において押圧部6と押圧受け部7によって浴槽側壁をクランプする方向とは直交する方向の中の水平方向を意味し、浴槽用手摺り1を浴槽側壁へ取り付けた時、浴槽側壁の上面の長手方向と略一致する方向である。
図3には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1をボルト軸82に沿って切り取った断面図が示されている。浴槽用手摺り1の固定フレーム2は、載置部21と、載置部21に連結されており浴槽側壁の一方の側面へ当接される当接部23を備えた基部22とを含んでおり、全体として倒L字形の断面形状を有している。
一方、固定フレーム2へスライド及び着脱自在に取り付けられる可動フレーム3は、スライド部31と、スライド部31に連結された垂直部32とを含んでおり、全体として下向きの略L字形の断面形状を有している。さらに、固定フレーム2の載置部21の内面、押圧部6の内面および押圧受け部7の内面にはそれぞれ弾性を有する樹脂ラバー210,60及び70が装着されており、浴槽側壁の傷付け防止及び滑り止めが施されている。
固定フレーム2の基部21には、移動装置8のナット81が回動自在に取り付けられており、ナット81の回転により螺進退されるボルト軸82の先端には押圧部6が首振り自在に取り付けられている。また、移動装置8はトルク伝達・遮断手段83を含んでおり、ナット81はトルク伝達・遮断手段83を介してハンドルノブ80によって回転される。
図2,3に示されているように、固定フレーム2の載置部21の上面には、可動フレーム3のスライド方向に沿って等ピッチに配列された複数の固定用ネジ穴211と、固定用ネジ穴211の配列方向と直行する方向であって固定用ネジ穴211の配列に対して左右対称の位置に配置された1対のガイド用ネジ穴212が設けられている。
一方、可動フレーム3のスライド部31には、固定フレーム2の一対のガイド用ネジ穴212と整列し、互いに平行であって可動フレーム3のスライド方向へ延びている一対のスリット310が設けられている。また、スライド部31には、一対のスリット310の間で、可動フレーム3のスライド方向に沿って、固定フレーム2の固定用ネジ穴211と同じピッチで複数の貫通孔311が設けられている。貫通孔311は、固定フレーム2の固定用ネジ穴211の数よりも多く、且つ両端に配列された貫通孔間の距離がスリット310の長さよりも長くなるように配列されている。
このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、可動フレーム3の一対のスリット310のそれぞれへ、スリット310の幅よりも大きな直径の頭部を有するガイド用ネジ312をスリット310を通過させ、固定フレーム2のガイド用固定穴212に取り付けることにより、可動フレーム3を固定フレーム2に対し、固定フレーム2から離脱させることなくそのスライド方向が一方向へ規制されるように位置決めすることができる。また、固定フレーム2に対する可動フレーム3の位置を決めた後、可動フレーム3の貫通孔311を通過させて固定用ネジ313を固定フレーム2の固定用ネジ穴211へネジ止めすることにより、可動フレーム3を固定フレーム2の所望の位置に強固に固定することができる。
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1は、浴槽側壁の厚みに合わせて、可動フレーム3の垂直部32を、予め可能な限り固定フレーム2の基部22及び押圧部6へ近接させておくことができるので、浴槽側壁をクランプするために必要となる押圧部6の移動距離を必要最小限に抑えることができるようになる。そのため、押圧部6を押圧受け部7へ向けて螺進退させるためのボルト軸82長さなど移動装置8自体の大きさをコンパクトに設計することができる。
図4には、本実施形態の浴槽用手摺り1において、固定フレーム2と可動フレーム3とを(a)分離した状態、(b)離間接続した状態および(c)近接接続した状態のそれぞれの概要図が示されている。図5には、図4に示された本実施形態の浴槽用手摺り1において、固定フレーム2と可動フレーム3とを(a)離間接続した状態および(b)近接接続した状態のそれぞれの側面図が示されている。
図4,5を参照してよく理解されるように、可動フレーム3のスライド部31には、可動フレーム3を固定フレーム2へ取付けた時、固定フレーム2の載置部21の底面213と略同じレベルとなる下端部41を有するスカート4が設けられている。ただし、スカート4の長さは可動フレーム3のスライド部31の全長よりも短く、スライド部31が固定フレーム2の載置部21の上をスライドする量と略同等の長さか、やや長目の長さに設定されている(図5(a)(b))。
本実施形態の場合、可動フレーム3のスライド部31の底面は平坦であるので、スカート4は、取り付けた時、可動フレーム3のスライド部31の底面から下方へ且つ可動フレーム3のスライド方向へ延びているリブのような形態を有している(図4(b))。また、スカート4は、スライド部31の幅方向における左側領域及び右側領域のそれぞれに垂直なリブを形成するように配置されている(図4(a))。
本実施形態では、スカート4は、取り付けた時、スライド部31の幅方向における左側領域及び右側領域のそれぞれに配置されているので、可動フレーム3の移動時に生じる押圧受け部7の揺動を、押圧受け部7の上端の幅方向の2箇所から規制することで、可動フレーム3および押圧受け部7を安定してスライド移動等させることができる。
すなわち、浴槽側壁の上面に載置される固定フレームと、固定フレームの上にスライド可能に取り付けられた可動フレームとからなる一般的な浴槽用手摺りにおいては、可動フレームをスライド移動等する時に、可動フレームに支承された押圧受け部7が周方向に揺動するため、固定フレームの載置部の端部と衝突して引っ掛かってしまうことがある。
ところが、本実施形態では、押圧受け部7が揺動しようとすると押圧受け部7の上端の左側領域又は右側領域がスカート4の下端部41と当接するため、可動フレーム3の移動時に生じる押圧受け部7の揺動を確実に規制することができる。しかも、スカート4の下端部41は固定フレーム2の載置部21の底面213と略同じレベルに設定されているので、可動フレーム3の移動時、押圧受け部7は可動フレーム3のスカート4の下端部41と固定フレーム2の載置部21の底面213との間で引っ掛かりを生じることなくスムーズに移動することができる。
本実施形態では、スカート4は可動フレーム3から分離独立した別部品として、可動フレーム3に対して着脱可能に構成されている。
本実施形態では、スカート4は断面視において下向きのコの字形状を有しており、スカート4の下端部41付近には、可動フレーム3の下面と摺接することによりスライド部32から離脱を防止する水平リブ42が内側へ向けて設けられている(図2参照)。本実施形態のスカート4は、可動フレーム3のスライド部31に対して横方向からスライド挿入することにより、スライド部31の上に簡単にスライド可能に取り付けることができる。また、スカート4は所定の高さ(位置)に下端部41を備えていれば可動フレーム3のような高い剛性を求められることはないので、形状が重視されるスカート4を強度が重視される可動フレーム3から分離することにより、過剰な材料の使用を抑制して効率よく製作することができる。
本実施形態では、スカート4の、可動フレーム3のスライド方向に沿った長さが一定であるので、浴槽用手摺り1の固定フレーム2には、スカート4をスライド方向に受け入れることができる切欠き部40が設けられている。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、固定フレーム2の水平部分(横部材)を構成する載置部21へ所定の高さ(位置)に下端部41を備えたスカート4のリブをスライド方向に受け入れることができる切欠き部40を有しているので、スカート4の可動フレーム3におけるスライド方向の長さを調節できない場合でも、スカート4を固定フレーム2と干渉させることなく、可動フレーム3を最大限に固定フレーム2へ近づけることができる。切欠き部40は、載置部21の先端縁部から中央部付近にかけて可動フレーム3のスライド方向に開口しており、下端部41を備えたスカート4のリブの位置に合わせて2つ形成されている。
固定フレーム2に切欠き部40が設けられていない場合、可動フレーム3を固定フレーム2に対して最も近接した位置に固定しようとすると、下端部41を備えたスカート4のリブが固定フレーム2の載置部21と干渉してしまい、可動フレーム3をスカート4の長さ以下に固定フレーム2へ近接させることができなくなる。ところが、本実施形態の浴槽用手摺り1では、固定フレーム2の載置部21へ、スカート4のリブをスライド方向に受け入れるための切欠き部40を設けているので、スカート4のリブを固定フレーム2の載置部21と干渉させることなく、可動フレーム3のスライド部31の大半を固定フレーム2の載置部21と重なり合うように近接させることができる(図4(c)参照)。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1では、可動フレーム3のスライド部31の大半が固定フレーム2の載置部21と重なり合う場合においても、スカート4の下端部41が固定フレーム2の切欠き部40の中で載置部21の底面213と略同じレベルに保持されるため、押圧受け部7が固定フレーム2の載置部21の端部と衝突して引っ掛かることがなく、可動フレーム3をスムーズに固定フレーム2へ近づけることができる(図5(b)参照)。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、押圧部6を押圧受け部7へ向けて前進及び後退させるための移動装置8は、固定フレーム2の基部22へ回動可能に取り付けられたナット81と、ナット81を回動するためのハンドルノブ80と、そして先端部が押圧部6に連結されており且つナット81に螺合するボルト軸82とから構成されており、さらに所定の力未満ではハンドルノブ80からナット81へ回動力を伝達し、そして、所定の力以上ではハンドルノブ80からナット81への回動力の伝達を遮断するトルク伝達・遮断手段83を含んでいる。
本実施形態では、移動装置6はナット81及びボルト軸82によって構成されているので、ボルト軸82の螺進退により押圧部6を押圧受け部7に対して容易に近接又は離間させることができ、さらにその状態も確実に保持することができる。さらに、本実施形態では、ナット81は固定フレーム2の基部22へ回動可能に取り付けられており、ハンドルノブ80によってナット81を回転させることによりボルト軸82及びその先端に取り付けられた押圧部6が螺進退するので、ハンドルノブ80の位置は基部22に対して変わることがない。その結果、本実施形態では、浴槽用手摺り1からハンドルノブ80が突出するのを抑制できるので使用者にとって安全である。
また、本実施形態の移動装置8はトルク伝達・遮断手段83を備えているので、使用者がハンドルノブ80を回して押圧部6を押圧受け部7へ向けて強力に押し込んでも浴槽側壁を破損することなく、本実施形態の浴槽用手摺り1を必要にして十分な押圧力(クランプ力)をもって浴槽側壁へ取り付けることができる。また、押圧部6の移動装置8へ上述のトルク伝達・遮断手段83を設けても、ハンドルノブ80の位置は固定フレーム2の基部22に対して変わることがない。
なお、図示しないが、本実施形態のトルク伝達・遮断手段83は、ハンドルノブ80の内部に設けられており、突起と突起の間に形成された凹部等からなる第1の係止手段と、ナット81の端部に設けた欠き等の凹部からなる第2の係止手段とをピン等の係合手段によって連結することにより、所定の力以上でも、常にハンドルノブ80からナット81へ回動力を伝達できるようにすることができる。
その結果、本実施形態の浴槽用手摺り1では、押圧受け部7の上端の全部又は一部を押圧部6の押圧面の中心よりも高い位置に配置することができるので、押圧部6の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部7の受け面からその領域外へ外れることにより生じる、浴槽側壁のねじり応力を効果的に抑制することができる。また、押圧部6の押圧面の中心や荷重点が押圧受け部7の受け面から外れることにより、押圧受け部7の受け面が浴槽側壁に対して傾斜(回転)した状態で押圧することも防止されるので、押圧受け部7の上端の縁部や角部が浴槽側壁を局部的に押圧する(応力集中を起す)ことも効果的に防止することができる(図3及び図5(a)(b)参照)。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1では、押圧受け部7の上端を可能な限り固定フレーム2の載置部21の下面へ近づけることにより、押圧受け部7の浴槽側壁(側面)との当接面の上端が押圧部6の浴槽側壁(側面)との当接面の上端と同じ高さとなるように配置することができるので、押圧受け部7の上端或いは押圧受け部7の浴槽側壁(側面)との当接面上端の縁部や角部が浴槽内壁を局部的に押圧することがなくなる結果、応力集中による浴槽内壁の破壊を防止することができる(図3及び図5(a)(b)参照)。