実施の形態1.
<電動機の構成>
本発明の実施の形態1の電動機100について説明する。図1は、本発明の実施の形態1の電動機100を示す断面図である。電動機100は、ロータ5に永久磁石53が埋め込まれた永久磁石埋込型電動機であり、例えばロータリ圧縮機300(図34)に用いられる。
電動機100は、インナーロータ型と呼ばれる電動機であり、ステータ1と、ステータ1の内側に回転可能に設けられたロータ5とを有する。ステータ1とロータ5との間には、例えば0.3~1.0mmのエアギャップが形成されている。
以下では、ロータ5の回転軸である中心軸C1の方向を、単に「軸方向」と称する。また。中心軸C1を中心とする周方向(図1に矢印R1で示す)を、単に「周方向」と称する。また、中心軸C1を中心とする半径方向を、単に「径方向」と称する。なお、図1は、中心軸C1に直交する面における断面図である。
<ロータの構成>
ロータ5は、円筒状のロータコア50と、ロータコア50に取り付けられた永久磁石53と、ロータコア50の中央部に固定されたシャフト58とを有する。シャフト58は、例えば、圧縮機300(図34)のシャフトである。
ロータコア50は、積層鋼板を軸方向に積層し、カシメ部等で一体化したものである。積層鋼板は、例えば電磁鋼板であり、板厚は、例えば0.1~0.7mm(一例としては、0.35mm)である。
ロータコア50の外周面に沿って、永久磁石53が挿入される複数の磁石挿入孔51が形成されている。磁石挿入孔51は、ロータコア50を軸方向に貫通する貫通孔である。各磁石挿入孔51は、1磁極に相当する。磁石挿入孔51の数は、ここでは6であり、従って磁極数は6である。但し、磁石挿入孔51の数は6に限定されるものではなく、2以上であればよい。
磁石挿入孔51は、その周方向中央部が最も中心軸C1側に突出するように、V字状に形成されている。各磁石挿入孔51には、周方向中心部を挟んで両側に、2つの永久磁石53が配置されている。同じ磁石挿入孔51に配置された2つの永久磁石53は、互いに同じ極が径方向外側を向くように着磁されている。
永久磁石53は、軸方向に長い平板状の部材であり、ロータコア50の周方向に幅を有し、径方向に厚さを有する。永久磁石53の厚さは、例えば2mmである。永久磁石53は、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を主成分とする希土類磁石で構成されている。永久磁石53は、厚さ方向に着磁されている。
なお、上記の希土類磁石は、温度の上昇と共に保磁力が低下する性質を有し、低下率は-0.5~-0.6%/Kである。圧縮機で想定される最大負荷発生時に希土類磁石の減磁が生じないようにするためには、1100~1500A/mの保磁力が必要である。この保磁力を150℃の雰囲気温度下で確保するためには、常温(20℃)での保磁力が1800~2300A/mであることが必要である。
そのため、希土類磁石には、ディスプロシウム(Dy)を添加してもよい。希土類磁石の常温での保磁力は、Dyを添加していない状態で1800A/mであり、2重量%のDyを添加することで2300A/mとなる。但し、Dyの添加は製造コストの増加の原因となり、また残留磁束密度の低下を招く。そのため、Dyの添加量をできるだけ少なくするか、またはDyを添加しないことが望ましい。
ここでは、各磁石挿入孔51に2つの永久磁石53を配置しているが、各磁石挿入孔51に1つずつ永久磁石53を配置してもよい。この場合、磁石挿入孔51は、上述したV字状ではなく、直線状に形成する。
磁石挿入孔51の周方向両端部には、フラックスバリア(漏れ磁束抑制穴)52が形成されている。フラックスバリア52は、隣り合う磁極間の漏れ磁束を抑制するものである。フラックスバリア52とロータコア50の外周との間のコア部分は、隣り合う磁極間の磁束の短絡を抑制するため、薄肉部となっている。薄肉部の厚さは、ロータコア50の積層鋼板の厚さと同じであることが望ましい。
<ステータの構成>
ステータ1は、ステータコア10と、ステータコア10に巻き付けられたコイル4とを有する。ステータコア10は、積層鋼板を軸方向に積層し、カシメ部18により一体化したものである。積層鋼板は、例えば電磁鋼板であり、板厚は、例えば0.1~0.7mm(一例としては、0.35mm)である。
ステータコア10は、中心軸C1を中心とする環状のヨーク11と、ヨーク11から径方向内側(すなわち中心軸C1に向かう方向)に延在する複数のティース12とを有する。ティース12は、径方向内側の端部に、ロータ5の外周面に対向する歯先部13を有する。
ここでは、9つのティース12が周方向に一定間隔で配置されているが、ティース12の数は2以上であればよい。周方向に隣り合うティース12の間には、コイル4を収容する空間であるスロット14が形成される。
また、ステータコア10は、ティース12毎に複数(ここでは9つ)の分割コア9が周方向に連結された構成を有する。これらの分割コア9は、ヨーク11に形成された分割面部15で互いに連結されている。分割面部15は、例えば、周方向に隣り合うティース12の中間位置に形成されている。分割コア9は、分割面部15の溶接または凹凸形状(図示せず)の嵌合により、互いに接合される。
コイル4は、例えば、マグネットワイヤを、インシュレータ2および絶縁フィルム3(図6(C))を介してティース12に巻き付けたものである。コイル4の線径は、例えば1.0mmである。コイル4は、各ティース12に、集中巻により例えば80ターン巻かれている。なお、コイル4の線径およびターン数は、要求される回転数、トルク、印加電圧あるいはスロット14の面積に応じて決定される。
ステータコア10は、後述する図8に示すように、軸方向両端部に位置する第1コア部10Aと、軸方向中央部に位置する第2コア部10Bとを有する。なお、第1コア部10Aは、ステータコア10の軸方向両端部に限らず、軸方向の少なくとも一端部に設けられていればよい。
図2は、ステータコア10の第2コア部10B(すなわち軸方向中央部のコア部)を示す平面図である。第2コア部10Bは、環状の第2ヨーク部11Bと、第2ヨーク部11Bから径方向内側に延在する複数の第2ティース部12Bとを有する。第2ティース部12Bは、その径方向内側の端部に、第2ティース部12Bの他の部分よりも幅の広い第2歯先部13Bを有する。
第2コア部10Bは、それぞれ1つの第2ティース部12Bを含む複数の分割コア9Bが、上述した分割面部15で連結された構成を有する。
図3は、第2コア部10Bの1つの分割コア9Bを示す図である。第2ヨーク部11Bは、径方向外側の外周面110と、径方向内側の内周面111Bとを有する。第2ティース部12Bは、周方向両側の側面121Bを有する。第2歯先部13Bは、ロータ5に対向する先端面130と、径方向外側の外周面131Bとを有する。
第2ヨーク部11Bの内周面111Bと、第2ティース部12Bの側面121Bと、第2歯先部13Bの外周面131Bとは、スロット14に面している。
第2ヨーク部11Bの外周面110には、凹部19が形成されている。凹部19は、コイル4の巻き付け時にステータコア10を保持する治具が係合する部分であり、また、電動機100が圧縮機に取り付けられた状態で冷媒流路となる部分である。凹部19は、例えば、第2ティース部12Bの幅方向中心を通る径方向の直線上に配置されている。
第2ヨーク部11Bには、インシュレータ2の突起部26(図8)が圧入される穴部16が形成されている。穴部16は、第2コア部10Bを軸方向に貫通していることが望ましい。但し、穴部16は、第2コア部10Bを軸方向に貫通していなくても、第2コア部10Bの軸方向端部から軸方向に延在していればよい。
穴部16の断面形状は半円形であり、直線部分が径方向外側を向いている。そのため、比較的大きな断面積の穴部16を、第2ヨーク部11Bの外周寄りに形成することができる。すなわち、穴部16を、磁束の流れをできるだけ遮らないように配置することができる。但し、穴部16の断面形状は、半円形に限定されるものではない。
第2ヨーク部11Bには、積層鋼板を互いに固定するカシメ部18が形成されている。カシメ部18は、穴部16の周方向両側に2つ形成されている。カシメ部18は、ここではVカシメであるが、例えば丸カシメであってもよい。
図4は、ステータコア10の第1コア部10A(すなわち軸方向端部のコア部)を示す平面図である。第1コア部10Aは、環状の第1ヨーク部11Aと、第1ヨーク部11Aから径方向内側に延在する複数の第1ティース部12Aとを有する。第1ティース部12Aは、その径方向内側の端部に、第1ティース部12Aの他の部分よりも幅の広い第1歯先部13Aを有する。
第1コア部10Aは、それぞれ1つの第1ティース部12Aを含む複数の分割コア9Aが、上述した分割面部15で連結された構成を有する。
図5は、第1コア部10Aの1つの分割コア9Aを示す図である。図5には、さらに第2コア部10Bの分割コア9B(図3)の輪郭を破線で示している。第1ヨーク部11Aは、径方向外側の外周面110と、径方向内側の内周面111Aとを有する。第1ティース部12Aは、周方向両側の側面121Aを有する。第1歯先部13Aは、ロータ5に対向する先端面130と、径方向外側の外周面131Aとを有する。
第1ヨーク部11Aの内周面111A、第1ティース部12Aの側面121A、および第1歯先部13Aの外周面131Aは、いずれもスロット14に面している。
第1ヨーク部11Aと第2ヨーク部11B(図2)とにより、ヨーク11(図1)が形成される。第1ティース部12Aと第2ティース部12B(図2)とにより、ティース12(図1)が形成される。第1歯先部13Aと第2歯先部13B(図2)とにより、歯先部13(図1)が形成される。
第1ヨーク部11Aの内周面111Aは、第2ヨーク部11Bの内周面111Bよりも径方向外側に変位した位置にある。また、第1ティース部12Aの側面121Aは、第2ティース部12Bの側面121Bよりも幅方向(周方向)内側に変位した位置にある。第1歯先部13Aの外周面131Aは、第2歯先部13Bの外周面131Bよりも径方向内側に変位した位置にある。
すなわち、第1ヨーク部11Aの内周面111A、第1ティース部12Aの側面121A、および第1歯先部13Aの外周面131Aは、いずれも、スロット14の面積を大きくする方向に変位した位置にある。
そのため、第1ヨーク部11Aの内周面111Aに隣接する部分、第1ティース部12Aの側面121Aに隣接する部分、および第1歯先部13Aの外周面131Aに隣接する部分には、段差部125(図6(A))が形成される。言い換えると、スロット14に面する段差部125が設けられる。
なお、このような構成に限らず、第1ヨーク部11Aの内周面111A、第1ティース部12Aの側面121A、および第1歯先部13Aの外周面131Aのうちの少なくとも1つ(例えば第1ティース部12Aの側面121A)が、スロット14の面積を大きくする方向に変位し、そこに段差部125が形成されていればよい。
第1ヨーク部11Aの外周面110は、第2ヨーク部11Bの外周面110(図3)と同一面上にある。また、第1歯先部13Aの先端面130は、第2歯先部13Bの先端面130(図3)と同一面上にある。
第1ヨーク部11Aには、インシュレータ2の突起部26(図8)が圧入される穴部16が形成されている。穴部16は、第1コア部10Aを軸方向に貫通している。穴部16の断面形状は、上述した第2ヨーク部11Bの穴部16の断面形状と同じである。
第1ヨーク部11Aには、カシメ部18および凹部19が形成されているが、これらの配置および形状は、第2ヨーク部11B(図3)に形成されているものと同じである。
図6(A)は、ステータコア10(分割コア9)を示す斜視図である。上記の通り、第1ヨーク部11Aの内周面111Aに隣接する部分、第1ティース部12Aの側面121Aに隣接する部分、および第1歯先部13Aの外周面131Aに隣接する部分には、段差部125が形成される。この段差部125に、次に説明するインシュレータ2が嵌合する。
図6(B)は、ステータコア10にインシュレータ2を取り付けた状態を示す斜視図である。インシュレータ2は、ステータコア10の軸方向の両端部、すなわち第1コア部10A(図6(A))に、1つずつ取り付けられている。インシュレータ2は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂で構成される。
各インシュレータ2は、ヨーク11に取り付けられる壁部25と、ティース12に取り付けられる胴部22と、歯先部13に取り付けられるフランジ部21とを有する。フランジ部21と壁部25とは、胴部22を挟んで径方向に互いに対向している。
胴部22には、コイル4が巻き付けられる。フランジ部21および壁部25は、胴部22に巻き付けられたコイル4を径方向両側からガイドする。フランジ部21および壁部25には、胴部22に巻き付けられるコイル4を位置決めする段差部23を設けてもよい。
図6(C)は、ステータコア10にインシュレータ2および絶縁フィルム3を取り付けた状態を示す斜視図である。ステータコア10のうち、第2コア部10Bのスロット14側の面には、絶縁フィルム3が取り付けられている。絶縁フィルム3は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂で構成される。絶縁フィルム3は、第2ヨーク部11Bの内周面111Bと、第2ティース部12Bの側面121Bと、第2歯先部13Bの外周面131B(いずれも図6(B))とを覆っている。
インシュレータ2および絶縁フィルム3は、ステータコア10と、スロット14内のコイル4とを電気的に絶縁する。
図7(A)は、ティース12と、その周囲のインシュレータ2および絶縁フィルム3を示す、径方向に直交する面における断面図である。上述したように、第1ティース部12Aの周方向両側には、段差部125が形成される。インシュレータ2は、段差部125に嵌合することにより、ティース12の軸方向端部に取り付けられる。なお、上述したように、段差部125は、第1ヨーク部11Aの内周面111A(図6(A))の周方向内側および第1歯先部13Aの外周面131A(図6(A))の径方向外側にも形成される。
このように構成されているため、インシュレータ2は、ティース12からスロット14側に突出しないように取り付けられる。これにより、スロット14の有効面積を大きくし、コイル4の巻数を多くすることができる。このようにコイル4の巻数を多くすることで、コイル抵抗(すなわち銅損)が低減し、モータ効率が向上する。
図7(B)は、比較例のティース12とインシュレータ200とを示す、図7(A)に対応する断面図である。比較例では、ティース12が矩形状の断面を有し、このティース12を軸方向両端と周方向両端(すなわち両側面)から囲むようにインシュレータ200が設けられる。この比較例では、インシュレータ200がスロット14側に突出するため、図7(A)に示した構成と比較して、スロット14の有効面積が小さくなる。
図8は、電動機100を示す縦断面図である。上記の通り、ステータコア10は、軸方向両端部に第1コア部10Aを有し、軸方向中央部に第2コア部10Bを有する。例えば、ステータコア10の軸方向長さが45mmの場合、第1コア部10Aの軸方向長さはそれぞれ5mmであり、第2コア部10Bの軸方向長さは35mmである。なお、図8並びに後述する図9(C),(D)、図13および図14では、図示の便宜上、積層鋼板の厚さを厚く示している。
ステータコア10には、上記の通り、穴部16が形成されている。穴部16は、ここでは、ステータコア10(すなわち第1コア部10Aおよび第2コア部10B)を軸方向に貫通している。但し、穴部16は、第1コア部10Aを貫通して第2コア部10Bに到達していればよい。
インシュレータ2は、ステータコア10の穴部16に圧入される突起部26を有する。突起部26は、インシュレータ2の壁部25から軸方向に突出している。突起部26は、穴部16内において、第1コア部10Aを通過して、第2コア部10Bの位置まで到達している。突起部26の断面形状は、穴部16の断面形状と同じである。
図9(A)は、第1コア部10Aを示す断面図であり、図9(B)は、第2コア部10Bを示す断面図である。図9(C)は、図9(A)に示した線分9C-9Cにおける矢視方向の断面図である。図9(D)は、図9(A)に示した線分9D-9Dにおける矢視方向の断面図である。
図9(A)~(C)に示すように、第1コア部10Aのスロット14側には、段差部125が形成される。この段差部125に、インシュレータ2が嵌合する。これにより、インシュレータ2は、ステータコア10の軸方向端部(すなわち第1コア部10A)に取り付けられる。
図9(D)に示すように、インシュレータ2の突起部26は、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bにおいて穴部16に嵌合している。言い換えると、インシュレータ2の突起部26は、第1コア部10Aを貫通して第2コア部10Bに到達している。
ステータコア10では、第1コア部10Aの体積は比較的小さいが、第2コア部10Bの体積は大きい。すなわち、第2コア部10Bは、土台となる。そのため、インシュレータ2の突起部26が第1コア部10Aを貫通して第2コア部10Bに到達することにより、インシュレータ2および第1コア部10Aを第2コア部10Bに強固に固定することができる。
ステータ1を組み立てる際には、図8に示したように積層鋼板を積層して、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bからなる分割コア9を形成する。そして、分割コア9の軸方向両端部の第1コア部10Aにインシュレータ2をそれぞれ取り付ける。このとき、インシュレータ2の突起部26を、穴部16に圧入する。
その後、分割コア9の第2ティース部12Bの側面に絶縁フィルム3(図6(C))を配置し、インシュレータ2および絶縁フィルム3を介して、ティース12にコイル4を巻き付ける。そして、9つの分割コア9を環状に組み合わせ、例えば溶接により一体に固定する。これにより、図1に示したステータ1が完成する。
次に、第1ティース部12Aの位置ずれ防止作用について、比較例と対比して説明する。比較例の電動機は、穴部16および突起部26を有さないことを除き、実施の形態1の電動機100と同様の構成を有する。説明の便宜上、比較例の電動機の構成要素にも、実施の形態1の電動機100の構成要素と同様の符号を付して説明する。
図10(A)は、比較例の第1コア部10Aを示す断面図であり、図10(B)は、比較例の第2コア部10Bを示す断面図である。図10(C)は、図10(A)に示した線分10C-10Cにおける矢視方向の断面図である。図10(A)および(B)に示すように、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bには、穴部16が形成されていない。また、インシュレータ2には、突起部26が形成されていない。
図10(C)に示すように、コイル4は、インシュレータ2を介してティース12に巻き付けられる。コイル4の巻き付けによる荷重Fは、インシュレータ2を介して第1ティース部12Aに加わる。そのため、第1ティース部12Aが、コイル4の巻き付け方向である幅方向(すなわち周方向)に位置ずれする可能性がある。第1ティース部12Aの位置ずれが生じると、電動機100の制御性および振動特性に影響が及ぶ。
図11(A)および(B)は、実施の形態1の第1コア部10Aおよび第2コア部10Bをそれぞれ示す断面図である。図11(A)および(B)に示すように、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bには、穴部16が形成されている。また、インシュレータ2の突起部26は、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bにおいて穴部16に嵌合している。
比較例と同様、コイル4の巻き付けによる荷重Fは、インシュレータ2を介して第1ティース部12Aに加わる。しかしながら、インシュレータ2の突起部26が、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bにおいて穴部16に嵌合しており、第1コア部10Aを第2コア部10Bに強固に固定しているため、第1ティース部12Aの位置ずれが防止される。このように第1ティース部12Aの位置ずれが防止されることにより、電動機100の制御性および振動特性を良好に保つことができる。
なお、突起部26は、インシュレータ2の壁部25の周方向中央部から径方向外側に突出する凸部25a(図6(C))から下方に突出するように形成されている。但し、このような構成に限らず、インシュレータ2から軸方向に突出して穴部16に嵌合していればよい。
図12(A)~(F)は、実施の形態1のステータコア10の穴部16および段差部125の構成例を示す図である。図12(A)に示した構成例は、図5および図9(A)~(D)を参照して説明した通りである。図12(A)において、第1ティース部12Aの幅方向の中心を通る径方向の直線を、直線T1とする。なお、直線T1は、第1ティース部12Aの周方向中心と中心軸C1(図1)とを通る直線ということもできる。
図12(A)に示した構成例では、ヨーク11(11A,11B)の穴部16は、直線T1上に形成され、直線T1に対して対称な形状を有する。第1ティース部12Aの両側の段差部125は、直線T1に対して互いに対称な位置に形成され、互いに対称な形状を有する。言い換えると、ステータコア10の穴部16および段差部125は、いずれも、直線T1に対して対称に形成されている。
図12(B)に示した構成例では、第1ヨーク部11Aの内周面111Aで且つ第1ティース部12Aの両側に、径方向外側に退避した凹部112がそれぞれ形成されている。この凹部112は、段差部125の一部を構成する。凹部112は、第1ヨーク部11Aにおいて直線T1に対して対称な2箇所にそれぞれ形成されている。すなわち、凹部112を含む段差部125は、直線T1に対して対称に形成されている。穴部16は、図12(A)を参照して説明した通りである。
図12(C)に示した構成例では、第1歯先部13Aと第2歯先部13Bとが同一形状を有する。すなわち、第1歯先部13Aの外周面131Aと第2歯先部13Bの外周面131Bとは、同一面上に位置する。そのため、段差部125は、第1ヨーク部11Aの内周面111Aと、ティース12の側面121Aに沿って形成され、第1歯先部13Aの外周面131Aには形成されない。この構成例でも、段差部125は、直線T1に対して対称に形成されている。穴部16は、図12(A)を参照して説明した通りである。
図12(D)に示した構成例では、ティース12の周方向の一方の側にのみ、図12(B)を参照して説明した凹部112が形成されている。そのため、凹部112を含む段差部125は、直線T1に対して非対称に形成されている。穴部16は、図12(A)を参照して説明した通りである。
図12(E)に示した構成例では、ヨーク11において直線T1に対して対称な2箇所に、それぞれ穴部16が形成されている。2つの穴部16は、直線T1に対して対称な形状を有する。段差部125は、図12(A)を参照して説明した通りである。
図12(F)に示した構成例では、ヨーク11において直線T1の一方の側に、穴部16が形成されている。すなわち穴部16は、直線T1に対して非対称に形成されている。段差部125は、図12(A)を参照して説明した通りである。
図12(A)~(F)に示した6つの構成例のうち、図12(A)~(E)の構成例では、穴部16が直線T1に対して対称に形成されている。穴部16が直線T1に対して非対称に形成されていると、コイル4からインシュレータ2を介してステータコア10に加わる荷重(モーメント)が周方向の両側でアンバランスになり、ステータコア10に変形が生じて、第1ティース部12Aの位置ずれ抑制効果が低下する。
これに対し、穴部16が直線T1に対して対称に形成されていると、コイル4からインシュレータ2を介してステータコア10に加わる荷重(モーメント)が周方向の両側でつり合い、ステータコア10の変形を抑えることができる。これにより、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、図12(A)~(C),(E),(F)の構成例では、段差部125が直線T1に対して対称に形成されている。段差部125を直線T1に対して対称に形成することにより、穴部16を対称に形成した場合と同様の理由で、ステータコア10の変形を抑え、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。また、段差部125を直線T1に対して対称に形成することは、電動機100のエネルギー効率、制御性および振動特性の面でも望ましい。
図13は、穴部16および突起部26を示す断面図である。穴部16は、上記の通り、第1コア部10Aを貫通しているが、さらに第2コア部10Bも貫通していることが望ましい。穴部16が第2コア部10Bを貫通していれば、第2コア部10Bを1種類の積層鋼板で形成することができるためである。
2つのインシュレータ2のそれぞれの突起部26は、第1コア部10Aの軸方向両端面から穴部16に圧入され、穴部16の軸方向中央で互いに当接する。これにより、突起部26の長さを最大限まで長くすることができ、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
図14は、穴部16および突起部26の他の例を示す断面図である。穴部16は、第1コア部10Aを貫通し、さらに第2コア部10Bも貫通している。2つのインシュレータ2のそれぞれの突起部26は、第1コア部10Aの軸方向両端面から穴部16に圧入されているが、互いに当接してはいない。そのため、穴部16の軸方向中央部には、突起部26が圧入されていない空洞部Bが存在する。
この場合も、突起部26が、穴部16において第2コア部10Bの位置に到達しているため、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する作用を発揮することができる。
図15は、ステータコア10(図1)のカシメ部18と穴部16との位置関係を示す図である。カシメ部18(すなわち固定部)は、ヨーク11において、穴部16の周方向両側に形成されている。なお、積層鋼板を固定する固定部は、カシメ部に限らず、例えば接着部(接着層)であってもよい。
図15において、2つのカシメ部18を結ぶ直線を、直線M1とする。穴部16は、2つのカシメ部18を結ぶ直線M1と重なるように形成されている。コイル4の巻き付けによる荷重Fは、インシュレータ2を介して第1コア部10Aに加わり、さらに穴部16内の突起部26を介して第2コア部10Bにも伝わる。突起部26の両側にカシメ部18を形成することにより、カシメ部18で荷重を受けることができる。
特に、2つのカシメ部18を結ぶ直線M1が、ティース12の幅方向(すなわち上記の直線T1に直交する方向)と平行であることが望ましい。コイル4の巻き付けによる荷重Fは、ティース12の幅方向と平行であるため、穴部16を直線M1上に形成することにより、カシメ部18で荷重を効果的に受けることができる。すなわち、コイル4の巻き付けによる第1ティース部12Aの位置ずれを効果的に防止することができる。
図16は、カシメ部18と穴部16との位置関係の他の例を示す図である。図16では、カシメ部18は、ヨーク11において、穴部16の周方向の一方の側(例えば図中左側)に形成されている。なお、カシメ部の代わりに、接着部(接着層)を用いてもよい。
この場合も、穴部16を、ティース12の幅方向と平行でカシメ部18を通る直線M1と重なるように形成することにより、コイル4の巻き付けによる荷重をカシメ部18で受けることができる。すなわち、コイル4の巻き付けによる第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
図17は、ステータ1を、圧縮機の密閉容器6(例えば図34に示すフレーム301)に取り付けた状態を示す図であり、コイル4は省略している。ステータコア10は、例えば焼き嵌めにより、円筒状の密閉容器6の内側に嵌合している。そのため、ステータコア10は、密閉容器6から圧縮応力を受ける。
図18は、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bと密閉容器6との嵌合状態を説明するための図である。第1コア部10Aおよび第2コア部10Bは、いずれも外周面110が密閉容器6に接している。そのため、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bは、図中矢印で示すように、密閉容器6から径方向内側に向けて圧縮応力を受ける。
第1コア部10Aは、第2コア部10Bと比較して分割面部15が短いため、圧縮応力が集中しやすく、これにより磁気特性が低下する可能性がある。しかしながら、穴部16は、密閉容器6からの圧縮応力を逃がす作用を有する。そのため、密閉容器6から圧縮応力を受けても、第1コア部10Aにおける磁気特性の低下を抑制することができる。
<実施の形態の効果>
以上説明したように、実施の形態1では、ステータコア10が、軸方向端部の第1コア部10Aと軸方向中央部の第2コア部10Bとを有し、第1コア部10Aは第2コア部10Bよりもスロット14の面積が大きい。また、ステータコア10は、第1コア部10Aを貫通して第2コア部10Bに達する穴部16を有する。インシュレータ2は、穴部16に第2コア部10Bの位置まで挿入される突起部26を有する。そのため、インシュレータ2の突起部26により、第1コア部10Aを第2コア部10Bに強固に固定することができる。その結果、コイル4の巻き付けによる荷重に対して、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
また、ステータコア10の第1コア部10Aにおける第1ティース部12Aの周方向の幅が、第2コア部10Bにおける第2ティース部12Bの周方向の幅よりも狭いため、第1ティース部12Aの側方に段差部125を形成することができ、この段差部125にインシュレータ2を嵌合させることができる。
また、ステータコア10のヨーク11およびティース12のうち、ヨーク11のみにカシメ部18(固定部)が設けられているため、ロータ5からティース12に流れる磁束をできるだけ遮らないようにし、エネルギー効率を向上することができる。
また、穴部16が、ティース12の幅方向と平行でカシメ部18を通る直線M1と重なるように設けられているため、コイル4の巻き付けによる荷重をカシメ部18で受けることができる。これにより、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、穴部16が、複数のカシメ部18を結ぶ直線M1と重なるように設けられているため、コイル4の巻き付けによる荷重を複数のカシメ部18で受けることができる。これにより、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果をさらに高めることができる。
また、穴部16が、ティース12の幅方向中心を通る径方向の直線T1に対して対称に形成されているため、コイル4からインシュレータ2を介してステータコア10に加わる荷重が周方向の両側で釣り合い、これにより第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、インシュレータ2が、ステータコア10の第1コア部10Aと第2コア部10Bとの間の段差部125に嵌合するため、インシュレータ2のスロット14側への突出量を小さくすることができる。これにより、スロット14の有効面積を大きくし、コイル4の巻き数を増加させることができる。その結果、コイル抵抗(すなわち銅損)を低減し、モータ効率をさらに向上することができる。
また、段差部125が、ティース12の幅方向中心を通る径方向の直線T1に対して対称に形成されているため、コイル4からインシュレータ2を介してステータコア10に加わる荷重が周方向の両側で釣り合い、これにより第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、穴部16が、第2コア部10Bを軸方向に貫通しているため、第2コア部10Bを1種類の積層鋼板で形成することができ、製造コストを低減することができる。また、突起部26が第1コア部10Aおよび第2コア部10Bを軸方向に貫通しているため、突起部26の長さを十分に確保することができ、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、ステータコア10が、その外周面110で密閉容器6の内周面に嵌合しているため、密閉容器6から圧縮応力を受けるが、穴部16によって圧縮応力を逃がすことができるため、ステータコア10の磁気特性の低下を抑制することができる。
なお、ここでは、複数の分割コア9を連結したステータコア10を用いる場合について説明したが、環状に一体に形成されたステータコア10を用いてもよい。
実施の形態2.
図19(A)は、実施の形態2のステータコア10の第1コア部10Aを示す断面図であり、図19(B)は、第2コア部10Bを示す断面図である。図19(C)は、図19(A)に示した線分19C-19Cにおける矢視方向の断面図である。図19(D)は、図9(A)に示した線分19D-19Dにおける矢視方向の断面図である。実施の形態2は、穴部17および突起部27の断面形状が、実施の形態1と異なる。
図19(A)および(B)に示すように、第1コア部10Aの第1ヨーク部11Aおよび第2コア部10Bの第2ヨーク部11Bには、穴部17が形成されている。穴部17は軸方向に延在し、断面形状は円形である。穴部17は、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bを軸方向に貫通していることが望ましいが、第1コア部10Aを貫通して第2コア部10Bに到達していればよい。穴部17の配置は、実施の形態1の穴部16(図9(A))と同様である。
図19(C)および(D)に示すように、第1コア部10Aに取り付けられたインシュレータ2は、穴部17に圧入される突起部27を有する。突起部27の断面形状は、円形である。突起部27は、穴部17内において第1コア部10Aを通過し、第2コア部10Bの位置まで到達している。そのため、第1コア部10Aを第2コア部10Bに強固に固定し、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
図20(A)~(F)は、実施の形態2のステータコア10の穴部17および段差部125の構成例を示す図である。図20(A)に示した構成例は、図19(A)~(D)を参照して説明した通りである。図20(A)において、第1ティース部12Aの幅方向中心を通る径方向の直線を、直線T1とする。
図20(A)に示した構成例では、ヨーク11の穴部17は、直線T1上に形成され、直線T1に対して対称な形状を有する。また、第1ティース部12Aの両側の段差部125は、実施の形態1で説明したように、直線T1に対して互いに対称な位置に形成され、互いに対称な形状を有する。
図20(B)に示した構成例では、図12(B)を参照して説明した凹部112が形成されている。凹部112を含む段差部125は、直線T1に対して対称に形成されている。穴部17は、図20(A)を参照して説明した通りである。
図20(C)に示した構成例では、図12(C)を参照して説明したように、段差部125は、第1ヨーク部11Aの内周面111Aと、ティース12の側面121Aに沿って形成され、第1歯先部13Aの外周面131Aには形成されない。この構成例でも、段差部125は、直線T1に対して対称に形成されている。穴部17は、図20(A)を参照して説明した通りである。
図20(D)に示した構成例では、ティース12の周方向の一方の側にのみ、図20(B)を参照して説明した凹部112が形成されている。そのため、凹部112を含む段差部125は、直線T1に対して非対称に形成されている。穴部17は、図20(A)を参照して説明した通りである。
図20(E)に示した構成例では、ヨーク11において、直線T1に対して対称な2箇所に、それぞれ穴部17が形成されている。2つの穴部17は、直線T1に対して対称な形状を有する。段差部125は、図20(A)を参照して説明した通りである。
図20(F)に示した構成例では、ヨーク11において、直線T1の一方の側に、穴部17が形成されている。すなわち穴部17は、直線T1に対して非対称に形成されている。段差部125は、図20(A)を参照して説明した通りである。
図20(A)~(E)の構成例では、穴部17が直線T1に対して対称に形成されている。そのため、コイル4からインシュレータ2を介してステータコア10に加わる荷重(モーメント)が周方向の両側でつり合い、ステータコア10の変形を抑えることができる。これにより、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
また、図20(A)~(C),(E),(F)の構成例では、段差部125が直線T1に対して対称に形成されている。そのため、穴部17を対称に形成した場合と同様の理由で、ステータコア10の変形を抑え、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。また、段差部125を直線T1に対して対称に形成することは、モータのエネルギー効率、制御性および振動特性の面でも望ましい。
図21は、ステータコア10のカシメ部18と穴部17との位置関係を示す図である。ステータコア10のカシメ部18(すなわち固定部)は、ヨーク11において、穴部17の周方向両側に形成されている。なお、カシメ部18の代わりに、例えば接着部(接着層)を設けてもよい。
図21において、穴部17は、2つのカシメ部18を結ぶ直線M1と重なるように形成されている。このように突起部27の両側にカシメ部18を形成することにより、コイル4の巻き付けによる荷重をカシメ部18で受けることができる。特に、2つのカシメ部18を結ぶ直線M1が、ティース12の幅方向と平行であれば、カシメ部18で荷重を効果的に受けることができ、第1ティース部12Aの位置ずれを効果的に防止することができる。
図22は、ステータコア10のカシメ部18と穴部17との位置関係の他の例を示す図である。図22では、カシメ部18は、穴部17に対して周方向の一方の側に形成されている。この場合も、穴部17を、ティース12の幅方向と平行でカシメ部18を通る直線M1と重なるように設けることで、コイル4の巻き付けによる荷重をカシメ部18で受けることができ、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
図23は、実施の形態2のステータ1を密閉容器6に取り付けた際の、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bと密閉容器6との嵌合状態を説明するための図である。実施の形態1で説明したように、第1コア部10Aおよび第2コア部10Bは、密閉容器6から径方向内側に向かう方向に圧縮応力を受ける。第1コア部10Aは、第2コア部10Bと比較して分割面部15が短いため、圧縮応力が集中し易いが、穴部17が密閉容器6からの圧縮応力を逃がす作用を有するため、磁気特性の低下を抑制することができる。
実施の形態2のステータの構成は、上述した穴部17および突起部27を除き、実施の形態1のステータと同様である。
以上説明したように、実施の形態2では、インシュレータ2の突起部27が、穴部17に第2コア部10Bの位置まで挿入されるため、実施の形態1と同様、第1コア部10Aを第2コア部10Bに強固に固定することができる。従って、コイル4の巻き付けによる荷重に対して、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
なお、実施の形態1の穴部16および突起部26の断面形状は半円形であり、実施の形態2の穴部17および突起部27の断面形状は円形状であったが、穴部および突起部の断面形は、他の形状であってもよい。
実施の形態3.
図24は、実施の形態3のインシュレータ複合体2Aと分割コア9とを示す図である。上述した実施の形態1,2では、各分割コア9(すなわち各ティース12)に設けられたインシュレータ2が互いに独立していた。これに対し、この実施の形態3では、周方向に隣り合う複数の分割コア9に設けられたインシュレータ2が一体化され、インシュレータ複合体2Aを構成している。
図24に示した構成例では、隣り合う2つの分割コア9に設けられた2つのインシュレータ2が一体化され、インシュレータ複合体2Aを構成している。なお、インシュレータ複合体2Aを構成するインシュレータ2の数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。各インシュレータ2の構成は、実施の形態2で説明した通りである。分割コア9の構成は、実施の形態1で説明した通りである。
分割コア9のヨーク11に形成された穴部17には、インシュレータ2の突起部27が圧入されている。穴部17および突起部27の断面形状は、ここでは円形であるが、実施の形態1の穴部16および突起部26のように半円形であってもよい。
図24には、分割コア9の軸方向の一端部に設けられたインシュレータ複合体2Aのみを示すが、軸方向の他端部にも同様のインシュレータ複合体2Aが設けられている。
ステータ1を組み立てる際には、積層鋼板を積層して、第1コア部10Aおよび第2コア部10B(図8)からなる分割コア9を形成する。そして、樹脂成形体であるインシュレータ複合体2Aを、2つの分割コア9に取り付ける。その後、インシュレータ複合体2Aの各インシュレータ2および絶縁フィルム3(図6(C))を介して、各ティース12にコイル4を巻き付ける。そして、複数のインシュレータ複合体2Aを分割コア9と共に環状に組み合わせ、分割コア9を例えば溶接により一体に固定する。
この実施の形態3では、コイル4の巻き付けによって1つのティース12に作用する荷重が、インシュレータ複合体2Aを介して他のティース12にも分散される。そのため、複数のティース12で荷重を受けることができ、コイル4の巻き付けによる第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
図25は、実施の形態3のインシュレータ複合体2Aを、一体型のステータコア10に取り付けた例を示す図である。図25に示すステータコア10は、図1に示した分割面部15を有さない点で、図1に示したステータコア10と異なる。すなわち、このステータコア10は、環状に打ち抜かれた電磁鋼板を軸方向に積層したものである。
図25に示した例では、3つのインシュレータ2が一体化されて、1つのインシュレータ複合体2Aを構成している。ステータコア10は9つのティース12を有するため、3つのインシュレータ複合体2Aがステータコア10に取り付けられる。なお、ティース12の数は、9つに限定されるものではない。また、インシュレータ複合体2Aは、少なくとも2つのインシュレータ2が一体化されていればよい。
ステータ1を組み立てる際には、環状に打ち抜いた積層鋼板を積層して、第1コア部10Aおよび第2コア部10B(図8)からなるステータコア10を形成する。そして、樹脂成形体である3つのインシュレータ複合体2Aを、ステータコア10に取り付ける。その後、インシュレータ複合体2Aおよび絶縁フィルム3(図6(C))を介して、各ティース12にコイル4を巻き付ける。
以上説明したように、実施の形態3では、隣接する複数のインシュレータ2が一体化してインシュレータ複合体2Aを構成するため、コイル4の巻き付けによって1つのティース12に作用する荷重が他のティース12にも分散される。そのため、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。
変形例.
図26は、実施の形態3の変形例のインシュレータ複合体2Bと分割コア9とを示す図である。上述した図24では、インシュレータ複合体2Aの全てのインシュレータ2が突起部27を有していた。これに対し、この変形例では、インシュレータ複合体2Bの1つのインシュレータ2のみが突起部27を有する。穴部17および突起部27の断面形状は、ここでは円形であるが、実施の形態1の穴部16および突起部26のように半円形であってもよい。
インシュレータ複合体2Bを構成する複数のインシュレータ2の1つが突起部27を有し、この突起部27が穴部17に圧入されていれば、ステータコア10の第1コア部10Aを第2コア部10B(図8)に固定し、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制することができる。
例えば、図26に示した例では、インシュレータ複合体2Bの2つのインシュレータ2のうち、1つのインシュレータ2のみが突起部27を有する。また、インシュレータ複合体2Bが取り付けられる2つの分割コア9のうち、1つの分割コア9のみが穴部17を有する。この場合、インシュレータ複合体2Bの全てのインシュレータ2が突起部27を有する場合と比較して、インシュレータ複合体2Bを構成する樹脂が少なくて済む。
図27は、実施の形態3の変形例のインシュレータ複合体2Bを、一体型のステータコア10に取り付けた例を示す図である。図27に示すステータコア10は、図25に示した一体型のステータコア10と同様の構成を有する。
図27に示した例では、インシュレータ複合体2Bが3つのインシュレータ2を有する。ステータコア10は9つのティース12を有するため、ステータコア10には3つのインシュレータ複合体2Bが取り付けられる。なお、ティース12の数は、9つに限定されるものではない。また、インシュレータ複合体2Bは、少なくとも2つのインシュレータ2を有していればよい。
この変形例においても、隣接する複数のインシュレータ2が一体化してインシュレータ複合体2Bを構成するため、コイル4の巻き付けによって1つのティース12に作用する荷重が他のティース12にも分散される。そのため、第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する効果を高めることができる。また、インシュレータ複合体2Bの1つのインシュレータ2のみが突起部27を有するため、全てのインシュレータ2が突起部27を有する場合と比較して、インシュレータ複合体2Bを構成する樹脂が少なくて済む。
なお、図26および図27では、インシュレータ複合体2Bの1つのインシュレータ2のみに突起部27を設けたが、インシュレータ複合体2Bを構成する一部のインシュレータ2が突起部27を有していればよい。
実施の形態4.
図28は、実施の形態4のインシュレータ複合体2Cと一体型のステータコア10とを示す図である。実施の形態4では、ステータコア10に取り付けられる全てのインシュレータ2が環状に一体化され、インシュレータ複合体2Cを構成している。
ここでは、ステータコア10は9つのティース12を有し、9つのインシュレータ2が環状に一体化されている。なお、ティース12の数およびインシュレータ2の数は、9に限らず、2以上であればよい。
インシュレータ複合体2Cの全てのインシュレータ2は、突起部27を有する。各突起部27は、ステータコア10のヨーク11に形成された穴部17に圧入される。穴部17および突起部27の断面形状は、ここでは円形であるが、実施の形態1の穴部16および突起部26のように半円形であってもよい。
ステータ1を組み立てる際には、環状に打ち抜いた積層鋼板を積層して、第1コア部10Aおよび第2コア部10B(図8)からなるステータコア10を形成する。そして、樹脂成形体であるインシュレータ複合体2Aを、ステータコア10に取り付ける。その後、インシュレータ2および絶縁フィルム3(図6(C))を介して、各ティース12にコイル4を巻き付ける。
この実施の形態4では、インシュレータ複合体2Cの全てのインシュレータ2が環状に一体化されているため、第1コア部10Aを第2コア部10B(図8)に強固に固定して第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する作用効果が最大となる。
変形例.
図29は、実施の形態4の変形例のインシュレータ複合体2Dと一体型のステータコア10とを示す図である。上述した図28では、インシュレータ複合体2Cの全てのインシュレータ2が突起部27を有していた。これに対し、この変形例では、インシュレータ複合体2Dの1つのインシュレータ2のみが突起部27を有する。穴部17および突起部27の断面形状は、ここでは円形であるが、実施の形態1の穴部16および突起部26のように半円形であってもよい。
ここでは、ステータコア10は9つのティース12を有し、9つのインシュレータ2が環状に一体化されている。また、インシュレータ複合体2Dを構成する9つのインシュレータ2のうちの1つのみが、突起部27を有する。この場合、インシュレータ複合体2Dの全てのインシュレータ2が突起部27を有する場合と比較して、インシュレータ複合体2Dを構成する樹脂が少なくて済む。なお、ティース12の数およびインシュレータ2の数は、9に限らず、2以上であればよい。
この変形例においても、全てのインシュレータ2が環状に一体化されているため、第1コア部10Aを第2コア部10B(図8)に強固に固定して第1ティース部12Aの位置ずれを抑制する作用効果が高くなる。また、インシュレータ複合体2Dの1つのインシュレータ2のみが突起部27を有するため、全てのインシュレータ2が突起部27を有する場合と比較して、インシュレータ複合体2Dを構成する樹脂が少なくて済む。
なお、図29では、インシュレータ複合体2Dの1つのインシュレータ2のみに突起部27を設けたが、インシュレータ複合体2Dを構成する一部のインシュレータ2が突起部27を有していればよい。
実施の形態5.
図30(A),(B)は、実施の形態5のインシュレータ複合体2E,2Fを、分割コア9と共に示す図である。上述した実施の形態3および4では、周方向に隣接する複数の分割コア9に設けられるインシュレータ2が一体化していた。これに対し、この実施の形態5では、周方向に離れた分割コア9に設けられるインシュレータ2が一体化し、インシュレータ複合体2E(2F)を構成している。
ここでは、図30(A)に示すインシュレータ複合体2Eと、図30(B)に示すインシュレータ複合体2Fとが、9つの分割コア9からなるステータコア10に取り付けられる。
図30(A)に示すインシュレータ複合体2E(第1インシュレータ複合体とも称する)は、周方向に間隔を開けて配置された4つのインシュレータ2と、これらを連結するリング状のブリッジ部201とを有する。このインシュレータ複合体2Eは、PBT等の樹脂で一体に成形されている。
インシュレータ複合体2Eのブリッジ部201は、各インシュレータ2のフランジ部21の先端(すなわち径方向の内側端部)に接続されている。4つのインシュレータ2は、インシュレータ2の2つ分の間隔を開けた1箇所(図中下側)を除き、インシュレータ2の1つ分の間隔を開けて配置されている。
インシュレータ複合体2Eの各インシュレータ2には、分割コア9が取り付けられる。各インシュレータ2は突起部27を有し、この突起部27は、分割コア9のヨーク11の穴部17に圧入される。各インシュレータ2に分割コア9を取り付けた状態で、上述した絶縁フィルム3(図6(C))を介して、ティース12にコイル4が巻き付けられる。周方向に隣り合うインシュレータ2の間に広いスペースが確保されるため、コイル4の巻き付けを容易に行うことができる。
図30(B)に示すインシュレータ複合体2F(第2インシュレータ複合体とも称する)は、周方向に間隔を開けて配置された5つのインシュレータ2と、これらを連結するリング状のブリッジ部202とを有する。このインシュレータ複合体2Fは、PBT等の樹脂で一体に成形されている。
インシュレータ複合体2Fのブリッジ部202は、各インシュレータ2のフランジ部21の先端(すなわち径方向の内側端部)に接続されている。5つのインシュレータ2のうち、図中下側の2つのインシュレータ2は互いに一体に構成されている。この1箇所(図中下側)を除き、5つのインシュレータ2は、インシュレータ2の1つ分の間隔を開けて配置されている。
インシュレータ複合体2Fの各インシュレータ2には、分割コア9が取り付けられる。各インシュレータ2は突起部27を有し、この突起部27は、分割コア9のヨーク11の穴部17に圧入される。各インシュレータ2に分割コア9を取り付けた状態で、上述した絶縁フィルム3(図6(C))を介して、ティース12にコイル4が巻き付けられる。周方向に隣り合うインシュレータ2の間に広いスペースが確保されるため、コイル4の巻き付けを容易に行うことができる。
図31(A)は、インシュレータ複合体2Eの一部を径方向内側から見た図であり、図31(B)は、インシュレータ複合体2Fの一部を径方向内側から見た図である。図31(C)は、インシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせた状態を径方向内側から見た図である。
図31(A)に示すように、インシュレータ複合体2Eのブリッジ部201は、分割コア9の軸方向の一方の側(図中下側)のインシュレータ2のフランジ部21に接続されている。なお、分割コア9の軸方向の他方の側(図中上側)では、インシュレータ2同士は互いに離れており、分割コア9の軸方向端部に嵌合することで取り付けられている。
図31(B)に示すように、インシュレータ複合体2Fのブリッジ部202は、分割コア9の軸方向の一方の側(図中下側)のインシュレータ2のフランジ部21に、台座部203を介して接続されている。なお、分割コア9の軸方向の他方の側(図中上側)では、インシュレータ2同士は互いに離れており、分割コア9の軸方向端部に嵌合することで取り付けられている。
インシュレータ複合体2E,2Fのブリッジ部201,202は、ブリッジ部202の台座部203の分だけ、軸方向に互いにずれた位置にある。
ステータ1を組み立てる際には、積層鋼板を積層して、第1コア部10Aおよび第2コア部10B(図8)からなる分割コア9を形成する。そして、インシュレータ複合体2E,2Fのそれぞれに分割コア9に取り付ける。その後、インシュレータ複合体2E,2Fの各インシュレータ2および絶縁フィルム3(図6(C))を介して、各分割コア9のティース12にコイル4を巻き付ける。そして、インシュレータ複合体2E,2Fを、図31(C)に示すように組み合わせる。
図31(C)に示すように、インシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせると、インシュレータ複合体2Eの隣り合う2つのインシュレータ2(および分割コア9)の間に、インシュレータ複合体2Fのインシュレータ2(および分割コア9)が配置される。また、インシュレータ複合体2Fの隣り合う2つのインシュレータ2(および分割コア9)の間に、インシュレータ複合体2Eのインシュレータ2(および分割コア9)が配置される。
インシュレータ複合体2Fの台座部203は、インシュレータ複合体2Eのブリッジ部202よりも径方向外側に位置している。また、上記の通り、インシュレータ複合体2E,2Fのブリッジ部201,202は、ブリッジ部202の台座部203の分だけ、互いに軸方向にずれた位置にある。そのため、ブリッジ部201,202が互いに干渉することはない。このようにインシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせたのち、各分割コア90を互いに溶接等により固定する。これにより、ステータ1が完成する。
ここでは、ブリッジ部201,202が、ステータコア10(分割コア9)に対して、軸方向の互いに同じ側に設けられていたが、以下で説明するように、ブリッジ部201,202を軸方向において互いに反対側に設けてもよい。
図32(A)は、インシュレータ複合体2Eの一部を径方向内側から見た図であり、図32(B)は、インシュレータ複合体2Fの一部を径方向内側から見た図である。図32(C)は、インシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせた状態を径方向内側から見た図である。
図32(A)に示すように、インシュレータ複合体2Eのブリッジ部201は、分割コア9の軸方向の一方の側(図中下側)のインシュレータ2のフランジ部21に、台座部204を介して接続されている。
図32(B)に示すように、インシュレータ複合体2Fのブリッジ部202は、分割コア9の軸方向の他方の側(図中上側)のインシュレータ2のフランジ部21に、台座部205を介して接続されている。
図32(C)に示すように、インシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせると、ブリッジ部201,202が軸方向における互いに反対側に位置するため、ブリッジ部201,202が互いに干渉することはない。
以上説明したように、実施の形態5では、複数のインシュレータ2がブリッジ部201,202を介して連結されて、インシュレータ複合体2E,2Fを構成する。そのため、各インシュレータ複合体2E,2Fとそれに取り付けられた分割コア9とを、それぞれ1つのユニットとして取り扱うことができる。そのため、ステータ1の組立工程が簡単になる。
ここでは、ブリッジ部201,202を有する2つのインシュレータ複合体2E,2Fを組み合わせる構成について説明したが、3つ以上のインシュレータ複合体を組み合わせてもよい。すなわち、3つ以上のブリッジ部を用いてもよい。
変形例.
図33(A),(B)は、実施の形態5の変形例のインシュレータ複合体2G,2Hを、分割コア9と共に示す図である。図30~32に示したインシュレータ複合体2E,2Fは、インシュレータ2の径方向内側をブリッジ部201,202で連結していた。これに対し、変形例のインシュレータ複合体2G,2Hでは、インシュレータ2の径方向外側をブリッジ部210,212で連結している。
図33(A)に示すインシュレータ複合体2Gは、周方向に間隔を開けて配置された4つのインシュレータ2と、これらを連結するリング状のブリッジ部210とを有する。ブリッジ部210は、各インシュレータ2の壁部25から径方向外側に突出する突出部211に接続されている。インシュレータ2の配置は、図30(A)に示したインシュレータ2の配置と同様である。
インシュレータ複合体2Gの各インシュレータ2には、分割コア9が取り付けられる。各インシュレータ2は突起部27を有し、この突起部27は、分割コア9のヨーク11の穴部17に圧入される。
図33(B)に示すインシュレータ複合体2Hは、周方向に間隔を開けて配置された5つのインシュレータ2と、これらを連結するリング状のブリッジ部212とを有する。ブリッジ部212は、各インシュレータ2の壁部25から径方向外側に突出する突出部213に接続されている。インシュレータ2の配置は、図30(B)に示したインシュレータ2の配置と同様である。
インシュレータ複合体2Hの各インシュレータ2には、分割コア9が取り付けられる。各インシュレータ2は突起部27を有し、この突起部27は、分割コア9のヨーク11の穴部17に圧入される。
インシュレータ複合体2G,2Hのブリッジ部210,212は、図31(A)~(C)に示したように軸方向の同じ側に設けられていても良く、図32(A)~(C)に示したように軸方向の反対側に設けられていても良い。いずれの場合も、ブリッジ部210,212を干渉させないように、インシュレータ複合体2G,2Hを組み合わせることができる。
この変形例においても、複数のインシュレータ2がブリッジ部210,212を介して連結されて、インシュレータ複合体2G,2Hを構成する。そのため、各インシュレータ複合体2G,2Hとそれに取り付けられた分割コア9とを、それぞれ1つのユニットとして取り扱うことができる。そのため、ステータ1の組立工程が簡単になる。
ここでは、ブリッジ部210,212を有する2つのインシュレータ複合体2G,2Hを組み合わせる構成について説明したが、3つ以上のインシュレータ複合体を組み合わせてもよい。すなわち、3つ以上のブリッジ部を用いてもよい。
<ロータリ圧縮機>
次に、上述した各実施の形態の電動機が適用可能なロータリ圧縮機300について説明する。図34は、ロータリ圧縮機300を示す断面図である。ロータリ圧縮機300は、フレーム(密閉容器)301と、フレーム301内に配設された圧縮機構310と、圧縮機構310を駆動する電動機100とを備える。
圧縮機構310は、シリンダ室312を有するシリンダ311と、電動機100のシャフト58に固定されたローリングピストン314と、シリンダ室312内を吸入側と圧縮側に分けるベーン(図示せず)と、シャフト58が挿入されてシリンダ室312の軸方向端面を閉鎖する上部フレーム316および下部フレーム317とを有する。上部フレーム316および下部フレーム317には、上部吐出マフラ318および下部吐出マフラ319がそれぞれ装着されている。
フレーム301は、例えば厚さ3mmの鋼板を絞り加工して形成された円筒形状の容器である。フレーム301の底部には、圧縮機構310の各摺動部を潤滑する冷凍機油(図示せず)が貯留されている。シャフト58は、上部フレーム316および下部フレーム317によって回転可能に保持されている。
シリンダ311は、内部にシリンダ室312を備えている。ローリングピストン314は、シリンダ室312内で偏心回転する。シャフト58は偏心軸部を有し、その偏心軸部にローリングピストン314が嵌合している。
電動機100のステータコア10は、焼き嵌めによりフレーム301の内側に取り付けられている。ステータコア10に巻回されたコイル4には、フレーム301に固定されたガラス端子305から電力が供給される。ロータ5のシャフト孔55(図1)には、シャフト58が固定されている。
フレーム301の外部には、冷媒ガスを貯蔵するアキュムレータ302が取り付けられている。フレーム301には吸入パイプ303が固定され、この吸入パイプ303を介してアキュムレータ302からシリンダ311に冷媒ガスが供給される。また、フレーム301の上部には、冷媒を外部に吐出する吐出パイプ307が設けられている。
冷媒としては、例えば、R410A、R407CまたはR22等を用いることができる。また、地球温暖化防止の観点からは、低GWP(地球温暖化係数)の冷媒を用いることが望ましい。低GWPの冷媒としては、例えば、以下の冷媒を用いることができる。
(1)まず、組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素、例えばHFO(Hydro-Fluoro-Orefin)-1234yf(CF3CF=CH2)を用いることができる。HFO-1234yfのGWPは4である。
(2)また、組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素、例えばR1270(プロピレン)を用いてもよい。R1270のGWPは3であり、HFO-1234yfより低いが、可燃性はHFO-1234yfより高い。
(3)また、組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素または組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素の少なくともいずれかを含む混合物、例えばHFO-1234yfとR32との混合物を用いてもよい。上述したHFO-1234yfは低圧冷媒のため圧損が大きくなる傾向があり、冷凍サイクル(特に蒸発器)の性能低下を招く可能性がある。そのため、HFO-1234yfよりも高圧冷媒であるR32またはR41との混合物を用いることが実用上は望ましい。
ロータリ圧縮機300の動作は、以下の通りである。アキュムレータ302から供給された冷媒ガスは、吸入パイプ303を通ってシリンダ311のシリンダ室312内に供給される。電動機100が駆動されてロータ5が回転すると、ロータ5と共にシャフト58が回転する。そして、シャフト58に嵌合するローリングピストン314がシリンダ室312内で偏心回転し、シリンダ室312内で冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出マフラ318,319を通り、さらに電動機100に設けられた穴(図示せず)を通ってフレーム301内を上昇し、吐出パイプ307から吐出される。
上述した各実施の形態で説明した電動機は、第1ティース部12Aの位置ずれの抑制により、良好な制御性と振動特性を有する。そのため、圧縮機300の駆動源に各実施の形態で説明した電動機を用いることで、圧縮機300の運転効率を向上することができる。
<空気調和装置>
次に、図34に示した圧縮機300を備えた空気調和装置400について説明する。図35は、空気調和装置400を示す図である。図35に示した空気調和装置400は、圧縮機401と、凝縮器402と、絞り装置(減圧装置)403と、蒸発器404とを備えている。圧縮機401、凝縮器402、絞り装置403および蒸発器404は、冷媒配管407によって連結され、冷凍サイクルを構成している。すなわち、圧縮機401、凝縮器402、絞り装置403および蒸発器404の順に、冷媒が循環する。
圧縮機401、凝縮器402および絞り装置403は、室外機410に設けられている。圧縮機401は、図34に示したロータリ圧縮機300で構成されている。室外機410には、凝縮器402に室外の空気を供給する室外側送風機405が設けられている。蒸発器404は、室内機420に設けられている。この室内機420には、蒸発器404に室内の空気を供給する室内側送風機406が設けられている。
空気調和装置400の動作は、次の通りである。圧縮機401は、吸入した冷媒を圧縮して送り出す。凝縮器402は、圧縮機401から流入した冷媒と室外の空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させて冷媒配管407に送り出す。室外側送風機405は、凝縮器402に室外の空気を供給する。絞り装置403は、開度を変化させることによって、冷媒配管407を流れる冷媒の圧力等を調整する。
蒸発器404は、絞り装置403により低圧状態にされた冷媒と室内の空気との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を奪わせて蒸発(気化)させて、冷媒配管407に送り出す。室内側送風機406は、蒸発器404に室内の空気を供給する。これにより、蒸発器404で熱が奪われた冷風が、室内に供給される。
空気調和装置400は、各実施の形態で説明した電動機の適用により運転効率を向上した圧縮機401を用いている。そのため、空気調和装置400の運転効率を向上することができる。
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。