JP7035341B2 - ペースト - Google Patents

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Description

本発明は、ペーストに関する。
金属粉末及び樹脂組成物を含むペーストは、金属粉末の諸物性に応じて、例えば、インダクタ、電磁波シールド、又はボンド磁石等の多様な工業製品の原材料として利用される。(下記特許文献1~3参照。)
特開2004-31786号公報 特開平8-273916号公報 特開平1-261897号公報
ペーストに含まれる金属粉末の比重が大きいほど、金属粉末はペースト中に分散し難く、時間の経過に伴ってペースト中の金属粉末が沈降し易い。このように金属粉末が均一に分散していないペーストから作製された工業製品は、金属粉末に由来する所望の性能を具備することができないことがある。比重の異なる複数種の金属粉末がペーストに含まれる場合、上記の同様の問題が起き易い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属元素含有粉の分散性に優れたペーストを提供することを目的とする。
本発明の一側面に係るペーストは、金属元素含有粉と、樹脂組成物と、を備え、25℃における樹脂組成物の粘度が、5Pa・s以上30Pa・s以下であり、樹脂組成物の質量が、Mと表され、金属元素含有粉の質量が、mと表され、m/(m+M)が0.95以上1.00未満である。
本発明の一側面においては、樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含んでよい。
本発明の一側面においては、樹脂組成物がエポキシ樹脂を含んでよい。
本発明の一側面においては、樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含んでよい。
本発明の一側面においては、樹脂組成物がアクリル樹脂を含んでよい。
本発明の一側面においては、アクリル樹脂の重量平均分子量が50万以上150万以下であってよい。
本発明の一側面においては、アクリル樹脂がグリシジル基を有してよい。
本発明の一側面においては、樹脂組成物がフェノール樹脂を含んでよい。
本発明の一側面に係るペーストは、互いに比重が異なる少なくとも二種類の金属元素含有粉を含んでよい。
本発明の一側面においては、金属元素含有粉が磁性粉であってよい。
本発明の一側面においては、樹脂組成物が硬化剤及び硬化促進剤を含んでよい。
本発明によれば、金属元素含有粉の分散性に優れたペーストが提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
本実施形態に係るペーストは、金属元素含有粉と、樹脂組成物と、を備える。ペーストは、金属元素含有粉と、樹脂組成物と、溶媒と、からなっていてよい。金属元素含有粉とは、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉末であってよい。樹脂組成物とは、ペーストに含まれる全成分のうち金属元素含有粉及び溶媒を除く残りの成分(不揮発性成分)である。例えば、樹脂組成物は、樹脂に加えて、硬化剤及び硬化促進剤を含んでよい。例えば、樹脂組成物は、樹脂に加えて、添加剤を含んでもよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分である。添加剤とは、例えば、カップリング剤又は難燃剤等であってよい。樹脂組成物は、樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を包含する成分であってよい。ペーストに含まれる溶媒は、例えば、有機溶媒及び無機溶媒のうち一方又は両方であってよい。
樹脂組成物は、一種の樹脂のみを含んでよい。樹脂組成物は、複数種の樹脂を含んでもよい。換言すれば、ペーストは一種以上の樹脂を含んでよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の両方を含んでよい。樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含んでもよい。
25℃における樹脂組成物の粘度は、5Pa・s以上30Pa・s以下である。25℃における樹脂組成物の粘度は、5Pa・s以上20Pa・s以下、5Pa・s以上12Pa・s以下、10Pa・s以上30Pa・s以下、10Pa・s以上20Pa・s以下、12Pa・s以上30Pa・s以下、又は12Pa・s以上20Pa・s以下であってよい。以下に記載の「粘度」は、25℃における粘度を意味する。
ペーストに含まれる樹脂組成物の粘度が5Pa・s未満である場合、ペースト内における金属元素含有粉の移動が樹脂組成物の粘性によって妨げられ難い。したがって、ペーストの攪拌によって金属元素含有粉を分散させたとしても、時間の経過に伴って金属元素含有粉がペースト内で移動し易い。例えば、時間の経過に伴って、ペースト内の金属元素含有粉が自重により沈降し易い。つまり、ペーストに含まれる樹脂組成物の粘度が5Pa・s未満である場合、金属元素含有粉がペースト中で均一に分散し難く、金属元素含有粉がペースト内で偏在し易い。特にペーストにおける金属元素含有粉の含有量が大きかったり、金属元素含有粉の比重又は比重差が大きかったりする場合、上記の原因により金属元素含有粉の分散性が損なわれ易い。一方、本実施形態に係るペーストに含まれる樹脂組成物の粘度は5Pa・s以上であるため、ペースト内での金属元素含有粉の移動が、樹脂組成物の高い粘性によって抑制される。したがって、ペーストの攪拌後においては、金属元素含有粉がペースト内で移動し難く、金属元素含有粉がペースト内で分散し易い。換言すれば、ペーストの組成が均一になり易い。金属元素含有粉の含有量が大きかったり、金属元素含有粉の比重が大きかったりしたとしても、上記のメカニズムにより、金属元素含有粉がペースト内で均一に分散し易く、ペースト内での金属元素含有粉の偏在(例えば、金属元素含有粉の沈降)が抑制され易い。樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物に含まれる樹脂の組成、複数種の樹脂の組合せ及び配合比、並びに、樹脂組成物における硬化剤、硬化促進剤及び添加剤其々の組成及び配合比等によって自在に調整されてよい。なお、本発明に係る作用効果は上記の事項に限定されない。
ペーストにおける金属元素含有粉の分散性を向上させる観点において、樹脂組成物がエポキシ樹脂及びアクリル樹脂を含むことが好ましい。樹脂組成物が、エポキシ樹脂のみならず、エポキシ樹脂よりも分子量が大きく粘性の高いアクリル樹脂を含む場合、ペースト内の金属元素含有粉の移動が、アクリル樹脂の高い粘性によって抑制される。その結果、金属元素含有粉がペースト内で均一に分散し易い。樹脂組成物に含まれる樹脂は、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のみであってもよい。樹脂組成物は、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂に加えて、更に別の樹脂(例えばフェノール樹脂)を備えてよい。ペーストがエポキシ樹脂及びアクリル樹脂を含む場合、ペーストに含まれるエポキシ樹脂の質量は、限定されないが、例えば、ペーストに含まれるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂の質量の合計100質量部に対して、30~90質量部であってよい。ペーストがエポキシ樹脂及びアクリル樹脂を含む場合、ペーストに含まれるアクリル樹脂の質量は、限定されないが、例えば、ペーストに含まれるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂の質量の合計100質量部に対して、10~70質量部であってよい。
樹脂組成物の質量が、Mと表され、且つ金属元素含有粉の質量が、mと表される場合、m/(m+M)は、0.95以上1.00未満である。換言すれば、M/(m+M)は、0より大きく0.05以下である。m/(m+M)は、0.96以上1.00未満、0.97以上1.00未満、0.98以上1.00未満、0.99以上1.00未満、0.95以上0.99以下、0.95以上0.98以下、又は0.95以上0.97以下であってよい。粘性に乏しい従来のペーストの場合、m/(m+M)が大きいほど、ペースト内の金属元素含有粉は分散し難く、偏在・沈降し易い。一方、本実施形態によれば、m/(m+M)が0.95以上であっても、上記の通り、金属元素含有粉をペースト内で均一に分散させることができ、ペースト内での金属元素含有粉の偏在・沈降が抑制される。つまり、本実施形態によれば、ペーストにおける金属元素含有粉の割合が高い場合であっても、ペースト内の金属元素含有粉が均一に分散し易く、偏在・沈降し難い。m/(m+M)・100は、ペーストにおける金属元素含有粉の占積率といえる。つまり、本実施形態によれば、ペーストにおける金属元素含有粉の占有率が95%以上である場合であっても、金属元素含有粉をペースト内で均一に分散させることができる。
エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、及びオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。エポキシ樹脂は、液体又は半固形であってもよい。ペーストは上記のうち一種のエポキシ樹脂を備えてよく、ペーストは上記のうち複数種のエポキシ樹脂を備えてもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは230以下であってよい。エポキシ当量が230以下であるエポキシ樹脂がペーストに含まれる場合、硬化剤であるフェノール樹脂との反応で生じる単位重量当たりのOH基が多くなり、疎水性の物質に対するペーストの耐性が向上し易い。
アクリル樹脂は、アクリル酸由来の構造単位(アクリルモノマー)及びメタクリル酸由来の構造単位(メタクリルモノマー)のうち少なくともいずれかを有する重合体又は共重合体である。アクリル樹脂は、例えば、ラジカル重合又はリビング重合によって形成されてよい。ペーストから形成される成形体の可撓性を向上させる観点から、アクリル樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは50万以上150万以下、より好ましくは60万以上100万以下であってよい。アクリルモノマーは、例えば、アクリロニトリル、エチルアクリレート、及びブチルアクリリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。メタクリルモノマーは、例えば、グリシジルメタクリレートであってよい。アクリル樹脂がグリシジル基を有していてよい。ペーストは上記のうち一種のアクリル樹脂を備えてよく、ペーストは上記のうち複数種のアクリル樹脂を備えてもよい。
上述の通り、金属元素含有粉は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉末であってよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。合金とは、例えば、ステンレス鋼(Fe‐Cr系合金、Fe‐Ni‐Cr系合金等)であってよい。金属化合物とは、例えば、フェライト等の酸化物であってよい。金属元素含有粉は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。金属元素含有粉に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。金属元素含有粉に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。金属元素含有粉は、金属元素以外の元素を含んでもよい。金属元素含有粉は、例えば、酸素(О)、ベリリウム(Be)、リン(P)、ホウ素(B)、又はケイ素(Si)を含んでもよい。金属元素含有粉は、磁性粉であってよい。金属元素含有粉は、軟磁性合金、又は強磁性合金であってよい。金属元素含有粉は、例えば、Fe‐Si系合金、Fe‐Si‐Al系合金(センダスト)、Fe‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Cu‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Co系合金(パーメンジュール)、Fe‐Cr‐Si系合金(電磁ステンレス鋼)、Nd‐Fe‐B系合金(希土類磁石)、Sm‐Fe‐N系合金(希土類磁石)、Al‐Ni‐Co系合金(アルニコ磁石)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる磁性粉であってよい。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。金属元素含有粉は、Cu‐Sn系合金、Cu‐Sn‐P系合金、Cu-Ni系合金、又はCu‐Be系合金等の銅合金であってもよい。金属元素含有粉は、上記の元素及び組成物のうち一種を含んでよく、上記の元素及び組成物のうち複数種を含んでもよい。
金属元素含有粉の比重は、7.0以上10.0以下、又は7.0以上9.0以下であってよい。比重が上記範囲内である金属元素含有粉は、例えば、鉄粉、銅粉、Fe‐Cr‐Si系合金、及びNd‐Fe‐B系合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。粘性に乏しい従来のペーストが、比重が7.0以上である重い金属元素含有粉を含む場合、金属元素含有粉が自重によってペースト内を移動して局所に偏在し易い。換言すれば、粘性に乏しい従来のペーストが、比重が7.0以上である重い金属元素含有粉を含む場合、金属元素含有粉がペースト内で均一に分散し難い。一方、本実施形態では、比重が7.0以上である重い金属元素含有粉であっても、上述の理由により、ペースト中で均一に分散し易い。
金属元素含有粉は、Fe単体及びFe系合金のうち少なくともいずれかを含んでよい。Fe系合金は、例えば、Fe‐Si‐Cr系合金、又はNd‐Fe‐B系合金であってよい。ペーストが、金属元素含有粉としてFe単体及びFe系合金のうち少なくともいずれかを含む場合、高い占積率を有し、且つ磁気特性に優れる成形体をペーストから作製し易い。
ペーストは、互いに比重が異なる少なくとも二種類の金属元素含有粉を含んでよい。比重が異なる二種類の金属元素含有粉の組合せは、例えば、鉄粉及び銅粉、鉄粉及びアルミニウム粉、鉄粉及びチタン粉であってよい。二種類の金属元素含有粉の比重の差が3.0以上5.0以下であってよい。比重の差が3.0以上5.0以下である二種類の金属元素含有粉の組合せは、例えば、鉄粉及びアルミニウム粉の組合せ、又は鉄粉及びチタン粉の組合せであってよい。粘性に乏しい従来のペーストが、比重が異なる二種類以上の金属元素含有粉を含む場合、比重の差に起因して、金属元素含有粉がペースト内で均一に分散し難く、局所に偏在し易い。例えば、比重が大きい金属元素含有粉が自重によってペースト内を移動して、沈降し易い。その結果、二種以上の金属元素含有粉其々に由来する物性が、ペースト全体にわたって均一に付与され難い。一方、本実施形態に係るペーストに含まれる樹脂組成物の粘度は5Pa・s以上である。その結果、二種以上の金属元素含有粉の比重の差が大きい場合であっても、金属元素含有粉の移動及び局在が樹脂組成物の高い粘性によって抑制され、各金属元素含有粉がペースト内で均一に分散し易い。二種類以上の金属元素含有粉を含むペースト全体の組成が均一になり易いため、二種類以上の金属元素含有粉其々に由来する所望の物性が、ペースト全体に均一に付与され易い。以上のことから、本実施形態に係るペーストは、例えば、合金化が困難である複数種の金属粉末を、所望の配合比で含むことができる。また本実施形態に係るペーストは、合金化により個々の金属単体に由来する物性が損なわれてしまうような複数種の金属粉末を含む場合であっても、個々の金属単体に由来する物性を損なうことなく兼ね備えることができる。
金属元素含有粉を構成する個々の粒子の形状は、特に限定されない。個々の粒子は、例えば、球状、扁平形状、又は針状であってよい。金属元素含有粉の平均粒子径は、例えば、好ましくは20~300μm、より好ましくは40~250μmであってよい。ペーストは、平均粒子径が異なる複数種の金属元素含有粉を含んでよい。平均粒子径が大きい金属元素含有粉の間に形成される隙間に、平均粒子径が小さい別の金属元素含有粉が充填されることで、ペーストにおける金属元素含有粉の占積率が高まる。金属元素含有粉の粒度分布は、例えば、篩い分けによる重量測定、又はレーザー回折・散乱装置等の測定機器を用いた分析)に基づいて算出される。
硬化剤は、低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。
低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、ペーストから形成された成形体も軟らかくなり易い。一方、成形体の耐熱性を向上させる観点から、硬化剤は、好ましくは加熱硬化型の硬化剤、より好ましくはフェノール樹脂、さらに好ましくはフェノールノボラック樹脂であってよい。特に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いることで、ガラス転移点が高いエポキシ樹脂の硬化物が得られ易い。その結果、成形体の耐熱性及び機械強度が向上し易い。
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。市販のフェノール樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP-850N等を用いてもよい。
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α-ナフトール、β-ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
ペーストは、上記のうち一種のフェノール樹脂を備えてよく、ペーストは、上記のうち複数種のフェノール樹脂を備えてもよい。ペーストは、上記のうち一種の硬化剤を備えてよく、ペーストは、上記のうち複数種の硬化剤を備えてもよい。
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.9~1.4当量、さらに好ましくは1.0~1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、硬化後のエポキシ樹脂の単位重量当たりのOH量が少なくなり、樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化速度が低下する。また硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなったり、硬化物の充分な弾性率が得られなかったりする。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、ペーストから形成された成形体の硬化後の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる組成物であれば限定されない。硬化促進剤は、例えば、アルキル基置換イミダゾール、又はベンゾイミダゾール等のイミダゾール類であってよい。ペーストは、一種の硬化促進剤を備えてよく、複数種の硬化促進剤を備えてもよい。硬化促進剤は、ペーストから形成された成形体の機械的強度を向上させたり、ペーストの保存安定性を向上させたりする。
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性を改善する観点からは、硬化促進剤の配合量は、100質量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~15質量部であってよい。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の質量の合計に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。硬化促進剤の配合量が0.1質量部未満である場合、十分な硬化促進効果が得られ難い。硬化促進剤の配合量が30質量部を超える場合、ペーストの保存安定性が低下し易い。ただし、硬化促進剤の配合量及び含有量が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
カップリング剤は、樹脂組成物と金属元素含有粉との密着性を向上させ、ペーストから形成される成形体の可撓性及び機械的強度を向上させる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。特に、アミノフェニル系のシランカップリング剤が好ましい。ペーストは、上記のうち一種のカップリング剤を備えてよく、上記のうち複数種のカップリング剤を備えてもよい。
ペーストの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、ペーストは難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、鱗茎難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。ペーストは、上記のうち一種の難燃剤を備えてよく、上記のうち複数種の難燃剤を備えてもよい。
本実施形態に係るペーストは、例えば、金属元素含有粉、樹脂組成物及び有機溶媒を均一に混錬・攪拌することより、作製されてよい。混錬・攪拌の方法・手段は、特に限定されず、例えば、撹拌羽根、自公転式撹拌、又はボールミルであってよい。有機溶媒は、樹脂組成物を溶解する液体であればよく、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、シクロヘキサノン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。作業性の観点から、有機溶媒は常温で液体であることが好ましく、且つ有機溶媒の沸点が60℃以上150℃以下であることが好ましい。
ペーストから成形体を形成し、成形体から有機溶媒を除去することにより、樹脂組成物が金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に付着する。粒子の表面に付着した樹脂組成物は、結合材(バインダ)として機能し、金属元素含有粉を構成する個々の粒子同士を互いに結着する。その結果、成形体は、所望の形状を維持することができる程度の機械的強度を有することができる。ペーストから形成された成形体の乾燥又は熱処理により、Bステージの成形体を作製してよい。さらに、Bステージの成形体の熱処理により、成形体中の樹脂組成物を硬化させてよい。つまり、ペーストからCステージの成形体を作製してよい。ペーストに含まれる金属元素含有粉の組成又は組合せに応じて、成形体の電磁気的特性又は熱伝導性等の諸特性を自在に制御し、成形体を様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。ペーストを用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。例えば、ペーストが金属元素含有粉としてFe‐Si‐Cr系合金又はフェライト等の磁性粉を含む場合、ペーストから形成された成形体(例えばシート)は、EMIフィルタ等のインダクタの原材料(例えば磁心)として利用されてよい。ペーストが金属元素含有粉として永久磁石の粉末を含む場合、ペーストはボンド磁石の原材料として利用されてよい。ペーストが金属元素含有粉として鉄粉と銅粉とを含む場合、ペーストから形成された成形体(例えばシート)は、電磁波シールドとして利用されてよい。
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシ樹脂50.00g、フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液66.45g、硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液5.00g、及びシランカップリング剤4.71gを計り取り、これらの原料を650mlの軟膏容器に容れた。
エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の「EPICRON850S」を用いた。
フェノールノボラック樹脂(硬化剤)としては、日立化成株式会社製の「HP850N」を用いた。フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、43.0質量%であった。
硬化促進剤としては、四国化成株式会社製の「2PZ-CN」を用いた。硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、10質量%であった。
シランカップリング剤としては、信越シリコーン株式会社製の「KBM-573」を用いた。
軟膏容器内の全原料を自公転撹拌機で攪拌・混合することにより、バインダ樹脂ワニスを得た。自公転撹拌機としては、シンキー株式会社製の「ARE-500」を用いた。攪拌・混合工程では、自公転撹拌機の公転速度を5分間1000rpmに維持し、続いて公転速度を1分間2000rpmに維持した。バインダ樹脂ワニスのうち、有機溶媒(ブチルカルビトールアセテート等)を除く残りの部分が、実施例1の樹脂組成物に相当する。
上記のバインダ樹脂ワニス7.53g、鉄アモルファス合金粉65g、及びカルボニル鉄粉30gを計り取り、これらを150mlの軟膏容器に容れた。鉄アモルファス合金粉の比重は6.7であった。カルボニル鉄粉の比重は7.8であった。軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで40秒撹拌した。軟膏容器内の原料を自公転撹拌機で計5回撹拌することにより、実施例1のペーストを得た。鉄アモルファス合金粉及びカルボニル鉄粉が、実施例1の金属元素含有粉に相当する。
実施例1のペーストに含まれる樹脂組成物の質量Mと、実施例1のペーストに金属元素含有粉の質量mとから、実施例1のm/(m+M)を算出した。実施例1のm/(m+M)は下記表1に示される。実施例1のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度を、東機産業株式会社製のTV-33型粘度計(コーンプレートタイプ、ロータコード04(3°×R14)、5rpm)により測定した。実施例1のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度は、下記表1に示される。
(実施例2)
エポキシ樹脂50.00g、フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液67.88g、硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液5.00g、及びシランカップリング剤4.71gを計り取り、これらの原料を650mlの軟膏容器に容れた。
エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の「EPICRON850‐LC」を用いた。
フェノールノボラック樹脂(硬化剤)としては、日立化成株式会社製の「HP850N」を用いた。フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、43.0質量%であった。
硬化促進剤としては、四国化成株式会社製の「2PZ-CN」を用いた。硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、10質量%であった。
シランカップリング剤としては、信越シリコーン株式会社製の「KBM-573」を用いた。
軟膏容器内の全原料を自公転撹拌機で攪拌・混合することにより、バインダ樹脂ワニスを得た。自公転撹拌機としては、シンキー株式会社製の「ARE-500」を用いた。攪拌・混合工程では、自公転撹拌機の公転速度を5分間1000rpmに維持し、続いて公転速度を1分間2000rpmに維持した。バインダ樹脂ワニスのうち、有機溶媒(ブチルカルビトールアセテート等)を除く残りの部分が、実施例2の樹脂組成物に相当する。
上記のバインダ樹脂ワニス4.54g、鉄アモルファス合金粉65g、及びカルボニル鉄粉32gを計り取り、これらを150mlの軟膏容器に容れた。鉄アモルファス合金粉の比重は6.7であった。カルボニル鉄粉の比重は7.8であった。軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで40秒撹拌した。軟膏容器内の原料を自公転撹拌機で計5回撹拌することにより、実施例2のペーストを得た。鉄アモルファス合金粉及びカルボニル鉄粉が、実施例2の金属元素含有粉に相当する。
実施例2のペーストに含まれる樹脂組成物の質量Mと、実施例2のペーストに金属元素含有粉の質量mとから、実施例2のm/(m+M)を算出した。実施例2のm/(m+M)は下記表1に示される。実施例1と同様の方法で、実施例2のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度を測定した。実施例2のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度は、下記表1に示される。
(実施例3)
アクリル樹脂219.6g、エポキシ樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液39.84g、フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液17.32g、硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液2.00g及びシランカップリング剤4.5gを計り取り、これらの原料を650mlの軟膏容器に容れた。
アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス株式会社製の「HTR-860-P3」を用いた。アクリル樹脂のNV(不揮発分の含有量)は、12.5質量%であった。アクリル樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、80万であった。
エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の「NC3000-H」を用いた。エポキシ樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、50.2質量%であった。
フェノールノボラック樹脂(硬化剤)としては、日立化成株式会社製の「HP850N」を用いた。フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、43.0質量%であった。
硬化促進剤としては、四国化成株式会社製の「2PZ-CN」を用いた。硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、10質量%であった。
シランカップリング剤としては、信越シリコーン株式会社製の「KBM-573」を用いた。
軟膏容器内の全原料を自公転撹拌機で攪拌・混合することにより、バインダ樹脂ワニスを得た。自公転撹拌機としては、シンキー株式会社製の「ARE-500」を用いた。攪拌・混合工程では、自公転撹拌機の公転速度を5分間1000rpmに維持し、続いて公転速度を1分間2000rpmに維持した。バインダ樹脂ワニスのうち、有機溶媒(ブチルカルビトールアセテート等)を除く残りの部分が、実施例3の樹脂組成物に相当する。
上記のバインダ樹脂ワニス8.85g、鉄アモルファス合金粉65g、及びカルボニル鉄粉33gを計り取り、これらを150mlの軟膏容器に容れた。鉄アモルファス合金粉の比重は6.7であった。カルボニル鉄粉の比重は7.8であった。軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで40秒撹拌した。軟膏容器内の原料を自公転撹拌機で計5回撹拌することにより、実施例3のペーストを得た。鉄アモルファス合金粉及びカルボニル鉄粉が、実施例3の金属元素含有粉に相当する。
実施例3のペーストに含まれる樹脂組成物の質量Mと、実施例3のペーストに金属元素含有粉の質量mとから、実施例3のm/(m+M)を算出した。実施例3のm/(m+M)は下記表1に示される。実施例1と同様の方法で、実施例3のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度を測定した。実施例3のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度は、下記表1に示される。
(比較例1)
エポキシ樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液39.84g、フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液17.32g、硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液2.00g、及びシランカップリング剤4.5gを計り取り、これらの原料を650mlの軟膏容器に容れた。
エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の「NC3000-H」を用いた。エポキシ樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、50.2質量%であった。
フェノールノボラック樹脂(硬化剤)としては、日立化成株式会社製の「HP850N」を用いた。フェノールノボラック樹脂のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、43.0質量%であった。
硬化促進剤としては、四国化成株式会社製の「2PZ-CN」を用いた。硬化促進剤のブチルカルビトールアセテート溶液のNV(不揮発分の含有量)は、10質量%であった。
シランカップリング剤としては、信越シリコーン株式会社製の「KBM-573」を用いた。
軟膏容器内の全原料を自公転撹拌機で攪拌・混合することにより、バインダ樹脂ワニスを得た。自公転撹拌機としては、シンキー株式会社製の「ARE-500」を用いた。攪拌・混合工程では、自公転撹拌機の公転速度を5分間1000rpmに維持し、続いて公転速度を1分間2000rpmに維持した。バインダ樹脂ワニスのうち、有機溶媒(ブチルカルビトールアセテート等)を除く残りの部分が、比較例1の樹脂組成物に相当する。
上記のバインダ樹脂ワニス6.81g、鉄アモルファス合金粉65g、及びカルボニル鉄粉30gを計り取り、これらを150mlの軟膏容器に容れた。鉄アモルファス合金粉の比重は6.7であった。カルボニル鉄粉の比重は7.8であった。軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで40秒撹拌した。軟膏容器内の原料を自公転撹拌機で計5回撹拌することにより、比較例1のペーストを得た。鉄アモルファス合金粉及びカルボニル鉄粉が、比較例1の金属元素含有粉に相当する。
比較例1のペーストに含まれる樹脂組成物の質量Mと、比較例1のペーストに金属元素含有粉の質量mとから、比較例1のm/(m+M)を算出した。比較例1のm/(m+M)は下記表1に示される。実施例1と同様の方法で、比較例1のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度を測定した。比較例1のペーストに含まれる樹脂組成物の25℃における粘度は、下記表1に示される。
[安定性の評価]
実施例1~3及び比較例1其々のペースト30gを計り取り、各ペーストを個別に30mlのガラス瓶に容れた。ガラス瓶内の各ペーストを室温で24時間静置し続けた。24時間静置された後の実施例1~3其々のペーストを目視で観察した。24時間静置された後の実施例1~3其々のペーストでは、金属元素含有粉が沈降していかなった。つまり、24時間静置された後の実施例1~3其々のペーストにおいて、金属元素含有粉が分散していた。一方、1時間静置された後の比較例1のペーストを目視で観察した。1時間静置された後の比較例1のペーストでは、金属元素含有粉がガラス瓶の底に沈降しており、液状成分がペーストの表面に溜まっていた。
[分散性の評価]
実施例1~3及び比較例1其々のペーストを個別にバーコータでPETフィルム上に塗布して、各ペーストからなる塗膜を個別に形成した。各塗膜の厚みは50μmに調整された。乾燥機を用いて各塗膜を140℃で1時間加熱することにより、乾燥した。乾燥後の各塗膜を目視で観察した。実施例1~3のペーストから形成された塗膜のいずれも均質であった。つまり、実施例1~3のペーストから形成された塗膜内において金属元素含有粉が均一に分散していた。一方、比較例1のペーストから形成された塗膜は不均質であり、塗膜の周辺部に滲みがあった。つまり、比較例1のペーストから形成された塗膜内において金属元素含有粉は均一に分散していなかった。
Figure 0007035341000001
本発明に係るペーストは、例えば、インダクタの磁心の材料に用いられる。

Claims (10)

  1. 金属元素含有粉と、樹脂組成物と、を備え、
    25℃における前記樹脂組成物の粘度が、5Pa・s以上30Pa・s以下であり、
    前記樹脂組成物の質量が、Mと表され、
    前記金属元素含有粉の質量が、mと表され、
    m/(m+M)が0.95以上1.00未満であり、
    前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含み、
    前記金属元素含有粉の比重が、6.7以上10.0以下である、
    ペースト。
  2. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、
    請求項1に記載のペースト。
  3. 前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含む、
    請求項1又は2に記載のペースト。
  4. 前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂を含む、
    請求項に記載のペースト。
  5. 前記アクリル樹脂の重量平均分子量が50万以上150万以下である、
    請求項4に記載のペースト。
  6. 前記アクリル樹脂がグリシジル基を有する、
    請求項4又は5に記載のペースト。
  7. 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂を含む、
    請求項1~6のいずれか一項に記載のペースト。
  8. 互いに比重が異なる少なくとも二種類の前記金属元素含有粉を含む、
    請求項1~7のいずれか一項に記載のペースト。
  9. 前記金属元素含有粉が磁性粉である、
    請求項1~8のいずれか一項に記載のペースト。
  10. 前記樹脂組成物が硬化剤及び硬化促進剤を含む、
    請求項1~9のいずれか一項に記載のペースト。
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