JP7032081B2 - フェリチン検出用の検査キット及びフェリチンの検出方法 - Google Patents
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Description
鉄欠乏性貧血の確実な診断としては、大型の免疫学的な分析装置を用いたCLEIA法が知られている。ただし、検査に数時間が必要とされており、迅速な検査が困難である。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
(1)イムノクロマトグラフィー用の平面試験片と、蛍光標識されたシリカ粒子とを具備する、フェリチン検出用のイムノクロマトグラフィー用試験キットであって、
前記平面試験片が唾液展開用であり、
前記平面試験片を構成する抗体固定化メンブレンが試験領域と参照領域とを有し、該試験領域にはフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体が固定化され、
蛍光標識された前記シリカ粒子の平均粒径が30~400nmであり、該シリカ粒子はフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体で修飾され、さらにその表面にブロッキング処理が施されており、
前記平面試験片を構成する前記抗体固定化メンブレンの表面に、ウシ血清アルブミン溶液を用いたブロッキング処理が施されていることを特徴とする、イムノクロマトグラフィー用試験キット。
(2)前記試験領域に固定化されているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、並びに前記シリカ粒子を修飾しているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体が、いずれもポリクローナル抗体であることを特徴とする、前記(1)項記載のイムノクロマトグラフィー用試験キット。
(3)前記ポリクローナル抗体がヤギポリクローナル抗体であることを特徴とする、前記(2)項記載のイムノクロマトグラフィー用試験キット。
(4)イムノクロマトグラフィー用の平面試験片と、蛍光標識されたシリカ粒子とを具備するフェリチン検出用の試験キットを用いたフェリチンの検出方法であって、
前記平面試験片が唾液展開用であり、
前記平面試験片を構成する抗体固定化メンブレンが試験領域と参照領域とを有し、該試験領域にはフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体が固定化され、
蛍光標識された前記シリカ粒子の平均粒径が30~400nmであり、該シリカ粒子はフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体で修飾され、さらにその表面にブロッキング処理が施されており、
前記平面試験片を構成する前記抗体固定化メンブレンの表面に、ウシ血清アルブミン溶液を用いたブロッキング処理が施されており、
唾液を3~50倍に希釈し、希釈した唾液を前記平面試験片を構成するサンプルパッドに滴下し、
前記抗体固定化メンブレンの試験領域において、前記試験領域に固定化されたポリクローナル又はモノクローナル抗体と、フェリチンと、蛍光標識された前記シリカ粒子とからなるサンドイッチ型免疫複合体を検知することでフェリチンを検出することを特徴とする、フェリチンの検出方法。
(5)前記唾液が耳下腺から分泌された唾液であることを特徴とする、前記(4)項記載のフェリチンの検出方法。
(6)陰イオン性界面活性剤を含有する溶媒で前記唾液又は試料を希釈することを特徴とする、前記(4)又は(5)項記載のフェリチンの検出方法。
(7)前記陰イオン性界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、前記(6)項記載のフェリチンの検出方法。
(8)唾液又は試料を希釈した後の溶液における前記ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が0.06~0.1%(w/v)であることを特徴とする、前記(7)項記載のフェリチンの検出方法。
(9)唾液又は試料を希釈した後の溶液における前記ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が0.07~0.1%(w/v)であることを特徴とする、前記(7)項記載のフェリチンの検出方法。
(10)前記試験領域に固定化されているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、並びに前記シリカ粒子を修飾しているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体が、いずれもポリクローナル抗体であることを特徴とする、前記(4)~(9)のいずれか1項記載のフェリチンの検出方法。
(11)前記ポリクローナル抗体がヤギポリクローナル抗体であることを特徴とする、前記(10)項記載のフェリチンの検出方法。
また、本発明のフェリチンの検出方法は、前記フェリチンの検出に好適に用いることができ、唾液を用いた検出を可能にすることで被験者に苦痛を感じさせずに定常的な健康チェックに利用することが可能である。
まず、本発明のイムノクロマトグラフィー用試験キットの好ましい実施形態について、図1~6を参照して構成要素毎に説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
図1は本発明に好適に用いられる長尺試験体を模式的に示す分解斜視図であり、図2は本発明に好適に用いられるイムノクロマトメンブレンの説明図である。
本実施形態のイムノクロマトグラフィー用平面試験片80は、下記の部材が相互に毛細管現象が生じるように直列連結していることが好ましい。
・試料添加用部材(サンプルパッド)8a
・蛍光標識体2,3を含浸し、乾燥して得られる部材(コンジュゲートパッド)8b
・抗体固定化部nt,nrを有するメンブレン(抗体固定化メンブレン)8c
・吸収パッド8d
図2(a)は、本発明のイムノクロマトグラフィー用試験片の好ましい一実施形態の平面図を示し、図2(b)は、図1(a)で示したイムノクロマトグラフィー用試験片の展開断面図を示す図である。本実施形態の試験片10は、上述のように、サンプルパッド8a、コンジュゲートパッド8b、抗体固定化メンブレン8c、吸収パッド8dを具備してなる。さらに、上記各構成部材は、本実施形態のように、粘着剤付きバッキングシート8eにより裏打ちされていることが好ましい。
サンプルパッド8aは標的物質1を含む検体Sを滴下する構成部材である。その材料や寸法等は特に限定されず、この種の製品に適用される一般的なものを利用することができる。
コンジュゲートパッド8bは蛍光標識体2,3が含浸された構成部材である。そして、サンプルパッド8aから毛細管現象により移動してきた試料に含まれる標的物質1が抗原抗体反応等の特異的分子認識反応で、前記蛍光標識体によって捕捉され、標識される部分である。
コンジュゲートパッド8bにおける単位面積(cm2)当たりの前記蛍光標識体の含有量は特に制限はないが1~100μgが好ましい。含浸方法としては、前記蛍光標識体の分散液を塗布、滴下ないしは噴霧後、乾燥する方法等が挙げられる。
抗体固定化メンブレン8cにおける抗体固定化部に、標的物質1の有無を判定、すなわち陽性陰性を判定するための標的物質1を捕捉するための抗体(試験用捕捉性物質4)が固定化された試験領域ntを設ける。また、抗体固定化メンブレン8cには、参照用蛍光標識体3を捕捉するための抗体(参照用捕捉性物質5)が固定化された参照領域nrを含む。
前記抗体固定化メンブレン8cにおける前記抗体固定化部(判定部)ntの形状としては局所的に捕捉用抗体4が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、ライン状であることが好ましく、幅0.5~1.5mmのライン状であることがより好ましい。
抗体固定化メンブレンに固定化される抗体の濃度は、0.3~10.0mg/mLであることが好ましく、0.5~5.0mg/mLであることがより好ましく、1.0~2.0mg/mLであることがさらに好ましい。
ブロッキング処理を施した抗体固定化メンブレン8cを粘着剤付きバッキングシート8eに貼り付け、サンプルパッド8a、コンジュゲートパッド8b、及び吸収パッド8dとともに組み立て試験片10とする。標的物質1が蛍光標識体2,3とともに試験片10上で流れる際に非特異的な結合が見られる場合、メンブレンと同様の操作で試験片10全体に対してブロッキング処理を行うことで、改善が見られる。
試験用結合性物質2b及び試験用捕捉性物質4は、標的物質1との結合性を有する。一方、参照用蛍光標識体3はシリカ粒子3aと参照用結合性物質3bとからなる。参照用結合性物質3bは、標的物質1との結合性はなく、参照用捕捉性物質5との結合性を有する。
吸収パッド8dは、毛細管現象で抗体固定化メンブレン8cを移動してきた検体S及び蛍光標識体2,3を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための構成部材である。
粘着剤付きバッキングシート8eとしては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
本発明の蛍光イムノクロマト法においては、平面試験片に透明フィルムを適用するに際し、下記の関係式が成り立つものを採用することが好ましい。
[式(1) nFf>nWf]
(nFf:前記蛍光の波長λfにおける透明フィルムの屈折率)
(nWf:前記蛍光の波長λfにおける検体液の屈折率)
なお、励起光ないし蛍光の波長については、複数ある場合にはその最大照度を示す波長を言う。照度に分布がある場合には、その最大ピークを与える波長をもって評価することとする。
なお、励起光についても、透明フィルムと検体液に関して以下の屈折率の関係が成立していることが好ましい。
[式(1)´ nFe>nWe]
(nFe:励起光の波長λeにおける透明フィルムの屈折率)
(nWe:励起光の波長λeにおける検体液の屈折率)
上記水の屈折率のみならず、透明フィルムの屈折率についても波長依存性がさほど大きくないことがある。このような場合でも、上記のように波長ごとの屈折率を規定することは有意義であり、蛍光の波長において、透明フィルムと検体液との屈折率の関係を特定のものとすることで、本発明における検出上のにじみやぼけを抑えるという効果を的確に発揮させることができる。
まず、励起光源LIから励起光71が照射され、透明フィルム7を透過して、抗体固定化メンブレン8cの蛍光標識体2に励起光71が到達する。蛍光標識体2は抗体固定化メンブレン8cの表面近傍もしくは内部に存在しており、上記励起光71の照射を受け、蛍光72を発する。抗体固定化メンブレン8cは多孔体であるから、蛍光72は多孔体を構成する固相によって散乱される。その後、散乱された蛍光72の一部は外界(空気)Aとの界面に到達するが、抗体固定化メンブレン8cが水で湿った状態の場合、水(検体液)の屈折率が外界(空気)Aの屈折率より大きいため、入射角が臨界角より大きい角度で入射した蛍光は全反射して抗体固定化メンブレン8c内部に戻る方向に進行し、さらに抗体固定化メンブレン8cの固相で散乱されながら抗体固定化メンブレン8c内を伝播する(反射光73)。外界(空気)Aの屈折率はおよそ1.0で評価することができる。一方入射角が臨界角より小さい角度で入射した蛍光72は外界(空気)Aに放出される(出射光74[図4参照])。
このように抗体固定化メンブレンと外界(空気)の界面では、臨界角より大きい角度で入射した蛍光は全反射して、さらに抗体固定化メンブレンの固相で散乱されながら抗体固定化メンブレン内を伝播し、臨界角より小さい角度で入射した蛍光は外界Aに放出されるため、抗体固定化メンブレン全体が発光して見えることとなる。上記の説明はモデルを簡素化して説明しており、抗体固定化メンブレン内外での光の挙動は必ずしもこれに一致しなくてもよいが、典型的には上記の機構を通じて抗体固定化メンブレン全体が発光して見えることとなる。また、蛍光イムノクロマト法において用いられる検体液は通常水に塩、タンパク質、界面活性剤等が溶解された液であり水より屈折率が大きいから、検体液を用いた場合であっても液相の屈折率は空気の屈折率より必ず大きくなるため、同様の現象が生じる。そうすると、試験領域ntでライン状の蛍光発光があっても、周辺にも発光が広がり、上記のライン発光が相対的ににじむ、あるいはぼけるように見えることとなる(図6参照)。
図3の実施形態においても、励起光源LIから励起光71が照射され、これを受け蛍光標識体2から蛍光72が発せられ抗体固定化メンブレン8cの多孔体を構成する固相によって散乱されるのは、図4のときと同様である。その後、散乱された蛍光72の一部は透明フィルム7の界面に到達するが、このとき抗体固定化メンブレン8cの外表面には透明フィルム7があり、この屈折率が検体液の屈折率よりも高いため、その蛍光72は透明フィルム7側に入射していく。その後、蛍光72の一部はさらに外界(空気)Aとの界面に到達するが、透明フィルム7の屈折率の方が空気の屈折よりも高く設定されているため、入射角が臨界角より大きい場合は外界(空気)Aには放出されず、透明フィルム7内部にとどまるように全反射する(反射光73)。その下方では、やはり透明フィルム7の方が検体液より屈折率が高いため、反射光73は透明フィルム7内部にとどまるように全反射し、透明フィルム7を導波路として伝播していく。このとき透明フィルム7では、抗体固定化メンブレン8cとは異なり、光の吸収や散乱を起こさずに反射光73が伝播していくので、一度全反射した蛍光72はそれ以後透明フィルム7表面から外界(空気)Aに放出されることなく、抗体固定化メンブレン8cの蛍光物質近傍の蛍光発光の視認性が保たれる。
結果として、試験領域ntの発光ラインがその周辺の発光ないし発色に阻害されず、鮮明に維持され、良好な検出が可能となる(図5参照)。
ここで、抗体固定化メンブレン8c内の参照領域や試験領域において、蛍光物質が励起されて発生した蛍光は、抗体固定化メンブレン8c内で一部は散乱されるが、残りは透明フィルム7に入射する。透明フィルム7に入射した蛍光は、透明フィルムを透過して検出器で検出することができるが、一部は透明フィルム7内で全反射を繰り返し、透明フィルム端面から透明フィルム外に放出される。以上のように、抗体固定化メンブレン8cに透明フィルム7を貼り付けることで、透明フィルム7の蛍光の強度を低減できることから、相対的に参照領域nrや試験領域ntの蛍光の強度を、透明フィルム7のその他の部分より相対的に高めることが可能となる。
表1に上記材料による透明フィルムがもつ屈折率の例を示すが本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
なお、特に断らない限り、屈折率は、温度20℃における値を言う。透過率等、他の光学特性も特に断らない限り、同様である。
本明細書で用いる技術用語の意味を確認すると、標的物質1(図1中の符号を併せて示すが、これにより限定して解釈されるものではない。)はラテラルフロー法による検出対象となる物質であり、検体中の被検物質と同義である。結合性物質2b,3bはそれぞれ前記標的物質1及び参照用捕捉性物質5に対する結合能を有する物質であり、好ましくは生体分子である。結合性物質2b,3bが導入された標識シリカ粒子2a,3aを蛍光標識体2,3と呼ぶ。ただし、広義には、標識シリカ粒子という用語として蛍光標識体を含む意味で用いることがある。一方、試験領域ntで抗体固定化メンブレン8cに固定され、標的物質1を介して試験用蛍光標識体2を捕捉するものが試験用捕捉性物質4である。他方、参照領域nrで抗体固定化メンブレン8cに固定されたものが参照用捕捉性物質5であり、これに参照用蛍光標識体3が標的物質1を介さずに捕捉される。
本発明で用いる蛍光標識体2,3としては、シリカ粒子2a,3aと、結合性物質2b,3bとを組み合わせて用いることができる。
(a)機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物をテトラアルコキシシランとともにアンモニア水含有溶媒中で加水分解した後、加水分解物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより、前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物に由来する機能性分子結合オルガノシロキサン成分を含有するコアとなるシリカ粒子(以下、「機能性分子含有シリカ粒子」という。)を調製する工程、及び
(b)前記工程(a)により前記コアとなる前記機能性分子含有シリカ粒子を調製した後に、前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物が残存する前記アンモニア水含有溶媒に前記テトラアルコキシシランをさらに含有させ、加水分解と縮重合とによるシロキサン結合形成により、前記機能性分子を含有するシリカの層を前記シリカ粒子の表面上に形成し、調製されるシリカ粒子1個当たりの前記機能性分子の含有量を増大する工程。
(c)前記工程(a)又は(b)の反応液を、前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物を含有しない新たなアンモニア水含有溶媒を用いて溶媒置換処理し上記調製されたシリカ粒子を再分散させた後、テトラアルコキシシランをさらに含有させ加水分解と縮重合とにより、シリカのシェル層を前記シリカ粒子の表面上に形成する工程。
前記工程(c)において、上記溶媒置換によっても粒子表面等に残存する前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物を前記新たなアンモニア水含有溶媒に含有させてもよく、前記工程(a)又は(b)により調製された前記機能性分子含有シリカ粒子に含有される前記機能性分子100質量部に対して、20質量部以下の前記機能性分子を含有するシリカのシェル層が形成されてもよく、15質量部以下の前記機能性分子を含有するシリカのシェル層が形成されることが好ましい。
前記工程(c)により、本発明の製造方法により調製されるシリカ粒子にアルカリ溶液に対する高い耐性を付与することができる。
本発明に用いる前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物は、互いに反応して結合を形成する活性部位を持つ機能性分子とオルガノアルコキシシランとを反応させることで得ることができる。
活性基を有する前記機能性分子の好ましい具体例として、5-カルボキシTAMRA-NHSエステル、5-カルボキシローダミン6G-NHSエステル、5-カルボキシフルオレセイン-NHSエステル(いずれも商品名;Invitrogen社製)等のNHSエステル基を有する蛍光色素化合物を挙げることができる。
前記シリカ粒子の製造方法の前記工程(a)において、前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物の前記アンモニア水含有溶媒中に含有させる量は、前記テトラアルコキシシランとの混合モル比率として、1:100~1:5の範囲で反応させることが好ましく、1:50~1:10の範囲で反応させることがより好ましい。
この溶解ないしは含有させておく前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物の量により、得られる積層構造のシリカ粒子中の前記機能性分子の含有量を制御できる。
前記シリカ粒子の製造方法で用いられるアンモニア水含有溶媒に含有させるアンモニア水の濃度は、目的の積層構造のシリカ粒子の平均粒径を制御する観点から、1~28質量%であることが好ましく、2~14質量%であることがより好ましい。
前記工程(a)における前記コアとなる前記シリカ粒子の形成の温度条件としては特に制限はないが、高温で合成を行うとシリカへの機能性分子の取り込み効率を高めることができる。したがって、機能性分子の取り込み効率を高くしたい場合は35~60℃の温度条件下で行うことが好ましい。反応時間としては特に制限はないが、反応時間を長くするとシリカへの機能性分子の取り込み効率を高めることができる。したがって、機能性分子の取り込み効率を高くしたい場合は4~48時間反応させることが好ましい。
前記工程(b)における前記シリカ層の形成温度条件としては特に制限はないが、前記工程(a)の場合と同様機能性分子の取り込み効率を高くしたい場合は35~60℃の温度条件下で行うことが好ましい。反応時間としては特に制限はないが、前記工程(a)の場合と同様機能性分子の取り込み効率を高くしたい場合は4~48時間反応させることが好ましい。
積層構造のシリカ粒子は、前記シリカ粒子の製造方法により製造することができる。
前記積層構造のシリカ粒子は、前記工程(a)により得られた前記機能性分子含有シリカ粒子をコアとし、前記シリカ粒子の表面上を1層又は2層以上のシリカの層がシロキサン結合により包囲してなる積層構造のシリカ粒子であることを特徴とする。
前記積層構造のシリカ粒子において、前記シリカの層の数としては、1~6層であることが好ましい。
前述のように、前記工程(a)により得られたコアとなる前記シリカ粒子を調製する場合、テトラアルコキシシランの方が前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物よりも反応速度が速い。そのため、合成初期にはテトラアルコキシシランが反応して形成されるシリカに含有される前記機能性分子結合オルガノシロキサン成分の比率が低く、逆に合成後期には前記機能性分子結合オルガノシロキサン成分の比率が高くなる。結果として、前記コアとなる前記シリカ粒子の内部においては、前記機能性分子結合オルガノシロキサン成分が表面近傍ないしは表面に高濃度に偏在することになる。前記工程(b)により前記シリカの層を形成する場合においても同様に、前記シリカの層の外側に前記機能性分子結合オルガノシロキサン成分が高濃度に偏在することになる。
そこで、前記積層構造のシリカ粒子において、前記シリカの層の厚みは、前記FRETによる自己消光を防止する観点から、7nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、10~20nmがさらに好ましい。
ただし、前記シリカの層が厚くなるとシリカ粒子の重量が増大し、それによりコロイド重量あたりの蛍光強度が減少することになる。そのため、コロイド重量あたりの蛍光強度を高くするには前記FRETによる自己消光が抑制される範囲で前記シリカの層を極力薄くすることが好ましい。
本発明により得られたシリカ粒子の粒度分布の変動係数(以下CVということもある。)は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。ここで、前記変動係数は、粒度の分布の標準偏差を平均粒径で割った値をいう。
前記積層構造のシリカ粒子は、前述のように、本発明の製造方法における前記アンモニア水含有溶媒中のアンモニアの含有量を制御すること、並びに前記工程(b)を1回又は2回以上繰り返すことで制御することにより20~100nmの範囲にある平均粒径とした場合、変動係数は15%以下とすることができる。
シリカは、一般に、化学的に不活性であると共に、その修飾が容易であることが知られている。本発明のシリカ粒子もまた、容易に所望の物質を表面に結合させることが可能である。
本発明のシリカ粒子は、フェリチンを分子認識する物質を表面に結合もしくは吸着させることが好ましい。
前記シリカ粒子が、前記機能性分子として蛍光色素分子もしくは吸光色素分子を含有する場合、検体(例えば、任意の細胞抽出液、唾液、血清、バッファー)中のフェリチンを蛍光ないしは吸光色素標識付けすることができる。
前記シリカ粒子を表面修飾する前記フェリチンを分子認識する物質としては、抗体、抗原、ペプチド、DNA、RNA、糖鎖、リガンド、受容体、化学物質等が挙げられる。本発明では、感度の面から、少なくともポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体で修飾されており、ポリクローナル抗体で修飾されていることが好ましく、ヤギポリクローナル抗体で修飾されていることがより好ましい。
ここで、分子認識とは、(1)DNA分子間又はDNA-RNA分子間のハイブリダイゼーション、(2)抗原抗体反応、(3)酵素(受容体)-基質(リガンド)間の反応など、生体分子間の特異的相互作用をいう。
また化学物質とは天然有機化合物に限らず、人工的に合成された生理活性を有する化合物や環境ホルモン等を含む。
すなわち、前記シリカ粒子を表面修飾した、フェリチンを分子認識する物質はそれ自体が受容体部位となって、例えば抗原-抗体反応、塩基配列の相補性を利用したハイブリダイゼーションなどの特異的な分子認識を利用して、フェリチンに特異的に結合することができる。
前記積層構造のシリカ粒子の表面への、前記生体分子による吸着等の表面修飾が、縮合剤ないしは架橋剤の存在下又は非存在下にて、前記積層構造のシリカ粒子のコロイドと前記生体分子の溶液とを混合することにより行われることが好ましい。
例えば、縮合剤等の非存在下、前記積層構造のシリカ粒子のコロイドと前記生体分子の溶液とを混合することにより、前記生体分子は、前記シリカ粒子の表面と吸着することができる。
表面修飾に用いる前記縮合剤ないしは架橋剤の当量数、前記コロイドの分散媒、前記生体分子の溶液の溶媒の種類・容量、及び反応温度等の反応条件については表面修飾が進行する限り特に制限はない。
ブロッキング処理の具体的な方法は、抗体と粒子を結合させた反応の後、未反応の抗体溶液を除去し、2%ブロッキング溶液を500μL(粒子1mg当たり)加えて3分間振盪させる。その後、遠心分離及び上清除去を行い、さらに2%ブロッキング溶液を500μL加えて3分間振盪させる。再度、遠心分離及び上清除去を行い、10mMリン酸Bufferを500μL加えて1分間振盪させ、洗浄を行う。さらに遠心分離及び上清除去を行い、10mMリン酸Bufferを500μL加える。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した100個の標識試薬シリカ粒子の合計の投影面積から蛍光標識体の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した蛍光標識体の個数(100個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
なお、前記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む概念の後述する「動的光散乱法による粒度」とは異なり、一次粒子のみからなる粒子の平均粒径である。
動的光散乱法による粒度の測定装置としては、ゼータサイザーナノ(商品名;マルバーン社製)が挙げられる。この手法は、微粒子などの光散乱体による光散乱強度の時間変動を測定し、その自己相関関数から光散乱体のブラウン運動速度を計算し、その結果から光散乱体の粒度分布を導出するというものである。
本発明において、検出、定量の対象としての標的物質1は、フェリチンである。本発明において、標的物質1を含有する試料としては特に制限はないが、唾液、血液などの液体試料が挙げられ、生体から簡便に採取できることから唾液が好ましい。すなわち、本発明に用いられる平面試験片は、唾液展開用であることが好ましい。
また、唾液のなかでも、耳下腺から分泌された唾液がより好ましい。耳下腺から分泌された唾液は粘度が低く、平面試験片80上でスムーズに展開されるからである。耳下腺から分泌された唾液の粘度が低い理由は定かでないが、ムチンの含有量が比較的少ないためだと考えられる。耳下腺から分泌された唾液は、滅菌した脱脂綿を口腔内の耳下直近に含み、耳下直近の唾液を吸収させることにより、調製することができる。
また、唾液を希釈する溶媒は、標的物質が検出可能な限り特に制限はなく、ホウ酸バッファー、HEPESバッファー、炭酸バッファー等が挙げられる。
唾液には、シリカ粒子を修飾する抗体に非特異的に結合できる、ムチンなどの高分子量のタンパク等が含まれる。ムチンは、シリカ粒子を凝集させる作用を有する。このようなムチンの作用に対し、添加剤により、ムチンなどのタンパクと、シリカ粒子上に存在するBSAなどのブロッキング剤や抗体といったタンパク質との結合性を低下させ、タンパク質間の凝集を抑制することで、シリカ粒子が分散するものと想定される。
陰イオン性界面活性剤の具体的としては、ドデシル硫酸ナトリウム(以下単に、「SDS」ともいう)、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム及びラウリルリン酸ナトリウム等が挙げられる。このうち、SDSが特に好ましい。
希釈液に対する添加剤の含有量に特に制限はなく、添加剤の種類に応じて、抗原抗体反応が阻害されず、唾液による粒子の凝集作用を阻害できる範囲で適宜設定することができる。例えば、添加剤としてSDSを用いる場合、唾液を希釈した後の溶液におけるSDSの濃度は0.06%(w/v)以上が好ましく、0.07%(w/v)以上がより好ましい。また上限値に特に制限はないが、SDSはタンパク変性作用を示すので、抗体におけるフェリチンの認識部位の構造を変化させることのない範囲で適宜設定することが好ましく、0.1%(w/v)以下がより好ましい。SDSを適切な濃度で希釈液に含有させることで、抗原抗体反応を阻害せず、かつ、唾液による粒子の凝集作用を阻害することができ、その結果、フェリチンの検出感度をより向上させることができる。
本発明の標的物質の検出方法においては、毛細管現象等を利用して移動する蛍光標識体2,3を利用して、判定部で前記粒子を集積させ、判定を行う検出方法であり、例えばイムノクロマト法やマイクロ流路チップ等を利用して行うことが好ましい。このとき、蛍光標識体はラテラルフロー用標識体として好適に用いることができる。さらに、本発明の標的物質の検出方法において、標的物質がラテラルフロー方向Lに向かって移動する形式である、ラテラルフロータイプのイムノクロマト法を利用して標的物質を検出することが好ましい。
前記蛍光検出システムにおいて、前記標識試薬シリカ粒子(蛍光標識体)が発する蛍光を目視等によって検出する観点から、前記励起光源が、波長200~400nmの励起光を発することが好ましい。前記励起光源としては、水銀ランプ、ハロゲンランプ及びキセノンランプが挙げられる。本発明においては、特にレーザダイオード又は発光ダイオードから照射した励起光を用いることが好ましい。
また、前記蛍光検出システムは、前記励起光源から特定の波長の光のみを透過するためのフィルタを備えていることがより好ましく、さらに、蛍光のみを目視等で検出する観点から、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタを備えていることがさらに好ましい。
前記蛍光検出システムは、前記蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えることが特に好ましく、これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できることから標的物質の定量もでき、高感度検出及び定量が可能となる。
1.工程(a)
色素を高濃度に含有するシリカコロイドを合成すべく、2質量%のアンモニア水をさらにエタノールで5倍に希釈してアンモニア水含有溶媒100mlとし、その中に0.5体積%となる体積500μlのTEOSと前記TEOSと同体積のカルボキシTAMRA‐APSのDMF溶液とを、それぞれ、添加して室温にて撹拌した。
ここで、前記機能性分子結合オルガノアルコキシシラン化合物としての前記カルボキシTAMRA‐APSは下記式で表され、5-カルボキシTAMRA-NHSエステルとAPSとを反応させたものを用いた。前記DMF溶液は40mMの濃度に調整したものを用いた。
溶液中の遊離色素による蛍光強度の測定の結果から、反応開始から7~8時間経過すると前記カルボキシTAMRA‐APSの取り込み速度が減少し、反応終了とした。得られた粒子は、カルボキシTAMRA色素がシリカ粒子の表面近傍ないしは表面に偏在していた。
なお、前記シリカ粒子の蛍光強度の測定は、蛍光分光光度計FP-6500(商品名、日本分光社製)を用いて、490nmの励起光における520nmの蛍光強度を測定した。
工程(a)で得られたシリカ粒子に、前記カルボキシTAMRA‐APSを取り込む余地の豊富なシリカを提供するため、TEOSを追加投入し室温5時間反応させ、1層のシリカ層を有するシリカ粒子のコロイドを得た。
TEOSの追加投入量は、工程(a)における投入量の50%分とした。
溶液中に前記カルボキシTAMRA‐APSが残存する状態で反応させ、シェルを形成しているので、シェル層の表面近傍ないしは表面にも多くの色素が結合していた。
シリカ粒子の平均粒径を測定するため、前記工程(b)により得られたシリカ粒子のコロイドを洗浄した。
具体的な洗浄操作としては、反応終了後、遠心分離(5,000×g)を30分行い、粒子を沈降させた後、直ちに上清液を除去した。得られた沈殿物をエタノールに再分散させ、再度遠心分離(5,000×g)を30分行い、粒子を沈降させた。同様のエタノール洗浄操作をさらに1回繰り返し、未反応のTEOS等を除去した。さらにエタノールの代わりに蒸留水を用いた以外は同様な洗浄操作を4回行い、遊離色素等を除去した。その結果、1層のシリカ層を有するシリカ粒子を得た。
上記得られたシリカ粒子の平均粒径は、SEM画像に写っている各粒子(100個以上)の直径を測定し、その平均値として算出した。
前記工程(b)により得られたシリカ粒子のコロイドに含まれるシリカ粒子の平均粒径は、87nmであった。
遠心管に50mM KH2PO4(pH6.5)1mLと、前記工程(b)により得られたシリカ粒子のコロイド(10mg/mL)9mLとを加えて軽く撹拌した。遠心管にヤギポリクローナル抗体(商品名:anti- ferritin goat polyclonal antibody、US biological社製)1mL(60μg/mL)を撹拌しながら加え、室温で1時間静置した。これに1質量%のPEG(ポリエチレングリコール、分子量20,000、和光純薬工業社製)を0.55mL加え軽く撹拌した。
混合液を12,000×Gで15分間遠心分離し、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。この分散液に保存用バッファー(20mM Tris-HCl(pH 8.2)、0.05% PEG20,000、1%BSA、0.1%NaN3)を20mL加え、再度遠心分離し、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた(コロイドA)。
金コロイド(粒径100nm、田中貴金属工業社製)0.5mLに、ヤギポリクローナル抗体(1.0mg/mL、US biological社製)100μL加え、10分間室温で静置した。続いて、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.5)100μL加え、更に10分間室温で静置した。その後、8,000×Gで15分間遠心分離を行い、上清を除去し、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.5)100μL加え、粒子を分散させた。
調製例1で得られたコロイドA240μLと50mM KH2PO4(pH7.0)560μLを混合した。得られた混合液800μLをGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)(8×150mm)に均等に塗布した。デシケーター内で室温下、一夜減圧乾燥し、調製例1のシリカ粒子のコロイド由来のシリカ粒子を含有してなるコンジュゲートパッド8bを作製した。
メンブレン(丈25mm、商品名:Hi-Flow Plus120 メンブレン、MILLIPORE社製)の中央付近(端から約12mm)に、幅約1mmの試験領域ntとして、ヤギポリクローナル抗体(商品名anti- ferritin goat polyclonal antibody、US biological社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4,pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
続いて、幅約1mmの参照領域nrとして、抗マウスIgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4,pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量で塗布し、50℃で30分乾燥させた。なお、試験領域ntと参照領域nrとの間隔は3mmとした。次に、ブロッキング処理として前記メンブレン全体をブロッキングバッファー(2%BSA溶液)中に室温で60分、30℃で浸し、その後メンブレンを取り出し、10mMリン酸Buffer(pH7.5)で2回洗浄後乾燥した。
続いて、透明フィルム7としてPETフィルム(テイジン テトロン(登録商標)フィルムG2P2(帝人デュポンフィルム社製))を、サンプルパッド8aの端から1.4mm部分まで、吸収パッドの端から1.2mmまでの部分を覆うように貼り付けた。
続いて、幅5mm、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1(a)及び(b)に示した構成の試験片10を得た。
なお、各構成部材は、図2(a)及び図2(b)に示すように、各々その両端を隣接する部材と2mm程度重ね合わせて貼付した。
比較例1として、調製例1のコロイドAを調製例2の標識試薬に変更した以外は実施例1と同じ方法で試験片10を作製した。
調製例2-1及び2-2の試験片10のサンプルパッド8a部分にそれぞれ、HEPESバッファーを用いて0、0.05、0.1、0.25、0.5、0.75ng/mLの濃度に希釈したフェリチンを80μL滴下した。フェリチンの滴下から15分経過後に蛍光リーダーで試験領域ntの判定を行った。ここで蛍光リーダーとは、波長532nmのレーザダイオードと光学フィルターからなる装置であり、メンブレンのライン領域に前記レーザダイオードを照射し、光学フィルムを介してラインを観察することによって、蛍光粒子の発する蛍光のみを観察する装置である。
判定の結果を表2に示す。表2中「○」は試験領域ntにおいて蛍光が見えたことを意味し、「-」は試験領域ntにおいて蛍光が見えなかったことを意味する。なお、試験領域の蛍光の有無の判断は、図9に示す蛍光強度基準に従い行った。
滅菌した脱脂綿を口腔内に含み唾液を吸収させ、脱脂綿から唾液を回収した。調製例2-1の試験片10のサンプルパッド8a部分にそれぞれ、添加剤としてSDS(和光純薬工業社製)を添加したホウ酸バッファー(唾液希釈後のSDSの終濃度が0.1%(w/v)となるよう調整)、及び添加剤を含まないホウ酸バッファーを用いて、回収した唾液を2倍、3倍、5倍、10倍、30倍、50倍、100倍に希釈し、80μL滴下した。15分経過時に蛍光リーダーで試験領域ntの判定を行った。
判定の結果を表3に示す。表3中「○」は試験領域ntにおいて蛍光が見えたことを意味し、「-」は試験領域ntにおいて蛍光が見えなかったことを意味する。なお、試験領域の蛍光の有無の判断は、図9に示す蛍光強度基準に従い行った。
これに対して、添加剤を添加した実施例2では、唾液を3~50倍で希釈した場合において、唾液に含まれるフェリチンを検出することができた。この結果から、血清を用いず、唾液を用いた非侵襲でのフェリチン検出が、短時間で可能となったと言える。
唾液中のフェリチンは、ELISA法、Human Ferritin ELISA kit(abcam社製)に添付された方法に則り測定した。
終濃度が所定の濃度となるようポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:Briji35、キシダ化学社製)、アルギニン(東京化成工業社製)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(商品名:TritonX-100、SIGMA-ALDRICH社製)、SDS(和光純薬工業社製)、又はポリブレン(Sigma-Alddrich社製)をホウ酸バッファー(東京化成工業社製)に添加し、緩衝液を調製した。調製した緩衝液に、緩衝液に対して1/5倍量~1/10倍量(体積基準(v/v))の唾液(フェリチンを5.0 ng/mLで含有)を加えて混合し、希釈処理済みの唾液を調製した。
試料を15分間メンブレン上で展開した後、実施例1と同様の方法でテストラインの蛍光を読み取り、フェリチンの検出を行った。その結果を表4及び5、並びに図7及び8に示す。
なお、表4及び5に示す検出結果は、図9に示す蛍光強度基準に従い決定した。
図7の縦軸の「蛍光強度」の算出するために、光源と光学フィルタとフォトダイオード(PD)を含んでなる検出ユニットを有し、該検出ユニットが、モーターによって一定速度で直線移動する機構を備え、PDの受光強度を50μ秒ごとに記録する記録機構を備えた、蛍光検出装置を作製した。なお、検出ユニットは、光源が532nmのレーザーであり、レーザをサンプルに照射し、反射光を一定以上の波長の光のみを透過する光学フィルタ(セムロック社製、532R)を透過させた後にPD(浜松ホトニクス社製、S7686)で受光する機構を有する。この蛍光検出装置を用いて、メンブレンが発する蛍光を読み取り、信号のピーク面積から数値を算出した。
また、図8の縦軸の「蛍光強度のCV%」は、同じ唾液試料を使用して、独立した3回の試験を実施し、蛍光強度の平均値と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で除し、CV%を算出した。
また、添加剤としてSDSを用いた場合、特に検出感度が高かった。これは、SDSが陰性のチャージを持っており、陰性のチャージを持つムチンとよく反発するため、タンパク質間の凝集抑制効果がより優れているためと考えられる。
SDSには強いタンパク変性作用がある。そのため、添加剤の濃度が高すぎると抗体がフェリチンを認識する部位の構造が変化し、抗原抗体反応が阻害され、フェリチンの検出感度が低下したと考えられる。
さらに、図7に示すように、SDSの濃度が0.08%の場合、唾液中のフェリチンに由来する蛍光が最も強かった。さらに、蛍光強度のばらつき(変動係数)も少なかった(図8参照)。
2 試験用蛍光標識体
2a シリカ粒子
2b 試験用結合性物質
3 参照用蛍光標識体
3a シリカ粒子
3b 参照用結合性物質
4 試験用捕捉性物質
5 参照用捕捉性物質
6 筐体
61 検出開口部
62 検体導入開口部
6a 筐体上部
6b 筐体下部
7 透明フィルム
71 励起光
72 蛍光
73 反射光
74 出射光
80 平面試験片
8a サンプルパッド
8b コンジュゲートパッド
8c 抗体固定化メンブレン
8d 吸収パッド
8e 粘着剤付きバッキングシート
10 試験片
100 長尺試験体
A 外界(空気)
nr 参照領域
nt 試験領域
L ラテラルフロー方向
LI 励起光源
S 検体
Claims (11)
- イムノクロマトグラフィー用の平面試験片と、蛍光標識されたシリカ粒子とを具備する、フェリチン検出用のイムノクロマトグラフィー用試験キットであって、
前記平面試験片が唾液展開用であり、
前記平面試験片を構成する抗体固定化メンブレンが試験領域と参照領域とを有し、該試験領域にはフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体が固定化され、
蛍光標識された前記シリカ粒子の平均粒径が30~400nmであり、該シリカ粒子はフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体で修飾され、さらにその表面にブロッキング処理が施されており、
前記平面試験片を構成する前記抗体固定化メンブレンの表面に、ウシ血清アルブミン溶液を用いたブロッキング処理が施されていることを特徴とする、イムノクロマトグラフィー用試験キット。 - 前記試験領域に固定化されているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、並びに前記シリカ粒子を修飾しているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体が、いずれもポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1記載のイムノクロマトグラフィー用試験キット。
- 前記ポリクローナル抗体がヤギポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項2記載のイムノクロマトグラフィー用試験キット。
- イムノクロマトグラフィー用の平面試験片と、蛍光標識されたシリカ粒子とを具備するフェリチン検出用の試験キットを用いたフェリチンの検出方法であって、
前記平面試験片が唾液展開用であり、
前記平面試験片を構成する抗体固定化メンブレンが試験領域と参照領域とを有し、該試験領域にはフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体が固定化され、
蛍光標識された前記シリカ粒子の平均粒径が30~400nmであり、該シリカ粒子はフェリチンとの結合性を有するポリクローナル又はモノクローナル抗体で修飾され、さらにその表面にブロッキング処理が施されており、
前記平面試験片を構成する前記抗体固定化メンブレンの表面に、ウシ血清アルブミン溶液を用いたブロッキング処理が施されており、
唾液を3~50倍に希釈し、希釈した唾液を前記平面試験片を構成するサンプルパッドに滴下し、
前記抗体固定化メンブレンの試験領域において、前記試験領域に固定化されたポリクローナル又はモノクローナル抗体と、フェリチンと、蛍光標識された前記シリカ粒子とからなるサンドイッチ型免疫複合体を検知することでフェリチンを検出することを特徴とする、フェリチンの検出方法。 - 前記唾液が耳下腺から分泌された唾液であることを特徴とする、請求項4記載のフェリチンの検出方法。
- 陰イオン性界面活性剤を含有する溶媒で前記唾液又は試料を希釈することを特徴とする、請求項4又は5項記載のフェリチンの検出方法。
- 前記陰イオン性界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項6記載のフェリチンの検出方法。
- 唾液又は試料を希釈した後の溶液における前記ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が0.06~0.1%(w/v)であることを特徴とする、請求項7記載のフェリチンの検出方法。
- 唾液又は試料を希釈した後の溶液における前記ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が0.07~0.1%(w/v)であることを特徴とする、請求項7記載のフェリチンの検出方法。
- 前記試験領域に固定化されているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、並びに前記シリカ粒子を修飾しているポリクローナル若しくはモノクローナル抗体が、いずれもポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項4~9のいずれか1項記載のフェリチンの検出方法。
- 前記ポリクローナル抗体がヤギポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項10記載のフェリチンの検出方法。
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