JP7030567B2 - 無機系繊維 - Google Patents

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本発明は、例えば、イオン交換機能を有する担体、触媒担体、細胞培養基材、補強材などの構造部材、放熱材料などの熱伝導性部材、断熱部材、電極材料などの導電性部材、エアフィルタや液体フィルタなどの濾過部材、セパレータや電気絶縁材などの絶縁部材といった、様々な産業用途として使用可能な無機系繊維に関する。
無機系繊維は単体として、あるいは、例えば、布帛(織物、編物、不織布など)やプリプレグなどの無機系繊維を多数備える構造体(以降、無機系繊維構造体と称することがある)として、様々な産業用途で使用されている。例えば、酸化インジウム(In)、酸化すず(SnO,SnO,SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物繊維は導電性部材として有用である。
他にも、酸化アルミニウム(Al)などの反応性基を有する金属酸化物繊維は、その反応性基に目的の官能基を導入することで、目的とする機能を発揮する担体として有用である。特に、繊維径が3μm以下であるなど繊維径の細い無機系繊維は繊維表面積が広いため、担体の単位重量あたりに目的とする官能基を多く導入することができ、目的とする機能がより発揮された担体を提供できる。
このような繊維径が細い無機系繊維として、金属アルコキシドを縮重合した曳糸性のゾル溶液を紡糸した後に焼成してなる、金属酸化物からなる無機系繊維(特許文献1、2)が知られている。
しかしながら、一般的に金属酸化物の多くは柔軟性に劣る、および/または、脆いという問題を抱えている。そのため、柔軟性に劣る、および/または、脆い金属酸化物のみから構成された無機系繊維は、破損し易いなど構造の安定性に劣るものであった。
このような構造の安定性に劣る無機系繊維を、例えば上述した産業用途などに用いた場合には、使用中に無機系繊維が破損して変形することで、期待する機能が発揮されなくなることや、最悪の場合には産業用途に使用できないことがあった。また、構造の安定性に劣るためハンドリング性が悪いという問題が発生することがあった。
特に、この問題は繊維径が3μm以下であるなど繊維径の細い無機系繊維において発生し易い傾向があった。
特開2003-073964号公報 特開2010-168720号公報
本願発明者らは前述の問題を解決するため検討を続けた結果、「シリカ繊維と前記シリカ以外の金属酸化物を有すると共に、前記シリカ繊維の表面に前記金属酸化物が存在している」という構成を備える無機系繊維によって、まずは、構造の安定性やハンドリング性が改善された無機系繊維を提供できることを見出した。
つまり、上述した構成を備える無機系繊維は、柔軟性に優れるシリカ繊維を備えていることで、シリカ以外の金属酸化物(以降、他の金属酸化物と称することがある)のみから構成されている無機系繊維よりも柔軟性に優れるため、および/または、脆くないため、構造の安定性とハンドリング性が改善されている。
そして、シリカ繊維の表面に他の金属酸化物が存在しているため、他の金属酸化物が有する機能も発揮可能な無機系繊維である。
しかし、本願発明者らは上述の無機系繊維について詳細な確認を行ったところ、該無機系繊維はなおも改善すべき問題を有していることを見出した。
その問題とは、該無機系繊維を備えた無機系繊維構造体を調製した場合に、無機系繊維同士の交点に他の金属酸化物が水掻き状に存在することがある、という問題であった。特に、この問題は繊維径が3μm以下であるなど、繊維径の細い無機系繊維を備える無機系繊維構造体において発生し易い傾向があった。
つまり、水掻き状の他の金属酸化物により、無機系繊維同士の交点が点ではなく広範囲の面で固定されているため、なおも無機系繊維構造体は柔軟性に劣ると考えられた。また、無機系繊維構造体が柔軟性に劣ることで、無機系繊維構造体へ力が作用した際に局所へ力が集中して、無機系繊維構造体が破損して変形が生じ易いと考えられた。
そのため、上述の構成を有する無機系繊維を備える無機系繊維構造体を、様々な産業用途に使用した場合、構造の安定性に劣ることに起因する問題が尚も発生する可能性があった。また、上述の通り、無機系繊維構造体は構造の安定性に劣るため、ハンドリング性が悪いという問題が尚も発生する可能性があった。
本発明は、構造の安定性に劣るという問題やハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維構造体を構成可能な、無機系繊維の提供を目的とする。
本発明の請求項1にかかる発明は「M/Si比率が0.00であるシリカ繊維と前記シリカ以外の金属酸化物を有すると共に、前記シリカ繊維の表面に前記シリカ以外の金属酸化物が存在している、無機系繊維であって、ESCA分析により測定される無機系繊維表面におけるM/Si比率が、0.00よりも大きく0.70以下である、無機系繊維。なお、前記Siは繊維表面に存在する珪素原子(atomic%)を意味し、前記Mは繊維表面に存在する珪素以外の金属原子(atomic%)を意味する。」である。
また、本発明にかかる別の発明は「温度80℃の水に前記無機系繊維を30分間浸漬し
た後における前記比率が、浸漬前の前記比率の25%以上である、請求項1記載の無機系
繊維。」である。
本願発明者らは検討を続けた結果、更に「ESCA分析により測定される無機系繊維表面における、珪素原子(atomic%)に占める前記金属酸化物由来の金属原子(atomic%)の比率が、0.00よりも大きく0.70以下である」という構成を備える無機系繊維によって、無機系繊維同士の交点に他の金属酸化物が水掻き状に存在していない無機系繊維構造体を提供できることを見出した。
そのため、本発明に係る無機系繊維は、構造の安定性に劣るという問題やハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維構造体を提供可能な、無機系繊維である。
また、本願発明者らは上述した本発明に係る無機系繊維によって、温度80℃の水中といった過酷な条件下においても無機系繊維から他の金属酸化物が脱落し難いなど、より構造の安定性に優れる無機系繊維を提供できることを見出した。
そのため、本発明に係る無機系繊維は、更に、構造の安定性に劣るという問題を改善し、様々な産業用途としてより好適に使用できる無機系繊維構造体を提供可能な、無機系繊維である。
参考例1で調製したシリカ繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 参考例1で調製したシリカ繊維不織布における、繊維表面の電子顕微鏡写真である。 実施例1で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 実施例1で調製した無機系繊維不織布における、繊維表面の電子顕微鏡写真である。 実施例2で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 実施例3で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 実施例4で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 実施例5で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 比較例1で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の実施例1で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の実施例2で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の実施例3で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の実施例4で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の実施例5で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 超音波処理を施し乾燥した後の比較例1で調製した無機系繊維不織布における、不織布表面の電子顕微鏡写真である。 中和紡糸装置を示す概略図である。 (a)中和紡糸装置の沿面放電素子を、ノズル側からみた平面概略図である。(b)中和紡糸装置の沿面放電素子と交流高電圧電源を、側面からみた概略図である。
本発明は、構造の安定性に劣るという問題やハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維構造体を構成可能な、無機系繊維を提供するため、例えば以下の構成など各種構成を適宜選択できる。
無機系繊維を構成するシリカ繊維とは、繊維構成物の質量に占める珪素酸化物であるシリカの含有量が50mass%以上である繊維のことを指すものである。シリカ繊維に占めるシリカの含有量が多いほど、無機系繊維に構造の安定性やハンドリング性の向上をもたらすことができるため、シリカ繊維が実質的にシリカのみから構成されているのが好ましい。なお、シリカ繊維に含まれているシリカの百分率は、後述するESCA分析方法へ供することによって算出できる。
具体的には、シリカ繊維をX線光電子分光分析装置(JPS-9010MK、JEOL(登録商標))へ供し、全元素スキャンを行った後、検出された元素と存在が予想される元素についてナロースキャンを行うことで、珪素原子(atomic%)と、他の原子(atomic%)の測定値の比率を元に、算出することができる。
また、シリカ繊維を構成するシリカの結晶状態は適宜選択でき、結晶質や非晶質あるいは結晶質と非晶質が混在する態様であっても良い。特に、シリカ繊維が非晶質のシリカ(以降、アモルファスシリカと称することがある)を含んでいると、シリカ繊維が柔軟性に優れるものとなり好ましい。
シリカ繊維の繊維長は適宜選択できるが、短繊維や長繊維、あるいは、実質的に繊維長を測定することが困難な程度の長さの繊維長を有する連続繊維であることができる。柔軟性に優れた無機系繊維あるいは無機系繊維構造体を提供できることから、シリカ繊維の繊維長は連続長であるのが好ましい。連続長を有するシリカ繊維は、後述する直接紡糸法を用いて調製することができる。
シリカ繊維の繊維径は適宜選択できる。シリカ繊維の繊維径が細いほど柔軟性に優れ、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維や無機系繊維構造体を提供できることから、シリカ繊維の繊維径は3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましい。なお、繊維径の下限値も適宜選択するが、100nm以上であるのが現実的である。なお、シリカ繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
「繊維長」および「繊維径」は、シリカ繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定できる。シリカ繊維の繊維長が長すぎて測定が困難である場合には、5000倍より低い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。また、シリカ繊維の繊維径が細過ぎて測定が困難である場合には、5000倍よりも高い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。
後述する無機系繊維構造体は、シリカ繊維を含み構成されたシリカ繊維構造体を用いて調製することができる。
シリカ繊維構造体の目付と厚さは適宜選択できる。シリカ繊維構造体の目付は、最も面積の広い面(主面)の面積と重量を測定し、該主面1m当たりの重量に換算した値を目付とする。また、シリカ繊維構造体の主面からもう一方の主面に向けて、主面上へ30g/cmの荷重を付加した時の、両主面間の長さを高精度デジタル測長機で測定し、その長さを厚さとする。
シリカ繊維構造体の空隙率は適宜選択できるが、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維構造体を提供できるように、その空隙率が90%以上の高い空隙率(嵩高)を有するのが好ましい。好ましい空隙率は91%以上であり、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上であり、更に好ましくは94%以上である。上限は特に限定するものではないが、形態安定性の点から99.9%以下であるのが好ましい。
なお、「空隙率」は次の式から算出することができる。
P=[1-Wf/(V×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wfは繊維重量(g)、Vは体積(cm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
例えば、不織布のように厚さが均一な構造体の場合、次の式から算出することができる。
P=[1-Wn/(t×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wnは目付(g/m)、tは厚さ(μm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
他の金属酸化物を構成可能な金属の種類は、用途に応じ適宜選択できるものであるが、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウムなどを挙げることができる。
そして、他の金属酸化物の具体例として、Al、B、TiO、ZrO、CeO、FeO、Fe、Fe、VO、V、SnO、SnO、SnO、ZnO、CdO、LiO、WO、Nb、Ta、In、GeO、PbTi、LiNbO、BaTiO、PbZrO、KTaO、Li、NiFe、SrTiOなどを挙げることができる。なお、他の金属酸化物は一成分から構成されていても二成分以上の多成分から構成されていても良い。
本発明でいうシリカ繊維の表面に他の金属酸化物が存在しているとは、シリカ繊維の表面の一部あるいは全面に、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在している、および/または、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面に、繊維状、針状、粒子状などの態様をなし存在していることを意味する。
シリカ繊維の表面に他の金属酸化物が存在する態様は適宜選択できるが、繊維表面から他の金属酸化物が脱落し難く、また、繊維表面全体で均一的に他の金属酸化物に由来する機能が発揮された無機系繊維を提供できることから、シリカ繊維の表面の一部あるいは全面に、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在しているのが好ましい。
シリカ繊維の表面に存在する他の金属酸化物の態様は、無機系繊維を撮影した100000倍の電子顕微鏡写真をもとに判断することができる。
なお、後述するESCA分析方法によって算出された珪素原子(atomic%)に占める他の金属酸化物由来の金属原子(atomic%)の比率が、0.00よりも高い無機系繊維あるいは無機系繊維構造体を撮影した電子顕微鏡写真において、シリカ繊維の表面の一部あるいは全面に、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在している、および/または、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面に、繊維状、針状、粒子状、シリカ繊維同士の交点やシリカ繊維間に存在する水掻き状などの態様をなし存在しているのが確認できない場合には、シリカ繊維の表面の一部あるいは全面に、他の金属酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在していると判断する。
シリカ繊維の内部と表面に存在する他の金属酸化物の質量およびその質量比率は、適宜選択できるが、繊維表面全体で均一的に他の金属酸化物に由来する機能が発揮された無機系繊維を提供できるように、他の金属酸化物は主としてシリカ繊維の表面に存在しているのが好ましい。
つまり、シリカ繊維の内部に存在する他の金属酸化物の質量よりも、シリカ繊維の表面に存在する他の金属酸化物の質量の方が多い無機系繊維であるのが好ましく、実質的にシリカ繊維表面のみに他の金属酸化物が存在してなる無機系繊維であるのが好ましい。
実質的にシリカ繊維表面のみに他の金属酸化物が存在している無機系繊維は、例えば、後述する「無機系繊維の製造方法」の項目で説明する方法によって調製できる。
本発明にかかるESCA分析とは、無機系繊維あるいは無機系繊維構造体の表面にX線を照射し、生じた光電子のエネルギーを測定することで、無機系繊維の表面に存在する元素を分析する方法である。
具体的には、以下の測定方法によって、無機系繊維の表面に存在する元素を分析できる。
(ESCA分析)
無機系繊維をX線光電子分光分析装置(JPS-9010MK、JEOL(登録商標))へ供し、全元素スキャンを行った後、検出された元素と存在が予想される元素についてナロースキャンを行うことで、「Si:無機系繊維の表面に存在する珪素原子(atomic%)」、および、「M:無機系繊維の表面に存在する他の金属酸化物由来の金属原子(換言すれば珪素以外の金属原子、atomic%)」の各々の測定値を求める。
そして、得られた測定値からM/Siを算出することで、珪素原子(atomic%)に占める他の金属酸化物由来の金属原子(atomic%)の比率(以降、M/Si比率と称することがある)を算出する。なお、M/Si比率は算出結果の小数点第3位を四捨五入した値である。
M/Si比率が低いほど、繊維表面に占める他の金属酸化物が少ないことを意味しており、M/Si比率が高いほど、繊維表面に占める他の金属酸化物が多いことを意味する。
繊維表面に占める他の金属酸化物が少ないほど、柔軟性に優れる、および/または、脆くない無機系繊維であるものの、繊維表面に占める他の金属酸化物が少な過ぎると、他の金属酸化物の存在による無機系繊維の機能が発揮され難くなる恐れがある。
そのため、M/Si比率は0.01~0.70であるのが好ましく、0.03~0.60であるのが好ましく、0.05~0.50であるのが好ましい。
無機系繊維はその用途に応じて、例えば、無機系繊維の内部や表面に、ポリマーなどの有機化合物や別の金属といった他の組成物を備えていてもよいが、構造の安定性に劣るという問題や、ハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維を提供できることから、無機系繊維は実質的にシリカ繊維と他の金属酸化物のみで構成されているのが好ましい。
無機系繊維の繊維径は適宜選択できる。無機系繊維の繊維径が細いほど柔軟性に優れ、様々な産業用途として好適に使用できる無機系繊維構造体を提供できることから、無機系繊維の繊維径は3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましい。なお、繊維径の下限値も適宜選択するが、100nm以上であるのが現実的である。
「繊維長」および「繊維径」は、無機系繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定できる。無機系繊維の繊維長が長すぎて測定が困難である場合には、5000倍より低い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。また、無機系繊維の繊維径が細過ぎて測定が困難である場合には、5000倍よりも高い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。なお、無機系繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
本発明の無機系繊維は、温度80℃の水中といった過酷な条件下においても、無機系繊維から他の金属酸化物が脱落し難いなど、より構造の安定性に優れる無機系繊維であるのが好ましい。なお、ここでいう水とは、蒸留水を指す。
具体的には、「A:無機系繊維のM/Si比率」に占める、「B:該無機系繊維を温度80℃の水中に30分間浸漬した後の無機系繊維をESCA分析へ供し算出されるM/Si比率」の各々の測定値から、100×B/Aを算出することで算出された百分率(%、以降、残存百分率と称することがある)の値が、25%以上の無機系繊維であるのが好ましい。なお、残存百分率は算出結果の小数点第1位を四捨五入した値である。
残存百分率が高い無機系繊維であるほど過酷な条件下においても構造の安定性に優れる無機系繊維であり、また、過酷な条件下においても構造の安定性に優れた無機系繊維構造体を提供できることから、残存百分率は10%以上であるのが好ましく、15%以上であるのが好ましく、20%以上であるのが好ましく、25%以上であるのが好ましく、特に、30%以上であるのが好ましく、35%以上であるのが好ましく、40%以上であるのが好ましく、45%以上であるのが好ましく、50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのが好ましく、60%以上であるのが好ましく、65%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましく、75%以上であるのが好ましく、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのが好ましい。
無機系繊維構造体は本発明の無機系繊維を備えた構造体である。
無機系繊維構造体を構成する無機系繊維の平均繊維径は、柔軟性に優れ、また、様々な産業用途として好適に使用できるよう、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましい。なお、平均繊維径の下限値も適宜選択するが、100nm以上であるのが現実的である。
ここでいう「平均繊維径」は無機系繊維構造体を撮影した、5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、50点の無機系繊維における各繊維径の算術平均値をいう。また、無機系繊維の繊維径が細過ぎて測定が困難である場合には、5000倍よりも高い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定することができる。なお、無機系繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
無機系繊維構造体の目付と厚さは適宜選択できる。なお、無機系繊維構造体の目付は、最も面積の広い面(主面)の面積と重量を測定し、該主面の1m当たりの重量に換算した値を目付とする。また、無機系繊維構造体の主面からもう一方の主面に向けて、主面上へ30g/cmの荷重を付加した時の、両主面間の長さを高精度デジタル測長機で測定し、その長さを厚さとする。
無機系繊維構造体の空隙率は適宜選択できるが、様々な産業用途として好適に使用できるように、その空隙率が90%以上の高い空隙率(嵩高)を有するのが好ましい。好ましい空隙率は91%以上であり、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上であり、更に好ましくは94%以上である。上限は特に限定するものではないが、形態安定性の点から99.9%以下であるのが好ましい。
なお、「空隙率」は次の式から算出することができる。
P=[1-Wf/(V×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wfは繊維重量(g)、Vは体積(cm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
例えば、不織布のように厚さが均一な構造体の場合、次の式から算出することができる。
P=[1-Wn/(t×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wnは目付(g/m)、tは厚さ(μm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
本発明の無機系繊維によって、無機系繊維同士の交点に他の金属酸化物が水掻き状に存在していない無機系繊維構造体を提供できる。
なお、本発明では、以下の方法で他の金属酸化物が水掻き状で存在しているか否かを目視で判断する。
(1)無機系繊維構造体の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影する。
(2)撮影した電子顕微鏡写真中で無機系繊維同士が交差している部分において、交差している各無機系繊維のうち、繊維径の大きい方の無機系繊維の繊維径(C繊維径)を算出する。
(3)該各繊維同士が交差している部分において、各繊維の繊維径方向における端部同士が重なっている点を中心として、C繊維径の2倍の長さの半径を有する円を電子顕微鏡写真上に描画する。
(4)電子顕微鏡写真中の繊維同士が交差している部分全てにおいて、(2)~(3)のようにして電子顕微鏡写真上に円を描画する。
(5)描画した円の円周とその中心点(各繊維の繊維径方向における端部同士が重なっている点)、そして、各繊維の繊維径方向における端部に囲まれた、最小面積を有する範囲全てに金属酸化物が存在している場合、無機系繊維構造体に他の金属酸化物が水掻き状に存在していると判断する。
あるいは、以下の方法で他の金属酸化物が水掻き状で存在しているか否かを判断する。
(1)無機系繊維構造体の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影する。
(2)撮影した電子顕微鏡写真中で無機系繊維同士が交差せず隣り合い存在している部分において、両無機系繊維同士の間に膜状をなす態様で他の金属酸化物が存在しているか確認する。
両無機系繊維同士の間に膜状をなす態様で他の金属酸化物が存在している場合、無機系繊維構造体に他の金属酸化物が水掻き状に存在していると判断する。
また、それ以外の場合、無機系繊維構造体に他の金属酸化物が水掻き状に存在していないと判断する。
次に、本発明の無機系繊維の製造方法を説明する。
(無機系繊維の製造方法)
本発明の無機系繊維の製造方法は適宜選択できるが、例えば、
(1)シリカ繊維を紡糸する工程、
(2)シリカ繊維に金属イオン溶液を付与する工程、
(3)金属イオン溶液を付与したシリカ繊維から、金属イオン溶液を除去する工程、
を備える、無機系繊維の製造方法を採用できる。
まず、(1)シリカ繊維を紡糸する工程について説明する。
シリカ繊維を紡糸する方法は適宜選択できるが、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、遠心力を用いて紡糸する方法、特開2011-012372号公報などに記載の随伴気流を用いて紡糸する方法、特開2005-264374号公報などに記載の静電紡糸法の一種である中和紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法など公知の方法により得ることができる。
特に、静電紡糸法を用いてシリカ繊維を調製すると、平均繊維径が細いと共に繊維径の均一なシリカ繊維やシリカ繊維構造体を調製でき好ましい。特に、静電紡糸法の一種である中和紡糸法を用いると、空隙率が高く嵩高のシリカ繊維構造体を調製でき、様々な産業用途として使用可能な無機系繊維構造体を提供できるため好ましい。
静電紡糸法を採用する場合には、使用する紡糸溶液として、シリカアルコキシドが縮重合した縮合物を含む紡糸溶液(特には、後述する「紡糸溶液の曳糸性有無の判断方法」の項目において、曳糸性を有すると判断された紡糸溶液)を用いることで、繊維径が均一かつ細いシリカ繊維を調製できるため好ましい。
なお、「曳糸性」の判定は、以下に示す条件で実際に静電紡糸を行い、以下の判断基準により判定することができる。
(紡糸溶液の曳糸性有無の判断方法)
アースしたアルミ板に対し、水平方向に配置した金属ノズル(内径:0.4mm)から曳糸性を判断する紡糸溶液(固形分濃度:20~50wt%)を押出する(押出量:0.5~1.0g/hr)と共に、ノズルに電圧を印加(電界強度:1~3kV/cm、極性:プラス印加又はマイナス印加)し、ノズルの先端に溶液の固化を生じさせることなく、1分間以上、連続して紡糸し、アルミ板上に極細繊維不織布を形成することを試みる。
この形成した極細繊維の走査電子顕微鏡写真を撮り、観察し、液滴がなく、極細繊維の平均繊維径(50点の算術平均値)が5μm以下、アスペクト比が100以上の極細繊維不織布を製造できる条件が存在する場合には、その溶液は「曳糸性あり」と判断する。
これに対して、前記条件(すなわち、固形分濃度、押出量、電界強度、及び/又は極性)を変え、いかに組み合わせても、液滴がある場合、一定した繊維形態でない場合、あるいは、アスペクト比が100未満の場合(例えば、粒子状)で、前記極細繊維不織布を製造できる条件が存在しない場合には、その溶液は「曳糸性なし」と判断する。
紡糸溶液を調製するため使用するシリカアルコキシドは、一般式SiR2m(OR1)4-mで表され、R1、R2はそれぞれ独立したアルキル基を表し、mは0~2の整数をそれぞれ表す。なお、アルキル基R1、R2は同一でも異なっていても良く、R1、R2は炭素数4以下のアルキル基であるのが好ましく、例えば、メチル基CH、エチル基C、プロピル基C、イソプロピル基i-C、ブチル基C、イソブチル基i-C等の低級アルキル基を例示できる。
また、加水分解反応及び縮重合反応が起こりうる部位を有する限り、このようなシリカアルコキシドはメチル基やエポキシ基で有機修飾されていても良い。
シリカアルコキシドは安定化するために、溶媒で希釈することができる。このような安定化のための溶媒としては、シリカアルコキシドを溶解することができ、かつ水と均一に混合できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの脂肪族の低級アルコール、ジメチルホルムアミド、水などを挙げることができる。なお、これらの混合溶媒とすることもできる。
シリカアルコキシドが縮重合した縮合物を形成するための反応液には、加水分解のための水を含有している。なお、シリカアルコキシドの構造、求めるシリカ繊維やシリカ繊維構造体の態様によって、最適な水の量が異なるため、反応液における水の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、テトラエトキシシランを用いて、シリカ繊維を得る場合には、水の量がアルコキシドの4倍(モル比)を超えると、曳糸性を有する紡糸溶液を得ることが困難になるため、アルコキシドの4倍(モル比)以下であるのが好ましい。
また、シリカアルコキシドが縮重合した縮合物を形成するための反応液には、加水分解反応が円滑に進行するように、触媒を含んでいることができる。シリカアルコキシドの構造、求めるシリカ繊維やシリカ繊維構造体の態様によって、最適な触媒が異なるため、特に限定するものではないが、例えば、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどを挙げることができる。より具体的には、曳糸性を有する前記紡糸溶液を得るためには、酸性の触媒を用いるのが好ましい。
更に、反応液は、例えばシリカアルコキシドを安定化させるキレート剤、シランカップリング剤、圧電性などの各種機能を付与することができる化合物、接着性改善、柔軟性、有機化合物(例えば、ポリメチルメタクリレート)、あるいは染料などの添加剤を含んでいることができる。なお、これらの添加剤は、加水分解を行う際、又は加水分解後に添加することもできる。
更に、反応液は無機系又は有機系の微粒子を含んでいることができる。無機系微粒子としては、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化珪素、活性炭、金属(例えば、白金)を挙げることができ、有機系微粒子として、色素又は顔料などを挙げることができる。微粒子の粒径や形状は目的とする構造体の形やサイズなどによるため、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選定することができる。このような微粒子を含んでいることによって、最終的に得られる無機系繊維や無機系繊維構造体に、例えば、光学機能、多孔性、触媒機能、吸着機能、或いは更なるイオン交換機能などの付加機能を付与することができる。
シリカアルコキシドが縮重合した縮合物は、前述のような反応液を加熱し、加水分解反応を進行させることによって得ることができる。なお、加熱は反応液を構成する溶媒の沸点以下の温度で行なうのが好ましい。例えば、溶媒が水の場合には、100℃未満の温度で加熱して加水分解反応を進行させることができる。なお、あまり温度が低すぎても加水分解反応が進行しにくいため、10℃以上であるのが好ましい。
このようにして形成した縮合物を含む反応液は、紡糸できるように粘度が0.1ポイズ以上であるのが好ましく、0.5ポイズ以上であるのがより好ましく、1ポイズ以上であるのが更に好ましい。なお、繊維径が3μm以下の細繊維を紡糸する場合には、細径化できるように、100ポイズ以下であるのが好ましく、20ポイズ以下であるのがより好ましく、10ポイズ以下であるのが更に好ましく、5ポイズ以下であるのが更に好ましい。
なお、ノズルを使用する場合には、ノズル先端部分における雰囲気を反応液の溶媒と同様の溶媒ガス雰囲気とすることにより、100ポイズを超える場合であっても紡糸可能な場合がある。
上述のようにして紡糸して得られるシリカ繊維は、例えば、布帛(織物、編物、不織布、繊維ウェブなど)の態様で得ることができる。
このように形成したシリカ繊維に熱処理を実施してもよい。熱処理を施すことによって、一般的にシラノール基の縮合反応が進み、シリカ繊維やシリカ繊維構造体全体の強度を高めることができる。例えば、シリカ繊維構造体が布帛からなる場合には、熱処理によって、強度が向上するとともに保形性に優れる布帛を提供できる。なお、熱処理条件は、柔軟性に優れたシリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体を提供することができるよう適宜選択するが、例えばオーブン、焼結炉等を用いて実施することができ、その温度は200℃以上であることができ、300℃以上であることができる。上限値は特に限定するものではないが、熱処理温度があまりにも高温であると、シリカ繊維に含まれているアモルファスシリカの結晶化がおこる恐れがある。そのため、非特許文献(Journal of the Ceramic Society of Japan 105 [5] 385-390 (1997))などに開示されているように、熱処理温度が600℃から1200℃の範囲であれば、純水なシリカは結晶化を示さないことが知られていることから、アモルファスシリカの結晶化を防止して柔軟性に優れたシリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体を提供できるよう、シリカ繊維の加熱温度は1200℃以下であるのが好ましく、1000℃以下であるのが好ましい。
また、上述のようにして調製したシリカ繊維構造体へ、特開2013-194341号公報に記載されているようなシリカゾル溶液(接着剤)を付与し加熱処理へ供することで、シリカ繊維の交点を接着剤由来のシリカで接着したシリカ繊維構造体を調製できる。
なお、この際の加熱処理条件も上述と同様の理由から、その温度は200℃以上であることができ、300℃以上であることができ、また、1200℃以下であるのが好ましく、1000℃以下であるのが好ましい。
次いで、(2)シリカ繊維に金属イオン溶液を付与する工程について説明する。
上述のようにして調製したシリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体に対して、金属イオン溶液を付与する。ここでいう金属イオン溶液とは、本発明に係る他の金属酸化物を構成し得る金属のイオンを有する溶液である。具体的には金属イオン溶液として、金属無機塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩など)又は金属有機塩(アセテート、クエン酸塩など)などを、水もしくは、水を主成分とし、水に可溶な、例えばアルコールを含む溶媒に溶解させた溶液を使用でき、金属イオン溶液として金属カチオン溶液を使用するのが好ましい。
シリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体に金属イオン溶液を付与する方法は適宜選択できるが、スプレーなどを用いて金属イオン溶液を散布あるいは塗布する方法、金属イオン溶液中に浸漬する方法などを採用することができる。
シリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体と金属イオン溶液が接触している時間(例えば、金属イオン溶液中への浸漬時間)や、使用する金属イオン溶液の濃度や温度(処理温度)は適宜選択するが、前記時間が長すぎたり、金属イオン溶液の濃度が高すぎたり、処理温度が高すぎると、無機系繊維のM/Si比率が0.70よりも高くなるおそれがある。また、前記時間が短かすぎたり、金属イオン溶液の濃度が低すぎたり、処理温度が低すぎると、他の金属酸化物の存在による無機系繊維の機能が意図する程度に発揮されない恐れがある。そのため、処理時間は1分~72時間であるのが好ましく、1時間~48時間であるのが好ましく、3時間~24時間であるのが好ましい。金属イオン溶液の濃度は、0.1mM~50mM未満であるのが好ましく、0.5mM~40mMであるのが好ましく、1mM~30mMであるのが好ましい。また、処理温度は10℃~50℃であるのが好ましく、15℃~40℃であるのが好ましく、20℃~30℃であるのが好ましい。
そして、(3)金属イオン溶液を付与したシリカ繊維から、金属イオン溶液を除去する工程について説明する。
上述のようにして調製した、金属イオン溶液を付与したシリカ繊維あるいはシリカ繊維構造体から、余剰な金属イオン溶液を除去する。除去方法は適宜選択できるが、溶媒で洗浄する方法、サクションするなどによって金属イオン溶液を吸引除去する方法などを採用することができる。
洗浄に使用できる溶媒は適宜選択できるが、金属イオン溶液に含まれている溶媒と同じ溶媒を用いると、効果的に余剰な金属イオン溶液を除去でき好ましい。このときの溶媒の温度は、無機系繊維あるいは無機繊維構造体の構造安定性やハンドリング性が意図せず低下しないよう適宜選択する。
次いで、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、無機系繊維あるいは無機繊維構造体に残留している洗浄に使用した溶媒を除去してもよい。溶媒を除去する際の加熱温度は溶媒が揮発可能な温度であると共に、無機系繊維あるいは無機繊維構造体の構造安定性やハンドリング性が意図せず低下しないよう、加熱温度の上限温度を選択する。
上述の工程を備える製造方法によって無機系繊維を製造することができるが、更に、上述の工程の後に、
(4)無機系繊維を少なくとも80℃以上で加熱する工程、
へ供しても良い。
この工程を備える製造方法によって、温度80℃の水中といった過酷な条件下においても、無機系繊維から他の金属酸化物が脱落し難いなど、より構造の安定性に優れる無機系繊維あるいは無機繊維構造体を製造することができる。
無機系繊維を加熱する方法は適宜選択でき、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機などの加熱機を使用することができる。
無機系繊維が加熱される温度(加熱温度)は無機系繊維の構成や物性、無機系繊維あるいは無機繊維構造体を構成している他の金属酸化物の種類などにより適宜選択するが、一例として、他の金属酸化物がアルミニウムの酸化物である場合、加熱温度は201℃以上が好ましく、250℃以上が好ましく、300℃以上が好ましい。上限値は特に限定するものではないが、熱処理温度があまりにも高温であると、無機系繊維を構成しているシリカ繊維に含まれているアモルファスシリカの結晶化がおこる恐れがある。そのため、無機系繊維の加熱温度は1200℃以下であるのが好ましく、1000℃以下であるのが好ましい。また、他の金属酸化物の結晶構造などが意図しないものに変化することがないよう、加熱温度の上限温度を適宜選択するのが好ましい。
上述の製造方法を用いることで、構造の安定性に劣るという問題や、ハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用可能な無機系繊維や無機系繊維構造体を提供することができ、更に、繊維径が細いことで繊維表面積が広く構造的な機能性に優れ、他の金属酸化物が有する機能が効果的に発揮された無機系繊維や無機系繊維構造体を提供することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない
(参考例1)
テトラエトキシシラン1モルに対して2.5モル量のエタノールを混合し、攪拌させながら、その中へ、水2モル量、塩酸0.0025モル量及び2.5モル量のエタノールからなる混合液をゆっくりと滴下し、出発原料とした。
この出発原料は冷却水を循環させながら、設定温度80℃、攪拌条件300rpmで15時間反応させた。そして、シリカの固形分濃度が44%となるまで濃縮した後、温度80℃で数時間保持し増粘させることで、曳糸性を有するシリカゾル溶液(粘度:0.32Pa・s、重量平均分子量:12000)を得た。
得られたシリカゾル溶液を紡糸溶液として、静電紡糸法の一種である中和紡糸法を用いることでゲル状シリカ連続繊維ウェブを形成した。
なお、中和紡糸法は、特開2005-264374号公報の記載に基づき実施した。つまり、図16の中和紡糸装置(1)を使用し、次の条件で紡糸および紡糸繊維の捕集を行った。つまり、図17(a)および(b)として図示した沿面放電素子(5)を紡糸容器(12)内に収納した中和紡糸装置(1)を使用し、次の条件で紡糸した。
・紡糸シリンジ(2)のノズル(3):内径0.4mmの金属製注射針(先端カット)。
・紡糸溶液供給機(4)から供給され、ノズル(3)から吐出される紡糸溶液:1g/時間。
・第1高電圧電源(6):13.5kV。
・沿面放電素子(5):ステンレス板(28)上に厚さ1mmのアルミナ膜(26)を溶射し、その上に直径30μmのタングステンワイヤ(27)を図17(a)および(b)の態様となるよう10mmの等間隔で張ったもの。なお、タングステンワイヤ(27)面をノズル(3)側に面するよう設けると共に接地し、ステンレス板(28)とタングステンワイヤ(27)間に、交流高電圧電源(7)を用いて±5kV(交流沿面のピーク電圧:5kV、50Hz)の交流高電圧を印加した。
・ノズル(3)の先端(紡糸溶液吐出部分)と沿面放電素子(5)との最短距離:100mm。
・気体供給機(8)と気体排出機(9)により形成される、紡糸空間を流れる気流(10):水平方向(紙面上、左から右方向)25cm/sec、鉛直方向(紙面上、捕集体(11)の上から下方向)15cm/sec。なお、図16では気流(10)の流れを矢印で表している。
・紡糸容器(12)内の雰囲気(紡糸雰囲気):温度25℃、湿度26%RH以下。
次に、捕集体上に捕集されてなるゲル状シリカ連続繊維ウェブを、温度800℃で3時間の熱処理へ供することにより乾燥させ、シリカ連続繊維同士の交点を接着させた。
続いて、以下の方法で調製したシリカゾル溶液(接着剤)に浸漬した後、接着剤から引き上げ、余剰の接着剤を吸引除去した。
(シリカゾル溶液(接着剤)の調製方法)
開始物質としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、及び触媒として硝酸を、1:7.2:7:0.0039のモル比で混合し、温度25℃、攪拌条件300rpmで15時間反応させた後、本反応で合成されたケイ素酸化物の固形分濃度が0.25%となるようにエタノールで希釈してシリカゾル溶液(接着剤)を調製した。
その後、温度500℃で3時間焼成する工程へ供することによって、シリカ連続繊維同士の交点を接着剤由来のシリカで接着させて、シリカ連続繊維のみからなる繊維ウェブを調製した。なお、このようにして調製した繊維ウェブにおいて、シリカ繊維同士の交点にシリカゾル溶液(接着剤)由来のシリカが水掻き状に存在していなかった。
最後に、HSO:30%H=3:1の混合溶液中に繊維ウェブを30分間浸漬した後、混合溶液から引き上げて精製水で洗浄し25℃で乾燥することで、シリカ繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.00、他の金属酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
参考例1で調製したシリカ繊維不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図1に図示した。また、前記不織布を構成するシリカ繊維表面の、100000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図2に図示した。
(実施例1)
NaCl中に等モル量のAlClを溶解しNaOHでpH7に調製することで、1mMの濃度に調製したAlCl水溶液(温度:25℃)を用意した。そして、参考例1で調製したシリカ繊維不織布を、AlCl溶液中に24時間浸漬した。
その後、AlCl溶液からシリカ繊維不織布を引き上げ、精製水で洗浄しで25℃で乾燥することで、アルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.17、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
実施例1で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図3に図示した。また、前記不織布を構成する無機系繊維表面の、100000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図4に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図10に図示した。
(実施例2)
5mMの濃度に調製したAlCl水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.25、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
実施例2で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図5に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図11に図示した。
(実施例3)
10mMの濃度に調製したAlCl水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.27、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
実施例3で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図6に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図12に図示した。
(実施例4)
30mMの濃度に調製したAlCl水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.33、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
実施例4で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図7に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図13に図示した。
(実施例5)
40mMの濃度に調製したAlCl水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.45、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
実施例8で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図8に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図14に図示した。
(比較例1)
50mMの濃度に調製したAlCl水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:93%、M/Si比率:0.71、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在している)を調製した。
比較例1で調製した不織布表面の、5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図9に図示した。
また、無機系繊維不織布を構成している無機系繊維の破損し易さを確認することで、無機系繊維および無機系繊維不織布の構造の安定性を評価するため、調製した無機系繊維不織布へ次の超音波処理を施した。
調製した無機系繊維不織布を蒸留水中に浸漬し、蒸留水中で無機系繊維不織布へ超音波(100kHz)を2分間作用させた。そして、超音波を作用させた無機系繊維不織布を蒸留水中から引き上げ、室温雰囲気下で乾燥した。
このようにして超音波処理を施した後の、無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し図15に図示した。
(実施例6)
実施例1で調製した無機系繊維不織布を、80℃の水中に30分間浸漬した。
その後、水中から引き上げ25℃で乾燥することで、アルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.04、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
なお、残存百分率は24%であった。
(実施例7)
実施例1で調製した無機系繊維不織布を、温度200℃に設定した電気炉に供給し3時間熱処理を行い、アルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.16、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
(実施例8)
実施例7で調製した無機系繊維不織布を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.05、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
なお、残存百分率は31%であった。
(実施例9)
実施例1で調製した無機系繊維不織布を、温度300℃に設定した電気炉に供給し3時間熱処理を行い、アルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.14、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
(実施例10)
実施例9で調製した無機系繊維不織布を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてアルミニウムの酸化物がシリカ繊維の表面を被覆するように存在してなる無機系繊維不織布(平均繊維径:800nm、目付:8g/m、空隙率:95%、M/Si比率:0.13、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していない)を調製した。
なお、残存百分率は93%であった。
実施例と比較例1を比較した結果、実施例の無機系繊維不織布にはいずれも、アルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していないものであったのに対し、比較例1の無機系繊維不織布にはアルミニウムの酸化物が水掻き状に存在していた。
また、実施例と比較例1で調製した無機系繊維不織布に対し超音波処理を施し乾燥した後の、各無機系繊維不織布表面の5000倍の電子顕微鏡写真を確認した結果、実施例の無機系繊維および無機系繊維不織布には、アルミニウムの酸化物の剥落や破損は認められなかった。一方、比較例1の無機系繊維および無機系繊維不織布には、アルミニウムの酸化物の剥落や破損が生じた箇所が認められた。このことから実施例で調製した無機系繊維で構成された無機系不織布は、構造の安定性に優れるものであることが判明した。
そのため、実施例の無機系繊維不織布を構成する無機系繊維は、繊維径が3μm以下であるなど繊維径の細い場合であったとしても、構造の安定性に劣るという問題や、ハンドリング性が悪いという問題を改善し、様々な産業用途として好適に使用可能な無機系繊維不織布を、提供可能な無機系繊維であった。
また、実施例1と実施例6~10の結果から、以下のことが判明した。
実施例7と実施例8を比較した結果、実施例7で調製した無機系繊維不織布の残存百分率は31%であり、温度80℃の水中という過酷な条件下においても無機系繊維不織布(無機系繊維)から他の金属酸化物が脱落し難いものであった。
更に、実施例9と実施例10を比較した結果、実施例9で調製した無機系繊維不織布の残存百分率は93%と高く、温度80℃の水中という過酷な条件下においてもより無機系繊維不織布(無機系繊維)から他の金属酸化物が脱落し難いものであった。
一方、実施例1と実施例6を比較した結果、実施例1で調製した無機系繊維不織布の残存百分率は24%であり、温度80℃の水中という過酷な条件下において無機系繊維不織布(無機系繊維)から他の金属酸化物が脱落し易いものであった。
そのため、実施例7および実施例9で調製した無機系繊維不織布を構成する無機系繊維は、より構造の安定性に優れる無機系繊維であった。
更に、実施例に係る無機系繊維を構成するシリカ繊維は、その製造工程で1200℃を超える温度で加熱されることなく製造された。そのため、実施例に係る無機系繊維は、アモルファスシリカを含んでいるシリカ繊維を備えていることで、より柔軟性に優れていると考えられた。
本発明の無機系繊維および該無機系繊維を備える構造体は、例えば、イオン交換機能を有する担体、触媒担体、細胞培養基材、補強材などの構造部材、放熱材料などの熱伝導性部材、断熱部材、電極材料などの導電性部材、エアフィルタや液体フィルタなどの濾過部材、セパレータや電気絶縁材などの絶縁部材といった、様々な産業用途として好適に使用することができる。
1・・・中和紡糸装置
2・・・紡糸シリンジ
3・・・ノズル
4・・・紡糸溶液供給機
5・・・沿面放電素子
6・・・第1高電圧電源
7・・・交流高電圧電源
8・・・気体供給機
9・・・気体排出機
10・・・気流
11・・・捕集体
12・・・紡糸容器
26・・・アルミナ膜
27・・・タングステンワイヤ
28・・・ステンレス板

Claims (2)

  1. M/Si比率が0.00であるシリカ繊維と前記シリカ以外の金属酸化物を有すると共に、
    前記シリカ繊維の表面に前記シリカ以外の金属酸化物が存在している、無機系繊維であって、
    ESCA分析により測定される無機系繊維表面におけるM/Si比率が、0.00よりも大きく0.70以下である、無機系繊維。
    なお、前記Siは繊維表面に存在する珪素原子(atomic%)を意味し、前記Mは繊維表面に存在する珪素以外の金属原子(atomic%)を意味する。
  2. 温度80℃の水に前記無機系繊維を30分間浸漬した後における前記比率が、浸漬前の前
    記比率の25%以上である、請求項1記載の無機系繊維。
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