JP5247073B2 - 無機系多孔質微細繊維及びその製造方法 - Google Patents
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(1)無機系曳糸性ゾル溶液を調製する工程(以下、ゾル溶液調製工程と称する)、
(2)前記無機系曳糸性ゾル溶液と、前記無機系曳糸性ゾル溶液を溶解可能な溶媒と、前記溶媒に溶解可能なポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程(以下、紡糸液調製工程と称する)、
(3)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、無機系ゲルとポリマーとの複合微細繊維を形成する工程(以下、紡糸工程と称する)、
(4)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、無機系多孔質微細繊維を形成する工程(以下、除去工程と称する)
を含む、無機系多孔質微細繊維の製造方法により解決することができる。
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、前記ポリマー除去を、か焼又は溶剤抽出により実施する。
また、本発明の無機系多孔質微細繊維は、極めて細い繊維であって、その表面及び内部に多数の細孔を有するため、電子材料、液体若しくは気体フィルター、触媒担体、又はガスセンサーなどの用途に適用することができる。
(判定法)
アースしたアルミ板に対し、水平方向に配置した金属ノズル(内径:0.4mm)から曳糸性を判断する溶液(固形分濃度:20〜50wt%)を押出する(押出量:0.5〜1.0g/hr)と共に、ノズルに電圧を印加(電界強度:1〜3kV/cm、極性:プラス印加又はマイナス印加)し、ノズルの先端に溶液の固化を生じさせることなく、1分間以上、連続して紡糸し、アルミ板上に極細繊維不織布を形成する。
この集積した極細繊維の走査電子顕微鏡写真を撮り、観察し、液滴がなく、極細繊維の平均繊維径(50点の算術平均値)が5μm以下、アスペクト比が100以上の極細繊維不織布を製造できる条件が存在する場合には、その溶液は「曳糸性あり」と判断する。これに対して、前記条件(すなわち、固形分濃度、押出量、電界強度、及び/又は極性)を変え、いかに組み合わせても、液滴がある場合、オイル状で一定した繊維形態でない場合、平均繊維径が5μmを超える場合、あるいは、アスペクト比が100未満の場合(例えば、粒子状)で、前記極細繊維不織布を製造できる条件が存在しない場合には、その溶液は「曳糸性なし」と判断する。
例えば、金属元素がケイ素の場合、原料にアルコキシドを使用し、酸触媒を用いて加水分解縮重合反応を進行させることにより、曳糸性ゾル溶液を調製することができる。
金属元素がチタンやジルコニアの場合、原料にアルコキシドを用いると、水との反応性が高いため、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル等の配位子を使用し、アルコール溶媒、酸触媒を適宜選択することにより、加水分解縮重合反応を進行させて、曳糸性ゾル溶液を調製することができる。
なお、これらの曳糸性ゾル溶液は、2種類以上の曳糸性ゾル溶液を混合して使用することができるし、2種類以上の金属化合物から曳糸性ゾル溶液を調製することもできる。
(1)ゾル溶液の調製工程
金属化合物としてのテトラエトキシシラン、溶媒としてのエタノール、水、塩酸を、1:5:2:0.03のモル比で混合し、10時間還流を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、温度50℃に加温して、粘度200mPa・s、固形分濃度46wt%の曳糸性ゾル溶液を調製した。
得られた曳糸性ゾル溶液をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、続いて重量平均分子量50万のポリアクリロニトリル(PAN)を溶解し、濃度10wt%の紡糸液とした。PANと曳糸性ゾル溶液との比率(重量比)は、10:1とした。紡糸液の粘度は990mPa・sであった。
紡糸装置としては、図1に示す装置を使用した。得られた紡糸液を、内径が0.4mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1g/時間で供給し、ノズルから紡糸液を紡糸空間へ押出すとともに、ノズルに電圧(13kV)を印加し、支持体であるステンレス製無孔ロールをアースして、紡糸液に電界を作用させることによって細径化し、ゲルとPANとの複合微細繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。紡糸後の平均繊維径は360nmであった。
得られた複合微細繊維を、電気炉を用いて、昇温速度100℃/時間で500℃まで昇温し、か焼温度500℃で8時間か焼した。複合微細繊維からPANを除去することにより、本発明の無機系多孔質微細繊維Aを得た。か焼後の平均繊維径は220nmであった。
得られた無機系多孔質微細繊維Aの走査電子顕微鏡写真(2万倍)を図2に示す。この写真と、後述の実施例4において自動比表面積/細孔分布測定装置で測定した吸脱着等温線の結果から、無機系多孔質微細繊維Aは、繊維軸方向に伸びるシリンダー形又はスリット形の細孔を有していると考えられた(近藤精一、石川達雄、安部郁夫共著,「吸着の化学」,第2版,丸善株式会社,2001年,56−57頁参照)。
実施例1の紡糸液調製工程(2)におけるPANと曳糸性ゾル溶液との比率(10:1)を、10:3としたこと以外は、実施例1の操作を繰り返すことにより、本発明の無機系多孔質微細繊維Bを得た。
紡糸液調製工程(2)で得られた紡糸液の粘度は1020mPa・sであった。紡糸工程(3)で得られた複合微細繊維の平均繊維径は400nmであった。か焼工程(4)で得られた無機系多孔質微細繊維の平均繊維径は300nmであった。
金属化合物としての塩化第1スズ、溶媒としてのメタノールを、1:50のモル比で混合し、40℃にて反応を進行させるとともに濃縮し、粘度200mPa・s、固形分濃度49wt%の曳糸性ゾル溶液を調製した。
紡糸液調製工程(2)で得られた紡糸液の粘度は1000mPa・sであった。紡糸工程(3)で得られた複合微細繊維の平均繊維径は350nmであった。か焼工程(4)で得られた無機系多孔質微細繊維の平均繊維径は120nmであった。
本比較例では、実施例1のゾル溶液調製工程(1)で得られた曳糸性ゾル溶液を直接、紡糸した。
すなわち、テトラエトキシシラン、エタノール、水、塩酸を、1:5:2:0.03のモル比で混合し、10時間還流を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、温度50℃に加温して、粘度200mPa・s、固形分濃度46wt%の曳糸性ゾル溶液を調製した。
得られた曳糸性ゾル溶液を、内径が0.4mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1g/時間で供給し、ノズルから紡糸液を押出すとともに、ノズルに電圧(13kV)を印加し、支持体であるステンレス製無孔ロールをアースして、紡糸液に電界を作用させることによって細径化し、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。紡糸後の平均繊維径は650nmであった。
得られた複合微細繊維を、電気炉を用いて、昇温速度100℃/時間で500℃まで昇温し、か焼温度500℃で8時間か焼することにより、比較用の無機系微細繊維aを得た。か焼後の平均繊維径は620nmであった。
実施例1の紡糸液調製工程(2)におけるPANと曳糸性ゾル溶液との比率(10:1)を、10:5としたこと以外は、実施例1の工程(1)及び(2)の操作を繰り返した。紡糸液調製工程(2)においてPANと曳糸性ゾル溶液を混合したところ、白濁、部分的なゲル化が生じ、紡糸を行うことができなかった。
実施例1のゾル溶液調製工程(1)におけるテトラエトキシシランと水とのモル比(1:2)を、1:10としたこと以外は、実施例1の工程(1)の操作を繰り返した。すなわち、テトラエトキシシラン、エタノール、水、塩酸を、1:5:10:0.03のモル比で混合し、10時間還流を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、温度50℃に加温した。粘度420mPa・s、固形分濃度40wt%のゾル溶液が得られたが、曳糸性を示さなかった。
紡糸液調製工程(2)で得られた紡糸液の粘度は970mPa・sであった。紡糸工程(3)で得られた複合微細繊維の平均繊維径は360nmであった。か焼工程(4)で得られた無機系多孔質微細繊維の平均繊維径は200nmであった。
実施例1のゾル溶液調製工程(1)で用いた塩酸の代わりに、アンモニア水を用いたこと以外は、実施例1の工程(1)の操作を繰り返した。すなわち、テトラエトキシシラン、エタノール、水、アンモニア水を、1:5:10:0.03のモル比で混合し、10時間還流を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、温度50℃に加温した。粘度100mPa・s、固形分濃度20wt%のゾル溶液が得られたが、ゾル溶液が白濁し、曳糸性を示さなかった。
紡糸液調製工程(2)で得られた紡糸液の粘度は1000mPa・sであった。紡糸工程(3)で得られた複合微細繊維の平均繊維径は320nmであった。か焼工程(4)で得られた無機系多孔質微細繊維の平均繊維径は110nmであった。
得られた本発明の無機系多孔質微細繊維及び比較用無機系微細繊維又は比較用無機系多孔質微細繊維について、比表面積及び細孔径分布を測定した。
具体的には、自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP mini;日本ベル株式会社)を用い、吸着ガスとして、窒素ガスを使用した。比表面積はBET法で評価を行った。細孔径分布は、細孔サイズがメソ孔の場合、BJH法を用い、マイクロ孔の場合、MP法を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
例として、実施例1で得られた本発明の無機系多孔質微細繊維Aの吸脱着等温線を、前記自動比表面積/細孔分布測定装置により測定した結果(チャート)を図3に示す。図3において、「ADS」は吸着等温線であり、「DES」は脱着等温線である。「ρ」は平衡圧であり、「ρ0」は飽和蒸気圧であり、「ρ/ρ0」は相対圧である。「Va」は吸着量であり、「cm3(STP)」は0℃及び1気圧でのガス体積であり、「Va/cm3(STP)g−1」は、1g当たりの吸着量を0℃及び101.325kPa(1気圧)における気体の体積に換算した値である。
本実施例では、各多孔質微細繊維を用いてシート成形体を調製し、そのシートを通過させた後のメチレンブルー水溶液の吸光度を測定することにより、各多孔質微細繊維の吸着能を比較した。
具体的には、各実施例又は比較例で形成した集積物(すなわち、不織布)を、各実施例又は比較例の条件でか焼し、目付12.5g/m2の無機系多孔質微細繊維不織布を形成した。得られた無機系多孔質微細繊維不織布を直径25mmの円形に打ち抜き、サンプルシートとした。得られたサンプルシート(0.025g)をフィルタホルダー(KS−25;アドバンテック社)にセットした。吸光度を1に調整したメチレンブルー水溶液(10mL)を、シリンジから押し出すことによりサンプルシートを1度だけ通過させた後、メチレンブルー水溶液の吸光度を測定した。
結果を表1に示す。なお、記号(−)は、測定を実施していないことを示す。
微細繊維 細孔径 比表面積 吸光度
(nm) (m 2 /g)
[実施例]
A 6.0 265 0.31
B 6.4 240 0.31
C 9.2 240 (−)
[比較例]
a 0.6 260 0.88
b 5.4 147 0.60
c 6.2 91 0.68
Claims (3)
- (1)無機系曳糸性ゾル溶液を調製する工程、
(2)前記無機系曳糸性ゾル溶液と、前記無機系曳糸性ゾル溶液を溶解可能な溶媒と、前記溶媒に溶解可能なポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(3)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、無機系ゲルとポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、
(4)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、無機系多孔質微細繊維を形成する工程
を含む、無機系多孔質微細繊維の製造方法。 - 前記ポリマー除去を、か焼又は溶剤抽出により実施する、請求項1に記載の製造方法。
- 酸化ケイ素又は酸化スズからなり、平均繊維径が5μm以下であり、平均細孔径が2〜20nmであり、比表面積が200m2/g以上であることを特徴とする、無機系多孔質微細繊維。
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