JPWO2008111609A1 - シリカ繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

アルコキシシランの縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させて、あるいは、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させて、シリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造することにより、製造するのに時間がかからず、しかも、紡糸可能な時間が長くなる。更に、このようにして得られるゾル状紡糸液を静電噴霧法により紡糸化することにより、簡単に且つ短時間にシリカ繊維を製造することができ、また、機械的強度に優れたシリカ繊維を製造することができる。

Description

本発明は、シリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法、該製造方法により得られるゾル状紡糸液を用いたシリカ繊維の製造方法および該製造方法により得られるシリカ繊維に関する。更に詳細には、本発明は、アルコキシシランの縮重合体またはアルコキシシランモノマーを原料として用いた、シリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法であって、製造するのに時間がかからず、しかも、紡糸可能な時間が長いゾル状紡糸液の製造方法に関する。また、本発明は、該製造方法により得られるゾル状紡糸液を用いた、機械的強度が強いシリカ繊維の製造方法および該製造方法により得られるシリカ繊維に関する。更に、本発明は、同様の特徴および利点を有する、シリカ−金属複合繊維の製造方法に関する。
従来、シリカ繊維の製造方法として、アルコシシランを有機溶媒に溶解し、これに一定量の水を加えてアルコキシシランを加水分解重合させ粘度を増加させ、得られる粘性ゾルを紡糸してゲル状の繊維を得、ついで、そのゲル状繊維を加熱、焼成することによりシリカ繊維を製造することがゾルゲル法として知られている。
しかし、従来の方法では、この紡糸可能にするためのゾルの安定時間が30分から1時間と短く、この時間を過ぎるとゾルは粘度が大きくなりゲル状物質になり、紡糸することは困難となるという問題があった。そこで、粘性ゾルを製造する際、紡糸可能な時間を長くする方法が、種々、開発されてきた。そのような方法として、例えば、1)添加する水分量を少なくする方法(非特許文献1)、2)アルコールを添加し粘度を下げるという操作を繰り返す方法(非特許文献2)、3)アルキルアルコキシシランを用いてゲル化しにくくする方法(特許文献1)、4)ゾルを低温で保存する方法が知られている(特許文献2)。しかし、これらの方法は、ゲル生成を抑制する点では、効果があるものの、紡糸液自体の生成も遅らせる結果、紡糸液の製造に、例えば、数日単位と時間がかかるという問題があった。すなわち、ゾル−ゲル法でシリカ繊維を製造するための紡糸液に関しては、製造時間を短くしようとすると紡糸可能な時間が短くなり、逆に、紡糸可能な時間を長くすると製造時間も長くなるという相反する問題があった。その結果、シリカ繊維を製造するのに時間がかかるという問題があった。
溶融塩、27(1)27−47(1984) Journal of the American Ceramic Society,67(10),C200−C201(1984) 特開昭62−297237号公報 特開昭63−55136号公報
本発明の課題は、製造するのに時間がかからず、しかも、紡糸可能な時間が長いシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、得られるシリカ繊維の機械的強度が優れたシリカ繊維の製造方法を提供することにある。更に本発明の課題は、同様の利点を有する、シリカ−金属複合繊維の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した。その結果、コーティング剤の原料として大量に供給されている市販のアルコキシシランの縮重合体を原料として用いると、簡単にしかも短時間で紡糸液が製造でき、さらに、その紡糸液を紡糸してシリカ繊維を製造した場合、得られる繊維の機械的強度が強くなることを見出した。また、アルコキシシランモノマーを原料として用いる場合には、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造すると製造時間が短く、かつ、ゾルからゲルにすぐにはなりにくく、かつ、紡糸しやすいシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液を製造することを見出した。更には、このようにして得られるゾル状紡糸液を静電噴霧法により紡糸するとシリカ繊維を簡単に製造でき、得られるシリカ繊維の機械的強度が強くなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき更に鋭意研究を重ねた結果達成されたものである。
すなわち、本発明は、
[1] シリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法であって、
1)アルコキシシランの縮重合体を原料とし、その縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させる工程、あるいは、
2)アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させる工程、
を含むシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法;
[2] 工程1)における、アルコキシシランの縮重合体が、酸が除去された縮重合体である上記[1]記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[3] 工程1)における、粘性ゾル化させるときの条件が加湿した状態で粘性ゾル化させる上記[1]または[2]記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[4] 工程1)における、粘性ゾル化させるときの条件が、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で粘性ゾル化させる上記[3]に記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[5] 工程1)において、混合液における水の量が、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子のモル数に対して0.8から2.0倍モル数である上記[1]から[4]のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[6] 工程2)において、混合溶媒における水の量が、アルコキシシランのモル数に対して1.0倍モル数から2.0倍モル数の範囲内である上記[1]に記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[7] 工程1)および2)における、アルコキシシランがテトラエトキシシランであり、有機溶媒がエタノールである上記[1]から[6]のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[8] 工程1)および2)における、触媒が塩酸である上記[1]から[7]のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[9] 工程1)および2)において、得られるゾル状紡糸液の粘度を200から800mPa・sの範囲内に調整する上記[1]から[8]のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法;
[10] 上記[1]から[9]のいずれかに記載の製造方法で得られるゾル状紡糸液を静電噴霧法により紡糸化する工程を含む、シリカ繊維の製造方法;
[11] 加圧することなく静電噴霧法により紡糸化する上記[10]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[12] 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、回転体表面にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着した回転体表面と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、回転体表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、上記[11]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[13] ゾル状紡糸液を回転式の電荷付与電極の表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転している電荷付与電極上の表面であって対向電極に近付いた表面上に紡糸表面が発生し、その紡糸表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液を紡糸化する、上記[12]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[14] 対向電極の表面上を動くシートが設けられており、そのシートの表面上に紡糸化されたシリカ繊維の膜、シートまたは、不織布が形成されるようして、シリカ繊維を製造する上記[13]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[15] 回転式の電荷付与電極から対向電極に向かって空気が流れるようにして、回転式の電荷付与電極表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液が紡糸されるのを促進し、紡糸されたシリカ繊維を乾燥する、上記[13]または[14]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[16] 回転式の電荷付与電極と対向電極の距離が、1cmから100cmであり、電界強度が0.1kV/cmから25kV/cmで印加する上記[13]から[15]のいずれかに記載のシリカ繊維の製造方法;
[17] 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起をその表面に設けた回転体を浸漬させて、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着したスパッター電極、スパッター金属シートまたは突起と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、上記[12]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[18] シリコン以外の金属含有量が1ppm以下であり、かつ、構成成分としてシリコン原子と、その原子に結合しているアルコシ基と酸素原子からなり、かつ、平均繊維径2.5から15μmの範囲内であるゲル状のシリカ繊維;
[19] 上記[10]から[17]のいずれかに記載の製造方法により得られる、ゾル状紡糸液を紡糸することより得られる上記[18]に記載のゲル状のシリカ繊維;
[20] アルコキシシランの縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させて紡糸液を製造するときに、アルコキシシランの縮重合体以外に、加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、その混合液またはゾルに溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、このゾル状紡糸液を紡糸すること含む、シリカ−金属複合繊維を製造するシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[21] アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造するときに、アルコキシシラン以外に加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、その混合液または液に溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、この紡糸液を紡糸することにより、シリカ−金属複合繊維を製造することを含むシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[22] 加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物がアルコキシチタンまたはアルコキシジルコニアである上記[20]または[21]に記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[23] 金属物質がバリウム塩である上記[20]から[22]のいずれかに記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[24] 静電噴霧法により紡糸する上記[21]から[23]のいずれかに記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[25] 加圧することなく静電噴霧法により紡糸化する上記[24]に記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法;
[26] 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に回転体を浸漬させて、回転体表面にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着した回転体表面と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、回転体表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、上記[25]に記載のシリカ繊維の製造方法;
[27] ゾル状紡糸液を回転式の電荷付与電極の表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転している電荷付与電極上の表面であって対向電極に近付いた表面上に紡糸表面が発生し、その紡糸表面から対抗電極に向かってゾル状紡糸液を紡糸化する、上記[26]に記載のシリカ繊維の製造方法;および
[28] 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起をその表面に設けた回転体を浸漬させて、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着したスパッター電極、スパッター金属シートまたは突起と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、上記[25]に記載のシリカ繊維の製造方法、
に関する。
アルコキシシランの縮重合体を原料とする本発明のシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法によれば、製造するのが簡単でしかも時間がかからず、ゾル状紡糸液を製造することができ、さらに、得られるシリカ繊維の機械的強度が優れたシリカ繊維を製造することができる。また、アルコキシシランモノマーを原料とする本発明のシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法であって、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造する本発明の製造方法により、製造時間が短く、かつ、紡糸液から紡糸しにくいゲルになりにくく、しかも、簡単に紡糸可能なシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液を製造することができる。このような製造方法により、シリコン以外の金属含有量が低く、平均繊維径が小さいなどの種々の利点を有するゲル状のシリカ繊維を得ることができる。
同様に、本発明のシリカ−金属複合繊維の製造方法によれば、簡単でしかも短時間に、シリカ−金属複合繊維を製造することができる。
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
1.アルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法
まず、アルコキシシランの縮重合体を原料とする本発明のシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法について、以下に説明する。
本製造方法において用いるアルコキシシランの縮重合体は、例えば、以下のようにして得ることができる。1)特開昭59−88492号公報に記載のように、クロルシランをアルコールと水と反応させ、反応の際に生じる塩化水素を反応器およびこれに接続する塔中で除去することによりアルコキシシランの縮重合体を製造する。2)特開平10−147750号公報に記載のように、テトラメチルオルソシリケート(アルコキシシラン)を水とメタノールと硫酸触媒とを用いて反応させ、過剰のアルコールを留去した後、得られる液体をイオン交換樹脂層を通じて脱酸してアルコキシシランのオリゴマーを製造する。3)アルコキシランの縮重合体として市販されているもの、例えばコルコート株式会社から市販されているメチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート48等をそのまま使用する。4)アルコキシシランと水と酸触媒と有機溶媒から粘性ゾルを作る際、粘性ゾル調整工程を途中で中断し、イオン交換樹脂層を通じて一部または全部の酸を脱酸させて製造して、新たに酸の種類および量を調整した酸触媒とアルコキシシラン縮重合体と有機溶媒と水との混合液を製造し、そのまま本製造方法に用いる混合液として調整してもよい。この上記4)の場合、第一段階として、酸過剰あるいは強酸存在下でいったん、ある程度の縮重合したアルコキシシランを製造し、第二段階では、得られるアルコキシシランの縮重合体から、酸を少なくするか弱い酸を用いて更に縮重合させ紡糸液を製造するという方法である。
本製造方法に用いるアルコキシシランの縮重合体としては、取り扱いやすさや原料の安定性から、平均重合度3から15の直鎖状縮重合体が好ましく、このような直鎖状縮重合体として、平均重合度5のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体(コルコート社のエチルシリケート40)、平均重合度10のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体(コルコート社のエチルシリケート48)を例示できる。なお、これらはコーティング剤の原料として大量に安価に生産されているので入手容易な点からも好ましい。
また、本製造方法に用いるアルコキシシランの縮重合体としては、酸が除去された縮重合体が好ましい。
本製造方法において、縮重合体を構成するためのアルコキシシランはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ(イソプロポキシ)シランなどのテトラC1−6アルコキシシランを例示でき、なかでもテトラエトキシシランが好ましい。
本製造方法において、紡糸液としてシリコン以外の金属を含まない場合、用いる水の量は、用いるアルコキシシランの縮重合度により異なるが、一般的には、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子のモル数に対して0.8から2.0倍モル数であることが好ましい。0.8未満では湿気と接触させても、紡糸できる紡糸液になるまで非常に長時間を要し、2.0を超えるとゲル化が起こりやすくなるため、混合溶媒(紡糸液)を紡糸化できにくいからである。
触媒としては、酸が好ましく、塩酸、酢酸、硝酸がさらに好ましい。触媒の量は、用いる酸により異なるが、例えば、塩酸を用いる場合、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子のモル数に対し、通常、0.0001から0.1倍モル数、好ましくは0.001から0.03倍モル数が好ましい。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸溶媒のほか、DMF,テトラハイドロフランが好ましく、アルコール類、有機酸溶媒が特に好ましく、これらの混合溶媒でも良い。
紡糸液にシリコン以外の金属を含まない場合、用いる有機溶媒の量は、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子のモル数に対し、好ましくは0.1から6倍モル数、更に好ましくは0.2から4倍モル数である。
本製造方法においては、アルコキシシランの縮重合体と水と酸触媒と有機溶媒とを含む混合液を、好ましくは0から80℃、更に好ましくは5から70℃で反応させる。粘性ゾル製造の際、混合液は、その表面を加湿した雰囲気、例えば加湿下の空気を接触させるため攪拌させておくことが好ましい。このように加湿することにより、反応温度を、例えば、10から35℃、好ましくは15から30℃の室温付近に設定しても短時間で粘性ゾルを製造できる。
本製造方法においては、20℃以上で反応する場合は、好ましくは20℃換算で相対湿度60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下で縮合重合させるとよい。この場合、通常、反応系の表面に加湿したガス、好ましくは加湿した空気を反応液表面に接触させるようにすることが好ましい。ガスとしては、例えば、20℃換算で相対湿度60%以上、すなわち絶対湿度10.4g/m以上、好ましくは相対湿度70%以上、すなわち絶対湿度12.1g/m以上、さらに好ましくは相対湿度80%以上、すなわち絶対湿度13.8g/m以上、の加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込むことが好ましい。絶対湿度の上限は、好ましくはその反応液の温度換算で相対湿度100%、さらに好ましくはその相対湿度98%に相当する絶対湿度である。
一方、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度における相対湿度が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下にしておくことが好ましい。
加湿するときの湿度は、高すぎると紡糸液を速くできやすいが、ゲル化が急にすすみ繊維化できないことがある。
アルコキシシランの縮重合体を粘性ゾル化させるために用いる装置としては、例えば、図1に示すような装置を用いることができる。図1において、エアポンプ1からバイアル2へ空気を送り込み、バイアル2からフラスコ5内へ加湿した空気を導入し、フラスコ5内で、アルコキシシランの縮合重合反応が行われる。
上記粘性ゾル化工程においては、ゾル状紡糸液の粘度を好ましくは100から1500mPa・s、より好ましくは200から800mPa・sの範囲内に調整する。
本製造方法において製造されるゾル状紡糸液は、純粋なシリカからなるシリカ繊維を製造するために有効である。しかし、用途に応じ、紡糸液に含まれる添加物として従来知られているもの、例えば、ポリエチレングリコール等の粘度調整剤、アルキルアルコキシシラン、粒状シリカ等を含んでもかまわない
2.アルコキシシランを原料とするゾル状紡糸液の製造方法
次に、アルコキシシランモノマーを原料とする本発明のシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法について、以下に説明する。
本製造方法においては、まず、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を調製する。
本製造方法においては、アルコキシシランはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ(イソプロポキシ)シランなどのテトラC1−6アルコキシシランを例示でき、なかでもテトラエトキシシランが好ましい。
本製造方法において、紡糸液としてシリコン以外の金属を含まない場合、用いる水の量は、アルコキシシランのモル数に対し1.0から2.0倍モル数の範囲内であることが好ましい。1.0未満では湿気と接触させても、紡糸できる紡糸液になるまで非常に長時間を要し、2.0を超えるとゲル化が起こりやすくなるため、混合溶媒(紡糸液)を紡糸化できにくいからである。
触媒としては、酸が好ましく、塩酸、酢酸、硝酸がさらに好ましい。触媒の量は、アルコキシシランのモル数に対し、通常、0.001から0.1、好ましくは0.005から0.03倍モル数の範囲内であることが好ましい。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸溶媒のほか、DMF,テトラハイドロフランが好ましく、アルコール類、有機酸溶媒が特に好ましく、これらの混合溶媒でもよい。
有機溶媒の量は、例えば、アルコキシシランのモル数に対し0.2から20倍モル数、更に好ましくは、0.6から6倍モル数の範囲内であるが、反応条件等により、適宜調節される。なお、本発明において有機溶媒として有機酸溶媒を用いるときは、有機酸自体が触媒となるので特に触媒を加えなくてもよい。
本製造方法においては、通常、混合液を室温以上で反応させることが好ましく、紡糸液としてシリコン以外の金属を含まない場合、35から90℃の範囲内で加熱することがさらに好ましい。ゾル製造の際、混合液は、その表面を加湿した雰囲気、例えば加湿下の空気を接触させるため攪拌させておくことが好ましい。
本製造方法においては、「20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させる」ことに特徴がある。なお、ここで、「反応」とは「縮合重合反応」を意味するものとする。
この場合、通常、反応系の表面に加湿したガス、好ましくは加湿した空気を反応液表面に接触させるようにすることが好ましい。ガスとしては、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、すなわち絶対湿度10.4g/m以上、好ましくは相対湿度70%以上、すなわち絶対湿度12.1g/m以上、さらに好ましくは相対湿度80%以上、すなわち絶対湿度13.8g/m以上、の加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込むことが好ましい。絶対湿度の上限は、好ましくはその反応液の温度換算で相対湿度100%、さらに好ましくはその相対湿度98%に相当する絶対湿度である。
20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の雰囲気下での加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込む。
縮合重合に用いる装置としては、例えば、上記の「1.アルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法」において説明したと同様に、図1に示すような装置を用いることができる。
本製造方法において紡糸液としてシリコン以外の金属を含まない場合、縮合重合工程においては、紡糸液の粘度を、例えば、上記の「1.アルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法」において説明したと同様に、100mPa・sから1500mPa・s、好ましくは200mPa・sから800mPa・sの範囲内に調整するとよい。
本製造方法において製造される紡糸液は、純粋なシリカからなるシリカ繊維を製造するために有効である。しかし、用途に応じ、紡糸液に含まれる添加物として従来知られているもの、例えば、上記の「1.アルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法」において説明したと同様に、ポリエチレングリコール等の粘度調整剤、アルキルアルコキシシラン、粒状シリカ等を含んでもかまわない。
3.繊維状のゲルに紡糸化する方法
次いで、上記のようにして得られたゾル状紡糸液を紡糸化して繊維状のゲルにする方法について説明する。
本発明において得られたゾル状紡糸液を紡糸化して繊維状のゲルにするには、静電噴霧法により紡糸する方法が好適であるが、従来、繊維状のゲルを製造する方法として知られているものであれば特に限定しない。例えば、このゾル状紡糸液は、ゾル状紡糸液にガラス棒等の先端を接触させて引き上げる方法、巻取機等で連続的に引き出す方法、濃縮ゾルを低温で粘度を維持しながら細孔を有する口金から流出させて紡糸する方法等(以下、各種紡糸法と記載することもある)により繊維状のゲルを製造することができる。なお、繊維状のゲルは、加熱焼成することにより簡単に無機シリカ繊維とすることができる。
本発明において得られたゾル状紡糸液を紡糸化して繊維状のゲルにするためには、静電噴霧法によるのが好ましい。ナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用する場合、例えば、ノズル、好ましくは内径0.3から3mmのノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化することが好ましい。そのようにすることにより、ナノレベルでなく、応用範囲が広いと考えられる繊維径2から20μm、好ましくは2.5から15μm、より好ましくは3から10μmのシリカ繊維を得ることができるからである。そのような装置として小型のものは、ディスポーザブルの注射器用いることができる。
例えば、図2(a)に示すようなディスポーザルの注射器を用いることができる。本明細書で注射器とは注射器のシリンジタイプをいう。このような注射器を用いることにより、ノズルがシリカ繊維等でつまっても交換が簡単であるからである。この装置は、高圧電源8と、シリンジ9と、針状電極11と、導電性捕集板12とから構成され、高圧電源8及び導電性捕集板12には、アース13が取り付けられている。なお、この静電噴霧法に関しては、後述する実施例および比較例で更に詳細に説明する。また、このようにして得られたゲル状のシリカ繊維を、例えば、600から1000℃で加熱焼成することによりガラス状のシリカ繊維を製造することができる。
また、本発明においては、得られたゾル状紡糸液を紡糸化して繊維状のゲルにするには、加圧することなく静電噴霧法による紡糸化する方法であって、回転体表面にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着した回転体表面と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、回転体表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、方法(以下、この方法を回転式静電噴霧法と記載することもある)が好ましい。
一般にシリカ繊維を製造する際、紡糸液がゲル化しやすくノズルが詰まりやすいという問題があるが、回転式静電噴霧法を用いた場合、ノズルを用いないので、ノズルの詰まりにより紡糸化ができないという従来の問題が解消できる。
回転体表面にゾル状紡糸液を付着させるには、回転体を回転させることにより容器中のゾル状紡糸液に回転体を浸漬させて付着させることが好ましい。この場合、回転体を回転させることにより、電解の弱いところで紡糸液を付着させ、さらに回転することにより電界の強いところに紡糸液を運搬させ静電噴霧法によりシリカ繊維として紡糸できる。このような方法によりシリカ繊維を工業的に製造できうる。
回転式静電噴霧法においては、紡糸の開始点を選択的または、積極的に作るために回転体表面に凹凸をつけることが好ましい。
このような紡糸化方法としては、例えば、ゾル状紡糸液を回転式の電荷付与電極の表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転している電荷付与電極上の表面であって対向電極に近付いた表面上に紡糸表面が発生し、その紡糸表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液を紡糸化する、紡糸方法が挙げられる。
このような紡糸方法としては、例えば、図3に示すような装置を用いた方法が好ましいものとして挙げられる。図3においては、容器16中にゾル状紡糸液17を入れ、そのゾル紡糸液17に回転式の電荷付与電極18を部分的に浸漬させる。この電極18に電圧を印加し、この回転式の電荷付与電極18が回転することにより、その電極表面に付着したゾル状紡糸液19が電界中に導入され、回転式の電荷付与電極表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極20に近づいて紡糸表面21が発生し、その紡糸表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液22が吹き流されて紡糸される。このように、回転式の電荷付与電極を用いることにより、この電極の円周表面に付着したゾル状紡糸液が、電極の回転により対向電極に近づき、円周表面では電界集中の効果により強力な電界が発生し、ゾル状紡糸液表面に荷電を持つイオンが集まり、対向電極に引き寄せられて、紡糸化される。このように、回転式の電荷付与電極を用いることにより、高い紡糸能力が達成される。
また、ローラーからの紡糸の開始点を選択的または、積極的に作るためにローラーに凹凸をつけることがさらに望ましい。
また、ローラー側をマイナス、対向側をプラスに印加することも可能である。
本発明では、図4に示したように、対向電極の表面上にシート23をあらかじめおき、そのシート23をベルトコンベア24でゆっくり動かし、回転式の電荷付与電極から対向電極に向かって噴射されるシリカ繊維をそのシートに付着させて膜、シートまたは不織布が形成されるように製造させることもできる。そのようなシートとしては、キャリアーフィルムが挙げられる。
また、回転式の電荷付与電極から対向電極に向かって空気が流れるようにして、回転式の電荷付与電極表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液が紡糸されるのを促進し、紡糸されたシリカ繊維を乾燥させることもできる。
このような静電噴霧法による紡糸方法では、回転式の電荷付与電極と対向電極の距離は、通常、1cmから100cm、好ましくは、1.2cmから50cm、さらに好ましくは1.5cmから40cmであり、印加する電界強度は、通常、0.1kV/cmから25kV/cm、好ましくは0.5kV/cmから20kV/cmである。
以上に説明した静電噴霧法による紡糸方法は、WO 2005/024101A1公報が参照される。
上記した静電噴霧法による紡糸方法において、対向電極として、ベルトコンベア式の可動電極を用い、可動電極上に紡糸化する方法も挙げられる。このような紡糸化方法としては、例えば、特公昭53−28548号公報の第1図および第2図に記載された装置を用いた方法が具体的に挙げられる。
また、他の加圧することのない静電噴霧法としては、容器中のゾル状紡糸液に、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起をその表面に設けた回転体を浸漬させて、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着したスパッター電極、スパッター金属シートまたは突起と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、紡糸化方法が挙げられる。
このような紡糸化方法としては、例えば、WO 03/016601A1号公報の図1から5に示されているように、回転体のコンベーヤーデバイスの表面上に、スパッター電極またはスパッター金属シートを設け、このコンベーヤーデバイスを回転させて、スパッター電極またはスパッター金属シートにゾル状紡糸液を付着させ、スパッター電極またはスパッター金属シートが回転して、一定の位置に来た時に、対向電極に向かって、スパッター電極またはスパッター金属シートに付着したゾル状紡糸液が紡糸化される紡糸化方法を挙げることができる。
また、例えば、WO 98/25709号公報の図5に記載されているように、回転体の表面上に、突起を設け、この回転体を回転させて、突起表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転体が回転して、一定の位置に来た時に、対向電極に向かって、突起表面に付着したゾル状紡糸液が紡糸化される紡糸化方法を挙げることもできる。
以上に詳細に説明した各種の静電噴霧法により紡糸化して得られたゲル状のシリカ繊維を、例えば、600から1000℃で加熱焼成することによりガラス状のシリカ繊維を製造することができる。
4.本発明で得られるシリカ繊維の特徴について
本発明のゾル状紡糸液の製造方法により製造された紡糸液を静電噴霧法に適用することにより、従来得られていないタイプのゲル状のシリカ繊維を得ることができる。その特徴は、以下のとおりである。
1)原料として、アルコキシシランの縮重合体を用いた場合には、圧縮強度等の機械的強度の強いシリカ繊維を製造することができる。
2)不純物が実質的になく、構成成分としてシリコン原子と、その原子に結合しているアルコシ基と酸素原子からのみなるシリカ繊維を製造することができる。また、シリル基に結合しているアルコキシ基は非常に加水分解しやすいのでゲル状の繊維から純粋なシリカ繊維を製造することができる。
3)シリコン以外の金属含有量が1ppm以下である。
4)ナノファイバー製造に最近、注目されている静電噴霧法にもかかわらず、加圧することなく静電噴霧法を適用すると各種用途に最適な2.5から15μm、好ましくは2.8から12、さらに好ましくは3.2から10μmの範囲内の平均繊維径を有するものを製造することができる。しかも、繊維径は非常に平均化されている。
5)原料として、粘度調整剤等の有機物質を含まない。その結果、得られるシリカ繊維は、粘度調整剤による有機物質等の繊維強度の低下の恐れがほとんどない。
6)いくつかのフィラメントが接着されたものではなく1本状の繊維からなるゲル状のシリカ繊維である。
以下に、本発明のさらなる応用としてシリカ−金属複合繊維の製造方法について説明する。
5.アルコキシシランの縮重合体を原料として用いるシリカ−金属複合繊維の製造方法
本製造方法においては、アルコキシシランの縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させて紡糸液を製造するときに、アルコキシシランの縮重合体以外に、加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、その混合液またはゾルに溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、このゾル状紡糸液を紡糸することにより、シリカ−金属複合繊維を製造することができる。そのような繊維として例えば、チタニア−シリカ複合繊維、チタン酸バリウム−シリカ複合繊維、ジルコニア−シリカ複合繊維等を例示できる。
アルコキシシラン以外に加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物としては、好ましくは金属アルコキシドが挙げられ、例えば、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、アルコキシボロン、アルコキシナトリウム、アルコキシカルシウムなどを例示することができる。このうち、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等が好ましい。また、混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に加える、その混合液またはゾルに溶解可能な金属物質としては、酢酸バリウム、塩化アルミニウムの金属塩化合物、ホウ酸等の金属酸化物等を例示できる。
なお、本製造方法においてシリカ−金属複合繊維を製造する場合、それらの金属化合物および/または金属物質の存在下でアルコキシシランモノマーを重合させて、得られる縮重合体等の混合物から酸の全部または一部を除去させ、酸除去した縮重合体の混合物を、本製造方法に用いるアルコキシシランの縮重合体として使用しても構わない。
ゾル状紡糸液の製造においては、加湿した雰囲気、または20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で粘性ゾル化させて紡糸するときの装置、反応条件または紡糸液からの紡糸については、上記したアルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法とほぼ同様である。
ゾル状紡糸液製造に使用する水の量は、用いる金属化合物の種類により適宜調整するが、通常アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子と金属化合物および/または金属物質の総和のモル数に対し0.1から10.0倍モル数が好ましい。0.1未満のモル比では大気と接触させても、紡糸できるゾル状紡糸液になるまで非常に長時間を要し、10.0を超えるとゲル化が起こりやすくなるため、ゾル状紡糸液を紡糸化できにくいからである。
触媒としては、酸が好ましく、塩酸、酢酸、硝酸がさらに好ましい。触媒が塩酸の場合、触媒の量は、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子と金属化合物および/または金属物質の総和のモル数に対し0.0001から0.1倍モル数の範囲が好ましい。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、nープロパノール等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸溶媒のほか、DMF,テトラハイドロフランが好ましく、アルコール類、有機酸溶媒が特に好ましく、これらの混合溶媒でも良い。
有機溶媒の量は、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子と金属化合物および/または金属物質の総和のモル数に対し、好ましくは0.1から20倍モル数、更に好ましくは、0.6から6倍モル数であるが、金属の種類により適宜調節される。なお、本発明において有機溶媒として有機酸溶媒を用いるときは、有機酸自体が触媒となるので特に触媒を加えなくてもよい。
アルコキシシランの縮重合体及び金属化合物については、アルコキシシランの縮重合体中のシリコン原子は、金属化合物の金属原子のモル数に対し、好ましくは0.01から100倍モル数、より好ましくは0.1から10倍モル数の範囲内で用いるのがよい。
混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に加える、酢酸バリウムなどの金属物質は、実際には、アルコキシシランの縮重合体などとともに前記混合液中に添加してもよく、粘性ゾル化直前に加えても、粘性ゾル化中に加えても、あるいは粘性ゾル化後に加えてもよい。酢酸バリウムなどの金属物質の量は、用いる金属物質により適宜調整されるが、混合液または粘性ゾル化液の全重量に対して0.1から30wt%が好ましい。
本製造方法においては、アルコキシシランはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ(イソプロピロキシ)シランなどのテトラC1−6アルコキシシランを例示でき、なかでもテトラエトキシシランが好ましい。
本製造方法においては、通常、混合液を0から100℃で反応させることが好ましく、15から90℃で反応させることがさらに好ましい。反応温度、反応時間は、用いる金属化合物及び/または金属物質の量により反応温度を適宜、コントロールすることが好ましい。
ゾル状紡糸液製造の際、混合液は、その表面を加湿した雰囲気、例えば加湿下の空気を接触させるため攪拌させておくことが好ましい。
上記したアルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液の製造方法とと同様に、本製造方法においては、20℃以上で反応する場合は、好ましくは20℃換算で相対湿度60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下で縮合重合させると良い。この場合、通常、反応系の表面に加湿したガス、好ましくは加湿した空気を反応液表面に接触させるようにすることが好ましい。ガスとしては、例えば、20℃換算で相対湿度60%以上、すなわち絶対湿度10.4g/m以上、好ましくは相対湿度70%以上、すなわち絶対湿度12.1g/m以上、さらに好ましくは相対湿度80%以上、すなわち絶対湿度13.8g/m以上、の加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込むことが好ましい。絶対湿度の上限は、好ましくはその反応液の温度換算で相対湿度100%、さらに好ましくはその相対湿度98%に相当する絶対湿度である。
一方、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度における相対湿度が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下にしておくことが好ましい。
上記粘性ゾル化工程においては、上記紡糸液に適当な粘度は、用いる金属化合物及び/または金属物質の種類により異なるが、好ましくは100mPa・sから1500mPa・s、より好ましくは200mPa・sから1300mPa・sの範囲内に調整することが好ましい。
本製造方法において製造されるゾル状紡糸液は、用途に応じ、紡糸液に含まれる添加物として従来知られているもの、例えば、ポリエチレングリコール等の粘度調整剤、テトラアルコキシシランモノマー、アルキルアルコキシシラン、粒状シリカ等を含んでもかまわない。
本製造方法において得られたゾル状紡糸液を紡糸化して繊維状のゲルにするには、静電噴霧法により紡糸する方法が好適であるが、従来、繊維状のゲルを製造する方法として知られているもの、上記「3.繊維状のゲルに紡糸化する方法」において説明した各種紡糸法により紡糸できる。また、繊維状のゲルに紡糸化するため、上記「3.繊維状のゲルに紡糸化する方法」において説明した各種静電噴霧法を適用することが好ましい。具体的には、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで静電噴霧法を適用して繊維化する方法や回転式静電噴霧法ががさらに好ましい。
5−1.シリカ−チタニア繊維を製造する方法
以下に、例として、シリカ−チタニア繊維を製造する方法について説明する。この場合、アルコキシシランの縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させて製造するときに、アルコキシシランの縮重合体以外にアルコキシチタンを混合液に加えてチタニア−シリカ複合繊維用のゾル状紡糸液を製造する。アルコキシチタンとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド等が例示でき、アルコキシチタンの縮重合体も使用できる。この場合、水の量は、シリコン原子とチタン原子の総モル数に対し、0.2から5倍モル数が好ましく、0.5から2倍モル数が最も好ましい。0.2倍モル数未満では加湿した空気と接触させても、粘度が上昇した紡糸液製造に長時間を要し、5倍モル数を超えると粘度の急激な増加が起こりやすくなるため、紡糸液を紡糸化しにくいからである。有機溶媒の量は、シリコン原子とチタン原子の総モル数に対して0.1から10倍モル数が好ましく、0.2から5倍モル数が最も好ましい。酸の量は、例えば、塩酸の場合、シリコン原子とチタン原子の総モル数に対して好ましくは0.0001から0.3倍モル数、さらに好ましくは0.0005から0.05倍モル数である。ただし、有機溶媒として有機酸を用いる場合、溶媒が触媒も兼用しているので特に別な触媒を加える必要はない。また、アルコキシチタン中のチタン原子の量は、含まれるアルコキシシランの縮重合体のシリコン原子のモル数に対し、0.1から30倍モル数が好ましく、0.5から20倍モル数がさらに好ましく、2から8倍モル数が最も好ましい。
上記したと同様に、ゾル状紡糸液製造の際、混合液は、その表面を加湿した雰囲気、例えば加湿下の空気を接触させるため攪拌させておくことが好ましい。また、上記したと同様に、本製造方法においては、20℃以上で反応する場合は、好ましくは20℃換算で相対湿度60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下で縮合重合させると良い。この場合、通常、反応系の表面に加湿したガス、好ましくは加湿した空気を反応液表面に接触させるようにすることが好ましい。ガスとしては、例えば、20℃換算で相対湿度60%以上、すなわち絶対湿度10.4g/m以上、好ましくは相対湿度70%以上、すなわち絶対湿度12.1g/m以上、さらに好ましくは相対湿度80%以上、すなわち絶対湿度13.8g/m以上、の加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込むことが好ましい。絶対湿度の上限は、好ましくはその反応液の温度換算で相対湿度100%、さらに好ましくはその相対湿度98%に相当する絶対湿度である。
一方、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度における相対湿度が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の雰囲気下にしておくことが好ましい。
得られたゾル状紡糸液は、上記各種紡糸法で紡糸化することができる。繊維状のゲルに紡糸化するため、その紡糸液をナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用することが好ましく、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化する方法や回転式静電噴霧法がさらに好ましい。
5−2.チタン酸バリウム−シリカ繊維を製造する方法
以下に、例として、チタン酸バリウム−シリカ繊維を製造する方法について説明する。この場合、アルコキシシランの縮重合体とアルコキシチタンと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、上記したと同様に、加湿した雰囲気で、また、20℃以上で反応する場合は、好ましくは20℃換算で相対湿度60%以上の雰囲気下で、一方、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度における相対湿度が好ましくは60%以上の雰囲気下で粘性ゾル化させて紡糸液を製造するときに、酢酸バリウム等のバリウム塩を、混合液、粘性ゾル化前後に、または粘性ゾル化中に、加えてチタン酸バリウム−シリカ複合繊維用のゾル状紡糸液の製造する。アルコキシチタンとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド等が例示でき、またアルコキシチタンの縮重合体も使用できる。水の量は、(シリコン原子、チタン原子およびバリウム塩の総モル数)に対し0.1から10倍モル数に調整することが好ましい。有機溶媒の量は、(シリコン原子、チタン原子およびバリウム塩の総モル数)に対して0.2から10倍モル数が好ましい。酸の量は、例えば塩酸の場合、シリコン原子、チタン原子およびバリウム塩の総モル数に対して0.0001から0.1倍モル数が好ましい。なお、有機溶媒が有機酸溶媒である場合、触媒もかねるので触媒は加えなくてよい。
また、アルコキシシランの縮重合体、アルコキシチタンおよびバリウム塩の量については、アルコキシシランの縮重合体中のシリコン原子の量は、チタン原子とバリウム原子の総モル数に対して、0.1から10倍モル数が好ましい。
アルコキシチタンおよびバリウム塩の量については、チタン原子のモル数は、バリウム原子の総モル数に対して、好ましくは0.1から10倍モル数、より好ましくは0.5から2倍モル数、最も好ましくは1倍モル数である。
紡糸液は、上記した各種紡糸法で紡糸化することができる。繊維状のゲルに紡糸化するため、その紡糸液をナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用することが好ましく、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化する方法や回転式静電噴霧法がさらに好ましい。
以下に、アルコキシシランモノマーを原料として用いるシリカ−金属複合繊維の製造方法について説明する。
6.アルコキシシランを原料として用いるシリカ−金属複合繊維の製造方法
本製造方法においては、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造するときに、アルコキシシラン以外に加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、その混合液またはその液に溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、この紡糸液を紡糸することにより、シリカ−金属複合繊維を製造することができる。そのような繊維として例えば、チタニア−シリカ複合繊維、チタン酸バリウム−シリカ複合繊維、ジルコニア−シリカ複合繊維等を例示できる。
アルコキシシラン以外に加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物としては、上記の「5.アルコキシシランの縮重合体を原料として用いるシリカ−金属複合繊維の製造方法」において説明した金属化合物と同様の金属化合物を用いることができる。また、混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に加える、その混合液または液に溶解可能な金属物質も、上記の「5.アルコキシシランの縮重合体を原料として用いるシリカ−金属複合繊維の製造方法」において説明した金属物質と同様の金属物質を用いることができる。
このような紡糸液製造を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で紡糸液製造を行う場合の装置、反応条件または紡糸液からの紡糸については、上記の「2.アルコキシシランを原料とするゾル状紡糸液の製造方法」において説明したとおりである。
紡糸液製造に使用する水の量は、加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物として用いる金属化合物の種類により適宜調整するが、通常アルコキシシランと金属化合物の総和のモル数に対し0.1から10.0倍モル数の範囲内が好ましい。0.1未満では大気と接触させても、紡糸できる紡糸液になるまで非常に長時間を要し、10.0を超えるとゲル化が起こりやすくなるため、紡糸液を紡糸化できにくいからである。また、得られるシリカ−複合繊維の不織布を製造し、焼成して望ましい比表面積の焼成シリカ−複合繊維を製造するためには、アルコキシシラン及び金属化合物については、アルコキシシランは、金属化合物のモル数に対し、好ましくは0.01から100倍モル数、より好ましくは0.1から10倍モル数の範囲内で用いるのがよい。
上記混合液、上記縮合重合前後の液または縮合重合中の液に加える、酢酸バリウムなどの金属物質は、実際には、アルコキシシランなどとともに前記混合液中に添加してもよく、縮合重合開始直前の液に加えても、縮合重合中の液に加えても、あるいは縮合重合後の液に加えてもよい。酢酸バリウムなどの金属物質の量は、用いる金属物質の種類により適宜調整されるが、例えば、混合液または粘性ゾル化液の全重量に対して0.1から30Wt%の範囲内が好ましい。
触媒としては、酸が好ましく、塩酸、酢酸、硝酸がさらに好ましい。触媒が塩酸の場合、触媒の量は、例えば、アルコキシシランと金属化合物の総和のモル数に対し0.001から0.1倍モル数の範囲内が好ましい。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸溶媒のほか、DMF,テトラハイドロフランが好ましく、アルコール類、有機酸溶媒が特に好ましく、これらの混合溶媒でもよい。
有機溶媒の量は、アルコキシシランと金属化合物の総和のモル数に対し、好ましくは0.2から20倍モル数、更に好ましくは、0.6から6倍モル数の範囲内であるが、金属の種類により適宜調節される。なお、本製造方法において有機溶媒として有機酸溶媒を用いるときは、有機酸自体が触媒となるので特に触媒を加えなくてもよい。
本製造方法において、アルコキシシランはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ(イソプロピロキシ)シランなどのテトラC1−6アルコキシシランを例示でき、なかでもテトラエトキシシランが好ましい。
本製造方法においては、通常、混合液を0から100℃の範囲内で反応させることが好ましく、10から80℃の範囲内で反応させることがさらに好ましい。反応温度、反応時間は、用いる金属化合物の種類や量により反応温度を適宜、コントロールする必要がある。
ゾル製造の際、混合液は、その表面を加湿した雰囲気、例えば加湿下の空気を接触させるため攪拌させておくことが好ましい。
本製造方法においては、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させることに特徴がある。この場合、通常、反応系の表面に加湿したガス、好ましくは加湿した空気を反応液表面に接触させるようにすることが好ましい。ガスとしては、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、すなわち絶対湿度10.4g/m以上、好ましくは相対湿度70%以上、すなわち絶対湿度12.1g/m以上、さらに好ましくは相対湿度80%以上、すなわち絶対湿度13.8g/m以上、の加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込むことが好ましい。絶対湿度の上限は、好ましくはその反応液の温度換算で相対湿度100%、さらに好ましくはその相対湿度98%に相当する絶対湿度である。
20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の雰囲気下での加湿した空気を反応液の表面に接触させるように送り込む。
使用する装置としては、上記の「2.アルコキシシランを原料とするゾル状紡糸液の製造方法」において説明したと同様の装置を用いることができる。上記縮合重合工程においては、上記紡糸液に適当な粘度は、用いる金属化合物の種類により異なるが、好ましくは100mPa・sから1500 mPa・s、より好ましくは200mPa・sから1300mPa・sの範囲内に調整することが好ましい。
本製造方法において製造される紡糸液は、用途に応じ、紡糸液に含まれる添加物として従来知られているもの、例えば、ポリエチレングリコール等の粘度調整剤、アルキルアルコキシシラン、粒状シリカ等を含んでもかまわない。本製造方法において得られた紡糸液を繊維状のゲルにするには、静電噴霧法により紡糸する方法が好適であるが、従来、繊維状のゲルを製造する方法として知られているもの、上記の「3.繊維状のゲルに紡糸化する方法」において説明したと同様の各種紡糸法により紡糸できる。繊維状のゲルに紡糸化するため、その紡糸液をナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用することが好ましいが、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化する方法や回転式静電噴霧法がさらに好ましい。
そのようにすることにより、ナノレベルでなく、応用範囲が広いと考えられる繊維径2.5から15μm、好ましくは、2.8から12μm、さらに好ましくは3.2から10μmの範囲内のシリカ複合繊維を得ることができるからである。そのような装置として小型のものは、上記の「3.繊維状のゲルに紡糸化する方法」において説明したと同様のディスポーザブルの注射器を用いることが好ましい。
6−1.シリカ−チタニア繊維の製造方法
以下に、例として、シリカ−チタニア繊維を製造する方法について説明する。この場合、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させて製造するときに、アルコキシシラン以外にアルコキシチタンを混合液に加えてチタニア−シリカ複合繊維用のゾル状紡糸液の製造する。アルコキシチタンとしては、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド等が例示できる。
この場合、水は、アルコキシシランとアルコキシチタンの総モル数に対し、0.2から5倍モル数の範囲内が好ましく、0.5から2倍モル数の範囲内が最も好ましい。0.2倍モル数未満では加湿した空気と接触させても、粘度が上昇した紡糸液製造に長時間を要し、5倍モル数を超えると粘度の急激な増加が起こりやすくなるため、紡糸液を紡糸化しにくいからである。用いる有機溶媒の量は、アルコキシシランとアルコキシチタンの総モル数に対して0.1から10倍モル数の範囲内が好ましく、0.2から5倍モル数の範囲内が最も好ましい。酸の量は、例えば、塩酸の場合、アルコキシシランとアルコキシチタンの総モル数に対して好ましくは0.001から0.3倍モル数、さらに好ましくは0.005から0.05倍モル数の範囲内である。ただし、有機溶媒として有機酸を用いる場合、有機溶媒が触媒も兼用しているので特に別な触媒を加える必要はない。また、アルコキシチタンの量は、アルコキシシランのモル数に対し、0.1から30倍モル数の範囲内が好ましく、0.5から20倍モル数の範囲内がさらに好ましく、2から8倍モル数の範囲内が最も好ましい。
得られた紡糸液は、上記各種紡糸法で紡糸化することができる。繊維状のゲルに紡糸化するため、その紡糸液をナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用することが好ましく、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化する方法や回転式静電噴霧法がさらに好ましい。また、ノズルを用いた場合、ディスポーザブルの注射器のノズル状のものを用いることが好ましい。
6−1.チタン酸バリウム−シリカ繊維の製造方法
以下に、例として、チタン酸バリウム−シリカ繊維を製造する方法について説明する。この場合、アルコキシシランとアルコキシチタンと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させて紡糸液を製造するときに、酢酸バリウム等のバリウム塩を、混合液に加え、あるいはゾル製造の縮合重合前または後の液に、あるいはゾル製造の縮合重合中の液に加えて、チタン酸バリウム−シリカ複合繊維用のゾル状紡糸液の製造する。アルコキシチタンとしては、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド等が例示できる。
用いる水の量は、(アルコキシシラン、アルコキシチタンおよびバリウム塩の総モル数)に対し0.1から10倍モル数の範囲内に調整することが好ましい。有機溶媒の量は、(アルコキシシラン、アルコキシチタンおよびバリウム塩の総モル数)に対して0.2から10倍モル数の範囲内が好ましい。酸の量は、例えば塩酸の場合、(アルコキシシラン、アルコキシチタンおよびバリウム塩の総モル数)に対して0.0001から0.1倍モル数の範囲内が好ましい。なお、有機溶媒が有機酸溶媒である場合、有機酸は、触媒もかねるので触媒は加えなくてよい。また、有機溶媒として、有機酸にアルコール類、好ましくは有機酸に対し0.1から2倍モル数の範囲内のアルコール類を加えた混合溶媒を用いてもよい。
また、アルコキシシラン、アルコキシチタンおよびバリウム塩の量については、アルコキシシランの量は、アルコキシチタンとバリウム塩の総モル数に対して、0.1から10倍モル数の範囲内が好ましい。
アルコキシチタンおよびバリウム塩の量については、アルコキシチタンの量は、バリウム塩のモル数に対して、好ましくは0.1から10倍モル数、より好ましくは0.5から2倍モル数、最も好ましくは1倍モル数の範囲内である。
紡糸液は、上記した各種紡糸法で紡糸化することができる。繊維状のゲルに紡糸化するため、その紡糸液をナノファイバー製造で注目されている静電噴霧法を適用することが好ましく、ノズルからゾル溶液を特に押し出すような圧力をかけないで繊維化する方法や回転式静電噴霧法がさらに好ましい。
以下に、本発明を実施例、比較例および参考例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
比較例1
テトラエトキシシランモノマーを原料として用いて、加湿した空気を送り込まないで紡糸液を製造する方法−1
テトラエトキシシラン(TEOS)と水(テトラエトキシシランのモル数に対し1.55倍モル数)とエタノール(テトラエトキシシランのモル数に対し2倍モル数)と塩酸(テトラエトキシシランのモル数に対し0.01倍モル数)の混合液(以下、原料液と記載することもある)を作成し、加湿した空気を送り込むことなく、65℃の水浴中で環流させた。この場合、原料液は、65℃で200時間還流させても粘度の上昇が認められず紡糸液は得られなかった。
比較例2
テトラエトキシシランモノマーを原料として用いて、加湿した空気を送り込まないで紡糸液を製造する試み−2
加湿した空気を送り込むことなく、原料液を65℃で70時間還流させた後、ビーカーに移して大気と接触させながら室温で静置した。ビーカーに移してから約30時間経過した後に粘度の上昇が認められ、混合液が粘性ゾルとなり紡糸液を得た。これは、ビーカーに移して空気と接触させたことにより、混合溶媒中に空気中の水分が溶け込み、その水分によって粘度の上昇がおこったと考えられるが、製造時間が全体としては約100時間で長時間かかった。
実施例1から4および比較例3
テトラエトキシシランモノマーを原料として用いて、加湿した空気を送り込み紡糸液を製造する方法
比較例1に記載の原料液を、加湿した大気と接触させることにより、紡糸液を製造することを試みた。使用した装置の概略を、図1に示す。エアポンプ1からバイアル2へと300mL/minの流速で空気を送り込んだ。バイアル2からフラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒7へ20℃で相対湿度90%の加湿空気を導入する場合(実施例1)には、バイアル2にKCl飽和溶液(臨界湿度90%)を入れ、20℃で相対湿度54%の加湿空気を導入する場合(比較例3)には、バイアル2内にCa(NO)2飽和溶液(臨界湿度54%)を入れた。
フラスコ5は、油浴3中で65℃に加熱され、フラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒すなわち原料液7は、スターラ4によって撹拌した。フラスコ5上部には冷却管6を取り付け、比較例1と同様にエタノールを環流させた。
このような装置で、モル比r、20℃相対湿度等の条件を換えて紡糸液を製造した場合(実施例1から4および比較例3)の結果を表1に示す。ここで、なお、表1でrは、テトラエトキシシランのモル数に対する水の倍モル数である。表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法である実施例1から4の方法により、テトラエトキシシランから紡糸液(500mPa・s)を製造するのに要する時間を1/6から1/20にまで短縮することが可能であった。また、これらにより得た紡糸液は4℃で24時間密封保存すると粘度の上昇は認められず、紡糸液として長時間安定であることが示された。
Figure 2008111609
実施例5
実施例1について、その一部を経時的に抜き取り、粘度を測定すると共に、図2(a)に示すような装置を用いて静電噴霧法によって紡糸化し、シリカ繊維を製造した。この場合、ノズルには特に押し出すための圧力はかけなかった。
この装置は、高圧電源8と、シリンジ9と、針状電極11と、導電性捕集板12とから構成される。そして、高圧電源8及び導電性捕集板12には、アース13が取り付けられている。シリンジ9として、市販されているディスポタイプのプラスチック製注射用シリンジ(10mL、ノズル内径1mm)本体を用いた。シリンジ9は、通常注射針を取り付ける先端部分を下に向けた状態で、スタンドを用いて垂直に固定され、内部に直径1.0mmの針状電極11がセットされている。針状電極11は、高圧電源8に接続されており、紡糸化する際には20kVの高電圧をかけた。シリンジ9の下部には、アースを取り付けた導電性捕集板12(ここでは、ステンレス製の網)をセットし、シリンジ9下端部と導電性捕集板12の距離を、200mmに調整した。
そして、サンプル1の一部(約4mL)を紡糸液10としてシリンジ9の上部開口部から投入し、開口部におしだすための圧力をかけずに直ちに高圧電源8のスイッチをオンにして、シリンジ9から導電性捕集板12に向けて紡糸液10を静電噴霧した。この静電噴霧処理により、紡糸液10中の水、エタノール及び塩酸が揮散し、紡糸液が、微細なシリカ繊維14として紡糸化され、図2(b)に示すように、導電性捕集板12の上にゲル状のシリカ繊維15として集積した。
図5(a)は、紡糸液10の粘度が500mPa・sの場合に製造されたシリカ繊維15の外観写真である。このシリカ繊維15の外観は、通常のグラスウールとほとんど同じであるが、触感はより滑らかで、折り曲げたりしても繊維が切断されにくい。
図5(b)は、このシリカ繊維6の電子顕微鏡写真であり、平均繊維径は4.5μmであることが確認された。特開2003−328236号公報には、合成繊維紡糸用装置を用いて変性ポリカルボシランを繊維化し、1200℃の空気中で1時間焼成することにより得られたシリカ繊維の平均直径が13μmであったこと記載されているが、本発明のシリカ繊維の製造方法は、より繊維径を小さくできることが確認された。また、本発明のシリカ繊維の製造方法は、紡糸液を静電噴霧して紡糸化する際に、溶媒の留去も同時に行われるため、紡糸化操作が非常に容易である。
シリンジから静電噴霧された紡糸液(混合溶媒)は、同じ電荷に帯電しているため、導電性捕集板に到達するまでにシリカ繊維同士が付着合一することがない。そのため、できあがったシリカ繊維の繊維径は、非常に平均化されていた。
また、特開2004−183132号公報の製造方法では、シリカ繊維の繊維径と同程度の微細孔から高圧で紡糸液を押し出す必要があるが、この紡糸液を用いるシリカ繊維の製造方法では、ディスポタイプのプラスチック製注射用シリンジから圧力をかけることなく紡糸液を静電噴霧させるため、微細孔の目詰まりという問題が発生せず、分解洗浄等、製造装置のメインテナンスも非常に容易である。
紡糸液10の粘度が150mPa・sの場合には、平均繊維径3μmの非常に細いシリカ繊維となったが、繊維間に空隙が少なく膜状に近い状態であった。より適切な空隙を有するシリカ繊維とするためには、紡糸液10の粘度を200mPa・s以上とすることが好ましかった。
紡糸液10の粘度が500mPa・sの場合には、平均繊維径4.5μmのシリカ繊維が製造された。この繊維は、図5(a)及び図5(b)に示したシリカ繊維と同様、均質で強度も十分であった。なお、経験上、紡糸液10の粘度は、300mPa・sから800mPa・sとするのが最適であった。また、紡糸液10の粘度が低いほど、シリカ繊維の平均繊維径が小さく、紡糸液10の粘度が高いほど、シリカ繊維の平均繊維径が大きくなる傾向が認められた。
一方、紡糸液10の粘度が920mPa・sの場合には、シリカ繊維がもろくなって、繊維が折れやすい場合もあった。平均繊維径は13μmであった。紡糸液3の粘度が800mPa・sを超えると、繊維が脆性的である場合があるため、適切なフレキシビリティーを有するシリカ繊維とするためには、紡糸液3の粘度を800mPa・s以下とすることが好ましかった。図6に、それぞれ150mPa・s、500mPa・s及び920mPa・sの紡糸液から得たシリカ繊維の外観を示す。
図5(a)及び図5(b)に示したシリカ繊維の比表面積を、BET法により測定した結果、7.7m/gであり、シリカ繊維表面が非多孔質であることが推察された。このように、本発明により製造した紡糸液は、静電噴霧法によって紡糸化することが可能であるが、できあがったシリカ繊維は、比表面積が小さい。
参考例1
実施例5で製造したシリカ繊維の表面を多孔質化することを試みた。多孔質化させる方法として、図5(a)及び図5(b)に示したシリカ繊維を、KCl飽和溶液を入れたシャーレと共にガラス製気密容器内に収納し、60℃の恒温槽内に保管して水蒸気処理した。この場合、シリカ繊維が接触するガラス製気密容器内の空気の相対湿度は、約90%となる。
4日後(96時間後)、シリカ繊維を取り出し、BET法により比表面積を測定した。その結果、当初7.7m/gであった比表面積が、184.7m/gとなり、シリカゲルのように多孔質化したと考えられる。
参考例2
次に、参考例2として、参考例1と同じシリカ繊維を精製水中に浸し、参考例1よりも短時間で多孔質化させることを試みた。
まず、参考例1と同じシリカ繊維を室温の精製水中に3日間浸した後、精製水から取り出し、付着した水分を取り除いて風燥させた後、BET法により比表面積を測定したところ、65.9m/gであった。次に、60℃の精製水中に3日間浸したシリカ繊維、及び沸騰精製中に5分間浸したシリカ繊維について、同様に比表面積を測定すると、それぞれ403.5m/g及び494.4m/gであった。
本参考例におけるシリカ繊維の多孔質化の原理は、参考例1と同じと推察されるが、加熱した精製水中に浸すことによって、シリカ繊維表面の比表面積を400m/g以上にまで増大させることができた。特に、沸騰精製水中にシリカ繊維を浸す場合には、5分間という短時間の処理によって、シリカ繊維表面の多孔質化が達成できた。
このように、このようにして製造したシリカ繊維は、平均繊維径が小さく、表面も滑らかであり、変形容易で加工性にも富むが、水蒸気処理、水中で加熱処理、または100℃以上の加熱水蒸気処理するこという簡易な処理によって、元の物性を損なうことなく比表面積を増大させ、さらに多孔質シリカ繊維とすることが可能である。この多孔質シリカ繊維は、通常のシリカゲル同様、化学物質等を吸着することができるため、繊維状吸着剤としても用いることが可能である。
参考例3
参考例1で得られたシリカ繊維を800℃で24時間加熱焼成して、アルコキシ基を完全に加水分解してシリカガラスの繊維を得た。この繊維は、Na、K、Fe、Al、Ca、Mg、Ti、Znは0.1ppm以下、Ni、Cr、Cu、Pbは0.01ppm以下であり、シリコン以外のいずれの金属イオンも検出されず、シリコン以外の金属含有量が1ppm以下であった。また、平均繊維径は、焼成前とかわらず、2.5から15μm、さらに好ましくは2.8から12μm、好ましくは3.2から10μmの範囲の平均繊維径を有するものを製造することができた。しかも、繊維径は非常に平均化されており、20μmの繊維径を有するものは確認できなかった。
実施例6から8
テトラエトキシシランモノマーを原料として用いたチタニア−シリカ複合繊維の製造
テトラエトキシシランとチタンテトライソプロポキシド(TTIP)と水とエタノール(テトラエトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計モル数に対し2倍モル数)と塩酸(テトラエトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計モル数に対し0.01倍モル数)を用いて、実施例1と同様な装置を用い(20℃換算で相対湿度90%の空気雰囲気下で室温にて反応)で紡糸液(500mPa・s)を製造した。TEOSが存在した場合(実施例6から8)、紡糸液を4から6時間で製造でき、紡糸液の保存安定性が良好であった。
一方、TEOSがなくTTIP単独では、室温で2.5時間で紡糸液を得た。次いで、これらを実施例5に示した静電噴霧法により紡糸化した。その結果を表2に示す。
Figure 2008111609
実施例6から8の紡糸液により製造されたチタニア−シリカ複合繊維は、比較例4とは異なり、触感に優れ、強度も問題ない繊維が得られた。
実施例6から8由来のチタニア−シリカ複合繊維は、比較例4のチタニア不織布とは異なり、繊維の細断は認められず、また、繊維径にも特にバラツキは認められなかった。また、平均繊維径は、それぞれ12.5μm、8.5μm及び4.3μmであり、TTIP配合比が高いサンプルほど、平均繊維径が小さくなる傾向が認められた。
なお、いずれのサンプルを用いて静電噴霧法によりチタニア−シリカ複合繊維を製造する場合にも、紡糸液10の粘度を、200mPa・sから800mPa・sの範囲とすることが好ましかった。200mPa・s未満では空隙の少ない膜に近い不織布であり、一方、800mPa・sを超えると脆性的になる場合もある。また、紡糸液の粘度が低いほど、チタニア−シリカ複合繊維不織布の平均繊維径が小さく、紡糸液の粘度が高いほど、チタニア−シリカ複合繊維不織布の平均繊維径が大きくなる傾向が認められた。
このように、TTIPにTEOSを紡糸助剤として添加し、水−エタノール混合溶媒に溶解させることにより、TTIPとTEOSの共重合ポリマーが形成され、これを静電噴霧することにより、チタニア−シリカ複合繊維を製造することができた。
本実施例のチタニア−シリカ複合繊維の製造方法によれば、ディスポタイプのプラスチック製注射用シリンジから圧力をかけることなく紡糸液を静電噴霧させるため、微細孔の目詰まりという問題が発生せず、分解洗浄等、製造装置のメインテナンスも非常に容易である。
光触媒作用を発揮するのはアナターゼ型のチタニアであるが、実施例6から8の紡糸液から製造されたチタニア−シリカ複合繊維をX線解析したところ、比較例4のチタニア不織布と同様、非晶質であった。そこで、実施例6から8の紡糸液から製造したチタニア−シリカ複合繊維を焼成し、チタニアの結晶構造をアナターゼ型に変換することを試みた。
チタニアの焼成は、一般的には300℃から600℃で、1から5時間、加熱することにより行うことができるが、ここでは、500℃で2時間加熱することにより、チタニア−シリカ複合繊維不織布の焼成を行った。
実施例7及び8由来の焼成チタニア−シリカ複合繊維には、チタニアがアナターゼ型に変換されたことが確認できた。一方、実施例6由来の焼成チタニア−シリカ複合繊維不織布には、このようなピークが認められず、チタニアが非晶質のままであることが確認された。
次に、実施例6から8由来のチタニア−シリカ複合繊維不織布及び焼成チタニア−シリカ複合繊維不織布の比表面積をBET法により測定した。その結果を、表3に示す。
Figure 2008111609
表3の結果から分かるように、焼成を行う前のチタニア−シリカ複合繊維不織布の状態では、いずれのサンプルも比表面積は2m/g以下であり、比表面積が小さかった。しかし、チタニアが非晶質からアナターゼ型に変換された実施例7および8由来の焼成チタニア−シリカ複合繊維不織布は、500℃で2時間加熱して焼成することにより、比表面積が増大した。市販されているアナターゼ型酸化チタン粉末(比表面積相当径218nm)の比表面積を同様に測定した結果、7.29m/gであったが、実施例7及び8由来の焼成チタニア−シリカ複合繊維は、このアナターゼ型酸化チタン粉末よりも数倍以上、比表面積が大きかった。
一方、実施例6由来の繊維については、焼成することにより、比表面積が1m/g未満となった。
このように、チタニア−シリカ複合繊維不織布を焼成して光触媒機能を有する焼成チタニア−シリカ複合繊維不織布とする場合、焼成後の複合不織布のチタニアをアナターゼ型に変換し、かつ、比表面積を焼成前より大きくするためには、静電噴霧法により紡糸化する紡糸液中のTTIPとTEOSのモル比を特定範囲に調整することが好ましいことが判明した。実施例6から8以外の紡糸液についても、複合不織布を製造し、焼成前後で比表面積を比較した結果、TTIPのモル数は、TEOSのモル数に対し、2から8倍モル数の範囲内で水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させるのが好ましいことが判明した。
また、混合溶媒中の水の量は、TTIPとTEOSの合計モル数に対して、0.5倍から2倍モル数の範囲内とすることが好ましいことも判明した。
なお、500℃で2時間加熱して焼成しても、チタニア−シリカ複合繊維の触感及び強度は、何ら変化しなかった。
また、実施例8由来の紡糸液から製造した焼成チタニア−シリカ繊維は、色素分解試験(ローダミン試験)により実際に光触媒機能が有していることが確認された。
実施例9
テトラエトキシシランモノマーを原料として用いたチタン酸バリウム−シリカ複合繊維
酢酸(0.21モル)、酢酸バリウム(0.02モル)、エタノール(0.1モル)、テトラエトキシシラン(0.0067モル)、水(0.03モル)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP、0.02モル)を含む混合液を、実施例1の加湿装置を用いて20℃で換算で相対湿度90%の空気の雰囲気下で室温にて反応させたところ、約13時間で紡糸可能な粘度(1000mPa・s)になり、実施例9の紡糸液を得た。チタン酸バリウム−シリカ繊維製造の場合、紡糸可能な紡糸液の好ましい粘度は、850から1150mPa・sの範囲内であった。850mPa・s未満では粘度が低すぎ紡糸しにくい場合もあり、1150mPa・sを超えるとゲル化が進みすぎ紡糸しにくい場合もあった。一方、実施例9において、テトラエトキシシランを除いた以外は同様に操作したところ、約10時間で紡糸可能な粘度(1000mPa・s)になり、比較例5の紡糸液を得た。
実施例9および比較例5の紡糸液を実施例5に記載の静電噴霧法により繊維化してシリカ−チタン酸バリウムの複合繊維(実施例10)及びチタン酸バリウム繊維(比較例6)を得た。比較例5由来の繊維は、実施例9由来の繊維(実施例10)に比べて脆性的であった。実施例9由来の繊維は、TEOSを加えることで繊維に柔軟性が与えられ、脆性が著しく改善されていた。この繊維は、SEM画像により平均繊維径は約5μmであった。
得られた実施例9由来の繊維を空気中1100℃の条件下で2時間焼成した後、自動X線回折装置によりXDRパターンを測定したところ、その繊維のピークとチタン酸バリウムのピークが一致しているので、得られた繊維はチタン酸バリウム−シリカ複合繊維であることが確認された。
実施例10および11
原料としてアルコキシシランモノマーを用いたシリカ繊維の製造
テトラエトキシシラン(TEOS)を原料とし、水(TEOSに対し1.57倍のモル量)と塩酸(TEOSに対し0.01倍のモル量)とアルコール(TEOSに対し0.65倍のモル量)とを含む混合液を、加湿した大気と接触させることにより、紡糸液を得て静電噴霧法によりシリカ繊維を製造することを試みた。使用した装置の概略を、図1に示す。エアポンプ1からバイアル2へと300mL/minの流速で空気を送り込んだ。バイアル2からフラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒7へ20℃で相対湿度90%の加湿空気を導入する場合(実施例10)には、バイアル2にKCl飽和溶液(臨界湿度90%)を入れ、20℃で相対湿度54%の加湿空気を導入する場合(実施例11)には、バイアル2内にCa(NO飽和溶液(臨界湿度54%)を入れた。
フラスコ5は、油浴3中で65℃に加熱され、フラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒すなわち原料液7は、スターラ4によって撹拌した。フラスコ5上部には冷却管6を取り付け、エタノールを環流させた。
このような装置で、20℃換算相対湿度90%の条件で紡糸液を製造した。この場合、テトラエトキシシランから紡糸液(500mPa・s)を製造するのに要する時間を従来の1/6から1/20にまで短縮することが可能であったが12時間かかった。なお、相対湿度54%では、24時間かかっても紡糸液はできなかった。
その紡糸液の一部を抜き取り、粘度を測定すると共に、図2(a)に示すような装置を用いて静電噴霧法によって紡糸化し、シリカ繊維を製造した。この場合、ノズルには特に押し出すための圧力はかけていない。
サンプル1の一部(約4mL)を紡糸液10としてシリンジ9の上部開口部から投入し、開口部におしだすための圧力をかけずに直ちに高圧電源8のスイッチをオンにして、シリンジ9から導電性捕集板12に向けて紡糸液10を静電噴霧した。この静電噴霧処理により、紡糸液10中の水、エタノール及び塩酸が揮散し、テトラエトキシシランの重合体が、微細なシリカ繊維14として紡糸化され、図2(b)に示すように、導電性捕集板12の上にゾル状のシリカ繊維15として集積した。
このシリカ繊維15の外観は、通常のグラスウールとほとんど同じであるが、触感はより滑らかで、折り曲げたりしても繊維が切断されにくい。平均繊維径は4.5μmであることが確認された。
実施例12
原料として平均重合度10のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体を用いたシリカ繊維の製造
原料としてのテトラエトキシシランの縮重合体は、平均重合度10のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体(コルコート社製エチルシリケート48)を用いた。この縮重合体を原料とし、水(テトラエトキシシランの縮重合体中のシリコン原子の総モル数に対し1.57倍モル数)と塩酸(テトラエトキシシランの縮重合体中のシリコン原子の総モル数に対し0.01倍モル数)とアルコール(テトラエトキシシランの縮重合体中のシリコン原子の総モル数に対し0.65倍モル数)とを含む混合液を、加湿した大気と接触させることにより、紡糸液を得て静電噴霧法によりシリカ繊維を製造することを試みた。使用した装置は比較例1および2と同様にエアポンプ1からバイアル2へと300mL/minの流速で20℃で相対湿度90%の加湿空気を導入した。反応は、反応温度23℃で攪拌しながら行った。反応開始直後は、白濁であったが、約20分経過した時点で透明な均一となった。3時間30分後、粘度が500mPa・sになり紡糸可能となり、ゾル状の紡糸液を得た。これを比較例1および2に記載した静電噴霧法と同様にして紡糸して平均繊維径4.5μmのシリカ繊維をゲル状で得た。
実施例13
原料として平均重合度5のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体を用いたシリカ繊維の製造
原料として平均重合度5のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体(コルコート社製エチルシリケート40)を用い、反応温度23℃で8時間反応した以外は、実施例10と同様に操作して紡糸液を得、さらにその紡糸液を紡糸したところ平均繊維径4.5μmのシリカ繊維をゲル状で得た。
実施例14
原料として平均重合度3のテトラメトキシシランの直鎖状縮重合体を用いたシリカ繊維の製造
テトラメトキシシラン100部に溶媒としてメタノール12部および0.01%の硫酸触媒を加え、水8.9重量部を滴下添加してさらに1時間攪拌した。アルコール類を留去した後、得られた液体をイオン交換樹脂層を通して脱酸することにより、平均重合度3のテトラメトキシシランの直鎖状縮重合体を得た。
この縮重合体を用い、反応温度23℃で12時間反応した以外は、実施例10および2と同様に操作して紡糸液を得、さらにその紡糸液を紡糸したところ平均繊維径4.5μmのシリカ繊維をゲル状で得た。
実施例15
原料として平均重合度5のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体を用いたシリカ繊維の製造
原料として平均重合度5のテトラエトキシシランの直鎖状縮重合体(コルコート社製エチルシリケート40)を用い、反応温度23℃で8時間反応した以外は、実施例10と同様に操作して紡糸液を得、さらにその紡糸液を紡糸したところ平均繊維径4.5μmのシリカ繊維をゲル状で得た。
実施例16
原料として平均重合度3のテトラメトキシシランの直鎖状縮重合体を用いたシリカ繊維の製造
テトラメトキシシラン100部に溶媒としてメタノール12部および0.01%の硫酸触媒を加え、水8.9重量部を滴下添加してさらに1時間攪拌した。アルコール類を留去した後、得られた液体をイオン交換樹脂層を通して脱酸することにより、平均重合度3のテトラメトキシシランの直鎖状縮重合体を得た。
この縮重合体を用い、反応温度23℃で12時間反応した以外は、実施例15と同様に操作して紡糸液を得、さらにその紡糸液を紡糸したところ平均繊維径4.5μmのシリカ繊維をゲル状で得た。
参考例4
原料としてアルコキシモノマーまたはアルコキシシランの縮重合体を用いて製造したシリカ繊維不織布の圧縮強度の比較
実施例10(原料としてアルコキシモノマー使用)、実施例12〜14および実施例15(原料としてアルコキシシランの縮合体使用)のシリカ繊維を各5gを量り取り、1辺が10cmの正方形をした型に充填して成型しシリカ繊維不織布を得た。型から取り外し、大きく形が変わらないよう整えた後、1辺が10cmの合板を上に乗せ、4角の床面と合板との間隔を計測し、初期厚さとした。その後、合板上に分銅40gを乗せ、同様の方法で荷重厚さを計測し、変位量を求めて圧縮強度の尺度とした。その結果、原料がアルコキシシランモノマーのシリカ繊維不織布の場合(実施例10)変位量が5mmであったが、原料がアルコキシシランの縮重合体のシリカ繊維不織布の場合(実施例12等)、シリカ繊維不織布の変位量はほとんど認められず圧縮強度が非常に改善された。
アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させて製造する、本発明の製造方法により、製造時間が短く、かつ、紡糸液から紡糸しにくいゲルになりにくく、しかも、簡単に紡糸可能なシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液を製造することができる。このような製造方法により、シリコン以外の金属含有量が低く、平均繊維径が小さいなどの種々の利点を有するゲル状のシリカ繊維を得ることができる。
また、アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造するときに、アルコキシシラン以外にアルコキシチタンやアルコキシジルコニアなどの金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に酢酸バリウムなどの、その混合液またはその液に溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に酢酸バリウムなどの該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、この紡糸液を紡糸することにより、シリカ−金属複合繊維を製造することができ、この方法でも同様に、製造時間が短く、かつ、紡糸液から紡糸しにくいゲルになりにくく、しかも、簡単に紡糸可能なシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液を製造することが可能である。
また、アルコキシシランの縮重合体を原料とするゾル状紡糸液を製造する本発明の製造方法により、シリカ繊維を製造するための紡糸液の製造がしやすくなり、かつ、扱いやすくなった。その紡糸液からシリカ繊維を簡単に製造することができ、また得られるシリカ繊維の機械的強度も優れている。同様に、本発明の製造方法により、シリカ−チタニア繊維、チタン酸バリウム−シリカ繊維などのシリカ−金属複合繊維を簡単にかつ短時間に製造することができる。
実施例1から16において使用した紡糸液の製造装置の概略図である。 本発明のシリカ繊維の製造に用いた静電噴霧装置の概略構成図であり、図2(a)は静電噴射前、図2(b)は静電噴射中の状態を示す図である。 シリカ繊維の製造に用いられる静電噴霧装置の概略図である。 シリカ繊維の製造に用いられる静電噴霧装置の概略図である。 実施例1のシリカ繊維の写真であり、図5(a)はシリカ繊維全体の外観写真、図5(b)はシリカ繊維の電子顕微鏡写真である。 実施例1のシリカ繊維の外観写真であり、図6(a)、図6(b)及び図6(c)は、混合溶媒の粘度が、それぞれ150mPa・s、500mPa・s及び920mPa・sの場合のシリカ繊維の外観を示す。
符号の説明
1 エアポンプ
2 バイアル
3 油浴
4 スターラ
5 フラスコ
6 冷却管
7 テトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒
8 高圧電源
9 シリンジ
10 紡糸液
11 針状電極
12 導電性捕集板
13 アース
14 シリカ繊維
15 シリカ繊維
16 容器
17 ゾル状紡糸液
18 回転式の電荷付与電極
19 ゾル状紡糸液
20 対向電極
21 紡糸表面
22 ゾル状紡糸液
23 シート
24 ベルトコンベア

Claims (28)

  1. シリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法であって、
    1)アルコキシシランの縮重合体を原料とし、その縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させる工程、あるいは、
    2)アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させる工程、
    を含むシリカ繊維製造用のゾル状紡糸液の製造方法。
  2. 工程1)における、アルコキシシランの縮重合体が、酸が除去された縮重合体である請求項1記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  3. 工程1)における、粘性ゾル化させるときの条件が加湿した状態で粘性ゾル化させる請求項1または2記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  4. 工程1)における、粘性ゾル化させるときの条件が、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応液の温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で粘性ゾル化させる請求項3に記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  5. 工程1)において、混合液における水の量が、アルコキシシランの縮重合体に含まれるシリコン原子のモル数に対して0.8から2.0倍モル数である請求項1から4のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  6. 工程2)において、混合溶媒における水の量が、アルコキシシランのモル数に対して1.0倍モル数から2.0倍モル数の範囲内である請求項1に記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  7. 工程1)および2)における、アルコキシシランがテトラエトキシシランであり、有機溶媒がエタノールである請求項1から6のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  8. 工程1)および2)における、触媒が塩酸である請求項1から7のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  9. 工程1)および2)において、得られるゾル状紡糸液の粘度を200から800mPa・sの範囲内に調整する請求項1から8のいずれかに記載のゾル状紡糸液の製造方法。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の製造方法で得られるゾル状紡糸液を静電噴霧法により紡糸化する工程を含む、シリカ繊維の製造方法。
  11. 加圧することなく静電噴霧法により紡糸化する請求項10に記載のシリカ繊維の製造方法。
  12. 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、回転体表面にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着した回転体表面と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、回転体表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、請求項11に記載のシリカ繊維の製造方法。
  13. ゾル状紡糸液を回転式の電荷付与電極の表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転している電荷付与電極上の表面であって対向電極に近付いた表面上に紡糸表面が発生し、その紡糸表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液を紡糸化する、請求項12に記載のシリカ繊維の製造方法。
  14. 対向電極の表面上を動くシートが設けられており、そのシートの表面上に紡糸化されたシリカ繊維の膜、シートまたは、不織布が形成されるようして、シリカ繊維を製造する請求項13に記載のシリカ繊維の製造方法。
  15. 回転式の電荷付与電極から対向電極に向かって空気が流れるようにして、回転式の電荷付与電極表面から対向電極に向かってゾル状紡糸液が紡糸されるのを促進し、紡糸されたシリカ繊維を乾燥する、請求項13または14に記載のシリカ繊維の製造方法。
  16. 回転式の電荷付与電極と対向電極の距離が、1cmから100cmであり、電界強度が0.1kV/cmから25kV/cmで印加する、請求項13から15のいずれかに記載のシリカ繊維の製造方法。
  17. 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起をその表面に設けた回転体を浸漬させて、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着したスパッター電極、スパッター金属シートまたは突起と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、請求項12に記載のシリカ繊維の製造方法。
  18. シリコン以外の金属含有量が1ppm以下であり、かつ、構成成分としてシリコン原子と、その原子に結合しているアルコシ基と酸素原子からなり、かつ、平均繊維径2.5から15μmの範囲内であるゲル状のシリカ繊維。
  19. 請求項10から17のいずれかに記載の製造方法により得られる、ゾル状紡糸液を紡糸することより得られる請求項18に記載のゲル状のシリカ繊維。
  20. アルコキシシランの縮重合体と水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を粘性ゾル化させて紡糸液を製造するときに、アルコキシシランの縮重合体以外に、加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、その混合液またはゾルに溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、粘性ゾル化前後または粘性ゾル化中に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、このゾル状紡糸液を紡糸すること含む、シリカ−金属複合繊維を製造するシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  21. アルコキシシランと水と触媒と有機溶媒とを含む混合液を、20℃以上で反応する場合は、20℃換算で相対湿度60%以上、20℃未満で反応する場合は、その反応温度の相対湿度の60%以上の雰囲気下で縮合重合させてゾル状紡糸液を製造するときに、アルコキシシラン以外に加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物を混合液に加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、更に混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、その混合液または液に溶解可能な金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造し、あるいは、該金属化合物を混合液に加えることなく、混合液、縮合重合前後の液または縮合重合中の液に、該金属物質を加えてゾル状紡糸液を製造して、この紡糸液を紡糸することにより、シリカ−金属複合繊維を製造することを含むシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  22. 加水分解により脱水してゲルを生じる金属化合物がアルコキシチタンまたはアルコキシジルコニアである請求項20または21に記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  23. 金属物質がバリウム塩である請求項20から22のいずれかに記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  24. 静電噴霧法により紡糸する請求項21から23のいずれかに記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  25. 加圧することなく静電噴霧法により紡糸化する請求項24に記載のシリカ−金属複合繊維の製造方法。
  26. 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に回転体を浸漬させて、回転体表面にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着した回転体表面と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、回転体表面に付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、請求項25に記載のシリカ繊維の製造方法。
  27. ゾル状紡糸液を回転式の電荷付与電極の表面にゾル状紡糸液を付着させ、回転している電荷付与電極上の表面であって対向電極に近付いた表面上に紡糸表面が発生し、その紡糸表面から対抗電極に向かってゾル状紡糸液を紡糸化する、請求項26に記載のシリカ繊維の製造方法。
  28. 加圧することなく静電噴霧法による紡糸化が、容器中のゾル状紡糸液に、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起をその表面に設けた回転体を浸漬させて、スパッター電極、スパッター金属シートまたは突起にゾル状紡糸液を付着させ、ゾル状紡糸液が付着したスパッター電極、スパッター金属シートまたは突起と対向電極の間の電位差によって形成された電界中で、付着したゾル状紡糸液が対向電極に向かって紡糸化される、請求項25に記載のシリカ繊維の製造方法。
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