JP2007063683A - 静電噴霧法を用いて紡糸化したシリカ不織布及びその製造方法 - Google Patents

静電噴霧法を用いて紡糸化したシリカ不織布及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 小型で簡便な装置で容易に製造可能なシリカ不織布及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、大気と接触させながらゾル状の紡績液とし、粘度を調整した紡績液を、静電噴霧法により紡糸化してシリカ不織布とする。紡績液の粘度を調整することにより、シリカ繊維の繊維径を調製することが可能であり、さらに、水蒸気処理又は熱水処理を行うことにより、多孔質シリカ不織布とすることが可能である。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、ゾル状の紡糸液とした後、静電噴霧法を用いて紡糸化されたことを特徴とするシリカ不織布、及び該シリカ不織布の製造方法に関するものである。
無機ケイ酸化合物は、ガラス、セメント、陶磁器等の原材料として古くから使用されている。一般に、無機ケイ酸化合物は化学的に安定しており、耐熱性及び耐薬品性にも優れている。また、多孔質であるため化学物質等を吸着することができるもの、触媒機能を有するために化学物質等を分解できるもの、無害で生体適合性が高いもの等、様々な機能性を備えた無機ケイ酸化合物も存在する。
しかし、無機ケイ酸化合物の多くは粉末状であるため、そのままでは取り扱いが難しく、用途も限定されるため、商品として展開しにくい。一方、無機ケイ酸化合物を不織布として繊維状に形成すれば、容易に切断したり、曲げたり、容器に詰めたりできるため、広範囲の用途へ応用することが可能になる。
無機ケイ酸化合物を繊維状に形成する場合、一般的には2000℃以上の高温で熔融し、その熔融液を流出させることによって繊維化するが、この製造方法では繊維径を小さくすることが極めて困難であり、また、原料である無機ケイ酸化合物を熔融するために多大なエネルギーを必要とする。さらに、高温の熔融液を取り扱うため、製造装置が大がかりなものとならざるを得ず、作業の安全性に関しても問題がある。
一方、アルコキシシランには、有機溶媒に溶かした状態で重合化させることによりゾル状となるものがあり、微細孔から押し出して繊維状に形成することも可能である。例えば、特許文献1には、変性ポリカルボシランと低分子量の有機金属化合物をトルエンに溶解させて紡糸原液とした後、合成繊維紡糸用装置を用いて繊維状に形成する方法が開示されている。
特開2003−328236号公報
上記特許文献に開示されているシリカ繊維の製造方法は、非常に微細な細孔から高圧で紡糸原液を押し出す必要があり、装置を小型化することは困難である。また、平均繊維径を小さくするためには、細孔をさらに小さくしなければならず、より高圧で紡糸原液を押し出す必要がある。さらに、細孔を小さくすればするほど、目詰まりも生じやすくなり、装置のメインテナンスも困難になる。
本発明は、小型で簡便な装置でも製造可能なシリカ不織布及びその製造方法を提供する
ことを目的とする。
アルコキシシランは、有機溶媒に溶解した状態で水と反応すると、加水分解反応と縮合反応を起こして粘性ゾルとなり、さらに縮合反応が進むと湿潤ゲル体となる。こうした現象は、ゾル−ゲル反応と呼ばれている。
一方、試料溶液を供給するキャピラリー先端に数kVの高電圧を印加することにより 試料溶液を微細な液滴として霧化させることが可能である。この技術は静電噴霧(electrospray)と呼ばれ、薄膜や微粒子の製造に応用されてきた。
本発明者は、鋭意研究した結果、アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させて紡績液とし、この紡績液を静電噴霧することにより、シリカを容易に繊維化し、シリカ不織布を製造しうることを見出し、本発明を完成されるに至った。
具体的に、本発明は、アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、大気と接触させることによりゾル状の紡績液を調製し、該紡績液を静電噴霧法により紡糸化して製造されるシリカ不織布に関する(請求項1)。
また、本発明は、
アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、大気と接触させながらゾル状の紡績液とするゾル化工程と、
前記粘度調整後の紡績液を、静電噴霧法により紡糸化する紡糸化工程と、
を含むシリカ不織布の製造方法に関する(請求項6)。
前記アルコキシシランはテトラエトキシシランであり、前記有機溶媒はエタノールであることが好ましい(請求項2,7)。
本発明のシリカ不織布の平均繊維径は、10μm以下であることが好ましい(請求項3)。
本発明のシリカ不織布の製造方法において、前記混合溶媒における水の量は、アルコキシシランのモル数に対して1倍以上2倍以下であることが好ましい(請求項8)。
前記ゾル化工程において、前記紡績液の粘度を200 mPa・s以上800 mPa・s以下の範囲内に調整することが好ましい(請求項9)。
前記ゾル化工程において、前記混合溶媒に塩酸を加えることが好ましい(請求項10)。
前記ゾル化工程において、加湿した大気と接触させながら撹拌することが好ましい(請求項11)。
本発明のシリカ不織布は、水蒸気処理又は水中で加熱処理することにより比表面積が増大し、多孔質シリカ不織布となる(請求項4,12)。
本発明の多孔質シリカ不織布は、比表面積が400 m/g以上であることが好ましい(請求項5,13)。
本発明のシリカ不織布は、従来にない微細な繊維径のシリカ不織布である。また、用途に応じて容易に比表面積を増大させ、多孔質シリカ不織布とすることも可能である。
また、本発明のシリカ不織布の製造方法は、合成繊維紡糸用装置のような大がかりな装置を用いることなく、実験室レベルの小型、かつ、簡易な装置で実施することが可能である。
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
はじめに、アルコキシシランの一例として、テトラエトキシシランを水とエタノールの混合溶媒に溶解させた場合に起こる加水分解反応及び重縮合反応を、図1を参照しながら説明する。なお、加水分解反応及び重縮合反応を促進するために、水とエタノールの混合溶媒に塩酸を添加することが好ましい。塩酸の添加量は、テトラエトキシシランのモル数の1%程度が適量である。
テトラエトキシシランを水とエタノールの混合溶媒に溶解させ(図1(1))、室温以上80℃以下で撹拌すると、テトラエトキシシランの4個の−OC基のうちの1個がHを触媒として加水分解され−OH基となり、トリエトキシシランに変化する(加水分解反応)。
次に、トリエトキシシラン2分子がHを触媒として脱水縮合する(重縮合反応)。さらに、脱水縮合分子の1個の−OC基も加水分解されて−OH基となり、他の脱水縮合分子の−OH基との間で脱水縮合が繰り返される。この加水分解反応及び重縮合反応によって、分子同士が直線的に重合し、ポリマー化する。それに伴い、混合溶媒の粘度が上昇し、ゾル状となる(図1(2))。
このとき、混合溶媒中の水の量が少なすぎると、テトラエトキシシランのポリマー化が途中で止まってしまう。逆に多すぎると、テトラエトキシシランの複数の−OC基が同時に加水分解されため、複数の−OH基が他の脱水縮合分子の−OH基とランダムに脱水縮合する。そうすると、網目状にポリマー化が起こり、混合溶媒中でポリマーが湿潤ゲル体(図1(3)と同じ状態)となって紡績液を調製することができなくなる。
混合溶媒中でテトラエトキシシランが直線的に重合してポリマー化すると、上述したように混合溶媒の粘度が上昇する。後述するように、静電噴霧法によって混合溶媒(紡績液)を不織布化するためには、粘度を200 mPa・s以上800 mPa・s以下の範囲内に調整することが好ましい。それ以上重合化が進むと、直線的に重合したポリマー分子の側鎖の−OC基も加水分解されて−OH基となり、他のポリマー分子等の−OH基との間で脱水縮合を生じ、湿潤ゲル体(図1(3))となって繊維化することが不可能となる。
<実験例1>
テトラエトキシシランを、水とエタノールの混合溶媒に溶解させ、65℃の水浴中でエタノールを環流させた。混合溶媒は、水とテトラエトキシシランのモル比(r=[H2O]/[TEOS])が2.7及び1.55の2種類作成した。なお、テトラエトキシシランのモル数に対して1%量の塩酸を触媒として、両方の混合溶媒に添加した。混合溶媒の粘度を経時的に測定した結果を、図2に示す。
まず、r=1.55の混合溶媒の場合、65℃で200時間還流させても粘度の上昇、すなわちテトラエトキシシランの直線的ポリマー化が認められなかった(丸印のプロット)。これは、r=1.55ではテトラエトキシシランの加水分解反応及び重合化に必要な水が不足していることが原因と思われる。
次に、同じr=1.55の混合溶媒を、65℃で70時間還流させた後、ビーカーに移して大気と接触させながら室温で静置したところ、ビーカーに移してから約30時間経過した後(反応時間全体としては約100時間経過後)に粘度の上昇が認められ、混合溶媒がゾル状となった。これは、ビーカーに移して空気と接触させたことにより、混合溶媒中に空気中の水分が溶け込み、その水分によってテトラエトキシシランの直線的ポリマー化が起こったものと推測された。
次に、r=2.7の混合溶媒の場合、65℃で約20時間還流させると粘度の上昇が認められた。しかし、この混合溶媒は、水の量が多すぎるためにテトラエトキシシランの網目状ポリマー化が起こり、ゾル状ではなくゲル状となって後述する静電噴霧法により不織布を製造することができなかった。
このように、テトラエトキシシランを溶解させる水とエタノールの混合溶媒において、水の量を適正範囲に調整することにより、直線的ポリマー化を起こすことが重要である。具体的には、混合溶媒における水とテトラエトキシシランのモル比は、1以上2以下にすることが好ましい。1未満では大気と接触させても、テトラエトキシシランの直線的ポリマー化に非常に長時間を要し、2を超えるとテトラエトキシシランの網目状ポリマー化が起こりやすくなるため、静電噴霧法を用いて混合溶媒(紡績液)を紡糸化できないからである。
<実験例2>
実験例1では、テトラエトキシシランを混合溶媒中で直線的にポリマー化するために、100時間以上かかった。そこで、テトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒を、加湿した大気と接触させることにより、テトラエトキシシランの直線的重合化に必要な水を混合溶媒へと供給し、直線的重合化にかかる時間の短縮を試みた。
本実験例で使用した装置の概略を、図3に示す。エアポンプ1からバイアル2へと300 mL/minの流速で空気を送り込んだ。バイアル2からフラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒7へ相対湿度90%の加湿空気を導入する場合には、バイアル2にKCl飽和溶液(臨界湿度90%)を入れ、相対湿度54%の加湿空気を導入する場合には、バイアル2内にCa(NO)飽和溶液(臨界湿度54%)を入れた。
フラスコ5は、油浴3中で65℃に加熱され、フラスコ5内のテトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒7は、スターラ4によって撹拌した。フラスコ5上部には冷却管6を取り付け、実験例1と同様にエタノールを環流させた。
本実験例では、表1に示す条件で混合溶液を調製及び処理し、各サンプルの粘度を経時的に測定した。その結果を、図4に示す。なお、テトラエトキシシランのモル数に対して1%量の塩酸を触媒として、全ての混合溶液に添加した。また、表1のr値は、水とテトラエトキシシランのモル比(r=[H2O]/[TEOS])を意味する。
サンプル1は、約12時間で粘度の上昇が認められた。r=1.7であるサンプル2は、サンプル1の約半分の反応時間で粘度の上昇が認められ、ゾル状の紡績液となった。実験例1もr=1.55であったが、65℃に加熱しながら相対湿度90%に加湿した空気と接触させることにより、テトラエトキシシランの直線的重合化に要する時間を1/10〜1/20にまで短縮することが可能であった。
サンプル3は、r値がサンプル2と同じであるが、接触させた空気の相対湿度が54%であったため、サンプル2よりも粘度の上昇が認められるまでの反応時間が長くなった。また、r値が同じで加湿した空気と接触させなかったサンプル4は、20時間経過後も全く粘度の上昇が認められなかった。このことから、実験例1における、混合溶媒中に空気中の水分が溶け込み、その水分によってテトラエトキシシランの直線的ポリマー化が起こるという推測が正しいことが証明された。
一方、r=4.0のサンプル5は、サンプル2とほぼ同じ反応時間で粘度の上昇が認められたが、すぐにゲル化してしまい、静電噴霧法により紡糸化することができなかった。
なお、油浴の温度を50℃、70℃及び85℃として上記と同じ実験を行ったが、65℃の場合と同様の結果が得られたが、加熱温度が高いほど粘度の上昇が認められるまでの反応時間が、若干短くなる傾向が認められた。なお、混合溶媒7のゾル化に要する時間を短縮させるためには、50℃以上85℃以下の温度で加熱することが好ましい。
このように、テトラエトキシシランを水とエタノールの混合溶媒に溶解させ、静電噴霧法によりシリカ不織布として紡糸化させるためには、混合溶媒における水とテトラエトキシシランのモル比を1以上2以下に調整した上で、混合溶媒を加熱しながら加湿した大気と接触させることが好ましいことが判明した。このような方法によれば、テトラエトキシシランの直線的ポリマー化を短時間で行うことができ、かつ、粘度の容易に調整することができるからである。
(実施例1)
ここで、実験例2のサンプル1について、その一部を経時的に抜き取り、粘度を測定すると共に、図5(a)に示すような装置を用いて静電噴霧法によって紡糸化し、シリカ不織布を製造した。
この装置は、高圧電源8と、シリンジ9と、針状電極11と、導電性捕集板12とから構成される。そして、高圧電源8及び導電性捕集板12には、アース13が取り付けられている。
シリンジ9として、今回は、市販されているディスポタイプのプラスチック製注射用シリンジ(10 mL)本体を用いた。シリンジ9は、通常注射針を取り付ける先端部分を下に向けた状態で、スタンドを用いて垂直に固定され、内部に直径1.0 mmの針状電極11がセットされている。
針状電極11は、高圧電源8に接続されており、紡糸化する際には20 kVの高電圧をかけた。シリンジ9の下部には、アースを取り付けた導電性捕集板12(ここでは、ステンレス製の網)をセットし、シリンジ9下端部と導電性捕集板12の距離を、200 mmに調整した。
そして、サンプル1の一部(約4 mL)を紡績液10としてシリンジ9の上部開口部から投入し、直ちに高圧電源8のスイッチをオンにして、シリンジ9から導電性捕集板12に向けて紡績液10を静電噴霧した。この静電噴霧処理により、紡績液10中の水、エタノール及び塩酸が揮散し、直線的にポリマー化していたテトラエトキシシランが、微細なシリカ繊維14として紡糸化され、図5(b)に示すように、導電性捕集板12の上にシリカ不織布15として集積する。
図6(a)は、紡績液10の粘度が500 mPa・sの場合に製造されたシリカ不織布15の外観写真である。このシリカ不織布15の外観は、通常のグラスウールとほとんど同じであるが、触感はより滑らかで、折り曲げたりしても繊維が切断されにくい。
図6(b)は、このシリカ不織布6の電子顕微鏡写真であり、平均繊維径は4.5μmであることが確認された。特許文献1には、合成繊維紡糸用装置を用いて変性ポリカルボシランを繊維化し、1200℃の空気中で1時間焼成することにより得られたシリカ繊維の平均直径が13μmであったこと記載されているが、本発明のシリカ不織布の製造方法は、より繊維径を小さくできることが確認された。また、本発明のシリカ不織布の製造方法は、紡績液を静電噴霧して紡糸化する際に、溶媒の留去も同時に行われるため、紡糸化操作が非常に容易である。
シリンジから静電噴霧された紡績液(混合溶媒)は、同じ電荷に帯電しているため、導電性捕集板に到達するまでにシリカ繊維同士がくっつくことがない。そのため、できあがったシリカ繊維の繊維径は、非常に平均化されていた。さらに、高温での焼成も行う必要がなく、実験室レベルの小型、かつ、簡便な装置で製造可能であった。
また、特許文献1の製造方法では、シリカ繊維の繊維径と同程度の微細孔から高圧で紡糸液を押し出す必要があるが、本発明のシリカ不織布の製造方法では、ディスポタイプのプラスチック製注射用シリンジから圧力をかけることなく紡糸液を静電噴霧させるため、微細孔の目詰まりという問題が発生せず、分解洗浄等、製造装置のメインテナンスも非常に容易である。
次に、静電噴霧する紡績液10の粘度が150 mPa・s、500 mPa・s及び920 mPa・sの場合に製造されたシリカ不織布15の外観写真を、図7(a)、図7(b)及び図7(c)にそれぞれ示す。
まず、紡績液10の粘度が150 mPa・sの場合には、平均繊維径3 μmの非常に細いシリカ不織布(図7(a))となったが、繊維間に空隙が少なく膜状に近い状態であり、シリカ不織布としては不適当であった。適切な空隙を有するシリカ不織布とするためには、紡績液10の粘度を200 mPa・s以上とすることが好ましかった。
紡績液10の粘度が500 mPa・sの場合には、平均繊維径4.5 μmのシリカ不織布が製造された(図7(b))。この不織布は、図6(a)及び図6(b)に示したシリカ不織布と同様、均質で強度も十分であった。なお、経験上、紡績液10の粘度は、600 mPa・s以上800 mPa・s以下とするのが最適であった。また、紡績液10の粘度が低いほど、シリカ不織布の平均繊維径が小さく、紡績液10の粘度が高いほど、シリカ不織布の平均繊維径が大きくなる傾向が認められた。
一方、紡績液10の粘度が920 mPa・sの場合には、シリカ不織布がもろくなって、繊維が折れやすいという問題が生じた(図7(c))。平均繊維径は13μmであった。紡績液3の粘度が800 mPa・sを超えると、不織布が脆性的であるという問題が生じるため、適切なフレキシビリティーを有するシリカ不織布とするためには、紡績液3の粘度を800 mPa・s以下とすることが好ましかった。
なお、ゲル化した実験例2のサンプル5を紡績液10として、図5(a)及び図5(b)に示した装置を用いて静電噴霧したところ、高圧電源8のスイッチがオフの状態では、シリンジ2の下端部からゲル状の紡績液が滴下するものの(図8(a)を参照)、高圧電源8のスイッチをオンにしても、紡績液3を静電噴霧することはできす、ゲル状の紡績液のままであった(図8(b)を参照)。
(実施例2)
図6(a)及び図6(b)に示したシリカ不織布の比表面積を、BET法により測定した結果、7.7 m/gであり、シリカ繊維表面が非多孔質であることが推察された。一方、ゲル化した実験例2のサンプル5を乾燥させることにより得られたシリカゲルの比表面積を同様に測定した結果、615.9 m/gであった。
このように、テトラエトキシシランが直線上にポリマー化した場合、静電噴霧法によって紡糸化することが可能であるが、できあがったシリカ不織布は、比表面積が小さい(図9(a)を参照)。一方、テトラエトキシシランが網目状にポリマー化した場合、静電噴霧法により紡糸化することができないが、乾燥させてシリカゲルとした場合、表面が多孔質となるために比表面積が大きい(図9(b)を参照)。
そこで、実施例2として、実施例1で製造したシリカ不織布の表面を多孔質化することを試みた。多孔質化させる方法として、図6(a)及び図6(b)に示したシリカ不織布(約2グラム)を、KCl飽和溶液を300mL入れたシャーレと共に7Lのガラス製気密容器内に収納し、60℃の恒温槽内に保管して水蒸気処理した。この場合、シリカ不織布が接触するガラス製気密容器内の空気の相対湿度は、約90%となる。
4日後(96時間後)、シリカ不織布を取り出し、BET法により比表面積を測定した。その結果、当初7.7 m/gであった比表面積が、184.7m/gとなった。これは、図9(a)の状態であったシリカ不織布表面のポリマー鎖が、図1に示す加水分解反応及び重縮合反応によって、隣接するポリマー鎖との間で重合化し、図9(b)に示したような状態に変化し、シリカゲルのように多孔質化した結果であると推察された。
(実施例3)
次に、実施例3として、実施例2と同じシリカ不織布を精製水中に浸し、実施例2よりも短時間で多孔質化させることを試みた。
まず、実施例2と同じシリカ不織布を室温の精製水中に3日間浸した後、精製水から取り出し、付着した水分を取り除いて風燥させた後、BET法により比表面積を測定したところ、65.9 m/gであった。次に、60℃の精製水中に3日間浸したシリカ不織布、及び沸騰精製中に5分間浸したシリカ不織布について、同様に比表面積を測定すると、それぞれ403.5 m/g及び494.4 m/gであった。
本実施例におけるシリカ不織布の多孔質化の原理は、実施例2と同じと推察されるが、加熱した精製水中に浸すことによって、シリカ不織布表面の比表面積を400 m/g以上にまで増大させることができた。特に、沸騰精製水中にシリカ不織布を浸す場合には、5分間という短時間の処理によって、シリカ不織布表面の多孔質化が達成できた。
このように、本発明のシリカ不織布は、平均繊維径が小さく、表面も滑らかであり、変形容易で加工性にも富むが、水蒸気処理又は水中で加熱処理するこという簡易な処理によって、元の物性を損なうことなく比表面積を増大させ、さらに多孔質シリカ不織布とすることが可能である。この多孔質シリカ不織布は、通常のシリカゲル同様、化学物質等を吸着することができるため、繊維状吸着剤としても用いることが可能である。
また、本発明のシリカ不織布の製造方法は、実験室レベルの小型、かつ、簡便な装置で、容易な操作によって実行することができる。エネルギーコストも低く、装置のメインテナンスも容易である。また、高温、高圧とならないために、安全性も高く、紡績液の粘度を調整することにより、シリカ繊維の繊維径を容易に調製することも可能であり、多成分系の紡績液についても、分子レベルで均質なシリカ不織布を製造することが可能である。
本発明のシリカ不織布及びその製造方法は、フィルター、軽量断熱材、吸音材、各種衛生材料、吸着剤等、広範囲の技術分野の用途に応用することが可能である。
ゾル−ゲル法における加水分解反応及び重合反応の概念を表す図である。 実験例1において、混合溶媒の粘度を経時的に測定した結果を示す図である。 実験例2において使用した紡糸液の製造装置の概略図である。 実験例2において、混合溶媒の粘度を経時的に測定した結果を示す図である。 本発明のシリカ不織布の製造に用いた静電噴霧装置の概略構成図であり、図5(a)は静電噴射前、図5(b)は静電噴射中の状態を示す図である。 実施例1のシリカ不織布の写真であり、図6(a)はシリカ不織布全体の外観写真、図6(b)はシリカ不織布の電子顕微鏡写真である。 実施例1のシリカ不織布の外観写真であり、図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、混合溶媒の粘度が、それぞれ150 mPa・s、500 mPa・s及び920 mPa・sの場合のシリカ不織布の外観を示す。 実験例2のサンプル5を紡績液として、図5に示す静電噴霧装置に用いた状態を示す写真であり、図8(a)は高圧電源のスイッチがオフの状態、図8(b)は高圧電源のスイッチがオンの状態を示す。 本発明のシリカ不織布表面のポリマー構造の模式図であり、図9(a)は、水蒸気処理又は熱水処理前の構造、図9(b)は水蒸気処理又は熱水処理後の構造を示す。
符号の説明
1:エアポンプ
2:バイアル
3:油浴
4:スターラ
5:フラスコ
6:冷却管
7:テトラエトキシシランを溶解させた混合溶媒
8:高圧電源
9:シリンジ
10:紡績液
11:針状電極
12:導電性捕集板
13:アース
14:シリカ繊維
15:シリカ不織布

Claims (13)

  1. アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、大気と接触さることによりゾル状の紡績液を調製し、該紡績液を静電噴霧法により紡糸化して製造されるシリカ不織布。
  2. 前記アルコキシシランがテトラエトキシシランであり、前記有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1に記載のシリカ不織布。
  3. 平均繊維径が10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリカ不織布。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリカ不織布を、さらに水蒸気処理又は水中で加熱処理することにより比表面積を増大させた多孔質シリカ不織布。
  5. 比表面積が400 m/g以上であることを特徴とする請求項4に記載の多孔質シリカ不織布。
  6. アルコキシシランを水と有機溶媒の混合溶媒に溶解させ、大気と接触させながらゾル状の紡績液とするゾル化工程と、
    前記粘度調整後の紡績液を、静電噴霧法により紡糸化する紡糸化工程と、
    を含むシリカ不織布の製造方法。
  7. 前記アルコキシシランがテトラエトキシシランであり、前記有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項6に記載のシリカ不織布の製造方法。
  8. 前記混合溶媒における水の量が、アルコキシシランのモル数に対して1倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載のシリカ不織布の製造方法。
  9. 前記ゾル化工程において、前記紡績液の粘度を200 mPa・s以上800 mPa・s以下の範囲内に調整することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のシリカ不織布の製造方法。
  10. 前記ゾル化工程において、前記混合溶媒に塩酸を加えることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載のシリカ不織布の製造方法。
  11. 前記ゾル化工程において、加湿した大気と接触させながら撹拌することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載のシリカ不織布の製造方法。
  12. 請求項6乃至11のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたシリカ不織布を、さらに水蒸気処理又は水中で加熱処理することにより比表面積を増大させることを特徴とする多孔質シリカ不織布の製造方法。
  13. 比表面積を400 m/g以上とすることを特徴とする請求項12に記載の多孔質シリカ不織布の製造方法。
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