(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る伝動システムを前記図1ないし図15に基づいて説明する。本実施形態では、ジョークラッシャである破砕機における、破砕を実行する作動部へ、電動機から無端環状のベルトを介して駆動力を伝達する伝動システムの例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る伝動システム10は、駆動力を伝える伝動手段としてのベルト30と、電動機40の駆動力で回転する駆動軸11と、この駆動軸11に一体に回転可能に取り付けられ、ベルト30の一部を巻掛けられる駆動側プーリ12と、破砕機50の作動部50aに回転可能に配設されて駆動力を入力される従動軸13と、この従動軸13に一体に回転可能に取り付けられ、ベルト30の他部を巻掛けられる従動側プーリ14と、ベルト30に接するテンションプーリ15aでベルト30の張り状態を調整可能とする伝動調整部15と、伝動調整部15を動かしてテンションプーリ15aの位置を変えるアクチュエータ16と、電動機40の作動状態を取得して、この作動状態に基づいてアクチュエータ16の作動を制御する制御部17とを備える構成である。
本実施形態に係る伝動システム10を適用する破砕機50は、本体フレーム51に固定された不動歯52と、この不動歯52に対向して配置される動歯53と、この動歯53を取り付けられて少なくとも揺動可能に本体フレーム51に配設されるスイングジョー54と、スイングジョー54の下部に一端部を当接させて設けられるトッグルプレート55と、トッグルプレート55の他端部に当接するようにして本体フレーム51に位置調整可能として設けられるトッグルブロック56と、スイングジョー54等を作動させる駆動部57とを備える構成である。
この破砕機50は、スイングジョー54を動かして、動歯53と不動歯52との間隔を周期変化させ、不動歯52と動歯53との間に供給、導入される破砕対象物を破砕する公知のジョークラッシャである。各部の機構については、電動機40で発生させた駆動力を前記伝動システム10を介してスイングジョー54に伝える構成を除いて、公知のシングルトッグル式のジョークラッシャと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
前記駆動軸11は、電動機40の出力軸であり、軸端に駆動側プーリ12を取り付けられる構成である。
この駆動軸は電動機の出力軸に限られるものではなく、電動機の駆動力で回転するものであれば、電動機と歯車など別の伝動手段を介して連動しつつ、電動機とは離して配設される構成とすることもできる。
前記駆動側プーリ12は、駆動軸11に取り付けられて駆動軸11と一体に回転可能とされ、外周所定範囲に巻掛けられたベルト30を循環移動させて、従動側に電動機の駆動力を伝えるものである。
前記従動軸13は、破砕機50における破砕を実行する作動部50a、すなわち、破砕対象物を挟んで破砕する不動歯52と動歯53、動歯53を取り付けられるスイングジョー54等の、破砕機50の破砕に係る機構部、に回転可能に配設され、電動機40からの回転駆動力を入力されて、作動部50aの破砕に係る作動を生じさせるものである。
詳細には、従動軸13は、破砕機50の本体フレーム51に回転可能に支持され、軸上にスイングジョー54を相対回転可能に取り付けられてこれを支持しつつ、この従動軸の回転に連動させてスイングジョー54を動かす仕組みである。公知のジョークラッシャと同様、従動軸13のスイングジョー54取付部分は、従動軸13の他部分に対し中心がずれた偏心軸構造とされており、従動軸13の回転で、スイングジョー54に動歯53と不動歯52との間隔を繰り返し変化させる特有の動きを与えられることとなる。
従動軸13は、さらに、駆動力伝達用のベルト30が巻掛けられる従動側プーリ14を取り付けられる。この従動軸13に駆動源である電動機40からの回転駆動力がベルト30や各プーリを介して入力される。
前記従動側プーリ14は、従動軸13に取り付けられて従動軸13と一体に回転可能とされ、外周所定範囲に巻掛けられて循環移動するベルト30によって回転し、一体の従動軸13に電動機40の駆動力が伝わるようにするものである。
この従動側プーリ14は、フライホイールを兼ねるものであり、従動軸周りに十分大きな慣性モーメントを有し、従動軸13をこの慣性モーメントで速度変動を抑えつつ安定して回転させられる仕組みである。これにより、従動軸13や従動側プーリ14を含む作動部50aの回転機構は、その作動中に電動機40からの駆動力伝達が途切れた場合でも、その慣性モーメントで回転を所定期間継続可能であり、スイングジョー54を動かし続けることとなる。
前記伝動調整部15は、ベルト30に接して回転可能とされるテンションプーリ15aを有して、ベルト30の近傍となる破砕機50の所定箇所に配設され、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間でベルト30に接触するテンションプーリ15aの位置を変えて、ベルト30の張り状態を調整可能とするものである。
伝動調整部15は、詳細には、テンションプーリ15aを従動側プーリ14の回転中心軸と平行な軸周りに回転可能として支持する可動基部15bと、この可動基部15bを所定範囲移動可能に支持する一方で、破砕機の所定位置に揺動可能として配設され、揺動に伴うテンションプーリ15aの位置変化の軌跡がベルト30の走行方向と交わるようにする支持腕部15cと、可動基部15bと支持腕部15cとに連結されて、支持腕部15cに対し可動基部15bをベルト寄りに動かすように付勢する付勢手段としてのばね15dとを備える構成である。
この伝動調整部15は、ベルト30のプーリ間に掛け渡される部位のうち、破砕機50が破砕対象物の破砕を行う通常作動状態におけるベルト走行方向について、ベルト緩み側となる部位に対し、テンションプーリ15aをベルト外方、すなわち上方から押し付け可能な配置として破砕機50に取り付けられる。
伝動調整部15では、テンションプーリ15aが、ベルト30と接触しつつ、支持腕部15cの揺動と共にベルト30に対してその位置を変え、ベルト30の張り状態を変化させることで、駆動側プーリ12と従動側プーリ14の少なくとも一方に対してベルト30が滑る割合を変化させることができ、その結果として、駆動側プーリ12から従動側プーリ14へのベルトによる駆動力の伝達度合いを調整可能とする仕組みである。
伝動調整部15においては、テンションプーリ15aをベルト30と接触させている状態で、可動基部15bがばね15dによりベルト寄りに付勢されて、可動基部15bに支持されたテンションプーリ15aがベルト30を押すようにされることから、ベルト30に加わる振動やベルト30の経年変化による伸びに伴う、ベルト30の張り状態の変化を防ぐことができる。
前記アクチュエータ16は、伝動調整部15に連結されて配設され、伝動調整部15を動かしてテンションプーリ15aの位置を変更可能とするものである。
アクチュエータ16は、詳細には、一部を破砕機50の本体フレーム51に連結されると共に、この一部に対し位置関係可変とされる他部を伝動調整部15の支持腕部15cに連結されて配設され、前記一部と他部との位置関係を変化させるように作動して、支持腕部15cを上下に揺動させる構成である。アクチュエータ16が支持腕部15cを揺動させることで、この支持腕部15cごとテンションプーリ15aを上下に動かせる仕組みである。このアクチュエータ16としては、例えば油圧シリンダなどの直動式アクチュエータを用いることができ、その場合、アクチュエータ16を作動させて破砕機側の一方の端部と支持腕部側の他方の端部との間隔を変えることで、支持腕部15cを揺動させることとなる。
アクチュエータ16は、制御部17の制御に基づいて作動することで、伝動調整部15ごとテンションプーリ15を移動させ、テンションプーリ15によるベルト30の押圧状態を調整して、ベルト30を所望の張り状態となるようにする仕組みである。
なお、アクチュエータ16は、油圧シリンダなどの直動式アクチュエータに限られるものではなく、電動機や油圧モータ等の回転式アクチュエータとして、アクチュエータの一部が連結された伝動調整部を、アクチュエータの他部を連結した破砕機の本体フレームに対して回転させて動かすことで、テンションプーリの位置を変更可能とする構成とすることもできる。
前記制御部17は、電動機40の作動状態を取得して、この作動状態に基づいてアクチュエータ16の作動を制御するものである。
制御部17は、詳細には、破砕機50における電動機40の近傍に設けられて電動機40と接続され、この電動機40の電流値を検出してその作動状態(通電により電動機出力軸を回転させて駆動力を発生させている状態)を取得可能とされると共に、アクチュエータ16と接続されてその作動を制御可能とされる構成である。
この制御部17は、そのハードウェア構成として、CPUや記憶部、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、記憶部に格納されるプログラムにより、コンピュータを制御部17として作動させる仕組みである。こうした制御部17をなすコンピュータは、CPUや記憶部等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。
そして、制御部17は、電動機40の作動状態に基づく制御の下にアクチュエータ16を作動させ、伝動調整部15の支持腕部15cを動かしてテンションプーリ15aの位置を変え、ベルト30の張り状態を緩めたり増大させたりすることで、駆動側プーリ12から従動側プーリ14へのベルトによる駆動力の伝達度合いを調整する。
例えば、制御部17が、電動機40における過電流など、電動機40の作動の異常状態を取得した場合、制御部17は、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを上方に揺動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが緩む側に変位させるように制御を行う。こうした制御により、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との少なくとも一方に対するベルト30の滑りを大きくして、電動機40と作動部50aとの間でのベルト30を介した駆動力伝達の度合いを小さくする、又は、駆動力伝達を断つこととなる。
こうして、電動機40と作動部50aとの間で、ベルト30を介した駆動力の伝達が有効に行われにくくなることに伴い、作動部50aにおける過負荷などを解消できると共に、こうした過負荷等の電動機への悪影響を断って、電動機の作動異常状態の解消も図れる。
そして、電動機40と作動部50aとの間でベルト30を介した駆動力の伝達が行われにくくなった結果として、電動機40や作動部50aの作動状態に異常がなくなったことを制御部17が取得した場合には、制御部17は、アクチュエータ16を先ほどとは逆向きに作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを下方に揺動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが増大する側に変位させるように制御を行う。
この制御により、駆動側プーリ12や従動側プーリ14に対するベルト30の滑りを少しずつ小さくして、作動部50aに伝達される駆動力を徐々に増やして、駆動力が無駄なく伝達される正常な状態に確実に移行させることができる。
また、制御部17は、作動部の作動中に、停止操作に応じて電動機40の作動が停止されたことを取得した場合には、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを上方に揺動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが緩む側に変位させるように制御を行う。
この制御で、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との少なくとも一方に対するベルト30の滑りを大きくして、作動部50aの従動側プーリ14の慣性モーメントにより継続する回転が電動機40に伝わる度合いを小さくする、又は、電動機40に伝わらないようにすることで、作動部側の回転に伴う電動機40での発電を抑えて、発生する電力による過電流等の問題を解消できる。
さらに、制御部17は、電動機40の作動開始状態を取得した場合には、アクチュエータ16を作動させて支持腕部15cを下方に揺動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが増大する側に変位させるように制御を行う。この制御で、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との少なくとも一方に対するベルト30の滑りが大きく、ベルト30を介した駆動力の伝達が行われにくい当初の状態から、滑りを少しずつ小さくして、作動部50aに伝達される駆動力を徐々に増大させるようにする。これにより、始動時に電動機40に加わる負荷を抑えて、負荷の小さい状態で電動機40の回転数を速やかに高めた上で、ベルト30を介した駆動力の伝達の度合いを少しずつ大きくして、電動機40で作動部50aを駆動する状態に無理なく移行でき、電動機40の始動電流を抑制できる。
次に、前記構成に基づく伝動システムの使用状態について説明する。
最初に、破砕機50の起動時における伝動システムの作動状態について説明する。
破砕機50の起動前の段階において、伝動調整部15では、テンションプーリ15aが、ベルト30の上側でベルトから離れるか、ベルト30に接触してもベルト30をほとんど押圧しない位置にある(図3参照)。
制御部17が、破砕機50の起動操作された状態を取得すると、まず、伝動調整部15のテンションプーリ15aによるベルト30の押圧が、駆動側プーリ12の回転に伴ってベルト30が少なくとも動いて従動側プーリ14に回転を伝達可能とする程度のベルト30の所定の張り状態を与えるように、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを下方に傾動させ、テンションプーリ15aをベルト30の張りが増大する側に動かして、テンションプーリ15aの位置を調整する。
この後、破砕機50の起動操作に応じて電動機40に給電が開始されるなどして電動機40が作動開始となり、駆動側プーリ12を回転させる。
電動機40が始動した当初は、テンションプーリ15aがベルト30の張りを上記のあらかじめ設定された初期状態とすることで、ベルト30が駆動側プーリ12や従動側プーリ14に対し一定の割合で滑りつつ、一部駆動力を伝達して、駆動側プーリ12が回転すると従動側プーリ14も回転する状態にあり(図4参照)、従動軸13に回転が伝わり、スイングジョー54は動き出すこととなる。
この駆動力を最低限伝達しつつ、ベルト30が各プーリに対し滑る状態にある間に、電動機40は回転数を十分に高めた状態(定常回転状態)に移行することとなる。
さらに、制御部17は、電動機40の作動開始状態を取得してから所定時間経過し、電動機40の回転数が十分に増大したことが見込める場合には、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを下方に傾動させ、テンションプーリ15aをベルト30の張りが増大する側に変位させるようにする。
この支持腕部15cの下方への傾動に伴うテンションプーリ15aの位置変化により、テンションプーリ15aがベルトを押圧して、ベルト30に少しずつ張りを与え、滑りを徐々に小さくして、ベルト30を介した駆動力の伝達が必要最低限に留まる当初の状態から、ベルト30が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を大きくしていく(図4、図5参照)。
これにより、ベルト30を介して駆動側プーリ12から従動側プーリ14に適切に駆動力を伝達し、従動軸13の回転でスイングジョー54を十分な駆動力で動かして、破砕に係る作動が可能となる。
テンションプーリ15aは、最終的に、ベルト30を適度な押圧力で押し下げて、ベルト30に十分な張りを与え、ベルト30が各プーリに対しほとんど滑らずに動きを伝えることが可能な位置に達する(図6参照)。この位置にテンションプーリ15aが到達した状態では、ベルト30が各プーリに対しほぼ滑らずに効率よく駆動力伝達が行え、電動機40の駆動力をベルト30を介して駆動側プーリ12から従動側プーリ14に確実に伝えて、従動側プーリ14と従動軸13を無理なく回転させられる。こうして、スイングジョー54を繰り返し動かせるようになり、破砕に係る作動が通常の作動状態に達して継続実行される。
このように、破砕機50の起動当初は、テンションプーリ15aによるベルト30の押圧を制限して、ベルト30が各プーリに対し一定の割合で滑って駆動力伝達を最低限にとどめるようにし、電動機40の始動時に作動部50a側から電動機40に加わる回転負荷を抑えることで、電動機40を十分に回転数が高まった状態に速やかに到達させることができ、さらにその状態から、ベルト30の張りを徐々に増大させて駆動側プーリ12から従動側プーリ14に駆動力を伝達可能とし、電動機40で作動部50aを無理なく駆動する状態に移行させることにより、電動機40の始動電流を抑制できる。
続いて、破砕機50の作動中での電動機40の異常状態取得時における伝動システムの作動状態について説明する。
制御部17が、電動機40で過電流を検出するなど、破砕機50の過負荷などの影響による電動機40の作動の異常状態を取得した場合、制御部17は、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを上方に傾動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが減少する側に変位させる(図8、図9、図10参照)。
このテンションプーリ15aの位置変化により、ベルトがプーリに対しほぼ滑らずに駆動力を伝達可能な当初の状態から、テンションプーリ15aによるベルトの押圧が弱まり、ベルトの張りが減少して、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との少なくとも一方に対するベルトの滑りが大きくなる。
こうして、ベルトが各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を減少させ、ベルトを介して駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間で駆動力を伝達する度合いが低下することで、破砕機の作動部における破砕に係る作動の負荷が電動機に与える影響も小さくなり、電動機40での過電流が生じるような異常状態が解消する。
ここで、電動機40の異常状態を生じさせた原因が、異物等の噛み込みなどでスイングジョー54が動かなくなり、従動軸13が回転できないことにある場合には、作業者が例えば異物等を除去するなど、スイングジョー54の不動の原因となった問題点を解消することとなる。
一方、電動機の異常状態が、従動軸が回転してスイングジョーが動いている状況で生じている場合には、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間での駆動力伝達の度合いを小さくして、破砕機50の作動部側からの影響が電動機40に及びにくい状態とした後も、作動部における従動側プーリ14の慣性モーメントが十分大きいため、従動側プーリ14及び従動軸13の回転は継続し、スイングジョー54は動き続ける。ただし、摩擦抵抗等により従動側プーリ14の回転の勢いは時間の経過に伴って弱まり、その回転数は徐々に低下する。
電動機40での異常状態が解消したことを制御部17で取得すると共に、作動部50aにおいて従動軸13が回転できない状態から回転可能な状態に復帰したことを取得する、あるいは、回転していた従動軸13の回転数が十分に低下して、仮に伝動調整部15を動かして電動機40の駆動力が再度従動軸13に伝わるようにした場合に、電動機40が問題なく従動軸13を駆動可能であり、且つ電動機40における電流を適切な範囲内に収められる状態に達したことを検出すると、制御部17は、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cをあらためて下方に傾動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが増大する側に変位させる。
このテンションプーリ15aの位置変化により、テンションプーリ15aがベルト30を押圧して、ベルト30に少しずつ張りを与え、滑りを徐々に小さくして、ベルト30が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を大きくしていく。そして、テンションプーリ15aは、最終的に、ベルト30を適度な押圧力で押し下げて、ベルト30に十分な張りを与え、ベルト30が各プーリに対しほとんど滑らずに動きを伝えることが可能な位置に達する(図11参照)。
この位置にテンションプーリ15aが到達した状態では、ベルト30が各プーリに対しほぼ滑らずに効率よく駆動力伝達が行え、電動機40の駆動力をベルト30を介して駆動側プーリ12から従動側プーリ14に確実に伝えて、従動側プーリ14と従動軸13を無理なく回転させられる。こうして、スイングジョー54を繰り返し動かせるようになり、破砕に係る作動を以前と同様の通常作動状態に復帰させられる。
さらに、破砕機50の作動していた状態からの停止時における伝動システムの状態について説明する。
破砕機50では、その破砕に係る作動を停止させる操作がなされると、電動機40を作動停止状態として駆動力を発生させず、作動部50aにさらなる駆動力を与えないようにして作動停止に至らせる。
制御部17が、破砕機50を停止させる操作に応じた電動機40の作動停止状態を取得した場合には、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15の支持腕部15cを上方に傾動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが緩む側に変位させる(図13、図14、図15参照)。
通常、電動機40の作動停止により破砕機側に電動機側から新たな駆動力が加わらない状態となっても、破砕機50の作動部における従動側プーリ14の慣性モーメントが十分大きいことから、従動側プーリ14はそのまま回転を継続しようとし、スイングジョー54も動き続けることとなる。
このように電動機40の作動を停止させても、慣性モーメントにより従動側プーリ14の回転が継続するものでは、仮にベルト30が各プーリに対し滑らずに駆動力を伝達可能な場合、従動側プーリ14の慣性モーメントによる回転が、ベルト30と駆動側プーリ12を経て駆動軸11としての電動機出力軸に伝わる。電動機40が誘導モータで且つインバータ駆動の場合、電動機40の出力軸が強制的に回転させられると、電動機40の発電作用により生じた電力が駆動用インバータ回路で過電流や過電圧のエラーを発生させるおそれがある。
上記のテンションプーリ15aの位置変化により、ベルト30が各プーリに対しほぼ滑らずに駆動力を伝達可能な当初の状態(図13参照)に対し、テンションプーリ15aによるベルト30の押圧が弱まり、ベルト30の張りが減少して、駆動側プーリ12と従動側プーリ14との少なくとも一方に対するベルトの滑りが大きくなる。こうして、ベルト30が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を減少させて、ベルト30を介して駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間で駆動力を伝達する度合いを小さくすることで、従動側プーリ14の慣性モーメントにより継続する回転が電動機40に伝わりにくくすることができ、出力軸の強制回転に伴う電動機40での発電を抑制し、この発電作用に伴う電力の発生と、この電力により電動機駆動用のインバータ回路で過電流等のエラーが生じるのを未然に防止できる。
こうしてアクチュエータ16を作動させて伝動調整部15のテンションプーリ15をベルト30の張りが緩む側に変位させた後は、作動部50aの回転機構の慣性モーメントによる回転は摩擦抵抗等により弱まり、最終的に停止することとなり、破砕機50は完全に停止となる。
このように、本実施形態に係る伝動システムにおいては、制御部17で作動を制御されるアクチュエータ16で伝動調整部15を動かし、駆動力伝達用のベルト30に対し接触する伝動調整部のテンションプーリ15aを変位させることで、ベルト30の張り状態を調整可能とし、制御部17が、電動機40の過負荷による過電流発生などの作動異常状態をその電流値により取得すると、そうした異常状態に基づいて、制御部17が伝動調整部15のテンションプーリ15aをベルト30の張りが緩む側に変位させるようアクチュエータ16を作動させ、駆動側プーリ12と従動側プーリ14の少なくとも一方に対するベルト30の滑りを大きくして、ベルト30を介して駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間で駆動力を伝達する度合いを低下させることから、破砕機50の作動部50aにおける作動の負荷が電動機40に与える影響を小さくすることができ、電動機40での過電流が生じるような異常状態を解消可能となる。同様に、電動機40からの駆動力が作動部50aに伝わるのを抑えることで、作動部50aの作動を継続しにくくして、作動部50aにおける過負荷など作動の異常状態を早期に収束させることができる。
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る伝動システムにおいては、破砕機50を作動状態から停止させる場合、制御部17がアクチュエータ16を作動させて伝動調整部15を動かし、ベルトの張りを減少させて、ベルトの各プーリに対する滑りを大きくし、従動側プーリ14の慣性モーメントにより継続する回転がベルトを介して電動機40に伝わりにくくする構成としているが、この他、図16ないし図20に示すように、第2の実施形態として、電動機40の発電作用で電力が生じても適切に電力回生等を実行して、電動機40を従動側プーリ14の回転に対する回生制動に利用できる場合には、破砕機50を作動状態から停止させる際も、ベルトを介して駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間で駆動力を伝達可能として、従動側プーリ14の慣性モーメントにより継続する回転を電動機40による回生制動で早期に停止させる構成とすることもできる。
この破砕機50の作動を停止させる際の伝動システムの作動状態について、具体的に説明する。なお、前提として、電動機40への電力供給回路は、電動機40での発電により生じた電力を、抵抗負荷で熱として消費したり、電源側に電力回生を行ったりするなど、適切に利用することで発電に係る抵抗力を電動機において生じさせる、すなわち回生制動を実現可能な回路であるものとする。また、電動機40への電力供給回路では、電動機40での発電により生じて回路に入力される電力について、回路における電力回生等で受入れられる電力の許容範囲をあらかじめ設定されているものとする。
作動中の破砕機50を停止させる操作がなされると、まず電動機40が作動停止状態に移行する。ただし、電動機40の作動停止により破砕機側に電動機側から新たな駆動力が加わらない状態となっても、破砕機50の作動部における従動側プーリ14の慣性モーメントが十分大きいことから、従動側プーリ14はそのまま回転を継続しようとし、スイングジョー54も動き続けることとなる。
制御部17が、作動中の破砕機50を停止させる操作に応じた、電動機40の作動停止状態を取得すると、作動停止時点の回転状態でそのまま電動機出力軸を破砕機側からベルトを介して強制回転させた場合の、電動機40の発電作用で生じる電力の大きさを予測する。そして、制御部17は、その予測値が電動機40への電力供給回路における電力回生等で許容される大きさを超えるものであるか否かを判定する。
予測した発生電力が回路の許容量を超える場合、制御部17は、アクチュエータ16を作動させて支持腕部15cを上方に傾動させ、テンションプーリ15aをベルト30の張りが減少する側に変位させて(図16、図17参照)、ベルトの各プーリに対する滑りを大きくし、ベルトを介して駆動側プーリ12と従動側プーリ14との間で駆動力を伝達する度合いを低下させることで、従動側プーリ14の回転に基づく電動機出力軸の回転を抑える。
引き続き制御部17は、実際に電動機40で生じる電力の大きさを検出して、それが電力回生等で許容される大きさを超えない、適切なものとなるように、アクチュエータ16を作動させてテンションプーリ15aの位置を調整する。
この後、従動側プーリ14及び電動機40の回転が回生制動や摩擦抵抗その他により弱まって、電動機40での発生電力が小さくなった場合には、制御部17はアクチュエータ16を作動させて支持腕部15cを下方に傾動させ、テンションプーリ15をベルト30の張りが増大する側に変位させる(図18、図19参照)。こうしてベルトの各プーリに対する滑りを減らして電動機側への回転伝達の度合いを高め、電動機40で発生する電力が回路の許容量を超えない範囲で可能な限り大きくして、回生制動の効果が最大限に得られるようにする。
一方、制御部17で予測した発生電力が回路の許容量を超えない場合、制御部17はアクチュエータ16を作動させない。テンションプーリ15aの位置が変化せず、ベルトが各プーリに対しほぼ滑らずに駆動力を伝達可能な当初の状態を維持することで、電動機40における回生制動の効果が最大限に得られるようにする。
最終的に、破砕機50の回転機構の慣性モーメントによる回転は、電動機40での回生制動や摩擦その他の抵抗により弱まって停止に至ることとなる。
このように、本実施形態に係る伝動システムにおいては、制御部17が作動中の電動機40の作動停止状態を取得すると、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15のテンションプーリ15aを動かし、各プーリに対するベルト30の滑り量を変えて、慣性モーメントによる従動軸13や従動側プーリ14の回転がベルト30を介して電動機40に伝わる度合いを調整し、作動部側からの回転伝達に基づく電動機40での発電で生じる電力が適切なものとなるように制御することから、電動機40で発生する電力を回生制動に全て利用して、回生制動に用いる以外の余剰の電力を生じさせず、電動機40への電力供給回路に対する悪影響を抑えつつ、生じた制動力をベルト30を介して作動部50aの回転部分に作用させて、慣性モーメントで継続回転する作動部50aの回転部分を可能な限り速やかに停止させられることとなり、作動部50aを短時間で作動停止状態に移行させられ、停止操作後における作動部50aの制御できない慣性力に基づく作動状態が続くことによる悪影響を防止できると共に、作動部50aのブレーキ機構などの停止に係る他機構の負担を減らせる。
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る伝動システムを前記図21ないし図28に基づいて説明する。本実施形態では、振動フィーダにおける、搬送供給を実行する作動部へ、電動機からベルトを介して駆動力を伝達する伝動システムの例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る伝動システム20は、前記第1の実施形態同様、駆動軸21と、駆動側プーリ22と、従動軸23と、従動側プーリ24と、伝動調整部25と、アクチュエータ26と、制御部17とを備える一方、異なる点として、従動軸23がフィーダ60の作動部に回転可能に配設され、従動側プーリ24がプーリとしての機能のみ有してフライホイールを兼ねない構造とされる構成を有するものである。
本実施形態に係る伝動システム20を適用するフィーダ60は、破砕機等の被供給装置へ向けて石などの搬送対象物を搬送、供給するものであり、より詳細には、前記第1の実施形態における破砕機50と併用され、破砕機50と共に車体90に搭載される構成である。
前記フィーダ60は、電動機45を取り付けられて前記車体90の一部をなす固定フレーム61と、この固定フレーム61上に配設され、搬送対象物を載せて搬送を実行する振動部62と、この振動部62を少なくとも振動可能に固定フレーム61に連結する緩衝部63と、振動部62に取り付けられて配設され、電動機45による駆動で振動を発生させる加振部64とを備える構成である。
このうち加振部64は、一対の不釣り合い錘をそれらの回転中心軸が互いに平行となるように配置しつつ、互いに異なる回転方向に回転させることで、不要な振動成分を打ち消して所定の向きの振動を生じさせる公知の機構である。フィーダ60は、この加振部64を作動させて振動部62を振動させ、振動部62上に載置された搬送対象物としての破砕原料を前方の被供給装置、すなわち破砕機50へ向け搬送する仕組みである。
このフィーダ60については、電動機45で発生させた駆動力を前記伝動システム20を介して加振部64に伝える構成を除いて、公知の振動フィーダと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
前記従動軸23は、フィーダ60における搬送供給を実行する作動部60a、すなわち、載せられた搬送対象物を振動により徐々に前方へ移動させる振動部62、この振動部62を振動させる加振部64等の、フィーダ60の搬送供給に係る機構部、に回転可能に配設され、電動機45からの回転駆動力を入力されて、作動部60aの搬送供給に係る作動を生じさせるものである。
詳細には、従動軸23は、フィーダ60の加振部64に回転可能に支持され、軸上に一方の不釣り合い錘64aを一体に取り付けられ、この従動軸23と共に不釣り合い錘64aを回転可能とする仕組みである。加振部64では、公知の加振機構と同様、従動軸23から歯車等を介して他方の不釣り合い錘64bの支持軸に逆方向の回転が伝わる構造とされており、従動軸13の回転で、一対の不釣り合い錘が同時に回転することとなる。
前記従動側プーリ24は、加振部64の外側で従動軸23端部に取り付けられて従動軸23と一体に回転可能とされ、外周所定範囲に巻掛けられて循環移動するベルト35に伴って回転し、一体の従動軸23に電動機45の駆動力が伝わるようにするものである。
これら従動軸23及び従動側プーリ24は、加振部64の不釣り合い錘64aと一体に回転する構造とされることで、従動軸周りの回転について荷重は大きいものの、軸に対し荷重が非対称となっているため、従動軸23や従動側プーリ24の回転は、電動機45からの駆動力伝達が途切れた場合、回転が継続しにくく、間もなく停止することとなる。
前記伝動調整部25は、前記第1の実施形態同様、テンションプーリ25aと、可動基部25bと、支持腕部25cと、ばね25dとを備え、ベルト30の近傍となるフィーダ60の固定フレーム61の所定箇所に配設され、電動機45側の駆動側プーリ22と従動側プーリ24との間でベルト35に接触するテンションプーリ25aの位置を変えて、ベルト35の張り状態を調整可能とする構成である。
この伝動調整部25は、ベルト35のプーリ間に掛け渡される部位のうち、フィーダ60が搬送対象物の搬送を行う通常作動状態におけるベルト走行方向について、ベルト緩み側となる部位に対し、テンションプーリ25aをベルト外方、すなわち斜め下方から押し付け可能な配置としてフィーダ60の電動機支持部61aに取り付けられる。
伝動調整部25では、前記第1の実施形態同様、テンションプーリ25aが、ベルト35と接触しつつ、支持腕部25cの揺動と共にベルト35に対してその位置を変え、ベルト35の張り状態を変化させることで、駆動側プーリ22と従動側プーリ24の少なくとも一方に対してベルト35が滑る割合を変化させることができ、その結果として、駆動側プーリ22から従動側プーリ24へのベルトによる駆動力の伝達度合いを調整可能とする仕組みである。
伝動調整部25においては、この他、テンションプーリ25aをベルト35と接触させている状態で、可動基部25bがばね25dによりベルト寄りに付勢されて、可動基部25bに支持されたテンションプーリ25aがベルト35を押すようにされることから、ベルト35に加わる振動やベルト35の経年変化による伸びに伴う、ベルト35の張り状態の変化を防ぐことができる。
前記アクチュエータ26は、伝動調整部25に連結されて配設され、伝動調整部25を動かしてテンションプーリ25aの位置を変更可能とするものである。
アクチュエータ26は、詳細には、一部をフィーダ60の電動機支持部61aに連結されると共に、この一部に対し位置関係可変とされる他部を伝動調整部25の支持腕部25cに連結されて配設され、前記一部と他部との位置関係を変化させるように作動して、支持腕部25cを上下に揺動させる構成である。アクチュエータ26が支持腕部25cを揺動させることで、この支持腕部25cごとテンションプーリ25aを斜めに動かせる仕組みである。このアクチュエータ26としては、例えば油圧シリンダなどの直動式アクチュエータを用いることができ、その場合、アクチュエータ26を作動させて固定側の一方の端部と支持腕部側の他方の端部との間隔を変えることで、支持腕部25cを揺動させることとなる。
アクチュエータ26は、制御部17の制御に基づいて作動することで、伝動調整部25ごとテンションプーリ25を移動させ、テンションプーリ25によるベルト35の押圧状態を調整して、ベルト35を所望の張り状態となるようにする仕組みである。
前記制御部17は、電動機45の作動状態を取得して、この作動状態に基づいてアクチュエータ26の作動を制御するものである。
制御部17は、詳細には、前記第1の実施形態における破砕機側の伝動システム10における制御部と兼用のものであり、伝動システム10における制御機能とは別に、フィーダ60における電動機45と接続されて、この電動機45の電流値を検出してその作動状態(通電により電動機出力軸を回転させて駆動力を発生させている状態)を取得可能とされると共に、アクチュエータ26と接続されてその作動を制御可能とされる構成である。
この制御部17は、電動機45の作動状態に基づく制御の下にアクチュエータ26を作動させ、伝動調整部25の支持腕部25cを動かしてテンションプーリ25aの位置を変え、ベルト35の張り状態を緩めたり増大させたりすることで、駆動側プーリ22から従動側プーリ24へのベルト35による駆動力の伝達度合いを調整する。
この他、制御部17は、作動部60aの作動中における振動部32の振動に伴う固定フレーム61に対する加振部64の位置変化に応じて、アクチュエータ26を作動させてテンションプーリ25aを動かし、仮に固定フレーム61に対し加振部64が遠ざかってベルト35の張りを大きくしようとする場合には、アクチュエータ26で支持腕部25cを上方に動かしてテンションプーリ25aをベルト35の張り状態を緩める側に変位させ、また、固定フレーム61に対し加振部64が近付いてベルトの張りを小さくしようとする場合には、アクチュエータ26で支持腕部25cを下方に動かしてテンションプーリ25aをベルト35の張り状態を増大させる側に変位させるなど、固定フレーム61に対する加振部64の位置変化が生じた場合でも、ベルト35の張り状態を変化させず一定とするように制御を行うこともできる。
この場合、ベルト35の張り状態を一定として、電動機45と作動部60aとの間のベルトを介した駆動力伝達の度合いをあらかじめ設定された適切な範囲内に維持することができ、搬送供給を一定の状態で適切に行える。また、固定フレーム側における電動機の支持を固定としても駆動力伝達を問題なく行え、従来のように、固定フレーム側における電動機の支持を、ベルトの張り状態が維持されるように、ばね等で電動機に付勢力を常時付加した状態で且つ支持位置を調整可能として行う構造を採用せずに済み、電動機の支持部分のコストを抑えられる。
次に、前記構成に基づく伝動システムの使用状態について説明する。
最初に、フィーダ60の起動時における伝動システムの作動状態について説明する。
フィーダ60の起動前の段階において、伝動調整部25では、テンションプーリ25aが、ベルト35の斜め下側でベルトから離れるか、ベルトに接触してもベルトをほとんど押圧しない位置にある(図22参照)。
制御部17が、フィーダ60の起動操作された状態を取得すると、まず、伝動調整部25のテンションプーリ25aによるベルト30の押圧が、駆動側プーリ22の回転に伴ってベルト35が少なくとも動いて従動側プーリ24に回転を伝達可能とする程度のベルト35の張り状態を与えるように、アクチュエータ26を作動させて伝動調整部25の支持腕部25cを斜め上方に傾動させ、テンションプーリ25aをベルト35の張りが増大する側に動かして、テンションプーリ25aの位置を調整する。
この後、フィーダ60の起動操作に応じて電動機45に給電が開始されるなどして電動機45が作動開始となり、駆動側プーリ22を回転させる。
電動機45が始動した当初は、テンションプーリ25aがベルト35の張りをあらかじめ設定された初期状態とすることで、ベルト35が駆動側プーリ22や従動側プーリ24に対し一定の割合で滑りつつ、一部駆動力を伝達して、駆動側プーリ22が回転すると従動側プーリ24も回転する状態にあり(図23参照)、従動軸23に回転が伝わり、加振部64は動き出すこととなる。
この駆動力を最低限伝達しつつ、ベルト35が各プーリに対し滑る状態にある間に、電動機45は回転数を十分に高めた状態(定常回転状態)に移行することとなる。
さらに、制御部17は、電動機45の作動開始状態を取得してから所定時間経過し、電動機45の回転数が十分に増大したことが見込める場合には、アクチュエータ26を作動させて伝動調整部25の支持腕部25cを斜め上方に傾動させ、テンションプーリ25aをベルト35の張りが増大する側に変位させるようにする。
この支持腕部25cの斜め上方への傾動に伴うテンションプーリ25aの位置変化により、テンションプーリ25aがベルトを押圧して、ベルト35に少しずつ張りを与え、滑りを徐々に小さくして、ベルト35を介した駆動力の伝達が必要最低限に留まる当初の状態から、ベルト35が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を大きくしていく。
ベルト35を介して駆動側プーリ22から従動側プーリ24に十分に駆動力を伝達することで、従動軸23を回転させて加振部64を適切な速度で動かせるようになり、振動が生じて搬送供給に係る作動が可能となる。
テンションプーリ25aは、最終的に、ベルト35を適度な押圧力で押して、ベルト35に十分な張りを与え、ベルト35が各プーリに対しほとんど滑らずに動きを伝えることが可能な位置に達する(図24参照)。この位置にテンションプーリ25aが到達した状態では、ベルト35がプーリに対しほぼ滑らずに効率よく駆動力伝達が行え、電動機45の駆動力をベルト35を介して駆動側プーリ22から従動側プーリ24に確実に伝えて、従動側プーリ24と従動軸23を無理なく回転させられる。こうして、加振部64を継続的に作動させるようになり、振動の発生を一定で安定したものとして、搬送供給に係る作動が継続実行される。
このように、電動機45においては、従動軸23と一体となっている加振部64の不釣り合い錘の回転に係る荷重が、仮に始動時に回転負荷として作用する場合、始動電流が過大となるおそれがあるものの、フィーダ60の起動当初は、テンションプーリ25aによるベルト35の押圧を制限して、緩んだベルト35が各プーリに対し一定の割合で滑って駆動力伝達を最低限にとどめるようにし、電動機45の始動時に作動部60a側から電動機45に加わる回転負荷を抑えることで、電動機45を十分に回転数が高まった状態に速やかに到達させることができ、さらにその状態から、ベルト35の張りを徐々に増大させて駆動側プーリ22から従動側プーリ24に駆動力を十分に伝達可能とし、電動機45で作動部60aを無理なく駆動する状態に移行させることにより、電動機45の始動電流を抑制できる。
続いて、フィーダ60の作動中での電動機45の異常状態取得時における伝動システムの作動状態について説明する。
制御部17が、電動機45で過電流を検出するなど、フィーダ60の過負荷などの影響による電動機45の作動の異常状態を取得した場合、制御部17は、アクチュエータ26を作動させて伝動調整部25の支持腕部25cを斜め下方に傾動させ、テンションプーリ25をベルト30の張りが減少する側に変位させる(図25、図26、図27参照)。
このテンションプーリ25aの位置変化により、ベルト35が各プーリに対しほぼ滑らずに駆動力を伝達可能な当初の状態から、テンションプーリ25aによるベルト35の押圧が弱まり、ベルト35の張りが減少して、駆動側プーリ22と従動側プーリ24との少なくとも一方に対するベルト35の滑りが大きくなる。
こうして、ベルト35が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を減少させ、ベルト35を介して駆動側プーリ22と従動側プーリ24との間で駆動力を伝達しにくくすることで、フィーダ60の作動部60aにおける搬送供給に係る作動の負荷が電動機45に与える影響を排除でき、電動機45での過電流が生じるような異常状態が解消する。
フィーダ60の作動部60a側に電動機45側から新たな駆動力が加わらない状態とした後は、加振部64における不釣り合い錘の荷重で従動軸23及び従動側プーリ24の回転はそれほど時間を経ずに弱まり、その回転数が電動機45で問題なく駆動可能な範囲の回転数相当まで低下し、電動機45の駆動力を再度伝える状態とした場合の電動機45における電流が適切な範囲内に収まることが見込める状態になる。
電動機45の電流値が低下して正常状態に戻ったことが検出されると、制御部17は、アクチュエータ26を作動させて伝動調整部25の支持腕部25cをあらためて斜め上方に傾動させ、テンションプーリ25をベルト35の張りが増大する側に変位させる。このテンションプーリ25aの位置変化により、テンションプーリ25aがベルト35を押圧して、ベルト35に少しずつ張りを与え、滑りを徐々に小さくして、ベルト35が各プーリに対し滑らずに駆動力の伝達を行える割合を大きくしていく。そして、テンションプーリ25aは、最終的に、ベルト35を適度な押圧力で押して、ベルト35に十分な張りを与え、ベルト35が各プーリに対しほとんど滑らずに動きを伝えることが可能な位置に達する(図28参照)。
この位置にテンションプーリ25aが到達した状態では、ベルト35が各プーリに対しほぼ滑らずに効率よく駆動力伝達が行え、電動機45の駆動力をベルト35を介して駆動側プーリ22から従動側プーリ24に確実に伝えて、従動側プーリ24と従動軸23を無理なく回転させられる。こうして、加振部64を継続的に作動させて振動を絶えず発生させられるようになり、搬送供給に係る作動を以前と同様の通常の作動状態に復帰させられる。
この他、フィーダ60で、その搬送供給に係る作動を停止させる操作がなされると、電動機45を作動停止状態とし、作動部60aにさらなる駆動力を与えないようにして作動停止に至らせる。
制御部17が、フィーダ60を停止させる操作に応じた電動機45の作動停止状態を取得した場合には、アクチュエータ26を作動させて伝動調整部25の支持腕部25cを斜め下方に傾動させ、テンションプーリ25をベルト35の張りが減少する側に変位させて、フィーダの次回の起動に備える状態とする。
電動機45の作動を停止してフィーダ60の作動部60a側に電動機45側から新たな駆動力が加わらない状態となると、作動部60aをなす加振部64における従動軸23や従動側プーリ24と一体の不釣り合い錘の非対称荷重が大きいことから、従動軸23や従動側プーリ24は回転を継続できず、加振部64も間もなく停止状態となり、搬送供給に係る作動が停止する。
このように、本実施形態に係る伝動システムにおいては、制御部17で作動を制御されるアクチュエータ26で伝動調整部25を動かし、駆動力伝達用のベルト35に対し接触する伝動調整部のテンションプーリ25aを変位させることで、ベルト35の張り状態を調整可能とし、制御部17が、電動機45の過負荷による過電流発生などの作動異常状態をその電流値により取得すると、そうした異常状態に基づいて、制御部17が伝動調整部25のテンションプーリ25aをベルト35の張りが緩む側に変位させるようアクチュエータ26を作動させ、駆動側プーリ22と従動側プーリ24の少なくとも一方に対するベルト35の滑りを大きくして、ベルト35を介して駆動側プーリ22と従動側プーリ24との間で駆動力を伝達する度合いを低下させることから、フィーダ60の作動部60aにおける作動の負荷が電動機45に与える影響を小さくすることができ、電動機45での過電流が生じるような異常状態を解消可能となる。同様に、電動機45からの駆動力が作動部60aに伝わるのを抑えることで、作動部60aの作動を継続しにくくして、作動部60aにおける過負荷など作動の異常状態を早期に収束させることができる。
なお、前記実施形態に係る伝動システムにおいては、搬送対象物を搬送、供給するフィーダ60に適用して、電動機45から加振部64へ駆動力を伝達して振動を生じさせ、搬送、供給を実行させる構成としているが、この他、フィーダ同様に振動を利用して、多様な粒度の原料から所定粒度範囲の対象物を篩い分ける振動スクリーン装置にも、伝動システムを適用することができ、前記同様に電動機から加振部に駆動力を伝達して振動を生じさせ、加振部と一体のスクリーン部(篩い部)を振動させて、スクリーン部上で原料を移動させながら所望の対象物又は対象物以外のものを篩い落とす篩い分け作業を実行する構成とすることができる。前記実施形態同様、伝動調整部を動かして駆動力伝達用のベルトの張り状態を調整し、ベルトで駆動力を伝達する度合いを変えて、振動スクリーン装置で篩い分けを実行する作動部における作動の負荷が電動機に与える影響を抑えられ、電動機での過電流が生じるような異常状態を解消できる。
また、こうした作動部が振動を発生させるような装置以外にも、ベルトを介して電動機からの駆動力を伝えて作動させられる装置、例えば、電動機からの駆動力をベルトを介してドライブプーリに伝えることで作動し、搬送対象物の搬送を行うベルトコンベヤや、電動機からの駆動力をベルトを介してスプロケットに伝えることで作動して走行移動するクローラ付きの装置等にも伝動システムを適用することができる。こうした装置においても、前記実施形態同様、伝動調整部を動かしてベルトの張り状態を調整し、ベルトによる駆動力伝達の度合いを変えて、搬送あるいは移動を実行する作動部における作動の負荷が電動機に与える影響を抑えられ、電動機での過電流が生じるような異常状態を解消できる。
特に、こうした装置では、前記第2の実施形態同様に、ベルトの張り状態を調整して、作動部側からの回転伝達に基づく電動機での発電が適切になされるように制御する構成とすることで、的確な回生制動を実現して、制御不能な慣性力により停止操作後も走行のおそれがあるコンベヤやクローラ等を確実且つ効率よく停止させられ、安全を確保できると共に、停止用の他のブレーキ機構の負担を軽減できることとなる。
また、前記第1の実施形態に係る伝動システムにおいては、破砕機50におけるスイングジョー54を中心とした作動部50aに対し、駆動源である電動機40の駆動力を伝達する一方、電動機40における検出情報に基づく制御部17による制御で、アクチュエータ16を作動させて伝動調整部15を動かし、テンションプーリ15aを変位させて、ベルト30を介した駆動力の伝達の度合いを変化させる構成としているが、この他、駆動源が油圧モータの場合に、伝動調整部を動かすアクチュエータを油圧駆動式とすると共に、油圧モータの油圧回路にアクチュエータを接続するようにして、油圧モータの出力軸回転数を増大させるように油圧モータへの供給油圧が増大すると、アクチュエータへの供給油圧も増大して、伝動調整部のテンションプーリがベルトの張りを増大させる向きに変位するようにアクチュエータを作動させる構成とすることもできる。
この場合、油圧モータで生じる駆動力が大きくなるにつれて、ベルトの張りも増大し、駆動側プーリや従動側プーリに対するベルトの滑りを少しずつ小さくして、作動部に伝達される駆動力を徐々に増大させることとなり、油圧モータを起動して作動部の作動を開始させるにあたり、複雑な制御を必要とすることなく、伝達される駆動力の変化を緩やかにして、衝撃を発生させずに作動を開始させることができる。
また逆に、油圧モータへの供給油圧が減少すると、アクチュエータへの供給油圧も減少して、アクチュエータは、伝動調整部のテンションプーリをベルトの張りが緩くなる向きに変位させるように作動する。これにより、油圧モータで生じる駆動力が小さくなるにつれて、ベルトの張りも緩くなり、駆動側プーリや従動側プーリに対するベルトの滑りを次第に大きくして、作動部に伝達される駆動力も徐々に減少する。こうして、油圧モータを止めて作動部の作動を停止させるにあたり、複雑な制御を必要とすることなく、衝撃を発生させずに作動を緩やかに停止させることができる。