JP7027754B2 - 被覆電線シール用組成物 - Google Patents
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Description
従って、これらトラブルを回避するために、被覆電線の被覆部と露出部の境界部に被覆電線シール用組成物を施し、その隙間を充填固着して気密性を高める方法が採用されている。この場合、被覆電線シール用組成物は、作業性の面から、その性能として導線と被覆物との間に浸透した後、速硬化することが望まれている。
しかしながら、従来のシアノアクリレート系組成物の硬化物は柔軟性に乏しいため、該組成物を使用してシールした被覆電線は、無理に折り曲げると導線が断線したり、組成物硬化物が破壊したりして、配線に支障が生じたり、被覆電線のシール性がなくなったりする場合があった。
当該文献では、アルキル-2-シアノアクリレートとして、エチル-2-シアノアクリレート及びイソブチル-2-シアノアクリレートが、エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレートとして、エトキシエチル-2-シアノアクリレートが使用されている。また、組成物全量を基準にして、アルキル-2-シアノアクリレートが10~40質量%、アルコキシアルキル-2-シアノアクリレートが30~80質量%及び(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する(メタ)アクリレートが1~50質量%からなる組成物が柔軟性及び耐水性に優れていることを開示している。
本発明者は、検討の結果、前記の高い要求性能を満足するためには、アルコキシアルキル-2-シアノアクリレートはできるだけ含有させるべきでないことを見出した。一方、この成分を除いた場合の耐冷熱衝撃性を補う手段の検討が必要になった。
<1>
(a)アルキル-2-シアノアクリレート、
(b)硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレート
及び(c)エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレート
を含有してなり、
(b)の含有量は、組成物の全量を基準にして、35~55質量%であり、(c)の含有量は、組成物の全量を基準にして、10質量%未満であることを特徴とする被覆電線シール用組成物。
<2>
(c)を含まないことを特徴とする<1>の被覆電線シール用組成物。
<3>
(b)として、ポリエステル型多官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする<1>又は<2>の被覆電線シール用組成物。
<4>
(b)として、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする<1>乃至<3>の被覆電線シール用組成物。
<5>
(b)として、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド変性ポリエステル型多官能(メタ)アクリレートとを含むことを特徴とする<1>乃至<4>の被覆電線シール用組成物。
<6>
重合開始剤をさらに含有させてなる<1>乃至<5>の被覆電線シール用組成物。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
(a)成分のアルキル-2-シアノアクリレートとしては、種々のものが使用可能である。
具体例としては、メチル-2-シアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、n-プロピル-2-シアノアクリレート、イソプロピル-2-シアノアクリレート、n-ブチル-2-シアノアクリレート、イソブチル-2-シアノアクリレート、n-ペンチル-2-シアノアクリレート、n-ヘキシル-2-シアノアクリレート、n-ヘプチル-2-シアノアクリレート、1-メチルペンチル-2-シアノアクリレート、n-オクチル-2-シアノアクリレート、2-オクチル-2-シアノアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノアクリレート、n-ノニル-2-シアノアクリレート、イソノニル-2-シアノアクリレート、n-デシル-2-シアノアクリレート、イソデシル-2-シアノアクリレート、n-ウンデシル-2-シアノアクリレート、n-ドデシル-2-シアノアクリレート、シクロヘキシル-2-シアノアクリレート、シクロヘキシル-2-メチルシアノアクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。
本発明において多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートであって、種々のものが使用できるが、2-シアノアクリレートの接着性に悪影響を及ぼすアミン等の官能基を含有しないものが好ましい。
さらに多価アルコールと(メタ)アクリル酸の間にオキシアルキレン鎖を有するアルキレンオキサイド変性ポリエステル型多官能(メタ)アクリレート及びカプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、(b)成分として、2種以上の多官能(メタ)アクリレートを含有させる場合は、含有させたものと同じ種類と量の多官能(メタ)アクリレートの混合物についての硬化物のショアD硬度が60以下であればよい。
さらに、ポリエステル型多官能(メタ)アクリレートのうち、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレートは、高温多湿条件での耐水性と耐冷熱衝撃性をより向上させるので好ましい。
また、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレートと他のポリエステル型多官能(メタ)アクリレートを併用すると、多官能(メタ)アクリレートの硬化性がよくなるので好ましく、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレートとアルキレンオキサイド変性ポリエステル多官能(メタ)アクリレートとの併用が特に好ましい。
本発明組成物には、メトキシエチル-2-シアノアクリレート、エトキシエチル-2-シアノアクリレート等のエステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレートを含有させることができる。前述のとおり、エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレートは、組成物の硬化物に柔軟性を付与する特長を有する半面、当該硬化物は高温多湿条件での耐水性を満足できないことがある。
従って、その含有量は、組成物の全量を基準にして、10質量%未満が好ましい。
本発明は、エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレートを含まない代わりに、(b)成分の多官能(メタ)アクリレートを特定割合で含有させることにより、高温多湿条件での耐水性及び耐冷熱衝撃性の改良されたシール剤組成物を提供するものであるので、本発明において(c)成分は含まない方がより好ましい。
本発明の組成物には、前記多官能(メタ)アクリレート成分の重合を促進させるための重合開始剤を含有させることが好ましい。この開始剤としては、ハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド及びパーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。
含有量は、貯蔵安定性の観点から、組成物の全量を基準にして0.1~1質量%が好ましく、より好ましくは0.3~0.6質量%である。
本発明の組成物には、所望成分として下記に示す安定剤、重合促進剤、増粘剤及びその他の添加剤が、通常使用される範囲内で適宜含有させてもよい。
[安定剤]組成物の貯蔵安定性向上させるためのもので、重合抑制剤であり、例えばハイドロキノンや亜硫酸ガス等が挙げられる。
[重合促進剤]組成物の接着速度を速めるためのもので、アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体、クラウンエーテル及びその誘導体、シラクラウンエーテル及びその誘導体、シクロデキストリン、並びにカリックスアレーン及びその誘導体等が挙げられる。
[増粘剤]2-シアノアクリレートは、本来無色透明の低粘度液状のものであるが、これに増粘剤として、(b)成分以外の各種(メタ)アクリレートのホモポリマー或いはコポリマー、アクリルゴム、セルロース誘導体及びシリカ等を溶解又は分散させ、組成物に粘度又はチクソ性を付与することもできる。
[その他添加剤]これら以外にも、染料、顔料、可塑剤及び希釈剤等を含有させることもできる。
本発明の被覆電線シール用組成物は、1本の導線が絶縁性の被覆物で被覆されているもの、数本の導線をよったより線が絶縁性の被覆物で被覆されているもの等、種々の被覆電線に使用可能である。
具体的には、被覆電線の露出部及びその周辺を本発明の組成物で被覆し、該組成物を硬化させることにより、被覆電線露出部周辺のシールが可能である。
被覆方法としては、種々の方法が採用でき、例えば、被覆電線の露出部及びその周辺に本発明の組成物を塗布或いは注入する方法、又は被覆電線の露出部及びその周辺を本発明の組成物に浸す方法等を挙げることができる。
被覆した組成物の硬化方法としては、シアノアクリレート系接着剤で通常採用される方法が適用でき、通常は放置することにより空気中の水分により硬化し、又、組成物の硬化速度が充分でないときは、被覆部分を、アニオン重合開始剤であるアミン、例えばN,N’-ジメチルアニリン、トリエタノールアミン〔市販品としては、aaアクセラレータ(東亞合成(株))等がある〕等を噴霧し、硬化促進させることもできる。
本発明の組成物のうち低粘度の組成物は、これが導線と被覆物の隙間に容易に浸透し、被覆電線を充分にシールすることができ、また作業性にも優れるため好適であり、被覆電線の露出部及びその周辺を本発明の組成物に浸す方法を採用することが好ましい。
より具体的には、被覆電線の被覆物を剥がした導線を特定の部品と加締め、この被覆電線の露出部及びその周辺を、本発明の組成物に浸す。被覆電線の露出部及びその周辺を浸す時間としては、使用する組成物の種類によって適宜選択すればよいが、通常は数秒~30秒程度である。
この方法において、硬化速度が速すぎ、組成物が導線と被覆物の隙間内部に十分浸透しない場合には、前記した重合抑制剤の割合を増加させた組成物を使用すればよい。
実施例1~6、比較例1~9
各実施例、比較例においては、表1に示す組成の化合物及びこれらの合計量100質量部に対して1質量部のジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド〔パーブチルZ(日油(株)製)〕を配合し、常法により被覆電線シール用組成物を調製した。
得られた組成物について、以下の評価を行った。それらの結果を表1に示す。
軟質塩ビ被覆銅線(導線の直径:30本の銅線がよられたものの直径2.5mm,被覆塩ビの外径3.5mm)の被覆塩ビを先端から15mm剥ぎ、その先端から30mmを組成物に約2秒浸した後、23℃、湿度50%の雰囲気下1日以上養生して硬化させた。
前記シールした被覆電線について、80℃、湿度95%の湿熱環境下に、50時間暴露したものについて、電線シール性試験を行った(湿熱試験)。
一方、前記シールした被覆電線について、-40℃30分~120℃30分の冷熱衝撃に50サイクル供したものについても、上記と同様に電線シール性試験を行った(冷熱衝撃試験)。
電線シール性試験は、被覆電線のシール処理していない側から所定の圧力の圧縮空気を送り、被覆電線の先端を水につけて空気漏れの有無を確認した。
表において、〇、×は以下の意味を示す。
○:気密圧0.3kg/cm2以上
△:気密圧0.1kg/cm2以上、0.3kg/cm2未満
×:気密圧0.1kg/cm2未満
比較例2は、硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレートと60を超える多官能(メタ)アクリレートを併用するものだが、多官能(メタ)アクリレート全体として硬化物のショアD硬度が60を超えるため、比較例1と同様、湿熱試験は良好だが、冷熱衝撃試験ではシール性が不十分であった。
比較例3~4は、硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレートを用いているが、エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレートが、組成物の全量を基準にして60質量%及び15質量%であったため、冷熱衝撃試験は良好であったが、湿熱試験が不十分であった。
一方、比較例6は、硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレートを用いているが、含有量が組成物の全量を基準にして、60質量%であったため、硬化性不良を引き起こした。
比較例7~9は、硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレートを用いない例で、2-シアノアクリレートの種類に応じ、冷熱衝撃試験又は湿熱試験後のシール性の何れかが不十分であった。
多官能(メタ)アクリレートA:トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート
多官能(メタ)アクリレートB:ジグリセリンEO変性アクリレート
多官能(メタ)アクリレートC:ペンタエリスリトールトリアクリレート
(PO:プロピレンオキサイド、EO:エチレンオキサイド)
Claims (4)
- (a)アルキル-2-シアノアクリレート、
(b)硬化物のショアD硬度が60以下の多官能(メタ)アクリレート
及び(c)エステル残基にエーテル結合を有する2-シアノアクリレート
を含有してなり、
(b)として、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレート及び他のポリエステル型多官能(メタ)アクリレートを含み、
(b)の含有量は、組成物の全量を基準にして、35~55質量%であり、(c)の含有量は、組成物の全量を基準にして、10質量%未満であることを特徴とする被覆電線シール用組成物。 - (c)を含まないことを特徴とする請求項1の被覆電線シール用組成物。
- (b)として、カプロラクトン付加物含有多官能(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド変性ポリエステル型多官能(メタ)アクリレートとを含むことを特徴とする請求項1又は2の被覆電線シール用組成物。
- 重合開始剤をさらに含有させてなる請求項1乃至3に記載の被覆電線シール用組成物。
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